説明

管球および封止部材

【課題】
気密容器の開口部の封止が容易、かつ、確実であるとともに、封止部材が構造簡単で、小形化できる管球およびこれに用いることのできる封止部材を提供する。
【解決手段】
管球は、開口部を備えた気密容器1と、気密容器1と同種の材料を主体とする絶縁層2aおよびこの絶縁層2aに接合した導電層2bを備えている多層構造の機能性傾斜材料からなり、導電層2bおよび絶縁層2aが同軸関係に積層し、かつ、絶縁層2aが外側で導電層2bが中心部に位置するように配置されて軸方向に延在しているとともに、導電層2bと絶縁層2aの接合部が両層を構成する物質の拡散によって混在する拡散接合層2cを形成していて、絶縁層2aの部位で気密容器2の開口部2aを封止している封止部材2と、気密容器2の内部に封装され、かつ、前記封止部材2の導電層2aを経由して気密容器1の外部から給電される封装部材3とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性傾斜材料からなる封止部材で封止された管球およびこれに用いることのできる封止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン電球や高圧放電ランプなどの管球類には、一般にモリブデン箔を封着金属箔として用いて封止する箔封止構造が従来から多用されている。しかしながら、封着金属箔における許容電流値の限界などの理由から、封着金属箔に代えて機能性傾斜材料を用いようとする試みがなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に用いられている機能性傾斜材料は、シリカ粉末のみ、およびシリカ粉末とモリブデン粉末の混合比を変えた複数の混合粉末をバインダーとともに筒状のプレス型内にシリカの含有量が順次減少するように投入し、プレスした後焼結して製作されている。そうして、完成した封止部材は、その一端面が導電性側端面であり、対向する他端面が非導電性側端面になっていて、タングステン製の電流導入棒が導電性側の部分で封止部材に気密に封着され、また非導電性側の部分でランプ容器に溶着されている。したがって、非導電性側端面すなわち絶縁層と導電層との間は、導電体の混合比を変えることによって熱膨張率を順次変化させた複数層の緩衝層を介在しており、これにより隣接する層の間の熱膨張率差を小さくして機能性傾斜材料にクラックが発生しないようにしている。
【0004】
また、物理的性質の異なる第1、第2の材料を混合する混合ステップと、第1、第2の材料の混合体から第1の材料を排出して、単一の層内で第1、第2の材料の存在割合を異ならせる排出ステップとを工程として含むことで、第1、第2の材料の存在割合が単一の層内で変化するようにした複合材料(傾斜材料)の製造方法も知られている(特許文献2参照。)。特許文献2の製造方法によれば、軸方向の中心部にMoリッチな部分と、Moリッチな部分の外側にSiOリッチな部分とを備えて同軸構造になった傾斜材料を得ることができる旨記載されている。また、得られた同軸構造の傾斜材料を用いた封止用キャップを放電灯の発光管の端部に設けた開口に嵌め込むことも記載されている。
【特許文献1】特開2001−210279号公報
【特許文献2】特開平10−219308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の機能性傾斜材料は、互いに隣接する層間の熱膨張率差を小さくしてクッラクが発生するのを回避するために、特許文献1に示すように配合比を順次変えた複数層の緩衝層を介在させた多層構造にしたり、特許文献2に示すように単一層であってもその内部の配合比が連続的に変化させた構造を採用したりする必要があった。このため、封止部材が大きくなったり、製造工程が複雑で製造コストが上昇したりするという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に示すように、多層構造を同軸関係に形成した場合、封止部材の軸方向の全長にわたる部分で封止することができるので、管球の封止が容易になる利点がある。しかしながら、管軸と直交する方向に同軸関係の傾斜構造を形成するために、封止部材の外径が大きくなってしまうという問題がある。このため、従来のこの種封止部材は、小形の管球や封止部を小さくしたい管球には適用することが困難である。
