説明

空調システム

【課題】ガス透過膜を用いた空調システムにおいて、ガス透過膜における大気中の浮遊物質の遮断性能および気体透過性能を保ちつつ圧力などの外部応力に対する耐久性を向上させる空調システムを提供する。
【解決手段】空調対象空間への気体の供給及び/又は空調対象空間からの気体の排出が透過膜13を通して行われる空調システムにおける透過膜として、環状オレフィン官能性シロキサン、該環状オレフィン官能性シロキサンと、環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られ、環状オレフィン官能性シロキサンに由来する構造単位の割合が、付加重合体中5〜100モル%であり、テトラヒドロフランを溶媒とするGPCで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が10,000〜2,000,000である環状オレフィン付加重合体によって形成されている非対称膜を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、技術の進歩に伴い、例えば自動車等の気密性を高めることが難しかった空間にお
いても気密性を高めることが可能となった。このような気密性の高い自動車に多くの乗員
が長時間の乗車をした場合には、酸素濃度の低下や二酸化炭素濃度の上昇が起こり、乗員
に頭痛や不快感をもたらすおそれがあるため、適度に外気を導入する必要がある。
【0003】
しかしながら、都会の道路や幹線道路等は粉塵等の汚染物質により汚染されているため
、乗員の健康を考えると外気をそのまま車内に導入することは大きな問題であった。この
問題を解決するための1つの方法としては、大気中の汚染物質、例えば浮遊物質を除去す
るためのフィルタを、外気導入のための取り入れ口に設置する方法がある。
【0004】
このようなフィルタとして高分子材料によって形成された非対称膜からなるガス透過膜
を用いた空調システムが提案されている(特許文献1参照)。これは、気体透過性能の高
い非対称膜を空気の取り入れ口にフィルタとして用い、SPM(大気中の浮遊物質のうち
粒子径が10μm以下のもの)を遮断して、外気を十分に導入することができるように構
成されている。特許文献1には、外部応力によるガス透過膜の破壊を防ぐためにメッシュ
体を用いて膜の機械的強度を向上させ(段落0086参照)、更にメッシュ体の表面を密
着向上剤で処理することでガス透過膜の強度を向上させる(段落0088参照)ことが記
載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−12114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの手段でガス透過膜の強度を向上させたとしても、実施例として
記載されたほとんどのガス透過膜が40kPa程度の圧力で破損しており(特許文献1の
段落0231、表1参照)、より高い圧力に対する耐久性が求められている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ガス透過膜を用いた空調システムに
おいて、ガス透過膜における大気中の浮遊物質の遮断性能および気体透過性能を保ちつつ
圧力などの外部応力に対する耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、空調対象空間への気体の供給及
び/又は空調対象空間からの気体の排出が透過膜を通して行われる空調システムであって

透過膜が、下記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンを付加重合するこ
と、又はこの式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンと下記式(2)で表さ
れる環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られ、下記式(1)で表される
環状オレフィン官能性シロキサンに由来する構造単位の割合が、付加重合体中5〜100
モル%であり、テトラヒドロフランを溶媒とするGPCで測定されるポリスチレン換算の
数平均分子量(Mn)が10,000〜2,000,000である環状オレフィン付加重
合体によって形成されている非対称膜であることを特徴としている。
【0009】
【化1】

【0010】
(式(1)中のRは互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基
であり、sは0〜2の整数であり、iは0又は1であり、jは1〜4の整数を示す。)
【0011】
【化2】

【0012】
(式(2)中のA〜Aは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1
〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ア
リーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又はオキセタニル基及びア
ルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基である。また、AとA又はA
とAとが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミ
ド基又は酸無水物基を形成してもよい。kは0又は1を示す。)
本発明の空調システムによれば、透過膜の伸び特性を向上させて、膜自身に柔軟性を持
たせることができ、圧力変化などの外部応力に対して、膜が一時的に変形して力を逃がす
ことで破損するのを防ぐことができる。これにより、透過膜における浮遊物質の遮断性能
や気体透過性能を確保しつつ圧力などの外部応力に対する耐久性を向上させることができ
る。なお、非対称膜とは、多孔質層及びこれに隣接する緻密層を有する膜をいい、上記非
対称膜は緻密層表面にナノメートルサイズ又はマイクロメートルサイズの孔を有すること
が好ましい。
【0013】
また、請求項2に記載の発明では、高分子材料はシリカ系フィラーが分散された高分子
材料であることを特徴としている。これにより、非対称膜のガス透過性が向上する。
【0014】
また、請求項3に記載の発明では、23±2℃、膜間の圧力差がない条件における、非
対称膜の酸素透過係数P(O)及び二酸化炭素透過係数P(CO)の比が下記式(3
)を満足することを特徴としている。これにより、本発明による効果が特に顕著に奏され
る。
【0015】
1.0<P(O)/P(CO)<1.70 …(3)
また、請求項4に記載の発明のように、空調システムは車両用空調システムとして好適
に用いることができ、請求項5に記載の発明のように、空調システムは住宅用空調システ
ムとして好適に用いることができ、請求項6に記載の発明では、空調システムをコンテナ
用空調システムとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態の非対称膜の断面図である。
【図2】第2実施形態の住宅用空調システムを適用した家屋の断面図である。
【図3】第3実施形態の車両用空調システムを搭載した車両の模式図である。
【図4】第4実施形態の車両用空調システムを搭載した車両の模式図である。
【図5】第5実施形態の車両用空調装置の断面図である。
【図6】第5実施形態の透過膜モジュールの斜視図である。
【図7】第6実施形態の車両用空調装置の断面図である。
【図8】第7実施形態の車両用空調装置の断面図である。
【図9】第8実施形態の車両用空調装置のフローチャートである。
【図10】第9実施形態の車両用空調装置のフローチャートである。
【図11】第10実施形態のコンテナ用空調システムを示す概念図である。
【図12】透過部材の変形例を示す斜視断面図である。
【図13】透過部材の変形例を示す斜視断面図である。
【図14】実施例1の非対称膜のSEM像である。
【図15】実施例2の非対称膜のSEM像である。
【図16】比較例の非対称膜のSEM像である。
【図17】気体透過係数を測定するためのガス透過性評価装置の概略図である。
【図18】SPM遮断率を測定するための測定装置の概略図である。
【図19】膜強度を測定するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を適用した実施形態について説明するが、本発明はこれらの
実施形態に限定されるものではない。
【0018】
(第1実施形態)
〔非対称膜〕
本発明の非対称膜は、透過膜を介して空調対象空間への気体の供給及び/又は空調対象
空間からの気体の排出を行う空調方法において、透過膜として好適に用いることができる
。本実施形態に係る空調システムは、空調対象空間への気体の供給及び/又は空調対象空
間からの気体の排出を行う透過膜と、透過膜が設けられている開口を形成しながら空調対
象空間を形成している隔壁とを備える。隔壁は、気体の透過が遮断されるように形成され
た単一又は複数の部材から構成される。
【0019】
透過膜は、例えば、外気導入のための取り入れ口に設置される。空調対象空間は、空間
内の気体と外気とを交換することが必要な空間である。空調対象空間の具体例としては、
住宅、車両(自動車)、コンテナ、新幹線及び飛行機等の内部空間がある。これらの具体
例については第2実施形態以降で説明し、本実施形態では透過膜の構成について詳細に説
明する。
【0020】
図1は、本実施形態の非対称膜を示す断面図である。図1に示す非対称膜13は、多孔
質層3と、多孔質層3に隣接する緻密層5とから構成される。緻密層5は、当該技術分野
において一般に「スキン層」と称される場合がある層である。多孔質層3及び緻密層5は
、同じ高分子材料によって一体に形成されている。緻密層5には、ナノメートルサイズ又
はマイクロメートルサイズの孔があいている(例えば、20〜80ナノメートル)。なお
、第2実施形態以降の各実施形態においても、本実施形態と同様の非対称膜13が用いら
れる。
【0021】
また非対称膜13内にはフィラーを分散することもできる。非対称膜13は、多孔質層
3及び緻密層5を有する非対称構造を形成している高分子材料のみ、あるいは高分子材料
とフィラーとを主成分として含むことができるが、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0022】
非対称膜13の厚さは0.1〜10μmであることが好ましい。
【0023】
緻密層5は、SPMの透過を防ぎながら、窒素及び酸素等の気体を選択的に透過させる
機能を有する。そのために、緻密層5は、SPMの透過を十分に防止できる程度の緻密性
を有していればよい。具体的には、緻密層5表面にナノメートルサイズ又はマイクロメー
トルサイズの孔を形成している。ただし、緻密層5内には、多孔質層3よりも細孔容積が
小さくなる程度の細孔が、連泡あるいは半連泡状態で形成されている場合もある。
【0024】
気体の透過性を十分に確保するために、緻密層5の膜厚は1μm以下であることが好ま
しい。また、緻密層5の膜厚は好ましくは0.005μm以上であり、より好ましくは0
.01μm以上である。
【0025】
多孔質層3は、気体の透過性を高いレベルに維持しつつ緻密層5の支持体として機能す
る。気体の透過性を十分に確保するために緻密層5の膜厚を薄くすると、緻密層5単独で
は膜全体の強度等が不足するおそれがあるが、多孔質層3が緻密層5を支持する支持体と
して機能することにより、非対称膜13全体としては十分な機械的強度や取扱い性が維持
される。このような点から、多孔質層3の膜厚は1〜500μmであることが好ましい。
【0026】
本発明の目的を特に高いレベルで達成するために、非対称膜13は、ガスの透過速度が
ガスの分子量に依存するような膜であることが好ましい。言い換えると、非対称膜13中
の気体の流れにおいてクヌーセン流(Knudsen flow)が支配的であることが
好ましい。なお、「クヌーセン流」とは、分子の動きが問題となるほどの希薄な気体の流
れをいい(化学大辞典3、化学大辞典編集委員会編、縮刷版44頁参照)、クヌーセン流
が支配的であるとき、ガスの透過速度はその分子量の平方根の逆数に依存する。
【0027】
理想的なクヌーセン流によって気体が透過する膜においては、気体の透過係数Pはその
分子量の平方根に逆比例する。例えば、透過するガス成分が酸素及び二酸化炭素である場
合、それらの分離比αは、下記式(4)に示されるように1.17となる。式(4)にお
いて、P(O)及びP(CO)はそれぞれ酸素及び二酸化炭素の透過係数を示し、M
(O)及びM(CO)はそれぞれ酸素及び二酸化炭素の分子量を示す。
【0028】
【数1】

