説明

管状弾性体の研磨方法、弾性ローラの製造方法及び弾性ローラ

【課題】管状弾性体を高い振れ精度となるように研磨できる管状弾性体の研磨方法、振れ精度が高い弾性層を有する弾性ローラ及びこの弾性ローラの製造方法を提供すること。
【解決手段】軸体71の外周面に配置された管状弾性体7を研磨する方法であって軸体71の端面から10mm以内であって管状弾性体71cの端面から突出する軸体71の軸線長さに対して8〜21%の軸線長さの円筒状外周面17cをコレットチャック3で把持する工程と管状弾性体7を相対的に回転させる工程とコレットチャック3の周辺環境を調整することなく管状弾性体7の外周面を砥石4で研磨する工程とを有する管状弾性体7の研磨方法、軸体71の外周面に管状弾性体7を配置してローラ原体6を作製する工程と管状弾性体7の研磨方法で管状弾性体7を研磨する工程とを有する弾性ローラの製造方法、並びに、この製造方法で製造された振れ精度が0.10mm以下の弾性ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管状弾性体の研磨方法、弾性ローラの製造方法及び弾性ローラに関し、さらに詳しくは、管状弾性体を軸体に対して高い振れ精度となるように研磨できる管状弾性体の研磨方法、並びに、軸体に対して振れ精度が高い弾性層を有する弾性ローラ及びこの弾性ローラを製造できる弾性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター、複写機、ビデオプリンター、ファクシミリ、これらの複合機等には電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。各種の画像形成装置は、例えば、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、定着ローラ、紙送り搬送ローラ、現像剤供給ローラ等の弾性ローラが装着されている。これらの弾性ローラは、通常、軸体と、軸体の外周面に配置された弾性層とを備えている。
【0003】
これらの弾性ローラは、一般に、軸体の外周面でゴム組成物を成形して管状弾性体を有するローラ原体を作製し、ローラ原体の管状弾性体を研磨することによって、製造される。具体的には、図6に示されるように、作製したローラ原体6の軸体71の端部を例えば図5に示されるコレットチャック50で把持して、ローラ原体6を回転させつつその管状弾性体7の外周面を砥石で研磨することによって、弾性ローラを製造することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、「両端から棒状部材が突出したゴムローラを、前記棒状部材の両端部を保持して回転させながら、前記ゴムローラの周面を研削する方法において、前記棒状部材の少なくとも一方の端部を保持するために、前記端部が挿入される挿入口が設けられたカバーで全体が覆われたコレットチャックを用意する工程と、前記棒状部材の端部を前記挿入口から挿入して前記コレットチャックに保持させる工程と、前記カバーの内部を正圧状態とする工程と、前記コレットチャックの内部から、前記棒状部材の端部を保持している部分に向けて空気を噴出させる工程と、前記カバーの内部が正圧状態とされ、かつ、前記コレットチャックの内部から空気が噴出されている状態で、前記ゴムローラを回転させ、前記ゴムローラの周面を研削する工程とを有することを特徴とする、ゴムローラの研削方法」が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、「芯軸の周囲にゴム部を設けたゴムロールの前記ゴム部の外周面を、前記ゴム部の長さよりも広巾の研削砥石を有する研削機を用いて該研削砥石の前記ゴムロールの半径方向への相対移動によって研削して仕上げるゴムロールの製造方法であって、前記研削機に、向き合うコレットチャックを設けて前記芯軸の両端部を該コレットチャックにより把持し、かつコレットチャックの一方を回転駆動することにより回転する前記ゴムロールの前記ゴム部の外周面を、前記研削砥石を、前記芯軸に対して半径方向に15〜25mm/分の第1の前進速度V1で押進させて研削する予備研削ステップと、前記研削砥石を、前記第1の前進速度V1よりも低速の第2の前進速度V2で押進させて研削する中間研削ステップと、前記研削砥石を、前記第2の前進速度V2よりも低速の第3の前進速度V3で押進させて研削する仕上げ研削ステップと、前記研削砥石の前進移動を、前記仕上げ研削ステップの最終位置で停止させた状態で保持する無花火研削ステップとを含む研削ステップをへて研削することを特徴とするゴムロールの製造方法」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−254220号公報
【特許文献2】特開2004−195606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像形成装置に装着される弾性ローラにおいて、弾性層は軸体に対して円周方向の振れが小さいことが要求され、特に高精細化、高速化等が図られている近年の画像形成装置に装着される弾性ローラには円周方向の高い振れ精度が要求されている。
【0008】
