説明

簡易スチール製コンベヤベルト

【課題】スチール製の無端ベルトの接合が極めて簡単にでき、かつ、強度及びある程度の耐久性のある簡易スチール製コンベヤベルトを提供する。
【解決手段】一定幅のスチール製の帯状の板体8aを丸めてその両端縁を突き合わせて接合した無端状のコンベヤベルト8において、前記ベルト8の両端縁をベルトの長手方向に対して直角でなく、相互に平行に傾斜させて切断し、これらの両端の傾斜端縁8b、8bを突き合わせて、これらの端縁の両側面に接着テープ10を渡して貼り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、簡易なスチール製のコンベヤベルトに関するものであり、さらに詳しく述べると、極めて容易に製造でき、かつ、耐久性のある無端状のスチール製コンベヤベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スチール製のコンベヤベルトは、一定長一定幅の帯状の板を作成し、この板を丸めて長手方向の両端を突き合わせ、これらの端部を溶接したり、リベット接合により接合し、無端ベルト状にしている。これは、特許文献1及び特許文献2にも記載されている。
【0003】
この様なスチール製のコンベヤベルトは、洗浄可能なことから高いクリーン度や静電防止、又は衛生面等が要求されている半導体や食品等の工場内での搬送に使用されることが多い。しかしながら、スチール製のコンベヤベルトは一本が高価なもののため、これを採用する者は大きな決断を要する。すなわち、工場等での製造ラインで使用することが多く、それぞれの独自の寸法等があり、それに合わせた試作品等がないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開平1−48339号公報
【特許文献2】特開2000−191121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これは、スチール製のコンベヤベルトを簡易に製造できれば、試作品として需要者に提供し、当該ベルトの使用状況を確認でき、その上で、スチールベルトを採用することができれば、需要者はスチールベルトを求め易くなる。そこで、図6に示すように、スチールの板100を無端ベルト状に接合するにあたって、前記板100の両端を直角に切断し、この両端縁101、101、を突き合わせ、これを接着テープ102で接合した接合部103を有する簡易スチールベルト104を作成した。しかしながら、この簡易スチールベルト104をコンベヤベルトとして使用した場合、図7に示すように、プーリ105の外周にベルトの接合部103がくると、スチールの剛性により当該接合部103の端部101、101が突っ張って山を形成し、何回かの使用で当該接合部103が外れてしまう。
【0006】
そこで、この発明は、このような従来技術を考慮したものであって、スチール製の無端ベルトの接合が極めて簡単にでき、かつ、強度及びある程度の耐久性のある簡易スチール製コンベヤベルトを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、一定幅のスチール製の帯状の板体を丸めてその両端縁を突き合わせて接合した無端ベルトにおいて、前記ベルトの両端縁をベルトの長手方向に対して直角でなく、相互に平行に傾斜させて切断し、これらの両端の傾斜端縁を突き合わせて、これらの端縁の少なくとも一側面に接着テープを渡して貼り付けた、スチール製のコンベヤベルトとした。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記突き合わせた傾斜端縁の、ベルトの長手方向の一側縁に対する角度が、90度を除く、20度から160度の範囲である、スチール製のコンベヤベルトとした。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記ベルトの板厚と、前記ベルトを掛けるプーリ径との関係が、ベルト板厚mmをtとし、最小プーリ径mmをDとした場合、D>t×300である、スチール製のコンベヤベルトとした。
【0010】
また、請求項4の発明は、請求項1、2又は3のいずれかの発明において、前記接着テープが、予め当該接着テープの一側面に接着剤が塗布されているテープである、スチール製のコンベヤベルトとした。
【0011】