【0029】
一方、「溶解拡散流」と呼ばれる気体の流れがある。溶解拡散流とは、膜に対する気体
の溶解度と膜内での気体の拡散係数との積に依存する流れをいい、溶解拡散流による膜中
の気体の透過速度はクヌーセン流に比べて一般に遅い。従来の高分子系の膜においては、
膜を透過する気体の流れにおいて溶解拡散流が支配的である場合が多い。溶解拡散流が支
配的である膜においては、一般的に二酸化炭素の透過速度が酸素の透過速度に対して大き
いことから、酸素及び二酸化炭素の分離比αが、1.0未満(高分子によって異なるが、
0.3〜0.7程度)であることが知られている。
【0030】
以上のように、分離比αの値を指標として、膜を透過する気体の流れの状態を評価する
ことが可能である。実際の膜においてはそれぞれの種類の流れが複合して生じていると考
えられるものの、分離比α(=P(O)/P(CO))が下記式(3)を満足するよ
うな範囲内にあれば、クヌーセン流が支配的であるとみなすことができる。酸素透過係数
P(O)及び二酸化炭素透過係数P(CO)は、23±2℃、膜間の圧力(全圧)差
が実質的にない条件で測定される。
【0031】
1.0<P(O)/P(CO)<1.70 …(3)
非対称膜13においてクヌーセン流が支配的である理由は必ずしも明らかでないが、本
発明者らは以下のように考えている。
【0032】
まず、非対称膜13の気体透過係数は緻密層5の透過性に依存し、多孔質層3の影響は
少ないと考えられる。ここで、緻密層5の表面に形成された孔及び/又は緻密層5の内部
の空間でクヌーセン流が生じ、その他の緻密層5においては溶解拡散流が生じていると考
えられる。このとき、気体がクヌーセン流により透過する流路が溶解拡散流により透過す
る流路よりも多いためにクヌーセン流が支配的となり、気体の透過性が飛躍的に向上する
と推察される。また、溶解拡散流により気体が透過する部分においてSPMがブロックさ
れることから、SPM等の大気中の浮遊物質を除去することが可能となると考えられる。
【0033】
また、上述のように非対称膜13内にフィラーを分散した場合には、緻密層5の表面に
形成された孔及び/又は緻密層5の内部の空間に加えて、フィラーとポリマーとの界面の
隙間でもクヌーセン流が生じるため、非対称膜13の気体透過性がさらに向上する。
【0034】
〔高分子材料〕
(I)単量体組成物
本実施形態の高気体透過性環状オレフィン付加重合体は、下記式(1)で表される環状
オレフィン官能性シロキサン、又はこの式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキ
サンと、下記式(2)で表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより製造
される。
【0035】
【化3】


【0036】
(式(1)中のRは互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基
であり、sは0〜2の整数であり、iは0又は1であり、jは1〜4の整数を示す。)
【0037】
【化4】



【0038】
(式(2)中のA〜Aは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1
〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ア
リーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又はオキセタニル基及びア
ルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基である。また、AとA又はA
とAとが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミ
ド基又は酸無水物基を形成してもよい。kは0又は1を示す。)
上記式(1)中、Rは、互いに同一又は異なってよい脂肪族不飽和結合を有さない一
価の有機基であり、好ましくは炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり
、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基
、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、2−フェニルエチル基、3−フェ
ニルプロピル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の1個又は2個以上がフ
ッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された基などが挙げられる。
【0039】
式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンとしては、以下の化合物が例示で
きるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。ここで、Meはメチル基、
Phはフェニル基を表す(以下、同様)。
【0040】
【化5】

【0041】
式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンは、一種単独で用いても二種以上
を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンは、例えば式(1)において、R
1がメチル基、i=0、j=2、s=2の場合、下記に示す方法により製造することがで
きる。
【0043】
下記反応式に示す通り、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンと相当
するSiH基含有官能性シロキサンを白金触媒存在下で付加反応させて合成することがで
きる。
【0044】
【化6】

【0045】
ここで、式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンの重要構造要素であるj
について説明する。式(1)におけるアルキル鎖の数を示すjは、1〜4の整数であり、
好ましくは1又は2である。
【0046】
本実施形態の環状オレフィン官能性シロキサンでは、嵩高いシリル基部分と環状オレフ
ィンを遠ざけるスペーサーとしてアルキル鎖を導入した。このアルキル鎖の影響により、
本実施形態の高気体透過性環状オレフィン付加重合体の機械的強度、特に柔軟性が著しく
高まることを見出している。これにより、非対称膜13の伸び特性を向上させて、膜自身
に柔軟性を持たせることができ、圧力変化などの外部応力に対して、膜が一時的に変形し
て力を逃がすことで破損するのを防ぐことができる。
【0047】
一方、上記式(2)中、A〜Aは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩
素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1〜10のメチル基、エチル基、プロピル基
、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペ
ンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、ア
リル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアル
キル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、メトキシ基、
エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリーロキシ基、3,3
,3−トリフロロプロピル基、2−(パーフロロブチル)エチル基、2−(パーフロロオ
クチル)エチル基、p−クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基から選ばれる基、又
はオキセタニル基、メトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等の好まし
くはアルコキシ基の炭素数が1〜10、特に1〜6のアルコキシカルボニル基から選ばれ
る極性を有する置換基である。また、AとA又はAとAとは、それぞれが結合す
る炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミド基又は酸無水物基を形成しても
よい。
【0048】
この場合、式(2)中の脂環構造としては炭素数4〜10のものが挙げられ、芳香環構
造としては、炭素数6〜12のものが挙げられる。これらの構造を例示すると下記の通り
である。
【0049】
【化7】


【0050】
なお、これらがノルボルネン環と結合した状態を例示すると下記の通りである。式(2
)において、k=0の場合を示す。
【0051】
【化8】


【0052】
式(2)で表される環状オレフィン化合物としては、以下の化合物が例示できるが、本
発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0053】
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプ
ト−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−プロピル−
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト
−2−エン、5−ペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヘキシル−
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプ
ト−2−エン、5−デシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェニル−
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト
−2−エン、5−アリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−イソプロピリ
デン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.
2.1]ヘプト−2−エン、5−フロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5
−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−
5−エン−2−カルボン酸メチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カル
ボン酸エチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸ブチル、2−
メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチル、2−メチル
−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸エチル、2−メチル−ビシ
クロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸プロピル、2−メチル−ビシクロ
[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸トリフロロエチル、2−メチル−ビシ
クロ[2.2.1]ヘプト−2−エニル酢酸エチル、アクリル酸2−メチル−ビシクロ[
2.2.1]ヘプト−5−エニル、メタクリル酸2−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘ
プト−5−エニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸ジ
メチル、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン、テトラシクロ[4.4.
0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどを例示することができる。これらは、
一種単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
式(2)で表される環状オレフィン化合物において、エステル基などの極性基を含んで
いると、得られる重合体の被着体への接着性や有機溶媒への溶解性を高める反面、気体透
過性能が低下する傾向があるので、目的に応じ、適宜選択することが好ましい。
【0055】
上記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンと、上記式(2)で表される
環状オレフィン化合物との仕込み比率は、得られる本発明の環状オレフィン付加重合体の
気体透過特性を考慮し、得られた重合体中の式(1)由来の構造単位は合計で5〜100
モル%が好ましく、より好ましくは10〜100モル%となるように使用することが好ま
しい。
【0056】
(II)付加重合体
環状オレフィン付加重合体は、上記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサ
ンを単量体として付加重合することにより形成される、下記式(3)で示される繰り返し
単位を含む。
【0057】
【化9】

【0058】
(式(3)中のR、i、j及びsは式(1)と同じである。)
また、本発明の環状オレフィン付加重合体は、式(2)で表される環状オレフィン化合
物を用いた場合、式(2)で表される環状オレフィン化合物を単量体として付加重合する
ことにより形成される、下記式(4)で示される繰り返し単位を含む。
【0059】
【化10】

