説明

積層体、その製造方法および用途

【解決手段】
本発明の積層体は、基材層の片面に、一般式(1)で表される化合物(I)、分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤を含む組成物を重合して得られる重合体からなる重合体層が形成されてなる。
【化1】


式中、Gは水素原子またはメチル基、JおよびQは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、-CH2OH、-CH2CH2OHおよび-CH2CH(OH)CH2OHのいずれかである。ただし、JとQとは同時に、水素原子と水素原子、水素原子とメチル基及びメチル基とメチル基である化合物を除く。
【効果】
本発明によれば、付着した汚染物質を自己浄化可能であり、長期にわたってこの自己洗浄性が低下しない防汚材料を形成可能な積層体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性、親水性に優れ、その表面に汚染物質が付着した場合も表面を雨水等で自己浄化(セルフクリーニング)、もしくは容易に清掃することが可能な防汚性、透明性に優れた防汚材料を得るに好適な重合体、かかる重合体が形成されてなる積層体、その製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防汚材料の多くは、表面に高い撥水性・疎水性を示す被膜を形成するものであったのに対し、被膜の表面を親水化することにより、外壁等に付着した汚れ(外気疎水性物質等)を降雨および散水等によって浮き上がらせて効率的に除去するセルフクリーニング性(防汚染性)を有する新たな防汚材料が種々提案されている。
【0003】
かかる防汚材料としては、透明な基材の表面に酸化チタン等の光触媒性酸化物とシリコーンまたはシリカとを有する組成物を積層した板状部材(特許文献1)、耐候性向上剤を含む基材の一方の面上に該耐候性向上剤のブリードアウトを遮蔽するためのバリア層と光触媒機能を有する金属酸化物を含む防汚層を順次積層してなる防汚フィルム(特許文献2)等の酸化チタン等の光触媒性酸化物を用いた防汚材料あるいはポリオール、イソシアネート硬化剤およびオルガノシリケート化合物等のケイ素酸化物系の親水化剤の硬化物を積層してなる雨よけシート(特許文献3)等が提案されている。
【0004】
しかしながら、光触媒機能を有する酸化チタン等の金属酸化物を含む防汚層を有する防汚材料あるいはオルガノシリケート化合物等の親水化剤を積層してなる防汚材料は親水性だけでなく親油性も持ち合わせているため、カーボンブラックのような燃焼生成物や、排気ガス中に含まれる油分、都市煤塵、粘土粒子のような無機質物質の汚染物質に対しては充分な防汚性能が発揮せず、表面に付着した汚染物質が雨水等で容易に除去されない虞、すなわちセルフクリーニング効果が充分でない場合がある。
【特許文献1】WO96/29375号公報(要約、請求項3、5)
【特許文献2】特開2002-120318号公報(請求項1)
【特許文献3】特開2002-46243号公報(請求項2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カーボンブラックのような燃焼生成物や排気ガス中に含まれる油分等の汚染物質が付着した際にも、表面を自己浄化(セルフクリーニング)し、もしくは容易に清掃することの可能で、長期間外部に曝されてもセルフクリーニング性が低下しない防汚材料を得るに好適な重合体およびその製造方法、並びに、防汚材料として特に好適な積層体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層体は、基材層の片面に、一般式(1)で表される化合物(I)、分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤を含む組成物を重合して得られる重合体からなる重合体層が形成されてなることを特徴としている。
【0007】
【化3】

【0008】
上記一般式(1)において、Gは水素原子またはメチル基を表し、JおよびQは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、-CH2OH、−CH2CH2OH、および、−CH2
H(OH)CH2OHよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の基または原子を表す。
ただし、上記式(1)で表される化合物において、JとQの組合せが同時に、水素原子と水素原子、水素原子とメチル基及びメチル基とメチル基となる場合を除く。
【0009】
また、本発明の積層体の製造方法は、基材層の少なくとも片面に、一般式(1)で表される化合物(I)、分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤を含む組成物からなる塗布層を形成し、該塗布層の表面を、塗布層に接する面の水接触角が55度以下のカバーフィルムで被覆した後、放射線を照射して組成物を重合させることを特徴としている。
【0010】
【化4】

