説明

空気清浄機及び電解水ミスト発生器

【課題】電解水中の次亜塩素酸とOHラジカルの濃度を高め、その電解水のミストをもって強い除菌効果を及ぼし得る電解水ミスト発生器および空気清浄機を提供する。
【解決手段】空気清浄機1は、筐体20と、筐体20内に形成された空気流通経路27と、空気流通経路27に配置された空気清浄装置28及び送風装置29と、電解水ミスト生成ユニット43を備える。電解水生成装置73の電解槽70はイオン交換膜74で区画75、76に仕切られる。区画75には正極として機能する電極71が配置され、区画76には負極として機能する電極72が配置される。区画75で次亜塩素酸とOHラジカルが生成される。区画75には電解水ミスト生成装置78を構成する超音波振動子77が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気清浄機及び電解水ミスト発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
水道水のような塩素を含む水に電気分解を施すと、ウィルス抑制効果のある次亜塩素酸(HClO)とOHラジカルを含む電解水が生成される。この電解水を、例えば超音波振動によりミスト化し、それを空気中に放出することにより、空間を除菌する装置が着目されている。特許文献1に記載された空気清浄機もそのような装置の一例である。特許文献1記載の空気清浄機は、電解水のミストを、空気清浄機内で清浄化された空気を用いて機外に放散し、室内空気の除菌や脱臭を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−37589号公報(国際特許分類:A61L9/14、A61L9/01、C02F1/46)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気分解により電解水を生成するとき、次亜塩素酸とOHラジカルを多く含んだ酸性水とアルカリ性水が発生するが、これまでの電解水生成装置では酸性水とアルカリ性水の分離ができておらず、それらが混ざり合って中性化され、その結果電解水中の次亜塩素酸とOHラジカルの濃度が低くなっていた。そのため、電解水ミストの除菌効果に限界があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、電解水中の次亜塩素酸とOHラジカルの濃度を高め、その電解水のミストをもって強い除菌効果を及ぼし得るようにした空気清浄機及び電解水ミスト発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい実施形態によれば、空気清浄機は、筐体と、前記筐体内に形成され、一方の端が吸気口、他方の端が排気口となった空気流通経路と、前記空気流通経路に配置された空気清浄装置及び送風装置と、前記筐体に内蔵された電解水生成装置と、同じく前記筐体に内蔵され、前記電解水生成装置が生成した電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置を備え、前記電解水生成装置の電解槽はイオン交換膜で2区画に仕切られ、前記2区画の一方に正極が配置され、他方に負極が配置される。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の空気清浄機において、前記正極が配置された側の区画に、前記電解水ミスト生成装置を構成する超音波振動子が配置される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の空気清浄機において、前記電解水ミスト生成装置は、前記送風装置の回転数に対応する形でミスト生成量が制御される。
【0009】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記構成の空気清浄機において、停止状態から運転を開始したとき、発生した電解水ミストの累積量が、所定容積の室内空間を除菌するのに十分な量に達するまで、連続で強運転される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、電解水ミスト発生器は、筐体と、前記筐体内に形成され、一方の端が吸気口、他方の端が排気口となった空気流通経路と、前記空気流通経路に配置された送風装置と、前記筐体に内蔵された電解水生成装置と、同じく前記筐体に内蔵され、前記電解水生成装置が生成した電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置を備え、前記電解水生成装置の電解槽はイオン交換膜で2区画に仕切られ、前記2区画の一方に正極が配置され、他方に負極が配置される。