【0007】
本発明は、気密容器の開口部の封止が容易、かつ、確実であるとともに、封止部材が構造簡単で、小形化できる管球およびこれに用いることのできる封止部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の管球は、開口部を備えた気密容器と;気密容器と同種の材料を主体とする絶縁層およびこの絶縁層に直接または間接的に接合した導電層を備えている多層構造の機能性傾斜材料からなり、導電層および絶縁層が同軸関係に積層し、かつ、絶縁層が外側で導電層が中心部側に位置するように配置されて軸方向に延在しているとともに、各層の接合部が両層を構成する物質の拡散によって混在する拡散接合層を形成していて、絶縁層の部位で気密容器の開口部を封止している封止部材と;気密容器の内部に封装され、かつ、前記封止部材の導電層を経由して気密容器の外部から給電される封装部材と;を具備していることを特徴としている。
【0009】
次に、本発明における作用について説明する。すなわち、本発明において、管球用封止部材は、少なくとも絶縁絶縁層と導電層とを有する多層構造の機能性傾斜材料からなる。絶縁絶縁層と導電層との間に中間層が形成される場合、この中間層が2層または3層以上の多層構造であってもよい。中間層は、熱膨張率差を小さくしたり、強度を向上させたりするために用いることが可能であるが、中間層を用いると、封止部材の直径が大きくなるので、中間層はなるべく薄くするか、省略するのが好ましい。絶縁層と導電層が直接または間接的に接合した多層構造の機能性傾斜材料からなる。絶縁層と導電層の熱膨張率は、明らかに相違しているが、各層間の接合部に隣接する2層を構成する物質の拡散によって混在する拡散接合層が形成されているため、各層は、それらの熱膨張率の明らかな相違を克服して強固に接合する。なお、拡散接合層は、各層に比較して顕著に薄くなっているので、したがって封止部材は、基本的に拡散接合層を無視した多層構造と定義できる。
【0010】
また、封止部材は、絶縁層と導電層とを有する多層構造体が軸方向に同軸関係に形成されていて、かつ、絶縁層が外側で、導電層が中心部側に位置しているので、封止部材のほぼ全長にわたって気密容器に封止することができる。
【0011】
封止部材が中心部側に位置する導電層と外側に位置する絶縁層との2層構造で形成されている請求項2に係る発明によれば、所要の封止部長さを確保しながら封止部材の軸方向の寸法を短縮できる。また、2層構造も可能であるため、導電層の直径を所要の大きさにしながら封止部材全体の直径を小さくすることができる。封止部材の直径が小さいと、管球の開口部を小さくするのに効果的である。管球の開口部が小さいということは、その配光特性や外観が良好になったり、封止が容易になったりするので、利点が多い。
【0012】
したがって、以上の本発明によれば、封止部材を小形化できる。そのため、材料費も安価になる。
【0013】
さらに、封止部材の導電層に対して、管球の外部から給電部材であるリード部材を挿入したり、管球の内部において管球用封装部材を支持し、かつ、電気的に接続するために管球用封装部材、例えば管球が放電ランプであれば電極を、また白熱電球であれば白熱フィラメントの基端部を、それぞれ直接挿入したり、あるいはこれらの管球用封装部材を支持するための中間部材を挿入したりするのが一般的である。本発明によれば、封止部材が絶縁層と導電層の多層構造であるために、2層構造も可能であるから、上述のようにその所与の外径に対して導電層の直径を可及的に大きくすることができるので、上記挿入部材用の挿入孔を形成しやすくなり、その結果封止部材の挿入孔形成に伴うクラック発生の防止を図ることができる。
【0014】
上記封止部材を用いて気密容器の開口部を封止するには、封止部材を開口部に嵌め込んで両者を気密に固着すればよい。絶縁層が酸化ケイ素を主体とする場合であれば、両者を直接加熱処理して溶着すればよい。また、絶縁層が酸化アルミニウムを主体とする場合には、両者間に封着コンパウンドを挟んで加熱処理を行い、封着コンパウンドを加熱溶融し、固化させればよい。絶縁層の部分が封止部材のほぼ全長にわたって形成されているので、所望の封止長を得ることが可能になり、封止作業が容易で、しかも封止が確実になる。また、気密容器の開口部が封止の際に誤って導電層の部分に接合されるようなことをなくせるので、封止の際にクラックが発生しなくなる。