【0011】
上記一般式(1)において、Gは水素原子またはメチル基を表し、JおよびQは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、−CH2OH、−CH2CH2OH、および、−CH2CH(OH)CH2OHよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の基または原子を表す。
ただし、本発明においては、上記式(1)で表される化合物において、JとQとが、同時に水素原子である化合物、JとQとが水素原子およびメチル基である化合物及びJとQとが同時にメチル基である化合物は、本発明で使用される化合物(I)からは除かれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の積層体は、一般式(1)で表される化合物(I)、分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤を含む組成物を重合して得られる重合体からなる、水接触角が45度以下の重合体層が基材層の片面に積層されてなるので、親水性、透明性に優れ、該重合体層のベタツキもなく、耐久性及び耐候性をも有し、カーボンブラックのような燃焼生成物や排気ガス中に含まれる油分等の汚染物質が付着した際にも、降雨により表面に付着した汚染物質が洗い流される、所謂自己浄化(セルフクリーニング)作用を有し、また、降雨が期待されない場所では、表面に散水することにより容易に清掃することができる。
【0013】
本発明の積層体の製造方法は、一般式(1)で表される化合物(I)、分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤を含む組成物を基材層に塗布した後、該塗布
層を、該塗布層に接する面の水接触角が55度以下のカバーフィルムで被覆した後、放射線を照射して前記組成物を重合させるため、水接触角を容易に45度以下にすることができ、しかも、触媒量を少なくしても架橋することができるので、得られる積層体の架橋物(重合体)層はべたつかない。
【0014】
さらに、本発明の積層体は大変優れた耐候性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の積層体、その製造方法およびその用途について具体的に説明する。
〔化合物(I)〕
本発明に係る化合物(I)は、一般式(1)で表される化合物である。
【0016】
【化5】

【0017】
上記式(1)において、Gは水素原子またはメチル基を表し、JおよびQは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、−CH2OH、−CH2CH2OH、または−CH2CH(OH)CH2OHを表す。
【0018】
ただし、JとQの組み合わせとして、JとQとが同時に水素原子である化合物、JとQとがそれぞれ水素原子とメチル基である化合物及びJとQとが同時にメチル基である化合物は、本発明に係る化合物(I)からは除かれる。
【0019】
本発明に係る化合物(I)は、種々公知の方法、たとえば、特開昭61-52号公報、特公
昭48-19295号公報、特開2001-206912号公報に記載された方法により製造することができ
る。一般式(1)で表わされる化合物に属するN-メチロールアクリルアミドは市販品を入手することができる。
【0020】
本発明に係る化合物(I)のなかでも、N-メチロールアクリルアミド、N-(2,3-ジヒドロキシ-プロピル)-(メタ)アクリルアミドおよびN,N-ビス(ヒドロキシエチル)-(メ
タ)アクリルアミドは製造が容易であるため好ましい化合物である。これら化合物は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔化合物(II)〕
本発明に係る化合物(II)は、分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、具体的には、下記の一般式(2)で表される化合物および一般式(3)で表される化合物を例示できる。
【0021】
【化6】

