説明

積層体ユニットおよび薄膜容量素子

【課題】 誘電特性を確保することが可能な積層体ユニットを提供する。
【解決手段】 金属または合金を含む電極層3と、ビスマス層状化合物を含む誘電体層5との間に、同一の結晶面が膜面に対して平行な導電性セラミックスを含むバッファ層4を有するように積層体ユニット10を構成する。c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層5の配向状態が制御されるため、第1に、誘電体層5においてリーク電流が発生しにくくなる。第2に、バッファ層4がキャップ層として機能するため、電極層3中の金属が熱的に凝集しにくくなる。第3に、バッファ層4が拡散バリア層として機能するため、誘電体層5中のビスマス層状化合物のうちのビスマスが電極層3中の金属に熱的に拡散しにくくなる。第4に、電極層3が金属または合金を含んで構成されているため、全体が低抵抗化する。これにより、上記した4つの観点において誘電特性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薄膜容量素子(例えば薄膜コンデンサやメモリなど)および光デバイスなどの電子デバイスに適用される積層体ユニット、ならびに積層体ユニットを利用して構成される薄膜容量素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化に伴い、薄膜コンデンサ、メモリおよび光デバイスなどの電子デバイスに適用される積層体ユニットの高性能化が要望されている。この積層体ユニットは、電子デバイスを構成するための前準備体であり、基板上に電極および誘電体層がこの順に積層され、すなわち基板と共に電極および誘電体層がユニット化されたものである。
【0003】
この積層体ユニットとしては、例えば、誘電特性を向上させるために、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層の配向状態が制御された積層体ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この積層体ユニットの使用用途として、例えば、積層体ユニットを薄膜コンデンサに適用することにより、誘電率の温度特性に優れ、かつ高容量の薄膜コンデンサを構成することが可能である。
【特許文献1】国際公開第03/021606号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、薄膜コンデンサに限らず、その薄膜コンデンサ以外の他の薄膜容量素子まで積層体ユニットを有効に適用することを考慮した場合に、その薄膜容量素子の誘電特性を可能な限り向上させるためには、例えば、積層体ユニットのうちの電極を金属で構成する必要がある。なぜなら、低抵抗の金属で電極を構成すれば、その金属の低抵抗性に基づいて積層体ユニット全体が低抵抗化するため、電極を高抵抗の導電性酸化物などで構成した場合と比較して、薄膜容量素子の誘電特性等が向上するからである。
【0005】
しかしながら、積層体ユニットのうちの電極を金属で構成した場合には、その金属の諸特性に起因していくつかの問題が生じてしまう。具体的には、第1に、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)およびニッケル(Ni)などの熱的に凝集しやすい金属を使用して電極を構成した場合には、積層体ユニットの製造過程において熱が発生した際に、その熱に起因して金属が熱的に凝集するおそれがある。第2に、例えば、白金などの金属を使用して電極を構成した場合には、積層体ユニットの製造過程において発生した熱に起因して、ビスマス層状化合物のうちのビスマス(Bi)が白金に拡散する場合がある。第3に、例えば、やはり白金を使用して電極を構成した場合には、その白金の結晶が成膜過程において[111]方位に配向しやすいため、電極上にビスマス層状化合物を成膜することにより誘電体層を形成する場合に、そのビスマス層状化合物が成長過程において下地の金属の結晶構造の影響を受けることに起因して、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層の配向状態を制御することが困難になる。この場合には、たとえ白金の結晶が[100]方位に配向するように配向状態を制御したとしても、白金の結晶性が不十分なことに起因してビスマス層状化合物の結晶性も不十分になってしまう。上記した3つの観点の問題は、積層体ユニットを利用して薄膜容量素子を構成した場合に、いずれも薄膜容量素子の誘電特性を劣化させる要因となる。
【0006】
したがって、薄膜容量素子の誘電特性を可能な限り向上させるためには、上記した3つの観点の問題を改善することにより、誘電特性を確保することが可能な積層体ユニットの確立が急務である。すなわち、誘電特性を確保することが可能な積層体ユニットを利用して薄膜容量素子を構成することにより、その薄膜容量素子の誘電特性が確保されるのである。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、誘電特性を確保することが可能な積層体ユニットを提供することにある。
【0008】
また、本発明の第2の目的は、誘電特性が確保された薄膜容量素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る積層体ユニットは、金属または合金を含む電極と、同一の結晶面が膜面に対して平行な導電性セラミックスを含むバッファ層と、c軸が膜面に対して垂直に配向したビスマス層状化合物を含む誘電体層とがこの順に積層された積層構造を有しているものである。
【0010】
本発明に係る積層体ユニットでは、金属または合金を含む電極と、ビスマス層状化合物を含む誘電体層との間に、同一の結晶面が膜面に対して平行な導電性セラミックスを含むバッファ層を有しているため、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層の配向状態が制御される。この場合には、第1に、ビスマス層状化合物においてc軸配向性が支配的となることに基づき、誘電体層においてリーク電流が発生しにくくなる。第2に、バッファ層がキャップ層として機能することに基づき、電極中の金属が熱的に凝集しにくくなる。第3に、バッファ層が拡散バリア層として機能することに基づき、誘電体層中のビスマス層状化合物のうちのビスマス(Bi)が電極層中の金属に熱的に拡散しにくくなる。第4に、電極が金属または合金を含んで構成されていることに基づき、積層体ユニット全体が低抵抗化する。これにより、上記した4つの観点において誘電特性が向上する。なお、上記したビスマス層状化合物の「c軸」とは、そのビスマス層状化合物のうちの一対の(Bi2 2 2+同士を結ぶ方向、すなわち[001]方位を意味している。
【0011】
本発明に係る薄膜容量素子は、金属または合金を含む第1の電極と、同一の結晶面が膜面に対して平行な導電性セラミックスを含むバッファ層と、c軸が膜面に対して垂直に配向したビスマス層状化合物を含む誘電体層と、第2の電極とがこの順に積層された積層構造を有しているものである。
【0012】
本発明に係る薄膜容量素子では、上記した積層体ユニットを含んでいるため、上記したように、第1の電極と誘電体層との間にバッファ層を有することに基づいて誘電特性が向上する。
【0013】
特に、本発明に係る積層体ユニットまたは薄膜容量素子では、バッファ層のうちの同一の結晶面が立方晶、正方晶、斜方晶または単斜晶における(100)面、(010)面または(001)面のうちのいずれかであってもよい。この場合には、導電性セラミックスが導電性ペロブスカイト化合物を含んでいるのが好ましく、具体的には導電性ペロブスカイト化合物が下記の化学量論的組成式(5)で表される組成を有しているのが好ましい。この化学量論的組成式で表される組成を有する導電性ペロブスカイト化合物の一例としては、ニッケル酸ランタン(LaNiO3 )が挙げられる。確認までに説明しておくと、下記の化学量論的組成式(5)で表される組成は、必ずしも化学量論的組成に限らず、異相を生じさせない範囲内において化学量論的組成から多少偏倚していてもよい。この化学量論的組成から多少偏倚していてもよい旨は、後述する化学量論的組成式(6)に関しても同様である。
Lnx 1-x BO3 ・・・(5)