【0015】
気密容器の内部に封装した管球用封装部材に対する給電は、導電層の部分を介して管球の外部から給電することができる。例えば、上述したようにリード部材を導電層の外部側の端面から挿入したり、導電層のみを封止部材の一端側へいくらか突出させて、その突出部に給電体を巻き付けたり、キャップ状の給電部材で抱持したりすることができる。
【0016】
本発明によれば、上述したように封止部材が2層構造の機能性傾斜材料を主体として構成されているから、封止部材の構造が簡単で、製造工程を簡素化できて安価な管球を得ることができる。
【0017】
本発明および以下の各発明において、管球は、気密容器の内部に封装部材が気密に封装されている電気作動手段である。本発明によれば、各種用途に適応する管球を得ることができる。例えば、照明用管球であれば、ハロゲン電球、高圧放電ランプなどがこれに含まれる。また、非照明用管球であれば、例えば各種電子管などがこれに含まれる。
【0018】
気密容器は、開口を備えている。気密容器内への封装部材の収納の際に、開口の開口を経由させることができる。また、開口は、封止部材によって封止されることにより、気密容器の内部が気密になる。さらに、気密容器は、照明用管球の場合、金属酸化物または金属窒化物を主体として透光性に構成することができる。金属酸化物としては、例えばシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、イットリウム酸化物(YOX)およびイットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)などを用いることができる。金属窒化物としては、アルミニウム窒化物(AlN)などを用いることができる。以上の各物質は、いずれも透光性および耐熱性を備えた材料であり、多結晶体すなわちセラミックスまたは単結晶として得ることができる。また、非照明用管球の場合、気密容器は、透光性および非透光性のいずれであってもよい。
【0019】
封止部材の絶縁層は、気密容器の材料と同種の材料を主体として構成されている。同様に金属酸化物または金属窒化物を主体として構成されているので、気密容器とほぼ同じ熱膨張率である。これに対して、導電層は、少なくとも導電体として機能できる程度の導電性を有していて、熱膨張率が絶縁層のそれとは相対的に相違している。また、導電層は、絶縁層を構成するのと同一物質であることが好ましいところの金属酸化物または金属窒化物と導電性金属との混合体により構成されることを許容する。この場合、導電性金属は、導電層の約30質量%以上混合していれば、所要の導電性を示すことが実験により確認されている。しかし、要すれば、導電層は、実質的に導電性金属のみから構成されていてもよい。
【0020】
封装部材は、気密容器内に収納されて封止部材の導電層を介して気密容器外部から給電され、気密容器内で所望の電気的動作を行う部材である。例えば、ハロゲン電球の場合、封装部材は白熱フィラメントである。高圧放電ランプの場合、封装部材は放電電極である。
【0021】
封止部材は、導電層が軸の中心部に位置し、絶縁層が導電層の周りに同軸関係に配設された多層構造、例えば2層構造である。ただし、絶縁層と導電層とを焼結して形成するときに、それらの層の間に相対的に薄い拡散接合層が形成されている。この拡散接合層は、絶縁層と導電層の接合部位において両層を構成する物質の一部が拡散により移動して相手方の層内に達し、かつ、両層を構成する物質が混在する層を形成している。この拡散接合層は、その肉厚が一般的には0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mm、最適には1〜3mmの範囲内に形成されていることを許容する。しかし、絶縁層および導電層の厚さに対しては相対的に薄い層となっている。そうして、拡散接合層は、その肉厚が目視により確認することができる。
