粉末吸入器
【課題】微粉末状薬剤が供給体と薬剤搬送体との間に挟まるのを防止でき、また、操作体の移動距離を短くすることなく帯電量の減少が可能となる粉末吸入器を提供する。
【解決手段】ハウジングと、多回数用量の微粉末状薬剤を収容し、下面に薬剤排出孔が開口した供給体と、前記供給体の薬剤排出孔から微粉末状薬剤が供給され、一回分の用量分の容積を有する計量孔を上面側に有する薬剤搬送体と、往復動自在に配設されて前記薬剤搬送体を操作する操作体とを備え、前記薬剤搬送体を前記供給体の下面に接触させた状態で動かすことにより、前記計量孔に充填された微粉末状薬剤を前記薬剤排出孔の位置から吸気流路の中へ移動させる粉末吸入器において、前記薬剤搬送体を揺動自在に配設し、該薬剤搬送体の揺動によって前記計量孔を円弧運動させるように構成したことを特徴とする。
【解決手段】ハウジングと、多回数用量の微粉末状薬剤を収容し、下面に薬剤排出孔が開口した供給体と、前記供給体の薬剤排出孔から微粉末状薬剤が供給され、一回分の用量分の容積を有する計量孔を上面側に有する薬剤搬送体と、往復動自在に配設されて前記薬剤搬送体を操作する操作体とを備え、前記薬剤搬送体を前記供給体の下面に接触させた状態で動かすことにより、前記計量孔に充填された微粉末状薬剤を前記薬剤排出孔の位置から吸気流路の中へ移動させる粉末吸入器において、前記薬剤搬送体を揺動自在に配設し、該薬剤搬送体の揺動によって前記計量孔を円弧運動させるように構成したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多回数用量の微粉末状薬剤を投与することができる粉末吸入器に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の粉末吸入器は、多回数用量の微粉末状薬剤を収容する供給体と、一回分の用量に対応する容積の計量孔を有する薬剤搬送体と、該薬剤搬送体を操作する操作体とを備えている。
【0003】
そして、微粉末状薬剤を吸入する場合には、前記供給体の薬剤排出孔から前記計量孔内に前記微粉末状薬剤を充填し、前記供給体に対して前記薬剤搬送体を摺動させて前記計量孔を直線的に移動させる。
【0004】
このとき、前記計量孔内の前記微粉末状薬剤は前記薬剤搬送体の摺動により前記薬剤排出孔の孔縁部ですり切られて一定量の微粉末状薬剤が吸入流路の中に搬送される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、かかる構成を採用した場合には、次のような2つの問題点があった。
【0006】
第1に、微粉末状薬剤をすり切るときに、図22に示すように計量孔100が矢印のように直線的に移動することにより、微粉末状薬剤が薬剤排出孔101の孔縁部近くの斜線部分に密集し、この結果、微粉末状薬剤の供給体と薬剤搬送体との間に微粉末状薬剤が挟まって微粉末状薬剤の計量性を低下させ、また、薬剤搬送体の操作性も悪くなるという問題があった。
【0007】
第2に、前記薬剤搬送体の摺動による摩擦帯電で静電気が発生し、前記微粉末状薬剤が粉末吸入器内に付着して微粉末状薬剤の定量性及び微粒子割合が低下するという問題があった。
【0008】
第2の問題点については、前記計量孔の移動距離を短くして帯電量を減少させることが考えられるが、従来の前記粉末吸入器は、保護キャップが操作体を兼ね、しかも、マウスピースを露出させるのに必要な保護キャップの移動距離に相当する距離だけ前記計量孔を移動させるように構成されていたので、少なくとも粉末吸入器の吸い口から前記保護キャップを取り外すのに必要な距離だけ前記計量孔を移動させなければならず、帯電量の減少は困難であった。
【0009】
また、専用の操作体を用いて薬剤搬送体を操作する場合であっても、使用者に操作体を操作したという実感を持たせるには、操作体をある程度の距離だけ移動させる必要がある。すなわち、粉末吸入器の場合は、前記計量孔が薬剤吸入流路の中まで移動して吸入が可能になったか否かを直接確認できないので、操作体の操作感覚によって吸入可能状態を実感させる必要がある。
【0010】
このように従来の粉末吸入器では、前記操作体を僅かに移動させて帯電量を減少させるのは構造上困難であった。
【0011】
【特許文献1】
特表2000―501013号公報(第2―3頁、図1E、図18B)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、微粉末状薬剤が供給体と薬剤搬送体との間に挟まるのを防止でき、また、操作体の移動距離を短くすることなく帯電量の減少が可能となる粉末吸入器を提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の粉末吸入器は、ハウジングと、多回数用量の微粉末状薬剤を収容し、下面に薬剤排出孔が開口した供給体と、前記供給体の薬剤排出孔から微粉末状薬剤が供給され、一回分の用量分の容積を有する計量孔を上面側に有する薬剤搬送体と、往復動自在に配設されて前記薬剤搬送体を操作する操作体とを備え、前記薬剤搬送体を前記供給体の下面に接触させた状態で動かすことにより、前記計量孔に充填された微粉末状薬剤を前記薬剤排出孔の位置から吸気流路の中へ移動させる粉末吸入器において、前記薬剤搬送体を揺動自在に配設し、該薬剤搬送体の揺動によって前記計量孔を円弧運動させるように構成したことを特徴とする。
【0014】
また、前記計量孔を、前記薬剤搬送体の揺動中心と前記薬剤搬送体への前記操作体の作用点との間に位置させるのが望ましい。
【0015】
また、前記操作体は押し釦であって、前記操作体を押圧することにより前記計量孔を前記薬剤吸入流路の中へ移動させるのが望ましい。
【0016】
また、前記供給体、前記薬剤搬送体及び前記操作体に導電性を付与するのが望ましい。
【0017】
