説明

空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物

【課題】高温下に曝されても耐粘着性および耐摩擦性に優れ、機械的強度の低下も少なく、耐熱性が良好な空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物および該ゴム組成物を用いた空気浮上式コンベヤベルトの提供。
【解決手段】天然ゴム(NR)とスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)とからなるゴム成分、加硫剤、加硫促進剤およびカーボンブラックを含有し、
前記加硫剤として、少なくともモルフォリン・ジスルフィドを含有し、
前記加硫促進剤として、少なくともテトラメチルチウラム・モノスルフィドを含有する、空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物および該ゴム組成物を用いた空気浮上式コンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
空気浮上式コンベヤベルトは、ベルト支持体に穿設した空気吹出孔から空気を吹き出すことにより、その一部がベルト支持体から浮上した状態で走行し、キャリーローラーとの抵抗が少なくなり、それにより動力ロス(消費電力)を低減させることができる省エネルギー型のコンベヤベルトである。
この種のコンベヤベルトとしては、1対のプーリ間に掛け回した無端の可撓性ベルトの往路部分を同軸状に配設した内外2重の円管のうちの内側円管内に挿通させるとともに、復路部分を外側円管と内側円管との間に挿通させて、往路および復路がそれぞれ樋状すなわちトラフ形状をなすようにしてベルトを走行させ、かつ、内外の円管の下部に一定間隔で穿設された空気吹込み口より空気を内方に吹き込んでベルトを浮上させることにより、ベルトの走行抵抗を軽減させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、ベルトの往路部分を挿通させる円管と、復路部分を挿通させる円管とを、上下に平行に配設したものも知られている。
【0003】
しかしながら、このような空気浮上式コンベヤベルトであっても、ベルトが垂直方向に凸型に湾曲して走行する部分、ベルトにおけるプーリから完全に樋状となる部分までのトラフ変換部、ベルトの往路の始端部におけるシュートから被搬送物が投下される部分等においては、ベルトを形成する下面カバーゴム層がベルト支持体に接触することによりベルトの駆動抵抗が増大したり、ベルト支持体の金属表面にゴム成分が粘着して黒く汚れたりする問題があった。
【0004】
このような問題を解決すべく、耐粘着性(低粘着性)および耐摩擦性(低摩擦性)を向上させた空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物として、本出願人は、「天然ゴム(NR)とスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)とからなるゴム成分を含有する空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物であって、前記ゴム成分が、前記天然ゴムを20質量%超75質量%以下含有し、前記スチレン−ブタジエン共重合ゴムを80質量%未満25質量%以上含有する空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。」を提案している(特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−139344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物を用いた空気浮上式コンベヤベルトであっても、高温の運搬物を搬送に用いる場合、例えば、セメント工場のクリンカー搬送ライン、製鉄所のコークス、焼結鉱搬送ラインなどのベルト表面温度が60〜200℃となる用途に用いる場合は、空気浮上性能を長期間維持できない場合があった。
【0007】
本発明者は、この空気浮上性能が長期間維持できない場合がある原因について鋭意検討した結果、このような用途においては、高温下に曝されることにより、空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物の耐粘着性および耐摩擦性が低下する場合があり、それにより下面カバーゴムがキャリーローラーなどに付着しやすくなるためであることを見出した。また、同様に、空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物の機械的強度が低下する場合があり、それによりコンベヤベルトとしての機能が損なわれるためであることを見出した。
【0008】
そこで、本発明は、高温下に曝されても耐粘着性および耐摩擦性に優れ、機械的強度の低下も少なく、耐熱性が良好な空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物および該ゴム組成物を用いた空気浮上式コンベヤベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来公知のコンベヤベルトや空気浮上式コンベヤベルト用のゴム組成物に用いられていたブタジエンゴム(BR)を含有せずに、天然ゴム(NR)およびスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)のみからなる特定のゴム成分を用いるとともに、少なくともモルフォリン・ジスルフィドを含む加硫剤と、少なくともテトラメチルチウラム・モノスルフィドを含む加硫促進剤と、カーボンブラックとを用いることにより、得られるゴム組成物が、高温下に曝されても耐粘着性および耐摩擦性に優れ、機械的強度の低下も少なく、耐熱性が良好になることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、下記(1)〜(8)を提供する。
