説明

粒子線照射システム及び荷電粒子ビームの補正方法

【課題】照射線量一様度を低下させずにビーム利用効率を高めることのできる粒子線照射システムを提供する。
【解決手段】
イオンビーム10を加速して出射するシンクロトロン13と、シンクロトロン13から出射されたイオンビーム10を照射する照射装置30とを有し、照射装置30から一単位の照射を複数回行う粒子線照射システムにおいて、シンクロトロン13内の蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を計測する蓄積ビーム電荷量計測手段15と、蓄積ビーム電荷量計測手段で計測した蓄積ビーム電荷量(Qmeas)に基づき、シンクロトロン13から出射する目標ビーム電流値(Ifb)を設定する目標電流設定手段と、前記目標電流設定手段より求められた出射ビーム電流の目標値(Ifb)に基づきビーム電流を制御する出射ビーム電流補正制御手段を備えることを特徴とする粒子線照射システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線照射システム及び荷電粒子ビームの補正方法に係り、特に、陽子または重イオンなどの荷電粒子ビーム(イオンビーム)を患部に照射してがんを治療する粒子線治療装置に適応するのに好適な粒子線照射システム及び荷電粒子ビーム出射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの放射線治療として、陽子や重イオン等のイオンビームを患者のがんの患部に照射して治療する粒子線治療が知られている。イオンビームの照射法として、特許文献1〜3、非特許文献1、2に開示されているような、均一走査照射法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2596292号公報
【特許文献2】特開2009−28500号公報
【特許文献3】特許第4158931号公報
【特許文献4】特開2010−238463号公報
【特許文献5】特許第4691583号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】メディカル フィジックス 36巻8号(2009年8月)の第3560〜3567頁(MEDICAL PHYSICS VOLUME 36 NUMBER 8 (AUGUST 2009) P3560-3567)
【非特許文献2】レビュー オブ サイエンティフィック インスツルメンツ 64巻8号(1993年8月)の第2074〜2093頁(REVIEW OF SCIENTIFIC INSTRUMENTS VOLUME 64 NUMBER 8 (AUGUST 1993) P2074-2093)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
均一走査照射法では、照射線量の一様度を保つためには、所定の領域の一単位の照射の途中でビームを枯渇させないようにする必要がある。一方で、シンクロトロンに蓄積されるイオンビームの電荷量は一定ではなく、前段加速器から供給されるイオンビームの電流変動に応じて変動する。
【0006】
蓄積電荷量が一単位の照射分に満たない場合、そのまま照射すると途中でビームが枯渇してしまい、照射線量一様度が低下する。逆に一単位の照射分に満たない蓄積ビームを利用しなければ、ビーム利用効率の点で不利である。
【0007】
本発明の目的は、照射線量一様度を低下させずにビーム利用効率を高めることのできる粒子線照射システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
イオンビームを加速して出射するシンクロトロンと、前記シンクロトロンから出射された前記イオンビームを照射する照射装置とを有し、前記照射装置から一単位の照射を複数回行う粒子線照射システムにおいて、前記シンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を計測する蓄積ビーム電荷量計測手段と、前記蓄積ビーム電荷量計測手段で計測した蓄積ビーム電荷量(Qmeas)に基づき、前記シンクロトロンから出射する目標ビーム電流値(Ifb)を設定する目標電流設定手段と、前記目標電流設定手段より求められた出射ビーム電流の目標値(Ifb)に基づきビーム電流を制御する出射ビーム電流補正制御手段を備えることを特徴とする粒子線照射システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、照射線量一様度を低下させずにビーム利用効率を高めることのできる粒子線照射システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例である粒子線照射システムの構成を示す。
