説明

積層体およびその製造方法

【課題】不織布どうしまたはフィルムと不織布とを接着剤を使用せずに接着した積層体であって、異物や残留溶剤等が滲出することがなく、不織布本来の性能を低下させることなく互いが強固に接着した積層体を提供する。
【解決手段】第1の不織布またはフィルムと、第2の不織布とが積層した積層体であって、
前記第1の不織布またはフィルム、および第2の不織布の少なくとも一部で、前記第1の不織布またはフィルムを構成する原子と、前記第2の不織布を構成する原子との間に結合が形成されており、前記第1の不織布またはフィルムと、第2の不織布とが、接着剤を介さずに接着されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関し、さらに詳細には、不織布どうしまたはフィルムと不織布とを接着剤を介さずに接着した積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の種々の高分子材料を繊維化したものウェッブ状に形成した不織布が広く使用されている。これら不織布は、使用する高分子材料の特性や繊維の特性に応じてさまざまな機能を発現し、その機能が発揮できるような用途に使用される。
【0003】
各種不織布はそのまま単独で使用されることもあるが、異なる高分子材料からなる不織布どうしを重ね合わせて不織布の積層体としたり、不織布とフィルムとを貼り合わせて、より高機能を発現できるような形態に加工することも行われている。このような積層体を形成する場合、接着剤(ラミネート樹脂)を用いて、二種の不織布を重ね合わせたり、不織布とフィルムとを重ね合わせて接着することが行われている。また、不織布やフィルムの材料によっては、ヒートシール加工、すなわち、熱を加えて、一方または両方の繊維ないしフィルムを軟化、溶融させて、互いの材料を接着することが行われている。
【0004】
また、多機能フィルムとして、フッ素樹脂フィルムが知られている。フッ素樹脂フィルムは、優れた耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気絶縁性、難燃性等を有しており、種々の分野でこれらの機能を活かした使用がなされている。一方、フッ素樹脂フィルムは、使用用途によっては、機械的強度や寸法安定性等が不十分とされる場合があるため、上記したフッ素樹脂フィルムの長所を最大限に活かしつつ機械的強度や寸法安定性を改善するため、フッ素樹脂フィルムと不織布等の他の部材との積層化が試みられている。
【0005】
例えば、フッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布とを接着剤を介して積層することにより、上記の欠点を克服する試みがなされている。しかしながら、フッ素樹脂は、その表面エネルギーが小さく、撥水・撥油性を有するため、他方のフィルムとの接着性が低く、使用状況によっては剥離が生じてしまう場合がある。そのため、フッ素樹脂フィルムの接着性を改善するために、フッ素樹脂フィルムの表面にプラズマ放電処理やコロナ放電処理を行って表面改質を行い、樹脂フィルム表面に親水性の官能基(例えば、水酸基、カルボニル基、スルホン酸基等)を導入することが提案されている。
【0006】
しかしながら、上記のような処理を行うには、大掛かりな装置は必要となり、製造コストの増大を招く。また、フッ素樹脂フィルムの表面改質を行った後は、その経時劣化を防ぐため、すぐにラミネート接着を行わなければならないという制約も生じる。
【0007】
さらに、異種材料からなる不織布ないしフィルムをラミネート樹脂を介して接着して積層体とした場合、ラミネート樹脂が不織布の開口部分を塞いでしまい、不織布本来の性能が低下してしまうことがあった。また、ラミネート樹脂成分が徐々に積層体から外部に溶出または揮発する場合があり、特に、安全性やクリーン性が重視される医療用分野においては、これらフッ素樹脂フィルムと不織布との積層体を利用した材料において、接着剤成分による内容物の汚染が問題となることがあった。また、長期使用により接着剤自体が劣化することもあり、特に屋外等で使用される外装用途においては、積層体フィルムの耐候性が問題となることもあった。また、接着剤を用いたラミネート技術においては、一般的に溶剤に希釈した樹脂成分を塗布することが行われるため、ラミネートして包装体等のような最終製品となった後にも溶剤が残留してしまうことがあった。
【0008】
一方、不織布どうし、または不織布とフィルムとを貼り合わせてヒートシールして積層体を形成する場合には、ラミネート樹脂を使用しないため、上記のような問題は生じないものの、使用する材料によっては上記のようにヒートシールできなかったり、接着強度が弱く実用に耐えないといった場合があった。
【0009】
ところで、放射線や電子線を用いて材料の表面改質を行うことが従来から行われている。例えば、特開2003−119293号公報(特許文献1)には、フッ素系樹脂に放射線を照射することにより架橋複合フッ素系樹脂が得られることが提案されている。また、Journal of Photopolymer Science and Technology Vol.19, No. 1 (2006), pp123-127(非特許文献1)には、ポリテトラフルオロエチレンフィルムとポリイミドフィルムとを積層させて高温下で電子線(以下、EBと略す場合もある)を照射することにより、互いを接着することが提案されている。また、Material Transactions Vol.50, No.7 (2009), pp1859-1863(非特許文献2)には、ポリカーボネート樹脂の表面をナイロンフィルムで覆い、その上から電子線(以下、EBと略す場合もある)を照射することにより、ポリカーボネート樹脂表面にナイロンフィルムを接着する技術が提案されている。さらに、日本金属学会誌第72巻第7号(2008)、pp526−531(非特許文献3)には、シリコーンゴム上に置いたナイロンフィルムの上からEBを照射することにより、互いを接着できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−119293号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Journal of Photopolymer Science and Technology Vol.19, No. 1 (2006), pp123-127
【非特許文献2】Material Transactions Vol.50, No. 7(2009), pp1859-1863
【非特許文献3】日本金属学会誌第72巻第7号(2008)、pp526−531
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、今般、異種材料どうしを接着する場合であっても、フィルムに電子線を照射することにより、ラミネート樹脂等を用いることなく、互いを強固に接着できることを見いだした。そして、フッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布との積層体のように、従来、接着剤により互いを接着していた積層体であっても、電子線照射によれば、接着剤を使用しなくても、フッ素樹脂フィルム側の原子とポリオレフィン不織布側の原子との間に結合が形成されて、互いが強固に接着できる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0013】
したがって、本発明の目的は、不織布どうしまたはフィルムと不織布とを接着剤を使用せずに接着した積層体であって、異物や残留溶剤等が滲出することがなく、不織布本来の性能を低下させることなく互いが強固に接着した積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による積層体は、第1の不織布またはフィルムと、第2の不織布とが積層した積層体であって、
前記第1の不織布またはフィルム、および第2の不織布の少なくとも一部で、前記第1の不織布またはフィルムを構成する原子と、前記第2の不織布を構成する原子との間に結合が形成されており、前記第1の不織布またはフィルムと、第2の不織布とが、接着剤を介さずに接着されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の態様として、前記第1および第2の不織布が、ポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ポリエステル不織布、ポリ乳酸不織布、ポリウレタン不織布、液晶ポリマー不織布、ポリフッ化ビニリデン不織布、セルロース不織布、アラミド不織布、ビニロン不織布、およびレーヨン不織布からなる群より選択されることが好ましい。
【0016】
また、本発明の態様として、前記フィルムが、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、およびポリケトン樹脂からなる群より選択されることが好ましい。
【0017】
また、本発明の態様として、前記第1の不織布および第2の不織布の少なくとも一部で、前記第1の不織布を構成する原子と前記第2の不織布を構成する原子との間に結合が形成されており、前記第1の不織布と前記第2の不織布とが、接着剤を介さずに接着されていることが好ましい。
【0018】
また、本発明の態様として、前記フィルムおよび第2の不織布の少なくとも一部で、前記フィルムを構成する原子と前記第2の不織布を構成する原子との間に結合が形成されており、前記フィルムと前記第2の不織布とが、接着剤を介さずに接着されていることが好ましい。
【0019】
また、本発明の態様として、前記フィルムが多孔質フィルムであることが好ましい。
【0020】
また、本発明の態様として、前記フィルムが、ポリオレフィン多孔質フィルム、ポリウレタン多孔質フィルム、ポリケトン多孔質フィルム、およびポリイミド多孔質フィルムからなる群より選択されることが好ましい。
【0021】
また、本発明の態様として、前記フィルムがフッ素樹脂フィルムであり、前記第2の不織布がポリオレフィン不織布であり、
前記フッ素樹脂フィルムおよび前記ポリオレフィン不織布の少なくとも一部で、前記フッ素樹脂フィルム中の原子と前記ポリオレフィン不織布中の原子との間に結合が形成されており、前記フッ素樹脂フィルムと前記ポリオレフィン不織布とが接着剤を介さずに接着されていることが好ましい。
【0022】
また、本発明の態様として、前記フッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布中との原子の間に、酸素原子、窒素原子および/または水酸基を介して、結合が形成されていることが好ましい。
【0023】
また、本発明の態様として、前記フッ素樹脂フィルムが、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体樹脂、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体樹脂、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、フッ化ビニル系樹脂からなる群から選択される樹脂からなることが好ましい。
【0024】
また、本発明の態様として、前記ポリオレフィン不織布がポリプロピレン不織布またはポリエチレン不織布であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の別の態様としての積層体の製造方法は、第1の不織布またはフィルムと、第2の不織布との少なくとも一方の面に電子線を照射し、
前記電子線が照射された第1の不織布もしくはフィルム、および/または、第2の不織布を重ね合わせて接着する、ことを含んでなることを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の態様として、前記第1の不織布またはフィルムと前記第2の不織布とを重ね合わせる前および/または重ね合わせた後に電子線照射を行うことが好ましい。
【0027】
また、本発明の別の態様として、前記第1の不織布またはフィルムと前記第2の不織布との接着を加圧して行うことが好ましい。
【0028】
また、本発明の別の態様として、前記第1の不織布またはフィルムと前記第2の不織布との接着を加熱して行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、第1の不織布またはフィルムと、第2の不織布とが積層した積層体において、前記第1の不織布またはフィルム、および第2の不織布の少なくとも一部で、前記第1の不織布またはフィルムを構成する原子と、前記第2の不織布を構成する原子との間に結合が形成されているため、接着剤を介して接着していなくても、前記第1の不織布またはフィルムと、第2の不織布とが強固に接着した積層体が得られる。その結果、異物や残留溶剤等が滲出することがなく、不織布本来の性能を低下させることなく互いが強固に接着した積層体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の積層体の一実施形態を示した概略断面図である。
【図2】積層体の界面(接着面)を拡大した模式断面図である。
【図3】本発明による積層体の製造方法の一実施形態を示した概略模式図である。
【図4】製造工程の一部を拡大した概略模式図である。
【図5】本発明による積層体の製造方法の別の実施形態を示した概略模式図である。
【図6】本発明による積層体の製造方法の別の実施形態を示した概略模式図である。
【図7】本発明による積層体の製造方法の別の実施形態を示した概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明による積層体を、図面を参照しながら説明する。本発明による積層体は、第1の不織布またはフィルムと、第2の不織布とが接着剤を介さずに積層した構造を有する。以下、図面では、不織布とフィルムとの積層体を一例に説明する。
【0032】
図1は、不織布1とフィルム2とが接着剤を介さずに積層した構造を表した積層体の概略断面図である。図1に示した積層体は、不織布1およびフィルム2の接着面の少なくとも一部で、不織布1の原子とフィルム2の原子との間に結合が形成されることにより、不織布1とフィルム2とが強固に接着されている。通常、不織布1とフィルム2とを積層しても、両者の間に水素結合や共有結合が形成されないため接着剤を使用するか、ヒートシールしなければ両者を接着することはできない。特に、フッ素樹脂等からなるフィルムの表面は、表面張力が非常に小さい。また、一般的な樹脂フィルムやポリオレフィン等からなる不織布の表面には、水酸基等の水素結合に関与するような官能基も存在しないため、接着剤を使用しなければ両者を接着することはできない。本発明においては、後記するように、フィルムおよび/または不織布の表面に電子線を照射してラジカルを発生させることにより、不織布を構成する原子とフィルムを構成する原子との間に結合が形成され、接着剤を介することなく、不織布1とフィルム2とが強固に接着したものである。例えば、フィルムとしてフッ素樹脂等からなるフィルムを用い、不織布として一般的なポリオレフィン不織布を用いた場合、図2に示すように、フッ素樹脂フィルム2中の炭素原子とポリオレフィン不織布1中の炭素原子との間、あるいは、フッ素樹脂フィルム2中のフッ素原子とポリオレフィン不織布1中の炭素原子との間に共有結合が形成され、接着剤を介することなく、フッ素樹脂フィルム2とポリオレフィン不織布1とを強固に接着することができる。また、フッ素樹脂フィルムやポリオレフィン不織布の表面は、その表面が酸化されてO原子が存在する場合もあり、この場合、電子線を照射して両フィルムを接着すると、その界面には、C−O−C、C−O−O−Cなどの共有結合が形成される場合もある。さらに、電子線照射により発生したラジカルと空気中の酸素原子や窒素原子とが結合して、フィルム表面には酸素原子、窒素原子および/または水酸基が存在することがあり、その場合、酸素原子、窒素原子および/または水酸基を介して両者の間で結合が形成される場合もある。なお、電子線照射によりラジカルの発生は、電子スピン共鳴装置(以下、ESRともいう。)を用いて、電子線照射後のフィルムに存在するフリーラジカル種を同定することにより、その発生を確認することができる。
【0033】
フッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布との間に、原子間で結合が形成されていることは、X線光電子分析装置(以下、XPSともいう。)やフーリエ変換赤外分光装置(以下、FTIRともいう。)により確認することができる。例えば、フッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布とを接着する前に、それぞれの表面状態をXPSにより測定することにより、接着前に、各表面にどのような原子が存在するか確認しておき、両者を電子線照射により接着して積層体とした後に積層体を強制的に剥離してフッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布とに分離し、再度、それぞれの表面状態をXPSにより測定して各フィルムの表面にどのような原子が存在するか確認する。その結果、ポリオレフィン不織布側にフッ素樹脂フィルム由来の原子(すなわち、フッ素原子)が存在するか、または、フッ素樹脂フィルム側表面にフッ素原子が存在せず、ポリオレフィン不織布由来の原子で表面が覆われていることを確認することで、両者の間に共有結合が形成されているかどうかの確認ができる。また、FTIRを用いて、剥離した後のポリオレフィン不織布の表面に、C−F結合等の共有結合が存在するかどうかを確認してもよい。
【0034】
また、電子線照射によりフッ素樹脂フィルム2とポリオレフィン不織布1とを接着した積層体は、図2に示すように、フッ素樹脂フィルムやポリオレフィン不織布中の炭素原子に、酸素原子、窒素原子および/または水酸基が結合しており、それらを介して水素結合が形成されている。本発明による積層体は、このような水素結合や上記した共有結合により、フッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布とが接着されているため、接着剤を全く使用しなくても、剥離を生じない積層体とすることができる。水素結合の存在の確認は、積層体を水またはアルコール溶液中に浸積して剥離の有無を確認することにより行うことができる。水素結合のみによって両者が接着している場合、積層体を水またはアルコール溶液中に浸積すると、両者の原子間に形成されていた水素結合が破壊されて水またはアルコールの水素原子または酸素原子と水素結合が再形成されるため、接着力がなくなり両フィルムが剥離する。
【0035】
以下、本発明による積層体を構成する不織布およびフィルムについて、説明する。
【0036】
<不織布>
本発明において使用できる不織布としては、電子線照射によりラジカルが発生するような材料であれば特に制限なく使用することができる。例えば、ポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ポリエステル不織布、ポリ乳酸不織布、ポリウレタン不織布、液晶ポリマー不織布、ポリフッ化ビニリデン不織布、セルロース不織布、アラミド不織布、ビニロン不織布、レーヨン不織布等が挙げられる。
【0037】
ポリオレフィン不織布としては、ポリオレフィン樹脂からなる繊維を不織布としたものを使用できる。ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の単体、または、ポリプロピレンと低密度ポリエチレンとの混合物や、ポリプロピレンと高密度ポリエチレンとの混合物からなる樹脂を用いることができる。また、本発明において用いられるポリオレフィン不織布としては、芯鞘構造を有する複合繊維からなる不織布であってもよく、例えば、芯がポリアミド樹脂やポリアミド樹脂等からなり、鞘が上記したポリオレフィン樹脂からなる複合繊維なども好適に使用することができる。ポリオレフィン不織布として、市販のものを使用してもよく、例えば、エルタスシリーズ(旭化成せんい株式会社製)やエルベス(ユニチカ株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0038】
ポリアミド不織布としては、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体等の脂肪族系ポリアミド樹脂や、パラ系やメタ系のアラミド樹脂等の芳香族系ポリアミド樹脂からなる繊維を不織布としたものを使用できる。また、本発明において用いられるポリアミド不織布としては、芯鞘構造を有する複合繊維からなる不織布であってもよく、例えば、芯がポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂等からなり、鞘が上記したポリアミド樹脂からなる複合繊維なども好適に使用することができる。ポリアミド不織布として、市販のものを使用してもよく、例えば、エルタスシリーズ(旭化成せんい株式会社製)やナイエース(ユニチカ株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0039】