(1)天然ゴム(NR)とスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)とからなるゴム成分、加硫剤、加硫促進剤およびカーボンブラックを含有し、
上記加硫剤として、少なくともモルフォリン・ジスルフィドを含有し、
上記加硫促進剤として、少なくともテトラメチルチウラム・モノスルフィドを含有する、空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
(2)上記加硫剤として、硫黄を含有しない上記(1)に記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
(3)上記ゴム成分が、上記天然ゴムを20質量%超75質量%以下含有し、上記スチレン−ブタジエン共重合ゴムを80質量%未満25質量%以上含有する上記(1)または(2)に記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
(4)上記カーボンブラックとして、少なくともISAFまたはHAFを含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
(5)上記カーボンブラックの含有量が、上記ゴム成分100質量部に対し、55〜95質量部である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
(6)加硫後の硬度が45〜70である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
(7)上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなる空気浮上式コンベヤベルトであって、
上記下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物により形成される、空気浮上式コンベヤベルト。
(8)上記下面カバーゴム層の厚さが、5〜20mmである上記(7)に記載の空気浮上式コンベヤベルト。
【発明の効果】
【0011】
以下に説明するように、本発明によれば、高温下に曝されても耐粘着性および耐摩擦性に優れ、機械的強度の低下も少なく、耐熱性が良好な空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物および該ゴム組成物を用いた空気浮上式コンベヤベルトを提供することができるため有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1の態様に係る空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物(以下、単に「本発明のゴム組成物」という場合がある。)は、天然ゴム(NR)とスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)とからなるゴム成分、加硫剤、加硫促進剤およびカーボンブラックを含有し、
上記加硫剤として、少なくともモルフォリン・ジスルフィドを含有し、上記加硫促進剤として、少なくともテトラメチルチウラム・モノスルフィドを含有する、空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物である。
次に、本発明のゴム組成物に用いられる各成分について詳述する。
【0013】
<ゴム成分>
本発明のゴム組成物に用いられるゴム成分は、天然ゴム(NR)とスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)とからなる。
ここで、上記ゴム成分における天然ゴム(NR)の含有量は、20質量%超75質量%であるのが好ましく、23〜50質量%であるのがより好ましい。
同様に、上記ゴム成分におけるスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)の含有量は、80質量%未満25質量%以上であるのが好ましく、77〜50質量%であるのがより好ましい。
【0014】
天然ゴム(NR)およびスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)の含有量が上述の範囲であると、得られる本発明のゴム組成物の常温下における耐粘着性および耐摩擦性が良好となる。これは、上述したように、公知の空気浮上式コンベヤベルト用のゴム組成物に用いられるブタジエンゴム(BR)を含有させないことで見出される効果であって、具体的には、ロール粘着測定による耐ロール粘着性およびトルク値が良好となり、いわゆる摩擦粘着防止剤や摩擦軽減剤などの添加剤は添加しなくても済むといった非常に有益な効果である。
また、天然ゴム(NR)およびスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)の含有量が上述の範囲であると、加工時(特に工場における圧延加工時)において、シート状に成形しやすいという特性(以下、「圧延加工性」ともいう。)も有する。
【0015】
<加硫剤>
本発明のゴム組成物に用いられる加硫剤は、少なくともモルフォリン・ジスルフィドを含むものであり、モルフォリン・ジスルフィドのみであってもよく、以下に示すその他の加硫剤を含むものであってもよい。
【0016】
その他の加硫剤としては、イオウ系、有機過酸化物系、金属酸化物系、フェノール樹脂、キノンジオキシム等の加硫剤が挙げられる。
イオウ系加硫剤としては、具体的には、例えば、粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、アルキルフェノールジスルフィド等が挙げられる。
