説明

積層不織布

【課題】剛性が高く、フィルター性能に優れたポリエステル系積層不織布の製造法であって、得られた不織布は特に粉塵濾過に適用されるフィルター用途に使用される。また、通気性が高く、濾過運転時の設備負荷が小さいフィルターの製造方法を提供する。
【解決手段】不織布A、不織布B、不織布Cを積層した不織布の製造方法であって、積層時に不織布Aおよび不織布Cの平滑面が不織布Bに接するように配置して、加熱加圧処理することを特徴とする。ここで不織布Aは繊維径が7〜20ミクロンの繊維よりなる目付が10〜100g/m2のポリエステル系不織布であり、不織布Bは低融点ポリエステルからなる繊維と高融点ポリエステルからなる繊維とが混繊されて構成された目付が15〜200g/m2であることを特徴とする不織布もしくは低融点ポリエステルと高融点ポリエステルからなる複合繊維を構成成分とした目付が15〜200g/m2であることを特徴とする不織布であり、不織布Cは目付が30〜200g/m2のポリエステル不織布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性が高く遮蔽性やフィルター特性に優れたポリエステル系積層不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルの代表的な素材であるポリエチレンテレフタレートからなる不織布、特にスパンボンド不織布は、機械的特性や化学的特性に優れており、また比較的安価に製造されることから工業的に広く利用されている。
【0003】
特にダストや小麦粉などの食品粉体を捕集することを目的としたフィルターにおいては、フェルトを筒状にしたバグフィルターが使用されており、工業的生産においては、濾過処理量増加の要請が強い。しかし単にフィルター自身の本数を増やして濾過面積を大きくするという手段によれば、設備の巨大化、あるいは新たな設備投資が必要となる。そのため、濾過面積を増大させる手段として、濾材をプリーツ状に成形する方法が採用されているが、かかる手段を用いるためには、濾材自身に高い剛性が必要となるため剛性付与に関して多くの検討がなされている。
【0004】
このような不織布に剛性を付与する方法としては例えば、(1)繊維間を樹脂で固める、(2)太い繊維で構成する、(3)目付を大きくする、(4)密度を上げる、などが一般的に知られている(例えば非特許文献1参照)。しかしながら、繊維間を樹脂で固めた場合は樹脂によりポアが小さくなって通気抵抗が大きくなり、太い繊維で構成した場合はポアが大きく捕集性能が低くなり、目付を大きくした場合は厚みが大きくなってプリーツ加工性が低下し、密度を上げる場合は通気抵抗が大きくなり、濾過材として好ましくないという問題があった。
【非特許文献1】Textile Research Jounal,48,309,1978
【0005】
また、濾材に要求される長寿命の対策としては、ワンパスのフィルターでは粒子流入側の繊維密度を低下させて粒子を濾材の深さ方向に捕集するという手段が開示されている(例えば特許文献1参照)。しかし、振動やエアー圧力で粒子を振るい落として何度も濾過を行なう濾材に対しては、上述の手法では目詰まりを起こすために好ましくない。そこで、例えば、濾材をカレンダー処理して平滑化する、ポリテトラエチレン微多孔膜で濾材表面を被覆する等の濾材表面を平滑化させて粒子の剥離性を向上させる手段が考えられる。しかしながら、カレンダー処理の場合は通気抵抗が高くなり、微多孔膜被覆ではコストが高くなるという問題がある。
【特許文献1】再公表特許 WO98/13123号公報
【0006】
また、繊維の接着性を改善するために低融点成分を用いた、芯鞘型複合繊維も使用されているが、部分的にエンボス加工された部分がフィルムに近い状態に変化しており、フィルターとして用いた際に流体透過抵抗が大きくなり、送液ポンプやブロアなどの動力費が高くなるという問題がある。また、剛性を高めるためにエンボス面積が大きくなることが多く、表面に凹凸部分があるためにフィルターを逆洗やパルス払い落としなどの手段によりフィルターを再生する際に、ダストのケーキ剥離性が低下するという問題がある。またエンボス面積率が高くなると、プリーターなどの加工機供給部との接触面積が小さくなるためか、供給時にシートが滑り易くなるという問題が発生する場合が少なくない。
