説明

管状ヒータおよび管状ヒータの製造方法

【課題】 特性が良好で、かつ製造時間を短縮可能な管状ヒータおよび管状ヒータの製造方法を提供する。
【解決手段】
実施形態の管状ヒータの製造方法は、内部に空間13を備える筒状部11、筒状部11の両端に形成されたシール部12を備えるガラス管1と、筒状部11の内部に、ガラス管1の管軸に沿うように配置されたフィラメント3と、を具備しており、筒状部11の一端側に第1のサブ管63、他端側に第2のサブ管64を設け、第1、第2のサブ管63、64から容積が50000mm以上である空間13の排気を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、太陽電池の製造、塗料の乾燥、ペットボトルの成形、暖房、複写機やプリンターのトナー定着などに使用される管状ヒータおよび加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
管状ヒータの製造では、ガラス管内の大気を排気して、一旦、真空雰囲気にしたのちに、所望のガスを封入する排気・ガス封入工程が行われる。その排気・ガス封入するに際しては、筒状の細管が用いられる。その細管は、管状ヒータの管軸方向の中央付近に一つ設けられるのが一般的である。
【0003】
ここで、従来、管状ヒータは複写機等で使用されるのが一般的であったが、近年では太陽電池の製造等で使用されるようになっている。この太陽電池の製造では、従来よりも大型の管状ヒータが使用される。例えば、複写機用途では長くても管長が700mmであったのに対し、太陽電池の製造用途では1000mmを優に超える場合がある。
【0004】
このような大型の管状ヒータについて排気・ガス封入工程を行う場合、ガラス管内を十分に真空にしきれず、不純ガスが残ってランプの特性に影響を与えてしまったり、十分に真空にするために排気工程を従来以上に長くする必要が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2588859号
【特許文献2】特開2011−9043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、特性が良好で、かつ製造時間を短縮可能な管状ヒータおよび管状ヒータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、実施形態の管状ヒータの製造方法は、内部に空間を備える筒状部、前記筒状部の両端に形成されたシール部を備えるガラス管と、前記筒状部の内部に、前記ガラス管の管軸に沿うように配置されたフィラメントと、を具備する管状ヒータの製造方法であって、前記筒状部の一端側に第1のサブ管、他端側に第2のサブ管を設け、前記第1、第2のサブ管から容積が50000mm以上である前記空間の排気を行うようにした。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態の管状ヒータについて説明するための図である。
【図2】第1の実施形態の管状ヒータの排気工程について説明するための図である。
【図3】第1の実施形態の管状ヒータの製造ステップについて説明するための図である。
【図4】第2の実施形態の管状ヒータの排気工程について説明するための図である。
【図5】第2の実施形態の管状ヒータの製造ステップについて説明するための図である。
【図6】第3の実施形態の管状ヒータの製造ステップについて説明するための図である。
【図7】管状ヒータの他の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の管状ヒータについて、図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態の管状ヒータについて説明するための図である。
【0011】
管状ヒータは、主要部としてガラス管1を備えている。ガラス管1は、例えば石英ガラスからなる全長が1900mmの細長い管であり、筒状部11とシール部12とで構成されている。筒状部11は、ガラス管1の大部分を占める円筒状の部分であり、その外径は例えば13mm、内径は10.5mmである。シール部12は、筒状部11の両端にピンチシールにより形成された板状の封着部である。その幅は例えば12.5mmである。なお、シール部12は、シュリンクシールにより形成されることにより円柱状であってもよい。
【0012】
ガラス管1の内部には空間13が形成されている。この空間13には、例えば、微量の臭素、ヨウ素などのハロゲン物質や、アルゴン、ネオンなどのガスが封入されている。
【0013】
シール部12の内部には、金属箔2が封着されている。金属箔2は例えばモリブデンからなる薄板であり、シール部12の板状面に沿うように配置されている。
【0014】
ガラス管1の内部にはフィラメント3が設けられている。フィラメント3は、例えばタングステンからなる金属線であり、主部31とレグ部32とで構成されている。主部31は、点灯時に発熱する部分であり、その長さは例えば1800mmであり、空間13に配置されている。レグ部32は、主部31に電力を給電する部分であり、主部31の両端に位置され、金属箔2と接続されている。
【0015】