ポリエステル不織布としては、ポリエステル樹脂からなる繊維を不織布としたものを使用できる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等からなる樹脂を用いることができる。本発明において用いられるポリエステル不織布としては、芯鞘構造を有する複合繊維からなる不織布であってもよく、例えば、芯がポリオレフィン樹脂やポリアミド樹脂等からなり、鞘が上記したポリエステル樹脂からなる複合繊維なども好適に使用することができる。ポリエステル不織布として、市販のものを使用してもよく、例えば、エルタスシリーズ(旭化成せんい株式会社製)やマリックスシリーズ(ユニチカ株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0040】
ポリ乳酸不織布としては、ポリ乳酸繊維を不織布としたものを使用できる。ポリ乳酸繊維は、ポリ乳酸を溶融紡糸等により繊維化することにより得ることができる。市販のものを使用してもよく、例えば、TERRAMAC(ユニチカ株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0041】
ポリウレタン不織布としては、ポリウレタン繊維を不織布としたものを使用できる。ポリウレタン繊維は、スパンデックスとも言われる弾性繊維であり、市販のものを使用してもよく、例えば、エスパンシオーネ(KBセーレン株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0042】
液晶ポリマー不織布としては、液晶ポリマーからなる繊維を不織布としたものを使用できる。液晶ポリマーとしては、ポリアリレート系液晶ポリマーが好ましく、例えば、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸とが重縮合したポリマー、フェノールと、フタル酸およびパラヒドロキシ安息香酸とが重縮合したポリマー、2,6−ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸とが重縮合したポリマー等が挙げられる。ポリアリレート系液晶ポリマー不織布として、市販のものを使用してもよく、例えば、ベクルス(クラレ株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0043】
ポリフッ化ビニリデン不織布としては、ポリフッ化ビニリデン樹脂からなる繊維を不織布としたものを使用できる。また、セルロース不織布としては、セルロース繊維を不織布としたものを使用できる。さらに、レーヨン不織布としては、レーヨン繊維を不織布としたものを使用できる。
【0044】
上記したような繊維から不織布を得る方法は特に制限されるものではなく、従来公知の方法により繊維から不織布を得ることができる。例えば、ローラーカード、フラットカード等のカード機を用いたり、エアレイと呼ばれる空気流により、短繊維を一定方向またはランダムに並べてウェッブを形成する乾式法、短繊維を媒体中に分散させてネット上に漉き上げてフリースを形成して乾燥させる湿式法などにより不織布を形成することができる。得られたウェッブは、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法等、適宜使用する材料に応じた交絡法を適用して不織布に成形することができる。また、スパンボンド法、メルトブロー法、溶剤系によるフラッシュ紡糸法などの従来公知の方法を適宜選択して行えばよい。
【0045】
また、必要に応じて、不織布には、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤等、従来公知の各種添加剤を適宜添加することができる。光安定剤、紫外線吸収剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、フェノール系、リン系、ヒンダードアミン系の光吸収剤や、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系の紫外線吸収剤が使用できる。
【0046】
<フィルム>
本発明において使用できる不織布としては、電子線照射によりラジカルが発生するような材料であれば特に制限なく使用することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリケトン樹脂等からなる樹脂をフィルムないしシート化したものを使用することができる。
【0047】
ポリオレフィン樹脂フィルムとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等の単体、または、ポリプロピレンと低密度ポリエチレンとの混合物や、ポリプロピレンと高密度ポリエチレンとの混合物からなるフィルムを用いることができる。また、ポリメチルペンテンは、ガス透過性、耐薬品性、耐油性などに優れた性能を有するものである。このような樹脂フィルムとしては、市販のものを使用してもよく、例えばTPXフィルム(三井化学株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0048】
ポリアミド樹脂フィルムとしては、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体等の脂肪族系ポリアミド樹脂や、パラ系やメタ系のアラミド樹脂等の芳香族系ポリアミド樹脂からなるフィルムを用いることができる。これらのなかでも、汎用性フィルムであるナイロン6からなるフィルムを好適に使用することができる。また、ポリアクリロニトリル樹脂フィルムと接着する面がナイロンとなるような、ナイロン積層フィルムであってもよい。
【0049】
ポリアクリロニトリル樹脂フィルムは、酸素非透過性、耐薬品性、保香性などに優れた性能を有するものである。ポリアクリロニトリル樹脂としては、アクリロニトリル単独重合体のみならず、アクリロニトリルと共重合可能な化合物を1種または2種以上と共重合したものであってもよい。このような化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、ニトリルゴム(NBR)等のゴム成分、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル類、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、アクリルアミド、ビニルピロリドン等のビニルアミド類、スチレン等のビニル芳香族化合物類、ビニルカルボン酸類、ビニルスルホン酸類等が挙げられる。共重合する化合物の割合は、30モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましい。
【0050】
ポリイミド樹脂フィルムは、芳香族テトラカルボン酸無水物と芳香族ジアミンとを縮重合してポリイミドの前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)を生成し、得られたポリアミド酸を加熱または触媒を用いてイミド化した重合体を製膜化したものである。
【0051】
芳香族テトラカルボン酸無水物はカルボン酸無水物を含むものであり、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物の二無水物が挙げられる。
【0052】
また、芳香族ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4’−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、ビス(トリフルオロメチル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等が挙げられる。
【0053】
上記した芳香族テトラカルボン酸無水物および芳香族ジアミンの組み合わせのなかでも、ピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとから得られる芳香族ポリイミド樹脂を好適に使用することができる。
【0054】
ポリイミド樹脂には、性能を損なわない範囲で必要に応じて、熱安定剤、難燃剤等の各種添加剤を製造工程中あるいはその後の加工工程において添加することができる。
【0055】
上記したポリイミド樹脂からフィルムを製造する方法は、特に制限はなく公知の方法を採用でき、例えば、重縮合して得られたポリアミド酸溶液を、基材上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により適当な厚さに塗工した後、100〜300℃の温度で加熱して、溶媒の除去とイミド化を行い、フィルム状のポリイミド樹脂を得ることができる。
【0056】
ポリイミド樹脂フィルムは、市販のものを使用してもよく、例えば、カプトン(東レ・デュポン社製)やアピカル(鐘淵化学工業社製)等を好適に使用できる。
【0057】
ポリフェニレンサルファイド樹脂は、フェニル基(ベンゼン環)とイオウ(S)が交互に繰り返される分子構造を持つ芳香族ポリマーである。アリーレン基としては、p−フェニレンの他に、例えばm−フェニレン、ナフチレン基などさまざまなものが知られているが、その耐熱性、加工性、経済的観点から言ってもp−フェニレンスルフィドの繰返し単位が最も優れる。なお、本発明においては、ポリフェニレンサルファイド樹脂とは、フェニル基(ベンゼン環)とイオウ(S)が交互に繰り返される分子構造を持つもののほか、ポリマーの繰り返し単位のうち30モル%未満、好ましくは10モル%未満であれば、重合可能なスルフィド結合を有する繰り返し単位を含有していてもよい。
【0058】
ポリフェニレンサルファイドは、極性有機溶媒中で、アルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物を重合反応させる方法により得ることができる。アルカリ金属硫化物は、例えば、硫化ナトリウム、硫化リチウム、硫化カリウム等、あるいはこれらの混合物などが使用することができる。これらの中でも硫化ナトリウムが最も経済的に優れることから一般的に用いられる。また、ジハロ化合物としては、例えば、p−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼンなどのジハロベンゼン、1,4−ジクロロナフタレン等のジハロナフタレン、その他、ジハロ安息香酸、ジハロベンゾフェノン、ジハロフェニルエーテルなどを上げることができるが、物性および経済的観点よりp−ジクロロベンゼンが最も好ましく使用される。分岐構造を得るために1分子当り2個ではなく3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を少量併用してもよいが、本発明においては、直鎖状のポリp−フェニレンサルファイドを好適に使用することができる。
【0059】
ポリフェニレンサルファイド樹脂には、性能を損なわない範囲で必要に応じて、充填剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤等の添加剤を製造工程中あるいはその後の加工工程において添加することができる。
【0060】
上記したポリフェニレンサルファイド樹脂からフィルムを製造する方法は、特に制限はなく公知の方法を採用でき、例えば、溶融押し出し法、溶融プレス法などが挙げられる。
【0061】
ポリフェニレンサルファイド樹脂フィルムは、市販のものを使用してもよく、例えば、トレリナ(東レ社製)等を好適に使用できる。
【0062】
フッ素樹脂フィルムは、フッ素を含む樹脂からなるフィルムを意味し、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるパーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体樹脂(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体樹脂(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体樹脂(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等が挙げられる。これらの中でも、強度等の観点から、フッ化ビニル系樹脂およびテトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体樹脂(ETFE)が好ましい。また、市販のものを使用してもよく、テフロン(登録商標)、テフゼル(登録商標)、カルレッツ(登録商標)、ヴァイトン(登録商標)、フルオン(登録商標)、テドラー(登録商標)、ヘイラー(登録商標)、ハイラー(登録商標)、カイナー(登録商標)、テクノフロン(登録商標)、フルオン(登録商標)、アフレックス(登録商標)等の樹脂フィルムを好適に使用することができる。
【0063】
また、本発明においては、後記するポリオレフィン系樹脂フィルムとの接着面が、フッ素樹脂フィルムであればよく、したがって、フッ素樹脂フィルムと他の機能性フィルムとを積層した積層フィルムを用いることもできる。
【0064】
本発明においてはフィルムとして多孔質フィルムを使用してもよい。多孔質フィルムとしては、ポリオレフィン多孔質フィルム、ポリウレタン多孔質フィルム、ポリエーテルスルホン多孔質フィルム、フッ素樹脂多孔質フィルム、ポリケトン多孔質フィルム、ポリイミド多孔質フィルム等を好適に使用することができる。多孔質フィルムは、従来公知の方法により得ることができる。例えば、ポリエーテルスルホン多孔質フィルムポリエーテルスルホン樹脂を公知の方法により多孔質膜としたものであり、例えば特開昭60−41503号公報等に記載されているように、ポリエーテルスルホンを溶媒に溶解した製膜溶液から相分離法により作製することができる。
【0065】
製膜溶液としては、ジメチルアセテートやN,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジンなどの極性溶剤にポリエーテルスルホン樹脂を溶解させたものである。この製膜溶液を、ポリエステルフィルム等の支持体上に塗布して乾燥させた後、塗布膜を凝固液に浸漬し、乾燥することにより多孔質膜が得られる。製膜溶液に使用される上記の溶媒には、多孔質膜形成時の凝固速度を調節して、孔径や孔径分布を調節するためにメタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などを添加してもよい。
【0066】
凝固液としては一般的に水が用いられるが、ポリエーテルスルホンを溶解しない有機溶媒を用いても良い。これら有機溶媒としては、凝固速度や多孔質膜の孔径及びその分布を調節するために水と混和するものであればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらの中では孔径の多孔質膜中の均一さの点からエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類やN−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤が好ましい。
【0067】
また、フッ素樹脂多孔質フィルムは、例えば、フッ素樹脂の微粒子を押出成形によって製膜化し、延伸することにより細孔を形成するか、あるいはフッ素樹脂の微粒子を分散させたディスパージョンを押出成形し、得られた成形体を延伸、焼結することにより作製することができる。細孔の大きさや数は、特公昭42−013560号公報に記載のように、延伸する際の条件により調整することができる。フッ素樹脂多孔質膜として、市販のものを使用してもよく、例えば、ジャパンゴアテックス株式会社や住友電工ファインポリマー株式会社から上市されているものを好適に使用することができる。
【0068】
フッ素樹脂多孔質膜は、撥液処理が施されていてもよい。撥液処理は、樹脂多孔質膜に撥液剤を塗布し、乾燥後、熱処理することにより行うことができる。撥液剤は、樹脂多孔質膜よりも低い表面張力の被膜を形成できればよく、例えば、パーフルオロアルキル基を有する高分子を含む撥液剤が好適である。撥液剤の塗布は、浸漬、スプレーなどで行うことができる。
【0069】
上記したフィルムないし多孔質フィルムは、単層であってもよく、また異種材料を積層した多層フィルムであってもよい。また、一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよく、また、その厚さとしては、10〜200μm程度、特に、10〜100μm程度が好ましい。
【0070】
多層フィルムとして、上記したようなフィルムの一方の面にコート層を備えた積層フィルムを好適に使用できる。コート層は、プライマーコート剤、ウレタン系コート剤、ポリビニルアルコール系コート剤、ポリ塩化ビニリデン系コート剤、アクリル系コート剤、水溶性高分子−アルコキシシラン系複合コート剤からなる群から選択される塗布液を塗布・乾燥させることにより形成されるものでる。以下、各コート剤について説明する。
【0071】
プライマーコート剤は、積層体を得る際の各部材の密着性を向上させるために使用されている従来公知のプライマーコート剤およびアンカーコート剤を使用することができる。例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シラン化合物(シランカップリング剤)。フェノール系樹脂、金属キレート剤、レゾルシノール・ホルムアルデヒド、アクリルグラフト・クロロプレンゴム等が挙げられる。具体的には、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリウレタンポリ尿素樹脂を、イソシアネート系樹脂等の架橋剤によって架橋させたポリウレタン樹脂や、ポリウレタン樹脂の主鎖または側鎖にカルボン酸塩やスルホン酸塩などの親水基を導入した自己乳化性ポリウレタン系樹脂に、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、イミン系樹脂等の架橋剤を添加したもの、芳香族ジカルボン酸成分と、直鎖あるいは炭素数1以上の側鎖を有する脂肪族グリコールとを共重合させた共重合ポリエステル系樹脂に架橋剤としてイソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、酸無水物系樹脂等を添加したもの、不飽和二重結合を有するポリオール成分からなる熱硬化ポリウレタン樹脂、または、ポリエステルポリオールとジイソシアネートとからなる熱可塑性ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これら樹脂を水等の適当な溶剤に溶解させた塗布液を、熱可塑性樹脂フィルムの表面に塗布し、乾燥させることによりコート層を形成することができる。
【0072】
上記したプライマーコート剤は、熱可塑性樹脂フィルム上に設けられるものであるが、これらコート層が設けられた市販の積層フィルムを使用することもできる。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの一方の面に上記したようなプライマーコート層が設けられた積層フィルムとして、エンブレットPTM、エンブレットPTME(いずれもユニチカ社製)や、コスモシャインA4100、A4300(いずれも東洋紡績社製)等が挙げられる。また、ナイロン樹脂フィルムの一方の面に上記したようなプライマーコート層が設けられた積層フィルムとして、エンブレムONM、エンブレムNX(いずれもユニチカ社製)やハーデンフィルムNAP02(東洋紡績社製)等が挙げられる。
【0073】
ウレタン系コート剤としては、ウレタン樹脂またはウレタンアクリレート樹脂等を好適に使用することができる。ウレタンアクリレート樹脂は、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物とからなるオリゴマーをアクリレート化したものである。ウレタン系樹脂は、市販されているものを使用してもよく、例えば、タケラック(三井化学株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0074】
ポリビニルアルコール系コート剤としては、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。これらは市販のものを使用してもよく、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体として、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。また、ポリビニルアルコールとして、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)等を使用することができる。
【0075】
ポリ塩化ビニリデン系コート剤としては、塩化ビニリデンモノマーと塩化ビニル、アクリル酸エステル、アクリロニトリルなどのモノマーと乳化共重合した樹脂等を挙げることができる。これらは市販のものを使用してもよく、例えば、サランラテックス(旭化成ケミカルズ社製)等を好適に使用することができる。
【0076】
アクリル系コート剤としては、アクリル酸やメタクリル酸樹脂等が挙げられる。これらは市販のものを使用してもよく、例えば、ダイヤナールBR−83(三菱レイヨン社製)等を好適に使用することができる。
【0077】
