説明

粉体分散物とこの粉体分散物を含有する化粧料

【課題】微粒子粉体の微粒子間の凝集を抑制し、微粒子粉体を分散媒中で良好に分散させ、紫外線遮蔽能、特にUV−A遮蔽能を向上させた粉体分散物及び化粧料を提供する。
【解決手段】分散媒と、該分散媒中に分散している微粒子粉体及び該微粒子粉体の凝集物と、界面活性剤とで粉体分散物を構成し、該微粒子粉体及び該微粒子粉体の凝集物の65重量%以上の粒子径を0.1〜0.5μmの範囲とした。ここで、分散媒はシリコーン系分散媒を、微粒子粉体は疎水化処理されたものを、界面活性剤はHLB2〜6のものを使用することができる。微粒子粉体は酸化チタン又は酸化亜鉛が好適であり、微粒子粉体の単一粒子径は0.0005μm〜0.15μmである。前記界面活性剤は微粒子粉体に対して1重量%〜200重量%の割合で含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を遮蔽する能力に優れた粉体分散物と、この粉体分散物を含有する化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を遮蔽する能力を有する化粧料として、サンスクリーン剤やファンデーション等が知られており、これらの化粧料は紫外線を遮蔽する能力に優れた粉体分散物を含有している。そして、紫外線を遮蔽する能力に優れた粉体分散物は紫外線を遮蔽ないし吸収する機能を備えた種々の物質を含有している。ここで、紫外線を遮蔽ないし吸収する主な物質としては、単一粒子径が0.15μm以下の二酸化チタンや酸化亜鉛などの微粒子粉体が一般的に用いられている。
【0003】
この二酸化チタンや酸化亜鉛などの微粒子粉体による紫外線を遮蔽する機能は、微粒子による紫外線の吸収と散乱に基づくものである。そして、このような微粒子の紫外線遮蔽能は、微粒子粉体を構成している単一粒子の粒子径と分散媒中における微粒子粉体の分散状態に依存する。
【0004】
しかし、微粒子粉体は、微粒子化が進み、単一粒子径が小さくなるに伴って、粒子間の凝集力が強くなり、微粒子が凝集して粒子径の大きな単一粒子が擬似的に形成されてしまい、分散媒中で微粒子粉体を一次粒子レベルまで安定した状態で分散させることが難しく、微粒子粉体が本来持っている紫外線を遮蔽・吸収する機能を十分に発揮させることができなくなってしまう。
【0005】
この問題に対しては、種々の分散技術が検討され、例えば、特開平9−208438号公報には微粒子二酸化チタンをシリコーン系油分に分散する方法として、シリコーン系化合物を分散剤として用いる方法等が提案されている。
【0006】
ところで、日焼け止め化粧料による紫外線遮蔽領域には、UV−A領域(320〜400nm)とUV−B領域(290〜320nm)がある。そして、UV−A領域の紫外線は皮膚を黒化させるが、UV−B領域の紫外線のようにサンバーンを起こし、皮膚の老化を促進させるものではないと考えられていた。
【0007】
しかし、近年になって、UV−B領域の紫外線が比較的、皮膚の表面部分にとどまるのに対して、UV−A領域の紫外線が、皮膚の深部にまで達し、皮膚の老化はもとより皮膚癌を誘発する原因となることが分かってきた。このため、日焼け止め化粧料には特にUV−A領域の紫外線遮蔽への要求が高まり、高PA(Protection grade of UV-A)値の化粧料に対するニーズが高まってきている。
【0008】
そこで、かかるニーズを前提として上記提案で得られる二酸化チタン分散体及び日焼け止め化粧料のUV−A領域における紫外線遮蔽能を検討してみたが、上記提案で得られた二酸化チタン分散体及び日焼け止め化粧料はUV−A領域における紫外線遮蔽能のレベルの点で充分に満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−208438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする問題点は、紫外線遮蔽能、特にUV−A領域における紫外線遮蔽能の更に優れた粉体分散物及び化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を行った結果、粉体分散物中の微粒子粉体及びその凝集物(以下、「分散物」という。)の65重量%以上の粒子径を0.1〜0.5μmの範囲にすることにより、紫外線遮蔽能(特にUV−A遮蔽効果)が向上することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明にかかる粉体分散物は、分散媒と、該分散媒中に分散している分散物(微粒子粉体及びその凝集物)と、界面活性剤とからなり、該分散物の65重量%以上の粒子径が0.1〜0.5μmの範囲にあることを特徴とするものである。また、本発明にかかる化粧料は、この粉体分散物を含有することを特徴とするものである。
【0013】
ここで、前記分散媒としてはシリコーン系分散媒を使用することができ、前記微粒子粉体としては疎水化処理された微粒子粉体を使用することができ、前記界面活性剤としてはHLB2〜6の界面活性剤を使用することができる。
【0014】
シリコーン系分散媒としては、本発明の効果が損なわれなければ特に制限されない。例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状ポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン等の変性シリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合メチルポリシロキサン等のシリコーン系樹脂等の1種以上が挙げられるが、予備混練で用いるシリコーン系分散媒としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環状ポリシロキサン等の活性な官能基を持たないシリコーン油が好ましい。
