説明

端子部材のシール構造、電磁継電器、及び、製造方法

【課題】簡単な構成であり、容易かつ安価に製造可能とする。
【解決手段】ベース1に形成した端子孔21に圧入される端子部材51は、端子孔21に圧入される圧入部53と、圧入53部から延び、ベース1から突出する端子部54とを備える。端子部54は、板状体を折り返し、平面部54cに折返部54dを重ね合わせた構成とする。折返部54dは、圧入部53側の縁に、ベース1から露出する切除部54iを有する。端子孔21には、切除部54iを介してシール剤を充填可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子部材のシール構造、電磁継電器、及び、製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、端子部材のシール構造として、コモン端子を2つ折りとし、ベースの貫通孔に挿入し、この貫通孔をシールするようにしたものが公知である(例えば、特許文献1参照)。この端子構造では、2つ折りにしたために、折曲部分に隙間が形成される不具合を防止すべく、中間部分に線状空間路を形成し、予めシール剤を充填するようにしている。
【0003】
しかしながら、前記従来の端子部材のシール構造では、構造が複雑な上、製造が困難であり、コストアップを招来するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3213978公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡単な構成であり、製造が容易な上、コストアップを招来することもない端子部材のシール構造、電磁継電器及び製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
ベースに形成した端子孔に圧入される端子部材のシール構造であって、
前記端子部材は、前記端子孔に圧入される圧入部と、該圧入部から延び、前記ベースから突出する端子部とを備え、
前記端子部は、板状体を折り返し、平面部に折返部を重ね合わせた構成であり、
前記折返部は、前記圧入部側の縁に、前記ベースから露出する切除部を有し、
前記端子孔には、前記切除部を介してシール剤を充填可能としたものである。
【0007】
この構成により、ベースから露出する切除部を介して端子孔内に無理なくシール剤を充填することができる。したがって、端子孔内を、作業効率良くシールすることができる上、シール性を高めることが可能となる。そして、端子部は、板状体を折り返し、平面部に折返部を重ね合わせ、折返部に切除部を形成しただけの簡単な構成であり、安価に製造することができる。
【0008】
前記端子部は、板状体を両側から折り返し、平面部に折返部を重ね合わせた構成であり、
前記各折返部は、対向部分に切除部をそれぞれ有するのが好ましい。
【0009】
この構成により、切除部からのシール剤の充填作業を、平面部と両折返部とで区画された領域から行うことができ、より一層スムーズにかつ安定した状態で端子孔をシールすることが可能となる。
【0010】
前記切除部は、前記ベースから露出する部分と端子孔内を結ぶ傾斜縁を有するのが好ましい。
【0011】
この構成により、切除部を介して端子孔に充填するシール剤の流れを、傾斜縁に沿った短い距離でスムーズなものとすることができる。
【0012】
前記切除部は、前記ベースから露出する部分に、両折返部の対向部分を切除することにより、平面部とでシール溜まり部を形成するのが好ましい。
【0013】
この構成により、端子孔内に充填されずに溢れた余剰のシール剤をシール溜まり部で固化させることができ、他の部分への悪影響を排除することが可能となる。
【0014】
前記切除部のうち、前記シール溜まり部を構成する部分は、さらに部分的に切除領域が広げられているのが好ましい。
【0015】
この構成により、端子孔以外の場所でのシール剤の流動抵抗を高め、他の部分への流動を確実に阻止することができる。
【0016】
前記端子部材は、前記ベースからの端子部の突出位置とは反対側から突出し、先端に接点を有する弾性変形可能な接触片部を有するのが好ましい。
【0017】
この構成により、接触片部では、板状体をそのまま使用し、端子部では折り重ねて所望の厚さと強度を得ることができる。
【0018】