また、前記計量孔は球面凹状の有底孔であることが望ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は粉末吸入器の斜視図、図2は粉末吸入器の縦断面図、図3は粉末吸入器の分解した側面図である。粉末吸入器は、図1乃至図3のようにハウジング1と、微粉末状薬剤を自力で吸入するためのマウスピース2と、多回数用量の微粉末状薬剤を収容する供給体3と、一回分の用量の微粉末状薬剤を搬送する薬剤搬送体4と、薬剤搬送体4を操作する操作体(押し釦)5と、操作体5をロックするロック体6と、ベース体7と、投薬回数を表示するカウンタ8とを備えている。
【0020】
次に、ハウジング1について説明する。ハウジング1は上側ハウジング1aと下側ハウジング1b、保護キャップ1cとを備えている。上側ハウジング1a及び下側ハウジング1bは、図3に示す係止爪1d及び係止溝1eによっていわゆるパッチン式で接合される。なお、後述のように薬剤搬送体4は揺動するので、薬剤搬送体4に揺動スペースを確保するためにハウジング1の横幅は広くなっている。
【0021】
図2及び図4のように上側ハウジング1a及び下側ハウジング1bの先端側にはマウスピース2の取付部1fが形成され、該取付部1fにはマウスピース2を挟持するための挟持用突起1gが設けられている。上側ハウジング1a及び下側ハウジング1bの基端側には操作体5の収納部1hが形成されている。上側ハウジング1aのマウスピース2の取付部1hの近傍には横長スリット状の空気取入口1iが設けられ、カウンタ8の取付け位置に対応する部位にはカウンタ8の状態を読み取るための窓1jが設けられている。
【0022】
図5のように下側ハウジング1bの内面側には、操作体5をガイドするための突条部1l及びガイド軸1mと、突脈部1nで囲繞されるロック体6を収容する収納部1oと、該収納部1o内に形成されるロック体6の枢支軸1pと、ばね係止突起1qと、ベース受け台1rと、嵌合突起1sとがそれぞれ形成されている。
【0023】
次にマウスピース2について説明する。マウスピース2は本体部2aとカバー部2bとで構成され、本体部2aには微粉末状薬剤を分散させる薬剤吸入流路2cが形成され、本体部2aの外周部には嵌合溝2eが形成され、カバー部2bには吸気孔2fが設けられている。
【0024】
次に供給体3について説明する。供給体3は、約200回分の服用量の微粉末状薬剤を収容するホッパー3aを備え、該ホッパー3aの下端には薬剤排出孔3bが設けられ、供給体3のホッパー3aの上端側の開口部3cは微粉末状薬剤を湿度から保護する蓋3dにて閉塞され、ホッパー3aの外壁面には空気吸引溝32が形成されている。また、供給体3には貫通孔3fが形成され、カウンタ8を位置決めするための位置決めピン3hを有するカバー3eが設けられている。更に、後述する薬剤搬送体4の計量孔4cの周囲部との接触面積を少なくするために、薬剤排出孔3bの周縁部及び薬剤搬送体4の摺動部4eに対応する部位には肉厚部3gが形成され、薬剤搬送体4は該肉厚部3gの下面にのみ接触するようになっている。
【0025】
次に操作体5について説明する。操作体5はハウジング1に平行往復動自在に配設され、操作ばね(コイルばね)51の弾撥力に抗して押し込まれるようになっている。操作体5はガイド板5aを備え、該ガイド板5aには薬剤搬送体4の係止用長孔5b、ガイド用長孔5c、及び下側ハウジング1bのばね係止突起1qを挿通するための挿通用長孔5dが設けられ、ガイド板5aの下面側には係合ピン5eが設けられている。また、操作体5からは操作ばね51を取り付けるためのばね取付軸5fが突設されている。
【0026】
次にロック体6について説明する。ロック体6にはガイド溝6a、第1切替部6b、第2切替部6c、上係合部6d、下係合部6e、枢支孔6f及び弾性杆6gがそれぞれ形成されている。ロック体6は、下側ハウジング1bの収容部1oに収容され、枢支孔6fは収容部1o内の枢支軸1pにはめ込まれるようになっている。また、ロック体6の上には操作体5が位置し、該操作体5の係合ピン5eはロック体6のガイド溝6a内に挿入されている。
【0027】
かかるロック体6は、以下のように動作する。すなわち、操作体5を指先で位置まで押し込むと、操作体5の係合ピン5eはロック体6の下係合部6eからガイド溝6aを通って第1切替部6bに至る(図20(a))。このとき、ロック体6は弾性杆6gの弾撥力に抗して揺動する。その後、操作体5を解除すると、操作ばね51の弾撥力により操作体5の係合ピン5eが上係合部6dに係合し、操作体5は押し込まれた状態でロックされる。次に、操作体5を再び押し込むと、ロック体6の弾性杆6gの弾性復元力により係合ピン5eは下係合部6eから解除されて第2切替部6cに至る(図20(b))。次に、操作体5に対する押し込み力を解除すると、操作ばね51の弾撥力により係合ピン5eはガイド溝6aを通って下係合部6eに移動して操作体5は元の位置に復帰する(図20(a))。なお、粉末吸入器全体の動作については後述する。
【0028】
次に薬剤搬送体4について説明する。図9のように薬剤搬送体4の一端部には軸孔4aが形成され、他端部には係止ピン4bが設けられ、軸孔4aと係止ピン4bとの中間部分には一回分の用量に対応する容積を有する球面凹状の有底の計量孔4cが形成されている。更に、薬剤搬送体4にはカウンタ8に係合した該カウンタ8を回転させるラチェット4dが形成されている。なお、計量孔4cは貫通孔であっても良い。
【0029】
薬剤搬送体4の上面の一部は盛り上げられて平面視が円弧状の摺動部4eが形成され、摺動部4eの一端部に計量孔4cが位置している。これにより、計量孔4cが円弧状に移動した場合でも薬剤搬送体4の摺動部4eのみが供給体3の薬剤排出孔3bの周囲の肉厚部3gの下面と接触するようになっている。
【0030】
薬剤搬送体4は、後述のようにベース体7の枢支ピン7iに揺動自在に枢支され、薬剤搬送体4の係止ピン4bは操作体5の係止用長孔5bに挿入されることにより薬剤搬送体4と操作体5とが係合する。
【0031】
また、薬剤搬送体4は後述する押し上げ体9によって上方に弾性付勢されることにより、薬剤搬送体4の摺動部4eは供給体3の薬剤排出孔3bの周囲の肉厚部3gの下面と弾性的に接触するようになっている。これにより、薬剤搬送体4の摺動部4eとホッパー3aの薬剤排出孔3bの周囲部との緊密度が増し、薬剤搬送体4の計量孔4cから微粉末状薬剤が漏れるのを防止している。
