説明

管結合部を製造するための方法および管結合部

【課題】管が、鋳造材料から成る構成部分に溶接によって結合され、かつ結合部が高い強度を有し、しかも互いに溶接不可能な材料ペアリングをも互いに位置固定することのできるような、管結合部を製造するための方法を提供する。
【解決手段】まず管2の端側の区分4を拡開させ、引き続き、該拡開された区分4に鋳造材料から成る構成部分を配置し、拡開された区分4が少なくとも部分的に形状接続的に封入されるように鋳造材料から成る構成部分3を、拡開された区分4溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管と、鋳造材料から成る構成部分とを備えた管結合部を製造するための方法に関する。
【0002】
さらに本発明は、管と、該管の端側に結合された鋳造材料から成る構成部分とを備えた、特にアクスルに用いられる管結合部に関する。
【背景技術】
【0003】
鋼および鋳造材料から成る構成部分を結合するためには、一方では冷間の接合方法が使用され、特にこれらの構成部分はリベットまたはねじによって互いに結合される。しかし、このような結合部の強度はその点状の力伝達に基づき制限されている。
【0004】
たとえばミグ(MIG)溶接のような溶融溶接法(融接)の場合には、両金属、つまり鋼および鋳造材料の融点が互いに著しく異なることに基づき、溶接がほとんど不可能となるという問題が生じる。したがって、熱的な方法としては、ブレーズ溶接プロセスが使用される。ブレーズ溶接の場合には、鋳造材料だけが溶融され、これにより亜鉛メッキされた鋼薄板は溶接材料によって湿潤される。鋼薄板の亜鉛メッキにより、金属間相を小規模にまで減少させることができる。しかし、このような材料に束縛されたいわば材料接続的な結合は低い強度しか有しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、管が、鋳造材料から成る構成部分に溶接によって結合され、かつ結合部が高い強度を有し、しかも互いに溶接不可能な材料ペアリングをも互いに位置固定することのできるような、管結合部を製造するための方法を提供することである。
【0006】
さらに本発明は、このような方法を用いて製造された管結合部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために本発明の方法では、以下のステップ:
管の端側の区分を拡開させ;
管の拡開された区分に鋳造材料から成る構成部分を配置し;
管の拡開された区分が少なくとも部分的に形状接続的に封入されるように鋳造材料から成る構成部分を溶接する;
を実施するようにした。
【0008】
さらに上記課題を解決するために本発明の管結合部の構成では、管の端側が、半径方向外側へ突出し拡開された区分を有しており、該区分が、鋳造材料から成る構成部分内に少なくとも部分的に形状接続的に封入されているようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明による方法では、まず管の端側の区分が拡開され、管の拡開された区分に鋳造材料から成る構成部分が配置される。引き続き、管の拡開された区分が少なくとも部分的に形状接続的に、つまり係合に基づいた嵌合により、封入されるように鋳造材料から成る構成部分が溶接される。これにより、管の拡開された区分が溶接材料によって背後から係合され、したがって管の半径方向においても軸方向においても固い結合が保証されることが達成される。管の拡開された区分の形状接続的な封入、つまり係合に基づいた嵌合式の封入により、亜鉛メッキされた管も、亜鉛メッキされていない管も使用され得るようになる。
【0010】
特に安定した管結合部のためには、鋳造材料から成る構成部分の溶接時に、拡開された区分を溶接シームによって環状に封入することができる。
【0011】
管の端側の区分を半径方向外側へ拡開させるためには、この区分を縁曲げするか、またはチューリップ状に押し広げることができる。拡開は、拡開された区分が背後から係合され得る程度にまで行われなければならない。
【0012】
管の拡開された端側の区分が、鋳造材料から成る構成部分に設けられたストッパに押圧され、次いで、鋳造材料から成る構成部分に設けられた、前記端側の区分を取り囲むリング部が溶接され、これにより形状接続的な結合、つまり係合に基づいた嵌合による結合が形成されると有利である。この場合、こうして製造された管結合部は、軸方向における引張力および押圧力に対して負荷耐性を有すると同時に、曲げに対しても負荷耐性を有している。
【0013】