【0022】
さらに、本発明に用いる封止部材は、原料粉末の粒界を溶融制御して焼結することができる焼結法、例えば迅速焼結法によって形成することができる。また、迅速焼結法の中でも放電プラズマ焼結法が好適である。
【0023】
請求項2に係る発明の管球は、請求項1記載の管球において、封止部材は、中心部側に位置する導電層と外側に位置する絶縁層との2層構造で形成されていることを特徴としている。
【0024】
本発明は、多層構造の中でも特に好適な2層構造を規定している。
【0025】
請求項3に係る発明の管球は、請求項1または2記載の管球において、封止部材は、その導電層の一方の端面が気密容器の内部に露出し、他方の端面が気密容器の外部へ露出していることを特徴としている。
【0026】
本発明は、請求項1に係る発明における好適な構成を規定している。すなわち、封止部材の導電層の両端面が封止部材の端面に露出しているので、管球の気密容器の内部にあっては導電層の封装部材に対する導通を、また気密容器の外部にあっては導電層の給電部材に対する導通をとる際に、それぞれ多様な態様を任意所望に応じて適宜選択して採用することが可能になる。例えば、封装部材またはその支持のための中間部材の基端を導電層の気密容器内に露出する端面に溶接したり、圧接したり、導電層の端面からその内部に向かって形成した挿入孔に挿入したりすることができる。同様に、気密容器の外部に露出する導電層の端面に給電部材を溶接、圧接および挿入などを選択的に採用することができる。
【0027】
また、封止部材の導電層の端面は、絶縁層の端面とほぼ面一になっていてもよいし、絶縁層の端面に対して突出していてもよいし、凹陥していてもよい。突出している場合には、例えば導電層の突出部分を給電部材で抱持することもできる。
【0028】
さらに、導電層の端面に封装部材や給電部材を挿入するための挿入孔を形成する場合、端面が露出しているので、挿入孔の深さを所望に、しかも正確に設定しやすくなる。
【0029】
そうして、本発明においては、導電層の端面が気密容器の内部および外部において露出していることによって、封装部材や給電部材と導電層の接続に際して、上述したように多様な態様の採用を許容する。
【0030】
請求項4に係る発明の封止部材は、絶縁層およびこの絶縁層に直接または間接的に接合した導電層を備えている多層構造の機能性傾斜材料からなり、導電層および絶縁層が同軸関係に積層し、かつ、絶縁層が外側で導電層が中心部側に位置するように配置されて軸方向に延在しているとともに、各層の接合部が両層を構成する物質が拡散によって混在する拡散接合層を形成していることを特徴としている。
【0031】
本発明は、請求項1に係る発明の管球に用いることのできる封止部材の構成を規定している。また、本発明の封止部材は、請求項1ないし3に係る発明において説明した構成であることを許容する。しかし、封止部材は、管球以外の部材の封止に用いることを許容する。
【0032】
そうして、本発明においては、封止部材が構造簡単で、小形化できるとともに、気密容器の開口部などの封止が容易、かつ、確実になる。
【0033】
請求項5に係る発明の封止部材は、請求項4記載の封止部材において、絶縁層は、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを主体としており;導電層は、絶縁層の材料と同様の材料に30質量%以上の割合で混合された耐火性導電金属材料を含んでいる;ことを特徴としている。
【0034】
本発明において、導電層は、絶縁層の材料と同様の材料を用いることを規定しているが、これは全く同一の材料ばかりでなく、同一の材料を主体としていればよいという意味である。
【0035】
絶縁層が酸化ケイ素を主体とする場合には、石英ガラス製やその他のガラス製の気密容器を封止するのに好適である。また、酸化アルミニウムを主体とする場合には、透光性アルミナセラミックス製の気密容器を封止するのに好適である。
【0036】
耐火性導電金属材料は、気密容器が石英ガラス製の場合には、例えばモリブデン(Mo)やタングステン(W)を単独または適当な割合で混合して用いることができる。また、非酸化性雰囲気中で使用され、かつ、気密容器が透光性アルミナセラミックス製の場合には、ニオブ(Nb)やタンタル(Ta)を用いることもできる。