ところが、ローラ原体における軸体の両端部をコレットチャックで把持する従来の製造方法においては、弾性層を軸体に対して高い振れ精度で形成することができず、特に軸体の軸線がわずかに偏心している場合又は公差範囲内で軸体の寸法がばらついている場合には軸体に対して高い振れ精度の弾性層を形成できないことがあった。さらに、端部に面取部を有する軸体を用いる場合にも、やはり、軸体に対して高い振れ精度の弾性層を形成できないことがあった。
【0009】
したがって、この発明は、管状弾性体を軸体に対して高い振れ精度となるように研磨できる管状弾性体の研磨方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、この発明は、軸体に対する円周方向の振れ精度(以下、単に「振れ精度」と称することがある。)が高い弾性層を有する弾性ローラを製造できる弾性ローラの製造方法、及び、振れ精度が高い弾性層を有する弾性ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の発明者らは、研磨工程と弾性ローラの振れ精度との関係を検討したところ、コレットチャックに把持してローラ原体の管状弾性体を研磨した状態では研磨後の弾性層はコレットチャックに把持された軸体に対して高い振れ精度を有しているのに対してコレットチャックから取り外すと弾性ローラの弾性層は振れ精度が悪化することを見出した。
【0012】
このようなコレットチャックの把持前後における振れ精度の変化について、この発明の発明者らは、弾性層の振れ精度を向上させるために、コレットチャックによる軸体の把持を強固にし、又はコレットチャックによる軸体の把持量を多くする場合、特に軸体の両端部をコレットチャックで把持する場合に、軸線がわずかに偏心している軸体、寸法がばらついている軸体及び/又は端部に面取部を有する軸体を用いると、さらに被把持部に異物の付着又は傷がついている軸体を用いると、把持されていない状態にある軸体の形状及び軸線に対して形状及び/又は軸線が大きく逸脱するほど強制的に軸体をコレットチャックで把持してしまうことにあるのではないかと、推測した。
【0013】
この発明の発明者らは、この推測に基づいて、弾性層の振れ精度を向上させるために、コレットチャックによる軸体の把持を強固にし、又は軸体の把持量を多くし、さらに両端部を把持するという常識に反して、コレットチャックによる軸体の把持位置を特定すると共に把持量を低減することによって、高い振れ精度の弾性層となるようにローラ原体の管状弾性体を研磨できることを見出した。
【0014】
すなわち、前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体の外周面に配置された管状弾性体の外周面を研磨する管状弾性体の研磨方法であって、前記軸体の少なくとも一方の端部の端面から10mm以内であって前記管状弾性体の端面から突出する前記軸体の軸線長さに対して8〜21%の軸線長さの円筒状外周面をコレットチャックで把持する工程と、前記管状弾性体を相対的に回転させる工程と、前記コレットチャックの周辺環境を調整することなく前記管状弾性体の外周面を砥石で研磨する工程とを有する管状弾性体の研磨方法であり、
請求項2は、前記軸体は両端部に面取り加工された面取部を有する請求項1に記載の管状弾性体の研磨方法であり、
請求項3は、前記把持する工程は前記軸体の両端部それぞれを前記コレットチャックで把持する請求項1又は2に記載の管状弾性体の研磨方法であり、
請求項4は、前記把持する工程は前記軸体の一方の端部を前記コレットチャックで把持し、前記軸体の他方の端部を芯押し台に押圧して保持する請求項1又は2に記載の管状弾性体の研磨方法であり、
請求項5は、軸体の外周面に配置された弾性層を備えた弾性ローラを製造する弾性ローラの製造方法であって、前記軸体の外周面に管状弾性体を配置してローラ原体を作製する工程と、前記管状弾性体を請求項1〜4のいずれか1項に記載の管状弾性体の研磨方法で研磨する工程とを有する弾性ローラの製造方法であり、
請求項6は、請求項5に記載の弾性ローラの製造方法によって製造され、円周方向の振れ精度が0.10mm以下である弾性ローラである。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る管状弾性体の研磨方法は、軸体の少なくとも一方の端部の端面から10mm以内であって管状弾性体の端面から突出する前記軸体の軸線長さに対して8〜21%の軸線長さの円筒状外周面をコレットチャックで把持する工程と、管状弾性体を相対的に回転させる工程と、コレットチャック周辺環境を常圧として管状弾性体の外周面を砥石で研磨する工程とを有しているから、管状弾性体を高い振れ精度となるように研磨できる。このように、この発明に係る管状弾性体の研磨方法によれば振れ精度が高い弾性層を形成できる。
【0016】
この発明に係る弾性ローラの製造方法はこの発明に係る管状弾性体の研磨方法で管状弾性体を研磨する工程を有しているから振れ精度が高い弾性層を有する弾性ローラを製造できる。
【0017】
この発明に係る弾性ローラはこの発明に係る弾性ローラの製造方法によって製造されるから振れ精度が高い弾性層を有している。
【0018】
したがって、この発明によれば、管状弾性体を高い振れ精度となるように研磨できる管状弾性体の研磨方法、振れ精度が高い弾性層を有する弾性ローラを製造できる弾性ローラの製造方法、及び、振れ精度が高い弾性層を有する弾性ローラをそれぞれ提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、この発明に係る管状弾性体の研磨方法及びこの発明に係る弾性ローラの製造方法に好適に用いられるコレットチャックの一例を示す要部拡大断面図である。