上記した樹脂には、テトラメトキシシラン:Si(OCH 、テトラエトキシシラン:Si(OC 、テトラプロポキシシラン:Si(OC 、テトラブトキシシラン:Si(OC等のアルコキシシランが添加されていてもよい。上記したポリビニルアルコール樹脂またはエチレン−ビニルアルコール共重合体にアルコキシシランを混合し、さらに所望によりゾル−ゲル法触媒、水、および、有機溶剤を添加した溶液を、酸化アルミニウム薄膜の表面に塗布し、重縮合することにより、ガスバリア性の高いコート層が得られる。
【0078】
さらに、上記した樹脂には、層状クレイやモンモリロナイト等の無機フィラーや、ナノサイズの無機微粒子が添加されていてもよい。
【0079】
上記した樹脂を適当な溶剤に溶解または分散させた塗布液を熱可塑性樹脂フィルムまたは薄膜層上に塗布し、乾燥させることによりコート層を形成することができる。塗布方法としては、通常用いられる、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイツピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の従来公知の手段が用いられる。塗布膜の厚さは塗布液の種類によって異なるが、乾燥後の厚さは、約0.01〜100μm、好ましくは0.01〜50μmである。
【0080】
積層フィルムにおいては、フィルムと上記したコート層との間には、薄膜層が設けられていてもよい。薄膜層は、一般式:AlO(式中、xは、0.5〜1.5の数を表す。)で表される酸化アルミニウムの薄膜、または、一般式:SiO(式中、xは、0〜2の数を表す)で表される酸化ケイ素の薄膜を、熱可塑性樹脂フィルムの表面に形成したものである。上記一般式で表される酸化アルミニウムの薄膜として、膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってxの値が増加している酸化アルミニウムの薄膜を使用することもできる。上記において、xの値としては、基本的には、x=0.5以上のものを使用することができるが、x=1.0未満になると、着色し易く、かつ、透明性、電子レンジ適性に劣ることから、x=1.0以上のものを使用することが好ましい。上限としては、アルミニウムと酸素とが完全に酸化した状態のものであるx=1.5までのものを使用することができる。
【0081】
また、上記一般式で表される酸化ケイ素の薄膜として、xの値は1.3〜1.9が好ましい。また、酸化ケイ素薄膜は、酸化珪素を主体とし、さらに、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有してもよい。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiHシリル、SiHシリレン等のハイドロシリカ、SiHOHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。上記の化合物が酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50質量%、好ましくは5〜20質量%である。また、酸化ケイ素薄膜が上記化合物を含有する場合、化合物の含有量が酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、酸化珪素の蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、基材フィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルムと酸化珪素の蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
【0082】
薄膜層の膜厚としては、例えば、10〜3000Å程度、特に、60〜1000Å程度の範囲内で任意に選択して形成することが好ましい。薄膜層は、結晶質のものでも非結晶質のものでもよい。
【0083】
フィルム上に薄膜層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。なお、包装用材料に用いられる透明積層体からなるフィルムを製造する場合には、主に、真空蒸着法を用い、一部、プラズマ化学気相成長法も用いられる。
【0084】
また、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。酸化アルミニウム薄膜が、その膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってxの値が増加している酸化アルミニウムの薄膜を形成する場合は、本出願人による特開平10−226011号公報に開示された方法により製造することができる。蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10−2〜10−8mbar程度、特に、10−3〜10−7mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10−1〜10−6mbar程度、特に10−2〜10−5mbar程度が好ましい。なお、酸素導入量等は、蒸着機の大きさ等によって異なる。導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。基材となる熱可塑性樹脂フィルムの搬送速度としては、10〜800m/分程度、特に50〜600m/分程度が好ましい。また、上記したような、化合物の含有量が酸化珪素の蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少している酸化ケイ素薄膜層は、出願人による特開2008−143097号公報に記載されたような方法により、形成することができる。
【0085】
また、本発明においては、上記のようにして形成した薄膜層の表面に酸素プラズマ処理を施してもよい。酸素プラズマ処理のために導入する酸素の量は、蒸着機の大きさ等によって異なるが、通常50sccm〜2000sccm程度であり、300sccm〜800sccm程度が特に好ましい。ここで、sccmは標準状態(STP:0℃、1atm)での1分当りの酸素の平均導入量(cc)を意味する。導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。以上、熱可塑性樹脂フィルム上に酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素からなる薄膜を形成する方法、および、所望により酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素からなる薄膜の表面を酸素プラズマ処理する方法を説明したが、これらは一例であって、本発明がこれらの方法により得られたものに限定されるものではない。
【0086】
上記したフィルム(多孔質フィルムや積層フィルムを含む)の厚さとしては、10〜200μm程度、特に、10〜100μm程度が好ましい。
【0087】
上記したようなフィルムないし不織布を重ね合わせて接着した積層体は、積層体を使用する際にも異物や残留溶剤等が滲出することがなく、また耐候性にも優れている。また、不織布どうしまたはフィルムと不織布とが接着剤を介して積層されていないため、不織布の開口部分を塞ぐことがないため、不織布本来の性能を維持することができる。
【0088】
<積層体の製造方法>
次に、上記したような積層体を製造する方法を、ポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2との積層体を製造する例を一例として、図面を参照しながら説明する。先ず、上記したポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2とを準備し(図3(1))、両者のいずれか一方または両方の、接着しようとする部分に電子線を照射する(図3(2))。その結果、図3(3)に示すように、電子線が照射された部分のみ、互いのフィルムが接着される。
【0089】
本発明においては、フィルムに電子線を照射した直後に、図4に示すようにローラー6等を用いて、重ね合わせたポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2を押圧することが好ましい。両者1,2の表面は、図4に示すようにミクロレベルで凹凸があるため、両者1,2を重ね合わせても完全に密着しておらず、両者の接触界面での接触面積が小さい。本発明においては、電子線を照射した直後にローラー6等でフィルム1,2を押圧することにより、両者の接着面での接触面積が増加するため、密着性が向上する。
【0090】
ポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2とを重ね合わせた後、両者1,2を押圧する際には、加熱しながら両者1,2を押圧することが好ましい。加熱しながら押圧することにより、ポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2の柔軟性が向上し、両者1,2の界面(接着面)での接触面積をより増加させることができるため、密着性がより向上する。加熱する温度は、使用する材料の種類にもよるが、フィルムおよび/または不織布が熱変形できる温度であればよく、例えば、フィルムや不織布を構成する樹脂のガラス転移温度以上に加熱することができる。例えば、フッ素樹脂フィルムとポリプロピレン不織布とを重ね合わせる場合には、加熱温度は80〜180℃、好ましくは100〜160℃である。加熱温度を高くしすぎると、発生したラジカルが失活してしまい、強固な結合を実現できなくなる。なお、押圧の力(接圧)を高くしてもよく、接圧を高くすることにより、加熱温度を低くすることができる。
【0091】
ポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2とを重ね合わせて押圧するには、上記したようにヒートローラ6等を好適に使用できる。また、図4に示すように、重ね合わせた積層物がヒートローラ6と支持ローラー7との間で圧接可能となるように、ヒートローラ6と対向する位置に支持ローラー7を載置してもよい。このようにヒートローラ6と対向する位置に支持ローラー7を載置することにより、積層体(ポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2の積層物)とヒートローラ6との接触を線接触に近づけて、ヒートローラ6からの熱により積層体に発生する変形を最小限に抑えることができる。
【0092】
図5は、本発明による別の製造方法の実施形態を示した概略図である。ポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2とを重ね合わせて接着する工程において、ポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2とを、それぞれガイドローラにより電子線照射位置3まで導き、電子線4を両者1,2に照射した後にヒートローラ6により互いの両者1,2を押圧する工程を連続的に行うものである。ポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2のそれぞれはロール状形態として供給されてもよい。
【0093】
電子線照射装置3から、ポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2のそれぞれに電子線4を照射する場合、厚みがより小さい方の材料側から電子線4を照射することが好ましい。電子線は加速電圧が増加するほどその透過力も増大する性質を有しているため、何れか一方の材料側から電子線を照射した場合に、材料の厚さによっては、他方のフィルムまたは不織布まで電子線が届かないことがある。その場合には、電子線の加速電圧を増加させることにより、他方の材料の深部まで電子線を到達させることができるが、電子線エネルギーが高くなるにしたがって、樹脂からなる材料(フィルムや不織布)自体に不必要な照射が行われ劣化させてしまう。そのため、厚肉の不織布と薄肉のフィルムとを重ね合わせて接着する際には、電子線エネルギーをそれほど増大させることなく、薄肉のフィルム側から電子線を照射するのが好ましい。例えば、フッ素樹脂フィルムの厚みが25μm以下であり、ポリオレフィン不織布の厚みが50μm以上である場合は、フッ素樹脂フィルム側から電子線を照射する。このような電子線照射方法を採用することにより、フィルムや不織布の劣化を最小限に留めることができる。
【0094】
重ね合わせる材料1,2が両方とも厚肉である場合には、図5に示すように両方の材料側から電子線が照射できるように、電子線照射装置3と対向する位置に、別の電子線照射装置3’を設けてもよい。この態様によれば、材料の厚みに応じて電子線の照射エネルギーを調整することができるため、フィルムや不織布を劣化させることなく互いを接着することができる。
【0095】
図6は、本発明による別の製造方法の実施形態を示した概略図である。この実施態様においては、電子線の照射が、ポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2とを重ね合わせる前に行われる。先ず、供給されてきた一対の材料(ポリオレフィン不織布1およびフッ素樹脂フィルム2)は、両者1,2が重ね合わされる前に、電子線照射装置3(3’)により、不織布1(フィルム2)へ電子線4(4’)が照射される。図5に示した実施形態では、不織布1およびフィルム2の電子線照射側と反対側の面どうしが対向するように両者1,2を重ね合わせたのに対し、図6に示す実施態様では、両者1,2の電子線照射側の面どうしが対向するように両者1,2を重ね合わせる点が相違している。このように、不織布1へ電子線を照射した側の面に他方のフィルム2を重ね合わせることにより、フィルムや不織布の厚みによらず、電子線の照射エネルギーをより小さくすることができ、その結果、フィルムや不織布の電子線照射による劣化をより低減することができる。
【0096】
また、図6に示した実施態様においても、一対の電子線照射装置3,3’を設けて、図5に示した実施態様と同様に、ポリオレフィン不織布1およびフッ素樹脂フィルム2のそれぞれへ電子線4,4’を照射してもよい。これらの組み合わせにより、よりフィルムや不織布の劣化を少なくして接着強度を向上させることができる。
【0097】
図7は、本発明による別の製造方法の実施形態を示した概略図である。この実施形態においては、ポリオレフィン不織布1とフッ素樹脂フィルム2とを重ね合わせてヒートローラ6により押圧した後に電子線照射を行うものである。先ず、供給されてきた一対の材料1,2は、ガイドローラに導かれて重ね合わされる。続いて、ヒートローラ6と支持ローラー7とにより両者1,2が押圧されるとともに、ヒートローラ6により加熱が行われる。その後、電子線照射装置3により不織布1およびフィルム2の表面に電子線4が照射されて両者1,2の接着が連続的に行われる。また、図7に示した実施形態においても、一対の電子線照射装置3,3’を設けて、図5及び6に示した実施態様と同様に両方の材料1,2へそれぞれ電子線4,4’を照射してもよい。これらの組み合わせにより、よりフィルムや不織布の劣化を少なくして接着強度を向上させることができる。
【0098】
電子線の照射エネルギーは、上記したようにフィルムや不織布の厚み等に応じて適宜調整する必要がある。本発明においては、20〜750kV、好ましくは25〜400kV、より好ましくは30〜300kV程度の照射エネルギー範囲で電子線を照射するが、より低い照射エネルギーとすることが好ましく、40〜200kVとすることができる。このように低い照射エネルギーとすることにより、フィルムや不織布の劣化を抑制できるだけでなく、フィルムや不織布表面のラジカル発生がより効率的におこるため、より強固な結合を実現することができる。また、電子線の吸収線量は、10〜2000kGy、好ましくは20〜1000kGyの範囲で行う。
【0099】
このような電子線照射装置としては、従来公知のものを使用でき、例えばカーテン型電子照射装置(LB1023、株式会社アイ・エレクトロンビーム社製)やライン照射型低エネルギー電子線照射装置(EB−ENGINE、浜松ホトニクス株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0100】
電子線を照射する際には、酸素濃度を100ppm以下とすることが好ましい。酸素存在下で電子線を照射するとオゾンが発生するため環境に悪影響を及ぼすとともにフッ素樹脂フィルムの表面がオゾンと反応してフィルムの表面特性が変化してしまう場合があるからである。酸素濃度を100ppm以下とするには、真空下または窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下において、フィルムおよび/または不織布に電子線を照射すればよく、例えば、電子線照射装置内を窒素充填することにより、酸素濃度100ppm以下を達成することができる。
【0101】
上記した接着方法によって得られた、フッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布と積層した積層体は、従来のラミネート樹脂を用いて接着した場合と同等またはそれ以上の接着強度を実現できる。また、ラミネート樹脂等を全く用いていないため、積層体を使用する際にも異物や残留溶剤等が滲出することがなく、また耐候性にも優れ、さらに、不織布の開口を塞ぐことなく、本来の性能を発揮することができる。
【実施例】
【0102】
<ポリオレフィン不織布とフッ素樹脂フィルムとの積層体>
実施例A1
(1)不織布およびフィルムの準備
ポリオレフィン不織布として、下記の2種の不織布を準備した。また、フッ素樹脂フィルムとして、厚み50μmのエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルム(アフレックス50N、旭硝子株式会社製)を準備した。
A:ポリプロピレン不織布(ELTASポリプロピレンP03070(旭化成せんい株式会社製)
B:ポリオレフィン系不織布(エルベスS0403WDO、ユニチカ株式会社製)
【0103】
(2)積層体の作製
上記した不織布およびフィルムを、それぞれ150mm×90mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0104】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0105】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両者の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両者を接着して積層体を得た。
【0106】
実施例A2
実施例A1において、電子線の吸収線量を400kGyとした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0107】
実施例A3
実施例A1において、ポリプロピレン不織布Aをポリオレフィン系不織布Bに代えて、電子線の加速電圧を60kVに変更した以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0108】
実施例A4
実施例A3において、電子線の吸収線量を400kGyとした以外は実施例3と同様にして積層体を得た。
【0109】
比較例A1
電子照射を行わなかった以外は実施例A1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はフッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布とが接着していなかった。
【0110】
比較例A2
比較例A1において、ポリプロピレン不織布Aをポリオレフィン系不織布Bに代えた以外は比較例A1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はフッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布とが接着していなかった。
【0111】
比較例A3
実施例A3で用いたポリオレフィン系不織布Bとフッ素樹脂フィルムとを用いて、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(タケラックA−3、三井化学株式会社製)を介して貼り合わせた。しかしながら、フッ素樹脂フィルム側に接着剤を塗布することができず、積層体を得ることができなかった。
【0112】
(3)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例A1およびA2の積層体は、フッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布とが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表A1に示される通りであった。
【0113】
また、実施例A1〜A4の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表A1に示される通りであった。
【0114】
【表1】