【0060】
(式(4)中のA〜A及びkは式(2)と同じである。)
ここで、式(4)で示される繰り返し単位は、例えばkが0、A〜Aがいずれも水
素原子の場合、2,3付加構造単位を示すものであるが、上記式(2)で表される環状オ
レフィン化合物を単量体として付加重合することによる2,7付加構造単位となっている
ものが含まれていてもよい。また、この構造単位については、式(3)で示される繰り返
し単位においても、同様である。
【0061】
高気体透過性環状オレフィン付加重合体中の式(3)で表される構造単位の割合は、通
常5〜100モル%、好ましくは10〜100モル%である。式(3)で表される構造単
位の割合が、5モル%未満では気体透過性が不十分になる。また特に、気体透過性、有機
溶媒への溶解性、機械強度の点から、環状オレフィン化合物中、式(1)由来の構造単位
が50〜100モル%であり、式(2)由来の構造単位が0〜50モル%の割合で含まれ
ることが好ましい。
【0062】
高気体透過性環状オレフィン付加重合体中の式(3)及び式(4)で表される構造単位
は、ランダムに存在してもよく、またブロック状に偏在してもよい。
【0063】
該重合体は、HFC(テトラヒドロフラン)を溶媒とするGPC(Gel Permeation Chr
omatography)で求められるポリスチレン換算の数平均重量分子量が、10,000〜2,
000,000であることが好ましく、より好ましくは50,000〜1,500,00
0である。該分子量が前記上限値を越えるものは現実的に合成が難しく、一方、該分子量
が前記下限値未満では膜の強度が低下する傾向がある。
【0064】
付加重合は、定法に従い、トルエンやキシレンなどの芳香族系炭化水素溶媒に上述の単
量体組成物を溶解して、重合触媒と助触媒の存在下で、常圧下20〜40℃の温度で、不
活性ガス雰囲気下攪拌して重合させる。重合触媒としては、周期律表第8族元素、9族元
素、10族元素より選択された、例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(N
i)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pb)及び白金(Pt)な
どの中心金属とするメタロセン錯体が挙げることができ、好ましくはニッケル(Ni)又
はパラジウム(Pd)のメタロセン触媒が挙げられる。助触媒としては有機アルミニウム
化合物を用いることができ、好ましくはメチルアルミノキサンである。
【0065】
上記触媒及び助触媒は、以下の範囲の使用量で用いられる。
【0066】
触媒は式(1)及び(2)で示される単量体の合計1モルに対して0.01〜100ミ
リモル原子が好ましい。また助触媒は触媒1モルに対して0.5〜10,000モルが好
ましい。
【0067】
また、必要に応じて、分子量調整剤を重合系中に添加してもよい。分子量調整剤として
は水素、エチレン、ブテン、ヘキセンなどのα−オレフィン、スチレン、3−メチルスチ
レン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、エチルビニルエーテルなどの不飽和
エーテル、トリス(トリメチルメトキシ)ビニルシラン、ジビニルジヒドロシラン、ビニ
ルシクロテトラシロキサンなどのビニルケイ素化合物が挙げられる。
【0068】
なお、上述した溶媒と単量体との比率、重合温度、重合時間、分子量調整剤の量は、用
いる触媒、単量体構造などに著しく影響を受けるため、一概に限定することが難しい。上
記特定構造の重合体を得るべく、目的に応じて使い分ける必要がある。
【0069】
重合触媒の量と分子量調整剤の添加量、単量体から重合体への転化率、あるいは重合温
度によって、重合体の分子量が調節される。
【0070】
重合停止は、水、アルコール、ケトン、有機酸などから選ばれた化合物によって行われ
る。重合体溶液に、乳酸、リンゴ酸、シュウ酸などの酸の水とアルコール混合物を添加す
ることで、触媒残渣を重合体溶液から分離・除去することができる。また、触媒残渣の除
去には、活性炭、珪藻土、アルミナ、シリカなどを用いての吸着除去や、フィルタなどに
よるろ過分離除去などが適用できる。
【0071】
重合体は、重合溶液をメタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチル
エチルケトンなどのケトン類中に入れて、凝固し、通常60℃〜150℃で6〜48時間
減圧乾燥することにより得ることができる。この工程で、重合体溶液中に残存する触媒残
渣や未反応モノマーも除去される。また、シロキサンを含有する未反応モノマーは、上記
アルコール類やケトン類にオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペン
タシロキサンなどの環状ポリシロキサンを混合した溶媒を用いることで容易に除去するこ
とができる。
【0072】
(iv)フィラー
上記高分子材料には、ガス透過性を向上させる点から、フィラーを分散させることが好
ましい。
【0073】
フィラーとしては、有機物フィラー又は無機物フィラーを用いることができる。フィラ
ーの表面は親水性であっても、疎水性であっても構わないが、特に、親水性表面を有する
無機物フィラーが好ましい。このような無機物フィラーとしては、例えば、シリカ、ゼオ
ライト、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛等の酸化物からなる酸化
物系フィラーが挙げられる。これらの中で、シリカ系フィラーが好ましい。シリカ系フィ
ラーとしては、例えば、球状シリカ、カプセル状シリカ、多孔質シリカ粒子、石英パウダ
ー、ガラスパウダー、ガラスビーズ、タルク及びシリカナノチューブが挙げられる。
【0074】
気体の透過性を特に高めるために、フィラーは多孔質体フィラーであることが好ましい
。多孔質体フィラーとしては、メソポーラスシリカ粒子、ナノポーラスシリカ粒子及びゼ
オライト粒子が好ましい。なお、メソポーラスシリカ粒子は細孔が形成されている粒径5
00〜1000nmの多孔質シリカ粒子であり、ナノポーラスシリカ粒子は細孔が形成さ
れている粒径30〜100nmの多孔質シリカ粒子である。一般に、メソポーラスシリカ
粒子は3〜7nmの細孔径を有し、ナノポーラスシリカ粒子は2〜5nmの細孔径を有す
る。多孔質体フィラーのように見かけ密度が低いフィラーを用いることにより、非対称膜
の性能が大きく向上すると考えられる。
【0075】
必要に応じて、カップリング剤等を用いた表面処理、又は水和処理による親水化を施し
たフィラーを用いてもよい。
【0076】
フィラーの含有量は、上記高分子材料100質量部対して、典型的には5〜500質量
部である。フィラーの含有量は11質量部以上であることがより好ましく、30質量部以
上であることがさらに好ましく、70〜400質量部であることが特に好ましい。フィラ
ーの含有量が5質量部未満であると、気体の透過性を向上させる効果が小さくなる傾向に
あり、500質量部を超えると、非対称膜の機械的強度が低下して、薄膜化し難くなる傾
向にある。
【0077】
(V)非対称膜の製法
上記非対称膜は、例えば、上述の高分子材料を基材上に塗布して溶液層を形成するステ
ップと、溶液層から溶媒を部分的に除去して、高分子材料を含む緻密層を溶液層の基材と
は反対側の表層部に形成させるステップと、緻密層が形成された溶液層を高分子材料の貧
溶媒(凝固溶媒)中に浸漬して、高分子材料を含む多孔質層を形成させるステップとを備
える方法により得ることができる。
【0078】
高分子材料を溶解する溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭
化水素、エーテル類、又はケトン類が好ましく用いられる。芳香族炭化水素としては、ベ
ンゼン、トルエン及びキシレンが挙げられる。脂肪族炭化水素としてはヘキサン、ヘプタ
ン、オクタン、デカン及びシクロヘキサンが挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、
クロロホルム、塩化メチレン及び四塩化炭素が挙げられる。エーテル類としてはテトラヒ
ドロフラン及びジオキサンが挙げられる。ケトン類としてはエチルメチルケトンが挙げら
れる。
【0079】
高分子溶液の調製に際しては、相分離を促したり、ポリマーの溶解度、高分子溶液粘度
を調節するために他の物質を加えたりして製膜することがしばしばある。この様な製膜調
製剤として高分子溶液に対して0.1%以上相溶性のある化合物を用いることができる。
調整剤としては高分子溶液に溶解性のある塩、水、低級アルコール(メタノール、エタノ
ール)、アミド系極性溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)などを用い
ることができる。
【0080】
緻密層を形成させる際、所望の厚さの緻密層が形成されるように、溶剤の除去の条件(
乾燥方法、温度、時間等)が適宜調整される。
【0081】
多孔質層を形成させるために用いられる貧溶媒(凝固溶媒)としては、メタノール、エ
タノール及びプロパノール等のアルコール類、アセトン、又は水が好ましく用いられる。
【0082】
上記非対称膜は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱
しない限り適宜変形が可能である。例えば、非対称膜がメッシュ体をさらに有していても
よい。この場合、多孔質層及び緻密層のうち少なくとも一方がメッシュ体に含浸していて
もよい。あるいは、メッシュ体が多孔質層上若しくは緻密層上に積層されていてもよい。
メッシュ体を有する非対称膜は、例えば、上述の混合液をメッシュ体に含浸させるか、又
はメッシュ体上に塗布することにより作製できる。
【0083】
メッシュ体により、ガス透過性を向上させるとともに、膜の機械的強度を向上させ、外
部応力による膜の破壊を防ぐことができる。メッシュ体は金属製でも樹脂製でもよいが、
特に樹脂製が好ましい。メッシュ体を形成する樹脂としてはポリエステルテレフタレート
(PET)及びポリプロピレン(PP)が挙げられる。メッシュ体の織り方としては平織
、綾織、平畳織、及び綾畳織が挙げられる。
【0084】
メッシュ体の表面は、非対称膜の強度を向上させるために、密着向上剤(プライマー)
で処理されていることが好ましい。密着向上剤としては、市販されているものを用いるこ
とができる。
【0085】
また、非対称膜が支持体上に形成されていてもよいし、非対称膜が中空糸状の膜であっ
てもよい。
【0086】
(第2実施形態)
次に、本発明の空調システムを住宅用空調システムに適用した第2実施形態について説
明する。図2は、二階建て家屋110における住宅用空調システム100を家屋110の
高さ方向に切断した概略断面図である。
【0087】
住宅用空調システム100は、家屋110の一階の室内(空調対象空間)の側壁103
及び天井104、二階の室内(空調対象空間)の側壁107及び天井108に、上述の非
対称膜からなる透過膜13を備える。また、住宅用空調システム100は、各階の室内に
、ファン112を備える。さらに、住宅用空調システム100は、一階床102の下方、
一階天井104と二階床106との間、及び二階天井108の上方に、家屋110の幅方
向に対向する一対の通気口114を備える。また、住宅用空調システム100は、各階の
室内(空調対象空間内)に暖房機器(石油ファンヒーター)を備える(図示省略)。
【0088】
各階の室内は、透過膜13以外の部分では、実質的に外気と遮断されている。すなわち
、各階の室内の空気は、透過膜13のみを介して、通気口114から家屋110内へ取り
込まれた外気と接する。各通気口114の間には気流F1、F2、F3、F4が形成され
、これらの気流によって外気が室内へ供給されるとともに、室内から排出された空気が室
外へ排出される。
【0089】
各階の室内で石油ファンヒーターを作動させると、石油の燃焼に伴って室内のO濃度
が減少して、CO濃度が増加する。また、石油の不完全燃焼によって発生したCOや、
家屋110を構成する建材又は内装材から放散されたVOCが室内に存在する。したがっ
て、室内の空気では、外気に比べて、O濃度が低く、CO、CO、及びVOCの濃度
が高くなる。このような室内の空気と外気との濃度差に起因して、外気中のOが透過膜
13を介して室内へ導入されるとともに、CO、CO、及びVOCが透過膜13を介し
て室外へ排出される。このような透過膜13を介したOの導入、CO、CO、及びV
OCの排出(ガス交換)は、O、CO、CO、及びVOCの各濃度差が解消されるま
で行われる。その結果、室内の空気と外気とで、CO、CO、及びVOCの各濃度を均
一にすることができる。
【0090】
住宅用空調システム100では、ファン112で室内の空気を循環させることによって
、上述のガス交換の効率を向上させることができる。また、各通気口114の間に流れる
気流F1、F2、F3、F4によって上述のガス交換を促進することができる。
【0091】
また、住宅用空調システム100では、室内に存在するガスのうち、外気との間で濃度
差が生じたガスのみを透過膜13を介して選択的に交換し、且つ膜を透過するガスの量は
、透過膜13の両側間のガスの濃度差を解消するために要する量に限られ、それより多く
のガスが膜を透過することがない。すなわち、住宅用空調システム100では、余分な換
気が行われない。その結果、換気による住宅用空調システム100の熱損失を抑えること
ができる。例えば、石油ファンヒーターに起因するCO、COや、建材又は内装材が放
散するVOC等の室内で発生する有害ガス(室内空気質組成の悪化分)は、多めに見積も
っても室内の空気全体の3%である。ここで、室内と外気との間で交換するガスの総量が
室内空気全体の3%であると仮定すると、熱損失は3%となり、従来の住宅用の24時間
換気システムに比べて熱損失を抑えることができる。なお、住宅用空調システム100が
各階の室内(空調対象空間内)に冷房機器を備える場合においても、換気による住宅用空
調システム100の熱損失を抑えることができる。
【0092】
さらに、住宅用空調システム100では、上述の非対称膜からなる透過膜13を介して
気体の排出及び導入が行われるので、SPM、nSPM等の大気中の浮遊物質の室内への
流入を防止することができる。
【0093】
透過膜13の設置面積は、例えば、室内と外気との間で必要とされる交換量が最も多い
の交換を十分に達成できる程度に設定すればよい。例えば、住宅用空調システム10
0の空調対象空間が、6畳(10.94m)×天井高2.4mの大きさである場合、空
調対象空間の容積は26.26mとなる。石油ファンヒーターによるOの消費量が1
時間当たり1.2%とすると、空調対象空間内で石油ファンヒーターが1時間当たりに消
費するO全量は、26.26m×1.2%/h=0.315m/hとなる。また、
一人当たりのO消費量は0.0244m/h程度である。したがって、6畳の空調対
象空間内に4人が存在する状態で石油ファンヒーターを作動させた時の、空調対象空間内
での一時間当たりのO消費量は、0.315m/h+0.0244m/h×4=0
.4126m/hとなる。ここで、透過膜13におけるOの透過率を、0.5×10
−2cm/sec/cm=0.18m/h/mとすると、上記空調対象空間内で
の1時間当たりのO消費量に相当する量のOを透過させるために必要となる透過膜1
3の設置面積は、0.4126m/h÷0.18m/h/m=2.29m(約1
.5m×1.5m)となる。このサイズの透過膜13を設置するだけの面積を確保できる
点において、透過膜13の設置場所は室内(空調対象空間)の側壁又は天井であることが
好ましい。なお、室内においてOより低濃度であるCO、VOCは上記面積を有する
透過膜13で十分に交換可能である。
【0094】
透過膜13の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましい。
【0095】
(第3実施形態)
次に、本発明の空調システムを車両用空調システムに適用した第3実施形態について説
明する。図3は、第2実施形態の車両用空調システムを搭載した車両10の模式的な断面
図である。図3において前後左右の矢印は車両10の各方向を示し、矢印Fwは車両10
の前進方向を示している。
【0096】
乗員が搭乗する車室11(図3中、太実線で囲んで示した領域)の前端部には、車室1
1とエンジンルーム12とを仕切る隔壁(ファイヤーウォール)27が設けられている。
この隔壁27の一部には車室11側からエンジンルーム12側に貫通する貫通穴が形成さ
れており、この貫通穴は透過膜13によって塞がれている。
【0097】
エンジンルーム12には、外気が流れる外気流路20を形成する外気ダクト21が隔壁
27に沿って配置されている。車室11には、内気が流れる内気流路22を形成する内気
ダクト23が隔壁27に沿って配置されている。
【0098】
外気ダクト21及び内気ダクト23の壁面の一部には貫通穴が形成されており、この貫
通穴が透過膜13と重なるように外気ダクト21及び内気ダクト23が隔壁27に配置さ
れている。
【0099】
換言すれば、透過膜13は、その一方の面(エンジンルーム12側の面)13aが外気
流路20に露出して外気と接触し、その他方の面(車室11側の面)13bが内気流路2
2に露出して内気と接触するように外気流路20と内気流路22との境目に配置されてい
る。
【0100】
外気流路20には、外気の流れを発生させて透過膜13の一方の面13aに外気を供給
する外気送風機24が配置されている。内気流路22には、内気の流れを発生させて透過
膜13の他方の面13bに内気を供給する内気送風機25が配置されている。
【0101】
外気送風機24及び内気送風機25は、気体に運動エネルギーを与えたり圧力を高めた
りする流体機械のうち圧縮比が2未満のものであり、具体的にはファンやブロア等である