(ただし、「Ln」はランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)を含む群のうちの少なくとも1種のランタノイド系希土類元素。「A」はカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。「B」はチタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。なお、「A」または「B」を2種類以上の金属元素で構成する場合、その2種類以上の金属元素の比率は任意に設定可能である。「x」は0≦x≦1。)
【0014】
また、本発明に係る積層体ユニットまたは薄膜容量素子では、金属または合金が白金(Pt)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素を含んでいるのが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る積層体ユニットまたは薄膜容量素子では、電極または第1の電極とバッファ層との間の界面がエピタキシャル成長されたものではないのに対して、バッファ層と誘電体層との間の界面のうちの少なくとも一部がエピタキシャル成長されたものであるのが好ましく、この場合にはバッファ層の結晶構造がc軸が膜面に対して垂直に配向するようにビスマス層状化合物を成長させることが可能な第1の結晶方位に配向しており、電極または第1の電極の結晶構造が第1の結晶方位とは異なる第2の結晶方位に配向しているのが好ましい。
【0016】
さらに、本発明に係る積層体ユニットまたは薄膜容量素子では、ビスマス層状化合物が下記の化学量論的組成式(6)で表される組成を有しているのが好ましい。この場合には化学量論的組成式(6)中のmの値が偶数であるのが好ましく、そのmの値が4であるのがより好ましい。
(Bi2 2 2+(Dm-1 m 3m+12-・・・(6)
(ただし、「D」はナトリウム(Na)、カリウム(K)、鉛(Pb)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)およびビスマス(Bi)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。「E」は鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。なお、「D」または「E」を2種類以上の金属元素で構成する場合、その2種類以上の金属元素の比率は任意に設定可能である。「m」は正の整数。)
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る積層体ユニットによれば、金属または合金を含む電極と、ビスマス層状化合物を含む誘電体層との間に、同一の結晶面が膜面に対して平行な導電性セラミックスを含むバッファ層を有している構成的特徴に基づき、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層の配向状態が制御される。この場合には、誘電体層においてリーク電流が発生しにくくなり、電極中の金属が熱的に凝集しにくくなり、誘電体層中のビスマス層状化合物のうちのビスマス(Bi)が電極層中の金属に熱的に拡散しにくくなり、積層体ユニット全体が低抵抗化するため、上記した4つの観点において誘電特性が向上する。したがって、誘電特性を確保することができる。
【0018】
本発明に係る薄膜容量素子によれば、上記した積層体ユニットを含んでいる構成的特徴に基づいて誘電特性が向上するため、誘電特性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
まず、図1を参照して、本発明の一実施の形態に係る積層体ユニットの構成について説明する。図1は、積層体ユニット10の断面構成を表している。
【0021】
本実施の形態に係る積層体ユニット10は、例えば、薄膜容量素子(例えば薄膜コンデンサやメモリなど)および光デバイスなどの電子デバイスに適用されるものであり、具体的にはデカップリングコンデンサ、バイパスコンデンサまたは高周波回路用コンデンサなどの薄膜コンデンサ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメモリ、ならびに無機EL(Electro Luminescence)デバイスなどの光デバイスに適用されるものである。この積層体ユニット10は、例えば、図1に示したように、電極層3と、バッファ層4と、誘電体層5とがこの順に積層された積層構造を有しており、より詳細には基板1上に、下地層2と、電極層3と、バッファ層4と、誘電体層5とがこの順に積層された構成を有している。
【0022】
基板1は、積層体ユニット10全体を支持し、その積層体ユニット10の機械的強度を確保するためのものである。この基板1は、例えば、シリコン(Si)の単結晶を含んで構成されており、その厚さは約10μm〜1mmである。
【0023】
下地層2は、基板1と電極層3との間を電気的に分離するためのものである。この下地層2は、例えば、酸化ケイ素(SiO2 )などの絶縁性材料により構成されており、その厚さは約1nm〜1μmである。
【0024】
電極層3は、積層体ユニット10を利用して電子デバイスが構成された場合に使用される電極である。この電極層3は、金属または合金を含んで構成されており、その厚さは約10nm〜1μmである。上記した「金属または合金」は、例えば、後述するバッファ層4の結晶構造の結晶方位D1(第1の結晶方位)とは異なる結晶方位D2(第2の結晶方位)に電極層3の結晶を配向させる特性を有しており、具体的には白金(Pt)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素を含んでいる。特に、上記した「金属または合金」は、例えば、電極層3の酸化を抑制する観点から、ニッケルおよび銅よりも酸化されにくい白金を含んでいるのが好ましい。この電極層3と下地層2との間の密着性に関して、例えば、下地層2と電極層3との間の密着性が十分でない場合には、それらの下地層2と電極層3との間に、酸化チタン(TiOx )などの密着性材料により構成された密着層が挿入される場合もある。なお、電極層3の結晶構造の結晶方位D2に関して一例を説明しておくと、電極層3が上記した白金、ニッケルまたは銅などの金属により構成されている場合には、その結晶方位D2が[111]方位となる。確認までに説明しておくと、「金属または合金」に関して上記した「電極層3の結晶を結晶方位D1とは異なる結晶方位D2に配向させる」とは、電極層3の構成材料として結晶が本来的に結晶方位D1に配向する材料を使用した場合に、その結晶を強制的に結晶方位D2に配向させるという意味ではなく、電極層3の構成材料として本来的に結晶方位D2に配向する材料を使用した場合に、その結晶が結果的に結晶方位D2に配向するという意味である。
【0025】
バッファ層4は、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層5の配向状態を制御するものである。特に、バッファ層4は、例えば、上記したように誘電体層5の配向状態を制御する配向制御層としての機能と共に、電極層3と誘電体層5との間を分離するバリア層、ならびに電極層3を物理的に維持させるキャップ層としての機能も担っている。このバッファ層4は、同一の結晶面が膜面に対して平行な導電性セラミックス、より具体的には、例えば、上記した同一の結晶面が立方晶、正方晶、斜方晶または単斜晶における(100)面、(010)面または(001)面のうちのいずれかである導電性セラミックスを含んで構成されており、その厚さは約1nm〜1μmである。特に、バッファ層4の厚さは、約100nm以下であるのが好ましい。上記した「導電性セラミックス」は、例えば、c軸が膜面に対して垂直に配向するようにビスマス層状化合物を成長させることが可能な結晶方位D1に、バッファ層4の結晶を配向させる特性を有する導電性ペロブスカイト化合物を含んでおり、具体的には導電性ペロブスカイト化合物は、下記の化学量論的組成式(7)で表される組成を有している。確認までに説明しておくと、下記の化学量論的組成式(7)で表される組成は、必ずしも化学量論的組成に限らず、異相を生じさせない範囲内において化学量論的組成から多少偏倚していてもよい。この化学量論的組成式(7)で表される具体的な導電性ペロブスカイト化合物としては、例えば、ニッケル酸ランタン(LaNiO3 )などが挙げられる。特に、導電性セラミックスとしては、例えば、電極層3とバッファ層4との間において格子整合性が確保されるものが好ましく、具体的には電極層3が白金を含んで構成されている場合には、バッファ層4がニッケル酸ランタン(LaNiO3 )を含んで構成されているのが好ましい。なお、バッファ層4の結晶構造の結晶方位D1に関して一例を説明しておくと、バッファ層4がニッケル酸ランタンにより構成されている場合には、その結晶方位D1が[001]方位となる。