有機過酸化物系の加硫剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が挙げられる。
その他として、酸化マグネシウム、リサージ、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、メチレンジアニリン等が挙げられる。
【0017】
本発明においては、このような加硫剤として、少なくともモルフォリン・ジスルフィドを用いているため、得られる本発明のゴム組成物が高温下に曝されても耐粘着性および耐摩擦性に優れ、機械的強度の低下も少なく、耐熱性が良好となる。これは、モルフォリン・ジスルフィドを含有する本発明のゴム組成物は、加硫後において、架橋に関与せずに遊離した状態で残存する硫黄原子(以下、「遊離硫黄」ともいう。)の数が少なく、コンベヤベルトを高温下で使用しても遊離硫黄による再架橋が形成されることがないためであると考えられる。そのため、本発明においては、遊離硫黄の数が必然的に多くなる硫黄を加硫剤として用いないのが好ましい。
【0018】
本発明のゴム組成物は、このような加硫剤として、モルフォリン・ジスルフィドを用いていても、加硫後の硬度がベルトカバーゴムとして機能するのに好適(具体的には、45〜70)となる。ここで、硬度とは、JIS−K6253-1997 のデュロメータ硬さ試験のタイプAにより規定されるJIS硬度(HS)をいう。
【0019】
また、本発明においては、このような加硫剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.3〜5質量部であるのがより好ましい。
加硫剤の含有量がこの範囲であると、得られる本発明のゴム組成物を用いた空気浮上式コンベヤベルトの耐疲労性能も良好となる。
なお、加硫剤として、モルフォリン・ジスルフィドおよび上記で例示したその他の加硫剤を併用する場合、モルフォリン・ジスルフィドの含有量は、加硫剤の全体の質量に対して50質量%以上であるのが好ましい。
【0020】
<加硫促進剤>
本発明のゴム組成物に用いられる加硫促進剤は、少なくともテトラメチルチウラム・モノスルフィド(TS)を含むものであり、テトラメチルチウラム・モノスルフィドのみであってもよく、以下に示すその他の加硫促進剤を含むものであってもよい。
【0021】
その他の加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チオウレア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系等の加硫促進剤が挙げられる。
アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ヘキサメチレンテトラミン(H)等が挙げられる。
グアニジン系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
チオウレア系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、エチレンチオウレア等が挙げられる。
チアゾール系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびそのZn塩等が挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)等が挙げられる。
チウラム系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤としては、具体的には、例えば、Na−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等が挙げられる。
【0022】
本発明においては、このような加硫促進剤として、少なくともテトラメチルチウラム・モノスルフィドを用いてるため、得られる本発明のゴム組成物の加硫速度や加硫後の物性(例えば、硬度、破断強度、破断伸び等)が良好となる。これは、加硫剤として用いるモルフォリン・ジスルフィドの架橋反応を促進させることができ、適当量の架橋を安定して形成させることができるためであると考えられる。
【0023】
また、本発明においては、加硫速度や加硫後の物性(例えば、硬度、破断強度、破断伸び等)をより良好とし、スコーチ性も良好とする観点から、加硫促進剤としてスルフェンアミド系加硫促進剤、特に、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを併用するのが好ましい。
【0024】
更に、本発明においては、このような加硫促進剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.3〜5質量部であるのがより好ましい。
なお、加硫促進剤として、テトラメチルチウラム・モノスルフィドおよび上記で例示したその他の加硫促進剤を併用する場合、テトラメチルチウラム・モノスルフィドの含有量は、加硫促進剤の全体の質量に対して25質量%以上であるのが好ましい。
【0025】
<カーボンブラック>
本発明のゴム組成物に用いられるカーボンブラックは、特に限定されないが、少なくともISAF(Intermediate Super Abrasion Furnace)またはHAF(High Abrasion Furnace)を含むものであるのが好ましく、以下に示すその他のカーボンブラックを含むものであってもよい。
【0026】
その他のカーボンブラックとしては、具体的には、例えば、SAF(Super Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SRF(Semi−Reinforcing Furnace)、FT(Fine Thermal)、MT(Medium Thermal)等が挙げられる。