【0102】
外気ダクト21には、外気流路20に外気を流入させる外気入口部20aと、外気を外
気流路20の外部に流出させる外気出口部20bとが形成されている。
【0103】
外気入口部20a及び外気出口部20bは、外気入口部20aにおける圧力(全圧)P
1、外気出口部20bにおける圧力(全圧)P2、及び外気送風機24の送風圧力Pvが
次の圧力関係を満たすように構成されている。
【0104】
すなわち、出口部圧力P2から入口部圧力P1を引いた圧力差(P2−P1)が車両停
止時及び車両走行時の両方において送風圧力Pv以下になるように外気入口部20a及び
外気出口部20bが構成されている。換言すれば、入口部圧力P1、出口部圧力P2及び
送風圧力Pvは車両停止時及び車両走行時の両方においてP2−P1≦Pvの関係を満た
している。
【0105】
図3の例では、外気入口部20aを車両前方側に向けて開口させ、かつ外気出口部20
bを車両左方側を向けて開口させることによって、外気出口部20bでは外気入口部20
aよりも車両走行時の走行風(動圧)を受けにくくなるようにし、その結果として上記圧
力関係を満たすようにしている。
【0106】
外気送風機24及び内気送風機25の作動は図示しない空調用制御装置(ECU)によ
り制御される。空調用制御装置は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコ
ンピュータとその周辺回路から構成される。空調用制御装置は、そのROM内に記憶され
た制御プログラムに基づいて各種演算と処理とを行って外気送風機24及び内気送風機2
5等の電気機器の作動を制御する。
【0107】
次に上記構成における作動を説明する。空調用制御装置が外気送風機24及び内気送風
機25を作動させると外気流路20に外気の流れが発生するとともに内気流路22に内気
の流れが発生する。
【0108】
このとき、内気流路22の内気中のある成分の濃度が外気流路20の外気中のその成分
の濃度と比較して低ければ、その成分の濃度差により外気中のその成分が透過膜13を透
過して内気と混ざる。このため内気中のその成分の濃度が上昇する。
【0109】
逆に、内気流路22の内気中のある成分の濃度が外気流路20の外気中のその成分の濃
度と比較して高ければ、その成分の濃度差により内気中のその成分の気体が透過膜13を
透過して外気と混ざる。このため内気中のその成分の濃度が低下する。
【0110】
例えば、車室11内の乗員の呼吸により酸素が消費されて内気中の酸素濃度が低下する
と、外気流路20の外気中の酸素が透過膜13を透過して内気流路22の内気と混ざるの
で内気中の酸素濃度が上昇する。
【0111】
また、車室11内の乗員の呼吸により二酸化炭素が発生して内気中の二酸化炭素濃度が
上昇すると、内気流路22の内気中の二酸化炭素が透過膜13を透過して外気流路20の
外気と混ざるので内気中の二酸化炭素濃度が低下する。このため、車室11内の酸素濃度
及び二酸化炭素濃度を乗員にとって快適な濃度に維持することができる。同様に体臭など
の臭気ガスも抑制できる。
【0112】
一方、外気流路20の外気中の液体や固体は透過膜13を全く透過しないか僅かに透過
するだけであるので、これらの液体や固体の内気流路22への侵入を透過膜13によって
抑制できる。
【0113】
また、従来の車両では車室11内の乗員の呼吸により水蒸気が発生して内気中の湿度が
上昇すると冬場など車室外の気温が低い場合に窓が曇り運転に支障をきたすため外気を導
入して防曇していたので換気による暖房の熱損失が発生していたが、本実施形態では内気
流路22の内気中の水蒸気が透過膜13を透過して外気流路20の外気と混ざるので内気
中の湿度を低下させることができ、ひいては窓の曇りを抑制することができる。このため
、外気導入の必要性が少なくなって換気による熱損失を低減できるので省エネルギー化や
空調装置の小型化を図ることができる。
【0114】
また、本実施形態では、外気送風機24及び内気送風機25を備えているので、透過膜
13近傍に外気及び内気が滞留することなく透過膜13に新鮮な外気及び内気を供給する
ことができる。
【0115】
さらに本実施形態では、入口部圧力P1、出口部圧力P2及び送風圧力Pvの圧力関係
が車両停止時及び車両走行時の両方においてP2−P1≦Pvの関係を満たしているので
、外気流路20における外気の流れ方向を車両停止時及び車両走行時の両方において外気
入口部20aから外気出口部20bに向かう方向にすることができる。
【0116】
換言すれば、外気流路20における外気の流れ方向を車両停止時及び車両走行時の両方
において一定にすることができるので、外気流路20における外気の滞留及び逆流を防止
することができ、ひいては透過膜13に新鮮な外気を安定して供給することができる。
【0117】
これらの結果、外気及び内気が透過膜13近傍に滞留することによる透過膜13の透過
性能の低下を車両停止時及び車両走行時の両方において防止することができるので、透過
膜13の透過性能を安定して発揮することができる。
【0118】
また、自車両の出す排気ガスに含まれる臭気及び有害ガスやエンジン周辺の臭気等が外
気流路20に流れ込んで長時間滞留するとこれらの臭気及び有害ガスが透過膜13を透過
して車室11内に侵入しやすくなるが、本実施形態では透過膜13に新鮮な外気が供給さ
れるので、これらの臭気及び有害ガスの車室11内への侵入を低減できる。
【0119】
ちなみに図3の例では、入口部圧力P1、出口部圧力P2及び送風圧力Pvの圧力関係
が車両走行時でもP2−P1≦Pvの関係を満たすようにするために、外気流路20の外
気入口部20aを車両前方側に向け、外気流路20の外気出口部20bを車両左方側に向
けているが、上記圧力関係を満たすための外気入口部20a及び外気出口部20bの構成
はこれに限定されるものではない。
【0120】
例えば、車両前進方向Fwと外気入口部20aの開口方向とがなす角度を入口開口角度
とし、車両前進方向Fwと外気出口部20bの開口方向とがなす角度を出口開口角度とし
たとき、入口開口角度が出口開口角度以下になる配置関係で外気入口部20a及び外気出
口部20bを構成すれば入口部圧力P1を出口部圧力P2よりも所定量高くすることがで
き、ひいては上記圧力関係を満たすようにすることができる。
【0121】
ここで、外気入口部20a及び外気出口部20bが複数個ずつ設けられ、それらの開口
方向が各々異なっているような場合には、入口開口角度の平均角度と出口開口角度の平均
角度とを比較すればよい。
【0122】
ちなみに平均角度とは次のように算出されるものである。すなわち、例えば入口開口角
度の平均角度とは、まず複数個の外気入口部20aの各々における開口角度と開口面積と
の積を求め、この積を足し合わせた後に全開口面積で除した値のことである。出口開口角
度の平均角度も同様である。
【0123】
また、上記圧力関係を満たすための外気入口部20a及び外気出口部20bの構成とし
ては例えば、外気入口部20aの開口面積が外気出口部20bの開口面積以上になる面積
関係で外気入口部20a及び外気出口部20bを構成したものであってもよい。
【0124】
この構成によると、外気入口部20aでの圧力損失を外気出口部20bでの圧力損失よ
りも小さくすることができるので、入口部圧力P1を出口部圧力P2よりも所定量高くす
ることができ、ひいては上記圧力関係を満たすようにすることができる。
【0125】
なお、上記した外気入口部20a及び外気出口部20bの配置関係と面積関係とを組み
合わせてもよい。
【0126】
ちなみに本実施形態は以上の説明からわかる通り、透過膜13の外気側と内気側との間
に真空ポンプ等の差圧発生手段により大きな圧力差を設けることなく透過膜13による透
過機能を実現するものである。
【0127】
具体的には、一般的な大気圧力に、車両走行風によって生じる圧力(ラム圧)、及び圧
縮比2未満の送風機23の圧力を加えた程度の圧力変動の範囲で作動するものである。よ
り具体的には、透過膜13の外気側と内気側との間の圧力差が5kPa以下の範囲で作動
するものである。
【0128】
(第4実施形態)
次に、本発明の空調システムを車両用空調システムに適用した第4実施形態について説
明する。
【0129】
図4は、本第4実施形態の車両用空調システムを搭載した車両の模式図である。図4に
おいて前後左右の矢印は車両の各方向を示し、矢印Fwは車両の前進方向を示している。
【0130】
図4に示す第4実施形態は、上記第3実施形態に対して、車両走行時における出口部圧
力P2と入口部圧力P1との差(P2−P1)を小さくしたものである。具体的には、外
気出口部20bにおける走行風の受け度合いを外気入口部20aにおける走行風の受け度
合いに近づけている。
【0131】
例えば、図4に示す第1の範囲R1内又は第2の範囲R2内に外気出口部20bの開口
方向を設定することによって、外気出口部20bにおける走行風の受け度合いを外気入口
部20aにおける走行風の受け度合いに近づけることができる。
【0132】
ここで、第1の範囲R1とは、外気入口部20aの開口方向D1となす角度が車両側面
側、車両上面側及び車両正面側のいずれからから見ても90度以下になる方向の範囲のこ
とである。
【0133】
また、第2の範囲R2とは、外気入口部20aの開口方向D1に対して左右対称な方向
D2となす角度が車両側面側、車両上面側及び車両正面側のいずれからから見ても90度
以下になる方向の範囲のことである。なお、図4では理解を容易にするために、車両上面
側から見たときの第1の範囲R1及び第2の範囲R2を示している。
【0134】
上記第3実施形態では、出口部圧力P2と入口部圧力P1との差(P2−P1)が走行
風の有無によってある程度変動するので、車両停止時と車両走行時とで外気流路20に流
れる風量がある程度変動し、ひいては透過膜13による気体透過性能も車両停止時と車両
走行時とである程度変動することとなる。
【0135】
この点に鑑みて本実施形態では、車両走行時における出口部圧力P2と入口部圧力P1
との差(P2−P1)を小さくしているので、車両停止時と車両走行時とで出口部圧力P
2と入口部圧力P1との差(P2−P1)が変動することを抑制することができ、ひいて
は透過膜13による気体透過性能をより安定して発揮することができる。
【0136】
(第5実施形態)
次に、本発明の空調システムを車両用空調システムに適用した第5実施形態について説
明する。
【0137】
図5は、本第5実施形態の車両用空調装置の断面図である。本第5実施形態は、図5に
示すように、透過膜13が組み込まれた透過膜モジュール33を用い、内気送風機25を
車両用空調装置30の空調用送風機と兼用させている。
【0138】
車両用空調装置30の空調ケース31は車室11の最前部に配置される計器盤(図示せ
ず)の内側に配置されており、その内部に空気が流れる流路を形成している。
【0139】
空調ケース31は、ポリプロピレンのようなある程度の弾性を有し機械的強度に優れた
樹脂にて成形されている。
【0140】
空調ケース31の上流部には、矢印A1〜A3のように外気がUターンして流れる略U
字状の外気流路32と、外気流路32に外気を流入させる外気入口部32aと、外気を外
気流路32の外部に流出させる外気出口部32bとが形成されている。
【0141】
外気流路32のうちU字状に屈曲する部位よりも下流側(外気出口部32b側)の部位