【図2】図2は、この発明に係る管状弾性体の研磨方法及びこの発明に係る弾性ローラの製造方法に好適に用いられるコレットチャックの一例に軸体を把持させた状態を示す要部拡大断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る管状弾性体の研磨方法及びこの発明に係る弾性ローラの製造方法に好適に用いられる研磨装置にローラ原体を把持した状態を示す概略説明図である。
【図4】図4は、この発明に係る弾性ローラの製造方法によって製造される弾性ローラの一例を示す概略断面図である。
【図5】図5は、従来のコレットチャックを示す要部拡大断面図である。
【図6】図6は、従来のコレットチャックに軸体を把持させた状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る弾性ローラについて説明する。この発明に係るローラは、この発明に係る管状弾性体の研磨方法を必須工程として有するこの発明に係る弾性ローラの製造方法によって製造される。この発明に係る弾性ローラは軸体の外周面に弾性層が配置されたローラであればよく、軸体及び弾性層の他に例えば接着剤層又はプライマー層、表面層等を備えていてもよい。
【0021】
この発明に係る弾性ローラは、高い振れ精度を有しており、例えば0.10mm以下、好ましくは0.03mm以下の振れ精度を有している。振れ精度の下限値は、理想的にはゼロであるが、現実的には0.02mmである。ここで、振れ精度とは、軸体と弾性層との同心度を示す精度であって、換言すると、弾性層の円周方向における厚さの均一性すなわち厚さの振れを示す精度である。弾性ローラの振れは、弾性ローラを軸体の中心軸を中心として30rpmの回転速度で回転させながら、レーザー測長機、例えば、商品名「Laser Scan Micrometer」(MITUTOYO製 Lsm−600)を用いて弾性ローラの外径を測定することによって、算出できる。
【0022】
この発明に係る弾性ローラの一例を図面に基づいて説明する。この一例としての弾性ローラ70は、図4に示されるように、軸体71と弾性層72とを備えている。
【0023】
軸体71は、図4に示されるように、基本的には従来公知の弾性ローラにおける軸体と同様である。この軸体71は、後述するコレットチャックで把持される円筒状外周面71cと面取部71aとを有している。具体的には、この軸体71は一方向に延在する棒状体であって、管状弾性体7すなわち弾性層72が形成される弾性層形成領域よりも両端部側に配置された軸線方向に均一な外径を有する円筒状外周面71cと、両端部それぞれに配置された面取部71aとを有している。この弾性層形成領域は軸線方向に均一な外径を有している。
【0024】
面取部71aは、通常、軸体71の各端部に向かって平坦で外径が徐々に小さくなる環状テーパ面71bすなわちC面又は環状の湾曲面すなわちR面となっており、この例においては環状のテーパ面71bとなっている。この環状のテーパ面71bは錐台状外周面ということもできる。この面取部71aはC面取り加工又はR面取り加工(丸み面取り加工)等の面取り加工によって形成されている。面取部71aにおいて軸体71の軸線に垂直な平面に対する面取部71aの傾斜角(面取り角とも称する。)は0°を超え90°以下の範囲内にあり、好ましくは15〜75°の範囲内にある。この面取部71aの軸線方向の長さは例えば0.5〜2mm(C面取り部である場合には「C0.5〜2」)とすることができる。
【0025】
円筒状外周面71cは、後述する管状弾性体としての弾性層72の端面それぞれから自身の軸線方向に突出した、軸体71の端部それぞれの外周面であり、軸体71が面取部71aを有している場合には面取部71aを含まない領域であって弾性層形成領域と面取部71aとの間に存在している。この円筒状外周面71cは連続する弾性層形成領域と同一の外径と、後述するコレットチャックにおける把持面19の軸線長さ以上の軸線長さとを有している。
【0026】
軸体71は、少なくとも後述するコレットチャックで保持される円筒状外周面71cに面取り加工時に発生するバリ等の突起、傷等がないのがよいが、この発明において、コレットチャックで保持されない領域、例えば面取部71a及びその近傍にバリ等の突起、傷等が存在していても軸体71に対する振れ精度が高い弾性層72を形成できる。この軸体71の寸法公差は通常0.03mm以下である。
【0027】
軸体71は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体であり、良好な導電特性を有している。軸体71は熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよい。
【0028】
この発明において、軸体は、図4に示されるようにその両端部に面取部を有している軸体であってもよく、その両端部に前記傾斜角が0°で面取部を有しない軸線方向に均一な外径を有する軸体であってもよく、少なくとも一方の端部に弾性層が形成される弾性層形成領域よりも細径のジャーナル部を有する軸体であってもよく、また少なくとも弾性層形成領域が所謂「クラウン形状」又は所謂「逆クラウン形状」となるように漸次増大又は減少する外径を有する軸体であってもよい。
【0029】