Lnx 1-x BO3 ・・・(7)
(ただし、「Ln」はランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)を含む群のうちの少なくとも1種のランタノイド系希土類元素。「A」はカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。「B」はチタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。なお、「A」または「B」を2種類以上の金属元素で構成する場合、その2種類以上の金属元素の比率は任意に設定可能である。「x」は0≦x≦1。)
【0026】
なお、バッファ層4に含まれている導電性セラミックス(導電性ペロブスカイト化合物)のc軸配向度は100%であることが好ましいが、そのc軸配向度は必ずしも100%でなくてもよく、例えば、c軸配向度は約80%以上が好ましく、約90%以上がより好ましく、約95%以上がさらに好ましい。確認までに説明しておくと、上記した「c軸配向度」とは、多結晶体のc軸配向度をFとし、完全にランダムに配向している多結晶体のc軸のX線回折強度をP0とし、実際の多結晶体のc軸のX線回折強度をPとした場合に、F(%)=(P−P0)/(1−P0)×100の関係式に基づいて求められる。これらのX線回折強度P0,Pは、多結晶体の(001)面からの反射強度I(001)の合計ΣI(001)と、その多結晶体の各結晶面(hkl)からの反射強度I(hkl)の合計ΣI(hkl)との間の比ΣI(001)/ΣI(hkl)である。ただし、上記した関係式では、c軸方向に完全に配向している場合のX線回折強度Pを1としている。この関係式に基づけば、完全にランダムに配向している場合(P=P0)にはc軸配向度F=0%であり、一方、完全にc軸配向している場合(P=1)にはc軸配向度F=100%である。
【0027】
誘電体層5は、積層体ユニット10を利用して電子デバイスが構成された場合に容量を確保するためのものであり、c軸が膜面に対して垂直に配向したビスマス層状化合物を含んで構成されている。この「ビスマス層状化合物」は、上記したように、バッファ層4の結晶構造の結晶方位D1に応じて、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層5の結晶を配向させる特性を有しており、具体的には下記の化学量論的組成式(8)で表される組成を有している。確認までに説明しておくと、下記の化学量論的組成式(8)で表される組成は、必ずしも化学量論的組成に限らず、異相を生じさせない範囲内において化学量論的組成から多少偏倚していてもよい。この化学量論的組成式(8)で表される具体的なビスマス層状化合物としては、例えば、チタン酸ビスマス酸ストロンチウム(SrBi4 Ti4 15)などが挙げられる。ビスマス層状化合物は、一般に、a軸方向に分極軸を有するために強誘電性を示すが、上記したようにc軸が膜面に対して垂直に配向され、かつ化学量論的組成式(8)中のmの値が偶数である場合には、特異的に常誘電性を示す。なお、誘電体層5の厚さは、上記した化学量論的組成式(8)中のmの値およびビスマス層状化合物の積層数に基づいて適宜設定可能であるが、例えば、実用上においては約5nm〜10μmが好ましい。特に、誘電体層5の厚さは、例えば、誘電特性を向上させる上では約10nm〜500nmが好ましく、約20nm〜100nmがより好ましい。この化学量論的組成式(8)で表されるビスマス層状化合物としては、上記したように、その化学量論的組成式(8)中のmの値が偶数であるのが好ましい。このように誘電体層5の厚さを薄くしても、積層体ユニットの高容量化を図ると共に、後述するように電極層3の凝集や拡散に関する問題を解決可能である。特に、例えば、ビスマス層状化合物の存在状態が安定化すると共に誘電率が高くなる観点から、化学量論的組成式(8)中のmの値は4であるのがより好ましい。
(Bi2 2 2+(Dm-1 m 3m+12-・・・(8)
(ただし、「D」はナトリウム(Na)、カリウム(K)、鉛(Pb)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)およびビスマス(Bi)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。「E」は鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。なお、「D」または「E」を2種類以上の金属元素で構成する場合、その2種類以上の金属元素の比率は任意に設定可能である。「m」は正の整数。)
【0028】
なお、誘電体層5に含まれているビスマス層状化合物のc軸配向度は100%であることが好ましいが、そのc軸配向度は必ずしも100%でなくてもよく、例えば、c軸配向度は約80%以上が好ましく、約90%以上がより好ましく、約95%以上がさらに好ましい。具体的には、例えば、ガラスなどのアモルファス材料を使用して基板1を構成したときにビスマス層状化合物をc軸配向させる場合には、例えば、そのビスマス層状化合物のc軸配向度が約80%以上であるのが好ましい。また、後述する各種成膜手法を使用して誘電体層5を形成するときにビスマス層状化合物をc軸配向させる場合には、例えば、そのビスマス層状化合物のc軸配向度が約90%以上であるのが好ましく、約95%以上であるのがより好ましい。この誘電体層5に関する「c軸配向度」の定義は、バッファ層4に関して説明した場合と同様である。
【0029】
この積層体ユニット10では、上記したように、例えば、電極層3が白金により構成されていると共に、バッファ層4がニッケル酸ランタンにより構成されている場合には、電極層3の結晶構造の結晶方位D2が[100]方位以外の方位、具体的には[111]方位となり、バッファ層4の結晶構造の結晶方位D1が[001]方位となることにより、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層5の配向状態が制御されている。すなわち、積層体ユニット10では、電極層3とバッファ層4との間の界面34Mが、エピタキシャル成長されたものではないのに対して、バッファ層4と誘電体層5との間の界面45Mのうちの少なくとも一部が、エピタキシャル成長されたものである。なお、確認までに説明しておくと、上記した「エピタキシャル成長されたものではない」とは、バッファ層4が電極層3の結晶構造の影響を受けないで膜成長したことにより形成されたものであることを意味し、一方、「エピタキシャル成長されたものである」とは、誘電体層5がバッファ層4の結晶構造の影響を受けて膜成長したことにより形成されたものであることを意味している。また、「バッファ層4と誘電体層5との間の界面45Mのうちの少なくとも一部がエピタキシャル成長されたもの」であればよい理由は、界面45Mの全部がエピタキシャル成長されたものである場合にはもちろん、バッファ層4上においてビスマス層状化合物が成長することにより誘電体層5が形成されるため、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層5の配向状態が制御されるし、一方、界面45Mのうちの一部しかエピタキシャル成長されたものでない場合においても、バッファ層4上に誘電体層5が成膜されれば、エピタキシャル成長される界面45Mの一部を核としてビスマス層状化合物が成長することにより誘電体層5が形成されるため、やはりc軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層5の配向状態が制御されるからである。
【0030】
次に、図1を参照して、積層体ユニット10の製造方法について簡単に説明する。なお、積層体ユニット10を構成する一連の構成要素の機能、材質および寸法については既に詳細に説明したので、それらの説明を以下では適宜省略する。
【0031】