【0037】
そうして、本発明においては、気密容器が石英ガラスなどや透光性アルミナセラミックス製の場合に好適な封止部材を得ることができる。
【0038】
請求項6に係る発明の封止部材は、請求項4または5記載の封止部材において、放電プラズマ焼結法による焼結によって形成されていることを特徴としている。
【0039】
本発明は、好適な製造方法により製造された信頼性の高い封止部材の構成を規定している。すなわち、放電プラズマ法によって封止部材を焼結することにより、良好な拡散接合層を形成して絶縁層と導電層とを直接的に強固で、確実に、しかも信頼性高く接合した封止部材を得ることができる。放電プラズマ法は、圧縮状態の粉末の粒子間隙に直流パルス状電圧を印加した際に粒子間隙に発生する火花放電のプラズマによる発熱および通電によるジュール熱によって焼結を行わせる方法である。
【0040】
放電プラズマ法によれば、圧縮状態の粉末の粒子表面に気化と溶融が生じて、粉末粒子間が緻密に溶着して、絶縁層と導電層が一体に接合した均質な焼結体を得ることができる。また、絶縁層と導電層の焼結が形成される過程で、絶縁層と導電層の接合部位において両層を構成する物質の一部が拡散による移動をして互いに相手方の層内に達し、かつ、両層を構成する物質が立体的に絡み合った状態となった拡散接合層を形成するので、絶縁層と導電層との間に熱膨張率の差があるにもかかわらず、強固で、しかも長期間にわたって信頼性の高い接合が得られる。
【発明の効果】
【0041】
請求項1の発明によれば、気密容器の開口部の封止が容易、かつ、確実であるとともに、封止部材が構造簡単で、小形化できる管球を提供することができる。
【0042】
請求項2の発明によれば、絶縁層および導電層の2層構造の封止部材を備えた管球を提供することができる。
【0043】
請求項3の発明によれば、導電層の端面が気密容器の内部および外部において露出していることによって、封装部材や給電部材と導電層の接続に際して多様な態様の採用を許容する管球を提供することができる。
【0044】
請求項4の発明によれば、構造簡単で、小形化できるとともに、気密容器の開口部の封止が容易、かつ、確実な封止部材を提供することができる。
【0045】
請求項5の発明によれば、気密容器が石英ガラスなどや透光性アルミナセラミックス製の場合に好適な封止部材封止部材を提供することができる。
【0046】
請求項6の発明によれば、好適な製造方法により製造されて信頼性の高い封止部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0048】
図1ないし図3は、本発明の管球および封止部材を実施するための一形態を示し、図1は管球の正面断面図、図2は封止前の気密容器の正面断面図、図3は封止部材の拡大断面図である。本形態は、本発明を高圧放電ランプに適用した例であり、1は気密容器、2は封止部材、3は封装部材、4は給電部材であり、これらが高圧放電ランプすなわち管球を構成している。
【0049】
気密容器1は、透光性で、かつ、耐火性の物質、例えば石英ガラスや透光性アルミナセラミックスなどからなり、適宜の形状を備えるとともに、開口部1aを備えていて、その内部に後述する封装部材3を気密に収納する。本形態において、気密容器1は、外形がほぼ紡錘形状をなした石英ガラス製で、図2に示すように、その管軸方向の両端に一対の開口部1a、1aが形成されている。また、気密容器1は、その内部にほぼ回転楕円体形状をなした放電空間1bが形成されている。
【0050】
封止部材2は、機能性傾斜材料からなる。この機能性傾斜材料は、図2に拡大して示すように、絶縁層2aおよび導電層2bを備えるとともに、各層2a、2bが拡散接合層2cにより接合された基本的には多層構造、好適には2層構造の焼結体からなる。この多層構造焼結体は、後述するように原料粉末の粒界を溶融制御して焼結することができる焼結法として、迅速焼結法に属する放電プラズマ焼結法により形成されている。なお、上記拡散接合層2a3は、絶縁層2aおよび導電層2a2を構成する物質が相互に拡散して移動することによって立体的に絡み合って形成されたものである。