【0015】
シリコーン系分散媒の量は特に制限されないが、予備混練工程においては、十分な混練を行うために、シリコーン系分散媒を疎水化処理微粒子粉体に対して、調製するスラリー全量中50〜150重量%となるように加えることが好適である。 また、本発明の効果が損なわれない範囲において、揮発性シリコーンとともに他の油分を併用しても良い。
【0016】
また、シリコーン系分散媒には、本発明の効果を損なわない限り、他の油性成分を配合することも可能である。例えば、流動パラフィン、固形パラフィン、ワセリン、セレシン等の炭化水素油、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル油、天然油脂、パーフルオロポリエーテル、ラノリン、カルナバロウ等のワックス、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ビニルピロリド樹脂等の樹脂類等が挙げられる。ただし、粉体分散物中の微粒子粉体の分散安定性の点から、製品中の全油性成分に対して、シリコーン系分散媒は少なくとも10重量%以上であることが好適である。
【0017】
微粒子粉体としては、単一粒子径が0.0005〜0.15μmの無機粉体を使用することができる。無機粉体としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等の金属酸化物や複合酸化物、その他の化粧料用粉体等を挙げることができるが、好ましくは二酸化チタン、酸化亜鉛、特に二酸化チタンが好ましい。
【0018】
微粒子粉体は疎水化処理されている。疎水化処理の方法は、特に制限されるものでなく、公知の方法を採用することができる。例えばメチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサンコポリマー、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類を用いた処理;オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等のシラン化合物を用いた処理;パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸を用いた処理;前記脂肪酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩等を用いた金属セッケン処理;パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩、パーフルオロアルキルトリメトキシシラン等を用いたフッ素処理等が挙げられる。
【0019】
疎水化処理された微粒子粉体としては、市販の疎水化処理微粒子酸化チタンや疎水化処理微粒子酸化亜鉛を好適に使用することができる。市販の疎水化処理微粒子酸化チタンとしては、例えば、SAS-TTO-S-3(三好化成株式会社製)、SA-TTO-S-4(三好化成株式会社製)、MT-100TV(テイカ株式会社製)、TTO-S-4(石原産業株式会社製)、M-160(ケミラー製)等を挙げることができる。
【0020】
市販の疎水化処理微粒子酸化亜鉛としては、例えばSAS-UFZO-450(三好化成株式会社製)、SAMT-UFZO-450(三好化成株式会社製)、SAMT-UFZO-500(三好化成株式会社製)、「FZO-50」(石原産業株式会社製)、「WSX-MZ-700」(テイカ株式会社製)、「Z-Cote HP-1」(バスフ(BASF)社製)等を挙げることができる。
【0021】
界面活性剤としてはHLB2〜6の界面活性剤を使用することができる。HLBはグリフィン法における親水性−親油性バランスを示す数値である。HLB2〜6の界面活性剤としては、以下のシリコーン系界面活性剤を挙げることができる。
【0022】
すなわち、HLB2〜6のシリコーン系界面活性剤としては、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、シリコーン鎖分岐型メチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、アルキル基含有架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基含有架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル鎖ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキル基分岐型ポリグリセリン変性シリコーン等を挙げることができる。
【0023】
上記ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体としては、PEG/PPG−20/22ブチルエーテルジメチコン(「KF-6012」;信越化学工業株式会社製)、PEG/PPG−20/20ジメチコン(「BY22-008M」;東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、ラウリルPEG/PPG−18メチコン(「5200 Formulation Aid」;東レ・ダウコーニング株式会社製)、PEG/PPG−19/19ジメチコン(「5330 Fluid」;東レ・ダウコーニング株式会社製)、PEG/PPG−15/15ジメチコン(「5330 Fluid」;東レ・ダウコーニング株式会社製)等を挙げることができる。