【0007】
フィルター用途で、不織布を積層する技術は前述したように濾過効率の改善や長寿命化のために実施しており、剛性を向上させるものはなかった。例えば繊度、目付の異なるスパンボンド不織布を積層した発明があるが、粗層/中層/密層の順に重ねて超音波融着させている(特許文献2)。この発明は粗層からダストが流入することで長寿命化させている。
特許文献2のようなフィルター用途での積層手段においては、不織布の厚み方向におけるダスト捕集性能向上および長寿命化を狙ったものであり、粗層側からダストが侵入する使い方をしている。繊維密度勾配を設けることで密層の目詰まりを防止でき、長寿命化している。しかし集塵機用フィルターのような表面濾過による捕集形態およびダスト捕集後にパルス払い落としをするような使用方法においては、繊維間にダストが侵入してケーキ剥離性が低下し、フィルター寿命を低下させる。また、積層不織布自体が柔らかくプリーツ性に劣るものであった。
【特許文献2】特開2004−218599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解決した、優れたプリーツ加工性および高い剛性を備えた不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、到達した。即ち、本発明は(1)下記不織布A、B、Cより構成される積層不織布であって、不織布Aと不織布Cが接着性不織布Bを介して積層され、不織布Aおよび不織布Cの接着性不織布Bに接する面が平滑面であることを特徴とする積層不織布。
不織布A:繊維径が7〜20ミクロンの繊維よりなる目付が10〜100g/m2の少なくとも片面に平滑面を有する不織布
不織布B:目付が15〜200g/m2である両面が平滑面である熱接着性不織布
不織布C:目付が30〜200g/m2の少なくとも片面に平滑面を有する不織布、
(2)前記不織布Bが、低融点ポリエステルからなる繊維と繊維径20〜50μmの高融点ポリエステルからなる繊維とが混繊されて構成されていることを特徴とする(1)記載の積層不織布、(3)前記不織布Bが、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルからなる複合繊維を構成成分としていることを特徴とする(1)記載の積層不織布、(4)前記不織布Bを構成する低融点ポリエステルから成る繊維が、融点が110℃〜250℃の低融点ポリエステルを含み、且つ高融点ポリエステル繊維からなる繊維が、融点が185℃〜300℃の高融点ポリエステルであることを特徴とする(2)記載の積層不織布、(5)前記不織布Bに用いる複合繊維の低融点成分が110℃〜250℃の低融点ポリエステルであり、且つ高融点成分が融点185℃〜300℃の高融点ポリエステルであることを特徴とする(3)記載の積層不織布、(6)前記不織布Bを構成する低融点成分を含む繊維が20〜50μmの繊維径であり、構成成分の50%以上含むことを特徴とする(2)又は(4)記載の積層不織布、(7)前記不織布Bを構成する複合繊維が、芯鞘型複合繊維であることを特徴とする(3)又は(5)に記載の積層不織布、(8)前記不織布Aおよび不織布Cが全面圧着型の長繊維不織布であることを特徴とする(1)〜(7)いずれかに記載の積層不織布、(9)不織布Aおよび不織布Cが部分圧着型の長繊維不織布であることを特徴とする(1)〜(7)いずれかに記載の積層不織布である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、曲げ剛性が高く、フィルター特性に優れたポリエステル系積層不織布を得ることが出来る。特に濾過操作時の流体抵抗による変型が小さいフィルターとして好適な積層不織布となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層不織布は、不織布A、B、Cより構成される積層不織布であって、不織布Aと不織布Cが接着性不織布Bを介して積層されていることが好ましい。層間接着として接着性不織布(不織布B)を用いることにより、柔軟かつ通気抵抗が小さい積層不織布が得られるからである。