【図2】本発明の実施例であるシンクロトロンの運転サイクルにおける周回ビームのエネルギーの変化と蓄積ビーム電荷量の変化を示す。
【図3】本発明の実施例である照射装置の構成を示す。
【図4】本発明の実施例である均一走査照射法でのビームの走査経路を示す。
【図5】本発明の実施例である照射制御開始前の制御準備フローを示す。
【図6】本発明の実施例であるビーム照射制御時のフローを示す。
【図7】本発明の実施例であるビーム照射制御フローによるビーム照射制御時の目標ビーム電流値とそれに伴う蓄積ビーム電荷量の時間変化を示す。
【図8】本発明の実施例である出射ビーム電流に対するフィードバック制御システムの構成を示す。
【図9】本発明の実施例である繰り上げ照射制御を追加したビームの照射制御フローを示す。
【図10】本発明の実施例である繰り上げ照射制御を追加したビームの照射制御フローによるビーム照射制御時の目標ビーム電流値とそれに伴う蓄積ビーム電荷量の時間変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
粒子線治療に用いる粒子線照射装置は、イオンビーム発生装置、ビーム輸送系、及び照射装置を備える。イオンビーム発生装置は、周回軌道に沿って周回するイオンビームを所望のエネルギーまで加速させるシンクロトロンやサイクロトロンを有する。
【0012】
シンクロトロンは、周回軌道に沿って周回するイオンビームに高周波電圧を印加して目標のエネルギーまで加速する高周波加速装置(加速空胴)、周回しているイオンビームのベータトロン振動振幅を増大させる出射用高周波電極、及びイオンビームを周回軌道から取り出す出射用デフレクターを備える(例えば、特許文献1)。目標エネルギーまで加速されたイオンビームをシンクロトロンからビーム輸送系へ出射する際、出射用高周波電極に高周波磁場または高周波電場(以下、高周波信号と表記)を印加し、周回しているイオンビームの固有振動であるベータトロン振動振幅を増大させる。ベータトロン振動振幅が増大したイオンビームは、安定限界外に移動し、シンクロトロンからビーム輸送系へ出射され、照射装置に輸送される。
【0013】
照射装置は、上記イオンビーム発生装置から導かれたイオンビームを、患者の体表面からの深さ及び患部形状に合わせて整形して、治療用ベッド上の患者の患部に照射する。照射法として均一走査照射法(非特許文献1の3561頁、図1)がある。
【0014】
均一走査照射法は、走査電磁石でイオンビームを照射平面上に走査するため、二種類の散乱体で照射面全域にビームを広げる二重散乱体照射システムよりもエネルギー損失が少ないため、二重散乱体照射法よりもイオンビームの飛程が長くできる特徴がある。
【0015】
均一走査照射装置は、ビームを照射平面上に走査する二つの走査電磁石(水平走査電磁石、垂直走査電磁石)と、走査電磁石で走査されたイオンビームを患部の深さ方向厚みに合わせた吸収線量範囲(拡大ブラックピーク(Spread-Out Bragg Peak)以下、SOBPと表記)を形成するエネルギー吸収体と、患部形状に合わせて照射野を形成するボーラスとコリメータで構成される。均一走査照射装置では、SOBPを形成するエネルギー吸収体にリッジフィルタ(非特許文献2の2078頁、図31)を用いる。リッジフィルタはイオンビームが通過する領域の厚みが異なる楔型形状のエネルギー吸収体を平面上に複数個配置した構造体であり、リッジフィルタを通過したビームは、リッジフィルタの通過部の厚みに応じてエネルギーが減衰される。このエネルギーが減衰したイオンビームの重ね合わせにより、SOBPを形成する。
【0016】
均一走査照射法では、非特許文献2にも記載の通り、ビーム電流値を低く抑えた上でイオンビームを照射平面上で多数回の繰り返し照射(以下、リペイント)をすることで所定の線量一様度を達成する。そのため、ビーム電流値を一定値で制御することにより、照射平面上での線量一様度の悪化を抑制できるため、リペイント回数を減らせて線量率を向上できる。
【0017】
また、均一走査照射法でのビームの走査方法について図4を用いて説明する。均一走査照射法には、単円ワブラー法(例えば特許文献2に記載)、螺旋ワブラー法(例えば特許文献3に記載)、ラスター走査法(非特許文献1の3564頁、図7)および、ライン走査法が考えられている。単円ワブラー法は、図4(a)に記載のように、走査電磁石によって照射ビームを単円走査することにより、走査したビームのガウス分布の重ね合わせにより平坦な一様度を形成する。螺旋ワブラー法(図示せず)は、単円ワブラー法よりも飛程を確保した上でビーム利用効率を向上させるために考案された走査法であり、初期位相を変化させた走査軌跡を重畳することで照射平面上を走査する。ラスター走査法は先に示したワブラー法と異なり、図4(b)に記載のように、ビームを直線的に連続して走査する方法である。またライン走査法は、図4(c)に記載のように、ラスター走査法では照射していた短走査方向への走査中にはビームの照射を停止し、実効的なビームの利用効率を高める方法である。