また、請求項5の発明は、請求項1、2、3又は4のいずれかの発明において、前記接着テープが繊維質を含んでいるものである、スチール製のコンベヤベルトとした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、この発明のベルトの接続部が、ベルトの長手方向に対し傾斜して設けられているため、プーリを通過する際、前記接続部の全部がプーリの外周の一点にかからず、その一部がプーリの外周に順にかかっていくため、スチールベルトの切断端部の剛性による反発力が分散され、接着テープとともにプーリの外周に沿って移動する。従って、接合部のプーリ通過の際、いわゆる山が生じない。それ故、強度及び耐久性があり長期の使用に耐えられる簡易ベルトとして使用でき、勿論、試作品としても使用することも出来る。
【0013】
また、請求項2の発明のように、前記突き合わせた傾斜端縁の、ベルトの長手方向の一側縁に対する角度を、90度を除く、70度から160度の範囲にすれば、より確実に強度を有する簡易ベルトが得られる。
【0014】
また、請求項3の発明のように、プーリ径に対して、ベルトの板厚をすれば、より確実に強度を有する簡易ベルトが得られる。
【0015】
また、請求項4の発明によれば、スチールベルトの両端を傾斜して切断し、これらの切断端縁を突き合わせて、これらの端縁間に接着テープを貼り付ければ容易に簡易ベルトが得られる。
【0016】
また、請求項5の発明によれば、接着テープが繊維質を含有したものであるため、強固にベルトを接続でき、より耐久性のあるスチールベルトが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明は、一定幅のスチール製の帯状の板体を丸めてその両端縁を突き合わせて接合した無端ベルトにおいて、前記ベルトの両端縁をベルトの長手方向に対して直角でなく、相互に平行に傾斜させて切断し、これらの両端の傾斜端縁を突き合わせて、これらの端縁の少なくとも一側面に接着テープを渡して貼り付けた、スチール製のコンベヤベルトとした。
【実施例1】
【0018】
以下、この発明の実施例1を図に基づいて説明する。図1はこの発明のスチール製のコンベヤベルトを使用するコンベヤ装置の斜視図である。
【0019】
このコンベヤ装置1は二つの脚2を有する支持枠体3の一端に従動プーリ4を回転自在に設け、他端に駆動プーリ5を設け、当該駆動プーリ5はその回転軸の一端が減速ギヤボックス6内に挿入され、また、当該減速ギヤボックス6の一側に設けたモータ7の駆動回転が、減速ギヤボックス6内の減速ギヤを介して、前記駆動プーリ5の回転軸に伝達されるようになっている。また、前記従動プーリ4と駆動プーリ5に両端を掛けたスチール製の無端ベルト状のコンベヤベルト8が設けられている。また、前記従動プーリ4は、前記枠体3に設けた張力調整器9によりそのシャフトの位置を調整自在となっており、これによりコンベヤベルト8の張力を調整するようになっている。
【0020】
次に図2は、この発明のスチール製のコンベヤベルト8を示すもので、(A)図はその平面図、(B)図はその縦端面図である。また、図3の(A)図及び(B)図は夫々このコンベヤベルト8の製造過程を示す図である。
【0021】
図3の(A)図に示すように、一定幅のスチール製の帯状の板体8aの両端を、相互に平行に傾斜させて切断して傾斜端縁8b、8bを設ける。次に、(B)図に示すように、この板体8aの両端部を丸めて前記両傾斜端縁8b、8bを突き合わせ、これらの傾斜端縁8b、8bの両側面に、図2に示すように、接着テープ10を渡して貼り合わせ、接続部11を有する無端状のコンベヤベルト8を形成したものである。
【0022】
この接着テープ10は予め接着剤が裏面に塗布されているものでも良く、また、コンベヤベルト8の接続にあたって、接着テープ10の裏面又は前記板体8aの傾斜端縁8b付近に接着剤を塗布して張り合わせても良い。また、この接着テープ10の材質は合成樹脂、金属、布等何でもよいが、特に繊維質が含有されている方が、耐久性があり、好ましい。
【0023】
また、前記傾斜端縁8bの角度はベルト8の長手方向の一側縁に対して直角でなく、傾斜していれば任意の角度で良いが、図4に示すように、ベルトの長手方向の一側縁の点Pを中心にして当該一側縁に対する角度を、90度を除く、20度から160度の範囲にすればより確実に強度及び耐久性を得られる。
【0024】
また、当該コンベヤベルト8の板厚と、当該ベルト8を掛けるプーリ4又は5の直径との関係が、D>t×300であることが好ましい。