【0012】
本願発明の積層不織布は、前記不織布Aの繊維径が7〜20μmであることが好ましい。
かかる範囲内であれば、フィルターとして用いた場合、不織布Aは、本願の積層不織布において、ダスト粒子を分離するという機能を発揮し、充填密度を高く設定しなくても高い濾過精度を達成することが可能となる。繊維径が7μmより小さければ摩耗などにより毛羽が発生しやすいという問題点が生じる。また、剛性を高くするために繊維径を大きくすると、フィルターとして用いた場合に充填率を高くしないと濾過精度が高く設定できなくなり、その結果流体透過抵抗が増加するという問題を生じる。本発明の複合不織布をフィルターとして用いる場合は、不織布Aを濾過面とするサーフェース濾過材として用いられることが一般的であると考えられるので、細い繊維径であるほど濾過精度が高くなり、かつ表面が平滑化されやすくその結果ケーキ剥離性が良くなって濾過ライフも長くすることが可能となる。すなわち本発明の範囲内であれば、ろ過精度とろ過ライフの高い性能バランスを確保することができる。不織布が長繊維不織布であると、フィルターや遮蔽材として用いた場合に繊維の脱落の心配がないために特に好ましい。
【0013】
また、不織布Aは目付10〜100g/m2であることが好ましい。目付が10g/m2未満であると表面の繊維間隙が大きくなり、ダストが不織布内部まで侵入し、目詰まりが生じやすくなる。一方、目付が100g/m2を超えると繊維間隙に大差なく、単に価格増大の要因となる。より好ましくは、20〜80g/m2である。
【0014】
本発明の積層不織布は、不織布Aは少なくとも片面が平滑であって、該平滑面が不織布Bと接着されていることが好ましい。不織布Aの平滑面を不織布Bと接着させることにより、不織布Bに含まれる接着性繊維が全面的に不織布Aに接触し、高い接着強力が得られるからである。そして、不織布Aの平滑面に、不織布Bの繊維が均一に接着されるため、ダストが蓄積される空間が生じず、ダストが不織布に侵入して目詰まりすることが起こり難くなり、フィルターライフが延長されるという有利な効果も得られる。なお、本発明でいう平滑面とは、機械的な凹凸処理がなされていない面をいい、例えば凹凸を付すエンボス処理がなされていない面をいう。
【0015】
本発明の積層不織布は、前記不織布Bが両面共に平滑であることが好ましい。不織布Bは積層不織布の内層に位置し、両面共に平滑とすることにより、ダストが塊として積層不織布内に存在する空間を解消することができ、フィルターとして用いた場合、著しく寿命を延長することができるからである。
【0016】
本発明の積層不織布は、前記不織布Cの目付が30〜200g/m2不織布であって、不織布Bに含まれる接着性繊維によって不織布Bと接着されていることが好ましい。不織布Cをかかる範囲の目付とすることにより、本発明の積層不織布において剛性を増大させる機能を発揮することができるからである。すなわち、本発明の積層不織布は、3層構造を有することで2層構造では得ることが困難な剛性と濾過特性を得ることができるものである。
【0017】
更に不織布Cは少なくとも片面が平滑面であり、その平滑面を不織布Bとの接着面とすることが好ましい。不織布Cの平滑面を不織布Bとの接着面とすることにより、ダストが塊として積層不織布内に存在する空間を解消することができ、フィルターとして用いた場合、著しく寿命を延長することができる。
【0018】
不織布Cのより好ましい目付の範囲は40〜180g/m2、更に好ましくは100〜180g/m2である。不織布の製造方法は特に規定されないが、耐熱性が高くコストパフォーマンスにすぐれたポリエステル長繊維不織布を用いることができる。不織布Cは他の不織布に比べて厚みや目付が高い場合が多いので、熱カレンダー処理などで不織布相互を貼り合わせる際に伝熱不良を生じる恐れがある。その防止のためには、不織布Cをあらかじめ赤外線ヒータなどで予熱することも望ましい。
【0019】
本発明の積層不織布において、前記不織布Bが、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルが混繊されている構成であることが好ましい形態の一つである。