弾性層72は、軸体71に対する振れ精度が高いこと以外は従来公知の弾性ローラにおける弾性層と基本的に同様である。この弾性層72は、軸体71の外周面で後述するゴム成物を硬化して成る弾性を有する層である。この弾性層72は、用途等に応じて、スポンジ体で形成された「発泡弾性層」であっても中実の所謂「ソリッド弾性層」であってもよく、適宜の硬度、電気抵抗及び厚さ等に調整される。弾性層72の厚さは通常1〜30mmであるのが好ましく、5〜20mmであるのがより好ましい。
【0030】
弾性層72の形態は特に限定されず、例えば、図4に示されるように軸線方向にわたって均一な外径に調整された所謂「ストレート形状」でもよく、また中央部における外径がその両端部における外径よりも大きくなるように調整された所謂「クラウン形状」であってもよく、さらに中央部における外径がその両端部における外径よりも小さくなるように調整された所謂「逆クラウン形状」であってもよい。
【0031】
この発明に係る弾性ローラは、高い振れ精度を有しているから、画像形成装置等に装着されるいずれの弾性ローラとしても好適に用いられるが、特に画像形成装置によって形成される画像品質に大きな影響を与える、現像ローラ、現像剤供給ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、転写ローラ、クリーニングローラ等として好適に用いられる。
【0032】
この発明に係る管状弾性体の研磨方法及びこの発明に係る弾性ローラの製造方法に好適に使用される研磨装置及びコレットチャックについて説明する。この研磨装置1は、図3に示されるように、図示しない主軸台と、主軸台上に互いに対向するように配置された2つ一組のコレットチャック3と、主軸台上に配置され、コレットチャック3の一方を回転駆動させる駆動手段2と、コレットチャック3に把持されたローラ原体6に対して並行に前後進可能に配置され、ローラ原体6を研磨する砥石4とを備えている。駆動手段2はコレットチャック3を回転駆動させることができれば特に限定されず、例えば、各種モータ等が挙げられる。
【0033】
砥石4は、その砥石幅が研磨対象とされるローラ原体6の管状弾性体7よりも軸線長さが長くなっており、この研磨装置1は所謂「プランジ式研磨装置」である。この所謂「プランジ式研磨装置」は研磨時に軸体71に与える負荷が比較的大きく振れ精度が低下する可能性がある。しかし、軸体の端部全体を保持する従来の保持方法とは異なる、軸体71の特に狭い範囲を把持するこの発明に係る管状弾性体の研磨方法及びこの発明に係る弾性ローラの製造方法によれば、軸体71とコレットチャック3との干渉を少なくできるので振れ精度の低下を防止できる。
【0034】
砥石4は、管状弾性体7を研磨加工することができればよく、例えば、砥粒のない砥石であっても砥粒が結合剤等で結合されて成る砥石であってもよい。砥石4及び砥粒は、管状弾性体7の研磨加工に要求される寸法精度及び表面精度等に応じて、粒度、材質、硬度及び形状等が任意に調整される。例えば、砥石4及び砥粒の材質は、炭化ケイ素(カーボンランダム)、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、アルミナ、ナイロン、立方晶窒化ホウ素(CBN)等が挙げられる。砥石4又は砥粒の粒度は、例えば10〜80μm程度であるのが好ましく、20〜70μm程度であるのがより好ましく、30〜45μm程度であるのが特に好ましい。砥粒の形状は、例えば、球状、不定形、平形、皿形等が挙げられ、球状であるのが好ましい。このような砥石4又は砥粒は、適宜調製することもでき、また、市販品を使用することもできる。例えば、JIS R 6215(1999)「ゴム切断砥石」及びJIS R 6001(1998)「研削砥石用研磨剤の粒度」に規定された砥石又は砥粒を任意に選択して使用することができる。より具体的には、例えば、「GC 精密研磨用微粉」(例えば、株式会社マブチ・エスアンドティー製)が挙げられる。
【0035】
コレットチャック3は、図3に示されるように、研磨装置1の図示しない主軸台に、互いに対向するように配置されており、その把持部18(図1及び図2参照。)が異なること以外は従来公知のコレットチャックと基本的に同様である。コレットチャック3は、図3に示されるように、その一方が駆動手段2に接続されて回転駆動可能に軸支され、他方は主軸台上に従動回転可能に軸支されている。一組のコレットチャック3は、図1及び図2に示されるように、後述するコレット爪15の把持面19が軸体71の円筒状外周面71cのうち端面から10mm以内の領域を把持するように間隔をおいて軸線を共有するように配置されている。
【0036】
コレットチャック3は、図1及び図2に示されるように、自由端が開口した円筒状の本体11と、本体11に対して相対的にその軸線方向に移動可能となるように本体11内に配置されたコレット12と、コレット12に対して相対的にその軸線方向に移動可能となるようにコレット12内に配置された中軸13とを有している。本体11及び中軸13は従来公知のコレットチャックにおける本体及び中軸と基本的に同様である。例えば、本体11は、その軸線方向に前後進可能に配置されており、その開口部内面に開口部に向かって内径が徐々に大きくなる環状内面14を有している。この環状内面14は本体11の前進によってコレット12の後述する環状外面17に圧接して把持穴16の径を縮小させる。中軸13は、コレット12の把持穴16内に配置されており、把持穴16内に挿入された軸体71の端面に当接して軸体71を位置決めすると共に軸体71の把持を補助する。この中軸13は図示しない弾性体例えばコイルバネ等によって本体11の開口部側に付勢されており、この付勢力に反して開口部側から内部側に押込み可能になっている。
