説明

管状ヒータ

【課題】 配光に特色を持たせることが可能な高負荷かつコンパクトな管状ヒータを提供する。
【解決手段】
実施形態の管状ヒータは、内部に空間13を備えた長尺のガラス管1と、ガラス管1の両端に封着された金属箔2と、主部31を備え、主部31が空間13に配置されるように、金属箔2と接続されたフィラメント3と、を具備する管状ヒータであって、ランプ電力をP(W)、主部31が配置されている部分の空間13の体積をV(mm)としたとき、P/V≧0.44W/mmを満足するとともに、主部31は、第1のコイル部311と第2のコイル部312を備え、第1のコイル部311は第2のコイル部312よりもコイルピッチが20%以上小さく構成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複写機やプリンターのトナー定着等に用いられる管状ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンターのトナー定着等に用いられる管状ヒータは、ガラス管の内部にフィラメントを配置した構造である。このランプは、管軸方向で均一の配光特性を持つものが一般的であるが、装着する装置の仕様や客先の要望により、管軸方向で配光に特色を持たせる場合がある。例えば、特許文献1では、管状ヒータの中央領域よりも両端領域の方が熱出力を高くする配光設計をしている。このような配光設計では、特許文献2のように、発光部と非発光部を設け、熱出力を高くしたい領域の発光部の管軸方向長さを他の発光部よりも長くする設計を行うのが一般的であった。
【0003】
ここで、最近では高負荷かつコンパクトな管状ヒータのニーズがある。このような管状ヒータでは、従来とは異なるコイル設計となるが、そのために設計自由度が狭くなり、従来のように配光に特色を持たせるのが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−202926号公報
【特許文献2】特開2007−286476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、配光に特色を持たせることが可能な高負荷かつコンパクトな管状ヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、実施形態の管状ヒータは、内部に空間を備えた長尺のガラス管と、前記ガラス管の両端に封着された金属箔と、主部を備え、前記主部が前記空間に配置されるように、前記金属箔と接続されたフィラメントと、を具備する管状ヒータであって、ランプ電力をP(W)、前記主部が配置されている部分の前記空間の体積をV(mm)としたとき、P/V≧0.44W/mmを満足するとともに、前記主部は、第1のコイル部と第2のコイル部を備え、前記第1のコイル部は前記第2のコイル部よりもコイルピッチが20%以上小さく構成されてなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態の管状ヒータについて説明するための図である。
【図2】第1の実施形態の管状ヒータの端部付近について説明するための図である。
【図3】第1のコイル部と第2のコイル部のコイルピッチ差を変化させたときの管状ヒータの管軸方向における配光について説明するための図である。
【図4】第1の実施形態のフィラメントの主部について説明するための図である。
【図5】第2の実施形態の定着装置について説明するための図である。
【図6】第2の実施形態の定着装置の定着ローラについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の管状ヒータについて、図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態の管状ヒータについて説明するための図、図2は、第1の実施形態の管状ヒータの端部付近について説明するための図である。
【0010】
管状ヒータは、主要部として例えば石英ガラスからなるガラス管1を備えている。ガラス管1は、細長い管であり、筒状部11とシール部12とで構成されている。筒状部11は、ガラス管1の大部分を占める円筒状の部分である。その一部には、ガラス管1内の排気・ガス導入を行うために用いられたチップ111が形成されている。シール部12は、筒状部11の両端にピンチシールにより形成された板状の封着部である。なお、シール部12は、シュリンクシールにより形成された円柱状であってもよい。
【0011】
ガラス管1の内部には空間13が形成されている。この空間13には、例えば、微量の窒素や臭素、ヨウ素などのハロゲン物質や、アルゴン、ネオン、窒素などのガスが封入されている。
【0012】
シール部12の内部には、金属箔2が封着されている。金属箔2は例えばモリブデンからなる薄板であり、シール部12の板状面に沿うように配置されている。
【0013】
ガラス管1の内部にはフィラメント3が設けられている。フィラメント3は、例えばタングステンからなる金属線であり、主部31とレグ部32とで構成されている。主部31は、空間13に配置された部分である。レグ部32は、主部31の両端に位置し、金属箔2と接続される部分である。
【0014】
また、ガラス管1の内部にはサポート部材4が設けられている。サポート部材4は、例えばタングステンからなる金属線であり、ガラス管1の内壁面に固定され、フィラメント3がガラス管1の中央に位置するように主部31を保持している。サポート部材4は、所定の間隔を保ち、管軸方向に沿って複数設けられている。