また、ガラス管1の内部にはサポート部材としてアンカー4が設けられている。アンカー4は、例えばタングステンからなる金属線であり、主部31が空間13の略中央に位置するようにフィラメント3を支持している。このようなアンカー4は第一ピッチ(約16mm)と第二ピッチ(約29mm)を保つように、管軸方向に複数設けられている。
【0016】
金属箔2のレグ部32が接続されていない側には、2本のリード線5が接続されている。リード線5は、例えばモリブデンやタングステンなどからなる金属線であり、他端側は管軸に沿うように、シール部12から導出されている。
【0017】
ここで、ガラス管1の筒状部11には、第1、第2のサブ管痕61、62が形成されている。第1のサブ管痕61は、筒状部11の一端部付近に形成され、第2のサブ管痕62は、筒状部11の他端部付近に形成されている。この第1、第2のサブ管痕61、62は、排気・ガス導入を行うために用いられた細管の残部である。つまり、製造工程においては、図2に示すように、第1、第2のサブ管63、64として存在する過程がある。第1、第2のサブ管63、64は、例えば外径が4mm、内径が2mmであり、外径が筒状部11の内径よりも小さい。
【0018】
本実施形態の管状ヒータの製造方法を図3を参照して説明する。図3は、第1の実施形態の管状ヒータの製造ステップについて説明するための図である。
【0019】
まず、ガラス管1内にフィラメント3が配置されるとともに、その両端が封じられた管状ヒータを製造し、その筒状部11の両端付近にそれぞれ第1、第2のサブ管63、64をバーナー等による熱溶着により形成する(S1)。このとき、第1、第2のサブ管63、64は、予めガラス管1と一体的に構成されていてもよい。次に、第1、第2のサブ管63、64の開口部に排気・ガス導入装置(図示なし)を取り付け、ガラス管1内の排気を行う(S2)。第1、第2のサブ管63、64による排気は、同時かつ同じ排気量で行うのが望ましい。
【0020】
ガラス管1内の真空度が5×10−3Pa程度に到達したら排気を中止して、アルゴンおよび臭素系のハロゲンガスを所定量、ガラス管1内に導入し、(S3)、最後に第1、第2のサブ管63、64を封止かつ不要な部分を排除、すなわちチップオフして第1、第2のサブ管痕61、62を形成して管状ヒータが完成する。
【0021】
第1の実施形態のような製造方法では、真空度が5×10−3Pa程度に到達するまでに要する時間を6分程度とすることができる。従来のように管状ヒータの管軸方向の中央に一つ細管を設ける場合では、同様の真空度とするのに10分以上は時間を要することから、製造時間を半分程度に短縮することが可能となる。
【0022】
なお、ガラス管1の空間13の長さが1000mm以上で、容積が50000mm以上の場合には、従来のように細管一つでは排気に多くの時間を要する傾向が生じるようになる。ガラス管1の空間13の長さが1400mm以上で、容積が70000mm以上、さらには100000mm以上の場合には特に時間を要する。本実施形態の管状ヒータは、ガラス管1の空間13の長さが約1800mm、内径が10.5mmであり、容積が150000mmを超える大容積ヒータであるが、図3のような製造方法を経ることで、排気に要する時間を大幅に短縮できる。空間13の長さや容積に上限は特にないが、長さは2800mm、容積は500000mmまでであれば本実施形態の方法により同様の効果が得られることは確認されている。ちなみに、複写機用途に用いられる管状ヒータの内容積は、大きくても8000mm程度であるので、従来のような排気方法でも排気時間は長くない。
【0023】
また、本実施形態のような製造方法を経て得られた管状ヒータは、ランプの特性、特に寿命特性が良好であった。一方、従来の方法で、かつ排気の時間を本実施形態と同程度とした管状ヒータでは、早期に寿命に至ることがわかった。これは、フィラメント3が早期に細ってしまったことが原因である。つまり、排気工程において十分に大気を排気できないと、ガラス管1内に大気成分のうちの酸素や二酸化炭素が残留し、それが導入されたハロゲンガスと化合し、ハロゲンサイクルが起こりにくくなったことで、タングステンの蒸発を抑制することができなくなったと考えられる。
【0024】
第1の実施形態においては、筒状部11の一端側に第1のサブ管63、他端側に第2のサブ管64を設け、第1、第2のサブ管63、64からガラス管1の空間13の排気を行うようにしたことで、ランプの特性が良好で、かつ製造時間を短縮可能な管状ヒータを提供することができる。
【0025】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態の管状ヒータの製造方法について説明するための図である。この第2の実施形態の各部について、第1の実施形態の管状ヒータの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0026】
この実施形態では、ガラス管1の排気工程において、一方のサブ管(例えば、第1のサブ管63)ではガラス管1内にガスを導入させ、他方のサブ管(例えば、第2のサブ管64)では排気するようにしている。具体的には、図5に示すように、S2、S3の工程に変えて、S5、S6の工程を行うことで、管状ヒータを製造している。
【0027】