【0037】
コレット12は、把持部18すなわち軸体71を保持する部分が調整されている点を除いて従来公知のコレットチャックと基本的に同様であり、図示しない基部で互いに連結され、軸線視したときの中心角が90°未満の円弧状に形成された複数例えば4つのコレット爪15を備え、これらのコレット爪15によって軸体71を把持する把持穴16が軸線上に軸孔として形成されている。このコレット爪15それぞれはその自由端すなわち本体11の開口部側の外周面が徐々に大きくなる環状外面17が環状内面14に接触するように形成されている。コレット爪15それぞれは、図1及び図2に示されるように、自由端側に軸体71の円筒状外周面71cを把持する内径の小さな把持部18、すなわち、自由端側の内周面に軸線方向に突出する把持部18を有している。コレット爪15の把持部18の基部側は把持部18よりも内径が大きくなっている。把持部18は円筒状外周面71cをその外周面から均一に把持できるように軸線視円弧状の把持面19を有している。この把持面19の軸線方向長さは把持するローラ原体6の管状弾性体7の端面から突出する軸体71の軸線長さに対して8〜21%の軸線長さとなるように設定されている。
【0038】
この発明に係る管状弾性体の研磨方法及びこの発明に係る弾性ローラの製造方法に好適に使用される研磨装置1及びコレットチャック3について説明したが、この発明に係る管状弾性体の研磨方法及びこの発明に係る弾性ローラの製造方法に使用される研磨装置及びコレットチャックは、軸体の特定の円筒状外周面を保持できれば研磨装置1及びコレットチャック3に限定されず、従来公知の各種研磨装置及びコレットチャックを用いることができる。
【0039】
この発明に係る管状弾性体の研磨方法は、軸体の少なくとも一方の端部の端面から10mm以内であって管状弾性体の端面から突出する軸体の軸線長さに対して8〜21%の軸線長さの円筒状外周面をコレットチャックで把持する工程と、管状弾性体を相対的に回転させる工程と、コレットチャック周辺環境を調整することなく管状弾性体の外周面を砥石で研磨する工程を有している。また、この発明に係る弾性ローラの製造方法は、軸体の外周面に弾管状性体を配置してローラ原体を作製する工程と、この発明に係る管状弾性体の研磨方法で管状弾性体を研磨する工程とを有している。
【0040】
この発明に係る管状弾性体の研磨方法をこの発明に係る弾性ローラの製造方法と共に、図1〜図3に示される研磨装置1を用いて図4に示される弾性ローラ70を製造する例(以下、一製造方法と称する。)を挙げて具体的に説明する。この弾性ローラ70は前記した通りである。
【0041】
この一製造方法においては、まず、軸体71を準備する。軸体71は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。この軸体71は、少なくとも後述する弾性層72が形成される弾性層形成領域及び円筒状外周面71cが軸線方向に均一な外径を有する一方向に延在する棒状体の両端部にC面取り加工を施して面取部71aを形成して、作製される。このとき、面取部71a近傍にはC面取り加工時のバリ等の突起等を除去してもしなくてもよい。このようにして作製した軸体71は、所望により、例えば0.1〜10μmの厚さのプライマー層を形成するため、外周面に従来公知のプライマーが塗布されてもよい。
【0042】
この一製造方法においては、次いで、軸体71の外周面に後述するゴム組成物を硬化して、軸体71の外周面に配置された管状弾性体7を有するローラ原体6を作製する工程を実施する。このようなローラ原体6は公知の方法によって作製できる。例えば、まず、軸体71の外周面にゴム組成物を配置する。その方法としては、ゴム組成物に応じて適宜に選択され、例えば、押出機等により軸体71とゴム組成物とを一体に分出する方法、また軸体71を収納する金型にゴム組成物を注入する方法等が挙げられる。これらの中でも、押出機等により軸体71とゴム組成物とを一体に分出しする方法が、作業が容易で作業を連続して行うことができる点で、好ましい。このようにして軸体71の外周面にゴム組成物を配置した後、この状態を維持しつつ軸体71ごとゴム組成物を加熱する。ゴム組成物の加熱は、通常、赤外線加熱炉又は熱風炉等の加熱炉、乾燥機等の加熱機等により、ゴム組成物に含まれるゴム又は樹脂が架橋するのに十分な条件で行われればよい。このようにして軸体71の外周面に配置された管状弾性体7を有するローラ原体6が作製される。
【0043】
