説明

粉体コーティングベースコート

ある粒子サイズの、フルオロポリマー、熱可塑性ポリマー、パーフルオロポリマーの粉体および無機フィラーの混合物で基体を被覆する逐次的な段階を含む、基体をコーティングで被覆する方法。該被覆された基体は、パーフルオロポリマーを含んでいるトップコートに強力に接着する特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非こげ付き性(non−stick)コーティングを基体に施与する方法に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願の優先権は2005年5月6日に出願された米国特許仮出願番号第60/678908号に基づいており、その全内容は引用によって本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
フルオロポリマーおよび熱可塑性ポリマーの粉体、並びに顔料である無機フィラーを一緒にブレンドし、それに続いて該粉体混合物を金属基体上に施与し、施与された粉体を溶融して該基体上に均一なコーティングを形成することは、特許文献1のような刊行物によって周知である。
【0004】
各種のフッ素樹脂および熱可塑性ポリマーの多層を施与することも、特許文献2のような刊行物によって公知である。
【特許文献1】国際公開第2005/58389号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/015935号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、逐次的段階の独特の組み合わせを含む方法の発見に基づいており、該方法によってフルオロポリマーおよび熱可塑性ポリマー、無機フィラー並びにパーフルオロポリマーの混合物の多層が基体に施与される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、フルオロポリマーを含んでいるコーティングで基体を被覆する方法を含む。該方法は、
a.1以上のフルオロポリマーおよび400℃を超える温度において熱的に安定な1以上の熱可塑性ポリマーを含んでいる固形混合物を調製する段階、
b.約250℃〜約400℃の温度において該固形混合物を溶融ブレンドし押出して、均一性を達成する段階、
c.該押出物を機械的手段に付して、約100ミクロンまでの平均粒子サイズの粉体を得る段階、
d.該得られた粉体と、約5〜100ミクロンの平均粒子サイズを有する無機フィラーおよび約5〜100ミクロンの粒子サイズを有するパーフルオロポリマー粉体を段階c.のブレンドにブレンドして、粉体コーティングを得る段階、ただし該段階c.の粉体と、該無機フィラーおよびパーフルオロポリマーが同時にブレンドされ、またはパーフルオロポリマーの前に無機フィラーがブレンドされ、または無機フィラーの前にパーフルオロポリマーがブレンドされる、
e.該粉体コーティングを該基体上へと施与する段階、および
f.該粉体を部分的に融合させるのに十分な温度まで該基体を加熱する段階
の逐次的な段階を含む。
【0007】
本発明の他の実施態様は、用いられる方法および物質についての詳細に関する。
【0008】
本発明の方法は、ベースコートとトップコートとの間の優れた接着を備えた多層の非こげ付き性コーティングをもたらす段階、物質および条件の独特の組み合わせに基づく。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、VOCを含んでいないコーティング系を好都合に提供する。現在、工業的に使用されている液状プライマーは溶媒に基づいており、したがって望ましくない高VOC含有量を有する。水に基づいた系でさえも、かなりのレベルのVOCを含有している。
【0010】
本発明はまた、本発明の方法を完全な粉体プロセスである方法に絞り込んでいる。VOCを低減することに加えて、コーティング施与装置が維持しなければならない機器の数および複雑さを、これは低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の非こげ付き性粉体コーティングのための粉体プライマーは、フルオロポリマー、熱可塑性ポリマーおよびパーフルオロポリマーの粉体、並びに無機フィラーに基づいている。工業的に溶媒とともに使用されるFEP(ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー)またはPFA(パーフルオロプロピルビニルエーテルとテトラフルオロエチレンとのコポリマー)に基づいた粉体コーティングとは、これは異なる。本発明のこれらの物質を粉体コーティングへと転化する方法は、該物質をブレンドし、それに続いて共押出し、それから所望の粒子サイズに粉砕することである。
【0012】