【0032】
次にベース体7について説明する。ベース体7には嵌合孔7a及びカウンタ支持軸7bが設けられ、このカウンタ支持軸7bの周囲にはカウンタ支持環7cが立設され、また、薬剤搬送体4が揺動して係止ピン4bが移動する範囲には切り欠き部7dが設けられている。
【0033】
また、ベース体7には押し上げ体9の取付部7eが形成され、該取付部7eには嵌合孔7fを有するばね支持軸7gと固定ピン7hとが設けられている。一方、押し上げ体9の下面側には嵌合突起9aと嵌合孔9bを有するボス部9cとが形成されている。そして、図1010(b)のようにベース体7の嵌合孔7hに押し上げ体9の嵌合突起9bを嵌合し、押し上げばね(コイルばね)10が挿通されたベース体7のばね支持軸7gに押し上げ体9の嵌合突起9aを嵌合することにより、押し上げ体9を上方にばね付勢している。また、押し上げ体9の取付部7eの近傍には枢支ピン7iが形成されている。
【0034】
次にカウンタ8について説明する。カウンタ8は、公知の構造のものであって、1の位のカム付き円盤8aと10の位のカム付きホイール8bとを備えている。カム付き円盤8aはベース体7のカウンタ支持軸7bにより回転自在に支持され、カム付き円盤8aにはカム付きホイール8bがはめ込まれると共にベース体7のカウンタ支持環7cにて支持されている。
【0035】
そして、薬剤搬送体4の揺動によりラチェット4dによって1の位のカム付き円盤8aは1の計数位置だけ回転し、投薬回数が10回目でカム付きホイール8bが1の計数位置だけ回転し、カム付きホイール8bの最大目盛だけ投薬回数を表示する。
【0036】
供給体3、薬剤搬送体4及び操作体5の材料にカーボン等の導電性フィラーを加えている導電性を付与し、静電気を漏洩させるようにしても良い。
【0037】
なお、導電性を付与する部品は、供給体3、薬剤搬送体4及び操作体5には限定されない。
【0038】
次に粉末吸入器の組み立て手順について説明する。
【0039】
まず、上述のように下側ハウジング1bの収容部1oにロック体6を収容した後、操作体5を下側ハウジング1bに取り付けてロック体6の上に位置させる。このとき、操作体5のガイド用長孔5c内に下側ハウジング1bのガイド軸1mを挿通し、操作体5の挿通用長孔5dに下側ハウジング1bのばね係止突起1qを挿通する。また、操作体5のばね取付軸5fに操作ばね51をその一端側から挿通し、該操作ばね51の他端側を下側ハウジング1bのばね係止突起1qに係止する。
【0040】
次に、ベース体7を下側ハウジング1bのベース受け台1rに載置し、ベース体7の嵌合孔7aを下側ハウジング1bの嵌合突起1sに嵌合してベース体7を位置決めする(図16R>6)。
【0041】
次に、上述のようにしてベース体7に押し上げ体9を装着した後、ベース体7及び押し上げ体9の上に薬剤搬送体4を重ねる。このとき、薬剤搬送体4の枢支孔4cとベース体7の枢支ピン7iと合致させ、薬剤搬送体4の係止ピン4bを操作体5の係止用長孔5bに挿入して薬剤搬送体4を操作体5に係合する(図17)。また、上述のようにしてカウンタ8をベース体7に装着する。更に、下側ハウジング1bの挟持用突起にマウスピース2の嵌合溝2eを嵌合する。
【0042】
次に、薬剤搬送体4の上に供給体3を位置させ、ベース体7の枢支ピン7iに供給体3の貫通孔3f及び薬剤搬送体4の枢支孔4aを挿通して薬剤搬送体4を揺動自在に枢支し、供給体3のカバー3eでカウンタ8を位置決めする(図18)。
【0043】
次に、下側ハウジング1bに上側ハウジング1aを接合することにより、上側ハウジング1aの内面側に形成された位置決め部によって供給体3を位置決めすると共に、上側ハウジング1aの挟持用突起1gをマウスピース2の嵌合溝2eに嵌合し、最後に、マウスピース2の本体部2aにカバー部2bを嵌合する。
【0044】
以上のように、粉末吸入器は部品を下から積み上げて組み立てられるので、組立手順が明確になって生産性が向上し、また、ねじが不要となる分だけ生産性が更に向上する。
【0045】
このように構成される粉末吸入器は、以下の動作をすることにより計量孔4cによる微粉末状薬剤の計量性を向上させることができる。
【0046】
操作体5を押し込む前の状態は、図2のように薬剤搬送体4は該薬剤搬送体4の計量孔4cが供給体3の薬剤排出孔3bと合致する薬剤充填位置に位置する。
【0047】
そして、操作体5を押し込んでロックすると、薬剤搬送体4が揺動し、図2の二点鎖線のように計量孔4cは薬剤充填位置からホッパー3aの空気吸引溝32の近傍の空間内へ移動する。このとき、計量孔4c内に充填された微粉末状薬剤は薬剤排出孔3bの周囲の肉厚部3gによってすり切られ、一回分の用量の微粉末状薬剤が空気吸引溝32の近傍の空間まで搬送される。
【0048】
次に、患者の吸気圧でマウスピース2の吸気孔2fからハウジング1内の空気を吸引すると、ハウジング1内は負圧になり、図2の矢印のように外部の空気がハウジング1の空気取入口1iからハウジング1内に吸引され、マウスピース2の空気吸引溝32を通ってマウスピース2の薬剤吸入流路2cに至る。これにより、薬剤搬送体4の計量孔4c内に充填された微粉末状薬剤に空気衝撃が加わって該微粉末状薬剤がマウスピース2の薬剤吸入流路2c内に飛散し、吸引された空気と共に吸気孔2fを通って患者の肺器官内に至る。
【0049】
次に、操作体5を元の位置に復帰させることにより、薬剤搬送体4がスイングバックして計量孔4cは供給体3の薬剤排出孔3bの下方の薬剤充填位置まで戻る。
【0050】
このように、操作体5の押し込み動作及び操作体5の復帰動作により、薬剤搬送体4の摺動部4eは、供給体3の薬剤排出孔3bの周囲部に対して摺動し、薬剤搬送体4の計量孔4cは、薬剤排出孔3bと合致する位置と空気吸引溝32の近傍の空間との間を円弧往復運動をする。
【0051】
