説明

積層錠

【課題】プロピオン酸系NSAIDsを含有する層と、別層に特定の制酸剤(塩基性無機金属塩)を含有する層とを有する積層錠において、初期及び保存後に優れた崩壊性を有する積層錠を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)及び(B)カルシウム塩(但し、塩基性無機金属塩を除く)を含有する第1層と、(C)塩基性無機金属塩とを含有する第2層とを有する積層錠。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を第1層に含有する積層錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イブプロフェン等のプロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬(以下、プロピオン酸系NSAIDs)は、優れた消炎、鎮痛、解熱作用を有し、鎮痛・解熱剤及び感冒薬の成分として広く使用されている。プロピオン酸系NSAIDsの副作用は比較的少ないと言われているが、服用者によっては胃障害を引き起こすことがある。そのため、胃障害抑制のため制酸剤が配合されることがある。また、上記プロピオン酸系NSAIDsは、酸性領域において難溶性の薬物であることから、その溶出性改善のため塩基性成分と共に製剤化されることもある。
【0003】
上記プロピオン酸系NSAIDsは、これら塩基性成分と反応し、その有効性を低下させることが知られており、その回避のため、錠剤化に際して、上記プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬と、塩基性成分とを別の層に配合した積層錠とする技術が知られていた。しかしながら、積層錠化を行うと、プロピオン酸系NSAIDsを含有する層の崩壊性が遅延するだけでなく、保存後の崩壊性がさらに遅延するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−122769号公報
【特許文献2】特開2009−263305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記、プロピオン酸系NSAIDsを含有する層の崩壊性遅延の問題は、プロピオン酸系NSAIDsを含有する層とは別層に、特定の制酸剤(塩基性無機金属塩)を配合した積層錠とした場合に、生じやすいことを知見した。この崩壊遅延を抑制するためには、プロピオン酸系NSAIDsを含有する層の賦形剤量を増量したり、崩壊剤を多量に配合させる必要があるが、この手段をとると、錠剤が大型化したり、保存後の外観が悪化する等の不具合が生じる。
【0006】
以上のことから、プロピオン酸系NSAIDsを含有する層と、別層に特定の制酸剤(塩基性無機金属塩)を含有する層とを有する積層錠において、上記のような不具合を生じさせることなく、初期及び保存後に優れた崩壊性を有する積層錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、プロピオン酸系NSAIDsを含有する層とは別層に、特定の制酸剤(塩基性無機金属塩)を配合した積層錠において、プロピオン酸系NSAIDsを含有する層に、無水リン酸水素カルシウム等のカルシウム塩を配合することにより、錠剤の大型化や保存後の外観悪化等の不具合を生ずることなく、初期及び保存後のプロピオン酸系NSAIDsを含有する層の崩壊性を低下させることなく、溶出性が向上することを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は下記積層錠を提供する。
[1].(A)プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)及び(B)カルシウム塩(但し、塩基性無機金属塩を除く)を含有する第1層と、(C)塩基性無機金属塩とを含有する第2層とを有する積層錠。
[2].(A)成分が、イブプロフェン、ケトプロフェン及びナプロキセンから選ばれる1種又は2種以上である[1]記載の積層錠。
[3].(B)成分が、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム及びアスコルビン酸カルシウムから選ばれる1種又は2種以上である[1]又は[2]記載の積層錠。
[4].第1層中の(A)成分の含有量が35〜90質量%である[1]〜[3]のいずれかに記載の積層錠。
[5].さらに、(D)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース及びクロスポビドンから選ばれる化合物を、第1層に配合することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の積層錠。
[6].(C)成分が、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の積層錠。
[7].第1層が、(A)成分の造粒物と、(B)成分との混合物である[1]〜[6]のいずれかに記載の積層錠。
[8].第1層中の(B)/(A)で表される含有質量比が、0.01以上である[1]〜[7]のいずれかに記載の積層錠。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プロピオン酸系NSAIDsを含有する層とは別層に、特定の制酸剤(塩基性無機金属塩)を配合した積層錠であって、錠剤の大型化や保存後の外観悪化等の不具合を生ずることなく、初期及び保存後においても、プロピオン酸系NSAIDsを含有する層の崩壊性・溶出性が良好な積層錠を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の積層錠は、(A)プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)及び(B)カルシウム塩(但し、塩基性無機金属塩を除く)を含有する第1層と、(C)塩基性無機金属塩とを含有する第2層とを有するものである。
【0011】
[第1層]
第1層は、(A)プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)及び(B)カルシウム塩(但し、塩基性無機金属塩を除く)を含有する。
【0012】
(A)プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
プロピオン酸系とはプロピオン酸基を有するものをいい、プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、ロキソプロフェン等が挙げられる。中でも、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンが好ましく、イブプロフェンがより好ましい。
【0013】
(B)カルシウム塩(但し、塩基性無機金属塩を除く)
カルシウム塩としては、例えば、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウムが好ましく、無水リン酸水素カルシウムがより好ましい。但し、(C)塩基性無機金属塩は含まれない。
【0014】