また、本発明は、前記課題を解決するための手段として、電磁継電器を、前記いずれかのシール構造を備えた固定接触片を有する構成としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、端子部を、平面部と、両側から折り返して平面部に重ね合わせる折返部とで構成し、折返部にベースから露出する切除部を形成するようにしたので、構造が簡単で安価に製造できる上、切除部を介して端子孔内にシール剤を効率的に充填してシール性を十分に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る電磁継電器の斜視図である。
【図2】図1からケース及びアーク消弧部材を分解した状態を示す斜視図である。
【図3】図1からケースのみを除去した状態を示す斜視図である。
【図4】図1の分解斜視図である。
【図5】図4を反対側から見た状態を示す分解斜視図である。
【図6】(a)はベースを上方側から見た状態を示す斜視図、(b)はベースを下方側から見た状態を示す斜視図である。
【図7】図2に示す電磁石ブロック及び可動鉄片の分解斜視図である。
【図8】図2に示す電磁石ブロックと可動鉄片の分解斜視図である。
【図9】図1からケースを除去した状態を示す接点閉成時の断面図である。
【図10】図1からケースを除去した状態を示す接点開放時の断面図である。
【図11】図3の接点開閉部の拡大斜視図である。
【図12】図4の電磁石ブロックによる吸引力曲線と、可動接触片に作用する力の変化を示すグラフである。
【図13】(a)は固定接触片の加工前の状態を示す斜視図、(b)は加工後の状態を示す斜視図である。
【図14】図3のベースの固定接触片の装着部分を下面側から見た状態を示す部分拡大斜視図である。
【図15】他の実施形態に係る固定接触片を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0022】
(1.全体構成)
図1から図5は、本実施形態に係る電磁継電器を示す。この電磁継電器は、大略、ベース1に、電磁石ブロック2、接点開閉部3、及び、可動鉄片4を設け、ケース5を被せたものである。
【0023】
(1−1.ベース1)
ベース1は、図6に示すように、合成樹脂材料を成形加工することにより平面視矩形状に形成され、長手方向の2箇所には、第1装着部6と第2装着部7が設けられている(以下、長辺に沿って長手方向に延びる方向をX軸、短辺に沿って短手方向に延びる方向をY軸、高さ方向に延びる方向をZ軸として説明する)。
【0024】
第1装着部6は、後述する電磁石ブロック2を装着するためのもので、ベース1の上面に形成される第1周縁壁8と第2装着部7とで囲まれた凹所9内に支持凹部10が形成されている。凹所9の底面には、支持凹部10の(ベース1の短手方向:YY´方向)両側に、上下面に貫通する一対のコイル端子孔11がそれぞれ形成されている。ベース1の下面では、コイル端子11が開口する位置の周囲が4辺からのテーパ面で構成されるシール用凹部がそれぞれ形成されている。
【0025】
支持凹部10の(ベース1の長手方向)近傍にはガイド部12が形成されている。ガイド部12は、短手方向(YY´方向)に対応して設けた一対のガイド壁13と、これらを結ぶ絶縁壁14とで構成されている。ガイド壁13の対向面には、上下方向に延びるガイド溝15がそれぞれ形成されている。両ガイド溝15により、後述するヨーク41の両側部がガイドされる。また、ガイド壁13と絶縁壁14で囲まれた領域の中央部分には、ガイド凹部16が形成されている。ガイド凹部16には、後述するヒンジバネ44の被ガイド部50が位置する。
【0026】
第2装着部7は、接点開閉部3を装着するためのもので、前記第1装着部6の第1周縁壁8と同一高さの台座部17が形成されている。台座部17には、YY´方向に延びる、スリット状をした第1端子孔18が形成されている。第1端子孔18は、ベース1の底面では両側の2箇所の連通部19でのみ貫通し、後述する可動接触片52が圧入されるようになっている。台座部17の第1装着部側を除く3辺からは第2周縁壁20が形成されている。第2周縁壁20のX´方向側を構成する部分は肉厚が大きくなり、そこにはYY´方向に延びる、スリット状をした一対の第2端子孔21がそれぞれ形成されている。各第2端子孔21は、ベース1の上面から形成した凹部の底面を、中心側の一部を残して開口させた構成で、後述する固定接触片51を圧入固定する際、その圧入部53の下端縁が底面に当接し、挿入位置の位置決めができるようになっている。また、各第2端子孔21は、ベース1のX´方向の短辺の近傍に配置されており、下面の開口位置と、短辺との距離は僅かである。また、ベース1の下面には、図14に示すように、各第2端子孔21の開口位置から短辺までつながる凹所1aが形成されている。この凹所1aの底面は、中央部が最も深くなるような山型のテーパ状に形成されている。