【発明の効果】
【0011】
水を電気分解すると、正極側の水は酸性になり、負極側の水はアルカリ性になる。本発明によると、正極側と負極側がイオン交換膜で仕切られているので、酸性水とアルカリ性水が混ざり合って中性化されることがない。そして正極側には塩素イオン等の陰イオンが引き寄せられ、次亜塩素酸と水素イオンの濃度が上がる。このため、ミスト中の次亜塩素酸濃度とOHラジカル濃度が上昇し、より高い除菌効果を発揮できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る空気清浄機の斜視図である。
【図2】空気清浄機の垂直断面図である。
【図3】空気清浄機の垂直断面図で、断面方向を図2と直角に設定したものである。
【図4】空気清浄機の上面図である。
【図5】空気清浄機の垂直断面図で、図2と異なる状態を示すものである。
【図6】空気清浄機の垂直断面図で、図2及び図5と異なる状態を示すものである。
【図7】空気清浄機の水平断面図である。
【図8】空気清浄機の水平断面図で、図7と異なる状態を示すものである。
【図9】空気清浄機の水平断面図で、図7及び図8と異なる状態を示すものである。
【図10】ミストノズルの方向変化の説明図である。
【図11】電解槽の模式的断面図である。
【図12】空気清浄機のブロック構成図である。
【図13】電解水ミスト生成装置の制御のフローチャートである。
【図14】電解水ミスト発生のフローチャートである。
【図15】従来の電解槽の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に基づき本発明の実施形態に係る空気清浄機の構造と動作を説明する。なお、本明細書に登場する具体的な数値はいずれも例示であり、発明を限定するものではない。
【0014】
空気清浄機1は、平面形状円形の台座10と、その上に支持される、略直方体形状の筐体20を備える。台座10は筐体20を垂直軸線まわりに回動可能に支持するものであるが、その具体的構造は後で説明する。筐体20の説明に用いる方位表現については、筐体20の正面に向かって左側が左、右側が右、と定義する。他の構成要素の説明に用いる方位表現もこれにならうものとする。
【0015】
筐体20の正面中央下部には操作部21が設けられている。操作部21は、垂直方向に3個並んだ押釦式のスイッチ22と、垂直方向に複数個並んで空気清浄機1の運転状況その他の情報を表示するランプ23が配置されている。ランプ23は発光ダイオード(LED)により構成される。
【0016】
筐体20の左右の側面にはそれぞれ吸気口24が形成される。また、筐体20の天面の前部に天面排気口25が形成され、筐体20の正面上部には正面排気口26が形成されている。
【0017】
筐体20の内部には、吸気口24を一方の端とし、天面排気口25と正面排気口26を他方の端とする空気流通経路27が形成される。空気流通経路27には空気清浄装置28と送風装置29が配置される。
【0018】
空気清浄装置28は、吸気口24から筐体20の中に入れられる空気清浄フィルタ30により構成される。空気清浄フィルタ30は目の比較的粗い粗塵用フィルタよりなるが、必要に応じて脱臭フィルタ、目の細かい細塵用フィルタなどを組み合わせたものとしてもよい。
【0019】
吸気口24には桟を格子状に組んだガードグリル31がはめ込まれる。ガードグリル31は筐体20の中に手指等が差し込まれるのを防ぐとともに、筐体20の中に空気清浄フィルタ30を押さえ込む役割も果たす。
【0020】
送風装置29は、吸気口24から吸い込まれ、天面排気口25及び正面排気口26から排出される空気流を形成するものであって、シロッコファン32及びそれを回転させる図示しないモータと、シロッコファン32を囲むファンケーシング33により構成される。ファンケーシング33は左右対称形状であって、左右の端面が吸込口部34となっている。吸込口部34には空気清浄フィルタ30がぴったりと押し付けられ、その結果、空気清浄フィルタ30で清浄化された空気だけがファンケーシング33に入ることになる。
【0021】
ファンケーシング33の内部は垂直な仕切壁35により左右の区画に仕切られており、各区画はそれぞれ1個のシロッコファン32を収容している。前記図示しないモータは仕切壁35に取り付けられる両軸型のモータであって、シロッコファン32は自身が収納された区画内に延び出したモータ軸に固定され、水平軸線まわりに回転する。