第1層中の(A)成分の含有量は、製造性に問題が無い範囲で任意に設定できるが、製造性、崩壊性及び溶出性の観点から、30〜95質量%が好ましく、35〜90質量%がより好ましく、40〜80質量%がさらに好ましく、45〜75質量%が特に好ましい。この範囲とすることで、崩壊性、同時に溶出性がより向上する。第1層中の(A)成分の含有量が少なすぎると、積層錠が大型化し、嚥下性が低下するおそれがある。
【0015】
(A)成分は単独で用いてもよいが、(A)成分の造粒物でもよい。例えば、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性結合剤を用いて湿式造粒してもよく、他の賦形剤と共に乾式圧縮造粒を行ってもよい。なお、造粒粒子の平均粒径は、50μm以上が好ましく、75μm以上がより好ましく、100μm以上が更に好ましい。上限については、崩壊性の点から特に制限はないが、製造性の観点から1000μm以下とするのが好ましい。測定方法はレーザー回折式粒度分布測定装置にて測定し、個数%により割合を算出する。
【0016】
第1層中の(B)成分の含有量は、製造性に問題が無い範囲で任意に設定できるが、製造性、崩壊性及び溶出性の観点から、(B)/(A)で表される含有質量比は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましい。上限については、崩壊性及び溶出性の点からは特に制限はないが、製造性と嚥下性の点を考慮すると、1.5以下とするとよい。
【0017】
なお、第1層中の(B)成分の含有量は、上記(A)成分の含有量、(B)/(A)で表される含有質量比により適宜選択されるが、0.3〜70質量%が好ましく、1.5〜60質量%がより好ましく、3〜50質量%が特に好ましい。この範囲とすることで、崩壊性、同時に溶出性がより向上する。
【0018】
第1層の(A)成分と(B)成分との混合方法は、(A)成分の造粒物と、(B)成分との混合物であることが好ましい。別々の造粒物とすることによって、(A)成分と(B)成分とを同時造粒するよりも、(B)成分添加による、第1層の崩壊性及び溶出性向上効果がより発揮される。
【0019】
さらに、(D)崩壊剤を第1層に配合することが好ましい。(D)成分を配合することで、崩壊性及び溶出性がさらに向上する。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(D)崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン(1−エテニルピロリジン−2−オンの架橋ホモポリマー)、カルメロース(カルボキシメチルセルロース,セルロースのカルボキシメチルエーテル)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等が挙げられる。中でも、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、クロスポビドンが好ましく、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。
【0020】
第1層中の(D)成分の含有量は、製造性に問題が無い範囲で任意に設定できるが、製造性、崩壊性及び溶出性の観点から、(D)/(A)で表される含有質量比は、1.0以下が好ましく、0.1〜1.5がより好ましく、0.2〜1.0がさらに好ましい。この比率とすることで、崩壊性及び溶出性向上効果をより得ることができる。上記比率が1.0以下とすることで、保存後の錠剤表面のざらつきがなく、外観も良好である。
【0021】
なお、第1層中の(D)成分の含有量は、上記(A)成分の含有量、(D)/(A)で表される含有質量比により適宜選択されるが、5〜40質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。この範囲とすることで、崩壊性、同時に溶出性がより向上する。
【0022】
[第2層]
第2層は(C)塩基性無機金属塩を含有する。
【0023】
(C)塩基性無機金属塩
(C)塩基性無機金属塩としては、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、マグネシウム及び/又はカルシウム、マグネシウム及び/又はアルミニウムの塩基性無機塩が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、重質炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、メタケイアルミン酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、水酸化アルミニウム(乾燥水酸化アルミニウムゲル等)等が挙げられる。中でも、マグネシウム及び/又はアルミニウムを含有する塩基性無機塩が好ましく、特にアルミニウムを含有する塩基性無機塩が好ましい。水酸化アルミニウム、メタケイアルミン酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムであり、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムがより好ましく、水酸化アルミニウムが特に好ましい。第2層中の(C)成分の含有量は、1〜90質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましい。
【0024】
第1層及び第2層には、さらに(E)滑沢剤を配合してもよい。本発明によれば、第1層に(E)滑沢剤を配合しても、目的とする第1層の崩壊性が得られる。(E)滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸塩、パルミチン酸又はその塩、ジメチルポリシロキサン、タルク、ポリエチレングリコール、ステアリン酸又はその塩、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、ステアリン酸マグネシウムが好ましい。
【0025】
第1層中の(E)成分の含有量は、0.001〜10.0質量%が好ましく、0.01〜7質量%がより好ましい。第2層中の(E)成分の含有量は、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0026】
なお、第2層中にも、(D)崩壊剤を配合してもよい。崩壊剤及び好ましい崩壊剤については、上記第1層中の(D)崩壊剤と同様である。第2層中の(D)成分の含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0027】
本発明の積層錠には、上記成分の他に、本発明の効果及び保存安定性を損なわない範囲で、任意成分を配合することができる。任意成分としては、生理活性成分や添加剤が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、適量を配合することができる。
【0028】