【0027】
(1−2.電磁石ブロック2)
電磁石ブロック2は、図7及び図8に示すように、鉄心22にスプール23を介してコイル24を巻回したものである。
【0028】
鉄心22は、磁性材料を棒状としたもので、下端部に鍔状の磁極部25が形成され、上端部にはヨーク41が加締固定されるようになっている。
【0029】
スプール23は、合成樹脂材料を成形加工することにより得られ、中心孔26を形成する筒状の胴部27と、その上下両端部に形成される鍔部(上端側鍔部28及び下端側鍔部29)とで構成されている。
【0030】
上端側鍔部28は、上面に逃がし溝30が形成され、そこには中心孔26が開口している。逃がし溝30には、後述するヨーク41の一端部が配置される。下端側鍔部29には中心孔26が開口し、そこから鉄心22を挿入可能となっている。
【0031】
下端側鍔部29の両側部には端子取付部31が設けられ、そこには端子保持孔32がそれぞれ形成されている。各端子保持孔32には、後述するコイル端子36が圧入固定される。端子取付部31の一端両側には段部33がそれぞれ形成され、端子保持孔32に圧入固定したコイル端子36のコイル巻付部39がそれぞれ突出するようになっている。また、下端側鍔部29には、胴部27から側端面に掛けて一方の段部33へと連通する案内溝34が形成されている。案内溝34には、胴部27に巻回するコイル24の一端側(巻き始め側)が配置され、段部33に突出するコイル端子36のコイル巻付部39に巻き付けられるようになっている。下端側鍔部29の底面には所定間隔で一対のガイド突部35が設けられている。これらガイド突部35は、ベース1の支持凹部10内に位置してベース1に対してスプール23すなわち電磁石ブロック2を位置決めする役割を果たす。
【0032】
コイル端子36は、導電性材料を平板状としたもので、下端部は下方に向かうに従って徐々に幅及び厚みが小さくなるように形成されている。コイル端子36の上端部にはプレス加工により片面から膨出する圧入部37が形成され、その上方部分は幅広部38となっている。幅広部38の一端からはコイル巻付部39が突出している。
【0033】
コイル24は、スプール23の胴部27に巻回された後、外周面に絶縁シート40が貼着されるようになっている。コイル24の一端部が前記スプール23の案内溝34に配置され、スプール23の胴部27への巻回後、両端部はそれぞれ各コイル端子36のコイル巻付部39に巻き付けられた後、半田付けされる。
【0034】
前記鉄心22の一端部にはヨーク41が加締固定されている。
ヨーク41は、磁性材料を略L字形となるように折り曲げたものである。ヨーク41の一端部には、前記鉄心22の一端部を挿通して加締固定するための開口部41aが形成されている。ヨーク41の他端部は幅広となって、その下端部両側には突出部42がそれぞれ形成されている。両突出部42の間には、後述する可動鉄片4が位置し、一方の角部が可動鉄片4を回動可能に支持する支点として機能している。ヨーク41の中間部外面には、上下2箇所に加締用の突起43が形成されている。
【0035】
前記ヨーク41の中間部には、前記突起43を利用してヒンジバネ44が加締固定されている。但し、ヨーク41へのヒンジバネ44の固定方法は、加締に限らず、超音波溶接、抵抗溶接、レーザ溶接等、他の方法で行うようにしてもよい。
【0036】
ヒンジバネ44は、ヨーク41の中間部外面に面接触する接続部45を備える。接続部45には、2箇所に貫通孔45aが形成され、前記ヨーク41の突起43が挿通されて加締られるようになっている。
【0037】
接続部45の上方部分は、ヨーク41の中間部外面から徐々に離れるように所定角度で延びる弾性当接部46となっている。弾性当接部46は、後述する可動鉄片4に設けたカード部材65の押圧受部に弾性接触可能となっている。弾性当接部46は、可動鉄片4が元の位置に復帰移動する際の衝突音の発生を緩和する。
【0038】
接続部45の下方部分は、ヨーク41の中間部外面から徐々に離れるように所定角度で延びる第1傾斜部47と、この第1傾斜部47からヨーク側へと徐々に接近するように所定角度で延びる第2傾斜部48とからなる弾性支持部49となっている。弾性支持部49は、第2傾斜部48が後述する可動鉄片4に圧接し、可動鉄片4を回動可能に弾性支持する。