【0022】
ファンケーシング33の各区画の上部に設けられた吐出口部36は、ファンケーシング33の上に設けられたダクト37の下端に接続する。ダクト37は空気流通経路27の一部をなすものであり、上端に天面排気口25が位置し、天面排気口25に至るまでの箇所に正面排気口26が位置している。
【0023】
図1及び図4に示すように、天面排気口25の内側には桟を格子状に組んだガードグリル38が配置される。ガードグリル38はダクト37の中に手指等が差し込まれるのを防ぐ。
【0024】
天面排気口25にはルーバー39が設けられる。ルーバー39は空気清浄機や空気調和機等で周知の構成のものであって、複数(本実施形態では2枚)のブレード40が、図示しない連結機構により、同期して同じ角度だけ回転するように連結されている。実施形態1のルーバー39は、水平に対し90°をなす位置からから30°をなす位置まで角度を変えられるようになっている。
【0025】
ルーバー39は手動式とすることもできるし、電動式とすることもできる。手動式とした場合は、ブレード40の1枚をつまんで、あるいは図示しない操作つまみにより、ブレード40の角度を変える。電動式とした場合は、図示しないモータによりブレード40の角度変更あるいはスイングを行う。いずれも周知構造である。
【0026】
正面排気口26と天面排気口25の間には、どちらの排気口が主たる排気口として機能するかを切り替える排気口切替装置41が配置される。排気口切替装置41は正面排気口26に配置されたルーバー42により構成される。ルーバー42は軸42bを支点として水平軸線まわりに回動するものであり、正面排気口26を閉ざす第1の位置(図2参照)と、正面排気口26を開き、天面排気口25に向かう空気流を阻害する第2の位置(図6参照)の間で回動可能となっている。
【0027】
ルーバー42は断面矩形の筒状であり、前記第2の位置をとったときダクト37の奥の壁面に向き合う部位に張出部42aを形成した形状となっている。張出部42aはダクト37の奥の壁面との間隙を狭め、天面排気口25に向かう空気の割合を少なくするとともに、ルーバー42の筒の中に空気を取り込む働きをする。
【0028】
ルーバー42は、第1の位置では送風装置29が吹き上げる空気流を真っ直ぐ天面排気口25に向かわせる。第2の位置では、ルーバー42に阻害される空気流の大半はルーバー42の筒の中またはルーバー42の下に開いた正面排気口26の開口部を通って正面側に吹き出すことになる。第2の位置でルーバー42は、ダクト37を完全に閉ざしている訳ではないので、天面排気口25に向かう空気はゼロにはならない。ルーバー42の角度を第1の位置と第2の位置の中間にすれば、ルーバー42に捕捉されるだけの量の空気が、ルーバー42が向いている角度に正面排気口26より吹き出す。
【0029】
ルーバー39と同様、ルーバー42は手動式とすることもできれば電動式とすることもできる。
【0030】
筐体20の内部には、ファンケーシング33の上であって、ダクト37の背後という位置に、電解水ミスト生成ユニット43が配置される。電解水ミスト生成ユニット43は、電解水生成装置と、この電解水生成装置が生成した電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置を含んで構成されるが、その詳細は後で説明する。
【0031】
電解水ミスト生成ユニット43には給水タンク48が組み合わせられる。給水タンク48が電解水ミスト生成ユニット43の上に置かれると、給水タンク48の中の水が電解水ミスト生成ユニット43に供給される。
【0032】
筐体20の上面には着脱自在な蓋49が設けられており、蓋49を取り外せば給水タンク48を取り出して水を補給することができる。
【0033】
電解水ミスト生成ユニット43に対し、送風装置29から吐出される空気の一部を取り入れる空気取入ダクト50と、天面排気口25から排出される排気中に電解水ミストを放出するミストノズル51が設けられる。空気取入ダクト50は入口をダクト37の内部に向ける形で配置され、ミストノズル51は出口を天面排気口25内において斜め前方上方に向ける形で配置される。空気取入ダクト50とミストノズル51はいずれも電解水ミスト生成ユニット43から延び出すものであり、両者の間には電解水ミスト生成装置の上部空間を経由する空気通路が形成されている。
【0034】