フルオロポリマーおよび熱可塑性ポリマーのベースコート並びにそれらの使用に関しては、本発明の技術は米国特許出願公開第2004/0253387号に記載されたものと似ているが同一ではなく、この内容は引用によって本明細書に取り込まれる。しかし、この特許出願に記載された発明が、粉体コーティングのためのベースコートとして使用されるならば、該ベースコートとパーフルオロポリマー粉体のトップコートとのコーティング間接着に不足が生じるだろう。該トップコート、典型的にはPFA、FEPおよび/またはMFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとのコポリマー)は、基本的な接着性試験(碁盤目および爪接着性試験)によって試験されると、文字通り層間剥離するだろう。
【0013】
本発明のコーティングは、任意の所望の硬さの基体に使用されることができる。該コーティングが施与される基体のタイプ、およびそれがその形状へと形成されるところの形状は、本発明の範囲を限定しない。好まれる実施態様では、本発明の非こげ付き性コーティングは、調理器具へと形成される鋼またはアルミニウムのような金属基体を被覆するために使用される。該ベースコートの接着を改良するために、たとえば化学エッチングまたはサンドブラスト法によって、基体は前処理されることが極めて好まれる。サンドブラスト法が最良である。
【0014】
本発明は二つの手法を使用してコーティング間接着を改良する。コーティング間接着を改良する一つの手法は、ベースコート(プライマー)とトップコートとの間に機械的な結合を形成する粗な表面をベースコート上に形成することであり、粒子サイズが小さければ小さいほど、ベースコートの表面はそれだけ低度に粗になり、コーティング間接着はそれだけ不十分になる。プライマーが施与され焼付けされたときに、粗な表面をもたらすであろう粒子サイズを有する無機フィラー、たとえば顔料を、押出され粉砕された粉体コーティングにブレンドすることによって、この粗な表面および改良された機械的接着は得られることができる。このような顔料の一つの例は、粉体ベースコートに結合されているアルミニウムフレークである。このようにして、得られた粉体プライマーが金属基体に施与され硬化され、それに続いて粉体トップコートが施与され硬化されると、ベースコートとトップコートとの間の結合は、沸騰水浸漬試験、碁盤目および粘着テープ試験に合格するのに十分なほどには強い。しかし、標準規格の沸騰水後の指の爪接着性試験によって試験されると、このように調製されたコーティングそれ自体だけでは、コーティング間接着が不合格になるだろう。
【0015】
コーティング間接着を改良する第二の手法は、ベースコートを構成することになる粉体をブレンドすることであり、該粉体は該ベースコートに施与されることになるトップコートの粒子サイズと同様な粒子サイズのEFP、PFAおよびMFAを包含することができる。化学的および機械的な結合によって、ベースコートとトップコートとの間がはるかにより緊密に結合することを、これは促進する。得られたコーティングが沸騰水、碁盤目およびテープ試験、並びに指の爪試験に合格する程度まで、ベースコートとトップコートとの接着は改良され、このことは、市販の耐熱皿(bake−ware)のためのコーティングへのようなほとんどの工業的用途にとって、非常に重要である。
【0016】
上記の手法の一方または双方が用いられることができるが、両手法を使用することによって最良の接着が得られる。
【0017】
本明細書で使用される、粒子サイズに関する「同様」の語は、問題の粒子の平均直径が、比較されている粒子の平均直径より50%を超えて大きくないまたは小さくないことを意味する。
【0018】
ベースコートを形成するために、本発明は約250℃〜約400℃の温度においてフルオロポリマーと熱可塑性ポリマーとの溶融ブレンドを実施して、均一性を達成する。得られた固形混合物中のフルオロポリマーの量は約5重量%〜約50重量%であり、かつ該固形混合物中の熱可塑性ポリマーの量は約50重量%〜約95重量%であり、二軸押出機を用いて約250〜400℃の好まれる温度において該固形混合物がブレンドされ押出されることが好まれる。空気中で約−10〜20℃の温度において、約100ミクロンまでの平均粒子サイズの粉体へ、押出物は粉砕されることができる。
【0019】
該粉体は次に、約5〜100ミクロンの平均粒子サイズを有する無機フィラー、たとえば顔料、および約5〜約100ミクロンの粒子サイズを有するパーフルオロポリマー粉体とブレンドされて、粉体コーティングが得られる。粉砕された押出物の粉体と、無機フィラーおよびパーフルオロポリマーは同時にブレンドされても、またはパーフルオロポリマーの前に無機フィラーがブレンドされ、または無機フィラーの前にパーフルオロポリマーがブレンドされてもよい。無機フィラー粉体の粒子サイズは、ポリマー粉体の粒子サイズと同様であることが好まれる。