また、薬剤搬送体4の計量孔4cは、薬剤搬送体4の軸孔4a(薬剤搬送体4の揺動中心)と薬剤搬送体4の係止ピン4b(操作体5の作用点)との中間に位置するので、計量孔4cの移動距離は操作体5の移動距離よりも短くなり、操作体5の移動距離と同じ距離だけ移動する従来のものに較べて、計量孔4cの周囲の摺動距離が短くなって静電気発生量を低減でき、計量孔4cによる微粉末状薬剤の計量性能を向上させることができる。
【0052】
また、図21のように計量孔4cは円弧運動するので、微粉末状薬剤をすり切る際に、同図の矢印のように微粉末状薬剤はホッパー3aの薬剤排出孔3bの孔壁31cに沿って流れる。この結果、微粉末状薬剤が薬剤排出孔3bの孔壁31c付近で滞留することによって供給体3と薬剤搬送体4との間に入り込むのを防止できる。
【0053】
なお、ホッパー3a内の微粉末状薬剤を使い切れば、粉末吸入器は廃棄される。
【0054】
【発明の効果】
本発明の粉末吸入器によれば、前記薬剤搬送体を揺動自在に配設し、該薬剤搬送体の揺動によって前記計量孔を円弧運動させるように構成したので、計量孔が薬剤吸入流路に向けて移動するときには、微粉末状薬剤は薬剤排出孔の孔壁に沿って流れて微粉末状薬剤のすり切りをスムーズに行うことができ、その結果、供給体と薬剤搬送体との間に微粉末状薬剤が挟まることによる粉末状薬剤の計量性の低下や薬剤搬送体の操作性の悪化を防止することができる。しかも、供給体の薬剤排出孔と吸気流路との間を計量孔が往復する単純な機構で済ませることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0055】
また、前記計量孔を、前記薬剤搬送体の揺動中心と前記薬剤搬送体への前記操作体の作用点との間に位置させれば、操作体の移動距離よりも薬剤搬送体の計量孔の移動距離を短くでき、蓄積される静電気量を軽減できて微粉末状薬剤の定量性及び微粒子割合の低下を防止できる。
【0056】
また、前記操作体を押し釦により構成し、前記操作体を押圧して前記計量孔を前記充填位置から前記飛散位置まで移動するように構成すれば、操作体が保護キャップ兼ねる従来の粉末吸入器に較べて、保護キャップを吸引口から取り外すのに必要な距離だけ操作体を移動させる必要がなくなり、その結果、操作体の操作距離を必要以上に大きくする必要がなくなって静電気量を軽減できる。
【0057】
また、前記供給体、前記薬剤搬送体及び前記操作体に導電性を付与すれば、摩擦で発生する静電気を漏洩させることができ、極めて微量の微粉末薬剤の定量性を確保するとともに、より高い微粒子割合を得ることができる。
【0058】
また、上述のように前記供給体の薬剤排出孔と前記吸気流路との間を前記計量孔が往復する機構において、該計量孔を球面凹状の有底孔にすれば、患者が吸気せずに誤って操作体を複数回操作することがあっても、計量孔内に微粉末状薬剤が新たに充填されるのを防止でき、一回分以上の薬剤が患者の肺内に吸入されることがなくなり、しかも、一回分の薬剤を残らず患者の肺内に吸入できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の粉末吸入器を示す斜視図である。
【図2】同粉末吸入器の縦断面図である。
【図3】同粉末吸入器の分解状態を示す側面図である。
【図4】同粉末吸入器の上側ハウジングの平面図である。
【図5】同粉末吸入器の下側ハウジングの平面図である。
【図6】同粉末吸入器のロック体の平面図である。
【図7】同粉末吸入器の操作体の平面図である。
【図8】同粉末吸入器のベース体の平面図である。
【図9】(a)は同粉末吸入器の薬剤搬送体の平面図、(b)は同薬剤搬送体の側面図である。
【図10】(a)は同粉末吸入器の押し上げ体の平面図、(b)はベース体への押し上げ体の取付状態を示す断面図である。
【図11】同粉末吸入器のカウンタを示す平面図である。
【図12】(a)は同粉末吸入器の供給体の平面図、(b)は同供給体の底面図である。
【図13】(a)は同粉末吸入器のマウスピースの平面図、(b)は同マウスピースの側面図である。
【図14】同粉末吸入器の組立順序を示す平面図である。
【図15】同粉末吸入器の組立順序を示す平面図である。
【図16】同粉末吸入器の組立順序を示す平面図である。
【図17】同粉末吸入器の組立順序を示す平面図である。
【図18】同粉末吸入器の組立順序を示す平面図である。
【図19】同粉末吸入器の薬剤搬送体の動作を示す平面図である。
【図20】同粉末吸入器の操作体のロック動作を示す平面図である。
【図21】同粉末吸入器のよる微粉末状薬剤のすり切り動作を示す概略図である。
【図22】従来の粉末吸入器のよる微粉末状薬剤のすり切り動作を示す概略図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
3 供給体
3 供給体
3b 薬剤供給孔
4 薬剤搬送体
4c 薬剤搬送体の計量孔
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多回数用量の微粉末状薬剤を投与することができる粉末吸入器に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の粉末吸入器は、多回数用量の微粉末状薬剤を収容する供給体と、一回分の用量に対応する容積の計量孔を有する薬剤搬送体と、該薬剤搬送体を操作する操作体とを備えている。
【0003】
そして、微粉末状薬剤を吸入する場合には、前記供給体の薬剤排出孔から前記計量孔内に前記微粉末状薬剤を充填し、前記供給体に対して前記薬剤搬送体を摺動させて前記計量孔を直線的に移動させる。
【0004】
このとき、前記計量孔内の前記微粉末状薬剤は前記薬剤搬送体の摺動により前記薬剤排出孔の孔縁部ですり切られて一定量の微粉末状薬剤が吸入流路の中に搬送される(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、かかる構成を採用した場合には、次のような2つの問題点があった。
【0006】