【0115】
表A1の評価結果からも明らかなように、実施例A1およびA2の積層体は、水中保管後も、空気中で測定した接着強度と同様の接着強度を有している。この結果から、実施例A1〜A4の積層体は、フッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布とが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。
【0116】
<液晶ポリマー不織布とポリオレフィン樹脂フィルムとの積層体>
実施例B1
(1)不織布およびフィルムの準備
液晶ポリマー不織布として、厚み24μmのベクルスMBBCZSO(クラレ株式会社製)を準備した。また、ポリオレフィン樹脂フィルムとして、下記の下2種類のフィルムを準備した。
A:ポリプロピレン樹脂(PF380A、サンアロマー株式会社製)を厚み70μmに製膜したフィルム
B:厚さ50μmのポリメチルペンテン樹脂フィルム(TPXフィルム、X−88B、三井化学株式会社製)
【0117】
<積層体の作製>
上記した不織布およびフィルムを、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0118】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0119】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両者の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両フィルムを接着して積層体を得た。
【0120】
実施例B2
実施例B1において、使用する樹脂フィルムを下記の表B1に示す組み合わせとした以外は、実施例B1と同様にして積層体を得た。
【0121】
比較例B1
電子照射を行わなかった以外は実施例B1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体は液晶ポリマー不織布とポリオレフィン樹脂フィルムとが接着していなかった。
【0122】
比較例B2
電子照射を行わなかった以外は実施例B2と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体は液晶ポリマー不織布とポリオレフィン樹脂フィルムとが接着していなかった。
【0123】
(2)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例B1の積層体は、液晶ポリマー不織布とポリオレフィン樹脂フィルムとが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表B1に示される通りであった。
【0124】
【表2】