【0051】
また、封止部材2は、気密容器1の開口部1aに嵌め込まれて封着することにより、気密容器1を気密に封止している。なお、図1において、開口部1aと封止部材2との間の当初の境界部が点線で示されている。
【0052】
封止部材2の絶縁層2aは、金属酸化物または金属窒化物を主体として構成されるが、本形態においては気密容器1が石英ガラスからなるので、シリカ(SiO2)を主体として形成されている。これに対して、導電層2bは、導電性金属と金属酸化物の混合を主体として構成されているが、本形態においては導電性金属がモリブデン(Mo)またはタングステン(W)からなり、金属酸化物が絶縁層2aの構成材料と同じ材料であるシリカからなる。導電性金属と金属酸化物の混合比は、導電層2bが所要の低い抵抗値を示すような導電率になるように、導電性金属が30質量%以上の範囲内において所定の割合に選択されている。
【0053】
さらに、封止部材2は、その絶縁層2aと導電層2bの相互の位置が同軸関係になっている。すなわち、導電層2bが中心部側、例えば中心軸の周りに導電層2bが円柱状をなして位置し、外側、例えばその周囲に同軸関係に絶縁層2aが円筒状をなして包囲している。このため、絶縁層2aは、封止部材2の軸方向の全長にわたって導電層2bと同軸関係を形成されている。また、導電層2bは、封止部材2の軸方向の両端面に露出している。
【0054】
封装部材3は、タングステン(W)製の棒状体からなる放電電極であり、その基端が封止部材2における導電層2bの一方の端面から内部に挿入され固着して支持されているとともに、導電層2bに導通している。
【0055】
給電部材4は、モリブデン製の棒状体からなるリード部材であり、その先端が封止部材2における導電層2bの他方の端面から内部に挿入され固着して支持されているとともに、導電層2bに導通している。
【0056】
したがって、以上の封止部材2、封装部材3および給電部材4は、封止部材2を中心として一体化されることにより、電極マウントを構成している。
【0057】
そうして、管球は、高圧放電ランプを構成しており、透光性の気密容器1内の放電空間1b内において、一対の封装部材3、3の放電電極が離間対向し、また放電空間1b内には放電媒体が封入されている。
【0058】
次に、電極マウントを構成する封止部材2を製造するには、まず円柱状をなした導電層2bの出発材料である圧縮成形体を用意する。なお、封装部材3および給電部材4は、導電層2bの上記圧縮成形工程において、それぞれ所定の位置まで導電層2b内に挿入される。さらに、圧縮成形された導電層2bを成形金型内の所定の位置に載置して、その円柱状部分の周囲に絶縁層2a1の材料を入れて導電層2bと一緒に圧縮成形して、放電プラズマ焼結法を用いて焼結する。
【0059】
さらに詳述すれば、放電プラズマ焼結法による製造は、絶縁層2aを構成するための粉体および導電層2bを構成するための粉体を上記のように焼結型内に同軸状に配置してから、次に両粉体の両端に一対の電極を配置して、上記粉体を加圧しながら一対の電極間に直流パルス電圧を印加する。なお、雰囲気は、数10MPa程度のアルゴン(Ar)または真空にするのがよいが、所望により大気雰囲気とすることもできる。上記加熱・加圧処理を所定時間の間継続することにより、上記粉体が焼結して同軸2層構造の封止部材が得られる。そうして、得られた封止部材2は、その絶縁層2aと導電層2bとの間に拡散接合層2cが形成されるとともに、拡散接合層2cによって絶縁層21と導電層2bとが強固に接合して強固に一体化されている。また、絶縁層21と導電層2bとが、それぞれ緻密な焼結体となる。
【0060】
また、封装部材3および給電部材4は、焼結による共締めよって導電層2bに強固に固着されるとともに、非常に小さい接触抵抗のもとで導通する。
【0061】
そうして、封止部材2は、その軸方向のほぼ全長にわたって形成された絶縁層2aの部位で気密容器1の開口部1aに封着することにより、気密容器1を気密に封止している。したがって、気密容器1と封止部材2の絶縁層2a1とは同一物質からなるため、良好な封止が得られる。本形態によれば、2層構造の封止部材3について説明したが、直径の大きさに制約されないのであれば、必要に応じて中間層を用いてもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0062】