第1に、微粉末状薬剤をすり切るときに、図22に示すように計量孔100が矢印のように直線的に移動することにより、微粉末状薬剤が薬剤排出孔101の孔縁部近くの斜線部分に密集し、この結果、微粉末状薬剤の供給体と薬剤搬送体との間に微粉末状薬剤が挟まって微粉末状薬剤の計量性を低下させ、また、薬剤搬送体の操作性も悪くなるという問題があった。
【0007】
第2に、前記薬剤搬送体の摺動による摩擦帯電で静電気が発生し、前記微粉末状薬剤が粉末吸入器内に付着して微粉末状薬剤の定量性及び微粒子割合が低下するという問題があった。
【0008】
第2の問題点については、前記計量孔の移動距離を短くして帯電量を減少させることが考えられるが、従来の前記粉末吸入器は、保護キャップが操作体を兼ね、しかも、マウスピースを露出させるのに必要な保護キャップの移動距離に相当する距離だけ前記計量孔を移動させるように構成されていたので、少なくとも粉末吸入器の吸い口から前記保護キャップを取り外すのに必要な距離だけ前記計量孔を移動させなければならず、帯電量の減少は困難であった。
【0009】
また、専用の操作体を用いて薬剤搬送体を操作する場合であっても、使用者に操作体を操作したという実感を持たせるには、操作体をある程度の距離だけ移動させる必要がある。すなわち、粉末吸入器の場合は、前記計量孔が薬剤吸入流路の中まで移動して吸入が可能になったか否かを直接確認できないので、操作体の操作感覚によって吸入可能状態を実感させる必要がある。
【0010】
このように従来の粉末吸入器では、前記操作体を僅かに移動させて帯電量を減少させるのは構造上困難であった。
【0011】
【特許文献1】
特表2000―501013号公報(第2―3頁、図1E、図18B)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、微粉末状薬剤が供給体と薬剤搬送体との間に挟まるのを防止でき、また、操作体の移動距離を短くすることなく帯電量の減少が可能となる粉末吸入器を提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の粉末吸入器は、ハウジングと、多回数用量の微粉末状薬剤を収容し、下面に薬剤排出孔が開口した供給体と、前記供給体の薬剤排出孔から微粉末状薬剤が供給され、一回分の用量分の容積を有する計量孔を上面側に有する薬剤搬送体と、往復動自在に配設されて前記薬剤搬送体を操作する操作体とを備え、前記薬剤搬送体を前記供給体の下面に接触させた状態で動かすことにより、前記計量孔に充填された微粉末状薬剤を前記薬剤排出孔の位置から吸気流路の中へ移動させる粉末吸入器において、前記薬剤搬送体を揺動自在に配設し、該薬剤搬送体の揺動によって前記計量孔を円弧運動させるように構成したことを特徴とする。
【0014】
また、前記計量孔を、前記薬剤搬送体の揺動中心と前記薬剤搬送体への前記操作体の作用点との間に位置させるのが望ましい。
【0015】
また、前記操作体は押し釦であって、前記操作体を押圧することにより前記計量孔を前記薬剤吸入流路の中へ移動させるのが望ましい。
【0016】
また、前記供給体、前記薬剤搬送体及び前記操作体に導電性を付与するのが望ましい。
【0017】
また、前記計量孔は球面凹状の有底孔であることが望ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は粉末吸入器の斜視図、図2は粉末吸入器の縦断面図、図3は粉末吸入器の分解した側面図である。粉末吸入器は、図1乃至図3のようにハウジング1と、微粉末状薬剤を自力で吸入するためのマウスピース2と、多回数用量の微粉末状薬剤を収容する供給体3と、一回分の用量の微粉末状薬剤を搬送する薬剤搬送体4と、薬剤搬送体4を操作する操作体(押し釦)5と、操作体5をロックするロック体6と、ベース体7と、投薬回数を表示するカウンタ8とを備えている。
【0020】
次に、ハウジング1について説明する。ハウジング1は上側ハウジング1aと下側ハウジング1b、保護キャップ1cとを備えている。上側ハウジング1a及び下側ハウジング1bは、図3に示す係止爪1d及び係止溝1eによっていわゆるパッチン式で接合される。なお、後述のように薬剤搬送体4は揺動するので、薬剤搬送体4に揺動スペースを確保するためにハウジング1の横幅は広くなっている。
【0021】
図2及び図4のように上側ハウジング1a及び下側ハウジング1bの先端側にはマウスピース2の取付部1fが形成され、該取付部1fにはマウスピース2を挟持するための挟持用突起1gが設けられている。上側ハウジング1a及び下側ハウジング1bの基端側には操作体5の収納部1hが形成されている。上側ハウジング1aのマウスピース2の取付部1hの近傍には横長スリット状の空気取入口1iが設けられ、カウンタ8の取付け位置に対応する部位にはカウンタ8の状態を読み取るための窓1jが設けられている。
【0022】
図5のように下側ハウジング1bの内面側には、操作体5をガイドするための突条部1l及びガイド軸1mと、突脈部1nで囲繞されるロック体6を収容する収納部1oと、該収納部1o内に形成されるロック体6の枢支軸1pと、ばね係止突起1qと、ベース受け台1rと、嵌合突起1sとがそれぞれ形成されている。
【0023】
次にマウスピース2について説明する。マウスピース2は本体部2aとカバー部2bとで構成され、本体部2aには微粉末状薬剤を分散させる薬剤吸入流路2cが形成され、本体部2aの外周部には嵌合溝2eが形成され、カバー部2bには吸気孔2fが設けられている。
【0024】
次に供給体3について説明する。供給体3は、約200回分の服用量の微粉末状薬剤を収容するホッパー3aを備え、該ホッパー3aの下端には薬剤排出孔3bが設けられ、供給体3のホッパー3aの上端側の開口部3cは微粉末状薬剤を湿度から保護する蓋3dにて閉塞され、ホッパー3aの外壁面には空気吸引溝32が形成されている。また、供給体3には貫通孔3fが形成され、カウンタ8を位置決めするための位置決めピン3hを有するカバー3eが設けられている。更に、後述する薬剤搬送体4の計量孔4cの周囲部との接触面積を少なくするために、薬剤排出孔3bの周縁部及び薬剤搬送体4の摺動部4eに対応する部位には肉厚部3gが形成され、薬剤搬送体4は該肉厚部3gの下面にのみ接触するようになっている。