【0018】
ここで、一単位の照射に必要なビーム走査について説明する。まず、一単位の照射に必要なビーム走査の範囲と言った場合は、走査開始点から終了点まで走査した軌跡とする。図4に示したとおり、単円ワブラー法および、螺旋ワブラー法(図示せず)は、走査開始点と終了点が同一点となる。また、ラスター走査法およびライン走査法は、走査開始点と終了点が異なる。これら一単位の照射に必要な走査時間は、一走査あたり数十ミリ秒〜100ミリ秒であるため、シンクロトロンの出射制御時間(約0.5秒〜数秒)に対して充分短い。
【0019】
次に各文献の記載を用いながら検討が必要な事項について説明する。均一走査照射法では、照射線量の一様度を保つためには、出射制御中に所定の領域を照射完了するまで、ビームを枯渇させることなく照射することが望まれる。非特許文献1では、イオンビーム発生装置としてサイクロトロンを採用している。サイクロトロンの場合、照射装置に供給するイオンビームは直流ビームとなる。しかし、イオンビーム発生装置にシンクロトロンを採用する際、シンクロトロンの運転周期に合わせてシンクロトロン内に蓄積したイオンビームを照射装置に供給する。そのため、出射制御を継続することでシンクロトロンに蓄積したイオンビームが枯渇するおそれがある。そのため、シンクロトロンの蓄積ビームが枯渇した際、出射制御を停止するとともに走査電磁石のビーム走査制御を停止した後、再び次の運転周期からイオンビームの蓄積と出射制御および走査電磁石のビーム走査制御を継続する必要がある。
【0020】
この蓄積ビーム電荷量の枯渇に伴うビーム照射の停止が生じた場合でも線量一様度に影響しないよう、シンクロトロンから照射装置に供給するイオンビームの電流値は低く設定し、100回程度のリペイントを実施することで、ビーム照射停止位置での線量一様度の悪化を抑制していた(非特許文献1の3562頁に記載)。そのため、所定の線量を照射するのに時間が掛かるため、治療時間が長くなってしまう課題があった。
【0021】
また、シンクロトロンから供給するイオンビームの時間変動を抑制する手段として、出射ビーム電流フィードバック制御が考案されている。出射ビーム電流フィードバック制御は、照射装置に設けられた線量モニタ等で検出された電離電荷量をイオンビームの電流値に変換し、この検出電流値と目標電流値の偏差を出射用高周波電圧の振幅値を補正することで所望のビーム電流値に補正する。均一走査照射法に出射ビーム電流フィードバック制御を適用する際、目標ビーム電流値は一定値で制御する。しかし、シンクロトロンに蓄積されるイオンビームの電荷量は、シンクロトロンの前段加速器から供給されるイオンビームの電流変動に起因して変動することが分かっている。そのため、出射ビーム電流フィードバック制御を実施する際、一単位の照射に必要な時間と出射ビームの目標電流値の積で示される出射ビーム電荷量に対して、シンクロトロンに蓄積されるイオンビーム電荷量が減少すると、蓄積ビーム電荷量の枯渇に伴い、出射ビーム電流フィードバック制御をしているにも関わらず、出射制御後半のビーム電流波形に欠けが生じてしまい、線量一様度が悪化する恐れがあった。
【0022】
特許文献4では、出射制御中のビーム枯渇を抑制する対策として、シンクロトロンからビームを出射制御後に蓄積ビーム電荷量を計測し、蓄積ビーム電荷量が一単位の照射に必要な電荷量に満たない場合、減速制御に遷移する旨が記載されている。このような制御を実施することで、一単位の照射中にビームの枯渇は生じないが、シンクロトロンに蓄積しているビーム電荷量の利用効率が低くなるという課題があった。
【0023】
また、特許文献5では、出射制御前に蓄積ビーム電荷量を計測し、出射ビーム電流フィードバック制御の目標値を補正する旨が記載されている。フィードバック制御の目標値の補正に当たり、予めシンクロトロンを周回するイオンビームの蓄積電荷量の標準値を設定し、シンクロトロンの出射制御直前に計測した蓄積ビーム電荷量と蓄積電荷量の標準値との比較結果に基づき出射ビーム電流値を補正する旨が記載されている。特許文献5では、蓄積したイオンビーム電荷量を一度の出射制御で効率良く出射することを前提としているため、均一走査照射法のように照射装置に供給するイオンビームの電流値を低く設定し、複数回に分けて走査し照射する照射方法は想定されていない。
【0024】