【0027】
このようなカーボンブラックとしては、市販品を用いることができる。
具体的には、ISAFとしてはショウブラックN220(昭和キャボット社製)、SAFとしてはシースト9(東海カーボン社製)、HAFとしてはシースト3(東海カーボン社製)、FEFとしてはHTC#100(新日化カーボン社製)等が例示される。また、GPFとしては旭#55(旭カーボン社製)、シーストV(東海カーボン社製)、SRFとしては旭#50(旭カーボン社製)、三菱ダイアブラックR(三菱化学社製)、FTとしては旭#15(旭カーボン社製)、HTC#20(新日化カーボン社製)等を用いることができる。
【0028】
本発明においては、このようなカーボンブラックとして、少なくともISAFまたはHAFを用いることにより、得られる本発明のゴム組成物の加硫後の物性(例えば、硬度、破断強度、破断伸び等)がより良好となる。
【0029】
また、本発明においては、このようなカーボンブラックの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、55〜95質量部であるのが好ましく、70〜90質量部であるのがより好ましい。
なお、カーボンブラックとして、ISAFまたはHAFを用い、更に上記で例示したその他のカーボンブラックを併用する場合、ISAFまたはHAFの含有量は、カーボンブラックの全体の質量に対して5質量%以上であるのが好ましい。
【0030】
本発明のゴム組成物は、上記各成分以外に、必要に応じて、加硫助剤、加硫遅延剤、配合剤等の各種添加剤を含有させてもよい。
【0031】
加硫助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらのZn塩等が挙げられる。
加硫助剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
【0032】
加硫遅延剤としては、具体的には、例えば、無水フタル酸、安息香酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸等の有機酸;N−ニトロソージフェニルアミン、N−ニトロソーフェニル−β−ナフチルアミン、N−ニトロソ−トリメチル−ジヒドロキノリンの重合体等のニトロソ化合物;トリクロルメラニン等のハロゲン化物;2−メルカプトベンツイミダゾール;サントガードPVI等が挙げられる。
加硫遅延剤の含有量は、上記ゴム成分100質量部に対し、0.1〜0.3質量部であることが好ましく、0.1〜0.2質量部であることがより好ましい。
【0033】
配合剤としては、例えば、上述したカーボンブラック以外の補強剤(充填剤)、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変成付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラー(充填剤)、加工助剤等が挙げられる。
これらの配合剤は、ゴム用組成物用の一般的なものを用いることができる。それらの配合量も特に制限されず、任意に選択できる。
【0034】
本発明のゴム組成物の製造は、上述したゴム成分、加硫剤、加硫促進剤およびカーボンブラックならびに各種添加剤を、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練し、ついで、加硫剤、加硫助剤、加硫促進剤もしくは加硫遅延剤を加え混練ロール機等で混練して行うことができる。
また、本発明のゴム組成物は、通常行われる条件で加硫することができる。具体的には、例えば、温度140〜150℃程度、0.5時間の条件下、加熱することにより行われる。
【0035】
本発明の第2の態様に係る空気浮上式コンベヤベルト(以下、単に「本発明のコンベヤベルト」という場合がある。)は、上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなる空気浮上式コンベヤベルトであって、該下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が、上述した本発明の第1の態様に係る空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物により形成される空気浮上式コンベヤベルトである。
以下に、図1を用いて本発明のコンベヤベルトを説明するが、本発明のコンベヤベルトの構造は、下面カバーゴム層の裏面表面に上述した本発明のゴム組成物を用いていれば特にこれに限定されない。
【0036】
図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面図である。図1において、1はコンベヤベルト、2は上面カバーゴム層、3は補強層、4は下面カバーゴム層、5は運搬物搬送面、11および16は外層、12および15は内層である。
図1に示すように、コンベヤベルト1は、補強層3を中心層とし、その両側に上面カバーゴム層2と下面カバーゴム層4が設けられており、上面カバーゴム層2は外層11と内層12の2層から構成され、下面カバーゴム層4は外層16と内層15の2層から構成されている。ここで、上面カバーゴム層2および下面カバーゴム層4の外層と内層(外層11と内層12、外層16と内層15)は、それぞれ互いに異なるゴム組成物を用いて形成されていてもよい。
【0037】
図1において、上面カバーゴム層2は、外層11と内層12の2層から構成されているが、本発明においては、上面カバーゴム層2を構成する層の数は、2に限定されず、1でもよく、3以上であってもよい。そして、3以上の場合にも、これらの層は、互いに異なるゴム組成物を用いて形成されてもよい。また、下面カバーゴム層4も同様である。
上面カバーゴム層2の運搬物搬送面5を構成する外層11は、耐熱性、耐摩耗性、耐油性等に優れたゴム組成物から形成されるのが望ましいため、上面カバーゴム層2は2層から構成されていることが好ましい。