【0015】
金属箔2のレグ部32が接続されていない側には、リード線5が接続されている。リード線5は、例えばモリブデンやタングステンなどからなる金属線であり、他端側は管軸に沿うように、シール部12から導出されている。
【0016】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、主部31は第1のコイル部311と第2のコイル部312を備えている。第1のコイル部311および第2のコイル部312は金属線を巻回することで螺旋状に形成されたコイル部分であり、第1のコイル部311は第2のコイル部312よりもコイルピッチが20%以上小さくなるような密巻きになっている。つまり、第1のコイル311における金属線の直径をA1(mm)、隣接するコイル部分との距離をB1(mm)、第2のコイル312における金属線の直径をA2(mm)、隣接するコイル部分との距離をB2(mm)としたとき、|(B1/A1)−(B2/A2)|≧0.2の関係を満たしている。
【0017】
以下に、管状ヒータの一実施例について説明する。
(実施例)
ランプ長=280mm、
ガラス管1の外径R=5mm、内径r=3mm、
空間13の管軸方向長さ=230mm、
うち、主部31が配置されている長さL1=200mm、
第1のコイル部311の金属線の直径A1=0.31mm、隣接するコイル部分との距離B1=0.39mm、コイルピッチ≒130%、コイル巻径C=1.3mm、管軸方向長さL2=50mm、
第2のコイル部312の金属線の直径A2=0.31mm、隣接するコイル部分との距離B2=0.51mm、コイルピッチ≒170%。
【0018】
この実施例の管状ヒータを850Wのランプ電力で点灯した。その結果、両端領域が中央領域よりも発光が強い特色のある配光を得ることができた。
【0019】
管状ヒータにおいては、高負荷で、かつコンパクトであることが要求されている。高負荷で、かつコンパクトであるとは、単位体積あたりに投入される電力が大きいことを意味する。本発明では、ランプ電力P(W)と、主部31が配置されている部分の空間13の体積V(mm)から、P/V(W/mm)と示す。V=L1×π(r/2)である。P/Vが大きくなると、フィラメント3にかかる負担が大きくなるため、直径の大きな金属線を用いる必要が生じる。一方で、管状ヒータとして十分な特性を得るには必要なターン数が存在する。直径が大きい金属線で必要なターン数、コイルを巻回しようとすると、直径が小さい金属線の場合よりも空間13に余裕がなくなる。そのため、従来のように配光に特色を持たせるために、発光部と非発光部を設け、場所によって発光部の長さを変えるという設計が困難になる。特に、P/Vが0.44W/mm以上、さらには0.50W/mm以上になると、設計自由度が狭くなり、配光に特色を持たせるコイル設計が困難になる。
【0020】
そこで、そのような設計自由度が狭い管状ヒータでも配光に特色を持たせるべく、第1のコイル部311を第2のコイル部312よりもコイルピッチを所定だけ小さくなるように密に巻きにし、管状ヒータの管軸方向における配光を測定した。その結果を図3に示す。
【0021】
結果から、第1のコイル部311が120%、第2のコイル部312が140%、すなわちコイルピッチ差が20%では、10%以上強度に差が生じることがわかる。コイルピッチ差が40%では20%弱、コイルピッチ差が40%では約25%、強度に差が生じることがわかる。なお、図示していないが、第1のコイル部311を120%、第2のコイル部312を130%とした場合には、強度の差は5%程度である。第1のコイル部311の部分と第2のコイル部312の部分とで、強度に10%程度の差、望ましくは20%程度の差が生じていれば、配光に特色が持たせられた状態といえる。したがって、特色のある配光を得るには、第1のコイル部311を第2のコイル部よりもコイルピッチを20%以上、望ましくは40%以上小さく構成すればよい。
【0022】
なお、第1のコイル部311および第2のコイル部312はコイルピッチが120〜180%を満足するのが望ましい。この範囲外であると、フィラメントの温度が高すぎたり、低すぎたりして管状ヒータとして実用的でないためである。また、主部31はコイルピッチが200%以上を満足するコイル領域を備えていないのが望ましい。つまり、図4に示すように、主部31が金属線の直径A3(mm)、隣接するコイル部分との距離B3(mm)の関係であるB3/A3が2以上となる部分を持たないのが望ましい。ただし、製造ばらつき等により、設計者の意図に反してコイルピッチが200%以上を満たしているような部分は除外するものとする。また、上記のようなコイルピッチは、主部31が配置されている長さL1は150〜250mm、ガラス管1の内径rは3.5mm以下、フィラメント3を構成する金属線の直径は0.25mm以上、ランプ電力は800W以上の場合において適用するのが望ましい。
【0023】
さらに、隣接するサポート部材4の間隔D1は、8mm以下であるのが望ましい。密巻きにした第1のコイル部311は温度が高くなり、点灯中に撓みやすくなるためである。また、第1のコイル部311と第2のコイル部312の境界は、隣接するサポート部材4の間、特には隣接するサポート部材4の間の略中央に位置するように配置して、保持しないようにするのが望ましい。第1のコイル部311と第2のコイル部312の境界は、変化領域をほとんど生じさせることなく所定のコイルピッチ差を持たせることが可能であり、当該部分をサポート部材4で保持しないことによって、比較的急峻な配光の変化を得ることができるためである。