【0022】
上記式(2)中、X、Yは、独立して水素原子またはメチル基を表し、Dは、
【0023】
【化7】

【0024】
を表す。
kは0または1を表し、n、mは独立して1〜6の整数を表す。
Zは水素原子または
【0025】
【化8】

【0026】
を表し、Wは水素原子またはメチル基を表す。*は水酸基と結合する結合手を表す。
【0027】
【化9】

【0028】
上記式(3)中、X、Yは独立して水素原子またはメチル基を表し、Eは、
【0029】
【化10】

【0030】
または
【0031】
【化11】

【0032】
を表し、
Lは、
【0033】
【化12】

【0034】
から任意に選ばれる1種を表す。R1〜R4は独立して水素原子、メチル基、または水酸基を表す。sは0または1、p、q、rは独立して1〜3の整数、t、uは0〜2の整数を表す。
【0035】
本発明に係る化合物(II)の一つである一般式(2)で表される化合物としては、例えば、1-アクリロイルオキシ-3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシ-プロパン、1,3-ジ(
メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシ-プロパン、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)リン酸が挙げられる。これら化合物は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本発明に係る化合物(II)の一つである一般式(2)で表される化合物は、種々公知の方法により製造することができる。例えば、対応するポリオールと(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸ハライドとを反応させること、ならびに、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとオキシハライドリンとを反応させて加水分解することにより製造することができる。
【0037】
本発明に係る化合物(II)の他の一つである一般式(3)で表される化合物は、種々公知の方法により製造することができる。例えば、対応するポリオールおよびポリフェノールにエピハロヒドリンを反応させ、次いで(メタ)アクリル酸を反応させることにより製造することができる。
【0038】
本発明に係る化合物(II)の他の一つである一般式(3)で表される化合物としては、例えば、1,10-ビス(メタクリロイルオキシ)-2,9-ジヒドロキシ-4,7-ジオキサデカン、2,2-ビス{4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシ-プロピル-オキシ)-フェニル}-プロパン、2,2-ビス{4-(6-メタクリロイルオキシ-5-ヒドロキシ-2-メチル-3-オキサヘキシ
ル-オキシ)-フェニル}-プロパンが挙げられる。これら化合物は入手および製造が容易
であるため好ましい化合物である。これら化合物は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
〔紫外線吸収剤〕
本発明に係る紫外線吸収剤は,特に限定はされず,一般に紫外線吸収剤として製造・販売されているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等種々公知の紫外線吸収剤を用い得る。
【0039】
具体的には,例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベン
ゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチ
ル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチル-ブチル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリア
ゾール-2-イル)-4-(3-オン-4-オキサ-ドデシル)-6-tert-ブチル-フェノール、2-[5-クロ
ロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-(3-オン-4-オキサ-ドデシル)-6-tert-ブチル−フェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-tert-ブチル-フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル}-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2-(2H-ベンゾ
トリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-n-ドデシルフェノール、メチル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル}プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-(4-フェノキシ-2-ヒドロキシ−フェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オキサ-ヘキサデシロキシ)-4,6-ジ(2、4-ジメチル-フェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オキサ-ヘプタデシロキシ)-4,6-ジ(2、4-ジメチル−フェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-iso-オクチロキシ-フェニル)-4,6-ジ(2、4-ジメチル-フェニル)-1,3,5-トリアジン、商品名チヌビン400(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン405(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)等のトリアジン系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2,4-ジ−tert−ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベン
ゾエート系紫外線吸収剤;プロパンジオック酸-[(4-メトキシフェニル)-メチレン]-ジメ
チルエステル等のプロパンジオック酸エステル系紫外線吸収剤;2-エチル-2'-エトキシ−オキサニリド等のオキサニリド系紫外線吸収剤等が挙げられる。
〔ヒンダードアミン光安定剤(HALS)〕
本発明に係るヒンダードアミン光安定剤(Hindered Amine Light Stabilizers:HALS、
ラジカル補足剤)は、一般にHALSと略称されている通常、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン骨格を有する化合物の総称であり、分子量により、低分子量HALS、中分子量HALS、高分子量HALS及び反応型HALSに大別されるが、本発明ではいずれのHALSを使用することもできる。
【0040】
これらHALSとしては、具体的には、例えば、商品名チヌビン111FDL(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、ビス(1-オクチロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名チヌビン123(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製))、商品名チヌビン144(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン292(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン765(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、商品名チヌビン770(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製)、N,N'-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1, 2,2,6,6-ペンタメチル-4ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物(商品名CHIMASSORB119FL(チバ・スペシャ
リティー・ケミカルズ株式会社製))、商品名CHIMASSORB2020FDL(チバ・スペシャリテ
ィー・ケミカルズ株式会社製)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(商品名CHIMASSORB622LD(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製))、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメ
チレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]](商品名CHIMASSORB944FD(チバ