下面カバーゴム層4の裏面表面を構成する外層16は上述した本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物により形成され、また、下面カバーゴム層4の内層15は製造コストや補強層3との接着性が重視されることから他のゴム組成物から形成されるのが望ましいため、カバーゴム層4は2層から構成されていることが好ましい。
【0038】
補強層3の芯体は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるものを適宜選択して用いることができ、その具体例としては、綿布と化学繊維または合成繊維とからなるものにゴム糊を塗布、浸潤させたもの、RFL処理したものを折り畳んだもの、特殊織のナイロン帆布、スチールコード等が挙げられ、これらを一種単独で用いてもよく、2種以上のものを積層して用いてもよい。
また、補強層3の形状は特に限定されず、図1に示すようにシート状であってもよく、ワイヤー状の補強線を並列に埋込むものであってもよい。
【0039】
上面カバーゴム層2の内層12および下面カバーゴム4の内層15を形成するゴム組成物は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるゴム組成物を適宜選択して用いることができ、一種単独で用いてもよく、2種以上のものを混合して用いてもよい。
【0040】
上面カバーゴム層2の外層11を形成するゴム組成物は特に限定されず、通常のコンベヤベルトに用いられるゴム組成物を、該外層に要求される基本特性(例えば、耐熱性、耐摩耗性、耐油性等)に応じて適宜選択して用いることができる。
【0041】
本発明のコンベヤベルトは、高温下に曝されても耐粘着性および耐摩擦性に優れ、機械的強度の低下も少なく、耐熱性が良好な本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物を下面カバーゴム層の裏面表面(外層)に用いるため、高温の運搬物を搬送に用いる場合であっても、空気浮上性能が劣らず、消費電力を低減できるため有用である。
【0042】
また、本発明のコンベヤベルトは、上記下面カバーゴム層の厚さが、5〜20mmであるのが好ましく、6〜15mmであるのがより好ましい。ここで、下面カバーゴム層の厚さは、下面カバーゴム層が内層および外層で構成されている場合は、これらの層の合計の層厚をいう。
下面カバーゴム層の厚さがこの範囲であると、高温の運搬物を搬送に用いる場合であっても、ゴムの劣化等により生ずるベルトの反り返り(カッピング)を防ぐことができる。
【0043】
本発明のコンベヤベルトの製造方法は特に限定されず、通常用いられる方法等を採用することができる。
具体的には、まず、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて原料を混練りした後、カレンダー等を用いて各カバーゴム層用にシート状に成形し、次に、得られた各層を補強層を挟み込むように所定の順序で積層し、150〜170℃の温度で10〜60分間加圧する方法が好適に例示される。
【実施例】
【0044】
以下に実施例を挙げ、本発明のコンベヤベルト用ゴム組成物について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(実施例1〜6、比較例1および2)
ゴム成分100質量部に対して、下記表1に示す組成成分(質量部)で、各コンベヤベルト用ゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物について、加硫後の物性および耐熱性を以下に示す方法により測定し評価した。その結果を下記表1に示す。
【0045】
<加硫後の物性>
(1)硬度
得られた各ゴム組成物を加硫した各加硫ゴム組成物を厚さ10mmに切り出し、JIS−K6253-1997 のデュロメータ硬さ試験のタイプAに準じて、23℃における硬度(HS)を測定した。
【0046】
(2)破断強度、破断伸び
得られた各ゴム組成物を加硫した各加硫ゴム組成物から3号ダンベル状に打ち抜いた試験片を用い、JIS K6251-1993に準じて、引張速度500mm/分での引張試験を行い、破断強度(TB)[MPa]、および、破断伸び(EB)[%]を室温にて測定した。
【0047】
(3)耐粘着性(耐ロール粘着)
耐粘着性の評価は、得られた各ゴム組成物を加硫した各加硫ゴム組成物からなる試験片(長さ:150mm、幅:100mm、厚さ:4mm)について、ロール粘着試験装置を用いて、下記の設定条件で試験片とドライブロールとを干渉させた表面の状態を目視することにより行った。その結果、目視で確認しがたいレベルの粘着であったものは「○」と評価し、目視によりかなりの粘着が確認できたものは「×」と評価した。
・ドライブロール径:φ160mm
・ドライブロール周速度:217m/min
・試験引張:4.0N/mm
・試験片巻き付け角:30°
・面圧:0.015MPa
・試験時間:30分
【0048】
(4)トルク値(指数)
上述した耐ロール粘着の評価におけるドライブロールにかかるトルク値を測定した。なお、下記表1中の数値は、比較例1のトルク値を100として指数表示した。この値が小さい程、比較例1に比べ消費電力の低減が図れることを示す。
【0049】
(5)耐摩耗性
得られた各ゴム組成物を加硫した各加硫ゴム組成物のDIN摩耗試験をJIS−K6264-1993に準じて行った。室温でDIN摩耗試験を行った際の摩耗量(mm3)を測定した。その結果、摩耗量が200mm3以下であったものは耐摩耗性に優れているといえる。
【0050】
<耐熱性>
(1)耐熱老化後の破断強度およびその保持率