生理活性成分としては、例えば、(A)成分以外の解熱鎮痛成分(例えば、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、アセトアミノフェン、エテンザミド、スルピリン、エトドラク等)、鎮静催眠成分(例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等)、抗ヒスタミン成分(例えば、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール等)、中枢興奮成分(例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等)、鎮咳去痰成分(コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl−メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン)、ビタミン成分(例えば、ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2及びその誘導体、並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体、並びにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等)等が挙げられる。
【0029】
添加剤としては、結合剤、賦形剤、香料、色素、甘味剤、酸味料等が挙げられる。具体的には、結合剤としては、澱粉、トウモロコシデンプン、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等が挙げられる。賦形剤としては、乳糖、コーンスターチ、結晶セルロース、粉糖、マンニトール、L−システイン等が挙げられる。香料としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。甘味料としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。酸味料としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸又はそれらの塩等を用いることができる。
【0030】
第1,2層中の(F)賦形剤の含有量は、特に制限はなく、各層中に例えば1〜80質量%等とすることができる。
【0031】
本発明の積層錠は、上記第1層と第2層とを積層してなるものであるが、さらに複数の層が積層された多層錠であってもよい。積層錠の製造方法は特に限定されず、例えば打錠機を用いて、第1層成分の混合物(粉体)と、第2層成分の混合物(粉体)とを積層し、打錠することにより得ることができる。打錠圧は目的とする錠剤(口腔内崩壊錠、胃内崩壊性錠剤)により、適宜選定される。
【0032】
第1層と第2層との質量比は1:0.4〜1:3が好ましく、(C)第2層、/(A)第1層の質量比は0.1〜2が好ましい。
【0033】
積層錠の寸法は特に限定されず、(A)成分の配合量及び用量等を考慮して適宜決定することができるが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の観点から、積層錠の径として5〜14mmφが好ましく、6〜12mmφがより好ましい。また、1錠あたりの錠剤質量としては150〜700mg程度が適切である。
【0034】
得られた積層錠は、必要に応じてコーティング剤によりコーティング処理を施してもよい。かかるコーティング剤としては、本発明が目的とする崩壊性を著しく損なわないものを選択することが好ましく、中でも、水溶性高分子化合物、可塑剤が好ましい。具体的には、水溶性高分子化合物としては、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、クロスポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、単糖類、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖等)、乳糖、麦芽糖、キシロース、異性化乳糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、還元澱粉糖化物、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、オリゴ糖、スクロース、トレハロース、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物)等が挙げられる。可塑剤としては、クエン酸トリエチル、トリアセチン等の日本薬局方(広川書店)及び医薬品添加物規格((株)薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。コーティング剤の使用量は、積層錠全体に対して0.5〜1.5質量%程度とするとよい。
【0035】
本発明の積層錠は、解熱鎮痛薬や風邪薬として用いることができ、飲みやすさ、有効性発揮の点から、胃の中で崩壊する胃内崩壊性錠剤であることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示す。
【0037】
表1〜6に記載の積層錠を以下の方法で調製し、下記評価を行った。結果を表中に併記する。
【0038】
<崩壊性>
日本薬局方に収載される錠剤の崩壊試験法に準じ、6錠の崩壊時間を測定しその平均値を求めた。崩壊試験液は水を用いた。結果を下記評価基準で示す。
[崩壊性評価基準]
◎:3分未満の崩壊
○:3分以上5分未満の崩壊
△:5分以上10分未満の崩壊
×:10分以上の崩壊
【0039】
<溶出性>
日本薬局方に収載される溶出試験パドル法に準じて行った。溶出試験液のpHは1.2、パドル回転数は50rpmとし、経時で試験液を採取して溶出率が90%になる時間を評価した。なお評価は3回行いその平均値で評価した。結果を下記評価基準で示す。
[溶出性評価基準]
◎:溶出率30%に達するのが5分未満
○:溶出率30%に達するのが5分以上10分未満
△:溶出率30%に達するのが10分以上15分未満
×:溶出率30%に達するのが15分以上
【0040】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
(A)イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンに、各(A)成分に対しヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の濃度が5%になるように、HPC水溶液を添加し(A)成分の造粒物を得た。
次に(B)無水リン酸水素カルシウム、(D)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)を、(E)ステアリン酸マグネシウムと共に(A)成分の造粒物と混合した。
上記で得られた混合粉体を第1層に、第2層を(C)乾燥水酸化アルミニウムゲル、(D)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、(F)結晶セルロース、(E)ステアリン酸マグネシウムとの混合物とし、ロータリー打錠機にて打錠し(φ8.0mm)、積層錠を得た。得られた積層錠について、崩壊性と(A)成分の溶出性を評価した。また、得られた積層錠をPTP包装し、50℃75%RH条件化で2週間保管した積層錠についても同様に、崩壊性と(A)成分の溶出性を評価した。
その結果、いずれの組成でも初期及び保存後において優れた崩壊性、溶出性を示した。 特に(A)成分としてイブプロフェン造粒物を用いたときに最も優れた崩壊性、溶出性を示した。一方、比較例にあるように、(B)成分を配合しなかった場合には、初期及び保存後の積層錠は、優れた崩壊性、溶出性を示さなかった。
【0041】
【表1】