積層体ユニット10を製造する際には、まず、基板1を準備したのち、その基板1の一面を覆うように下地層2を形成する。続いて、下地層2上に、必要に応じて密着層を形成したのち、後工程において形成されるバッファ層4の結晶構造の結晶方位D1とは異なる結晶方位D2に結晶が配向するように金属または合金を成膜することにより、電極層3を形成する。続いて、電極層3上に、結晶構造が結晶方位D1に配向し、すなわち界面34Mがエピタキシャル成長されないように導電性セラミックスを成膜することにより、バッファ層4を形成する。最後に、バッファ層4上に、界面45Mがエピタキシャル成長されるようにビスマス層状化合物を成膜することにより、誘電体層5を形成する。この誘電体層5が形成される際には、上記したようにビスマス層状化合物がバッファ層4上においてエピタキシャル成長することに基づき、そのビスマス層状化合物が熱力学的に最も安定化するように成長するため、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層5の配向状態が制御される。これにより、積層体ユニット10が完成する。なお、積層体ユニット10を製造する際に、下地層2から誘電体層5に至る一連の構成要素を形成するための手法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、パルスレーザ蒸着(PLD;Pulsed Laser Deposition )法、有機金属気相成長(MOCVD;Metal Organic Chemical Vapor Deposition )法、有機金属分解(MOD;Metal Organic Decomposition )法、ゾルゲル法に代表される液相(CSD;Chemical Solution Deposition)法などの成膜手法を含む薄膜プロセスを適宜使用可能である。
【0032】
本実施の形態に係る積層体ユニットでは、金属または合金を含む電極層3と、ビスマス層状化合物を含む誘電体層5との間に、同一の結晶面が膜面に対して平行な導電性セラミックスを含むバッファ層4を有するようにしたので、以下の理由により、誘電特性を確保することができる。
【0033】
すなわち、第1に、バッファ層4の結晶構造がc軸が膜面に対して垂直に配向するようにビスマス層状化合物を成長させることが可能な配向状態を有していることに基づき、積層体ユニット10の製造過程においてバッファ層4上にビスマス層状化合物を成膜して誘電体層5を形成することにより、そのビスマス層状化合物がバッファ層4上の少なくとも一部においてエピタキシャル成長するため、電極層3の結晶構造がc軸が膜面に対して垂直に配向するようにビスマス層状化合物を成長させることが可能な配向状態を有していなくても、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層5の配向状態が制御され、すなわち誘電体層5中のビスマス層状化合物においてc軸配向性が支配的となる。この場合には、誘電体層5に電圧が印加された場合に、電界の方向がビスマス層状化合物のc軸方向にほぼ一致するため、そのビスマス層状化合物において常誘電性が支配的となる。これにより、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層5の配向状態が制御されていない場合と比較して、その誘電体層5においてリーク電流が発生しにくくなると共に、誘電特性が向上する。
【0034】
第2に、電極層3と誘電体層5との間にキャップ層として機能するバッファ層4が介在していることに基づき、積層体ユニット10の製造過程において誘電体層5等を形成した際に発生した熱に起因して電極層3が物理的に不安定になったとしても、その電極層3がバッファ層4により物理的に維持される。この場合には、電極層3が熱的に凝集しやすい白金などの金属により構成されている場合においても、その電極層3中の金属が熱的に凝集しにくくなる。これにより、電極層3と誘電体層5との間にバッファ層4が介在していない場合と比較して、やはり誘電特性が向上する。
【0035】
第3に、電極層3と誘電体層5との間に拡散バリア層として機能するバッファ層4が介在していることに基づき、それらの電極層3と誘電体層5との間に不要な相互作用が発生しにくくなる。この場合には、電極層3が白金などの金属により構成されている場合においても、誘電体層5中のビスマス層状化合物のうちのビスマス(Bi)が電極層3中の金属に熱的に拡散しにくくなり、すなわちビスマスが金属と反応しにくくなる。これにより、電極層3と誘電体層5との間にバッファ層4が介在していない場合と比較して、やはり誘電特性が向上する。この場合には、特に、上記したバッファ層4が酸素の拡散バリア層としても機能することに基づき、電極層3がニッケルや銅などの酸化されやすい金属により構成されている場合においても、その電極層3中の金属が酸化されにくくなるため、電極層3の抵抗が意図せずに上昇しにくくなる。
【0036】
第4に、電極層3が低抵抗を有する金属または合金を含んで構成されていることに基づき、積層体ユニット10全体が低抵抗化するため、電極層3が金属または合金よりも高い抵抗を有する導電性酸化物などにより構成されている場合と比較して、やはり誘電特性が向上する。
【0037】
したがって、本実施の形態では、上記した4つの観点において誘電特性が向上するため、誘電特性を確保することができるのである。
【0038】
また、本実施の形態では、積層体ユニット10を構成する一連の構成要素が薄膜プロセスを使用して形成されると共に、上記したように積層体ユニット10において誘電特性が確保されることに基づき、その積層体ユニット10の小型化および高容量化を実現することができる。
【0039】
特に、積層体ユニット10を利用して薄膜容量素子や光デバイスなどの電子デバイスを構成すれば、上記したように誘電特性が向上するため、その電子デバイスの誘電特性等を確保することができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、図1に示したように、薄膜プロセスを使用して基板1上に下地層2から誘電体層5に至る一連の構成要素が形成されることに基づき、基板1、下地層2および電極層3がこの順に積層された積層構造を有するように積層体ユニット10を構成したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図2に示したように、基板1、下地層2および電極層3がこの順に積層された積層構造に代えて、電極基板6を有するように積層体ユニット10を構成してもよい。この電極基板6は、上記した基板1および電極層3の双方の機能を兼ねるものであり、その電極層3の構成材料と同様の材料により構成されている。この場合においても、バッファ層4の配向制御機能を利用して、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層5の配向状態が制御されるため、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0041】
以上をもって、本発明の一実施の形態に係る積層体ユニットについての説明を終了する。
【0042】
次に、図3を参照して、本発明の積層体ユニットを利用して構成される電子デバイスとして薄膜容量素子について説明する。図3は、薄膜容量素子としての薄膜コンデンサ20の断面構成を表している。
【0043】
この薄膜コンデンサ20は、例えば、高周波帯域において作動するコンピュータ、通信機器またはデジタル家電機器などの電子機器に搭載されるものであり、具体的には高周波帯域において電磁波ノイズが発生することを抑制する機能を有するデカップリングコンデンサである。具体的には、薄膜コンデンサ20は、例えば、図3に示したように、電極層3に対応する下部電極層31を備えると共に、誘電体層5上に新たに上部電極層32が設けられている点を除き、図1に示した積層体ユニット10と同様の構成を有している。すなわち、薄膜コンデンサ20は、基板1上に、下地層2と、下部電極層31と、バッファ層4と、誘電体層5と、上部電極層32とがこの順に積層された積層構造を有している。この薄膜コンデンサ20では、下部電極層31から上部電極層32に至る積層部分(上部電極層32/誘電体層5/バッファ層4/下部電極層31)が実質的にコンデンサを構成している。
【0044】
下部電極層31は、コンデンサのうちの一方の電極として機能する第1の電極である。この下部電極層31は、例えば、上記した積層体ユニット10のうちの電極層3の構成材料と同様の材料により構成されている。
【0045】