この一製造方法においては、次いで、作製したローラ原体6における軸体71の両端部それぞれの円筒状外周面71cを端面から10mm以内であって管状弾性体7の端面から突出する軸体71の軸線長さに対して8〜21%の軸線長さとなるようにコレットチャック3で把持する工程を実施する。具体的には、図2及び図3に示されるように、軸体71における両端部それぞれをコレットチャック3の把持穴16に挿入して、本体11を開口部側に移動させる。そうすると、図2に示されるように、コレット爪15の環状外面17が本体11の環状内面14で押圧され、軸体71が挿入された把持穴16が縮径して、コレット爪15それぞれの把持面19が軸体71の円筒状外周面71cそれぞれに軸線に向かって圧接する。なお、このとき、軸体71は、図2に示されるように、軸体71の両端部が中軸13に当接して軸線方向に位置決めされると共にコレットチャック3による把持状態が補助されている。このようにして軸体71の両端部それぞれをコレットチャック3で把持すると、研磨装置1、特にコレットチャック3は前記のように構成されているから、軸体71は、管状弾性体7の端面それぞれから突出する円筒状外周面71cの両端部それぞれにおいて、端面から10mm以内の領域であって管状弾性体7の端面から突出する軸体71の軸線長さに対して8〜21%の軸線長さの領域がコレット爪15の把持面19で把持されて、研磨装置1に保持される。
【0044】
このように、円筒状外周面71cにおいて軸体71の端面から10mm以内の領域を把持位置としてコレットチャック3で把持すると、同様に10mmを超えて把持したときに生じる「振れ精度が低下するという問題」を回避でき、把持位置を「10mm以内」にすることに臨界的意義がある。この問題を効果的に発生させない点で、コレットチャック3で把持される領域は軸体71の端面から5mm以内であるのが好ましい。なお、コレットチャック3で把持される領域の端面からの最小距離はコレットチャック3で把持できれば特に限定されないが、現実的には1mm程度であり、軸体71が面取部71aを有している場合には面取部71aよりも管状弾性体7側である。
【0045】
また、円筒状外周面71cにおいて、ローラ原体6の管状弾性体7の端面から突出する軸体71の軸線長さに対して8%未満の軸線長さを有する領域をコレットチャック3で把持すると研磨時に軸体71の空転や振れ精度が低下するという問題が生じることがあり、一方、前記軸線長さに対して21%を超える軸線長さを有する領域をコレットチャック3で把持すると振れ精度が低下するという問題が生じることがある。このように、振れ精度を高めるために把持量を多くするのが望ましいという従来の技術常識に反してこの技術常識よりも低減された把持量すなわち前記軸線長さに対して8〜21%にすると、前記問題を回避でき、その把持量に臨界的意義がある。これらの問題を効果的に発生させない点でコレットチャック3によって把持される領域は管状弾性体7の端面から突出する軸体71の軸線長さに対して8.5〜12.5%の領域であるのが好ましい。この発明において、円筒状外周面71cの把持幅は前記範囲内にあればよいが、具体的には、円筒状外周面71cの把持幅は1〜5mmであるのが好ましく、2〜3mmであるのが特に好ましい。
【0046】
このように軸体71の円筒状外周面71cをコレットチャック3で把持すると、軸体71の軸線がわずかに偏心している場合、軸体71の寸法がばらついている場合及び面取部71aにバリ等の突起が存在する場合においても、さらに軸体71の両端部それぞれをコレットチャック3で把持した場合においても、軸体71は把持されていない状態にある軸体71の形状及び軸線とほぼ一致する状態で研磨装置1すなわちコレットチャック3に把持される。
【0047】
この一製造方法においては、次いで、管状弾性体7すなわちローラ原体6を回転させる工程を実施する。この回転させる工程は駆動手段2を駆動させて軸体71を把持したコレットチャック3を回転させることで実施される。このとき、管状弾性体7を研磨する際の回転数は研磨する管状弾性体7及び研磨量等に応じて適宜に設定されればよく、例えば70〜400rpmに設定される。この一製造方法においては、管状弾性体を回転させる工程として管状弾性体を回転させているが、管状弾性体を固定し砥石を回転させてもよく、管状弾性体及び砥石の両方を回転されてもよい。
【0048】
この一製造方法においては、次いで、コレットチャック3の周辺環境を調整することなく管状弾性体7の外周面を砥石4で研磨する工程を実施する。この研磨する工程は、コレットチャック3の周辺環境を研磨時に調整することなく、すなわち、研磨装置1が配置された周辺環境下、例えば常圧環境下で、前記回転させる工程中に、実施される。換言すると、コレットチャック3の周辺を陽圧すなわち加圧することなく、コレット爪15が大気中に露出した状態で実施される。なお、研磨する工程における「研磨」は「研削」、「切削」等の表面処理工程を含む概念である。
【0049】
研磨する工程においては、砥石4をローラ原体6に向けて略並行となるように相対的に移動させて管状弾性体7に圧接する。このとき、砥石4の管状弾性体7への圧接圧は研磨する管状弾性体7及び研磨量等に応じて適宜に設定される。この工程において、砥石4は、不動であってもよく、それ自体が回転されてもよい。砥石4を回転させる場合には、砥石4の回転数は研磨する管状弾性体7及び研磨量等に応じて適宜に設定されればよく、例えば1500〜4500rpmに設定され、砥石4の回転方向は管状弾性体7の回転方向と同方向でも逆方向でもよく、研磨効率に優れる点で逆方向であるのが好ましい。
【0050】
このようにして、管状弾性体7をその軸線方向全体にわたって一挙に研磨するこの発明に係る管状弾性体の研磨方法の一例が実施され、弾性ローラ70が製造されるこの発明に係る弾性ローラの製造方法の一例である一製造方法が実施される。
【0051】