【0042】
[実施例4,5]
(B)成分としてリン酸水素カルシウム、リン酸カルシウムを選択し、実施例1〜3と同様の評価を行った。その結果、いずれの組成においても優れた崩壊性、溶出性を示した。
【0043】
【表2】

【0044】
[実施例6〜9]
(D)成分として、クロスポビドン又はカルメロースを配合した場合、トウモロコシデンプンを配合した場合について、前述までと同様の評価を行った。
【0045】
【表3】

【0046】
[実施例10〜12]
(B)成分の無水リン酸水素カルシウムの配合量を変化させ、前述と同様に崩壊性と溶出性を評価した。
【0047】
【表4】

【0048】
[実施例13,14]
(A)成分のイブプロフェン造粒物の配合量を変化させた錠剤について、前述と同様に崩壊性と溶出性を評価した。その結果、いずれの錠剤でも優れた崩壊性と溶出性を示した。(A)成分配合量が150mg以上では、錠剤が大型化し嚥下性も低下した。
【0049】
【表5】

【0050】
[実施例15,16]
(D)成分の配合量を変化させた錠剤について、前述と同様に崩壊性と溶出性を評価した。その結果、いずれの錠剤でも優れた崩壊性と溶出性を示した。
【0051】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)プロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)及び(B)カルシウム塩(但し、塩基性無機金属塩を除く)を含有する第1層と、(C)塩基性無機金属塩とを含有する第2層とを有する積層錠。
【請求項2】
(A)成分が、イブプロフェン、ケトプロフェン及びナプロキセンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の積層錠。
【請求項3】
(B)成分が、無水リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム及びアスコルビン酸カルシウムから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の積層錠。
【請求項4】
第1層中の(A)成分の含有量が35〜90質量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の積層錠。
【請求項5】
さらに、(D)低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース及びクロスポビドンから選ばれる化合物を、第1層に配合することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の積層錠。
【請求項6】
(C)成分が、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の積層錠。
【請求項7】
第1層が、(A)成分の造粒物と、(B)成分との混合物である請求項1〜6のいずれか1項記載の積層錠。
【請求項8】
第1層中の(B)/(A)で表される含有質量比が、0.01以上である請求項1〜7のいずれか1項記載の積層錠。

【公開番号】特開2013−87061(P2013−87061A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226360(P2011−226360)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】