【0024】
ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体としては、PEG−11メチルエーテルジメチコン(「KF-6011」;信越化学工業株式会社製)、PEG−9ジメチコン(「KF-6013」;信越化学工業株式会社製)、PEG−3(「KF-6015」;信越化学工業株式会社製)、PEG−9メチルエーテルジメチコン(「KF-6016」;信越化学工業株式会社製)、PEG−10ジメチコン(「KF-6017」;信越化学工業株式会社製)、PEG−11メチルエーテルジメチコン(「KF-6018」;信越化学工業株式会社製)、PEG−9ジメチコン(「KF-6019」;信越化学工業株式会社製)、PEG−12ジメチコン(「SH3771M」、「SH3772M」、「SH3773M」、「SH3775M」等。東レ・ダウコーニング株式会社製)等を挙げることができる。
【0025】
シリコーン鎖分岐型メチルポリシロキサン共重合体としては、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(「KF-6028」;信越化学工業株式会社製)を挙げることができる。
【0026】
アルキル鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体としては、PEG/PPG−10/3オレイルエーテルジメチコン(「KF-6026」;信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0027】
アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体としては、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(「KF-6038」;信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0028】
アルキル鎖ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体としては、セチルジメチコンコポリオール(ABIL EM-90;エボニックデグサジャパン株式会社製)等を挙げることができる。
【0029】
架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサンとしては、ジメチコン(ジメチコン/(PEG−10/15))クロスポリマー(「KSG-210」;信越化学工業株式会社製)、シクロメチコン・PEG−12ジメチコンジメチコンクロスポリマー(「9011シリコーンエラストマーブレンド」;東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を挙げることができる。
【0030】
アルキル基含有架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサンとしては、ミネラルオイル・PEG−15ラウリルジメチコンクロスポリマー(「KSG-310」;信越化学工業株式会社製)、イソドデカン・PEG−15ラウリルジメチコンクロスポリマー(「KSG-320」;信越化学工業株式会社製)、トリオクタノイン・PEG−15ラウリルジメチコンクロスポリマー(「KSG-330」;信越化学工業株式会社製)、スクワラン・PEG−15ラウリルジメチコンクロスポリマー・PEG−10ラウリルジメチコンクロスポリマー(「KSG-340」;信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0031】
分岐型ポリグリセリン変性シリコーンとしては、ポリグリセリル−3 ジシロキサンジメチコン(「KF-6100」;信越化学工業株式会社製)、ポリグリセリル−3 ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(「KF-6104」;信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0032】
架橋型ポリグリセリン変性シリコーンとしては、ジメチコン・(ジメチコン/ポリグリセリン−3)クロスポリマー(「KSG-710」;信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0033】
アルキル基含有架橋型ポリグリセリン変性シリコーンとしては、ミネラルオイル・(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー(「KSG-810」;信越化学工業株式会社製)、イソドデカン・(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー(「KSG-820;信越化学工業株式会社製」)、トリオクタノイン・(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー(「KSG-830」;信越化学工業株式会社製)、スクワラン・(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー(「KSG-840」;信越化学工業株式会社製)等を挙げることができる。