【0125】
表B1の評価結果からも明らかなように、電子線を照射した実施例B1およびB2の積層体では、液晶ポリマー不織布とポリオレフィン樹脂フィルムとの間に接着が認められた。
【0126】
<ポリオレフィン不織布と積層フィルムとの積層体>
実施例C1
(1)バリア性フィルムの準備
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、蒸着装置を用いて、下記の条件にて、そのフィルムの一方の面に、膜厚20nmとなるように酸化ケイ素薄膜を形成した。
蒸着条件:
蒸着チャンバー内の真空度(酸素導入後):2×10−4mbar
巻き取りチャンバー内の真空度:5×10−3mbar
電子ビーム電力:25kW
【0127】
次いで、下記の組成Iからなるポリビニルアルコール溶液とイソプロピルアルコールとイオン交換水とを含む混合液に、下記組成IIからなる加水分解液を加えて充分に攪拌し、ガスバリア性保護層形成用塗工液と調製した。
組成I:
ポリビニルアルコール 2.33(質量%)
イソプロピルアルコール 2.70(質量%)
水 51.75(質量%)
【0128】
組成II(加水分解液):
エチルシリケート 16.60(質量%)
シランカップリング剤 1.66(質量%)
イソプロピルアルコール 3.90(質量%)
0.5N塩酸水溶液 0.53(質量%)
水 20.53(質量%)
合計 100.00(質量%)
【0129】
上記の塗工液を、酸化ケイ素薄膜上にグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、180℃で60秒間加熱処理を行い、厚み0.2μm(乾操状態)のガスバリア性保護層を形成することにより、バリア性フィルムを得た。
【0130】
(2)ポリオレフィン不織布の準備
ポリオレフィン不織布として、厚さ220μmのポリオレフィン不織布(エルベス S0303WDO、ユニチカ株式会社製)を準備した。
【0131】
(3)積層体の作製
準備したバリア性フィルム1およびポリオレフィン不織布を、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0132】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。なお、バリア性フィルムについては、ガスバリア性保護層形成面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0133】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両試料の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両試料を接着して積層体を得た。
【0134】
実施例C2
実施例C1において、電子線の照射条件を下記の表C1のように変えた以外は、実施例C1と同様にして積層体を得た。
【0135】
比較例C1
電子照射を行わなかった以外は実施例C1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はバリア性フィルムとポリオレフィン不織布とは接着していなかった。
【0136】
(4)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例C1の積層体は、バリア性フィルムとポリオレフィン不織布とが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表C1に示される通りであった。
【0137】
また、実施例C1およびC2の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表C1に示される通りであった。
【0138】
【表3】