ただし、Dは最小プーリ径(20度以上の巻き付け角を持つプーリ)mm、tはベルト板厚mmである。これにより、前記接続部11を有するベルトコンベヤ8であってもプーリ4又は5の外周に沿ってスムーズに回転する。
【0025】
このようなコンベヤベルト8であると、図5に示すように、プーリ4又は5の箇所に来た際、前記接続部11の全部がプーリ4又は5の外周の一点にかからず、その一部がプーリ4又は5の外周に順にかかっていくため、スチールベルトの切断端部の剛性による反発力が分散され、接着テープ10とともにプーリ4又は5の外周に沿って移動する。従って、接合部11のプーリ通過の際、いわゆる山が生じない。
【0026】
なお、上記実施例では、この発明のコンベヤベルトを駆動プーリと従動プーリに掛けたコンベヤ装置を示したが、これに限らず、このコンベヤベルトは駆動、従動、アイドラーの3つのプーリに掛ける場合等、適宜のコンベヤ装置に使用できる。
【0027】
また、前記接着テープ10は、上記実施例のようにコンベヤベルト8の傾斜端縁8b、8bの両側面に張り付けるのが好ましいが、接着強度によっては傾斜端縁8b、8bの一側面に張り付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施例1のコンベヤベルトを使用するコンベヤ装置の斜視図である。
【図2】この発明の実施例1のコンベヤベルトの接続部箇所を示す図であって、(A)図は要部平面図、(B)図は要部縦端面図である。
【図3】この発明の実施例1のコンベヤベルトの制作過程を示す図であり、(A)図はベルトの板体の両端を斜めに切断した平面図、(B)図は当該板体を丸めてその両端の傾斜端縁を突き合わせた斜視図である。
【図4】この発明の実施例1のコンベヤベルトの両端に傾斜端縁を形成するに際し、好ましい傾斜角度を示す平面図である。
【図5】この発明の実施例1のコンベヤベルトをコンベヤ装置に使用した場合の使用状態を示す一部斜視図である。
【図6】従来のコンベヤベルトの試作品の接続部を示す平面図である。
【図7】従来のコンベヤベルトの試作品をコンベヤ装置に使用した場合の正面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 コンベヤ装置 2 脚
3 支持枠体 4 従動プーリ
5 駆動プーリ 6 減速ギヤボックス
7 モータ 8 コンベヤベルト
8a 板体 8b 傾斜端縁
9 張力調整器 10 接着テープ
11 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定幅のスチール製の帯状の板体を丸めてその両端縁を突き合わせて接合した無端ベルトにおいて、前記ベルトの両端縁をベルトの長手方向に対して直角でなく、相互に平行に傾斜させて切断し、これらの両端の傾斜端縁を突き合わせて、これらの端縁の少なくとも一側面に接着テープを渡して貼り付けたことを特徴とする、スチール製のコンベヤベルト。
【請求項2】
前記突き合わせた傾斜端縁の、ベルトの長手方向の一側縁に対する角度が、90度を除く、20度から160度の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のスチール製のコンベヤベルト。
【請求項3】
当該ベルトの板厚と、当該ベルトを掛けるプーリ径との関係が、ベルト板厚mmをtとし、最小プーリ径mmをDとした場合、D>t×300であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスチール製のコンベヤベルト。
【請求項4】
前記接着テープが、予め当該接着テープの一側面に接着剤が塗布されているテープであることを特徴とする、請求項1、2又は3のいずれかに記載のスチール製のコンベヤベルト。
【請求項5】
前記接着テープが繊維質を含んでいるものであることを特徴とする、請求項1、2、3又は4のいずれかに記載のスチール製のコンベヤベルト。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−162279(P2011−162279A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23546(P2010−23546)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(510032807)有限会社ヒューコン (1)
【Fターム(参考)】