以下に説明する本発明の各実施例では、シンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量に変動が生じても一単位の照射中にビーム枯渇を生じさせず、かつ照射線量の平坦度を担保することができる。また、シンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量を効率良く利用することで、所定の線量の照射に必要な時間を短縮し、治療時間を短くすることができる。
【0025】
なお、以下に説明する各実施例は、照射装置から一単位の照射を複数回行う均一走査照射法に関するものである。一単位の照射を複数回行う、すなわちリペイントするとは、典型的には、ある照射平面への一面の照射を複数回繰り返すことを意味する。各実施例では均一走査照射法における「一面の照射」を「一単位の照射」と表現しているが、これは特許文献5のようにシンクロトロンに蓄積したイオンビームの一面への照射を一回だけ行うものとの違いを明確にするためである。
【実施例1】
【0026】
本発明の好適な一実施例である粒子線照射システムを、図1及び図2及び図3を用いて説明する。本実施例の粒子線照射システム1は、図1に示すように、イオンビーム発生装置11、ビーム輸送装置14、照射野形成装置(荷電粒子ビーム照射装置、以下、照射装置という)30を備え、ビーム輸送装置14が、イオンビーム発生装置11と治療室内に配置される照射装置30を連絡する。
【0027】
上記粒子線照射システム1の制御システムは、イオンビーム発生装置11およびビーム輸送装置14を制御する加速器制御装置40、粒子線照射システム1全体を統括して制御する統括制御装置41、患者へのビーム照射条件を計画する治療計画装置43、治療計画装置43で計画した情報やイオンビーム発生装置であるシンクロトロン13およびビーム輸送装置14の制御情報等を記憶する記憶装置42、シンクロトロン13を構成する機器の同期制御を実現するタイミングシステム50、患者の安全を担保するために統括制御装置41とは独立のインターロックシステム60から構成される。また、出射用制御装置20により、イオンビーム発生装置11からビーム輸送装置14へのビームを出射する際に利用する高周波電圧を制御する。
【0028】
イオンビーム発生装置11は、イオン源(図示せず)、前段加速器12及びシンクロトロン13を備える。イオン源は前段加速器12に接続され、前段加速器12はシンクロトロン13に接続される。前段加速器12は、イオン源で発生したイオンビーム10をシンクロトロン13に入射可能なエネルギーまで加速する。前段加速器12で加速されたイオンビーム10aは、シンクロトロン13に入射される。
【0029】
図2(a)にシンクロトロン13の運転サイクルにおける周回ビームのエネルギーの変化を、図2(b)に蓄積ビーム電荷量の変化を示す。シンクロトロン13は、入射、加速、出射、減速という一連の運転制御を2秒〜3秒周期で実施する。また、出射制御に当たっては、事前に出射準備制御を実施する。
【0030】
シンクロトロン13に入射されたビーム10bは、加速空胴(図示せず)に印加した高周波電圧によりエネルギーを付与されることで、所望のエネルギーまで加速する。この際、シンクロトロン13内を周回するイオンビーム10bの周回軌道が一定となるように、イオンビーム10bの周回エネルギーの増加に合わせて偏向電磁石18、四極電磁石(図示せず)等の磁場強度および、加速空胴に印加する高周波電圧の周波数を高める。
【0031】
所望のエネルギーまで加速したイオンビーム10bは、出射準備制御により、四極電磁石および六極電磁石(図示せず)の励磁量により周回ビーム10bが出射可能な条件(周回ビームの安定限界条件)を成立させる。出射準備制御が終了後、出射用制御装置20から出射用高周波電極16に高周波電圧を印加し、シンクロトロン13内を周回するビーム10bのベータトロン振動振幅を増大させる。このベータトロン振動振幅の増大により、安定限界条件を超えた周回ビーム10bはシンクロトロン13からビーム輸送装置14に出射され、照射装置30に輸送される。シンクロトロン13からのビーム出射制御は、出射用制御装置20によって出射用高周波電極16に印加する高周波電圧のON/OFF制御することで高速に実現可能である。
【0032】
シンクロトロン13内の蓄積ビーム電荷量70は、シンクロトロン13の運転シーケンス(図2(a))に合わせて、図2(b)に示すように変化する。シンクロトロン13にイオンビーム10aが入射されると、蓄積ビーム電荷量は徐々に高められる。加速制御の初期には空間電荷効果等によってイオンビームが損失されるため、蓄積ビーム電荷量が減衰するが、加速中期から加速後期まではほぼ一定となる。シンクロトロン13は、イオンビーム10bをシンクロトロン13から一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)毎に出射する。一単位の照射が終了すると、後述する照射装置30の走査電磁石32の照射開始点への移動等の準備のため、ビームの出射を停止する。このようなビームの出射と停止を繰り返し、出射制御区間に出射しきれずにシンクロトロン13内に残存したビーム電荷量(Qloss)は、その後の減速制御により、低いエネルギーまで減速されて消滅する。