【0025】
次に操作体5について説明する。操作体5はハウジング1に平行往復動自在に配設され、操作ばね(コイルばね)51の弾撥力に抗して押し込まれるようになっている。操作体5はガイド板5aを備え、該ガイド板5aには薬剤搬送体4の係止用長孔5b、ガイド用長孔5c、及び下側ハウジング1bのばね係止突起1qを挿通するための挿通用長孔5dが設けられ、ガイド板5aの下面側には係合ピン5eが設けられている。また、操作体5からは操作ばね51を取り付けるためのばね取付軸5fが突設されている。
【0026】
次にロック体6について説明する。ロック体6にはガイド溝6a、第1切替部6b、第2切替部6c、上係合部6d、下係合部6e、枢支孔6f及び弾性杆6gがそれぞれ形成されている。ロック体6は、下側ハウジング1bの収容部1oに収容され、枢支孔6fは収容部1o内の枢支軸1pにはめ込まれるようになっている。また、ロック体6の上には操作体5が位置し、該操作体5の係合ピン5eはロック体6のガイド溝6a内に挿入されている。
【0027】
かかるロック体6は、以下のように動作する。すなわち、操作体5を指先で位置まで押し込むと、操作体5の係合ピン5eはロック体6の下係合部6eからガイド溝6aを通って第1切替部6bに至る(図20(a))。このとき、ロック体6は弾性杆6gの弾撥力に抗して揺動する。その後、操作体5を解除すると、操作ばね51の弾撥力により操作体5の係合ピン5eが上係合部6dに係合し、操作体5は押し込まれた状態でロックされる。次に、操作体5を再び押し込むと、ロック体6の弾性杆6gの弾性復元力により係合ピン5eは下係合部6eから解除されて第2切替部6cに至る(図20(b))。次に、操作体5に対する押し込み力を解除すると、操作ばね51の弾撥力により係合ピン5eはガイド溝6aを通って下係合部6eに移動して操作体5は元の位置に復帰する(図20(a))。なお、粉末吸入器全体の動作については後述する。
【0028】
次に薬剤搬送体4について説明する。図9のように薬剤搬送体4の一端部には軸孔4aが形成され、他端部には係止ピン4bが設けられ、軸孔4aと係止ピン4bとの中間部分には一回分の用量に対応する容積を有する球面凹状の有底の計量孔4cが形成されている。更に、薬剤搬送体4にはカウンタ8に係合した該カウンタ8を回転させるラチェット4dが形成されている。なお、計量孔4cは貫通孔であっても良い。
【0029】
薬剤搬送体4の上面の一部は盛り上げられて平面視が円弧状の摺動部4eが形成され、摺動部4eの一端部に計量孔4cが位置している。これにより、計量孔4cが円弧状に移動した場合でも薬剤搬送体4の摺動部4eのみが供給体3の薬剤排出孔3bの周囲の肉厚部3gの下面と接触するようになっている。
【0030】
薬剤搬送体4は、後述のようにベース体7の枢支ピン7iに揺動自在に枢支され、薬剤搬送体4の係止ピン4bは操作体5の係止用長孔5bに挿入されることにより薬剤搬送体4と操作体5とが係合する。
【0031】
また、薬剤搬送体4は後述する押し上げ体9によって上方に弾性付勢されることにより、薬剤搬送体4の摺動部4eは供給体3の薬剤排出孔3bの周囲の肉厚部3gの下面と弾性的に接触するようになっている。これにより、薬剤搬送体4の摺動部4eとホッパー3aの薬剤排出孔3bの周囲部との緊密度が増し、薬剤搬送体4の計量孔4cから微粉末状薬剤が漏れるのを防止している。
【0032】
次にベース体7について説明する。ベース体7には嵌合孔7a及びカウンタ支持軸7bが設けられ、このカウンタ支持軸7bの周囲にはカウンタ支持環7cが立設され、また、薬剤搬送体4が揺動して係止ピン4bが移動する範囲には切り欠き部7dが設けられている。
【0033】
また、ベース体7には押し上げ体9の取付部7eが形成され、該取付部7eには嵌合孔7fを有するばね支持軸7gと固定ピン7hとが設けられている。一方、押し上げ体9の下面側には嵌合突起9aと嵌合孔9bを有するボス部9cとが形成されている。そして、図1010(b)のようにベース体7の嵌合孔7hに押し上げ体9の嵌合突起9bを嵌合し、押し上げばね(コイルばね)10が挿通されたベース体7のばね支持軸7gに押し上げ体9の嵌合突起9aを嵌合することにより、押し上げ体9を上方にばね付勢している。また、押し上げ体9の取付部7eの近傍には枢支ピン7iが形成されている。
【0034】
次にカウンタ8について説明する。カウンタ8は、公知の構造のものであって、1の位のカム付き円盤8aと10の位のカム付きホイール8bとを備えている。カム付き円盤8aはベース体7のカウンタ支持軸7bにより回転自在に支持され、カム付き円盤8aにはカム付きホイール8bがはめ込まれると共にベース体7のカウンタ支持環7cにて支持されている。
【0035】
そして、薬剤搬送体4の揺動によりラチェット4dによって1の位のカム付き円盤8aは1の計数位置だけ回転し、投薬回数が10回目でカム付きホイール8bが1の計数位置だけ回転し、カム付きホイール8bの最大目盛だけ投薬回数を表示する。
【0036】
供給体3、薬剤搬送体4及び操作体5の材料にカーボン等の導電性フィラーを加えている導電性を付与し、静電気を漏洩させるようにしても良い。
【0037】
なお、導電性を付与する部品は、供給体3、薬剤搬送体4及び操作体5には限定されない。
【0038】
次に粉末吸入器の組み立て手順について説明する。
【0039】
まず、上述のように下側ハウジング1bの収容部1oにロック体6を収容した後、操作体5を下側ハウジング1bに取り付けてロック体6の上に位置させる。このとき、操作体5のガイド用長孔5c内に下側ハウジング1bのガイド軸1mを挿通し、操作体5の挿通用長孔5dに下側ハウジング1bのばね係止突起1qを挿通する。また、操作体5のばね取付軸5fに操作ばね51をその一端側から挿通し、該操作ばね51の他端側を下側ハウジング1bのばね係止突起1qに係止する。
【0040】
次に、ベース体7を下側ハウジング1bのベース受け台1rに載置し、ベース体7の嵌合孔7aを下側ハウジング1bの嵌合突起1sに嵌合してベース体7を位置決めする(図16R>6)。