この一製造方法において、前記のようにして研磨工程を実施すると、把持する工程において軸体71の寸法及び形状精度並びに把持数にかかわらず、把持されていない状態にある軸体71の形状及び軸線とほぼ一致する状態で研磨装置1すなわちコレットチャック3に軸体71が把持されているから、研磨装置1すなわちコレットチャック3から軸体71を取り外したときの振れ精度が高くなるように管状弾性体7を研磨できる。したがって、この発明に係る管状弾性体の研磨方法によれば管状弾性体を高い振れ精度となるように研磨でき、軸体71に対する振れ精度が高い弾性層を形成できる。また、この発明に係る弾性ローラの製造方法によれば、軸体71に対する振れ精度が高い弾性層72を有する弾性ローラ70を製造できる。また、この発明に係る管状弾性体の研磨方法及びこの発明に係る弾性ローラの製造方法においては研磨装置1すなわちコレットチャック3の周辺環境を調整する必要がないから、研磨する工程を簡潔かつ作業性よく実施でき、従来の研磨方法、例えば特許文献1に記載の「ゴムローラの研削方法」よりも簡潔であるにもかかわらず同等以上の高い振れ精度を実現できる。
【0052】
この発明に係る管状弾性体の研磨方法及びこの発明に係る弾性ローラの製造方法は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記一製造方法においては、軸体5の両端部をコレットチャック3で把持しているが、この発明において、軸体はその両端部の少なくとも一方をコレットチャックで前記したように前記把持量で把持していればよく、例えば、軸体の一方の端部をコレットチャックで前記したように把持し、他方の端部特にその端面を例えば内径が徐々に小さくなる円錐状凹部を有する芯押し台に押圧して保持してもよい。
【0053】
前記一製造方法においては、「プランジ式研磨装置」を用いてローラ原体6の管状弾性体7を一挙に研磨しているが、この発明においては、軸線長さが研磨対象とされるローラ原体の管状弾性体よりも短い砥石を備えた所謂「トラバース式研磨装置」を用いて、砥石をローラ原体の管状弾性体に圧接すると共に軸線方向に移動して管状弾性体を研磨してもよい。このとき、砥石は軸線方向に片道移動されても、一往復移動されても、また複数往復移動されてもよい。
【0054】
前記一製造方法においては、両端部に面取部71aを有する軸体71を用いているが、この発明においては、面取部のない軸体を用いることもできる。
【0055】
前記一製造方法は、管状弾性体7を研磨する工程を有しているが、この発明においては、この研磨する工程に加えて、所望により、弾性層の外周面で樹脂組成物を硬化してコート層を形成する工程を有していてもよい。この工程は、例えば、弾性層の表面に定法に従って樹脂組成物を塗工し、加熱硬化させることにより、実施される。
【0056】
前記一製造方法においては、軸体71をコレットチャック3で把持して研磨する工程を実施しているが、この発明において、軸体をコレットチャックで把持すると共に、コレットチャックの周辺圧力が大きく変化しない程度にコレットチャックの基部側から軸線方向に空気を流通させつつ研磨してもよい。このように空気を流通させつつ研磨すると研磨カス等がコレットチャック内に侵入することを防止できる。このような空気を流通させる機構は従来公知の研磨装置と同様に構成できる。
【0057】
この発明に係る弾性ローラは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、弾性ローラ70は面取部71aを有する軸体71と弾性層72とを備えているが、この発明において、弾性ローラは、面取部のない軸体を備えていてもよく、また弾性層の外周面に配置されたコート層を備えていてもよい。
【実施例】
【0058】
(実施例1)
SUM22鋼からなる直径5.95mm、長さ281.5mmの棒状体の両端部それぞれをC面取り加工して軸線方向の長さ1mm(C1)で傾斜角が45°の面取部71aを形成した。この棒状体の外周面を無電解ニッケルメッキ処理した後、トルエンで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した棒状体を、ギヤオーブンを用いて150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却した。このようにして表面にプライマー層を有する軸体71を作製した。
【0059】
一方、メチルビニルシリコーン生ゴム(商品名「KE−78VBS」、信越化学工業株式会社製)100質量部と、ジメチルシリコーン生ゴム(商品名「KE−76VBS」、信越化学工業株式会社製)20質量部と、カーボンブラック(商品名「アサヒサーマル」、旭カーボン株式会社製)10質量部と、煙霧質シリカ系充填材(商品名「AEROSIL 20」、日本アエロジル株式会社製)15質量部と、白金触媒(商品名「C−19A」、信越化学工業株式会社製)0.5質量部と、ハイドロジェンポリシロキサン(商品名「C−19B」、信越化学工業株式会社製)2.0質量部とを混合し、加圧ニーダーで混練して、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を調製した。
【0060】
次いで、軸体71と付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物を押出機でクロスヘッドを使用して一体化して分出し、ギヤオーブン中で300℃、15分間加熱した。次いで、この状態のまま、ギヤオーブン中で200℃、4時間にわたって加熱して、二次硬化し、軸体71の外周面に外径23mm、軸線方向長さ234.5mmの管状弾性体7を有するローラ原体6を作製した。このローラ原体6において管状弾性体7の端面それぞれから突出する軸体71の軸線長さは23.5mmであった。