上述した破断強度の測定で用いた試験片を100℃下で96時間放置した後に、上記と同様の方法により破断強度(TB)[MPa]を測定した。また、強度保持率は、耐熱老化前の破断強度と耐熱老化後の破断強度の値から、その保持率を算出した。
【0051】
(2)耐熱老化後の破断伸びおよびその保持率
上述した破断伸びの測定で用いた試験片を100℃下で96時間放置した後に、上記と同様の方法により破断伸び(EB)[%]を測定した。また、伸び保持率は、耐熱老化前の破断強度と耐熱老化後の破断伸びの値から、その保持率を算出した。
【0052】
ここで、破断強度の保持率が80%以上で、破断伸びの保持率が60%以上であれば、高温下に曝されても耐粘着性および耐摩擦性に優れ、機械的強度の低下も少なく、耐熱性に優れていると評価でき、高温下に曝される空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物として使用できる。
【0053】
【表1】

【0054】
上記表1に示すゴム成分等の各組成成分としては、以下に示すものを用いた。
・天然ゴム(NR):RSS#3
・スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR):Nipol 1502(日本ゼオン社製)
・ブタジエンゴム(BR):Nipol BR1220(日本ゼオン社製)
・カーボンブラック1:ISAF(ショウブラックN220、昭和キャボット社製)
・カーボンブラック2:HAF(ショウブラックN335、昭和キャボット社製)
・亜鉛華:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日本油脂社製)
・老化防止剤:ノクラック 6C(大内新興化学工業社製)
・ワックス:パラフィンワックス(サンノック、大内新興化学工業社製)
・伸展油:アロマオイル(マシン油22、昭和シェル社製)
・加硫剤1:モルフォリン・ジスルフィド(バルノックR、大内新興化学工業社製)
・加硫剤2:硫黄(油処理硫黄、細井化学工業社製)
・加硫促進剤1:テトラメチルチウラム・モノスルフィド(サンセラーTS、三新化学工業社製)
・加硫促進剤2:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤3:テトラメチルチウラム・ジスルフィド(サンセラーTT、三新化学工業社製)
【0055】
表1に示す結果より、実施例1〜6で得られたゴム組成物は、加硫後の物性が、硫黄加硫させた比較例2と同等以上に優れることが分かった。
また、実施例1〜6で得られたゴム組成物は、比較例1および2で得られたゴム組成物に比べ、耐熱老化後の破断強度および破断伸びの保持率が高く、いずれも耐熱性が良好であることが分かり、高温下に曝される空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物として使用できることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明のコンベヤベルトの好適な実施態様の一例を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1:コンベヤベルト
2:上面カバーゴム層
3:補強層
4:下面カバーゴム層
5:運搬物搬送面
11、16:外層
12、15:内層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムとスチレン−ブタジエン共重合ゴムとからなるゴム成分、加硫剤、加硫促進剤およびカーボンブラックを含有し、
前記加硫剤として、少なくともモルフォリン・ジスルフィドを含有し、
前記加硫促進剤として、少なくともテトラメチルチウラム・モノスルフィドを含有する、空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項2】
前記加硫剤として、硫黄を含有しない請求項1に記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴム成分が、前記天然ゴムを20質量%超75質量%以下含有し、前記スチレン−ブタジエン共重合ゴムを80質量%未満25質量%以上含有する請求項1または2に記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラックとして、少なくともISAFまたはHAFを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項5】
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対し、55〜95質量部である請求項1〜4のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項6】
加硫後の硬度が45〜70である請求項1〜5のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物。
【請求項7】
上面カバーゴム層、補強層および下面カバーゴム層からなる空気浮上式コンベヤベルトであって、
前記下面カバーゴム層の少なくとも裏面表面が、請求項1〜6のいずれかに記載の空気浮上式コンベヤベルト用ゴム組成物により形成される、空気浮上式コンベヤベルト。
【請求項8】
前記下面カバーゴム層の厚さが、5〜20mmである請求項7に記載の空気浮上式コンベヤベルト。

【図1】
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【公開番号】特開2007−302461(P2007−302461A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135106(P2006−135106)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】