【0033】
図3に照射装置の構成を示す。照射装置30では、走査電磁石32で照射平面上を走査し、患者に照射するビーム10dの照射線量を計測する線量モニタ31やビーム形状モニタ(図示せず)にて、照射するビーム10dの線量強度やビーム形状を逐次確認する。走査電磁石32で走査されたビーム10dは、エネルギー吸収体33を通過することで患部深さ方向の厚みに合わせたSOBPを形成する。SOBPが形成されたビームをコリメータ34やボーラス35といった、患者36の患部形状37に合わせた固有治具にて患部形状に合わせた照射野を形成する。
【0034】
出射用制御装置20における出射用高周波電圧の制御法について図8を用いて説明する。高周波発振器21は、エネルギーに応じて制御される出射用高周波電圧の中心周波数Fcの高周波信号を出力する。高周波発振器21から出力された高周波信号は、帯域制限高周波信号発生部22より出力された帯域制限高周波信号と高周波ミキサ221でミキシングされる。これにより、中心周波数がFc、周波数幅2Fwの帯域制限高周波信号が得られる。ミキシングされた帯域制限高周波信号は、目標ビーム電流補正演算部29で得られたビーム電流強度波形(ビーム電流強度の目標値)を実現するように、ビーム電流フィードバック制御回路24にて高周波電圧の振幅値を制御する。ビーム電流フィードバック制御回路24は、振幅変調器23と、フィードバックループゲイン調整器241、フィードバックループゲイン調整器242、加算演算回路243、高周波スイッチ25から構成される。まず、線量モニタ31で検出した線量モニタ検出信号311と目標ビーム電流補正演算部29から設定される目標ビーム電流値(Ifb)の偏差をフィードバックループゲイン調整器241にて演算する。この演算結果をフィードバックループゲイン調整器241でフィードバックゲインに基づいてフィードバック補正信号を演算する。加算演算回路243で振幅変調信号(Am)とフィードバック補正信号を加算することで、振幅変調信号を補正する。この加算結果を振幅変調器23に設定することにより、ビーム電流フィードバック制御を実現する。
【0035】
ビーム電流フィードバック制御回路24で振幅値を制御された高周波信号は、インターロックシステム60により制御される高周波スイッチ26を介して高周波電力増幅器17に伝送する。高周波電力増幅器17で増幅された帯域制限高周波信号は、出射用高周波電極16に印加する。出射用高周波電極16に印加された高周波信号により、シンクロトロン13内を周回するビーム10bのベータトロン振動振幅が増大され、シンクロトロン13からビーム輸送装置14に出射される。
【0036】
本実施例の特徴である、出射用制御装置20を構成する目標ビーム電流補正演算部29での目標ビーム電流の演算処理方法について、図5、図6、図7および図8を用いて説明する。図5は照射制御開始前の制御準備フローを示しており、図6はビーム照射制御時のフローを示している。図7は、図6に示したビーム照射時の制御フローによるビーム照射制御時の目標ビーム電流値とそれに伴う蓄積ビーム電荷量の時間変化を示している。図8は出射ビーム電流に対するフィードバック制御システムの構成を示している。
【0037】
照射前の出射ビーム電流フィードバック制御に用いる目標ビーム電流値の演算設定フローについて、図5を用いて説明する。まず、患者への照射治療を開始する前に、出射ビーム電流フィードバック制御に用いる目標ビーム電流値(Ifb)の初期値の設定方法を説明する。治療計画装置43は、患者47の患者36への総照射線量を算出し、記憶装置42に登録する。記憶装置42には、予め照射線量に対する照射電荷量の換算テーブルデータを用意しておく。統括制御装置41は、治療スケジューラ(図示せず)からの照射条件に基づき、治療計画装置43で演算した総照射線量を読み込み、治療計画装置43が要求した総照射線量を得るのに必要な総照射電荷量(Qtarget)を統括制御装置41に予め用意してある換算テーブルデータから算出する。統括制御装置41は、照射制御装置44に対して総照射電荷量を(Qtarget)や照射装置の設定条件を伝送し、照射制御装置は受信手段にて総照射電荷量(Qtarget)等の情報を受信する。
【0038】
照射制御装置44は、シンクロトロンで出射可能なビーム電流制御範囲に基づき、一単位の照射での基準ビーム電流値(Iscan)を算出し、走査電磁石32の走査速度に基づき、一単位の照射に必要な走査時間(Tscan)を設定する(801)。
【0039】