・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社製))、商品名ホスタビンN20(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンN24(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンN30(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビンPR−31(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ホスタビン845(クラリアント・ジャパン株式会社製)、商品名ナイロスタッブS−EED(クラリアント・ジャパン株式会社製)等として製造・販売されている。
〔組成物〕
本発明に係る組成物は、前記一般式(1)で表される化合物(I)、前記分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、前記紫外線吸収剤及び前記ヒンダードアミン光安定剤を含む組成物である。組成物中における化合物(I)と化合物(II)との混合比は、一概に特定することはできないが、該組成物を後述する方法により重合して得られる重合体層の水接触角が45度以下となるような化合物の組み合わせおよびその混合比であれば特に制限はない。
【0041】
例えば、化合物(I)と化合物(II)とからなる組成物として、N-(2,3-ジヒドロキシ-プロピル)-(メタ)アクリルアミドおよび1-アクリロイルオキシ-3-メタクリロイルオ
キシ-2-ヒドロキシ-プロパンからなる組成物における、N-(2,3-ジヒドロキシ-プロピル
)-(メタ)アクリルアミドおよび1-アクリロイルオキシ-3-メタクリロイルオキシ-2-ヒ
ドロキシ-プロパンの使用割合が重量で2〜6:4〜8の範囲である場合、水接触角45
度以下、好ましくは水接触角10〜45度、特に好ましくは水接触角15〜40度の重合体の層を基材フィルムに設けることができる。
【0042】
紫外線吸収剤及びHALSの添加量は、特に限定はされないが、通常、一般式(1)で表される化合物(I)及び分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)との合計量:100重量部に対して、紫外線吸収剤を0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、HALSを0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の範囲で添加される。紫外線吸収剤の量が0.1重量部未満若しくはHALSの量が0.1重量部未満の組成物は、後述の方法で重合して得られる重合体の耐候性が改良されない虞があり、一方、紫外線吸収剤の量が10重量部を超える若しくはHALSの量が10重量部を超える組成物は、得られる重合体の耐候性が飽和するとともに、重合体層の硬化を阻害する虞がある。
【0043】
本発明に係る組成物は、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤が含まれているので、放射線を用いて重合させる場合は、波長405〜425nm域に出力ピークを有する放射線(紫外線)を用いることが好ましい。
〔基材層〕
本発明に係る基材層は、特に限定はされず、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂あるいは紙等の有機質材料からなる基材層あるいはガラス板、陶板、セラミック板、セメント板、金属板等の無機質材料からなる基材層を例示することができる。これら無機質基材層の中でも、ガラス板が透明性に優れるので好ましい。
【0044】
有機質基材層としては、種々公知のフェノール樹脂、不飽和エステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリオレフィン(例:ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート、ポ
リブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(例:ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エ
チレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等の熱可塑性樹脂あるいは紙等からなる基材層であり、シート状、フィルム状、発泡体等の
形状を有するものを例示することができる。これらの中でも、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂からなる有機質基材層が好ましい。有機質基材層には耐候性を付与するために、有機質基材層中に公知の耐候安定剤、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、オギザニリド系等の紫外線吸収剤を加えておくことが好ましい。かかる有機質基材層は、前記組成物を重合して得られる重合体層とのとの接着性(密着性)を改良するために、その表面を、たとえばコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理することが好ましい。
【0045】
これら有機質基材層の中でも、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等熱可塑性樹脂からなるフィルム、更には二軸延伸フィルムが透明性、機械的強度等に優れるので、有機質基材層として特に好ましい。
【0046】
本発明に係る無機質基材層は、ガラス板、陶板、セラミック板、セメント板、金属板等の無機質材料からなる層であれば特に限定はされないが、無機質基板としてガラス板を用いるとガラス板の透明性が活かされるので好ましい。
【0047】
かかるガラス板としては、特に限定されず、通常、建材用窓材、車両用窓材などに広く利用されているガラス板、強化ガラス板、合わせガラス板、金属網入りガラス板、熱線吸収ガラス板、さらには、熱線反射ガラス板あるいは低反射ガラス板などのような内面に金属や他の無機物を薄くコーティングしたガラス板等を例示することができる。また、ガラス板は必ずしも平板である必要はなく、曲面を有していてもよい。
〔積層体〕
本発明の積層体は、上記基材層の少なくとも片面に、前記一般式(1)で表される化合物(I)、前記分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、前記紫外線吸収剤及び前記ヒンダードアミン光安定剤を含む組成物を重合して得られる重合体、好ましくは水接触角が45度以下、より好ましくは10〜40度の重合体層が積層されてなる。
【0048】
なお、本発明において重合体層の水接触角は、製造した積層体からカバーフィルムを剥離した直後の、このカバーフィルムによって保護されていた重合体層の表面の水接触角である。この重合体層の水接触角は、未反応の化合物の残存量、重合開始剤及び重合促進剤などの量によって異なり、通常は、この層の表面を水で洗浄すると未反応の化合物等が洗い流されて幾分高くなる傾向がある。なお、組成物の重合(架橋)が充分に行われている限り、水で一度洗浄した後は、この層の水接触角は大きく変化はしない。
【0049】
基材層として、熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いてなる積層体は、基材層の他の片面(上記重合体が積層されていない面)に粘着層を積層しておいてもよい。基材層の他の片面に粘着層を積層しておくと、積層体を防汚フィルムとして用いる際に、防汚フィルムを看板、広告、案内板等の案内板、鉄道、道路等の標識、建物の外壁、窓ガラス等に容易に貼付することができるので好ましい。粘着層の厚さは通常2〜50μm、好ましくは5〜30μmの範囲にある。
【0050】
本発明の積層体は、粘着層面に剥離フィルムを積層しておいてもよい。粘着層面に剥離フィルムを積層しておくことにより、積層体を輸送、保管、陳列等をする際に、積層体の粘着層面が汚れるのを防ぐことができる。剥離フィルムの厚さは通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲にある。
【0051】
本発明の積層体は、後記の製造方法で用いるカバーフィルムを水接触角が45度以下の化合物(I)と化合物(II)との組成物を重合させてなる重合体層の保護層として積層体
を製造した後も積層しておくと、積層体を輸送、保管、陳列等をする際に、水接触角が45度以下の重合体層が傷ついたり、汚れたりするのを防ぐことができる。カバーフィルムの厚さは通常5〜100μm、好ましくは10〜40μmの範囲にある。
〔積層体の製造方法〕
本発明の積層体は、基材層の片面に、前記一般式(1)で表される化合物(I)、分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤を含有する組成物からなる塗布層を形成し、かかる化合物(I)および化合物(II)を重合させることにより製造することができる。
【0052】
前記の組成物を重合する方法に制限はなく、種々公知の方法、例えば、熱又は放射線を用いて重合反応を行いうるが、両者を併用してもよい。
前記の組成物の重合反応は大気下で行うこともできるが、窒素等の不活性ガス雰囲気下、あるいは空気を遮断した状態で行うのが重合時間を短縮させる点で好ましい。重合に際しては、通常、重合速度を向上させる目的で前記の組成物に公知の重合開始剤を添加することもできる。
【0053】
熱を用いて前記の組成物を重合させる場合、通常、該組成物に有機過酸化物等のラジカル発生剤を加え室温から300℃以下の範囲で加熱する。
放射線を用いて前記の組成物を重合させる場合、用いる放射線としては、波長領域が0.0001〜800nm範囲のエネルギー線であれば特に限定はされないが、α線、β線、γ線、X線、可視光、紫外線、電子線等が挙げられる。用いる放射線は、本発明に関わる組成物中に含まれる化合物に応じて適宜選択することができるが、波長領域が400〜800nmの範囲の可視光、50〜450nmの範囲の紫外線および0.01〜0.002nmの範囲の電子線が、取扱いが容易で一般的に普及しているので好ましい。重合反応に高いエネルギーが必要な場合等には、装置は高価だが電子線が用いられる場合が多い。また、前記の組成物の重合を電子線で行う場合、通常、重合開始剤は必要としない。