結合部の相対回動防止性を高めるためには、管の拡開された区分に、溶接の前に1つまたは複数の切欠きを設けることができる。次いで、これらの切欠きまたは開口は、溶接材料および/または鋳造材料から成る構成部分に設けられた突出部で埋められて、回転方向においても安定した結合を生ぜしめる。このような切欠きの代わりに、管は溶接シームの範囲にプロファイリング部、つまり異形成形部、たとえば凹部、エンボス成形部、アンダカット部等を備えていてよく、これにより溶接材料はプロファイリングされた範囲、つまり異形成形された範囲に流れ込むようになる。択一的には、拡開された区分を横断面楕円形に加工成形することも可能である。これにより、回動防止性が高められる。
【0014】
本発明による管結合部は、端側で半径方向外側へ突出した、拡開された区分を備えた管を有しており、拡開された区分は、鋳造材料から成る構成部分によって少なくとも部分的に形状接続的に、つまり係合に基づいた嵌合により、封入されている。これにより、特に車両構造におけるアクスル(車軸)またはアクスルコンポーネントを製造するためにも使用することのできる固い管結合部が製造される。なぜならば、管、特に鋼管と鋳造材料、たとえば軽金属、特にアルミニウムから成る構成部分とから成る、このようなハイブリッド結合部は、鋼構成部分の結合部の代わりに重量低減のために使用され得るからである。
【0015】
管の拡開された区分を封入するためには、鋳造材料から成る構成部分に、材料により拘束された、いわば材料接続的に結合された溶接シームが設けられていると有利である。特に良好な強度のためには、溶接シームが多層状に形成されていてよい。
【0016】
管の半径方向における負荷に対しても管結合部に耐性を付与するためには、鋳造材料から成る構成部分に、拡開された区分を嵌め込むための収容部が形成されていてよい。この収容部は、拡開された区分を半径方向で少なくとも所定の範囲で取り囲む。これにより、鋳造部分に段部が形成され、この段部は力導出のために使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面につき詳しく説明する。
【0018】
図1には、本発明による管結合部1が図示されている。この管結合部1は管2を有している。この管2には、鋳造材料、有利にはアルミニウムから成る構成部分3が固定されている。鋳造材料としては、特に軽金属が適しており、この場合、アルミニウムの他に、マグネシウム合金または鋳鋼を使用することができる。管2は鋼から成っていると有利ではあるが、しかし別の材料から製造されていてもよい。
【0019】
以下においては、それぞれ1つの管2と鋳造材料から成る1つの構成部分3との間の1つの結合部しか図示されていないが、しかしもちろん、鋳造材料から成る1つの構成部分3に複数の管2を固定し、これにより1つの結節点を形成することも可能である。
【0020】
管2の端側は拡開された区分4を有している。拡開された区分4は半径方向外側へ向かって突出していて、前記構成部分3に設けられたストッパ5に接触している。端側に配置された、拡開された区分4は、前記構成部分3のリング部6によって取り囲まれていて、外側で溶接材料7によって封入されている。溶接材料7は、たとえばミグ溶接による構成部分3の溶接によって導入することができる。
【0021】
拡開された区分4を介して管2はアルミニウムから成る構成部分3に形状接続的に、つまり係合に基づいた嵌合により結合されている。この場合、拡開された区分4は一方ではストッパ5に、他方では溶接材料7にそれぞれ接触している。したがって、軸方向において管結合部1は引張力に対しても押圧力に対しても負荷耐性を有している。
【0022】
図2には、管2が断面図で図示されている。この管2は端側でチューリップ状に拡開された区分4を有している。この拡開された区分4は円筒状の管の場合には、円弧9を介して外方へ向かって湾曲させられている。円弧9の内面は構成部分3に設けられた管片10を介して支持されており、この管片10は管2の円筒状の範囲にも突入して係合している。これにより、特に強固な結合が得られる。また、管片10を、破線8で示したように、より短く形成することも可能である。管片10は重量節約のために内部中空に形成されていてもよい。
【0023】
図3には、管2の拡開された区分4が図示されている。この拡開された区分4には、全周にわたって分配されて複数の切欠き11が設けられている。これらの切欠き11は溶接材料7で満たされているので、管2と構成部分3との間の相対回動不能な結合が形成される。切欠き11は拡開された区分4の周面に配置されており、この場合、切欠きを前記区分4の内部の開口として、たとえば円弧9の範囲に設けることも可能である。この場合、鋳造材料から成る構成部分3は1つまたは複数の突出部を有していてよい。その場合、この突出部は拡開された区分4または円弧9に設けられた、対応する開口または切欠き内に係合する。
【0024】