【0039】
弾性支持部49の下方部分は、弾性支持部49により可動鉄片4を弾性支持した状態で、鉛直下方に延びる被ガイド部50となっている。被ガイド部50は、ベース1の第1装着部6に形成したガイド凹部16に配置され、ガイド凹部16にガイドされることによってヒンジバネ44は位置ずれを防止されている。
【0040】
(1−3.接点開閉部3)
接点開閉部3は、図4及び図5に示すように、銅等の導電性材料を板状にプレス加工した、固定接触片51と可動接触片52とで構成されている。
【0041】
固定接触片51は、本発明に係るシール構造を備えた端子部材の一例であり、圧入部53と、圧入部53から下方側に延びる端子部54と、圧入部53から上方側に延びる接触片部55とで構成されている。
【0042】
圧入部53には、プレス加工により片面から膨出する膨出部56が形成されている。この膨出部56によりベース1の第2端子孔21に圧入可能となっている。
【0043】
端子部54は、図13(a)に示すように、両側縁に形成した円弧状の切欠54aによって形成された幅狭部54bに連続する略矩形状の平板を、図13(b)に示すように、両側から折り返して板状としたものである。すなわち、圧入部53に連続する平面部54cと、折り返すことによって平面部54cに重ね合わされる折返部54dとで板状となっている。板状となった端子部54は、圧入部53よりも幅狭で、中心線に対して片側に位置がずれている。また、接触片部55に対して板厚はほぼ2倍となり、十分な強度が確保される。なお、切欠54aは、折返部54dの折り返しを容易にするためのものである。
【0044】
折返部54dは、中央部に長手方向に延びる所定の間隙を有し、平面部54cとで溝部54eを構成している。また、平面部と折返部54dの先端部分は、両面から徐々に重なり面側へと薄く形成されることにより、板厚の薄くなった挿入部54fとなっている。折返部54dの上端部には、中央部に向かうに従って徐々に先端側へと傾斜する傾斜縁54gと、溝部54eの近傍のL字縁54hとからなる切除部54iが形成されている。そして、端子部54を、ベース1に圧入した状態では、圧入部53の下端縁がベース1の第2端子孔21の底面に当接し、それ以上の圧入を阻止される。これにより、端子部54は、ベース1の下面から露出する部分に、切除部54iの傾斜縁54gの一部とL字縁54hとが露出する。両折返部54dの対向部分では、平面部54cとL字縁54hとによってシール溜まり部54jが形成され、端子部54の先端側へのシールの流れが防止される。
【0045】
接触片部55は、端子部54とは反対側に位置をずらせて形成されている。端子部を折り返して重ね合わせた構成としているため、接触片部の板厚を弾性変形できるように薄肉とすることができる。接触片部55の中央部にはスリット55aが形成され、上端部に形成した貫通孔には固定接点57が加締固定されている。
【0046】
可動接触片52は、圧入部58と、圧入部58の両側から上方側へとそれぞれ延びる一対の接触片部59とで構成されている。圧入部58には、前記固定接触片51と同様に、上下方向中央部に幅方向に延びる膨出部60が形成され、ベース1の第1端子孔18に圧入可能となっている。また、圧入部58の下縁両端部には下方に突出する一対の突起61が形成されている。接触片部59は、圧入部58の近傍部分で屈曲されて延びており、上端部には貫通孔59aが形成され、そこには可動接点62がそれぞれ加締固定されている。可動接触片52は、圧入部58をベース1の第1端子孔18に圧入された状態で、可動接点62が第2端子孔21に圧入された固定接触片51の固定接点57に接離可能に対向させる。
【0047】
(1−4.可動鉄片4)
可動鉄片4は、図7及び図8に示すように、板状の磁性材料をプレス加工により略L字形に形成したものである。可動鉄片4の一端側は、鉄心22の磁極部25に吸引される被吸引部63である。被吸引部63の先端部及び基部は幅狭となっており、スプール23の底面に形成したガイド突部35と、ヨーク41の下端部に形成した突出部42との干渉がそれぞれ回避されている。可動鉄片4の他端側には開口部64が形成されている。開口部64にはヒンジバネ44が挿通し、被吸引部63の角部に圧接している。可動鉄片4の他端部は幅狭となっており、又、開口部64の上方側にはカード部材65が一体化されている。
【0048】