【0034】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(「DISG-2」;日本エマルジョン製)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3(「DISG-3」;日本エマルジョン製)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(「TISG-2」;日本エマルジョン製)を挙げることができる。
【0035】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、セスキイソステアリン酸ソルビタン(「NIKKOL SI-15RV」;日光ケミカルズ製) モノイソステアリン酸ソルビタン(「NIKKOL SI-10RV」;日光ケミカルズ製)、モノステアリン酸ソルビタン(「NIKKOL SS-10V;日光ケミカルズ製」)セスキステアリン酸ソルビタン(「NIKKOL SS-15V;日光ケミカルズ製」)、トリステアリン酸ソルビタン(「NIKKOL SS-30V;日光ケミカルズ製」)、オレイン酸ソルビタン (「NIKKOL SO-10V;日光ケミカルズ製」)、セスキオレイン酸ソルビタン(「NIKKOL SO-15V;日光ケミカルズ製」)、トリオレイン酸ソルビタン(「NIKKOL SO-30V;日光ケミカルズ製」)等を挙げることができる。
【0036】
中でも、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(「KF-6038」;信越化学工業株式会社製)、ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体PEG−3ジメチコン(「KF-6015」;信越化学工業株式会社製)、セチルジメチコンコポリオール(ABIL EM-90;エボニックデグサジャパン株式会社製)、ポリグリセリル−3 ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(「KF-6104」;信越化学工業株式会社製)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(「DISG-2」;日本エマルジョン製)、セスキイソステアリン酸ソルビタン(「NIKKOL SI-15RV」;日光ケミカルズ製)などが好適に用いられる。但し本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0037】
また、本発明の粉体分散物において、HLB2〜6の界面活性剤の配合量は微粒子粉体に対して1〜200重量%、さらには5〜100重量%とするのが好ましい。HLB2〜6の界面活性剤の量が1重量%未満になると、UV−A領域において紫外線遮蔽効果が十分に発揮されず、また微粒子粉体に対して200重量%以上使用しても、UV−A領域においてさらなる紫外線遮蔽効果の向上が期待できず、かえって化粧料に求められる使用感の低下を招く等の悪影響を及ぼすことがあるからである。
【0038】
本発明の粉体分散物を化粧料等の各種製品に適用する場合には、例えば、粉体分散物をそのまま、又は油性基材で希釈して油性製品とする、あるいは、これを水相成分と公知の方法により乳化処理して、乳化物とすることができる。
【0039】
また、本発明の化粧料には、その他の化粧料成分を本発明の効果が損なわれない範囲で配合することができる。
【0040】
例えば、粉末として、酸化チタン、酸化亜鉛、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、酸化セリウム、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、ベントナイト、クレー、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、含フッ素金雲母、合成タルク、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、チッ化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、カラミン、炭酸マグネシウム、シリコーン粉末、シリコーン弾性粉末、及びこれらの複合体等の無機粉末;ポリウレタン粉末、セルロース粉末、ナイロン粉末、PMMA粉末、スターチ、ポリエチレン粉末、及びこれらの複合体等の有機粉末が挙げられる。
【0041】
これら粉末は、シリコーン、金属石鹸、レシチン、アミノ酸、コラーゲン、フッ素化合物等で表面処理されたものでもよい。
【0042】
その他、アルコール類、多価アルコール、色素、pH調整剤、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、分散剤、安定化剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、香料等も適宜配合できる。
【0043】
本発明の化粧料は、液状、ゲル状、固形状、スプレー、エアゾール、ムース等の剤型とすることができ、具体的には、クリーム、乳液、サンスクリーンオイル、ファンデーション、化粧下地、リップクリーム、口紅、ボディーローション、ヘアースプレー、ヘアークリーム、ヘアーローション等が挙げられる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、粉体分散物中の分散物の65重量%以上の粒子径を0.1〜0.5μmの範囲にしているので、紫外線防御能、特にUV−A領域における紫外線防御能が従来のものより向上するという効果がある。
【0045】