には、外気送風機24が配置されている。
【0142】
外気流路32のうちU字状に屈曲する部位には、透過膜が組み込まれた透過膜モジュー
ル33が配置されている。空調ケース31内において透過膜モジュール33よりも外気入
口部32a及び外気出口部32bと反対側(図5の下方側)の部位には、内気送風機(空
調用送風機)25が配置されている。
【0143】
図6は、透過膜モジュール33の斜視図である。図6に示すように、透過膜モジュール
33は全体として直方体状に形成されている。透過膜モジュール33には、矢印A4、A
5のように外気が流れる外気流通空間33aが形成されている。より具体的には、外気流
通空間33aは、仕切り板33bによって第1、第2の2つの空間33c、33dに仕切
られている。
【0144】
第1の空間33cでは矢印A4のように外気が外気入口部32a側から外気入口部32
aと反対側(図6の上方側から下方側)に貫通して流れる。第1の空間33cから流出し
た外気は、矢印A2のようにUターンした後に矢印A5のように第2の空間33dを外気
出口部32bと反対側から外気出口部32b側(図6の下方側から上方側)に貫通して流
れる。
【0145】
さらに、透過膜モジュール33には、矢印B1のように内気が外気流通空間33aと直
交する方向(図6の左右方向)に貫通して流れる内気流通空間33eが形成されている。
この内気流通空間33eは外気流通空間33aと隣り合うように形成されている。図6の
例では、透過膜モジュール33に外気流通空間33aと内気流通空間33eとが交互に複
数個ずつ形成されている。
【0146】
透過膜モジュール33は、外気流通空間33aと内気流通空間33eとの仕切り部が透
過膜13で構成され、残余の部分が樹脂等の材料で形成されている。
【0147】
空調ケース31において透過膜モジュール33の側方側には、透過膜モジュール33の
内気流通空間33eに内気を導入させる第1内気導入口34と、内気流通空間33eから
流出した内気が矢印B2のようにUターンして流れる内気流路35とが形成されている。
【0148】
空調ケース31において内気流路35の下流側部位には、矢印B3のように空調用送風
機25に内気を導入する第2内気導入口36が形成されている。
【0149】
空調ケース31内には、内気循環モードと外気導入モードとを切り替える内外気切替ド
ア37が配置されている。図5の例では内外気切替ドア37としてロータリードアを用い
ている。
【0150】
この内外気切替ドア37は、内気循環モードでは図5の実線位置に回転操作され、外気
流路32を閉じて内気流路35を開ける。これにより、空調用送風機25に第1、第2内
気導入口34、36からの内気が導入される。
【0151】
この内気循環モードでは、矢印A1のように外気入口部32aを通じて外気流路32に
流入した外気が矢印A4のように透過膜モジュール33の外気流通空間33aの第1の空
間33cを通過した後に矢印A2のように内外気切替ドア37の外面側でUターンし、さ
らに矢印A5のように透過膜モジュール33の外気流通空間33aの第2の空間33dを
通過した後に矢印A3のように外気出口部32bに向かって流れて外気流路32の外部に
流出する。
【0152】
また、内外気切替ドア37は、外気導入モードでは図5の2点鎖線位置に回転操作され
、外気流路32を開けて内気流路35を閉じる。これにより、外気入口部32aを通じて
外気流路32に流入した外気は、矢印A4のように透過膜モジュール33の外気流通空間
33aの第1の空間33cを通過した後に、Uターンすることなく空調用送風機25に向
かって流れて空調用送風機25に導入される。
【0153】
図示を省略しているが、内外気切替ドア37は、空調用制御装置により制御されるサー
ボモータ、又は乗員によって操作される手動操作機構によって駆動される。
【0154】
図5の例では、空調ケース31内において空調用送風機25の直ぐ上流側に、空気中の
塵埃や臭気等を除去するフィルタ38が配置されている。
【0155】
空調ケース31内において空調用送風機25の下流側には、空調用送風機25からの送
風空気の冷却及び加熱の少なくとも一方を行う熱交換器39が配置されている。本例では
、熱交換器39として、送風空気を冷却する冷却用熱交換器及び送風空気を加熱する加熱
用熱交換器が空調ケース31内に配置されている。
【0156】
図示を省略しているが本例では、加熱用熱交換器を通過する温風と加熱用熱交換器をバ
イパスして流れる冷風との風量割合を調節することにより車室11への吹出空気温度を調
節するエアミックスドア等が空調ケース31内に配置されている。
【0157】
また、図示を省略しているが、空調ケース31の最下流部には、空調空気を車室11内
の所定領域へ吹き出すための複数個の吹出開口部が形成され、この複数個の吹出開口部を
開閉する吹出モードドアが空調ケース31内に配置されている。
【0158】
本実施形態によると、内気循環モードでは、透過膜モジュール33の外気流通空間33
aを外気が流通するので透過膜13の一方の面に外気を供給することができ、内気流通空
間33eを内気が流通するので透過膜13の他方の面に内気を供給することができる。こ
のため上記各実施形態と同様に、車室11の酸素濃度と二酸化炭素濃度を快適濃度に保つ
ことができる。
【0159】
また、内気送風機25を車両用空調装置30の空調用送風機と兼用させているので車両
用空調装置30の小型化とコスト低減とを図ることができる。
【0160】
さらに、外気流路32は、内気循環モードでは透過膜13に外気を供給する役割を果た
し、外気導入モードでは空調用送風機25に外気を導入させる外気導入通路としての役割
を果たすので、透過膜13に外気を供給する通路と空調用送風機25に外気を導入させる
外気導入通路とを別個に設ける場合に比べて車両用空調装置30の小型化とコスト低減と
を図ることができる。
【0161】
また、空調ケース31内にフィルタ38を配置しているので、透過膜13を通じて車室
11内に侵入してくる臭気を効果的に除去することができる。
【0162】
(第6実施形態)
次に、本発明の空調システムを車両用空調システムに適用した第6実施形態について説
明する。
【0163】
図7は、本第6実施形態の車両用空調装置の断面図である。上記第5実施形態では、透
過膜が透過膜モジュール33に組み込まれているが、本第6実施形態では、図7に示すよ
うに、透過膜が内外気切替ドア37と一体化されている。具体的には、内外気切替ドア(
ロータリードア)37の円弧面が透過膜13で構成されている。これに伴い、本実施形態
では第1内気導入口34が廃止されている。
【0164】
この構成によると、内気循環モードでは透過膜13の一方の面(内外気切替ドア37の
外面)に外気入口部32aから導入された外気が供給され、透過膜13の他方の面(内外
気切替ドア37の内面)に第2内気導入口36から導入された内気が供給される。
【0165】
本実施形態では、透過膜を内外気切替ドア37と一体化しているので、車両用空調装置
30の小型化とコスト低減とを図ることができる。
【0166】
(第7実施形態)
次に、本発明の空調システムを車両用空調システムに適用した第7実施形態について説
明する。図8は、本第7実施形態の車両用空調装置の断面図であり、(a)は内気循環モ
ードを示し、(b)は外気導入モードを示している。
【0167】
本第7実施形態は、上記第6実施形態に対して、外気導入モードのときに外気送風機2
4を停止するか、外気送風機24の回転方向を内気循環モードのときと逆にするものであ
る。すなわち、図8(a)に示す内気循環モードでは空調用制御装置(ECU)40が外
気送風機24を正回転させて矢印A3のように外気出口部32bから外気を流出させ、図
8(b)に示す外気導入モードでは空調用制御装置40が外気送風機24を停止又は逆回
転させて矢印A6のように外気出口部32bから外気を流入させる。
【0168】
これにより、外気導入モードにおいて外気入口部32a及び外気出口部32bの両方か
ら外気を導入することができるので、車両用空調装置30の外気導入通路を従来よりも大
型化することなく車両用空調装置30に透過膜13を設けることができる。
【0169】
(第8実施形態)
次に、本発明の空調システムを車両用空調システムに適用した第8実施形態について説
明する。
【0170】
本第8実施形態は、外気中の臭気濃度が高い場合に臭気が透過膜13を通じて車室11
に侵入することを抑制するために、上記第3実施形態に対して、外気送風機24及び空調
用送風機25の少なくとも一方を停止する送風機停止手段を設けたものである。ここで、
外気中の臭気濃度が高い場合とは例えばトンネル内を走行している場合等のことである。
【0171】
送風機停止手段は、外気臭気濃度に応じて外気送風機24及び空調用送風機25の少な
くとも一方のオン・オフを制御する。本例では、車両のグリルや外気流路20等に設けら
れた臭気濃度センサ(図示せず)によって外気臭気濃度を検出し、上述の空調用制御装置
(図示せず)が外気送風機24及び空調用送風機25の少なくとも一方のオン・オフを制
御する。
【0172】
図9は、空調用制御装置による外気送風機24のオン・オフ制御の概要を示すフローチ
ャートである。空調用制御装置は、まずステップS100にて外気送風機24をオンする
。次にステップS110にて、臭気濃度センサが検出した外気臭気濃度が所定値よりも大
きいか否かを判定する。
【0173】
ステップS110にて外気臭気濃度が所定値よりも大きいと判定した場合には、ステッ
プS120にて外気送風機24をオフする。そして、ステップS130にて外気臭気濃度
が所定値よりも小さいか否かを判定し、外気臭気濃度が所定値よりも小さいと判定した場
合には、ステップS100に戻る。
【0174】
ステップS130にて外気臭気濃度が所定値以上であると判定した場合にはステップS
130を繰り返す。なお、ステップS110にて外気臭気濃度が所定値以下であると判定
した場合にはステップS110を繰り返す。
【0175】
空調用制御装置による空調用送風機25のオン・オフ制御も図9と同様であるので、空
調用送風機25のオン・オフ制御については説明を省略する。
【0176】
本実施形態によると、外気中の臭気濃度が高い場合に透過膜13への外気及び内気の少
なくとも一方の供給を抑制することができるので、透過膜13による気体透過量を抑制し
て車室11への臭気の侵入を抑制することができる。
【0177】
したがって、外気中の臭気濃度が高い場合に透過膜13を閉塞する手段を設けて車室1
1への臭気の侵入を抑制する場合に比べて車両用空調装置の小型化とコスト低減とを図る
ことができる。
【0178】
なお、送風機停止手段を、例えば乗員によって操作される送風機停止スイッチのような
手動停止手段で構成することもできる。
【0179】
(第9実施形態)
次に、本発明の空調システムを車両用空調システムに適用した第9実施形態について説
明する。
【0180】
本第9実施形態は、上記第5〜第7実施形態に対して、窓の曇り量を検知又は推定して
内外気切替ドア37を外気導入モードの位置に切り替えるドア切り替え手段を設けること
によって、窓の曇りを防止するものである。
【0181】
ドア切り替え手段は、窓の曇り量が所定値よりも大きくなった場合に内外気切替ドア3