【0041】
次に、上述のようにしてベース体7に押し上げ体9を装着した後、ベース体7及び押し上げ体9の上に薬剤搬送体4を重ねる。このとき、薬剤搬送体4の枢支孔4cとベース体7の枢支ピン7iと合致させ、薬剤搬送体4の係止ピン4bを操作体5の係止用長孔5bに挿入して薬剤搬送体4を操作体5に係合する(図17)。また、上述のようにしてカウンタ8をベース体7に装着する。更に、下側ハウジング1bの挟持用突起にマウスピース2の嵌合溝2eを嵌合する。
【0042】
次に、薬剤搬送体4の上に供給体3を位置させ、ベース体7の枢支ピン7iに供給体3の貫通孔3f及び薬剤搬送体4の枢支孔4aを挿通して薬剤搬送体4を揺動自在に枢支し、供給体3のカバー3eでカウンタ8を位置決めする(図18)。
【0043】
次に、下側ハウジング1bに上側ハウジング1aを接合することにより、上側ハウジング1aの内面側に形成された位置決め部によって供給体3を位置決めすると共に、上側ハウジング1aの挟持用突起1gをマウスピース2の嵌合溝2eに嵌合し、最後に、マウスピース2の本体部2aにカバー部2bを嵌合する。
【0044】
以上のように、粉末吸入器は部品を下から積み上げて組み立てられるので、組立手順が明確になって生産性が向上し、また、ねじが不要となる分だけ生産性が更に向上する。
【0045】
このように構成される粉末吸入器は、以下の動作をすることにより計量孔4cによる微粉末状薬剤の計量性を向上させることができる。
【0046】
操作体5を押し込む前の状態は、図2のように薬剤搬送体4は該薬剤搬送体4の計量孔4cが供給体3の薬剤排出孔3bと合致する薬剤充填位置に位置する。
【0047】
そして、操作体5を押し込んでロックすると、薬剤搬送体4が揺動し、図2の二点鎖線のように計量孔4cは薬剤充填位置からホッパー3aの空気吸引溝32の近傍の空間内へ移動する。このとき、計量孔4c内に充填された微粉末状薬剤は薬剤排出孔3bの周囲の肉厚部3gによってすり切られ、一回分の用量の微粉末状薬剤が空気吸引溝32の近傍の空間まで搬送される。
【0048】
次に、患者の吸気圧でマウスピース2の吸気孔2fからハウジング1内の空気を吸引すると、ハウジング1内は負圧になり、図2の矢印のように外部の空気がハウジング1の空気取入口1iからハウジング1内に吸引され、マウスピース2の空気吸引溝32を通ってマウスピース2の薬剤吸入流路2cに至る。これにより、薬剤搬送体4の計量孔4c内に充填された微粉末状薬剤に空気衝撃が加わって該微粉末状薬剤がマウスピース2の薬剤吸入流路2c内に飛散し、吸引された空気と共に吸気孔2fを通って患者の肺器官内に至る。
【0049】
次に、操作体5を元の位置に復帰させることにより、薬剤搬送体4がスイングバックして計量孔4cは供給体3の薬剤排出孔3bの下方の薬剤充填位置まで戻る。
【0050】
このように、操作体5の押し込み動作及び操作体5の復帰動作により、薬剤搬送体4の摺動部4eは、供給体3の薬剤排出孔3bの周囲部に対して摺動し、薬剤搬送体4の計量孔4cは、薬剤排出孔3bと合致する位置と空気吸引溝32の近傍の空間との間を円弧往復運動をする。
【0051】
また、薬剤搬送体4の計量孔4cは、薬剤搬送体4の軸孔4a(薬剤搬送体4の揺動中心)と薬剤搬送体4の係止ピン4b(操作体5の作用点)との中間に位置するので、計量孔4cの移動距離は操作体5の移動距離よりも短くなり、操作体5の移動距離と同じ距離だけ移動する従来のものに較べて、計量孔4cの周囲の摺動距離が短くなって静電気発生量を低減でき、計量孔4cによる微粉末状薬剤の計量性能を向上させることができる。
【0052】
また、図21のように計量孔4cは円弧運動するので、微粉末状薬剤をすり切る際に、同図の矢印のように微粉末状薬剤はホッパー3aの薬剤排出孔3bの孔壁31cに沿って流れる。この結果、微粉末状薬剤が薬剤排出孔3bの孔壁31c付近で滞留することによって供給体3と薬剤搬送体4との間に入り込むのを防止できる。
【0053】
なお、ホッパー3a内の微粉末状薬剤を使い切れば、粉末吸入器は廃棄される。
【0054】
【発明の効果】
本発明の粉末吸入器によれば、前記薬剤搬送体を揺動自在に配設し、該薬剤搬送体の揺動によって前記計量孔を円弧運動させるように構成したので、計量孔が薬剤吸入流路に向けて移動するときには、微粉末状薬剤は薬剤排出孔の孔壁に沿って流れて微粉末状薬剤のすり切りをスムーズに行うことができ、その結果、供給体と薬剤搬送体との間に微粉末状薬剤が挟まることによる粉末状薬剤の計量性の低下や薬剤搬送体の操作性の悪化を防止することができる。しかも、供給体の薬剤排出孔と吸気流路との間を計量孔が往復する単純な機構で済ませることができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0055】
また、前記計量孔を、前記薬剤搬送体の揺動中心と前記薬剤搬送体への前記操作体の作用点との間に位置させれば、操作体の移動距離よりも薬剤搬送体の計量孔の移動距離を短くでき、蓄積される静電気量を軽減できて微粉末状薬剤の定量性及び微粒子割合の低下を防止できる。
【0056】
また、前記操作体を押し釦により構成し、前記操作体を押圧して前記計量孔を前記充填位置から前記飛散位置まで移動するように構成すれば、操作体が保護キャップ兼ねる従来の粉末吸入器に較べて、保護キャップを吸引口から取り外すのに必要な距離だけ操作体を移動させる必要がなくなり、その結果、操作体の操作距離を必要以上に大きくする必要がなくなって静電気量を軽減できる。
【0057】
また、前記供給体、前記薬剤搬送体及び前記操作体に導電性を付与すれば、摩擦で発生する静電気を漏洩させることができ、極めて微量の微粉末薬剤の定量性を確保するとともに、より高い微粒子割合を得ることができる。
【0058】