【0054】
前記の組成物の重合を紫外線で行う場合、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤、又は光ラジカル重合開始剤等公知の光重合開始剤が用いられ、中でも光ラジカル重合開始剤が好ましく用いられる。
【0055】
好ましく用いられる光重合開始剤としては、例えば、商品名;ダロキュアー1173(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、商品名;イルガキュアー651(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:スピードキュア
TPO(ラブソン・ファイン・ケミカル社製))、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-
フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュアー819(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製))、イルガキュアー500(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)、商品名;エサキュアーKT55(ランベルティー社製)、α―ヒドロキシケトン、アシルフォスフィンオキサイド、4-メチルベンゾフェノン及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノンの混合物(商品名;エサキュアーKTO46(ランベルティー社製)、商品名;エサキュアー1001(ランベルティー社製)が挙げられる。
【0056】
これら光重合開始剤の使用量は、重合して得られる重合体に対して、0.1〜20重量%の範囲が好ましく、0.2〜10重量%の範囲であればより好ましく、0.5〜5重量%の範囲であればさらに好ましい。
【0057】
本発明に係る組成物は上記方法でも重合し得るが、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤が含まれているので、放射線を用いて重合させる場合は、波長405〜425nm
域に出力ピークを有する放射線(紫外線)を用いることが好ましい。
【0058】
本発明の積層体の製造方法は、前記組成物からなる塗布層に放射線を照射するに際しては、該塗布層を該塗布層に接する面の水接触角が55度以下、好ましくは50度以下のカバーフィルムで被覆した後、放射線を照射して組成物塗布層を重合させる方法である。
【0059】
カバーフィルムで該塗布層を被覆する際には、該塗布層とカバーフィルムとの間に空気(酸素)を含まないように密着、即ち、組成物が酸素に触れないように空気を遮断することが好ましい。酸素を遮断することにより、組成物を塗布した層中の化合物(I)と化合物(II)とを重合させるに必要な光重合開始剤の量を少なくすることができ、且つ均一な重合体層が得られ、未反応の単量体等から生じる重合体層のベタツキを抑制することができるので好ましい。また、該塗布層とカバーフィルムとを密着させることにより、水接触角がより均一な重合体層が得られる。
【0060】
前記組成物からなる塗布層をカバーフィルムで被覆して放射線を照射する場合は、水接触角が55度以下、好ましくは50度以下のカバーフィルムを用いる必要がある。カバーフィルムとして水接触角が55度を超えるフィルムを用いた場合は、組成物を塗布した層中の化合物(I)と化合物(II)とを重合させて得られる重合体層の水接触角が45度を超え防汚性能が劣ったフィルムとなる。
【0061】
基材層の片面に前記組成物を塗布する方法としては、特に限定はされないが、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター;トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター;5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター、スピンコーター、スプレーコーター、及びスクリーン印刷方式、ディッピング方式、真空蒸着方式等種々公知の塗工機を用いて、化合物(I)、分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤を含有する組成物を0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmとなるように塗布すればよい。溶媒で稀釈した組成物を用いる場合は、乾燥状態で0.1〜20μm、好ましくは1〜10μmとなるように塗布した後、60〜130℃の温度で、10秒〜2分間乾燥する方法を例示できる。
【0062】
積層体の製造にカバーフィルムを用いる場合、カバーフィルムとしては、組成物に接する面の水接触角が55度以下のフィルムであれば制限はない。このようなカバーフィルムとしては、例えば、水接触角が55度以下の重合体、具体的にはポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系重合体;ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、前記一般式(1)で表される化合物(I)と分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(II)とからなる組成物を重合させて得られる重合体等からなるフィルムが挙げられる。
【0063】
なお、カバーフィルムは、前記ビニルアルコール系重合体等から得られる単層のカバーフィルムであっても、前記ビニルアルコール系重合体等と他のフィルムとの積層カバーフィルムであってもよい。ビニルアルコール系重合体等から得られる単層フィルムをカバーフィルムとして用いる場合は、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであってもよいし、一軸もしくは二軸延伸フィルムであってもよい。
【0064】
積層カバーフィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポ
リエステルフィルムと、前記ビニルアルコール系重合体あるいは化合物(I)と化合物(II)とからなる組成物を重合させて得られる水接触角が55度以下の重合体等との積層フィルムが挙げられる。
【0065】
また、カバーフィルムの組成物に接する面は平滑な表面であっても、エンボス加工等により表面がマット状に加工されたフィルムであってもよい。カバーフィルムとして組成物に接する面が平滑なフィルムを用いた場合は、表面光沢に優れた重合体層を有する積層体が得られる。一方、カバーフィルムとして組成物に接する面がエンボス加工されたフィルムを用いた場合は、マット性を有する重合体層を有する積層体が得られる。したがって、表面粗度が異なるカバーフィルムを適宜選択することにより、種々異なった表面粗度を有する積層体を得ることができる。
【0066】
カバーフィルムで被覆した後、組成物塗布層を重合させる場合は、前記記載の放射線を照射することにより重合させるが、本発明に係る組成物は、一般式(1)で表される化合物(I)、前記分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)及びヒンダードアミン光安定剤に加え、紫外線吸収剤を含むので、放射線として紫外線を使用する場合には、用いる紫外線として紫外線吸収剤と重複しない領域の波長を有する紫外線、例えば、400〜450nm領域の紫外線を選択したり、通常併用する、光カチオン重合開始剤、光アニオン重合開始剤又は光ラジカル重合開始剤等公知の光重合開始剤の励起される波長領域と組成物に添加される紫外線吸収剤が吸収する波長領域とが重複しないように、光重合開始剤と紫外線吸収剤を選択するのが好ましい。
【実施例】
【0067】
以下の実施例および参考例で得られた積層体(積層フィルム)の水接触角の測定、汚染性試験、耐候性試験、色差測定は以下の方法で実施した。
(1)水接触角
接触角測定器(Kyowa Interface Science社製、FACE CA−W)を用いて、精製
水(正起薬品工業社(株)製)を防汚フィルムの重合体層面に0.02ml水滴落下し、30秒後の接触角を測定した。
【0068】
なお、カバーフィルム自体の水接触角も同様に、測定した。
(2)汚染性試験
<汚染物質の作製>
エンジンオイル(ヤマハ発動機(株)製 商品名2サイクルオイル オートルーブスーパーオイル50gに、カーボンブラック(三菱化成(株)製カーボンブラック#40)を0.5g混合攪拌して汚染物質を用意した。
<被試験フィルムの設置>
積層フィルムから15cm×15cmの被試験フィルムを切出し、60度に傾斜させたスチール板に貼り付けた。
<汚染物質の塗布>
2ccのポリスポイトを用いて被試験フィルムの上端に1滴づつ幅方向にずらしながら汚染物質を7滴滴下し、汚染物質が被試験フィルムの下端付近に到達するまで放置した。
<汚染物質の洗浄>
汚染物質を滴下した被試験フィルムに、23℃の水道水を入れた霧吹き器(Canyon社製、Model T−7500)を用いて、被試験フィルムから15cmの距離から汚れの上端をめがけて幅方向に満遍なく10回吹き付け2分間放置し、この操作を5回繰り返した後、汚染物質の付着状態を次のような点数で評価した。
【0069】
5:汚染物質の付着が見られない。
4:僅かに汚染物質の付着が見られる。
3:部分的に汚染物質の付着が見られる。
【0070】