以下の構成の本発明による封止部材を用いて封止したハロゲン電球を製作した。
【0063】
絶縁層:SiO2粒子100(質量%)
導電層:SiO2粒子70-Mo粒子30(質量%)
製造方法:プラズマ焼結法

〔比較例〕以下の構成による軸方向に多層構造とした封止部材を用いて封止した高圧放電ランプを製作した。
【0064】
絶縁層:SiO2粒子100(質量%)
緩衝層:第1層SiO2
95-Mo5、第2層SiO280-Mo20、第3層SiO270-Mo30、
第4層SiO260-Mo40(いずれも材料は粒子、割合は質量%)
導電層:SiO2粒子50-Mo粒子50(質量%)
製造方法:通常加熱焼結法

振動試験条件:消灯状態で20〜60〜20Hz(合計6分間)の振動試験を6回実施した。
【0065】
振動試験結果:実施例はクラック発生なし。
【0066】
比較例は層間クラックが発生した。
【0067】
他の実施例として、上記実施例と同様な封止構造を備えた図1に示す高圧放電ランプを製作して同様な試験を実施したが、これについても上記実施例と同様良好な結果を得た。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の管球および封止部材を実施するための一形態を示す管球の正面断面図
【図2】同じく封止前の気密容器の正面断面図
【図3】同じく封止部材の拡大断面図
【符号の説明】
【0069】
1…気密容器、1a…開口部、1b…放電空間、2…封止部材、2a…絶縁層、2c…拡散接合層、3…封装部材、4…給電部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を備えた気密容器と;
気密容器と同種の材料を主体とする絶縁層およびこの絶縁層に直接または間接的に接合した導電層を備えている多層構造の機能性傾斜材料からなり、導電層および絶縁層が同軸関係に積層し、かつ、絶縁層が外側で導電層が中心部側に位置するように配置されて軸方向に延在しているとともに、各層の接合部が両層を構成する物質の拡散により混在する拡散接合層を形成していて、絶縁層の部位で気密容器の開口部を封止している封止部材と;
気密容器の内部に封装され、かつ、前記封止部材の導電層を経由して気密容器の外部から給電される封装部材と;
を具備していることを特徴とする管球。
【請求項2】
封止部材は、中心部側に位置する導電層と外側に位置する絶縁層との2層構造で形成されていることを特徴とする請求項1記載の管球。
【請求項3】
封止部材は、その導電層の一方の端面が気密容器の内部に露出し、他方の端面が気密容器の外部へ露出していることを特徴とする請求項1または2記載の管球。
【請求項4】
絶縁層およびこの絶縁層に直接または間接的に接合した導電層を備えている多層構造の機能性傾斜材料からなり、導電層および絶縁層が同軸関係に積層し、かつ、絶縁層が外側で導電層が中心部側に位置するように配置されて軸方向に延在しているとともに、各層の接合部が両層を構成する物質の拡散により混在する拡散接合層を形成していることを特徴とする封止部材。
【請求項5】
絶縁層は、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを主体としており;
導電層は、絶縁層の材料と同様の材料に30質量%以上の割合で混合された耐火性導電金属材料を含んでいる;
ことを特徴とする請求項4記載の封止部材。
【請求項6】
放電プラズマ焼結法による焼結によって形成されていることを特徴とする請求項4または5記載の封止部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−92946(P2006−92946A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277898(P2004−277898)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】