【0061】
軸線長さが2mmの把持面19をそれぞれ有する4つのコレット爪15で構成されるコレット12を備えた1組のコレットチャック3が主軸台に配置された研磨装置1を準備した。この研磨装置1は、外径305mm、軸線方向の長さが250mmである円柱状の砥石4(商品名「GC220HRV」、三井砥石株式会社製、材質は炭化ケイ素、結合剤はレジノイド、砥粒の形状は球状)を備えていた。
【0062】
次いで、準備した研磨装置1のコレットチャック3に、端面から10mm以内であって軸線方向長さが2.0mm(管状弾性体7の端面から突出する軸体71の軸線長さに対して8.5%)の円筒状外周面71cをそれぞれ把持させた後に、駆動手段2を駆動させてローラ原体6をその軸線を中心にして130rpmで回転させた。この状態でコレットチャック3の周辺環境を調整することなく大気圧下で砥石4をローラ原体6と逆方向に2800rpmで回転させつつ管状弾性体7の軸線方向全体にわたって圧接させて、管状弾性体7の外周面を研磨した。このときの管状弾性体7の研磨量は厚さ方向に0.25mmであった。このようにして弾性ローラを製造した。
【0063】
(実施例2)
コレット爪15における把持面19の軸線長さを4.5mm(前記軸線長さに対して19%)に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして弾性ローラを製造した。
【0064】
(実施例3)
研磨装置1のコレットチャック3の一方を、内径が徐々に小さくなる円錐状凹部(深さ10mm)を有する外径12mmの芯押し台に代えて、軸体71の一方の端部をコレットチャック3で前記のように2.0mm(前記軸線長さに対して8.5%)で把持し、他方の端部を押し台に押圧して保持したこと以外は実施例1と基本的に同様にして弾性ローラを製造した。
【0065】
(比較例1)
研磨装置1の2つのコレットチャック3それぞれを、図5に示されるコレットチャック50に変更してこのコレットチャック50で図6に示されるように軸体71の端面それぞれから5.5mmまでの領域全体(前記軸線長さに対して23.4%)を把持したこと以外は実施例1と基本的に同様にして弾性ローラを製造した。このコレットチャック50は、図6に示されるように、コレット爪51における把持部52の把持面53が軸体71の端面から15mmまでの領域全体を把持できる軸線長さを有していること以外は基本的にコレットチャック3と同様であり、コレットチャック3と同様の部材に同じ符号を付している。
【0066】
このようにして製造した各弾性ローラの振れ精度を前記のようにして測定した。その結果を第1表に表す。
【0067】
【表1】

【符号の説明】
【0068】
1 研磨装置
2 駆動手段
3、50 コレットチャック
4 砥石
6 ローラ原体
7 管状弾性体
11 本体
12 コレット
13 中軸
14 環状内面
15、51 コレット爪
16 把持穴
17 環状外面
18、52 把持部
19、53 把持面
70 弾性ローラ
71 軸体
71a 面取部
71b 環状テーパ面
71c 円筒状外周面
72 弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面に配置された管状弾性体の外周面を研磨する管状弾性体の研磨方法であって、
前記軸体の少なくとも一方の端部の端面から10mm以内であって前記管状弾性体の端面から突出する前記軸体の軸線長さに対して8〜21%の軸線長さの円筒状外周面をコレットチャックで把持する工程と、
前記管状弾性体を相対的に回転させる工程と、
前記コレットチャックの周辺環境を調整することなく前記管状弾性体の外周面を砥石で研磨する工程とを有する管状弾性体の研磨方法。
【請求項2】
前記軸体は、両端部に面取り加工された面取部を有する請求項1に記載の管状弾性体の研磨方法。
【請求項3】
前記把持する工程は、前記軸体の両端部それぞれを前記コレットチャックで把持する請求項1又は2に記載の管状弾性体の研磨方法。
【請求項4】
前記把持する工程は、前記軸体の一方の端部を前記コレットチャックで把持し、前記軸体の他方の端部を芯押し台に押圧して保持する請求項1又は2に記載の管状弾性体の研磨方法。
【請求項5】
軸体の外周面に配置された弾性層を備えた弾性ローラを製造する弾性ローラの製造方法であって、
前記軸体の外周面に管状弾性体を配置してローラ原体を作製する工程と、
前記管状弾性体を請求項1〜4のいずれか1項に記載の管状弾性体の研磨方法で研磨する工程とを有する弾性ローラの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の弾性ローラの製造方法によって製造され、円周方向の振れ精度が0.10mm以下である弾性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−52476(P2013−52476A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192779(P2011−192779)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】