【0020】
無機フィラー/ポリマーブレンドは段階e.の前に結合されてもよく、その場合、ポリマー粒子が十分に粘着性になって無機フィラー粒子に付着するまで、該ブレンドは加熱される。
【0021】
本発明に使用されるための好まれるフルオロポリマーは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、TFE(テトラフルオロエチレン)とPMVE(パーフルオロメチルビニルエーテル)、PPVE(パーフルオロプロピルビニルエーテル)、HFP(ヘキサフルオロプロピレン)、エチレン、CTFE(クロロトリフルオロエチレン)およびこれらのコモノマーの組み合わせのようなコモノマーとのコポリマー、からなる群から選択されることができる。
【0022】
本発明に使用されるための好まれる熱可塑性ポリマーは、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリールスルホン(PAS)、ポリフェニルスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)およびポリアミドイミド(PAI)からなる群から選択されることができる。PPSが最も好まれる。
【0023】
本発明に使用されることができる無機フィラーは、マイカメタケイ酸塩またはワラストナイト、タルクおよびアルミニウムフレークを包含する。アルミニウムフレークが最も好まれる。一例は、Alcon−Toya社によって製造されたPCF 7130として知られているアルミニウムフレークである。該アルミニウムフレークをアクリル樹脂で被覆することが有利である。
【0024】
無機フィラーの平均粒子サイズは、段階f後の基体上のコーティングの厚さ以上であることが好まれる。
【0025】
粉体混合物は次に、好ましくは静電的に厚さ約20〜60ミクロンの層で基体に施与されるが、用途によっては厚さ100ミクロンまでであってもよく、そして粉体が部分的に融合する(粉体粒子が互いに粘着する程度までにのみ溶融する)のに十分な温度まで、通常約370℃〜約415℃まで該基体が加熱される。
【0026】
トップコートを形成するために、パーフルオロポリマー粉体が次に、被覆された基体に施与され、該基体はこの場合も普通約370℃〜約415℃の温度において再び加熱されて、該パーフルオロポリマー粉体が十分に流動性になるようにされて第一層に結合される。前述のように、トップコートを形成する粉体は、好ましくはベースコートを形成する粉体と同様な粒子サイズのものである。
【0027】
本発明に使用されるための好まれるパーフルオロポリマーは、ベースコートおよびトップコートの双方において、PFA、FEPおよびMFPであり、PFAがその物理的特性(靭性、剥離特性等)の故に最も好まれる。
【0028】
ベースコートが施与されると直ぐに、約370℃〜400℃の温度において2〜3分間それはフラッシュ乾燥されてもよい。それからトップコートが施与されることができ、それに続いて400℃で約10分間最終硬化がされる。フラッシュ乾燥が用いられないならば、約400℃〜425℃、好ましくは約415℃の温度において10分間最終硬化が行われることができる。
【0029】
以下の非限定的実施例において、種々のベースコートによって基体は被覆され、そのうち1実施例のみが本発明に従って調製され、そして三つの試験に付されて、パーフルオロポリマーのトップコートがベースコートにどの程度良好に接着するかが測定された。第一の試験は鉛筆試験であり、該試験では種々の硬さの鉛筆の芯がコーティング表面上を引かれ、トップコートがカットされたときにベースコートから層間剥離するか否かが観察された。第二の試験では、種々の圧力でコーティング中へとボールペンが押し込まれて、上と同じ評価がされた。第三の試験は指の爪試験であり、試験者の指の爪を用いてトップコートが剥がされることができるか否かが、最初に指の爪によって容易に剥がされることができるか否か、次に被覆された板が沸騰水中に30分間浸漬された後に指の爪によって剥がされることができるか否かが測定された。
【実施例1】
【0030】
この実施例では、フィラーが使用されなかったことおよび粉体化された押出物にパーフルオロポリマーがブレンドされなかったことを除いて、本発明の全ての要件が充足された。
【実施例2】
【0031】
この実施例では、粉体化された押出物にパーフルオロポリマーがブレンドされなかったことを除いて、本発明の全ての要件が充足された。
【実施例3】
【0032】
この実施例は、あらゆる点で本発明を例証する。
【0033】
以下の表は、上記の実施例に用いられた物質をまとめる。

【0034】
原料物質の説明
【0035】
Ryton V1は、米国、オクラホマ州、BartlesvilleのChevron−Phillips社によって造られた低粘度ポリフェニレンスルフィドである。
【0036】