2:被試験フィルムの半分に汚染物質の付着が見られる。
1:全面に汚染物質の付着が見られる。
<繰返し試験>
汚染物質の塗布および洗浄を同じサンプルについて、3回繰り返し、1回目と3回目について汚染物質の付着状態を評価した。なお、繰り返し間は、洗浄により付着した水滴を除去し、ドライヤーで防汚フィルムの表面を乾燥した。
(3)耐候性試験
・試験機;スーパーUVテスターSUV−W13
・試験サイクル;照射24時間/結露24時間
・温度;照射時 63℃
・湿度;照射時 50%
・シャワー;結露前後に30秒噴射
・試験時間;240時間(5年相当)
(4)色差
ミノルタ CM-508d 透過法 視野 10°第一光源 D65
[実施例1]
2,3-ジヒドロキシ-プロピル-メタクリルアミド;4.0kg、3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシ-1-アクリロイルオキシ-プロパン;6.0kgの混合液に、光重合開始剤
としてエサキュアKTO46(オリゴ[2−ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパンと、2,4,6-トリメチルペンゾフェノン及び4−メチルベンゾフェノンの混合物と、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドとの混合物];1
00.0g、促進剤としてN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート;500.0g、紫外線吸収剤としてチヌビン400(2-(4、6-ビス(2、4-ジメチルフェニル)-1、3、5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルとオキシラン((C10-C16 主としてC12-C13アルキルオキシ)メチル)オキシランとの反応生成物85%と1-メトキシ-2-プロパノール 15%との混合物);200.0g(2重量%)、HALS(ラジカル補足剤)としてチヌビン123(デカンニ酸ビス(2、2、6、6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル
、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンとの反応生成物)200.0g(2重量%)加えて混合し、組成物を調製した。この組成物の配合比を表1に記載する。
【0071】
厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人社製:耐候性PET 商品名;テイジンHB3)からなる基材層の易接着面に、組成物として上記のように配合した液を、グラビアロール(格子;#200)を用い、リバースキッス方式で速度;5m/分で3.6g/m2塗布した。
【0072】
その後、塗布面を表1に示すカバーフィルムで空気が入らないように被覆し、それをUV照射装置(フュージョン社製 F600V Vバルブ)を用いて、UV強度 :2240mW/cm2(320〜390nm)、1400mW/cm2(280〜320nm)、70mW/cm2
250〜260nm)、4870mW/cm2(395〜445nm)、積算光量:1370mJ/cm2(320〜390nm)、860mJ/cm2(280〜320nm)、40mJ/cm2(250〜260nm)、2860mJ/cm2(395〜445nm)の条件でカバーフィルム面にUVを
照射して組成物層を重合させた後、40℃のオーブン中で1日エージングを行い、次いで、カバーフィルムを剥離して積層フィルムを得た。
【0073】
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1で用いたカバーフィルムAをBに代える以外は実施例1と同様に行い積層フィ
ルムを得た。
【0074】
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1で用いた組成物の紫外線吸収剤及びHALSの添加量をそれぞれ3%と1%に代える以外は実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
【0075】
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1で用いた組成物の紫外線吸収剤及びHALSの添加量をそれぞれ3%と1%に代え、且つカバーフィルムAをBに代える以外は実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
【0076】
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
〔実施例5〕
実施例1で用いた光重合開始剤Aを光重合開始剤Bに代え、且つカバーフィルムAをBに代える以外は実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
【0077】
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
〔実施例6〕
実施例1で用いた基材層に代えて、厚さ50μmのアクリル系フィルム(鐘淵化学工業製 商品名;サンデュレンHBT)を用い、且つカバーフィルムAをBに代える以外は実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
【0078】
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
〔参考例1〕
実施例1で用いた組成物に代えて、紫外線吸収剤及びHALSを含まない組成物を用いる以外は実施例1と同様に行い積層フィルムを得た。
【0079】
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
〔参考例2〕
基材フィルムAとして用いた厚さ50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人社製:耐候性PET 商品名;テイジンHB3)の評価結果を表1に示す。
【0080】
なお、表1に記載した化合物の内容は、次の通りである。
化合物1:N-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド。
化合物2:1-アクリロイルオキシ-3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシ-プロパン。
【0081】
光重合開始剤A:ランベルティー・ケミカル・スペシャルティ社製 商品名;エサキュアKTO46(オリゴ[2−ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロ
パンと、2,4,6-トリメチルペンゾフェノン及び4−メチルベンゾフェノンの混合物と、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドとの混合物)。
【0082】
光重合開始剤B:ラブソン・ファイン・ケミカル社製 商品名;スピードキュアTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)。
促進剤:N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート。
【0083】
紫外線吸収剤:チバスペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;TINUVIN 400〔2-(4、6-ビス(2、4-ジメチルフェニル)-1、3、5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと、オキシラン((C10-C16 主としてC12-C13アルキルオキシ)メチル)オキシランとの反応
生成物85%/1-メトキシ-2-プロパノール 15%〕。
【0084】
HALS:チバスペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;TINUVIN 123〔デカン
ニ酸ビス(2、2、6、6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、1、1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物〕。
【0085】
また表1に記載したカバーフィルムA及びBの内容ならびに組成物層との接触面は、次の通りである。
A:ポリビニルアルコール積層二軸延伸ポリプロピレンフィルム(東セロ(株)製 商品名A−OPBH 厚さ20μm、ポリビニルアルコール層の厚さ1.3μm)、ポリビニルアルコール塗布面。
【0086】
B:ポリビニルアルコールフィルム(東セロ(株)製 商品名VF LH 厚さ17μm、片面エンボス加工 エンボス面の光沢度;16%及び非エンボス面の光沢度;97%)、非エンボス面。
【0087】
また表1に記載した塗工基材フィルムA及びBの内容は、次の通りである。
A:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人社製:耐候性PET 商品名;テイジンHB3)厚さ50μm、片面易接着加工。
B:アクリル系フィルム(鐘淵化学工業製 商品名;サンデュレンHBT)厚さ50μm。
【0088】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の片面に、一般式(1)で表される化合物(I)、分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤を含む組成物を重合して得られる重合体からなる重合体層が形成されてなることを特徴とする積層体;
【化1】