また、上述のように前記供給体の薬剤排出孔と前記吸気流路との間を前記計量孔が往復する機構において、該計量孔を球面凹状の有底孔にすれば、患者が吸気せずに誤って操作体を複数回操作することがあっても、計量孔内に微粉末状薬剤が新たに充填されるのを防止でき、一回分以上の薬剤が患者の肺内に吸入されることがなくなり、しかも、一回分の薬剤を残らず患者の肺内に吸入できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の粉末吸入器を示す斜視図である。
【図2】同粉末吸入器の縦断面図である。
【図3】同粉末吸入器の分解状態を示す側面図である。
【図4】同粉末吸入器の上側ハウジングの平面図である。
【図5】同粉末吸入器の下側ハウジングの平面図である。
【図6】同粉末吸入器のロック体の平面図である。
【図7】同粉末吸入器の操作体の平面図である。
【図8】同粉末吸入器のベース体の平面図である。
【図9】(a)は同粉末吸入器の薬剤搬送体の平面図、(b)は同薬剤搬送体の側面図である。
【図10】(a)は同粉末吸入器の押し上げ体の平面図、(b)はベース体への押し上げ体の取付状態を示す断面図である。
【図11】同粉末吸入器のカウンタを示す平面図である。
【図12】(a)は同粉末吸入器の供給体の平面図、(b)は同供給体の底面図である。
【図13】(a)は同粉末吸入器のマウスピースの平面図、(b)は同マウスピースの側面図である。
【図14】同粉末吸入器の組立順序を示す平面図である。
【図15】同粉末吸入器の組立順序を示す平面図である。
【図16】同粉末吸入器の組立順序を示す平面図である。
【図17】同粉末吸入器の組立順序を示す平面図である。
【図18】同粉末吸入器の組立順序を示す平面図である。
【図19】同粉末吸入器の薬剤搬送体の動作を示す平面図である。
【図20】同粉末吸入器の操作体のロック動作を示す平面図である。
【図21】同粉末吸入器のよる微粉末状薬剤のすり切り動作を示す概略図である。
【図22】従来の粉末吸入器のよる微粉末状薬剤のすり切り動作を示す概略図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
3 供給体
3 供給体
3b 薬剤供給孔
4 薬剤搬送体
4c 薬剤搬送体の計量孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
多回数用量の微粉末状薬剤を収容し、下面に薬剤排出孔が開口した供給体と、
前記供給体の薬剤排出孔から微粉末状薬剤が供給され、一回分の用量分の容積を有する計量孔を上面側に有する薬剤搬送体と、
往復動自在に配設されて前記薬剤搬送体を操作する操作体とを備え、
前記薬剤搬送体を前記供給体の下面に接触させた状態で動かすことにより、前記計量孔に充填された微粉末状薬剤を前記薬剤排出孔の位置から吸気流路の中へ移動させる粉末吸入器において、
前記薬剤搬送体を揺動自在に配設し、該薬剤搬送体の揺動によって前記計量孔を円弧運動させるように構成したことを特徴とする粉末吸入器。
【請求項2】
前記計量孔を、前記薬剤搬送体の揺動中心と前記薬剤搬送体への前記操作体の作用点との間に位置させたことを特徴とする請求項1に記載の粉末吸入器。
【請求項3】
前記操作体は押し釦であって、前記操作体を押圧することにより前記計量孔を前記薬剤吸入流路の中へ移動させるように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末吸入器。
【請求項4】
前記供給体、前記薬剤搬送体及び前記操作体に導電性を付与したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の粉末吸入器。
【請求項5】
前記計量孔は球面凹状の有底孔であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の粉末吸入器。
【請求項1】
ハウジングと、
多回数用量の微粉末状薬剤を収容し、下面に薬剤排出孔が開口した供給体と、
前記供給体の薬剤排出孔から微粉末状薬剤が供給され、一回分の用量分の容積を有する計量孔を上面側に有する薬剤搬送体と、
往復動自在に配設されて前記薬剤搬送体を操作する操作体とを備え、
前記薬剤搬送体を前記供給体の下面に接触させた状態で動かすことにより、前記計量孔に充填された微粉末状薬剤を前記薬剤排出孔の位置から吸気流路の中へ移動させる粉末吸入器において、
前記薬剤搬送体を揺動自在に配設し、該薬剤搬送体の揺動によって前記計量孔を円弧運動させるように構成したことを特徴とする粉末吸入器。
【請求項2】
前記計量孔を、前記薬剤搬送体の揺動中心と前記薬剤搬送体への前記操作体の作用点との間に位置させたことを特徴とする請求項1に記載の粉末吸入器。
【請求項3】
前記操作体は押し釦であって、前記操作体を押圧することにより前記計量孔を前記薬剤吸入流路の中へ移動させるように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末吸入器。
【請求項4】
前記供給体、前記薬剤搬送体及び前記操作体に導電性を付与したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の粉末吸入器。
【請求項5】
前記計量孔は球面凹状の有底孔であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の粉末吸入器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2004−129915(P2004−129915A)
【公開日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−298726(P2002−298726)
【出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【出願人】(591016334)大塚テクノ株式会社 (19)
【公開日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【出願人】(591016334)大塚テクノ株式会社 (19)
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