ポリエステルは、廉価な素材の中にあっては剛性に優れ、高融点成分が積層不織布の剛性に寄与する。また低融点ポリエステル繊維を接着繊維として用いることにより、通気抵抗を大きくすることなく、また積層不織布を折り曲げる際に接着点がある程度自由動くため、プリーツ加工性に優れ、且つ剛性に優れた積層不織布が得られるからである。
【0020】
不織布Bは、10μm〜50μmの低融点繊維と繊維径20〜50μmの高融点繊維とが混繊されて構成されていることが好ましい。上述の通り、高融点繊維は、本発明における3層構造積層不織布の中間層に位置し、積層の剛性向上の役割を担うものであり、高融点繊維径が20μm未満であると、十分な剛性が得られ難くなり、50μmを超えると不織布の地合の斑が大きくなる。また、低融点繊維は各層同士を接着するとともに、通気抵抗を大きくすることなく高融点繊維を接着固定して剛性を向上させるものであり、繊維径が10μm未満であると、積層一体化する際のエネルギーにより繊維が潰れ、通気抵抗を増大させ、50μmを超えると均一分散が困難となり、疎部分の接着性が低下する。より好ましい繊維径は、高融点繊維25μm〜50μm、低融点繊維15μm〜30μm、更に好ましい繊維径は高融点繊維30μm〜50μm、低融点繊維15μm〜25μmである。
【0021】
また、不織布Bは目付が15〜200g/m2であることが好ましい。目付が200g/m2より大きいと、積層不織布の重量が増大してコスト的に好ましくない。また、プリーツ加工を実施するときに層間剥離を生じやすくなる。15g/m2未満であると十分な接着力と剛性が得られないからである。
【0022】
本発明で用いる不織布Bは、低融点成分と高融点成分からなる繊維径20〜50μmの複合繊維からなるものであってもよい。より好ましくは30μm〜50μmである。複合繊維としてはサイドバイサイド型、芯鞘型などを用いることができるが、接着強度の面から芯鞘型複合繊維が好ましい。
【0023】
不織布Bで用いる複合繊維の低融点成分あるいは、混繊で用いる低融点繊維は、融点が110℃〜250℃の間であることが望ましい。融点が110℃以下であると、室温に於いても接着力が低下する、あるいは粘着性が発現してブロッキングなどの問題が生じるおそれがあるため好ましくない。一方、融点が250℃より高ければ、高い接着加工温度が必要となり、また接着対象物の表面温度が低いとすぐに固化が始まり接着性が低下する、あるいは操業性が悪くなる可能性があるため好ましくない。ポリエステル系樹脂は、一般に異物の発生が少ないためフィルター関連用途への市場に特に好適である。用いる樹脂としては、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステルあるいはブロック共重合ポリエステルおよびそれらのいずれかを基本骨格の一分とする共重合ポリマーなどが好適に利用できる。
【0024】
不織布Bで用いる複合繊維の高融点成分、あるいは前記混繊でもちいる高融点繊維は、融点が180℃〜300℃であることが望ましい。かかる範囲であれば、広い温度範囲で高い剛性が得られるからである。
【0025】
高融点成分としては、剛性や耐久性の観点からポリエステル系樹脂よりなることが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸あるいはそれらのいずれかを一部に含む共重合体であることが望ましい。これらのポリエステル系樹脂は、融点が180℃〜300℃の間にあれば高温時の寸法安定性や機械的強度特性に優れるため特に好ましい。最近、自然成分由来やバイオテクノロジーで原料を得ることが可能となってきており、環境保全の観点からも特に好ましい。特に、液体フィルターなどとして形態安定性を樹脂されるときには、ポリエステル繊維のもつ高い剛性が有効になる。
【0026】
高融点成分の融点は、低融点成分のポリマーの融点あるいは軟化点より少なくとも20℃以上高い温度であることが接着加工の操業性を考えると好ましい。融点の差が小さいと、加工温度のコントロールを厳密にする必要があるため高度な温度制御設備が必要にとなり、また加工速度が低速にせざるをえなくなるためあまり好ましくない。