カード部材65は、合成樹脂材料からなり、一体化した可動鉄片4の上端側が露出する一方の面には、可動鉄片4の上端部の両側に形成される第1突出部66と、上方側に形成される第2突出部67とがそれぞれ形成されている。可動鉄片4の被吸引部63が鉄心22の磁極部25から離間した際、第2突出部67にヒンジバネ44の弾性当接部46が衝突した後、第1突出部66がヨーク41に当接するように構成されている。カードの他方の面には、幅方向に所定間隔で上下方向に延びる突条部68が形成されている。突条部68の上端部には、さらに突出する押圧部69が形成され、可動接触片52の接触片部59の上端部を押圧可能となっている。カード部材65の下端部には、他方の面よりも突出し、さらに下方側へと延びる遮蔽壁70が形成されている。
【0049】
(1−5.ケース5)
ケース5は、図2に示すように、合成樹脂材料を下面が開口する箱状としたものである。ケース5の上面角部には密閉用孔71が形成されている。密閉用孔71は、ベース1とケース5の嵌合部分のシール後に熱封止される。ケース5の上面縁部(密閉用孔71と反対側)には、両側及び中央部にスリット状の凹部72がそれぞれ形成されている。各及ぶ72の間には、上面よりも窪んだ凹所73が形成されており、その上面中央部には突起74がそれぞれ形成されている。
【0050】
前記ケース5には、凹部72及び凹所73を利用してアーク消弧部材75が取り付けられている。
【0051】
アーク消弧部材75は、アークを消弧させるために所定間隔で配置した一対の永久磁石76と、これら永久磁石76を磁気的に接続するための磁性材料からなる接続部材77とで構成されている。
【0052】
永久磁石76は略直方体形状で、接続部材77の両対向壁78の内面に取り付けた状態で、対向面が異なる極性となるように配置される。但し、対向面の極性は、接点間で電流が流れる方向の違いに応じてアーク電流に作用する力の方向が、後述する接続部材77の中間壁79側へと向かうように設定すればよい。
【0053】
接続部材77は、板状の磁性材料をプレス加工により、両端側が互いに対向するように屈曲したものである。各対向壁78の内面には永久磁石76がそれ自身の磁力によって吸着固定されている。接続部材77の中間壁79には、両側部がそれぞれ異なる端部側から切り起こされることにより、前記各対向壁78の間に位置する中間突出部80がそれぞれ形成されている。各中間突出部80は、両対向壁78の中央部に位置し、両接点開閉位置の間に突出することにより磁路を短くする役割を果たしている。すなわち、各永久磁石76から発生した磁束は、中間突出部80を介して中間壁79及び各対向壁78を通過し、永久磁石76に戻る磁気回路で閉ループを構成する。
【0054】
このように、前記アーク消弧部材75によれば、一対の永久磁石76だけでなく、これらを磁気的に接続するための接続部材77を設けるようにしている。このため、磁気回路が形成され、磁束漏れが発生しにくくなる。また、中間突出部80を設けることにより、磁路を短く設定することができる。したがって、磁気効率を高めることが可能となる。この結果、接点開閉時にアークが発生したとしても、このアークは、フレミング左手の法則によって側方に伸長され、短時間で消弧されることになる。
【0055】
(2.組立方法)
続いて、前記構成からなる電磁継電器の組立方法について説明する。
【0056】
スプール23の胴部27にコイル24を巻回し、下端側鍔部29にコイル端子36を圧入固定する。コイル24の両端部は、コイル巻付部39に巻き付けて半田付けする。また、スプール23の中心孔26に、下端側から鉄心22を挿通し、上端から突出する部分に、予めヒンジバネ44を取り付けたヨーク41を加締固定する。これにより、電磁石ブロック2が完成する。
【0057】
完成した電磁石ブロック2には、ヒンジバネ44を利用してヨーク41の下端部に可動鉄片4を回動可能に支持する。この状態では、可動鉄片4に一体化したカード部材65の第1突出部66がヨーク41に当接可能となり、又、ヒンジバネ44の弾性当接部46がカード部材65の第2突出部67に接離可能となる。そして、可動鉄片4を取り付けた電磁石ブロック2と、接点開閉部3とをベース1に装着する。
【0058】
