説明

空気遮断システム

【課題】溶融亜鉛めっき時、長尺な鋼材や亜鉛浴の周囲の空気を遮断し白煙の拡散を防止する、空気遮断システム。
【解決手段】対向して立設する2枚の壁体と、前記2枚の壁体の上部に、前記壁体の長さ方向に沿って設けた噴出口と、を有し、前記噴出口は、対向する前記壁体方向から前記壁体の一方の端部方向に所定の角度をもって高圧空気を噴出するように構成して、前記高圧空気により遮断膜を形成し、前記2枚の壁体と、前記遮断膜とによって、遮断空間を形成し、前記遮断空間の、前記壁体の一方の端部側の開口部に吸込口を設け、前記遮断膜を形成する高圧空気と、遮断空間内部の空気とを、前記吸込口から吸い込むことを特徴とする、空気遮断システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプッシュプル気流により空気を遮断する、空気遮断システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼材の防錆処理として、溶融亜鉛めっきが広く用いられている。
溶融亜鉛めっきは、亜鉛を溶融した高温の亜鉛浴に鋼材を浸漬して、鋼材の表面にめっき被膜を作るものである。
溶融亜鉛めっきを行う鋼材は、亜鉛浴に浸漬する前に塩化アンモニウムによってフラックス膜を形成する。また、浸漬後には、同じく塩化アンモニウムによってめっき被膜表面の洗浄を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
塩化アンモニウムは、高温の亜鉛浴やめっき被膜によって白煙となる。
このため、溶融亜鉛めっき作業において、めっき時やその後の洗浄時には白煙が発生する。
溶融亜鉛メッキを行う鋼材は長尺であるため、長尺な鋼材から発生する白煙は広範囲に拡散し、めっき作業ができなくなるという問題があった。
【0004】
本発明は、長尺な鋼材や亜鉛浴の周囲の空気を遮断し、白煙の拡散を防止する、空気遮断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、対向して立設する2枚の壁体と、前記2枚の壁体の上部に、前記壁体の長さ方向に沿って設けた噴出口と、を有し、前記噴出口は、対向する前記壁体方向から前記壁体の一方の端部方向に所定の角度をもって高圧空気を噴出するように構成して、前記高圧空気により遮断膜を形成し、前記2枚の壁体と、前記遮断膜とによって、遮断空間を形成し、前記遮断空間の、前記壁体の一方の端部側の開口部に吸込口を設け、前記遮断膜を形成する高圧空気と、遮断空間内部の空気とを、前記吸込口から吸い込むことを特徴とする、空気遮断システムを提供する。
本願の第2発明は、第1発明の空気遮断システムにおいて、前記高圧空気は、前記壁体の内部に設けたダクトを経由して前記噴出口に供給し、前記ダクトは、複数の主ダクトと、前記主ダクトから分岐する複数の枝ダクトと、により構成し、前記複数の枝ダクトの分岐側の断面が略同一であることを特徴とする、空気遮断システムを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
<1>2枚の壁体と、壁体上部の噴出口から噴出する高圧空気によって形成する遮断膜と、によってトンネル状の遮断空間を形成することにより、遮断空間内部で発生する煙の拡散を防止できる。
<2>遮断空間上部の遮断膜を、遮断空間の端部方向に角度を有する高圧空気により形成するため、内部の空気を巻き込みながら遮断空間端部に搬送することができる。
<3>搬送された空気を吸込口から吸い込むことにより、プッシュプル気流を形成し、遮断と排気を効率よく行うことができる。
<4>複数の主ダクトと、主ダクトから分岐する枝ダクトによって高圧空気を噴出口に供給するため、高圧空気を一様に噴出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の空気遮断システムの斜視図
【図2】壁体内部の斜視図
【図3】壁体及びダクトの説明図
【図4】噴出口の斜視図
【図5】遮断空間の説明図 本発明の空気遮断システムのダクトの説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【実施例】
【0009】
<1>全体の構成
本発明の空気遮断システムは、2枚の壁体1と、壁体1の上部に設けた噴出口2から噴出する高圧空気3によって形成する遮断膜4とによって遮断空間Sを形成し、遮断空間S内部の空気を吸込口5から排気するものである。(図1)
高圧空気3は、給気ファン6から、外部給気ダクト7及び壁体1内部に設けたダクト11を経由して噴出口2に供給する。
以下、本発明の空気遮断システムについて詳述する。
【0010】
<2>遮断空間
遮断空間Sは内部に、溶融亜鉛めっきを行う際に使用する亜鉛浴Pを有する。
溶融亜鉛めっき作業では、めっきする素材を亜鉛浴Pに浸漬する際や、その後に素材のめっき表面を洗浄する際に白煙が発生する。
本発明の空気遮断システムは、トンネル状の遮断空間Sを形成し、遮断空間S内部において発生する白煙が周囲に拡散するのを防止するものである。
溶融亜鉛めっきは長尺な鋼材に施されることが多いため、亜鉛浴Pは長大な矩形状であり、それに合わせて遮断空間Sも長いトンネル状となる。
【0011】
<3>壁体
壁体1は亜鉛浴Pの両側に沿って、対向して立設する。
壁体1は、作業員が遮断空間S外部にいながら、遮断空間S内部の亜鉛浴Pのメンテナンスやめっき素材の洗浄を行うことができるように、1m程度の高さとする。