7を外気導入モードの位置に切り替える。本例では上述の空調用制御装置(図示せず)が
内外気切替ドア37を切り替えるようになっている。窓の曇り量の推定は例えば、内気温
度センサ及び内気湿度センサによって検出される内気温度及び内気湿度に基づいて空調用
制御装置が窓の曇り量を算出することで行うことができる。
【0182】
図10は、空調用制御装置による内外気切替ドア37の切り替え制御の概要を示すフロ
ーチャートである。空調用制御装置は、まずステップS200にて内外気切替ドア37を
内気循環モード(内気循環側)の位置にする。次にステップS210にて窓の曇り量が所
定値よりも大きいか否かを判定する。
【0183】
ステップS210にて窓の曇り量が所定値よりも大きいと判定した場合には、ステップ
S220にて内外気切替ドア37を外気導入モード(外気導入側)の位置に切り替える。
そして、ステップS230にて窓の曇り量が所定値よりも小さいか否かを判定し、窓の曇
り量が所定値よりも小さいと判定した場合には、ステップS200に戻る。
【0184】
ステップS230にて窓の曇り量が所定値以上であると判定した場合にはステップS2
30を繰り返す。なお、ステップS210にて窓の曇り量が所定値以下であると判定した
場合にはステップS210を繰り返す。
【0185】
本実施形態によると、車室11内の水蒸気濃度が高くなって窓が曇った場合に外気を導
入して車室11内の水蒸気濃度を低下させることができるので、窓の曇りを防止すること
ができる。
【0186】
(第10実施形態)
次に、本発明の空調システムをコンテナ用空調システムに適用した第10実施形態につ
いて説明する。図11は、本第10実施形態のコンテナ用空調システム200の構成を示
す概念図である。
【0187】
図11に示すように、コンテナ用空調システム200は、内部に被収納物を収納可能な
筐体210を備えている。本実施形態の筐体210は、青果物を貯蔵する冷蔵庫、冷凍庫
あるいは冷凍コンテナとして構成されており、図示を省略しているが、内気を所望温度に
調整するための空調装置が設けられている。空調装置は、空調風の冷却には周知の冷凍サ
イクルを用いることができ、空調風の加熱には周知のヒータ(電気式や燃焼式等)を用い
ることができる。
【0188】
筐体210には、筐体210の内部全体に内気を循環させるための内気循環送風機11
が設けられている。また、筐体210には、内気中の酸素濃度を検出するためのOセン
サ212、内気中の二酸化炭素濃度を検出するためのCOセンサ213、内気中の湿度
を検出するための湿度センサ214が設けられている。
【0189】
また、筐体210には、透過膜ユニット220が設けられている。透過膜ユニット22
0は、外気流路222と内気流路223を形成する流路形成部材221が設けられている
。流路形成部材221は、筐体210の壁面を境界にして、筐体210の外部と内部に跨
るように設けられている。外気流路222と内気流路223との境界には、透過膜13が
設けられている。つまり、筐体210の壁面の一部が透過膜13になっている。外気流路
222では、筐体210の外部に存在する外気が透過膜13の表面に沿って流れることが
でき、内気流路223では、筐体210内に存在する内気が透過膜13の表面に沿って流
れることができる。
【0190】
外気流路222には、外気の流れを発生させるための外気送風機225が設けられてい
る。また、内気流路223には、内気の流れを発生させるための内気送風機226が設け
られている。これらの送風機225、226は、気体に運動エネルギーを与えたり圧力を
高めたりする流体機械のうち圧縮比が2未満のものであり、具体的にはファンやブロア等
である。これらの送風機225、226は、送風ファンとこれを回転駆動するモータとを
備えている。
【0191】
図11に示す例では、外気流路222の外気は左から右に向かって流れ、内気流路21
3の内気は右から左に向かって流れるようになっている。なお、筐体210の内部では、
内気循環送風機211によって内気が循環する流れが発生しているが、内気送風機226
が作動していない場合には、内気流路223には内気の流れが発生しないようになってい
る。
【0192】
外気送風機225または内気送風機226の非作動時には、透過膜13の表面近傍で気
体が滞留し、外気と内気とで気体の濃度差が小さくなって、気体の透過が進行しなくなる
。このため、外気送風機225または内気送風機226の少なくとも一方を作動させるこ
とで、透過膜224の表面近傍での気体の滞留を解消させ、気体の透過を進行させること
ができる。
【0193】
コンテナ用空調システム200には、制御装置250が設けられている。制御装置25
0は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路
から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行
い、出力側に接続された各種機器の作動を制御する。制御装置250は、Oセンサ21
2、COセンサ213、湿度センサ214のセンサ信号が入力する。そして、制御装置
250は、これらのセンサ信号に基づいて、外気送風機225と内気送風機226に制御
信号を出力して送風制御を行う。
【0194】
青果物は、筐体210内に収納された後にも呼吸するため、筐体210内は大気と比較
して酸素濃度が低く二酸化炭素濃度が高い状態になる。青果物は、酸素濃度が低く二酸化
炭素濃度が高い状態で呼吸を抑制でき、鮮度を長期間保持できることが知られている。一
方、過度に酸素濃度が低くなると、青果物の代謝異常が起きて、異味や異臭を生じたり、
腐敗するおそれがある。また、青果物は多量の水分を含有しており、筐体210内に収納
された状態では、青果物から放出された水分で、筐体210内の相対湿度が高くなること
が多い。筐体210内の相対湿度は、高すぎると結露が発生し、低すぎると青果物が萎れ
、どちらの状態も青果物の鮮度の保持する上で好ましくない。以上のことから、筐体21
0内の酸素濃度と二酸化炭素濃度と湿度を、青果物の貯蔵に適した所望の範囲内に調整す
る必要がある。本実施形態では、制御装置250がOセンサ212、COセンサ21
3、湿度センサ214のセンサ信号に基づいて外気送風機25と内気送風機26の風量を
制御することで、酸素濃度、二酸化炭素濃度、相対湿度を調整している。
【0195】
以上説明した本実施形態によれば、透過膜13を用いることで、外気と内気とで濃度差
が発生した気体(O、CO、HO)のみを移動させることができる。これにより、
外気と内気との間で濃度差がない気体(例えばN)の移動が生じないので、温度調整(
本実施形態では冷却)された内気が必要以上に外気に放出されることを防止でき、コンテ
ナ用空調システム200の熱負荷を小さくすることができる。
【0196】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態は透過膜の具体的配置位置の一例を示したものであり、これに限
定されることなく透過膜をトランクルームや車両の側壁部等に配置することができる。
【0197】
また、上記第5実施形態では、空調用送風機25に外気を導入する外気導入通路として
外気流路32のみを設け、この外気流路32に透過膜モジュール33を配置しているが、
外気導入通路として外気流路32とは別個の通路を外気流路32と並列に設け、この別個
の通路には透過膜モジュール33を配置しないようにしてもよい。
【0198】
また、上記各実施形態の構成を適宜組み合わせてもよいことはもちろんである。
【0199】
(透過膜構造体)
上述の住宅用空調システム、車両用空調システム及びコンテナ用空調システムにおいて
は、透過膜13の代わりに、図12に示す透過膜構造体50a、又は図13に示す透過膜
構造体50bを用いても良い。
【0200】
図12の透過膜構造体50aは、透過膜13c及び支持体42aを備える。透過膜13
cは平面状であり、その片面に密着する平面状の支持体42aによって支持されている。
なお、支持体42aは、例えば透過膜13cの外周部等、透過膜13cの一部のみに密着
していてもよく、透過膜13cに完全に密着していてもよい。
【0201】
図13の透過膜構造体50bは、透過膜13d及び支持体42bを備える。透過膜13
dは襞状であり、その片面に密着する襞状の支持体42bによって支持されている。なお
、支持体42bは、透過膜13dの一部のみに密着していてもよく、透過膜13dに完全
に密着していてもよい。
【0202】
透過膜13c及び13dは、上述の高分子材料から形成される膜により構成されており
、その厚さは0.1〜10μmであることが好ましい。支持体42a及び42bは、気体
を透過するものであればよく、例えば、紙状の繊維部材、並びに孔径が0.1〜500μ
mの多孔質体及びメッシュが挙げられる。支持体の厚さは50〜500μmであることが
好ましい。また、支持体42a及び42bは断熱材であることが好ましい。これにより、
住宅用空調システム100における熱効率を向上させ易くなる。
【0203】
これらの透過膜構造体50a及び50bによれば、透過膜13c及び13dが支持体に
より支持されているため、透過膜13c及び13dを薄くして透過する気体量を増加させ
るとともに、透過膜構造体の強度を確保することができる。さらに、透過膜構造体50b
によれば、透過膜13c及び13dの表面積が大きくなるため、気体の透過量をさらに増
加させることができる。
【0204】
なお、上述の透過膜構造体は、例えば、後工程で除去可能なフィルム上に上述の成膜加
工方法により透過膜を形成し、形成された透過膜上に支持体を転写した後に、上記フィル
ムを除去することにより製造することができる。後工程で除去可能なフィルムとしては、
水、溶剤、薬品等による洗浄により除去されるフィルムや、UV、EB等の照射により改
質した後に除去されるフィルムが挙げられる。また、透過膜上に支持体を転写する方法と
しては、透過膜と支持体との間に接着剤や粘着剤を介在させ接着する方法や、加熱や溶剤
による溶解等によって透過膜と支持体とを接着する方法が挙げられる。
【実施例】
【0205】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の
実施例に限定されるものではない。
【0206】
(実施例1)
本実施例1では、重合体製造例として環状オレフィン付加重合体(ポリマーa)の合成
について説明する。
【0207】
窒素置換したガラス製容器に単量体a53.6g(0.2mol)、トリチルテトラ(
ペンタフルオロフェニル)ボレート{[PhC][B(C]}37mg(4
0μmol)をトルエン150mlに溶解した。そこへ別途調整した触媒溶液(シクロペ
ンタジエニル(アリル)パラジウム[CPdC]9mg(40μmol)、
トリシクロへキシルホスフィン[PCy]12mg(40μmol)をトルエン15m
lに溶解したもの)を添加し、室温(25℃)で5時間重合反応を行った。
【0208】
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、120℃
で12時間減圧乾燥したところ、51.5g(収率91%)のポリマーaが得られた。
【0209】
得られたポリマーaのGPC測定による分子量はMn=558,000、分子量分布M
w/Mn=3.22であった。
【0210】
【化11】