【0027】
不織布Bに用いる高融点成分と低融点成分との重量比は90:10〜50:50であることが好ましい。この範囲であれば、高い剛性と接着性を実現することができるからである。より好ましくは80:20〜50:50、更に好ましくは70:30〜60:40である。
【0028】
本発明に用いる不織布Aおよび不織布Cにおける平滑面は、平滑ローラーによる熱圧着することにより形成することが好ましい。具体的には不織布圧着の再、少なくとも一方の加熱ローラーをプレーンローラーとすることにより実施できる。両面を平滑とした場合、取り扱いによるミスを防止できる。部分熱圧着型はエンボス彫刻面の反対側が平滑面となり、積層工程での取り扱いに注意が必要であるが、一般的な製法であり、入手の容易さや価格などのメリットがある。バインダーによる接着ではフィルター成形時にバインダーの剥離を生じる危険性があり、またコンタミの問題から好ましくない。
【0029】
本発明に用いる不織布A及び不織布Cは、長繊維不織布であることが好ましい。長繊維不織布はリントフリーでフィルター用途に用いて好適だからである。長繊維不織布としてはスパンボンド不織布が望ましい。スパンボンド不織布は原料からシートまで一段階で製造することが可能で、工程数が少なく、価格的に優位である。また、油剤を使用しないのでコンタミの問題も少ない。バインダーによる接着ではフィルター成形時にバインダーの剥離を生じる危険性があり、またコンタミの問題から好ましくない。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、これに限定されるものではない。
【0031】
なお、用いた評価方法は以下の通りである。
(目付)
製品幅方向に5cm幅、20cm長の試料片を採取し、その重量の算術平均値を1m2当たりに換算する。
【0032】
(繊維径)
走査型電子顕微鏡(SEM)により、不織布表面および繊維の拡大写真を撮影し、100本以上の繊維を読み取り、その算術平均値を繊維径とした。読み取り方法は、写真に対角線を引き、その対角線に交差する繊維の幅を読み取る。このとき、互いに融着している繊維は除外する。
【0033】
(融点)
PERKIN−ELMER社製 DSC7を使用し、昇温速度20℃/分で評価した。このときの結晶融解ピーク値を融点とする。
【0034】
(曲げ剛性)
幅2cm、長さ10cmのサンプル片を支持間隔5cmでセットし、JIS−L−1096 ループ圧縮法で使用する加圧子を用いて、変形速度5cm/minで圧縮変形時の応力を曲げ剛性とする。
【0035】
(フィルター性能)
以下の条件でダストを捕集させ、パルス10回に要する評価時間をフィルター寿命とした。
ダスト:JIS−10種
濾過速度:3.0m/min
濾過面積:0.04m2
パルス制御方法:圧力損失制御(150mmAq到達時、パルス噴射)
パルス条件:圧力 3.0kg/cm2、噴射時間 0.1秒
【0036】
(実施例1)
繊維径14μm、目付70g/m2のポリエチレンテレフタレートスパンボンド不織布(東洋紡績株式会社製 6701A)を不織布Aとした。不織布Bとして、イソフタル酸を導入した共重合ポリエステル(融点約130℃)を鞘成分とし、融点約270℃のポリエチレンテレフタレートを芯成分とした、芯鞘比50:50(重量比)の繊維径40μm、目付40g/m2の芯鞘型複合繊維よりなるスパンボンド不織布を作成した。繊維径14μm、目付150g/m2のポリエチレンテレフタレートスパンボンド不織布(東洋紡績株式会社製 6A51AD)を不織布Cとした。3種類の不織布を平滑面が不織布B側となるように順次重ね合せ、プレーンカレンダーにより220℃、線圧25kg/cm、速度10m/分で貼り合せた。積層不織布は、目付260g/m2、曲げ剛性0.55N/2cmであった。フィルター寿命は、50分であった。

【0037】
(実施例2)
不織布Bが、繊維径約35μmの芯鞘型複合短繊維(日本エステル株式会社製メルティー2080、芯部融点270℃、鞘部融点200℃)よりなる目付40g/m2の不織布に変更した以外は実施例1と同じ方法にて積層不織布を作成した。積層不織布は、目付260g/m2、曲げ剛性0.60N/2cmであった。フィルター寿命は、45分であった。