PTFE TL−1は、ポリテトラフルオロエチレンとして最もよく知られたフルオロポリマーである。これは、米国、ペンシルバニア州、DownningtownのAGC Chemicals Americas社によって造られている。
【0037】
チャンネルブラックは、米国、イリノイ州、シカゴのKeystone Aniline社によって販売され、着色のためのみに使用される微粉砕チャンネルカーボンブラックである。
【0038】
Neocryl BT−44は、DSM社の事業単位であるNeoResins社によって固形分45%で製造された水性アクリルラテックスである。
【0039】
ヒュームシリカは、Cabot社またはDegussa社によって製造され、粉体コーティングのスプレー塗布を改良するために使用される添加剤である。
【0040】
PCF 7130は、Toyal America社によって製造されたノンリーフィングアルミニウムフレーク顔料である。この顔料は、23ミクロンのD50を持つ粒子サイズを有する。
【0041】
Hyflon(商標)PFA 7010は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルとのコポリマーであり、38ミクロンのD50を持つ粒子サイズを有する。
【0042】
実施例1〜3では、段階c後に製造された粉砕物は、22ミクロンのD50(粒子の約50%がその特定の直径のものである。)を持つ粒子サイズを有し、その際に押出温度は300℃、空気温度は−1℃であった。トップコートを構成するパーフルオロポリマーの粒子サイズは、約20〜25ミクロンであった。
【0043】
鉛筆試験に関しては、芯の硬さは硬さの増加する順にB、HBおよびFであった。
【0044】
ボールペン試験に関しては、用いられた圧力は20、50および70psiであった。
【0045】
以下の表に結果がまとめられる。

【0046】
実施例3のコーティングのみが全ての試験に合格し、その際にトップコートは層間剥離せず、または剥ぎ取られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーを含んでいるコーティングで基体を被覆する方法であって、
a.1以上のフルオロポリマーおよび400℃を超える温度において熱的に安定な1以上の熱可塑性ポリマーを含んでいる固形混合物を調製する段階、
b.約250℃〜約400℃の温度において当該固形混合物を溶融ブレンドし押出して、均一性を達成する段階、
c.該押出物を機械的手段に付して、約100ミクロンまでの平均粒子サイズの粉体を得る段階、
d.該得られた粉体と、約5〜100ミクロンの平均粒子サイズを有する無機フィラーおよび約5〜100ミクロンの粒子サイズを有するパーフルオロポリマー粉体を段階c.のブレンドにブレンドして、粉体コーティングを得る段階、ただし該段階c.の粉体と、当該無機フィラーおよびパーフルオロポリマーが同時にブレンドされ、またはパーフルオロポリマーの前に無機フィラーがブレンドされ、または無機フィラーの前にパーフルオロポリマーがブレンドされる、
e.当該粉体コーティングを当該基体上へと施与する段階、および
f.当該粉体を部分的に融合させるのに十分な温度まで当該基体を加熱する段階
の逐次的な段階を含む、上記方法。
【請求項2】
段階d.の無機フィラー粉体とポリマー粉体とのブレンドが結合される、請求項1に従う方法。
【請求項3】
パーフルオロポリマー粉体コーティングが段階fからの被覆された基体に施与され、当該基体が再び加熱されて、該粉体が十分に流動性になるようにされて第一層に第二層として結合される、請求項1に従う方法。
【請求項4】
当該段階eの粉体コーティングが、厚さ約20〜100ミクロンの層で静電的に施与される、請求項1に従う方法。
【請求項5】
当該無機フィラーの平均粒子サイズが、段階f後の基体上のコーティングの厚さ以上である、請求項4に従う方法。
【請求項6】
当該無機フィラーが顔料を含む、請求項1に従う方法。
【請求項7】
当該顔料がアルミニウムフレークを含む、請求項6に従う方法。
【請求項8】
段階c.の粉体の粒子サイズが、段階dの無機フィラーの粒子サイズと類似である、請求項1に従う方法。
【請求項9】
第二層を形成する粉体の粒子サイズが、第一層を形成する粉体の粒子サイズと類似である、請求項3に従う方法。

【公表番号】特表2008−540090(P2008−540090A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510295(P2008−510295)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/017556
【国際公開番号】WO2006/121940
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】