また、本発明によれば、分散媒としてシリコーン系分散媒を使用し、微粒子粉体として疎水化処理された微粒子粉体を使用し、界面活性剤としてHLB2〜6の界面活性剤を使用した場合は、分散媒に対する微粒子粉体の親和性及び分散性が向上し、分散媒中における微粒子粉体及びその凝集物(分散物)の65重量%以上の粒子径を0.1〜0.5μmの範囲にすることができ、従って、紫外線防御能、特にUV−A領域における紫外線防御能が従来のものより向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1で作成したサンスクリーンの紫外線吸収能(MPF)と紫外線の波長(nm)との関係を無分散剤及び分散剤1〜3について示したグラフである。
【図2】実施例1で作成したサンスクリーンの紫外線吸収能(MPF)と紫外線の波長(nm)との関係を無分散剤及び分散剤4,5について示したグラフである。
【図3】実施例2で作成したサンスクリーンの紫外線吸収能(MPF)と紫外線の波長(nm)との関係を無分散剤及び分散剤6〜8について示したグラフである。
【図4】実施例2で作成したサンスクリーンの紫外線吸収能(MPF)と紫外線の波長(nm)との関係を無分散剤及び分散剤9〜11について示したグラフである。
【図5】実施例1のものに含まれている分散物の粒径分布を示すグラフである。
【図6】実施例2のものに含まれている分散物の粒径分布を示すグラフである。
【図7】比較品のものに含まれている分散物の粒径分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を具体例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各成分の配合量は特に指定のない限り、重量%で示す。
【実施例1】
【0048】
疎水化処理微粒子粉体50g、界面活性剤(分散剤)20gをシリコーン系分散媒(デカメチルシクロペンタシロキサン)30gに添加し、ディスパーミキサーで混練し、この混練物をビーズミルで分散させて分散物D1〜D5を得た。また、比較例として界面活性剤の代わりにシリコーン系分散媒(デカメチルシクロペンタシロキサン)20gを用いた分散物(分散剤無配合:シリコーン系分散媒=20g+30g)も同様に調製した。
【0049】
ここで、疎水化処理微粒子粉体としては、(脂肪酸+シリコーン)処理微粒子二酸化チタン(SA-TTO-S-4:三好化成株式会社製)を用いた。また、界面活性剤としては、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF-6038:信越化学工業株式会社製)(分散剤1)、ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体(PEG−3)(KF-6015:信越化学工業株式会社製)(分散剤2)、ポリグリセリル−3 ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF-6104:信越化学工業株式会社製)(分散剤3)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2(DISG-2:日本エマルジョン製)(分散剤4)、セスキイソステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SI-15RV:日光ケミカルズ製)(分散剤5)を用いた。
【0050】
また、分散物D1は疎水化処理微粒子粉体+分散剤1、分散物D2は疎水化処理微粒子粉体+分散剤2、分散物D3は疎水化処理微粒子粉体+分散剤3、分散物D4は疎水化処理微粒子粉体+分散剤4、分散物D5は疎水化処理微粒子粉体+分散剤5からなるものである。
【0051】
次に、上記のようにして得られた分散物D1〜D5とその他の成分を下記の割合で混合して乳化物(2層タイプW/Oサンスクリーン)を得た。分散物とその他の成分は、下記(1)から(5)を混合、分散させて油相とし、下記(6)から(9)を70℃で加熱溶解し、これを先に生成した油相に添加し、乳化させ、35℃まで冷却させて乳化物を得た。
【0052】
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 32.4重量%
(2)POE変性ジメチルポリシロキサン 3重量%
(3)オクチルメトキシシンナメート 7.5重量%
(4)疎水化処理微粒子酸化亜鉛 20重量%
(5)分散物D1〜D5 10重量%
(6)イオン交換水 20重量%
(7)1,3−ブチレングリコール 5重量%
(8)塩化ナトリウム 1重量%
(9)防腐剤 0.1重量%
【0053】
次に、このようにして得られた乳化物(2層タイプW/Oサンスクリーン)をバーコータNo.3(膜厚6.8μm)でTACフィルムに塗布し、SPFシミュレーター(Optometrics SPF290 S plus)を用いてUV遮蔽効果(MPF、SPF、UVA PF)を測定した。MPF(Monochromatic Protection Factor)は図1及び図2に示す通り、SPF(Sun Protection Factor)及びUVA PF(UVA Protection Factor)は表1に示す通りであった。
【0054】
【表1】

【0055】
これらの結果から解るように、本発明に係る乳化物(2層タイプW/Oサンスクリーン)は、分散剤無配合のものと比較して高いUV防御効果、特にUV−A防御効果が得られることが分かる。
【0056】