【0139】
表C1の評価結果からも明らかなように、実施例C1およびC2の積層体は、水中保管後であっても、接着性を維持している。この結果から、実施例C1およびC2の積層体は、バリア性フィルムとポリオレフィン不織布とが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。したがって、間接的にではあるが、バリア性フィルムのガスバリア性保護層中の原子とポリオレフィン不織布中の原子との間で共有結合が形成されていると推認できる。
【0140】
<ポリアミド不織布と積層フィルムとの積層体>
実施例D1
(1)バリア性フィルムの準備
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、蒸着装置を用いて、下記の条件にて、そのフィルムの一方の面に、膜厚20nmとなるように酸化アルミニウム薄膜を形成した。
蒸着条件:
蒸着チャンバー内の真空度(酸素導入後):2×10−4mbar
巻き取りチャンバー内の真空度:5×10−3mbar
電子ビーム電力:25kW
【0141】
次いで、下記の組成Iからなるポリビニルアルコール溶液とイソプロピルアルコールとイオン交換水とを含む混合液に、下記組成IIからなる加水分解液を加えて充分に攪拌し、ガスバリア性保護層形成用塗工液と調製した。
組成I:
ポリビニルアルコール 2.33(質量%)
イソプロピルアルコール 2.70(質量%)
水 51.75(質量%)
【0142】
組成II(加水分解液):
エチルシリケート 16.60(質量%)
シランカップリング剤 1.66(質量%)
イソプロピルアルコール 3.90(質量%)
0.5N塩酸水溶液 0.53(質量%)
水 20.53(質量%)
合計 100.00(質量%)
【0143】
上記の塗工液を、酸化アルミニウム薄膜上にグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、180℃で60秒間加熱処理を行い、厚み0.2μm(乾操状態)のガスバリア性保護層を形成することにより、バリア性フィルムを得た。
【0144】
(2)ポリアミド不織布の準備
ポリアミド不織布として、厚さ160μmのポリアミド不織布(ナイエース N0303WTO(ユニチカ株式会社製)を準備した。
【0145】
(3)積層体の作製
準備したバリア性フィルムおよびポリアミド不織布を、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0146】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。なお、バリア性フィルムについては、ガスバリア性保護層形成面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0147】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両試料の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両試料を接着して積層体を得た。
【0148】
比較例D1
電子照射を行わなかった以外は実施例D1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はバリア性フィルムとポリアミド不織布とは接着していなかった。
【0149】
(4)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例D1の積層体は、バリア性フィルムとポリアミド不織布とが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表D1に示される通りであった。
【0150】
また、実施例D1の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表D1に示される通りであった。
【0151】
【表4】

【0152】
表D1の評価結果からも明らかなように、実施例1の積層体は、水中保管後であっても、接着性を維持している。この結果から、実施例1の積層体は、バリア性フィルムとポリアミド不織布とが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。したがって、間接的にではあるが、バリア性フィルムのガスバリア性保護層中の原子とポリアミド不織布中の原子との間で共有結合が形成されていると推認できる。
【0153】
<ポリエステル不織布と積層フィルムとの積層体>
実施例E1
(1)バリア性フィルムの準備
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、蒸着装置を用いて、下記の条件にて、そのフィルムの一方の面に、膜厚20nmとなるように酸化アルミニウム薄膜を形成した。
蒸着条件:
蒸着チャンバー内の真空度(酸素導入後):2×10−4mbar
巻き取りチャンバー内の真空度:5×10−3mbar
電子ビーム電力:25kW
【0154】
次いで、下記の組成Iからなるポリビニルアルコール溶液とイソプロピルアルコールとイオン交換水とを含む混合液に、下記組成IIからなる加水分解液を加えて充分に攪拌し、ガスバリア性保護層形成用塗工液と調製した。
組成I:
ポリビニルアルコール 2.33(質量%)
イソプロピルアルコール 2.70(質量%)
水 51.75(質量%)
【0155】
組成II(加水分解液):
エチルシリケート 16.60(質量%)
シランカップリング剤 1.66(質量%)
イソプロピルアルコール 3.90(質量%)
0.5N塩酸水溶液 0.53(質量%)
水 20.53(質量%)
合計 100.00(質量%)
【0156】
上記の塗工液を、酸化アルミニウム薄膜上にグラビアロールコート法によりコーティングして、次いで、180℃で60秒間加熱処理を行い、厚み0.2μm(乾操状態)のガスバリア性保護層を形成することにより、バリア性フィルムを得た。
【0157】
(2)ポリエステル不織布の準備
ポリエステル不織布として、厚さ120μmのポリエステル不織布(エルタス E05020、旭化成せんい株式会社製)を準備した。
【0158】
(3)積層体の作製
準備したバリア性フィルムおよびポリエステル不織布を、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0159】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。なお、バリア性フィルムについては、ガスバリア性保護層形成面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0160】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両試料の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両試料を接着して積層体を得た。
【0161】
比較例E1
電子照射を行わなかった以外は実施例E1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はバリア性フィルムとポリエステル不織布とは接着していなかった。
【0162】
(4)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例E1の積層体は、バリア性フィルム1とポリエステル不織布とが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表E1に示される通りであった。
【0163】
また、実施例E1の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表E1に示される通りであった。
【0164】
【表5】