【0038】
(比較例1)
繊維径14μm、目付70g/m2のポリエチレンテレフタレートスパンボンド不織布(東洋紡績株式会社製 6701A)を不織布Aとした。不織布Bとして、イソフタル酸を導入した共重合ポリエステル(融点約130℃)を鞘成分とし、融点約270℃のポリエチレンテレフタレートを芯成分とした、芯鞘比50:50(重量比)の繊維径40μm、目付40g/m2の芯鞘型複合繊維よりなるスパンボンド不織布を作成した。繊維径14μm、目付150g/m2のポリエチレンテレフタレートスパンボンド不織布(東洋紡績株式会社製 6A51AD)を不織布Cとした。不織布Aおよび不織布Cをエンボス面が不織布B側となるように順次重ね合せ、プレーンカレンダーにより220℃、線圧25kg/cm、速度10m/分で貼り合せた。積層不織布は、目付260g/m2、曲げ剛性0.30N/2cmであった。フィルター寿命は30分であり、平滑面を不織布Bに接するようにした場合の約2/3であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のポリエステル系積層不織布の製造方法は、剛性、フィルター特性に優れたポリエステル系積層不織布を製造するための方法であり、得られた不織布は特にプリーツ加工を施したカートリッジフィルターとして使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記不織布A、B、Cより構成される積層不織布であって、不織布Aと不織布Cが接着性不織布Bを介して積層され、不織布Aおよび不織布Cの接着性不織布Bに接する面が平滑面であることを特徴とする積層不織布。
不織布A:繊維径が7〜20ミクロンの繊維よりなる目付が10〜100g/m2の少なくとも片面に平滑面を有する不織布
不織布B:目付が15〜200g/m2である両面が平滑面である熱接着性不織布
不織布C:目付が30〜200g/m2の少なくとも片面に平滑面を有する不織布
【請求項2】
前記不織布Bが、低融点ポリエステルからなる繊維と繊維径20〜50μmの高融点ポリエステルからなる繊維とが混繊されて構成されていることを特徴とする請求項1記載の積層不織布。
【請求項3】
前記不織布Bが、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルからなる複合繊維を構成成分としていることを特徴とする請求項1記載の積層不織布。
【請求項4】
前記不織布Bを構成する低融点ポリエステルから成る繊維が、融点が110℃〜250℃の低融点ポリエステルを含み、且つ高融点ポリエステル繊維からなる繊維が、融点が185℃〜300℃の高融点ポリエステルであることを特徴とする請求項2記載の積層不織布。
【請求項5】
前記不織布Bに用いる複合繊維の低融点成分が110℃〜250℃の低融点ポリエステルであり、且つ高融点成分が融点185℃〜300℃の高融点ポリエステルであることを特徴とする請求項3記載の積層不織布。
【請求項6】
前記不織布Bを構成する低融点成分を含む繊維が20〜50μmの繊維径であり、構成成分の50%以上含むことを特徴とする請求項2又は4記載の積層不織布。
【請求項7】
前記不織布Bを構成する複合繊維が、芯鞘型複合繊維であることを特徴とする請求項3又は5に記載の積層不織布。
【請求項8】
前記不織布Aおよび不織布Cが全面圧着型の長繊維不織布であることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の積層不織布。
【請求項9】
不織布Aおよび不織布Cが部分圧着型の長繊維不織布であることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の積層不織布。

【公開番号】特開2007−107126(P2007−107126A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297849(P2005−297849)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】