電磁石ブロック2の装着では、コイル端子36をベース1のコイル端子孔11に圧入し、ヨーク41の両側部をガイド壁13のガイド溝15に挿入する。装着状態では、ガイド突部35が支持凹部10内に位置し、電磁石ブロック2がYY´方向に位置決めされる。また、ヨーク41の突出部42の下端面と、端子取付部31の底面とがそれぞれベース1の凹所9の底面に当接する。これにより、ベース1の凹所9の底面とスプール23の下端側鍔部29の底面との間に可動鉄片4が回動可能な隙間が形成される。可動鉄片4に一体化したカード部材65の遮蔽壁70がベース1の絶縁壁14を越えて配置される。このとき、ベース1のガイド壁13及び絶縁壁14、カード部材65の上方部及び遮蔽壁70によって、電磁石ブロック2と接点開閉部3との間の絶縁性が十分に確保される。
【0059】
また、接点開閉部3の装着では、可動接触片52の圧入部58をベース1の第1端子孔18に圧入する。可動接触片52の装着では、突起61が連通部19に位置することにより、ベース1の底面から可動接触片52の装着状態を確認することができるようになっている。また、可動接触片52の上端部には、先に装着したカード部材65の押圧部69が圧接し、可動鉄片4は、可動接触片52の弾性力によって被吸引部63が鉄心22の磁極部25から離間した初期位置に位置決めされる。
【0060】
また、固定接触片51の端子部54をベース1の第2端子孔21へと挿入し、圧入部53を圧入して固定する。この状態では、圧入部53の下縁が第2端子孔21の一部残された底面に当接し、ベース1からの端子部54の突出寸法が予め設定された値となる。また、端子部54に形成した切除部54iによって、傾斜縁54gの一部と、これに連なるL字縁54hとで構成されるシール溜まり部54jが、ベース1の下面から露出する。これにより、ベース1の下面に於ける第2端子孔21の開口位置が、ベース1の短辺の近傍であって、十分なスペースが確保できない場合であるにも拘わらず、シール溜まり部54jを介して第2端子孔21へとシール剤を充填することが可能となる。また、固定接触片51は可動接触片52に所定間隔で対向し、固定接点57に対して可動接点62が接離可能となる。
【0061】
また、ケース5にアーク消弧部材75を取り付ける。アーク消弧部材75の取付では、接続部材77の対向壁78に永久磁石76を取り付けた状態で、ケース5に形成した各凹部72に、接続部材77の対向壁78及び永久磁石76と、中間突出部80とをそれぞれ挿通する。
【0062】
その後、アーク消弧部材75を取り付けたケース5をベース1に被せ、両者の嵌合部分と各端子孔をシールする。このとき、固定接触片51の端子部54が突出する第2端子孔21では、前述の通り、シール溜まり部54jにシール剤を供給すればよい。シール溜まり部54jに供給されたシール剤は、傾斜縁54gに沿って短い距離で第2端子孔21内へと流入して行き、第2端子孔21と端子部54との隙間をシールする。このように、ベース1から露出したシール溜まり部54jからシール剤を充填するので、第2端子孔21内にシール剤を的確に充填することができる。また、余剰のシール剤は、シール溜まり部54jのL字縁54hによって構成される部分によって流動を阻止され、端子部54のベース1の下面からの突出部分には広がらない。
【0063】
(3.動作)
次に、前記構成からなる電磁継電器の動作について説明する。
【0064】
コイル24に通電しておらず、電磁石ブロック2が消磁している状態では、可動鉄片4が可動接触片52の弾性力によってヨーク41によって支持された支点を中心として被吸引部63を鉄心22の磁極部25から離間する初期位置に位置する。したがって、可動接点62は固定接点57から離間した開放状態を維持する。
【0065】
コイル24に通電し、電磁石ブロック2を励磁すると、図9に示すように、可動鉄片4は鉄心22の磁極部25に被吸引部63を吸引され、可動接触片52の付勢力に抗して回動する。これにより、可動接触片52が弾性変形し、可動接点62を固定接触片51の固定接点57に閉成する。
【0066】
コイル24への通電を遮断し、電磁石ブロック2を消磁すると、可動鉄片4は鉄心22の吸引力を失って可動接触片52の弾性力により回動する。このとき、まず、可動鉄片4のカード部材65に形成した第2突出部67がヒンジバネ44の弾性当接部46に衝突する。第2突出部67は合成樹脂製であり、弾性当接部46は弾性変形する。しかも、可動鉄片4が回動を開始してから早期に第2突出部67と弾性当接部46の当接状態が得られる。したがって、衝突音は殆ど発生することがない。そして、可動鉄片4がさらに回動することにより弾性当接部46を弾性変形させながら、合成樹脂製の第1突出部66がヨーク41の中間部に当接する。このため、可動鉄片4の回動速度が低減され、ここでも衝突音の発生は十分に抑制される。このように、可動鉄片4は衝突音を発生させることなくスムーズに初期位置に復帰し、可動接点62は固定接点57から離間して開放位置に位置する。