壁体1の内部には、噴出口2から噴出する高圧空気3の搬送路となるダクト11を設ける。
【0012】
<4>ダクト
壁体1内部のダクト11は主ダクト111と、主ダクト111から分岐する枝ダクト112とにより構成する。(図2)
主ダクト111及び枝ダクト112は断面が矩形であり、壁体1内部に積層して設ける。
主ダクト111は壁体1の一方の端部で、外部給気ダクト7を介して、給気ファン6に接続する。(図3)
枝ダクト112は、一方の端部を主ダクト111に接続し、壁体1内部で立ち上げて、もう一方の端部を壁体1上部に設ける噴出口2に接続する。
壁体1は亜鉛浴Pに沿って立設するため、壁体1の両端において、給気ファン5からの距離が大きく異なる。
よって、噴出口2から噴出する高圧空気3の風量を壁体1のいずれの場所でも均一とするために、ダクト11を主ダクト111と枝ダクト112とにより構成する。
【0013】
<5>ダクトの形状
噴出口2を設ける部分の壁体1を、均等に分割(本例では4分割)する。そして外部給気ダクト7に接続する部分のダクト11を、分割した数と同数の主ダクト111を積層して形成する。主ダクト111の断面積は均一とする。それぞれの主ダクト111は分割した壁体1まで壁体1内部に延長する。
そして、それぞれの壁体1の分割部分において、所定の数(本例では4本)の枝ダクト112に分岐する。分岐部分の枝ダクト112の断面積は均一とする。
枝ダクト112は噴出口2に接続し、外部給気ダクト7から供給される高圧空気3は、主ダクト111及び枝ダクト112を経由して噴出口2から噴出する。
外部給気ダクト7から供給された高圧空気3は、均一な断面積の主ダクト111へ均等に分割され、主ダクト111の高圧空気3も均一な断面積の枝ダクト112へ均等に分割される。
これにより、壁体1のいずれの場所の噴出口2からも均一の風量で噴出する。
【0014】
<6>噴出口
噴出口2は壁体1内部の枝ダクト112に接続し、枝ダクト112から供給される高圧空気3を噴出する。
噴出口2は高圧空気3噴出側に方向板21を有する。(図4)
方向板21は、対向する壁体1方向から吸込口5方向へ所定の角度をつけて設ける。
高圧空気3は方向板21により、吸込口5の方向に噴出する。
【0015】
<7>遮断膜
噴出口2から噴出する高圧空気3は、壁体1のいずれの場所でもほぼ均一の風量で噴出し、遮断膜4を形成する。(図5)
高圧空気3は、対向する壁体1方向から吸込口5方向へ所定の角度をもって噴出し、壁体1間で衝突し、一体となる。
これにより、遮断膜4は壁体1間の上部の空気を巻き込みながら吸込口5方向に流れるように形成される。
【0016】
<8>吸込口
吸込口5は、集塵機や排気ファンに接続し、吸込口5に流れてきた空気を吸い込んで排気するものである。
高圧空気3により遮断空間S上部に形成した噴出気流である遮断膜4と、吸込口5の吸引流とによりプッシュプル気流を形成することにより、遮断空間Sの遮断と遮断空間S内部の空気の排気を効率よく行うことができる。
吸込口5は、人工竜巻式局所排気装置を用いることで、広範囲に亘る吸引流を作ることができ、遮断効率の向上や、吸込口5周囲の作業空間を確保することができる。
【0017】
<9>本発明の空気遮断システムの適用
本発明の空気遮断システムは、本例の溶融亜鉛めっきの亜鉛浴に限らず、煙や粉塵、臭気、蒸気等、遮断・排気を行いたい物質を発生する空間の遮断に適用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 壁体
11 ダクト
111 主ダクト
112 枝ダクト
2 噴出口
21 方向板
3 高圧空気
4 遮断膜
5 吸込口
6 給気ファン
7 外部給気ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して立設する2枚の壁体と、前記2枚の壁体の上部に、前記壁体の長さ方向に沿って設けた噴出口と、を有し、
前記噴出口は、対向する前記壁体方向から前記壁体の一方の端部方向に所定の角度をもって高圧空気を噴出するように構成して、前記高圧空気により遮断膜を形成し、
前記2枚の壁体と、前記遮断膜とによって、遮断空間を形成し、
前記遮断空間の、前記壁体の一方の端部側の開口部に吸込口を設け、
前記遮断膜を形成する高圧空気と、遮断空間内部の空気とを、前記吸込口から吸い込むことを特徴とする、
空気遮断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の空気遮断システムにおいて、
前記高圧空気は、前記壁体の内部に設けたダクトを経由して前記噴出口に供給し、
前記ダクトは、複数の主ダクトと、前記主ダクトから分岐する複数の枝ダクトと、により構成し、
前記複数の枝ダクトの分岐側の断面が略同一であることを特徴とする、
空気遮断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−225919(P2011−225919A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94905(P2010−94905)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(596166025)日本エアーカーテン株式会社 (4)
【出願人】(510108375)デバイスソース株式会社 (1)
【Fターム(参考)】