【0211】
(実施例2)
本実施例2では、重合体製造例として環状オレフィン付加重合体(ポリマーb)の合成
について説明する。
【0212】
窒素置換したガラス製容器に単量体a37.5g(0.14mol)、単量体b(ノル
ボルネン)5.6g(0.06mol)及びトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)
ボレート{[PhC][B(C]}37mg(40μmol)をトルエン1
40mlに溶解した。そこへ別途調整した触媒溶液(シクロペンタジエニル(アリル)パ
ラジウム[CPdC]9mg(40μmol)、トリシクロへキシルホスフ
ィン[PCy]12mg(40μmol)をトルエン15mlに溶解したもの)を添加
し、室温(25℃)で5時間重合反応を行った。
【0213】
反応終了後、多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、濾別洗浄後、120℃
で12時間減圧乾燥したところ、39.2g(収率91%)のポリマーbが得られた。
【0214】
得られたポリマーbのGPC測定による分子量はMn=599,000、分子量分布M
w/Mn=3.24であった。1H−NMRスペクトルにより、重合体中の単量体a由来
の構造体及び単量体b由来の構造体の組成比はa/b=70/30(mol/mol)であ
ることを確認した。
【0215】
【化12】

【0216】
〔表面の密着性を改良したメッシュ体の作製〕
密着向上剤X−92−470(信越化学工業社製 固形分10%/トルエン−酢酸エチ
ル溶媒)をメッシュ体(材質:PET、開口率:46%、開口径:85μm)表面に均一
に塗布し、室温にて風乾後、120℃、5分間の加熱処理を行い、表面の密着性を改良し
たメッシュ体を得た。
【0217】
(比較例)
特開2011−12114号公報の実施例14(段落0219、図15参照)に記載さ
れた非対称膜を、上記実施例1及び実施例2の比較例とする。
【0218】
〔膜の評価〕
(1)孔の有無の確認
実施例及び比較例で得られた非対称膜について、その表面(非対称膜については緻密層
側)を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、孔の有無を確認した。その結果を表1に示
す。なお、図14は実施例1の非対称膜のSEM像であり、図15は実施例2の非対称膜
のSEM像であり、図16は比較例の非対称膜のSEM像である。
【0219】
(2)気体透過係数
(等圧法)
実施例1、2で得られた非対称膜及び比較例で得られた水面展開膜について、等圧気体
透過率測定装置(デンソー社製、図17のガス透過性評価装置参照)を用い、下記の測定
条件で、酸素及び二酸化炭素についての気体透過係数(P(O)及びP(CO))を
測定した。得られた気体透過係数(P(O)及びP(CO))を膜の膜厚(L)で除
して気体透過速度(P(O)/L及びP(CO)/L)を算出した。また、分離比α
(=(P(O)/(P(CO))も算出した。その結果を表1に示す。
【0220】
本評価装置での初期環境は、事前に酸素、二酸化炭素の濃度を調整したボンベ(例えば
、酸素濃度:20.5%、二酸化炭素:4000ppm)から評価チャンバー内にガスを
入れ、初期濃度環境を作った。評価チャンバー外側は、大気空気(酸素濃度:20.8〜
20.9%、二酸化炭素:400〜600ppm)である。なお、膜設置部には仕切り板
(図示せず)が備えられており、評価開始前に膜は仕切り板により外気と遮断されている
。膜評価は、下記の測定条件下、膜設置部の仕切り板を取り除くことで開始され、評価チ
ャンバー内外のガス交換を行った。すなわち、評価チャンバー内の2成分のガス濃度の変
化から、酸素及び二酸化炭素についての気体透過速度を測定した。対象ガスの膜に対する
流れ方向は、酸素は外から内へ、二酸化炭素は内から外へ流れる初期濃度環境とした。評
価チャンバー内及び外の酸素及び二酸化炭素の濃度は、酸素センサー(チノー社製、型番
:MG1200)と二酸化炭素センサー(ヴァイサラ社製、型番:GMP343)により
測定し、データロガ(チノー社製、型番:KIDS ver6)に記録した。
【0221】
(測定条件)
温度 :23±2度
膜間の圧力差 :なし
膜間のガス分圧差:酸素0.0013〜0.0066atm、二酸化炭素0.0001
〜0.0011atm
(3)SPM遮断率
ナノ粒子発生装置(Palas社製、型番:GFG−1000)が接続されたA層と、
粒子カウンター(TSI社製、型番:SMPS−3034)が接続されたB層とが、膜サ
ンプルがセットされるホルダーを介して連結されている測定装置(図18参照)を用いて
、以下の手順でSPM遮断率を測定した。その結果を表1に示す。
【0222】
(i)ナノ粒子発生装置により10〜500nmの粒径を有するカーボン粒子を発生さ
せ、これをA層内に貯める。
【0223】
(ii)非対称膜(水面展開膜)のサンプルをサンプルホルダー(膜面積:最大で16
cm)にセットし、サンプルホルダーとB層の間のバルブV1を閉じ、A層とB層との
差圧が1kPaとなるまでB層を減圧する。
【0224】
(iii)バルブV1を開き、B層内が大気圧に戻る際に透過するガスに乗せてカーボ
ン粒子を膜に供給し、膜を透過したカーボン粒子をB層に貯める。
【0225】
(iv)B層内のカーボン粒子の濃度を、粒子カウンターを用いて計測する。
【0226】
(v)以下の式に基づいてSPM遮断率を算出する。
【0227】
SPM遮断率[質量%] = 100×{(Cin−Cout)/Cin}
(Cin:A層での粒子濃度[μg/mL]、Cout:B層での粒子濃度[μg/m
L])
(4)膜強度
図19に示す装置を用いて膜強度を測定した。この装置は、膜を装着する膜装着部を有
する7Lのアルミ製容器(デンソー社製)と、容器内に空気を導入する空気導入部と、容
器内の圧力を測定する圧力測定部(圧力測定計)と、容器内に導入した空気量を測定する
導入空気測定部(流量計)とを備える。
【0228】
空気導入部は、コンプレッサーや館内空気など昇圧した空気を供給できるものであれば
よい。圧力測定部は、圧力計(日本電産コパル電子社製、型式:PG−30−101R又
はPG−30−102R)を設置した容器内に空気を導入し評価を行う部分である(例え
ば、1〜50kPa)。空気測定部は、ある任意の圧力(1〜50kPaの範囲において
)におけるガス流量(例えば、1〜200sccm)を、マスフローメータ(コフロック
社製、モデル 3100)により測定した。なお圧力計とマスフローメータは、膜の抵抗
や膜の強度等により(特に、1kPa以下での評価が必要な場合)、圧力計とマスフロー
メータの組み合わせを変えることが好ましい。
【0229】
評価方法を以下に示す。なお本例では流量を一定にしたときの容器内圧力を測定する手
順を説明しているが、逆の手法でもよい。
【0230】
まず容器の膜装着部に膜を取り付けた後、容器内に空気を導入し、任意流量(1〜20
0sccm)を保持し、容器内圧力が安定したところで、その圧力下での膜からの排出流
量を導入空気測定部での空気流量とみなし、その圧力での空気流量とした。測定は、空気
流量の低いほうから徐々に上昇(例えば、フルスケールに対して1%ずつ上昇)させてい
った。ある空気流量の際に、容器内圧力が低下する現象が見られる。膜の強度の指標とし
ては、圧力低下が見られた直前の圧力データを用いた。そのデータを表1に示す。表1か
ら、本発明の実施例1、2では、比較例に対して、膜強度が大幅に向上していることが分
かる。
【0231】
【表1】