上部電極層32は、コンデンサのうちの他方の電極として機能する第2の電極である。この上部電極層32は、例えば、金属または合金を含んで構成されており、その厚さは約10nm〜1mm、好ましくは約100nm〜100μmである。上記した「金属または合金」としては、例えば、一般的な金属または合金が挙げられ、具体的には金属として銅(Cu)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、鉄(Fe)またはニッケル(Ni)などが挙げられ、合金としてケイ化タングステン(WSi)やケイ化モリブデン(MoSi)などが挙げられる。特に、上部電極層32の構成材料としては、例えば、下部電極層31と上部電極層32との間で電気的特性を対称に設定する観点から、下部電極層32の構成材料と同様であるのが好ましい。
【0046】
なお、薄膜コンデンサ20を構成する基板1、下地層2、バッファ層4および誘電体層5の機能、構成、材質および寸法等に関しては上記実施の形態において詳細に説明したので、それらの説明を省略する。
【0047】
この薄膜コンデンサ20は、主に、以下のように作動する。すなわち薄膜コンデンサ20は、電子機器のうちの主要部(例えばIC(Integrated Circuit))の電源端子近傍に接続された状態において、下部電極層31と上部電極層32との間に電圧が印加されると、電源配線に作動用の高周波電流を供給する。これにより、電源配線のインピーダンスが低下するため、電子機器が高周波帯域において作動した場合に不要な電磁波ノイズが発生することが抑制される。
【0048】
この薄膜コンデンサ20では、上記した積層体ユニット10を含んで構成されているため、上記したように、下部電極層31と誘電体層5との間にバッファ層4を有することに基づいて誘電特性が向上する。したがって、誘電特性を確保することができる。
【0049】
なお、上記では、電子デバイスとして薄膜容量素子(薄膜コンデンサ20)を構成するために積層体ユニット10を利用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、薄膜容量素子以外の他の電子デバイスを構成するために積層体ユニット10を利用してもよい。この「他の電子デバイス」としては、例えば、上記したように、無機EL(Electro Lumicescence)デバイスなどの光デバイスが挙げられる。この積層体ユニット10を利用して構成した無機ELデバイス30の一例は、図4に示した通りである。
【0050】
図4は、光デバイスとしての無機ELデバイス30の断面構成を表しており、図3に対応する断面構成を示している。この無機ELデバイス30は、例えば、ディスプレイなどの電子機器に光源として搭載されるものであり、例えば、図4に示したように、誘電体層5に対応する下部誘電体層51を備えると共に、その下部誘電体層51と上部電極層32との間に新たに発光層7および上部誘電体層52が下部誘電体層51に近い側から順に設けられている点を除き、図3に示した薄膜コンデンサ20と同様の構成を有している。すなわち、無機ELデバイス30は、基板1上に、下地層2と、下部電極層31と、バッファ層4と、下部誘電体層51と、発光層7と、上部誘電体層52と、上部電極層32とがこの順に積層された積層構造を有している。
【0051】
下部誘電体層51は、例えば、上記した積層体ユニット10のうちの誘電体層5の構成材料と同様の材料により構成されている。上部誘電体層52は、例えば、酸化シリコン(SiO2 )、窒化シリコン(SiN)、酸化タンタル(Ta2 5 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、チタン酸アルミニウム(AlTiO2 ;ATO)、酸化イットリウム(Y2 3 )、チタン酸バリウム(BaTiO3 )、チタン酸鉛(PbTiO3 )、チタン酸ジルコン酸鉛(PbZrTiO3 ;PZT)、ジルコニア(ZrO2 )、シリコンオキシナイトライド(SiON)、酸化アルミニウム(Al2 3 ;アルミナ)、サイアロン(SiAlON)、ニオブ酸鉛(PbNbO3 )、ニオブ酸マグネシウム酸鉛−チタン酸鉛(PbMgNbO2 −PbTiO2 ;PMN−PT)系材料などの誘電性材料を含んで構成されており、その厚さは約50nm〜1μm、好ましくは約100nm〜500nmである。なお、上部誘電体層52は、例えば、上記した一連の誘電性材料の積層構造を有していてもよいし、一連の誘電性材料の混合物を含んで構成されていてもよい。中でも、上部誘電体層52の構成材料としては、例えば、製造プロセス、安定性、絶縁耐圧性および密着性の観点から、シリコンオキシナイトライド、アルミナ、チタン酸アルミニウムまたはサイアロンの単層構造または積層構造を有しているのが好ましい。この上部誘電体層52は、例えば、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、ゾルゲル法または印刷焼成法などの既存の成膜手法を使用して形成可能である。
【0052】
発光層7は、無機EL現象を利用して発光するものである。この発光層7は、例えば、「月刊ディスプレイ(1998年4月号)」中の「最近のディスプレイの技術動向(田中省作,1頁〜10頁)」に記載されている一連の発光材料を含んで構成されており、具体的にはCaS:EuまたはZnS:Mn/CdSSeなどの赤色発光材料、ZnS:TbOFまたはZnS:Tbなどの緑色発光材料、SrS:Ce、(SrS:Ce/ZnS)n 、CaGa2 4 またはSr2 Ga2 5 :Ceなどの青色発光材料を含んで構成されている。この発光層7の厚さは、例えば、特に限定されるわけではないが、厚すぎると駆動電圧が上昇し、一方、薄すぎると発光効率が低下するため、発光材料に依存するものの、おおむね約100nm〜1μm、好ましくは約300nm〜800nmである。この発光層7は、例えば、スパッタリング法またはエレクトロンビーム蒸着法などの既存の成膜手法を使用して形成可能である。
【0053】
上部電極層32は、例えば、スズがドープされた酸化インジウム(ITO;Indium Tin Oxide)などの透明電極材料を含んで構成されている。
【0054】
なお、下部誘電体層51および上部誘電体層52の構成は、例えば、無機ELデバイス30に要求される誘電特性等に応じて適宜変更可能であり、具体的には下部誘電体層51および上部誘電体層52のそれぞれの厚さを調整したり、あるいは下部誘電体層51および上部誘電体層52のそれぞれが積層構造となるようにしてもよい。この無機ELデバイス30を構成する基板1、下地層2、下部電極層31およびバッファ層4の機能、構成、材質および寸法等に関しては、薄膜コンデンサ20に関して既に上記したので、それらの説明を省略する。
【0055】
この無機ELデバイス30では、下部電極層31と上部電極層32との間に電圧が印加されると、電界により加速された電子が発光中心に衝突することにより、その発光中心が励起されるため、発光層7が発光する。特に、無機ELデバイス30では、上記した積層体ユニット10を含んで構成されていることに基づき、誘電率が向上するため、発光層7に印加される電界が増加する。したがって、発光特性を確保することができる。
【0056】
なお、薄膜コンデンサ20および無機ELデバイス30に関する上記以外の効果および変形例は、上記実施の形態において説明した積層体ユニット10と同様である。
【実施例】
【0057】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0058】
上記実施の形態において説明した積層体ユニット(以下、単に「本発明の積層体ユニット」という。)を以下の手順で製造した。すなわち、まず、シリコン(Si)製の基板を熱酸化することにより、下地層として酸化ケイ素(SiO2 )を形成した。続いて、下地層上に、スパッタリング法を使用して密着層として酸化チタン(TiOx )を形成した。続いて、密着層上に、金属として白金(Pt)を成膜することにより電極層を形成した。この電極層では、結晶構造の結晶方位が[111]方位となった。続いて、電極層上に、導電性セラミックスとしてニッケル酸ランタン(LaNiO3 )を成膜することによりバッファ層を形成した。このバッファ層では、結晶が[111]方位に配向している電極層上においてニッケル酸ランタンがエピタキシャル成長しなかったため、バッファ層の結晶構造の結晶方位が[001]方位となった。最後に、バッファ層上に、ビスマス層状化合物としてチタン酸ビスマス酸ストロンチウム(SrBi4 Ti4 15)を成膜することにより30nmの厚さとなるように誘電体層を形成した。この誘電体層では、結晶が[001]方位に配向しているバッファ層上においてチタン酸ビスマス酸ストロンチウムがエピタキシャル成長したため、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層の配向状態が制御された。これにより、積層体ユニット(SrBi4 Ti4 15/LaNiO3 /Pt/TiOx /SiO2 /Si)が完成した。