また、粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製 ナノ粒子径分布測定装置SALD-7100)を用いて、実施例1のものに含まれている分散物の粒度分布を求めたところ、分散物の85重量%が0.1〜0.5μmの範囲の粒子径になっていた(図5参照)。従来品(比較品)についても分散物の粒度分布を同様にして求めたところ、分散物は0.1〜10μmの範囲に分布し、粒子径が0.1〜0.5μmの範囲のものは18重量%に過ぎなかった(図7参照)。
【0057】
実施例1のものは、分散物の85重量%以上の粒子径が0.1〜0.5μmの範囲にあることによって、紫外線防御能、特にUV−A領域における紫外線防御能が従来品より向上したものと考えられる。
【実施例2】
【0058】
疎水化処理微粒子粉体50g、界面活性剤(分散剤)5gをシリコーン系分散媒(デカメチルシクロペンタシロキサン)45gに添加し、ディスパーミキサーで混練し、この混練物をビーズミルで分散させて分散物D6〜D11を得た。また、比較例として界面活性剤の代わりにシリコーン系分散媒(デカメチルシクロペンタシロキサン)5gを用いた分散物(分散剤無配合:シリコーン系分散媒=5g+45g)も同様に調製した。
【0059】
ここで、疎水化処理微粒子粉体としては、シリコーン処理微粒子二酸化チタン(SAS-TTO-S-3:三好化成株式会社製)を用いた。また、界面活性剤としては、PEG−10ジメチコン(KF-6017:信越化学工業株式会社製)(分散剤6)、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF-6028:信越化学工業株式会社製)(分散剤7)、セスキイソステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SI-15RV:日光ケミカルズ製)(分散剤8)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2(DISG-2:日本エマルジョン製)(分散剤9)、分岐型ポリグリセリン変性シリコーン(KF-6105:信越化学工業株式会社製)(分散剤10)、セチルジメチコンコポリオール(ABIL EM-90:エボニックデグサジャパン株式会社製)(分散剤11)を用いた。
【0060】
また、分散物D6は疎水化処理微粒子粉体+分散剤6、分散物D7は疎水化処理微粒子粉体+分散剤7、分散物D8は疎水化処理微粒子粉体+分散剤8、分散物D9は疎水化処理微粒子粉体+分散剤9、分散物D10は疎水化処理微粒子粉体+分散剤10、分散物D11は疎水化処理微粒子粉体+分散剤11からなるものである。
【0061】
次に、上記のようにして得られた分散物D6〜D11を用いて実施例1と同様の乳化物(2層タイプW/Oサンスクリーン)を得た。そして、このようにして得られた乳化物をバーコータNo.3(膜厚6.8μm)でTACフィルムに塗布し、SPFシミュレーター(Optometrics SPF290 S plus)を用いてUV遮蔽効果(MPF、SPF、UVA PF)を測定した。MPF(Monochromatic Protection Factor)は図3及び図4に示す通り、SPF(Sun Protection Factor)及びUVA PF(UVA Protection Factor)は表2に示す通りであった。
【0062】
【表2】

【0063】
これらの結果から解るように、本発明に係る乳化物(2層タイプW/Oサンスクリーン)は、分散剤無配合のものと比較して高いUV防御効果、特にUV−A防御効果が得られることが分かる。
【0064】
また、実施例1と同様に、実施例2のものに含まれている分散物の粒度分布を求めたところ、分散物の65重量%が0.1〜0.5μmの範囲の粒子径になっていた(図6参照)。実施例2のものは、分散物の65重量%以上の粒子径が0.1〜0.5μmの範囲にあることによって、実施例1と同様に、紫外線防御能、特にUV−A領域における紫外線防御能が従来品(図7参照)より向上したものと考えられる。
【実施例3】
【0065】
実施例1で得られた分散物D1とその他の成分を下記の割合で混合してスティックタイプサンスクリーンを得た。このスティックタイプサンスクリーンは、下記(1)から(5)の成分をHMミキサーで攪拌混合し、下記(6)から(10)の成分を加え、90℃に加熱後、ディスパーミキサーで攪拌混合し、得られた混合物を容器に充填し、冷却することにより得た。
【0066】
(1)タルク 6重量%
(2)カオリン 10重量%
(3)分散物D1 30重量%
(4)ジメチルポリシロキサン 20重量%
(5)パルミチン酸イソプロピル 10重量%
(6)固形パラフィン 2重量%
(7)マイクロクリスタリンワックス 3重量%
(8)ワセリン 10重量%
(9)セレシン 8重量%
(10)カルナバロウ 1重量%
【実施例4】
【0067】
実施例1で得られた分散物D4とその他の成分を下記の割合で混合してW/O型ファンデーションを得た。このW/O型ファンデーションは、下記(7)〜(9)の成分を均一に混合した後、下記(1)から(6)の成分を加えてホモミキサーで分散して油相とし、(10)〜(12)の成分を70℃で加熱溶解し、これを前記油相に添加して乳化し、これを冷却して容器に充填することにより得た。
【0068】
(1)シリコーン処理セリサイト 10重量%
(2)シリコーン処理二酸化チタン 6重量%
(3)シリコーン処理ベンガラ 0.36重量%
(4)シリコーン処理黄酸化鉄 0.8重量%
(5)シリコーン処理黒酸化鉄 0.16重量%
(6)分散物D4 20重量%
(7)流動パラフィン 5重量%
(8)デカメチルシクロペンタシロキサン 12.58重量%