ファンケーシング33の下には制御ボックス52が配置される。制御ボックス52の中には空気清浄機1の制御装置を構成する回路基板53が収納されている。
【0035】
台座10と筐体20は次のような仕組みで連結される。筐体20の下面中心に軸部54が一体成型される。軸部54は台座10の中心を貫通し、ワッシャーとナットの組み合わせなどの抜け止め手段で台座10に連結される。これにより筐体20は、台座10に対し垂直軸線まわりに回動可能に連結されることになる。
【0036】
軸部54だけでは筐体20が安定しないので、筐体20の下面には軸部54を囲む同心円状の環状リブ55が形成され、台座10には環状リブ55が嵌合する環状溝56が形成される。大直径の環状リブ55が環状溝56の底面に接触して滑ることにより、筐体20は傾いたりがたついたりすることなく安定して回転する。
【0037】
筐体20は、扇風機が首を振るように台座10に対し反転回動せしめられる。そのための首振りモータ57が筐体20の内部に配置される。首振りモータ57は竪軸であり、且つ減速機構内蔵タイプであり、下面に出力軸58(図8参照)が突出している。出力軸58にはクランク59が固定され、クランク59にはコネクティングロッド60の一端が連結される。コネクティングロッド60の他端は、筐体20の底面に形成された円弧状開口61を通じて台座10に連結されている。
【0038】
筐体20の正面下部と台座10の上面には、それぞれ合印62が形成される。第1実施形態では、互いに頂点を向かい合わせる三角形が合印62とされているが、これに限定される訳ではない。それらが対をなすことが一目瞭然の形状であれば、どのようなものであってもよい。合印62の形成は、印刷によるのが簡単であるが、シールを貼ったり、筐体20と台座10の射出成型時にその形状を形成したりするなどの手法を採用してもよい。
【0039】
上記のように連結された台座10と筐体20の運搬を容易にするため、筐体20の左右側面の上端近くには手掛け部63が形成されている。
【0040】
続いて空気清浄機1の動作を説明する。給水タンク48の中の水が不足し、電解水ミスト生成ユニット43の中の水位が所定レベルに達していないときは、図示しないセンサがそれを検知し、操作部21に水不足の旨の表示が出る。水不足の表示を見たときは、蓋49を外し、給水タンク48を取り出して水を補給する。水補給後、給水タンク48を電解水ミスト生成ユニット43の上に置くと、給水タンク48から流れ出す水によって水位が回復し、水不足の表示は消える。外しておいた蓋49を元通りはめ込めば、空気清浄機1の運転が可能になる。
【0041】
空気清浄機1を運転すると、送風装置29及び電解水ミスト生成ユニット43に給電が行われ、これらの構成要素はそれぞれ定められた動作を開始する。
【0042】
電解水ミスト生成ユニット43の中の電極に所定の電圧が印加されると、電極が浸っている水が電気分解されて電解水となり、除菌作用と脱臭作用のある次亜塩素酸(HClO)やOHラジカルを含む電解水が生まれる。電解水は電解水ミスト生成装置でミスト化され、電解水ミスト生成装置の上部空間に充満する。
【0043】
ここで送風装置29を稼動すると、吸気口24→空気清浄装置28→送風装置29→天面排気口25及び正面排気口26という空気の流れが生じる。吸気口24から吸い込まれた空気は、空気清浄フィルタ30を通過する際に塵埃を捕捉されて清浄になる。清浄化された空気が送風装置29に吸い込まれ、ダクト37に吐出される。
【0044】
ルーバー42が図2に示す第1の位置にあれば、空気は天面排気口25からのみ排出されることになる。その際、ダクト37を流れる空気の一部が空気取入ダクト50に取り込まれ、電解水ミスト生成装置の上部空間に入り込む。電解水ミストは、電解水ミスト生成装置の上部空間に入り込んだ空気に巻き込まれてミストノズル51へと押し出され、ミストノズル51の先端の出口より、天面排気口25から出る排気中に放出される。全ての排気が天面排気口25に集中している中に電解水ミストが放出されるので、電解水ミストは上方へ力強く吹き飛ばされ、広範囲に放散する。
【0045】
図2ではルーバー39のブレード40は水平から90°立ち上がった位置にあり、電解水ミストはほぼ真上に吹き出す。図5のようにルーバー39の角度を変えれば、電解水ミストの向きが前方寄りに変わる。ルーバー39が電動式であれば、ブレード40をスイングさせ、風向を連続的に変えることができる。
【0046】