【0059】
また、上記した積層体ユニットを利用して、薄膜容量素子として薄膜コンデンサ(以下、単に「本発明の薄膜コンデンサ」という。)を製造した。すなわち、積層体ユニットのうちの誘電体層上に、金属として白金(Pt)を成膜して上部電極層を形成することにより、薄膜コンデンサ(Pt/SrBi4 Ti4 15/LaNiO3 /Pt/TiOx /SiO2 /Si)が完成した。
【0060】
さらに、上記した積層体ユニットを利用して、光デバイスとして無機ELデバイス(以下、単に「本発明の無機ELデバイス」という。)を以下の手順で製造した。すなわち、まず、積層体ユニットのうちの誘電体層(下部誘電体層)上に、スパッタリング法を使用して橙色発光材料としてZnS:Mnを成膜することにより、600nmの厚さとなるように発光層を形成した。このZnS:Mnを成膜する際には、マンガン(Mn)を0.5重量%含むターゲットを使用した。続いて、発光層上に、スパッタリング法を使用して誘電性材料としてアルミナ(Al2 3 )を成膜することにより、50nmの厚さとなるように上部誘電体層を形成した。最後に、スパッタリング法を使用して透明電極材料としてITOを成膜して上部電極層を形成することにより、無機ELデバイス(ITO/Al2 3 /ZnS:Mn/SrBi4 Ti4 15/LaNiO3 /Pt/TiOx /SiO2 /Si)が完成した。
【0061】
これらの本発明の積層体ユニット、薄膜コンデンサおよび無機ELデバイスの諸特性を調べたところ、以下に示した一連の結果が得られた。なお、本発明の積層体ユニット、薄膜コンデンサおよび無機ELデバイスの諸特性を調べる際には、その諸特性を評価するために、電極層と誘電体層(下部誘電体層)との間にバッファ層が設けられていない点を除いて本発明の積層体ユニット、薄膜コンデンサおよび無機ELデバイスとそれぞれ同様の構成を有する比較例の積層体ユニット(SrBi4 Ti4 15/Pt/TiOx /SiO2 /Si)、薄膜コンデンサ(Pt/SrBi4 Ti4 15/Pt/TiOx /SiO2 /Si)および無機ELデバイス(ITO/Al2 3 /ZnS:Mn/SrBi4 Ti4 15/Pt/TiOx /SiO2 /Si)を製造し、それらの比較例の積層体ユニット、薄膜コンデンサおよび無機ELデバイスの諸特性も併せて調べた。
【0062】
まず、積層体ユニットのうちの誘電体層の配向状態を調べたところ、図5および図6に示した結果が得られた。図5および図6は誘電体層のX線回折測定結果を表しており、「横軸」はブラグの条件に基づく回折光線の角度2θ(°)を示し、「縦軸」は回折光線の強度を示している。なお、図5は本発明の積層体ユニットの測定結果を示し、図6は比較例の積層体ユニットの測定結果を示している。誘電体層の配向状態を調べる際には、X線としてCuKα線を利用したX線回折(XRD;X-Ray Diffraction )法を使用して、誘電体層の結晶構造を定性的に調べた。
【0063】
図5および図6に示した結果から判るように、本発明の積層体ユニットと比較例の積層体ユニットとの間では、X線回折測定結果に差異が見られた。すなわち、電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在している本発明の積層体ユニット(図5参照)では、角度2θ=32°近傍に基板(Si)を示すピーク5Aが見られ、角度2θ=40°近傍に電極層(Pt)を示すピーク5Bが見られ、角度2θ=23°および48°近傍にバッファ層(LaNiO3 )を示すピーク5Cが見られ、角度2θ=13°,18°,22°,37°,45°近傍にc軸配向した誘電体層(SrBi4 Ti4 15)を示すピーク5Dが見られた。一方、電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在していない比較例の積層体ユニット(図6参照)では、角度2θ=32°近傍に基板(Si)を示すピーク6Aが見られ、角度2θ=40°近傍に電極層(Pt)を示すピーク6Bが見られ、角度2θ=13°,18°,22°,36°,44°近傍にc軸配向した誘電体層(SrBi4 Ti4 15)を示すピーク6Dが見られた他、角度2θ=30°近傍にc軸配向していない誘電体(SrBi4 Ti4 15)を示すピーク6Eが見られた。このことから、本発明の積層体ユニットでは、電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在していることにより、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層の配向状態を制御することが可能であることが確認された。
【0064】
続いて、本発明の薄膜コンデンサの周波数特性を調べたところ、図7に示した結果が得られた。図7は薄膜コンデンサの周波数特性として比誘電率および誘電損失の周波数依存性を表しており、「横軸」は周波数F(Hz)を示し、「縦軸(左)」は比誘電率εr ,「縦軸(右)」は誘電損失tanδを示している。なお、図7中の「7A」は比誘電率εr を示し、「7B」は誘電損失tanδを示している。
【0065】
図7に示した結果から判るように、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在している本発明の薄膜コンデンサでは、比誘電率εr (7A)が周波数Fの変化に応じて変化せずにほぼ一定であると共に、誘電損失tanδ(7B)も主要な周波数Fの範囲内(103 Hz〜105 Hz)では周波数Fの変化に応じて変化せずにほぼ一定であり、具体的には比誘電率εr =145,誘電損失tanδ=0.02であった。このときの薄膜コンデンサの単位面積当たりの容量C/Aは、100kHzの測定周波数において4.3μF/cm2 であった。なお、比較例の薄膜コンデンサでは、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在しておらず、すなわちc軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層の配向状態が制御されないことに起因してショートしたため、本発明の薄膜コンデンサとは異なり、正常に周波数特性を調べることができなかった。このことから、本発明の薄膜コンデンサでは、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在していることにより、周波数の観点において安定な誘電特性が得られると共に、良好な抵抗特性が得られることが確認された。
【0066】
続いて、本発明の薄膜コンデンサのDCバイアス特性を調べたところ、図8に示した結果が得られた。図8は薄膜コンデンサのDCバイアス特性として比誘電率および誘電損失のDCバイアス依存性を表しており、「横軸」は電界E(kV/cm)を示し、「縦軸」は図7と同様に比誘電率εr および誘電損失tanδを示している。なお、図8中の「8A」は比誘電率εr を示し、「8B」は誘電損失tanδを示している。
【0067】
図8に示した結果から判るように、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在している本発明の薄膜コンデンサでは、比誘電率εr (8A)が電界Eの変化に応じて変化せずにほぼ一定であると共に、誘電損失tanδ(8B)も電界Eの変化に応じて変化せずにほぼ一定であった。なお、比較例の薄膜コンデンサでは、上記したように、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が存在していないことに起因してショートしたため、正常にDCバイアス特性を調べることができなかった。このことから、本発明の薄膜コンデンサでは、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在していることにより、DCバイアスの観点においても安定な誘電特性が得られることが確認された。
【0068】