次に、一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)と、リペイント回数(Nr)を算出する(802)。一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)は、(式1)に示すように、一単位の照射での基準ビーム電流値(Iscan)と一単位の照射に必要な走査時間(Tscan)を乗ずることで求められる。また、リペイント回数(Nr)は、(式2)に示すように、総照射電荷量を(Qtarget)を一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)で割ることで算出できる。
【0040】
【数1】

【0041】
【数2】

【0042】
照射領域への残照射電荷量(Qrest)に総照射電荷量(Qtarget)を設定することで初期化する(803)。残照射電荷量(Qrest)とは、総照射電荷量(Qtarget)から患部に照射した電荷量の累積値(累積照射電荷量(Qsum))を差し引いたものである。また、累積照射電荷量(Qsum)に0を設定することで初期化する(804)。
【0043】
出射ビーム電流フィードバック制御の目標ビーム電流値(Ifb)の初期値として、一単位の照射での基準ビーム電流値(Iscan)を出射用制御装置20に設定する(805)。上記の制御フロー(801〜805)は、照射制御装置44で実施する。なお、図5に示した照射準備制御は、患者への照射開始時の運転周期でのみ実施し、二回目以降の運転周期では実施しない。
【0044】
ビームの照射制御フローについて、図6を用いて説明する。シンクロトロン13は、前段加速器12から入射したビームを所定のエネルギーまで加速する(811)。ビーム加速制御が終了後、シンクロトロン内に蓄積されている蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を計測する(812)。蓄積ビーム電荷量(Qmeas)の計測は、シンクロトロン13内に設けてあるDCCT等の蓄積ビーム電荷量検出手段15を用いて計測する。蓄積ビーム電荷量(Qmeas)の計測結果は、出射制御装置20に取り込み、出射制御装置20を構成する目標ビーム電流補正演算部29にて、以下の制御フローに示した処理を実施する。
【0045】
目標ビーム電流補正演算部29では、まずシンクロトロン13内の蓄積ビーム電荷量(Qmeas)が枯渇しているか判断する(813)。蓄積ビーム電荷量が枯渇していた場合(Qmeas≦0)、ビームの減速制御に移行する(814)。
【0046】
蓄積ビーム電荷量が枯渇していなければ(Qmeas>0)、残照射電荷量(Qrest)と蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を比較し、比較電荷量(Qcomp)に設定する電荷量を決定する(815)。比較電荷量(Qcomp)とは、後述する一単位の照射での基準ビーム電流値(Iscan)の補正制御時の基準となる電荷量である。蓄積ビーム電荷量(Qmeas)に対して残照射電荷量(Qrest)が多い場合は、比較電荷量(Qcomp)に蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を設定し(816)、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)に対して残照射電荷量(Qrest)が少ない場合は、比較電荷量(Qcomp)に残照射電荷量(Qrest)を設定する(817)。すなわち残照射電荷量(Qrest)と蓄積ビーム電荷量(Qmeas)のうち少ない方を比較電荷量(Qcomp) としている。
【0047】
次に、比較電荷量(Qcomp)と一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)を比較する(818)。比較電荷量(Qcomp)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも多い場合(Qcomp≧Qscan)は、出射ビーム電流フィードバック制御の目標値となる、目標ビーム電流値(Ifb)の補正は実施しない(819)。また、比較電荷量(Qcomp)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも少ない場合(Qcomp<Qscan)は、目標ビーム電流値(Ifb)を一単位の照射での基準ビーム電流値(Iscan)よりも小さくなるように補正する(820)。
【0048】