【0067】
ところで、接点を開放する際、接点間にアークが発生することがある。この場合、接点開閉領域の周囲にはアーク消弧部材75が配置されているため、発生したアークは迅速に消弧される。
【0068】
すなわち、各永久磁石76のN極から発生した磁束は、接続部材77の中間突出部80を介して中間壁79を通り、対向壁78から前記各永久磁石76のS極に戻る磁気回路をそれぞれ流れる。各磁気回路は閉ループを構成し、周囲への磁束漏れが殆どない。そして、中間突出部80の存在により接点開閉位置、つまり接点間に発生したアークに対して効果的に磁力を作用させることができる。この結果、フレミング左手の法則により、発生したアークには、接点開放方向とは直交する方向に力が作用し、このアークは大きく引き延ばされるので、急速に消弧されることになる。
【0069】
ここでは、可動接触片52で、両固定接触片51間を開閉するように構成したため、接点開放時のアーク電流が図11に示す向きに流れるので、アークを接続部材77の中間壁側へと変形させることができる磁束方向が得られるように永久磁石76の磁極を対向面で異極となるように設定している。つまり、アークを接続部材77の中間壁側へと変形させることで、アークの消弧をより確実なものとしている。したがって、接点開閉部3の構成が相違すれば、その違いに応じて永久磁石76の磁極を設定すればよい。
【0070】
また、前記電磁石ブロック2の動作電圧は次のようにして調整することができる。
すなわち、ヒンジバネ44の弾性当接部46の傾斜角度を変更することにより、電磁石ブロック2の動作電圧を抑えることが可能となる。詳しくは、ヨーク41に対する弾性当接部46の傾斜角度を大きくすると、図12のグラフに示すように、鉄心22の磁極部25から発生させた磁界により可動鉄片4の被吸引部63に作用する力の変化(吸引力曲線)に対して、動作点の位置を変更することができる。つまり、弾性当接部46の傾斜角度を大きくすることにより、接点が開放してから第1突出部66に弾性当接部46が当接するまでに必要となる力を抑えることができる。この結果、吸引力曲線が、図示されるものよりも小さい位置で変化するように、電磁石ブロック2の動作電圧を抑制することが可能となる。
【0071】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、前記実施形態では、シール溜まり部54jを、折返部54dに形成した傾斜縁54gと、L字縁54hとで得るようにしたが、図15(a)に示すように、L字縁54hをV字縁54kで構成し、シール剤が溝部54eに至る経路を長くすることもできる。これによれば、シール剤でシール位置(主に、第2端子孔21)以外に流動するといった不具合を的確に阻止することができる。
【0073】
また、L字縁54hあるいはV字縁54kの角部では、切除部54iがさらに広がるように形成することも可能である。この構成によれば、より一層、シール剤がシール位置以外へと流動することを的確に阻止することが可能となる。
【0074】
また、前記実施形態では、端子部54を、両側から折返部54dを折り返すことにより形成するようにしたが、折返部54dは必ずしも両側に必要なものではなく、図15(b)に示すように、片側から折り返して重ね合わせた構成とすることも可能である。
【0075】
また、前記実施形態では、本発明に係る端子部材のシール構造を、電磁継電器に採用する場合について説明したが、必ずしも電磁継電器には限らず、他の電子機器、例えば、スイッチ等、電気開閉構造を有する電子機器であれば採用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1…ベース
2…電磁石ブロック
3…接点開閉部
4…可動鉄片
5…ケース
6…第1装着部
7…第2装着部
8…第1周縁壁
9…凹所
10…支持凹部
11…コイル端子孔
12…ガイド部
13…ガイド壁
14…絶縁壁
15…ガイド溝
16…ガイド凹部
17…台座部
18…第1端子孔
19…連通部
20…第2周縁壁
21…第2端子孔
22…鉄心
23…スプール
24…コイル
25…磁極部
26…中心孔
27…胴部
28…上端側鍔部
29…下端側鍔部
30…逃がし溝
31…端子取付部
32…端子保持孔
33…段部
34…案内溝
35…ガイド突部
36…コイル端子