続いて、本発明の薄膜コンデンサに関する誘電体層の厚さ依存性を調べたところ、図9に示した結果が得られた。図9は薄膜コンデンサに関する誘電体層の厚さ依存性として比誘電率および誘電損失と誘電体層の厚さとの相関を表しており、「横軸」は誘電体層の厚さT(nm)を示し、「縦軸」は図7と同様に比誘電率εr および誘電損失tanδを示している。なお、図9中の「9A」は比誘電率εr を示し、「9B」は誘電損失tanδを示している。
【0069】
図9に示した結果から判るように、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在している本発明の薄膜コンデンサでは、比誘電率εr (9A)が厚さTの変化に応じて変化せずにほぼ一定であると共に、誘電損失tanδ(9B)も厚さTの変化に応じて変化せずにほぼ一定であった。なお、比較例の薄膜コンデンサでは、上記したように、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が存在していないことに起因してショートしたため、誘電特性を調べることができなかった。このことから、本発明の薄膜コンデンサでは、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在していることにより、誘電体層を薄くしても安定な誘電特性が得られることが確認された。
【0070】
続いて、薄膜コンデンサのうちの誘電体層の表面状態を調べたところ、図10および図11に示した結果が得られた。図10および図11は誘電体層の表面状態の観察結果を表しており、図10は本発明の薄膜コンデンサの観察結果を示し、図11は比較例の薄膜コンデンサの観察結果を示している。誘電体層の表面状態を観察する際には、誘電体層を形成したのち、セイコーインスツルメンツ社製の原子間力顕微鏡(AFM;Atomic Force Microscope )SPI3800を使用して誘電体層の表面状態を観察した。この際、誘電体層の表面状態を評価するために、上記したAFMを使用して誘電体層の表面粗さ(算術平均粗さ)Ra(nm)を算出した。なお、図10および図11に示した観察結果では、色調の差異が表面凹凸を表しており、すなわち色調の差異(色のばらつき)が大きいほど表面凹凸が大きいことを示し、色調の差異が小さいほど表面凹凸が小さいことを示している。
【0071】
図10および図11に示した結果から判るように、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在している本発明の薄膜コンデンサ(図10参照)では、全体に渡って色調がほぼ均一であり、すなわち誘電体層の表面凹凸が小さい(誘電体層の表面平坦性が高い)様子が観察されたが、下部電極層との誘電体層との間にバッファ層が介在していない比較例の薄膜コンデンサ(図11参照)では、全体に渡って色調がばらついており、すなわち誘電体層の表面凹凸が大きい(誘電体層の表面平坦性が低い)様子が観察された。具体的には、誘電体層の表面粗さRaは、本発明の薄膜コンデンサにおいてRa=2.70nmであるのに対して比較例の薄膜コンデンサにおいてRa=20.0nmであり、比較例よりも本発明において著しく小さくなった。なお、確認までに、誘電体層の形成前段階における下部電極層およびバッファ層のそれぞれの表面状態も併せて観察したところ、図12に示したように、下部電極層では表面凹凸が小さく(下部電極層の表面平坦性が高く)、図13に示したように、バッファ層でもやはり表面凹凸が小さかった(バッファ層の表面平坦性が高かった)。具体的には、表面粗さRaは、下部電極層においてRa=0.831nmであり、バッファ層においてRa=1.11nmであった。すなわち、本発明の薄膜コンデンサでは、下部電極層上にバッファ層を介して誘電体層を形成することにより、下部電極層およびバッファ層の双方が平坦な場合に誘電体層も平坦化されるのに対して、比較例の薄膜コンデンサでは、下部電極層上に誘電体層を形成することにより、下部電極層が平坦であっても誘電体層が平坦化されない。このことから、本発明の薄膜コンデンサでは、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在していることにより、誘電体層が平坦化され、すなわちc軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層の配向状態が制御されることが確認された。
【0072】
最後に、無機ELデバイスの発光特性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。表1は無機ELデバイスの発光試験結果を表しており、「本発明」は本発明の無機ELデバイスの試験結果を示し、「比較例」は比較例の無機ELデバイスの試験結果を示している。無機ELデバイスの発光試験としては、下部電極層と上部電極層との間に駆動周波数=1kHz,印加電圧波形=パルス(パルス幅=50μS),駆動電圧=60Vの交流電圧を印加することにより、発光層の「発光の有無」を調べた。なお、「発光の有無」中の「○」は発光有りを表し、「×」は発光無しを表している。
【0073】
【表1】

【0074】
表1に示した結果から判るように、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在している本発明の無機ELデバイスでは、発光層が橙色に発光したのに対して、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在していない無機ELデバイスでは、発光が認められなかった。このことから、本発明の無機ELデバイスでは、下部電極層と誘電体層との間にバッファ層が介在していることにより、安定な誘電特性および発光特性が得られることが確認された。
【0075】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。具体的には、例えば、上記実施の形態および実施例では、バッファ層の構成材料として、化学量論的組成式(7)で表される組成を有する導電性セラミックスを例示したが、必ずしもこれに限られるものではなく、c軸が膜面に対して垂直に配向するように誘電体層の配向状態を制御可能な限り、バッファ層の構成材料は自由に選択可能である。具体的には、例えば、バッファ層の構成材料は、酸化物の他、窒化物などであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る積層体ユニットは、例えば薄膜容量素子(例えば薄膜コンデンサやメモリなど)および光デバイスなどの電子デバイスに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施の形態に係る積層体ユニットの断面構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した積層体ユニットの構成に関する変形例を表す断面図である。
【図3】本発明の積層体ユニットを利用して構成される薄膜容量素子(薄膜コンデンサ)の断面構成を表す断面図である。
【図4】本発明の積層体ユニットを利用して構成される光デバイス(無機ELデバイス)の断面構成を表す断面図である。
【図5】本発明の積層体ユニットのX線回折測定結果を表す図である。
【図6】比較例の積層体ユニットのX線回折測定結果を表す図である。
【図7】本発明の薄膜コンデンサの周波数特性を表す図である。
【図8】本発明の薄膜コンデンサのDCバイアス特性を表す図である。
【図9】本発明の薄膜コンデンサに関する誘電体層の膜厚依存性を表す図である。
【図10】本発明の薄膜コンデンサのうちの誘電体層の表面状態の観察結果を表す図である。
【図11】比較例の薄膜コンデンサのうちの誘電体層の表面状態の観察結果を表す図である。
【図12】本発明の薄膜コンデンサのうちの下部電極層の表面状態の観察結果を表す図である。
【図13】本発明の薄膜コンデンサのうちのバッファ層の表面状態の観察結果を表す図である。
【符号の説明】
【0078】
1…基板、2…下地層、3…電極層、4…バッファ層、5…誘電体層、6…電極基板、7…発光層、10…積層体ユニット、20…薄膜コンデンサ、30…無機ELデバイス、31…下部電極層、32…上部電極層、34M,45M…界面、51…下部誘電体層、52…上部誘電体層。