(上記一般式(1)において、Gは水素原子またはメチル基を表し、JおよびQは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、-CH2OH、−CH2CH2OH、および、−CH2
H(OH)CH2OHよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の基または原子を表す。
ただし、上記式(1)で表される化合物において、JとQの組合せが同時に、水素原子と水素原子、水素原子とメチル基及びメチル基とメチル基となる場合を除く。)。
【請求項2】
上記基材層が無機質基材層である請求項1記載の積層体。
【請求項3】
上記無機質基材が、ガラス基材である請求項2記載の積層体。
【請求項4】
上記基材層が有機質基材層である請求項1記載の積層体。
【請求項5】
上記有機質基材が、熱可塑性樹脂フィルム基材である請求項4記載の積層体。
【請求項6】
上記重合体層が、水接触角が45度以下の重合体層である請求項1〜5の何れか1項に記載の積層体。
【請求項7】
上記積層体が、基材層の片面に、一般式(1)で表される化合物(I)、分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤を含有する組成物からなる塗布層を形成した後、当該塗布層の表面に、塗布層に接する面の水接触角が55度以下のカバーフィルムを被覆し、次いで該塗布層に放射線を照射することにより得られうるものであることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の積層体。
【請求項8】
基材層の少なくとも片面に、一般式(1)で表される化合物(I)、分子内に少なくとも1個の水酸基および2個以上の(メタ)アクロイルオキシ基を有する化合物(II)、紫外線吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤を含有する組成物からなる塗布層を形成し、該塗布層の表面を、塗布層に接する面の水接触角が55度以下のカバーフィルムで被覆した後、放射線を照射して組成物塗布層を重合させることを特徴とする積層体の製造方法;
【化2】