【0165】
表E1の評価結果からも明らかなように、実施例E1の積層体は、水中保管後も、水中保管後であっても、接着性を維持している。この結果から、実施例E1の積層体は、バリア性フィルムとポリエステル不織布とが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。したがって、間接的にではあるが、バリア性フィルムのガスバリア性保護層中の原子とポリエステル不織布中の原子との間で共有結合が形成されていると推認できる。
【0166】
<ポリオレフィン不織布とポリオレフィン不織布との積層体>
実施例F1
(1)ポリオレフィン不織布の準備
ポリオレフィン不織布織布として、下記の3種類の不織布を準備した。
A:厚さ160μmのポリオレフィン不織布不織布(エルベス T0303WDO、ユニチカ株式会社製)
B:厚さ220μmのポリオレフィン不織布不織布(エルベス S0303WDO、ユニチカ株式会社製)
C:厚さ250μmのポリオレフィン不織布不織布(エルタス P03030、旭化成せんい株式会社製)
【0167】
(2)積層体の作製
上記したAおよびBのポリオレフィン不織布を、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0168】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0169】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両不織布の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両不織布を接着して積層体を得た。
【0170】
実施例F2
使用する樹脂不織布を下記の表F1に示す組み合わせとし、また、表F1に示す電子線照射条件とした以外は実施例F1と同様にして積層体を得た。
【0171】
比較例F1
電子照射を行わなかった以外は実施例F1と同様にして積層体を得た。
【0172】
(3)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。評価結果は、下記の表F1に示される通りであった。
【0173】
また、実施例および比較例の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表F1に示される通りであった。
【0174】
【表6】

【0175】
表F1の評価結果からも明らかなように、実施例F1およびF2の積層体は、電子線照射を行わなかった比較例F1の積層体と比較して、接着強度が顕著に向上していることがわかる。このことから、電子線照射により、互いの不織布の原子間で結合が形成されていることがわかる。また、水中保管後も、実施例の積層体は、空気中で測定した接着強度と同様の接着強度を有している。この結果から、実施例F1およびF2の積層体は、ポリオレフィン不織布どうしが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。したがって、間接的にではあるが、2種のポリオレフィン不織布中の原子との間で共有結合が形成されていると推認できた。
【0176】
<ポリオレフィン不織布とポリアミド不織布との積層体>
実施例G1
(1)ポリオレフィン不織布およびポリアミド不織布の準備
ポリオレフィン不織布として、下記の2種類の不織布を準備した。
A:厚さ160μmのポリオレフィン不織布(エルベス T0303WDO、ユニチカ株式会社製)
B:厚さ250μmのポリオレフィン不織布(エルタス P03030、旭化成せんい株式会社製)
また、ポリアミド不織布として、下記の2種類の不織布を準備した。
C:厚さ160μmのポリアミド不織布として、ナイエース N0303WTO(ユニチカ株式会社製)
D:厚さ140μmのポリアミド不織布として、ナイエース N0203WTO(ユニチカ株式会社製)
【0177】
(2)積層体の作製
上記したAのポリオレフィン不織布およびCのポリアミド不織布を、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0178】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0179】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両不織布の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両不織布を接着して積層体を得た。
【0180】
実施例G2〜G3
使用する樹脂不織布を下記の表G1に示す組み合わせとし、また、表G1に示す電子線照射条件とした以外は実施例G1と同様にして積層体を得た。
【0181】
比較例G1
電子照射を行わなかった以外は実施例G1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はポリオレフィン不織布とポリアミド不織布とは接着していなかった。
【0182】
比較例
電子照射を行わなかった以外は実施例G2と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はポリオレフィン不織布とポリアミド不織布とは接着していなかった。
【0183】
(3)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例G1およびG2の積層体は、ポリオレフィン不織布とポリアミド不織布とが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表G1に示される通りであった。
【0184】
また、実施例G1〜G3の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表G1に示される通りであった。
【0185】
【表7】

【0186】
表G1の評価結果からも明らかなように、実施例G1〜G3の積層体は、水中保管後も、空気中で測定した接着強度と同様の接着強度を有している。この結果から、実施例G1〜G3の積層体は、ポリオレフィン不織布とポリアミド不織布とが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。したがって、間接的にではあるが、ポリオレフィン不織布の原子とポリアミド不織布中の原子との間で共有結合が形成されていると推認できた。
【0187】
<ポリオレフィン不織布とポリエステル不織布との積層体>
実施例H1
(1)ポリオレフィン不織布およびポリエステル不織布の準備
ポリオレフィン不織布として、下記の2種類の不織布を準備した。
A:厚さ160μmのポリオレフィン不織布(エルベス T0303WDO、ユニチカ株式会社製)
B:厚さ220μmのポリオレフィン不織布(エルベス S0303WDO、ユニチカ株式会社製)
また、厚さ120μmのポリエステル不織布として、エルタス E05020(旭化成せんい株式会社製)を準備した。
【0188】
(2)積層体の作製
上記したAのポリオレフィン不織布およびポリエステル不織布を、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0189】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0190】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両不織布の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両不織布を接着して積層体を得た。
【0191】
実施例H2〜H3
使用する樹脂不織布を下記の表H1に示す組み合わせとし、また、表H1に示す電子線照射条件とした以外は実施例H1と同様にして積層体を得た。
【0192】
比較例H1
電子照射を行わなかった以外は実施例H1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はポリオレフィン不織布とポリエステル不織布とは接着していなかった。
【0193】
比較例H2
電子照射を行わなかった以外は実施例H3と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はポリオレフィン不織布とポリエステル不織布とは接着していなかった。
【0194】
(3)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例H1およびH2の積層体は、ポリオレフィン不織布とポリエステル不織布とが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表H1に示される通りであった。
【0195】
また、実施例H1〜H3の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表H1に示される通りであった。
【0196】
【表8】

【0197】
表H1の評価結果からも明らかなように、実施例H1〜H3の積層体は、水中保管後も、空気中で測定した接着強度と同様の接着強度を有している。この結果から、実施例H1〜H3の積層体は、ポリオレフィン不織布とポリエステル不織布とが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。したがって、間接的にではあるが、ポリオレフィン不織布の原子とポリエステル不織布中の原子との間で共有結合が形成されていると推認できた。
【0198】
<ポリアミド不織布とポリエステル不織布との積層体>
実施例I1
(1)ポリアミド不織布およびポリエステル不織布の準備
ポリアミド不織布として、下記の2種類の不織布を準備した。
A:厚さ160μmのポリアミド不織布(ナイエース N0303WTO、ユニチカ株式会社製)
B:厚さ170μmのポリアミド不織布(エルタス N05030、旭化成せんい株式会社製)
また、ポリエステル不織布として、厚さ120μmのポリエステル不織布(エルタス E05020、旭化成せんい株式会社製)を準備した。
【0199】
(2)積層体の作製
上記したAのポリアミド不織布およびポリエステル不織布を、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0200】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0201】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両不織布の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両不織布を接着して積層体を得た。
【0202】
実施例I2
使用する樹脂不織布を下記の表I1に示す組み合わせとし、また、表I1に示す電子線照射条件とした以外は実施例I1と同様にして積層体を得た。
【0203】
比較例I1
電子照射を行わなかった以外は実施例I1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はポリアミド不織布とポリエステル不織布とは接着していなかった。
【0204】
(3)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例I1の積層体は、ポリアミド不織布とポリエステル不織布とが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表I1に示される通りであった。
【0205】
また、実施例I1およびI2の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表I1に示される通りであった。
【0206】
【表9】