ルーバー42を、図6に示す第2の位置にすると、天面排気口25に向かう空気流が阻害され、空気の多くはルーバー42の筒の中またはルーバー42の下に開いた正面排気口26の開口部を通って正面側に吹き出すことになる。天面排気口25からの排気量が減り、風速が低下するので、その中に放出される電解水ミストは遠くまで吹き飛ばされることがなく、また正面排気口26からの排気によってより前方に向かい、空気清浄機1の周囲に濃密に漂う。
【0047】
排気口切替装置41であるルーバー42は、第2の位置にしたとき、天面排気口25に向かう空気を完全にシャットアウトし、全ての空気が正面排気口26より排出されるようにすることもできる。この場合には、電解水ミスト生成ユニット43を停止させて、正面から風が吹き出す扇風機として用いることができる。
【0048】
図に示す通り、ミストノズル51の先端部は斜め前方上方に向けて屈曲されているが、これは、電解水ミストを空気清浄機1の真上よりも前方に向けて放出するためである。というのは、空気清浄機1は部屋の壁に沿って置かれることが多いので、真上よりも前方に向けて放出することとして、壁に電解水ミストが付着してしまうことのないようにするためである。
【0049】
ミストノズル51の先端と天面排気口25の前縁とは当接しておらず、両者間に隙間が存在する。もし両者が当接していると、当接部分に電解水ミストが結露しやすくなるが、隙間が存在すれば、図2の矢印の如くそこから空気が吹き上がるので、ミストノズル51の先端部が結露しようとしても水滴が吹き飛ばされ、結露が防止される。
【0050】
ミストノズル51を安定して取り付けるため、図示しない支え板を設け、その上にミストノズル51を載置する構成とするのが好ましいが、そのような場合は、支え板の中で、ミストノズル51の先端部に対応する箇所に風が通る穴または切り欠きを設け、そこから、図2の矢印のように、ノズル51と天面排気口25の前縁との隙間を通って空気が流れるようにしておくとよい。
【0051】
以上の通り、排気口切替装置41の操作で電解水ミストの放散態様を簡単に切り替えることができる。
【0052】
天面排気口25も正面排気口26も、筐体20の中で吸気口24が存在する側面とは別の側面に配置されている。このため、天面排気口25または正面排気口26から排出された清浄な空気が直ちに吸気口24に吸い込まれてしまうという、いわゆるエアーショートを防ぐことができる。
【0053】
所定のスイッチ22を操作して首振りモータ57を駆動すると、筐体20が台座10の上で垂直軸線まわりに反転回動する。図7は反転回動停止時の首振り中心を示すものであり、この時、筐体20と台座10の合印62は互いに一致する位置にある。首振りモータ57の回転でクランク59が回転すると、クランク59はコネクティングロッド60を介して台座10を押したり、引いたりし、その結果、図8及び図9に示すように、筐体20は右回りの回動と左回りの回動を繰り返すことになる。図10に示すように、ミストノズル51も左右に向きを変え、電解水ミストを広い範囲に振り撒く。この時、筐体20と台座10の合印62同士の位置関係を見れば、筐体20が首振り中心にあるのか、それとも首振り中心から右または左に振れているのかを明瞭に認識することができる。
【0054】
続いて電解水ミスト生成ユニット43の構成を説明する。電解水ミスト生成ユニット43は、図11に模式的に示す電解槽70を含む。電解槽70と、その中に配置された1対の電極71、72が、電解水生成装置73を構成する。
【0055】
電解槽70はイオン交換膜74で2つの区画75、76に仕切られる。電極71は区画75に配置され、電極72は区画76に配置される。電極71は正極として使用され、電極72は負極として使用される。
【0056】
電解槽70と、その底部に配置された超音波振動子77が電解水ミスト生成装置78を構成する。超音波振動子77は区画75の底部に配置されている。
【0057】
空気清浄機1の制御システムは図12に示す構成となっている。空気清浄機1の制御を司る制御部80はマイクロコンピュータを中核として構成されるものであり、その中にはマイクロコンピュータのCPU(central processing unit)、メモリ、不揮発性メモリ等が含まれる。
【0058】
制御部80には、既出の操作部21と送風装置29の他、次の構成要素が接続される。すなわち、電極71、72の極性と、それに対する通電を制御する電極制御部81、超音波振動子77を制御する超音波制御部82、操作部21のランプ23により構成される表示部83、及び送風装置29の回転数を検知する回転数検知部84である。回転数検知部84は、例えばモータの軸に取り付けたロータリーエンコーダにより構成することができる。