このように目標電流設定手段である目標ビーム電流補正演算部29が一単位の照射での基準ビーム電流値(Iscan)を基にビーム電流の目標値(Ifb)を補正により決定することで、前段加速器に起因するビーム電流の変動分を、補正により適切に調整した制御が可能となる。本実施例では、一単位の照射を実施する前に、一単位の照射に必要な電荷量がシンクロトロン内に蓄積されているかを逐次確認し、シンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量が少ない場合は、出射ビーム電流値を補正して制御することで一単位照射中のビーム枯渇を抑制することで照射線量一様度を担保している。
【0049】
目標ビーム電流値(Ifb)は、(式3)に示すように、一単位の照射での基準ビーム電流値(Iscan)を一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)に対する比較電荷量(Qcomp)の割合で補正することで得られる。
【0050】
【数3】

【0051】
このように、目標電流設定手段である目標ビーム電流補正演算部29による目標ビーム電流の目標値(Ifb)の決定に比較電荷量(Qcomp)が利用される。これにより一面を照射中にビーム枯渇を生じさせずにビーム利用効率を高めるよう、ビーム電流を適切に設定することができる。シンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量を効率良く利用することで、所定の線量の照射に必要な時間を短縮し、治療時間を短くすることができる。一単位の照射中にビーム枯渇が抑制できると、一単位の照射時のビーム電流値を高めてリペイント回数を削減することができるため、所定の線量の照射に必要な時間を短縮し、治療時間を短くすることができる。
【0052】
上記の目標ビーム電流値(Ifb)に基づき、出射用制御装置20の一部であるビーム電流フィードバック制御回路24にて、出射ビーム電流フィードバック制御を実施し、シンクロトロン13から照射装置30へのビーム出射制御を実施する(821)。一単位の照射が終了したら、累積照射電荷量(Qsum)に照射した電荷量を加算する(822)。この際、累積照射電荷量(Qsum)は、(式4)に示したように、目標ビーム電流値(Ifb)と一単位の走査時間(Tscan)を乗じたものを累積照射電荷量(Qsum)へ加算することで求められる。これと合わせて、残照射電荷量(Qrest)を更新する(823)。残照射電荷量(Qrest)は、(式5)に示したように、総照射電荷量(Qtarget)から累積照射電荷量(Qsum)を減算することで求められる。
【0053】
【数4】

【0054】
【数5】

【0055】
最後に、累積照射電荷量(Qsum)と総照射電荷量(Qtarget)を比較する(824)。累積照射電荷量(Qsum)が総照射電荷量(Qtarget)に到達したら(Qsum≧Qtarget)ビーム照射制御を終了し、累積照射電荷量(Qsum)が総照射電荷量(Qtarget)に到達していない場合(Qsum<Qtarget)は、制御フロー(812)に戻り、ビーム照射制御を継続する。
【0056】
ここで、本実施例の特徴でもある、制御フロー(815)に示した残照射電荷量(Qrest)と蓄積ビーム電荷量(Qmeas)の比較理由について以下に説明する。
【0057】
まず、シンクロトロンの出射制御時間(Text)の後半になると、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも少なくなる。一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも蓄積ビーム電荷量(Qmeas)が少ない状態で出射制御を継続すると、一単位の照射を完了する前にビームが枯渇してしまい、照射領域内の線量一様度が悪化してしまう。そのため、従来は一単位を照射する際のビーム電流値を低くし、リペイント回数(Nr)を充分多く取ることで、ビーム枯渇時に生じる線量一様度の不均一の影響を小さくしていた。そのため、線量率が高められず、治療時間が掛かっていた。
【0058】
また、ビーム照射制御の終盤になると、残照射電荷量(Qrest)が小さくなる。つまり、必要な照射線量を満足する総照射線量(Qtarget)に近づいてくる。この状態では、一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)に近づき、照射制御の経過により残照射電荷量(Qrest)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも小さくなる。従来の技術では、特許文献4に示されるように、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも小さくなった場合には、減速制御に移行するため、一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも少ない蓄積ビーム電荷量(Qmeas)は照射に利用せずに減速してしまうため、ビーム利用効率を高められなかった。