図4には、管結合部の変化実施例が図示されている。この場合、管2´が使用される。管2´は端部側の区分4´を有しており、この区分4´は縁の折曲げにより形成されていて、半径方向に突出している。これにより、円弧の代わりに縁部9´が、管2´と区分4´との間の移行部として形成されている。その他の点で、鋳造材料から成る構成部分3に対する結合部は先行した実施例の場合と同様に形成されており、この場合、区分4´は片側で、アルミニウムから成る構成部分3に設けられたストッパ5に接触していて、反対の側では溶接材料7によって取り囲まれている。これにより、管2´は軸方向においても半径方向においても、アルミニウムから成る構成部分3に固く結合されている。溶接材料7は半径方向外側に位置する側で構成部分3に設けられたリング部6によって取り囲まれている。溶接材料7と管2´との間の移行部は、溶接材料7が管2´に向かってせり上がるように、つまり管2´に隣接して、半径方向内側へ向かって、拡開された区分4´から離れる方向に延びる円弧が形成されるように形成されている。このことは、溶接材料7と管2´との間のギャップを回避し、ひいては該ギャップ内にあとで湿分が溜まる危険を回避する。
【0025】
図5に示した管結合部の実施例では、鋳造材料から成る構成部分3に、溶接材料7ならびに管2の拡開された区分4のための収容部が形成されている。この収容部はリング部30を起点として、半径方向内側に向かって延びる円弧31を備えた凹部を有している。円弧31は湾曲させられて形成されていて、段部32にまで延びている。この段部32に隣接して、別の円弧状の区分33が形成されており、この円弧状の区分33は拡開された区分4に設けられた内側の円弧に接触している。前記収容部は管片34の端部にまで延びている。管片34は中実プロファイル(中実成形体)または中空プロファイル(中空成形体)として部分的に管2内に嵌め込まれている。段部32はこの場合、拡開された区分4の端面40が部分的にこの段部32と構成部分3とに接触することを生ぜしめる。これにより、半径方向の力を直接に構成部分3へ導出することができる。
【0026】
さらに、リング部30によって取り囲まれた収容部は溶接材料7で満たされている。この溶接材料7は多層状に形成されていて、最初の溶接の溶接材料70と、後続の溶接の溶接材料71とを有している。これにより、溶接による熱応力が減じられる。溶接材料7と管2との間の移行部72は少なくとも直角に形成されており、この場合、溶接材料7は、移行部72におけるギャップを回避するために、軽度に上方へ向かって管2へせり上がっていてもよい。
【0027】
図6に示した、管2と鋳造材料から成る構成部分3とを備えた管結合部では、管2の端側の拡開された区分4と、鋳造材料から成る構成部分3との間に、低い温度で溶融するろうリング20,21が設けられている。第1のろうリング20は拡開された区分4の端部に設けられており、第2のろうリング21は管2の拡開された区分4と円筒状の区分との間に配置されている。低い温度で溶融する両ろうリング20,21によって、鋳造材料から成る構成部分3と管2との間の結合は強化され、かつ場合によってはこの範囲における腐食攻撃を阻止する。
【0028】
図7のAおよびBに示した、管2´と鋳造材料から成る構成部分3´との間の管結合部の実施例では、回動防止性を高めるために管2´に1つまたは複数のプロファイリング部(異形成形部)22が加工成形されている。これらのプロファイリング部22は半径方向の切込みまたは環状の凹部として形成されている。プロファイリング部22は、溶接時に該プロファイリング部22内に溶接材料7が流入し得るようにするために働く。このことは回動防止性を高める。このようなプロファイリング部22は管2もしくは管2´に切欠き11と相まって設けられてもよい。
【0029】
回動防止性を形成するために、図示の実施例では、拡開された区分4;4´に切欠き11が設けられている。また、拡開された区分4が、円形状とは異なる輪郭を有し、特に楕円形に加工成形されることによって、回動防止された結合を得ることもできる。これにより、アルミニウムから成る構成部分3に対して相対的な管2の回動が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による管結合部を示す斜視図である。
【図2】図1に示した管結合部の断面図である。
【図3】図1に示した管結合部を断面した平面図である。
【図4】本発明の別の実施例による管結合部を示す断面図である。
【図5】本発明のさらに別の実施例による管結合部を示す断面図である。
【図6】本発明のさらに別の実施例別による管結合部を示す断面図である。
【図7】プロファイリング(異形成形)された管を備えた本発明による管結合部を、断面図(A)および該断面図(A)のXで示した丸印で囲んだ範囲の拡大図(B)で示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 管結合部
2,2´ 管
3 構成部分
4,4´ 拡開された区分
5 ストッパ
6 リング部
7 溶接材料
9 円弧
9´ 縁部