【0059】
電極71、72に、電極制御部81を通じて例えばDC10Vといった電圧が印加されると、電解槽70の中の水が水道水のような塩素を含む水であった場合、電解槽70の内部で電気分解が開始される。正極である電極71は、塩素イオン等の陰イオンを引き寄せる。イオン交換膜74はイオンのみを通過させるので、区画75の水は酸性になり、区画76の水はアルカリ性の水になる。
【0060】
負極側と正極側で、それぞれ次のような電気化学反応が生じる。
<負極側の反応>
2HO+2e ⇒ H+2OH
<正極側の反応>
2HO ⇒ O+4H+4e
Cl+HO ⇒ HClO+HCl
上記反応により、除菌作用と脱臭作用のある次亜塩素酸(HClO)やOHラジカルを含む電解水が生まれる。正極側、すなわち区画75では、塩素イオン濃度の高い水で電気化学反応を生じさせるので、次亜塩素酸やOHラジカルの濃度が高くなる。これを電解水ミスト生成装置78でミスト化すれば、次亜塩素酸やOHラジカルの濃度の高いミストを得ることができる。このミストをミストノズル51から放出することにより、室内空気に対し高い除菌効果を及ぼすことができる。
【0061】
従来の電解槽は図15に示すような構成であり、イオン交換膜が存在しなかった。このため、電解槽70の内部で次亜塩素酸とOHラジカルを多く含んだ酸性水とアルカリ性水が分離されず、それらが混ざり合って中性化され、その結果次亜塩素酸やOHラジカルの濃度を高めることができなかった。これに比べて本発明は、次亜塩素酸やOHラジカルの濃度を大幅に高めた電解水を得ることができ、除菌能力が向上する。
【0062】
電解水ミスト生成装置78は、送風装置29の回転数に対応する形でミスト生成量が変わる。例えば表1のように変わる。
【0063】
【表1】

電解水ミスト生成装置78は、ミスト生成量を変えるために、図13のフローチャートのように制御される。
【0064】
図13のステップ#101では送風装置29の回転数が設定される。設定は操作部21の操作を通じて行う。
【0065】
ステップ#102では送風装置29の回転数を制御する。制御はPWM(pulse width modulation)により行う。
【0066】
ステップ#103では、送風装置29の回転数検出部84から制御部80にフィードバックされる信号を検出する。
【0067】
ステップ#104では、送風装置29の回転数が設定回転数になったかどうかを調べる。設定回転数になっていなければステップ#102に戻る。
【0068】
ステップ#105では、送風装置29の回転数より超音波制御部82の出力電流値を計算する。
【0069】
ステップ#106では、ステップ#105の計算結果に基づき超音波制御部82の出力電流値を変更する。これにより超音波振動子77の振幅が変わる。すなわちミスト発生量が変化する。
【0070】
上記のように制御することにより、送風装置29の回転数に対応する形でミスト生成量が変わる。ミスト生成量の変化は、連続的なものとすることができる。
【0071】
従来の電解水ミスト生成装置では、超音波振動子をON/OFFさせるだけであって、ON/OFF間隔のデューティー制御によりミスト発生量を調節していた。そのため、ミスト発生量を少なくするためにはOFF時間を長くする必要があり、この時使用者が、電解水ミスト発生装置が全く機能していない、すなわち故障、と誤認識することがあった。これに対し本発明の電解水ミスト生成装置78は、完全にOFFになることはなく、弱くはあっても電解水ミストを発生し続けているので、使用者が装置の故障と誤認識することを回避できる。
【0072】
また電解水ミスト生成装置78は、停止状態から運転を開始したとき、発生した電解水ミストの累積量が、所定容積の室内空間を除菌するのに十分な量に達するまで、連続で強運転される。これを図14のフローチャートに基づき説明する。
【0073】
図14のステップ#111では、空気清浄機1の運転を開始したとき、電解水ミスト生成装置78は「強」で運転される。
【0074】
ステップ#112では、運転開始以来設定時間が経過したかどうかを調べる。時間の設定は次のようにして行う。空気清浄機1は、「○○畳用」と、それが用いられるのに適した部屋の広さが仕様として定まっている。その広さの部屋の容積を除菌するのに必要な電解水ミストの量を予め測定、または計算しておき、電解水ミスト生成装置78から発生した電解水ミストの累積量が、前記測定値または計算値に達する時間を設定時間とする。