【0207】
表I1の評価結果からも明らかなように、実施例I1およびI2の積層体は、水中保管後も、空気中で測定した接着強度と同様の接着強度を有している。この結果から、実施例I1およびI2の積層体は、ポリアミド不織布とポリエステル不織布とが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。したがって、間接的にではあるが、ポリアミド不織布の原子とポリエステル不織布中の原子との間で共有結合が形成されていると推認できた。
【0208】
<ポリアミド不織布とポリアミド不織布との積層体>
実施例J1
(1)ポリアミド不織布の準備
ポリアミド不織布織布として、下記の3種類の不織布を準備した。
A:厚さ160μmのポリアミド不織布不織布(ナイエース N0303WTO、ユニチカ株式会社製)
B:厚さ140μmのポリアミド不織布不織布(ナイエース N0203WTO、ユニチカ株式会社製)
C:厚さ170μmのポリアミド不織布不織布(エルタス N05030、旭化成せんい株式会社製)
【0209】
(2)積層体の作製
上記したAおよびBのポリアミド不織布を、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0210】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0211】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両不織布の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両不織布を接着して積層体を得た。
【0212】
実施例J2
使用する樹脂不織布を下記の表J1に示す組み合わせとし、また、表J1に示す電子線照射条件とした以外は実施例J1と同様にして積層体を得た。
【0213】
比較例J1
電子照射を行わなかった以外は実施例J1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はポリアミド不織布どうしが接着していなかった。
【0214】
(3)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例J1の積層体は、ポリアミド不織布どうしが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表J1に示される通りであった。
【0215】
また、実施例J1およびJ2の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表J1に示される通りであった。
【0216】
【表10】

【0217】
表J1の評価結果からも明らかなように、実施例J1およびJ2の積層体は、水中保管後も、空気中で測定した接着強度と同様の接着強度を有している。この結果から、実施例J1およびJ2の積層体は、ポリアミド不織布どうしが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。したがって、間接的にではあるが、2種のポリアミド不織布中の原子との間で共有結合が形成されていると推認できた。
【0218】
<ポリエステル不織布とポリエステル不織布との積層体>
実施例K1
(1)ポリエステル不織布の準備
ポリエステル不織布織布として、下記の3種類の不織布を準備した。
A:厚さ90μmのポリエステル不織布不織布(エルタス E05020、旭化成せんい株式会社製)
B:厚さ120μmのポリエステル不織布不織布(エルタス E05012、旭化成せんい株式会社製)
C:厚さ140μmのポリエステル不織布不織布(マリックス 70200WSO、ユニチカ株式会社製)
【0219】
(2)積層体の作製
上記したAおよびBのポリエステル不織布を、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0220】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0221】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両不織布の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両不織布を接着して積層体を得た。
【0222】
実施例K2
使用する樹脂不織布を下記の表K1に示す組み合わせとし、また、表K1に示す電子線照射条件とした以外は実施例K1と同様にして積層体を得た。
【0223】
比較例K1
電子照射を行わなかった以外は実施例K1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はポリエステル不織布どうしが接着していなかった。
【0224】
(3)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例K1の積層体は、ポリエステル不織布どうしが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表K1に示される通りであった。
【0225】
また、実施例K1およびK2の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表K1に示される通りであった。
【0226】
【表11】

【0227】
表K1の評価結果からも明らかなように、実施例K1およびK2の積層体は、水中保管後も、空気中で測定した接着強度と同様の接着強度を有している。この結果から、実施例K1およびK2の積層体は、ポリエステル不織布どうしが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。したがって、間接的にではあるが、2種のポリエステル不織布中の原子との間で共有結合が形成されていると推認できた。
【0228】
<ポリオレフィン不織布とフッ素系樹脂多孔質フィルムとの積層体>
実施例L1
(1)ポリオレフィン不織布およびフッ素樹脂多孔質膜の準備
ポリオレフィン不織布として、厚さ160μmのポリオレフィン不織布(エルベス T0303WDO、ユニチカ株式会社製)を準備し、また、フッ素樹脂多孔質膜として、厚み60μmのポアフロンメンブレン FP−010−60(住友電工ダインポリマー株式会社製)を準備した。
【0229】
(2)積層体の作製
上記したポリオレフィン不織布およびフッ素樹脂多孔質膜を、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0230】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0231】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両試料の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、ポリオレフィン不織布とフッ素樹脂多孔質膜とを接着して積層体を得た。
【0232】
比較例L1
電子照射を行わなかった以外は実施例L1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はポリオレフィン不織布とフッ素樹脂多孔質膜とは接着していなかった。
【0233】
(3)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例L1の積層体は、ポリオレフィン不織布とフッ素樹脂多孔質膜とが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表L1に示される通りであった。
【0234】
また、実施例L1の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表L1に示される通りであった。
【0235】
【表12】

【0236】
表L1の評価結果からも明らかなように、実施例L1の積層体は、水中保管後も、空気中で測定した接着強度と同様の接着強度を有している。この結果から、実施例L1の積層体は、ポリオレフィン不織布とフッ素樹脂多孔質膜とが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。したがって、間接的にではあるが、ポリオレフィン不織布の原子とフッ素樹脂多孔質膜中の原子との間で共有結合が形成されていると推認できた。
【0237】
<ポリオレフィン不織布とポリエーテルスルホンフィルムとの積層体>
実施例M1
(1)ポリオレフィン不織布およびポリエーテルスルホン樹脂多孔質膜の準備
ポリオレフィン不織布として、厚さ160μmのポリオレフィン不織布(エルベス T0303WDO、ユニチカ株式会社製)を準備し、また、特開昭60−41503号公報に記載の方法にしたがって、厚み100μmのポリエーテルスルホン樹脂多孔質膜を準備した。
【0238】
(2)積層体の作製
上記したポリオレフィン不織布およびポリエーテルスルホン樹脂多孔質膜を、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
【0239】
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。
電圧:40kV
吸収線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
【0240】
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両者の電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両者を接着して積層体を得た。
【0241】
比較例M1
電子照射を行わなかった以外は実施例M1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体はポリオレフィン不織布とポリエーテルスルホン樹脂多孔質膜とは接着していなかった。
【0242】
(3)積層体の接着強度の評価
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例M1の積層体は、ポリオレフィン不織布とポリエーテルスルホン樹脂多孔質膜とが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表M1に示される通りであった。
【0243】
また、実施例M1の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表M1に示される通りであった。
【0244】
【表13】

【0245】
表M1の評価結果からも明らかなように、実施例M1の積層体は、水中保管後も、空気中で測定した接着強度と同様の接着強度を有している。この結果から、実施例M1の積層体は、ポリオレフィン不織布とポリエーテルスルホン樹脂多孔質膜とが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことがわかる。したがって、間接的にではあるが、ポリオレフィン不織布の原子とポリエーテルスルホン樹脂多孔質膜中の原子との間で共有結合が形成されていると推認できた。
【符号の説明】
【0246】
1 ポリオレフィン不織布
2 フッ素樹脂フィルム
3、3’ 電子線照射装置
4、4’ 電子線
5 フィルム基材接触界面
6 ヒートローラ
7 支持ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の不織布またはフィルムと、第2の不織布とが積層した積層体であって、
前記第1の不織布またはフィルム、および第2の不織布の少なくとも一部で、前記第1の不織布またはフィルムを構成する原子と、前記第2の不織布を構成する原子との間に結合が形成されており、前記第1の不織布またはフィルムと、第2の不織布とが、接着剤を介さずに接着されていることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記第1および第2の不織布が、ポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ポリエステル不織布、ポリ乳酸不織布、ポリウレタン不織布、液晶ポリマー不織布、ポリフッ化ビニリデン不織布、セルロース不織布、アラミド不織布、ビニロン不織布、およびレーヨン不織布からなる群より選択される、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記フィルムが、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、およびポリケトン樹脂からなる群より選択される、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第1の不織布および第2の不織布の少なくとも一部で、前記第1の不織布を構成する原子と前記第2の不織布を構成する原子との間に結合が形成されており、前記第1の不織布と前記第2の不織布とが、接着剤を介さずに接着されている、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項5】
前記フィルムおよび第2の不織布の少なくとも一部で、前記フィルムを構成する原子と前記第2の不織布を構成する原子との間に結合が形成されており、前記フィルムと前記第2の不織布とが、接着剤を介さずに接着されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記フィルムが多孔質フィルムである、請求項3に記載の積層体。
【請求項7】
前記フィルムが、ポリオレフィン多孔質フィルム、ポリウレタン多孔質フィルム、ポリケトン多孔質フィルム、およびポリイミド多孔質フィルムからなる群より選択される、請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
前記フィルムがフッ素樹脂フィルムであり、前記第2の不織布がポリオレフィン不織布であり、
前記フッ素樹脂フィルムおよび前記ポリオレフィン不織布の少なくとも一部で、前記フッ素樹脂フィルム中の原子と前記ポリオレフィン不織布中の原子との間に結合が形成されており、前記フッ素樹脂フィルムと前記ポリオレフィン不織布とが接着剤を介さずに接着されている、請求項5に記載の積層体。
【請求項9】
前記フッ素樹脂フィルムとポリオレフィン不織布中との原子の間に、酸素原子、窒素原子および/または水酸基を介して、結合が形成されている、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記フッ素樹脂フィルムが、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロアルコキシ樹脂、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体樹脂、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体樹脂、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、フッ化ビニル系樹脂からなる群から選択される樹脂からなる、請求項8または9に記載の積層体。
【請求項11】
前記ポリオレフィン不織布がポリプロピレン不織布またはポリエチレン不織布である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の積層体を製造する方法であって、
第1の不織布またはフィルムと、第2の不織布との少なくとも一方の面に電子線を照射し、
前記電子線が照射された第1の不織布もしくはフィルム、および/または、第2の不織布を重ね合わせて接着する、ことを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記第1の不織布またはフィルムと前記第2の不織布とを重ね合わせる前および/または重ね合わせた後に電子線照射を行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の不織布またはフィルムと前記第2の不織布との接着を加圧して行う、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の不織布またはフィルムと前記第2の不織布との接着を加熱して行う、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−149248(P2012−149248A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−286298(P2011−286298)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】