10 管片
11 切欠き
20,21 ろうリング
22 プロファイリング部
30 リング部
31 円弧
32 段部
33 円弧状の区分
34 管片
40 端面
70 溶接材料
71 溶接材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管(2,2´)と、鋳造材料から成る構成部分(3)とを備えた管結合部(1)を製造するための方法において、以下のステップ:
管(2,2´)の端側の区分(4,4´)を拡開させ;
管(2,2´)の拡開された区分(4,4´)に鋳造材料から成る構成部分(3)を配置し;
管(2,2´)の拡開された区分(4)が少なくとも部分的に形状接続的に封入されるように鋳造材料から成る構成部分(3)を溶接する;
を実施することを特徴とする、管結合部を製造するための方法。
【請求項2】
鋳造材料から成る構成部分(3)の溶接時に、拡開された区分(4,4´)を環状に封入する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
管(2,2´)の端側の区分(4,4´)の拡開を、縁曲げまたは押し広げにより行う、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
管(2,2´)の拡開された端側の区分(4,4´)を、鋳造材料から成る構成部分(3)に設けられたストッパ(5)に押圧し、鋳造材料から成る構成部分(3)に設けられた、前記端側の区分(4,4´)を取り囲むリング部(6)を1回または数回のステップで溶接する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
管(2,2´)の拡開された区分(4,4´)に、溶接の前に1つまたは複数の切欠き(11)および/またはプロファイリング部(22)を設ける、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
管(2,2´)と鋳造材料から成る構成部分(3)との間に、溶接の前に少なくとも1つのろう接リング(20,21)を配置する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
拡開された区分を横断面楕円形に加工成形する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
管(2,2´)と、該管(2,2´)の端側に結合された鋳造材料から成る構成部分(3)とを備えた、特にアクスルに用いられる管結合部(1)において、管(2,2´)の端側が、半径方向外側へ突出し拡開された区分(4,4´)を有しており、該区分(4,4´)が、鋳造材料から成る構成部分(3)内に少なくとも部分的に形状接続的に封入されていることを特徴とする管結合部。
【請求項9】
管(2,2´)の拡開された区分(4,4´)が、鋳造材料から成る構成部分(3)によって環状に取り囲まれている、請求項8記載の管結合部。
【請求項10】
管(2,2´)の拡開された区分(4,4´)に、1つまたは複数の切欠き(11)および/またはプロファイリング部(22)が設けられており、該切欠き(11)および/またはプロファイリング部(22)が鋳造材料で満たされている、請求項8または9記載の管結合部。
【請求項11】
鋳造材料から成る構成部分(3)が、軽金属合金、有利にはアルミニウムから成っている、請求項8から10までのいずれか1項記載の管結合部。
【請求項12】
管(2,2´)が鋼管として形成されている、請求項8から11までのいずれか1項記載の管結合部。
【請求項13】
管(2,2´)の拡開された区分(4,4´)を封入するために、鋳造材料から成る構成部分(3)に材料接続的に結合された溶接シーム(7)が設けられている、請求項8から10までのいずれか1項記載の管結合部。
【請求項14】
溶接シーム(7)が多層状に形成されている、請求項13記載の管結合部。
【請求項15】
鋳造材料から成る構成部分(3)に、拡開された区分(4,4´)を嵌め込むための収容部が形成されており、該収容部が、拡開された区分の端面(40)を半径方向で少なくとも所定の範囲で取り囲んでいる、請求項8から14までのいずれか1項記載の管結合部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−142895(P2009−142895A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313128(P2008−313128)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Residenzstrasse 1, D−33104 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】