【0075】
ステップ#112で、まだ設定時間が経過していなければステップ#111に戻る。設定時間が経過したらステップ#113に進む。
【0076】
ステップ#113では、電解水ミスト生成装置78は「弱」で運転される。この時の電解水ミスト発生量は、除菌に必要なミスト量を維持できる程度の量とする。
【0077】
強弱のめりはりをつけないで、単調に電解水ミストの生成を行っていると、室内空間を除菌するのに必要な電解水ミスト量に到達するまでに時間がかかる。かと言って、電解水ミスト生成装置78を最初から最後まで「強」で運転したのでは、室内の湿度が上がり過ぎ、カビの発生といった問題が生じる。強弱のめりはりをつけた、図14のフローチャートのような運転をすれば、部屋の除菌に必要な電解水ミスト量まで速やかに立ち上げ、その後は室内の湿度を上げ過ぎないようにしつつ除菌能力を維持することができる。
【0078】
上記実施形態の空気清浄機1は、電解水ミストを放出するとは言うものの、本格的な加湿機能を備えている訳ではないが、加湿機能を備えた空気清浄機にも本発明を適用できることは言うまでもない。
【0079】
また、上記実施形態は空気清浄装置28を有する空気清浄機1についてのものであったが、空気清浄装置を有さないもの、すなわち電解水ミスト発生器の実施形態を構成することもできる。
【0080】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は空気清浄機に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 空気清浄機
10 台座
20 筐体
24 吸気口
25 天面排気口
26 正面排気口
27 空気流通経路
28 空気清浄装置
29 送風装置
43 電解水ミスト生成ユニット
70 電解槽
71、72 電極
73 電解水生成装置
74 イオン交換膜
75、76 区画
77 超音波振動子
78 電解水ミスト生成装置
80 制御部
81 電極制御部
82 超音波制御部
84 回転数検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に形成され、一方の端が吸気口、他方の端が排気口となった空気流通経路と、
前記空気流通経路に配置された空気清浄装置及び送風装置と、
前記筐体に内蔵された電解水生成装置と、
同じく前記筐体に内蔵され、前記電解水生成装置が生成した電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置を備え、
前記電解水生成装置の電解槽はイオン交換膜で2区画に仕切られ、前記2区画の一方に正極が配置され、他方に負極が配置されることを特徴とする空気清浄機。
【請求項2】
前記正極が配置された側の区画に、前記電解水ミスト生成装置を構成する超音波振動子が配置されることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄機。
【請求項3】
前記電解水ミスト生成装置は、前記送風装置の回転数に対応する形でミスト生成量が制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の空気清浄機。
【請求項4】
停止状態から運転を開始したとき、発生した電解水ミストの累積量が、所定容積の室内空間を除菌するのに十分な量に達するまで、連続で強運転されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の空気清浄機。
【請求項5】
筐体と、
前記筐体内に形成され、一方の端が吸気口、他方の端が排気口となった空気流通経路と、
前記空気流通経路に配置された送風装置と、
前記筐体に内蔵された電解水生成装置と、
同じく前記筐体に内蔵され、前記電解水生成装置が生成した電解水をミスト化する電解水ミスト生成装置を備え、
前記電解水生成装置の電解槽はイオン交換膜で2区画に仕切られ、前記2区画の一方に正極が配置され、他方に負極が配置されることを特徴とする電解水ミスト発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−75484(P2012−75484A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220740(P2010−220740)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】