【符号の説明】
【0232】
3 多孔質層
5 緻密層
10 車両
13 非対称膜(透過膜)
30 車両用空調装置
33 透過膜モジュール
37 内外気切替ドア
38 フィルタ
40 空調用制御装置
40a 透過膜構造体
40b 透過膜構造体
42a 支持体
42b 支持体
100 住宅用空調システム
200 コンテナ用空調システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間への気体の供給及び/又は空調対象空間からの気体の排出が透過膜を通し
て行われる空調システムであって、
前記透過膜が、下記式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンを付加重合す
ること、又はこの式(1)で表される環状オレフィン官能性シロキサンと下記式(2)で
表される環状オレフィン化合物とを付加重合することにより得られ、下記式(1)で表さ
れる環状オレフィン官能性シロキサンに由来する構造単位の割合が、付加重合体中5〜1
00モル%であり、テトラヒドロフランを溶媒とするGPCで測定されるポリスチレン換
算の数平均分子量(Mn)が10,000〜2,000,000である環状オレフィン付
加重合体によって形成されている非対称膜であることを特徴とする空調システム。
【化1】



(式(1)中のRは互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない一価の有機基
であり、sは0〜2の整数であり、iは0又は1であり、jは1〜4の整数を示す。)
【化2】



(式(2)中のA〜Aは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1
〜10のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ア
リーロキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又はオキセタニル基及びア
ルコキシカルボニル基から選ばれる極性を有する置換基である。また、AとA又はA
とAとが、それぞれが結合する炭素原子と共に脂環構造、芳香環構造、カルボンイミ
ド基又は酸無水物基を形成してもよい。kは0又は1を示す。)
【請求項2】
前記高分子材料はシリカ系フィラーが分散された高分子材料であることを特徴とする請
求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
23±2℃、膜間の圧力差がない条件における、前記非対称膜の酸素透過係数P(O
)及び二酸化炭素透過係数P(CO)の比が下記式(3)を満足することを特徴とする
請求項1または2に記載の空調システム。
1.0<P(O)/P(CO)<1.70 …(3)
【請求項4】
前記空調システムが車両用空調システムであることを特徴とする請求項1ないし3のい
ずれか1つに記載の空調システム。
【請求項5】
前記空調システムが住宅用空調システムであることを特徴とする請求項1ないし3のい
ずれか1つに記載の空調システム。
【請求項6】
前記空調システムがコンテナ用空調システムであることを特徴とする請求項1ないし3
のいずれか1つに記載の空調システム。

【図8】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2013−49049(P2013−49049A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−167071(P2012−167071)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】