ここで、排気時間と真空度の関係は正比例の関係ではなく、真空度が高くなると飽和する性質がある。一方で、上述したように、排気工程の目的は、大気をガラス管1内から排出することであるので、大気中の酸素や二酸化炭素さえ排出できれば必ずしも真空度を高くする必要はない。本実施形態の方法では、大気成分を含んでいない、例えばアルゴンや窒素等のガスを一方のサブ管から導入しつつ、他方のサブ管から排気するようにしているため、ガラス管1内の大気をそのガスで押し出すようにして他方のサブ管から排出することができる。よって、大気を短時間でガラス管1の外部に排出でき、管状ヒータの製造時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0028】
なお、一方のサブ管から導入されたガスの一部は、発光用のガスとしてそのまま用いてもよい。また、一方のサブ管によるガスの流入速度と他方のサブ管による排気速度は同じか、どちらか一方、例えば流入速度>排気速度となるようにしてもよい。また、最初は一方のサブ管は停止または排気、他方のサブ管は排気するようにし、ガラス管1内の真空度が高まったときに一方のサブ管からガスを導入するようにしても良い。
【0029】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態の管状ヒータの製造方法について説明するための図である。
【0030】
この実施形態では、S2の工程に変えて、S8、S9の工程を行うことで、管状ヒータを製造している。具体的には、第2の実施形態ではS5の工程で発光用のガスと同じガスを用いていたのに対し、本実施形態では、発光用のガスとは異なるガスを用いている。
【0031】
この方法では、管状ヒータにクリプトンやキセノンなどの高価なガスを封入したい場合に有利である。つまり、S8の工程では、大気成分を含んでおらず、かつ安価な、例えばアルゴンや窒素等のガスを主に製造用のガスとして一方のサブ管から導入し、他方のサブ管から排気するようにしている。そして、S9の工程では、その製造用のガスを排気し、そのあとで主に発光用のガスであるクリプトンやキセノンなどのガスを導入する。この方法であれば、高価なガスを無駄に排気してしまうことがなくなるため、管状ヒータを安価に製造することができる。また、製造用のガスは大気を含んでいないので、十分に排気できず、ガラス管1内に多少残ってしまってもハロゲンサイクルを阻害することはなく、寿命特性が悪くなることもない。
【0032】
本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0033】
第1、第2のサブ管63、64は、筒状部11の最端部、例えば、レグ部32付近に設けても良い。この構成は、特に第2、第3の実施形態のように、排気時に一方のサブ管からガスを導入する構成の場合に有利である。つまり、ガスを空間13の隅々まで行き渡らせて、大気を残らず押し流すことが可能となるため、より大気を排気することができるようになる。
【0034】
また、サブ管は、3つ以上であってもよい。例えば、筒状部11の管軸方向の略中央部に第3のサブ管を設け、このサブ管でも第1、第2のサブ管63、64とともに排気を行うようにしたり、第1、第2のサブ管63、64からはガスを導入し、第3のサブ管から排気するようにしてもよい。
【0035】
ガス導入工程は、第1、第2のサブ管63、64の両方から行うようにするのが望ましいが、一方からのみガス導入を行うようにしてもよい。
【0036】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 ガラス管
2 金属箔
3 フィラメント
4 アンカー
5 リード線
61、62 第1、第2のサブ管痕
63、64 第1、第2のサブ管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を備える筒状部、前記筒状部の両端に形成されたシール部を備えるガラス管と、前記筒状部の内部に、前記ガラス管の管軸に沿うように配置されたフィラメントと、を具備する管状ヒータの製造方法であって、
前記筒状部の一端側に第1のサブ管、他端側に第2のサブ管を設け、
前記第1、第2のサブ管から容積が50000mm以上である前記空間の排気を行うようにした管状ヒータの製造方法。
【請求項2】
内部に空間を備える筒状部、前記筒状部の両端に形成されたシール部を備えるガラス管と、前記筒状部の内部に、前記ガラス管の管軸に沿うように配置されたフィラメントと、を具備する管状ヒータの製造方法であって、
前記筒状部の一端側に第1のサブ管、他端側に第2のサブ管を設け、
一方の前記サブ管では容積が50000mm以上である前記空間内にガスを送入しつつ、他方の前記サブ管では前記空間の排気を行うようにした管状ヒータの製造方法。
【請求項3】
内部に空間を備える筒状部、前記筒状部の両端に形成されたシール部を備えるガラス管と、前記筒状部の内部に、前記ガラス管の管軸に沿うように配置されたフィラメントと、を具備する管状ヒータであって、
前記空間の容積は、50000mm以上であり、
前記筒状部の両端には、それぞれ第1、第2のサブ管痕が形成されている管状ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−114912(P2013−114912A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260224(P2011−260224)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】