37…圧入部
38…幅広部
39…コイル巻付部
40…絶縁シート
41…ヨーク
42…突出部
43…突起
44…ヒンジバネ
45…接続部
46…弾性当接部
47…第1傾斜部
48…第2傾斜部
49…弾性支持部
50…被ガイド部
51…固定接触片
52…可動接触片
53…圧入部
54…端子部
54a…切欠
54b…幅狭部
54c…平面部
54d…折返部
54e…溝部
54f…挿入部
54g…傾斜縁
54h…L字縁
54i…切除部
54j…シール溜まり部
54k…V字縁
55…接触片部
56…膨出部
57…固定接点
58…圧入部
59…接触片部
60…膨出部
61…突起
62…可動接点
63…被吸引部
64…開口部
65…カード部材
66…第1突出部
67…第2突出部
68…突条部
69…押圧部
70…遮蔽壁
71…密閉用孔
72…スリット
73…凹所
74…突起
75…アーク消弧部材
76…永久磁石
77…接続部材
78…対向壁
79…中間壁
80…中間突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに形成した端子孔に圧入される端子部材のシール構造であって、
前記端子部材は、前記端子孔に圧入される圧入部と、該圧入部から延び、前記ベースから突出する端子部とを備え、
前記端子部は、板状体を折り返し、平面部に折返部を重ね合わせた構成であり、
前記折返部は、前記圧入部側の縁に、前記ベースから露出する切除部を有し、
前記端子孔には、前記切除部を介してシール剤を充填可能としたことを特徴とする端子部材のシール構造。
【請求項2】
前記端子部は、板状体を両側から折り返し、平面部に折返部を重ね合わせた構成であり、
前記各折返部は、対向部分に切除部をそれぞれ有することを特徴とする請求項1に記載の端子部材のシール構造。
【請求項3】
前記切除部は、前記ベースから露出する部分と端子孔内を結ぶ傾斜縁を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の端子部材のシール構造。
【請求項4】
前記切除部は、前記ベースから露出する部分に、両折返部の対向部分を切除することにより、平面部とでシール溜まり部を形成することを特徴とする請求項3に記載の端子部材のシール構造。
【請求項5】
前記切除部のうち、前記シール溜まり部を構成する部分は、さらに部分的に切除領域が広げられていることを特徴とする請求項4に記載の端子部材のシール構造。
【請求項6】
前記端子部材は、前記ベースからの端子部の突出位置とは反対側から突出し、先端に接点を有する弾性変形可能な接触片部を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の端子部材のシール構造。
【請求項7】
前記請求項1から6のいずれか1項に記載のシール構造を備えた固定接触片を有することを特徴とする電磁継電器。
【請求項8】
板状体を打ち抜く第1工程と、
打ち抜いた板状体を、両側から折り返すことにより、平面部に両折返部を重ね合わせて端子部を形成する第2工程と、
前記端子部を、ベースの第1面側から端子孔に圧入し、ベースの第2面から突出させる第3工程と、
前記ベースの第2面側から前記端子孔にシール剤を充填する第4工程と、
を備え、
前記第3工程で、ベースの端子孔に端子部を圧入した際、折返部に、ベースの端子孔から外部に連なる切除部が形成されるように、前記第1工程で、板状体を打ち抜くことを特徴とする電磁継電器の製造方法。
【請求項9】
前記第3工程で、ベースの端子孔に端子部を圧入した際、折返部に、ベースから露出する部分と端子孔内を結ぶ傾斜縁からなる切除部が形成されるように、前記第1工程で、板状体を打ち抜くことを特徴とする請求項8に記載の電磁継電器の製造方法。
【請求項10】
前記第3工程で、ベースの端子孔に端子部を圧入した際、両折返部の対向部分を切除することにより、前記ベースから露出する部分に、平面部とでシール溜まり部が形成されるように、前記第1工程で、板状体を打ち抜くことを特徴とする請求項9に記載の電磁継電器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−65412(P2013−65412A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202138(P2011−202138)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)