【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または合金を含む電極と、同一の結晶面が膜面に対して平行な導電性セラミックスを含むバッファ層と、c軸が膜面に対して垂直に配向したビスマス層状化合物を含む誘電体層とがこの順に積層された積層構造を有している
ことを特徴とする積層体ユニット。
【請求項2】
前記バッファ層のうちの前記同一の結晶面が、立方晶、正方晶、斜方晶または単斜晶における(100)面、(010)面または(001)面のうちのいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載の積層体ユニット。
【請求項3】
前記導電性セラミックスが、導電性ペロブスカイト化合物を含んでいる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層体ユニット。
【請求項4】
前記導電性ペロブスカイト化合物が、下記の化学量論的組成式(1)で表される組成を有している
ことを特徴とする請求項3記載の積層体ユニット。
Lnx 1-x BO3 ・・・(1)
(ただし、「Ln」はランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)を含む群のうちの少なくとも1種のランタノイド系希土類元素。「A」はカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。「B」はチタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。なお、「A」または「B」を2種類以上の金属元素で構成する場合、その2種類以上の金属元素の比率は任意に設定可能である。「x」は0≦x≦1。)
【請求項5】
前記導電性ペロブスカイト化合物が、ニッケル酸ランタン(LaNiO3 )である
ことを特徴とする請求項4記載の積層体ユニット。
【請求項6】
前記金属または合金が、白金(Pt)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素を含んでいる
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の積層体ユニット。
【請求項7】
前記電極と前記バッファ層との間の界面が、エピタキシャル成長されたものではないのに対して、
前記バッファ層と前記誘電体層との間の界面のうちの少なくとも一部が、エピタキシャル成長されたものである
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の積層体ユニット。
【請求項8】
前記バッファ層の結晶構造が、c軸が膜面に対して垂直に配向するように前記ビスマス層状化合物を成長させることが可能な第1の結晶方位に配向しており、
前記電極の結晶構造が、前記第1の結晶方位とは異なる第2の結晶方位に配向している
ことを特徴とする請求項7記載の積層体ユニット。
【請求項9】
前記ビスマス層状化合物が、下記の化学量論的組成式(2)で表される組成を有している
ことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の積層体ユニット。
(Bi2 2 2+(Dm-1 m 3m+12-・・・(2)
(ただし、「D」はナトリウム(Na)、カリウム(K)、鉛(Pb)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)およびビスマス(Bi)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。「E」は鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。なお、「D」または「E」を2種類以上の金属元素で構成する場合、その2種類以上の金属元素の比率は任意に設定可能である。「m」は正の整数。)
【請求項10】
前記化学量論的組成式(2)中のmの値が、偶数である
ことを特徴とする請求項9記載の積層体ユニット。
【請求項11】
前記mの値が、4である
ことを特徴とする請求項10記載の積層体ユニット。
【請求項12】
金属または合金を含む第1の電極と、同一の結晶面が膜面に対して平行な導電性セラミックスを含むバッファ層と、c軸が膜面に対して垂直に配向したビスマス層状化合物を含む誘電体層と、第2の電極とがこの順に積層された積層構造を有している
ことを特徴とする薄膜容量素子。
【請求項13】
前記バッファ層のうちの前記同一の結晶面が、立方晶、正方晶、斜方晶または単斜晶における(100)面、(010)面または(001)面のうちのいずれかである
ことを特徴とする請求項12記載の薄膜容量素子。
【請求項14】
前記導電性セラミックスが、導電性ペロブスカイト化合物を含んでいる
ことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の薄膜容量素子。
【請求項15】
前記導電性ペロブスカイト化合物が、下記の化学量論的組成式(3)で表される組成を有している
ことを特徴とする請求項14記載の薄膜容量素子。
Lnx 1-x BO3 ・・・(3)
(ただし、「Ln」はランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)を含む群のうちの少なくとも1種のランタノイド系希土類元素。「A」はカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。「B」はチタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。なお、「A」または「B」を2種類以上の金属元素で構成する場合、その2種類以上の金属元素の比率は任意に設定可能である。「x」は0≦x≦1。)
【請求項16】
前記導電性ペロブスカイト化合物が、ニッケル酸ランタン(LaNiO3 )である
ことを特徴とする請求項15記載の薄膜容量素子。
【請求項17】
前記金属または合金が、白金(Pt)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素を含んでいる
ことを特徴とする請求項12ないし請求項16のいずれか1項に記載の薄膜容量素子。
【請求項18】
前記第1の電極と前記バッファ層との間の界面が、エピタキシャル成長されたものではないのに対して、
前記バッファ層と前記誘電体層との間の界面のうちの少なくとも一部が、エピタキシャル成長されたものである
ことを特徴とする請求項12ないし請求項17のいずれか1項に記載の薄膜容量素子。
【請求項19】
前記バッファ層の結晶構造が、c軸が膜面に対して垂直に配向するように前記ビスマス層状化合物を成長させることが可能な第1の結晶方位に配向しており、
前記第1の電極の結晶構造が、前記第1の結晶方位とは異なる第2の結晶方位に配向している
ことを特徴とする請求項18記載の薄膜容量素子。
【請求項20】
前記ビスマス層状化合物が、下記の化学量論的組成式(4)で表される組成を有している
ことを特徴とする請求項12ないし請求項19のいずれか1項に記載の薄膜容量素子。
(Bi2 2 2+(Dm-1 m 3m+12-・・・(4)
(ただし、「D」はナトリウム(Na)、カリウム(K)、鉛(Pb)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)およびビスマス(Bi)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。「E」は鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)を含む群のうちの少なくとも1種の金属元素。なお、「D」または「E」を2種類以上の金属元素で構成する場合、その2種類以上の金属元素の比率は任意に設定可能である。「m」は正の整数。)
【請求項21】
前記化学量論的組成式(4)中のmの値が、偶数である
ことを特徴とする請求項20記載の薄膜容量素子。
【請求項22】
前記mの値が、4である
ことを特徴とする請求項21記載の薄膜容量素子。


















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−73685(P2006−73685A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253616(P2004−253616)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】