(9)POE変性ジメチルポリシロキサン 4重量%
(10)イオン交換水 36重量%
(11)1,3−ブチレングリコール 5重量%
(12)防腐剤 0.1重量%
【実施例5】
【0069】
実施例2で得られた分散物D11とその他の成分を下記の割合で混合して油性ファンデーションを得た。この油性ファンデーションは、下記(8)〜(14)の成分を85℃で加熱混合し、下記(1)から(7)の成分を加えてホモミキサーで混合し、これを冷却して容器に充填することにより得た。
【0070】
(1)タルク 8.8重量%
(2)カオリン 10重量%
(3)二酸化チタン 13重量%
(4)ベンガラ 1重量%
(5)黄酸化鉄 3重量%
(6)黒酸化鉄 0.2重量%
(7)分散物D11 16重量%
(8)流動パラフィン 20重量%
(9)ジメチルポリシロキサン 15重量%
(10)オクチルメトキシシンナメート 1重量%
(11)セスキイソステアリン酸ソルビタン 2重量%
(12)イソヘキサデシルアルコール 5重量%
(13)セレシン 4重量%
(14)カルナバロウ 1重量%
【産業上の利用可能性】
【0071】
この粉体分散物を塗料に含有させることによって、太陽の光に曝される建材等に塗布してその日焼けを防止する用途や、この粉体分散物を化学繊維に含有させることにより紫外線から皮膚を守る用途等にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒と、該分散媒中に分散している微粒子粉体及び該微粒子粉体の凝集物と、界面活性剤とからなり、該微粒子粉体及び該微粒子粉体の凝集物の65重量%以上の粒子径が0.1〜0.5μmの範囲にあることを特徴とする粉体分散物。
【請求項2】
前記微粒子粉体及び該微粒子粉体の凝集物の85重量%以上の粒子径が0.1〜0.5μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の粉体分散物。
【請求項3】
前記分散媒がシリコーン系分散媒、前記微粒子粉体が疎水化処理された微粒子粉体、前記界面活性剤がHLB2〜6の界面活性剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体分散物。
【請求項4】
前記微粒子粉体が酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム又は酸化珪素からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉体分散物。
【請求項5】
前記界面活性剤がポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、シリコーン鎖分岐型メチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖・シリコーン鎖分岐型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、アルキル鎖ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、アルキル基含有架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、分岐型ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基含有架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル鎖ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン共重合体、ソルビタン脂肪酸エステル又はアルキル基分岐型ポリグリセリン変性シリコーンからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粉体分散物。
【請求項6】
前記シリコーン系分散媒が鎖状ポリシロキサン、環状ポリシロキサン、変性シリコーン及びシリコーン系樹脂から選択された1種又は2種以上の化合物からなることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の粉体分散物。
【請求項7】
前記微粒子粉体の単一粒子径が0.0005μm〜0.15μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粉体分散物。
【請求項8】
前記界面活性剤が前記微粒子粉体に対して1重量%〜200重量%の割合で含有されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粉体分散物。
【請求項9】
前記界面活性剤が前記微粒子粉体に対して5重量%〜100重量%の割合で含有されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の粉体分散物。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の粉体分散物を含有することを特徴とする化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−195694(P2010−195694A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40097(P2009−40097)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(391024700)三好化成株式会社 (17)
【Fターム(参考)】