(上記一般式(1)において、Gは水素原子またはメチル基を表し、JおよびQは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、−CH2OH、−CH2CH2OH、および、−CH2CH(OH)CH2OHよりなる群から選ばれる少なくとも一種類の基または原子を表す。
ただし、上記式(1)で表される化合物において、JとQの組合せが同時に、水素原子と水素原子、水素原子とメチル基及びメチル基とメチル基となる場合を除く。)。
【請求項9】
カバーフィルムが、組成物塗布層と接する面にビニルアルコール系重合体からなる層を有するフィルムであることを特徴とする請求項8記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
上記放射線が波長405〜425nm域に出力ピークを有する放射線である請求項8記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項4または5記載の積層体からなる防汚フィルム。
【請求項12】
請求項11記載の防汚フィルムからなる被覆材。
【請求項13】
請求項11記載の防汚フィルムが表面に配置されてなることを特徴とする防汚性部材。
【請求項14】
請求項11記載の防汚フィルムを表面に積層してなる案内板もしくは標識。
【請求項15】
請求項11記載の防汚フィルムを表面に積層してなる外壁。
【請求項16】
請求項11記載の防汚フィルムを表面に積層してなる窓ガラス。

【公開番号】特開2006−15607(P2006−15607A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195670(P2004−195670)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】