【0024】
第1の実施形態においては、ランプ電力をP(W)、主部31が配置されている部分の空間13の体積をV(mm)としたとき、P/V≧0.44W/mmを満足するような高負荷でコンパクトな管状ヒータであっても、第1のコイル部311のコイルピッチを第2のコイル部312のコイルピッチよりも20%以上小さく構成することで特色のある配光を得ることができる。
【0025】
また、第1のコイル部311と第2のコイル部312の境界を、隣接するサポート部材4の間に配置し、サポート部材4によって保持しないようにしたことで、第1のコイル部311〜第2のコイル部312の配光の変化を急峻にすることができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態の定着装置について説明するための図である。この第2の実施形態の各部について、第1の実施形態の管状ヒータの各部と同一部分は同一符号で示し、その説明を省略する。
【0027】
定着装置は、管状ヒータ100、定着ローラ200および加圧ローラ300で構成されている。
【0028】
管状ヒータ100は、第1の実施形態で説明したヒータである。
【0029】
定着ローラ200は、紙面上に転写されたトナーを複写紙Pに定着させるとともに、回転することによって複写紙Pを搬送させるローラである。定着ローラ200は、例えば内側からステンレスなどからなる金属層、シリコンゴムからなる弾性層および樹脂層で構成された三層構造となっており、その両端は開口している。定着ローラ200の中心、すなわち金属層の内部は空洞になっており、図6のようにその中に管状ヒータ100が配置されている。
【0030】
加圧ローラ300は、複写紙Pに圧力を加えて定着ローラ200とともに複写紙Pを挟み、なおかつ紙面上に転写されたトナーを複写紙Pに定着させるためのローラである。この加圧ローラ300も定着ローラ200と同様の三層構造で両端は開口しており、加圧ローラ300の内部に形成されている空洞にも、管状ヒータ100が配置されている。
【0031】
この実施形態のように、両端が開口しているために点灯中にその両端部において温度が低下しやすい定着ローラ200や加圧ローラ300に管状ヒータ100を配置する場合でも、その温度低下を解消し、ローラの管軸方向の表面温度を均一化することができる。また、管状ヒータ100の筒状部11の外表面と定着ローラ200や加圧ローラ300の内表面との距離D2が従来よりも短い5mm以下となり、ローラの管軸方向の表面温度が管状ヒータ100の配光により影響されるようになっても、本実施形態の管状ヒータ100であればその表面温度を均一化することができる。
【0032】
本発明は上記実施態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、第1のコイル部311を管軸方向の中央部に形成することで、管状ヒータの中央付近の配光を他よりも強くする設計としてもよい。また、第1のコイル部311および第2のコイル部312とコイルピッチが異なる第3のコイル部を備えていても良い。つまり、ヒータの管軸方向で2以上の配光の変化のある領域があってもよい。
【0033】
この発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1 ガラス管
2 金属箔
3 フィラメント
31 主部
311 第1のコイル部
312 第2のコイル部
32 レグ部
4 サポート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を備えた長尺のガラス管と、前記ガラス管の両端に封着された金属箔と、主部を備え、前記主部が前記空間に配置されるように、前記金属箔と接続されたフィラメントと、を具備する管状ヒータであって、
ランプ電力をP(W)、前記主部が配置されている部分の前記空間の体積をV(mm)としたとき、P/V≧0.44W/mmを満足するとともに、
前記主部は、第1のコイル部と第2のコイル部を備え、前記第1のコイル部は前記第2のコイル部よりもコイルピッチが20%以上小さく構成されてなることを特徴とする管状ヒータ。
【請求項2】
前記第1のコイル部および前記第2のコイル部はコイルピッチが120〜180%を満足するとともに、前記主部はコイルピッチが200%以上を満足するコイル領域を備えていないことを特徴とする請求項1に記載の管状ヒータ。
【請求項3】
前記ガラス管内には、前記主部を保持するサポート部材が管軸方向に沿って複数設けられており、前記第1のコイル部と前記第2のコイル部の境界は隣接する前記サポート部材の間に配置され、前記サポート部材によって保持されていないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の管状ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−89536(P2013−89536A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230873(P2011−230873)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】