【0059】
これら二つの状況に応じて、出射ビーム電流フィードバック制御時の目標ビーム電流値(Ifb)の補正を実施する際(820)、残照射電荷量(Qrest)と蓄積ビーム電荷量(Qmeas)のいずれか小さい方を比較電荷量(Qcomp)として補正することで、線量一様度を満足しつつ、ビーム利用効率の向上に伴い線量率を向上できるため、治療時間を短縮できる。
【0060】
ビーム照射時の制御フローによるビーム照射制御時の目標ビーム電流値とそれに伴う蓄積ビーム電荷量の時間変化について、図7を用いて説明する。本実施例では、出射制御時間(Text)内に蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を5回計測し出射制御する場合を示しており、残照射電荷量(Qrest)は充分多い場合を想定している。
【0061】
シンクロトロン13の加速制御を終了後、蓄積ビーム電荷量確認信号501(図7(b))に基づき、蓄積ビーム電荷量(図7(a))をシンクロトロン13内に設置してある蓄積ビーム電荷量検出手段15にて計測する。この際、蓄積ビーム電荷量はQmeas1である。蓄積ビーム電荷量は一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも多いので、比較電荷量(Qcomp)はQmeas1とし、目標ビーム電流値(Ifb)の補正は実施しない。よって、目標ビーム電流値(図7(c))は初期設定値である一単位の照射での基準ビーム電流値(Iscan)とする。
【0062】
ビーム出射制御信号(図7(d))に基づき、出射ビーム電流フィードバック制御に基づいた出射制御を開始する。その結果、照射装置30には、一定電流のビーム10dが供給され、線量モニタ31での検出信号より換算したビーム電流値(Idose)が確認される(図7(e))。一単位の走査時間(Tscan)でのビーム照射が終了後、ビーム出射制御を停止し、蓄積ビーム電荷量を計測する。本実施例では、同様にビーム計測から出射制御までを3回(Qmeas2〜4)繰り返している。
【0063】
5回目の蓄積ビーム電荷量の確認信号に基づき、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を計測する。この際の蓄積ビーム電荷量はQmeas5であり、一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも少ないため、比較電荷量(Qcomp)はQmeas5とし、目標ビーム電流値(Ifb)の補正が必要である。そのため、目標ビーム電流値(Ifb)の補正は、(式3)に基づき実施することで、目標ビーム電流値(Ifb)は、一単位の照射での基準ビーム電流値(Iscan)よりも低く設定する。この目標ビーム電流値(Ifb)に基づき出射ビーム電流フィードバック制御による出射制御を実施することで、線量モニタ検出信号より換算されるビーム電流値(Idose)が照射される。
【0064】
次に、本実施例を適用した粒子線照射装置の運転方法について、図8を用いて説明する。医師は、患者情報(患部の位置及び大きさ、ビームの照射方向、及び最大照射深さ)を治療計画装置43に入力する。治療計画装置43は、治療計画ソフトを用い、入力された患者情報に基づいて、治療に必要なSOBP幅、照射野サイズ及び患部に対する目標線量等を算出する。
【0065】
治療計画装置43で算出した結果は、記憶装置42に記録される。統括制御装置41は、治療スケジューラ(図示せず)からの照射条件に基づき、照射制御装置44に対して総照射電荷量(Qtarget)や照射条件を伝送する。照射制御装置44は、照射装置を構成する機器の設定条件を選定し、これと合わせて、出射制御装置20に対して総照射電荷量(Qtarget)や一単位の照射での基準ビーム電流値(Iscan)、一単位の照射に必要な走査時間(Tscan)、一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)、リペイント回数(Nr)等を伝送する。本実施例の特徴である、一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)の演算等は、治療計画装置43からの情報に基づいて照射制御装置44で実施する。
【0066】
治療計画情報は、治療の準備を行っている治療室の制御室内に配置された表示装置(図示せず)に表示される。放射線技師は、その表示画面を確認し、表示により指定されたエネルギー吸収体33を照射装置30内に配置する。
【0067】
治療ベッド制御装置(図示せず)は、統括制御装置41からの指示により、放射線技師が患者を固定している治療ベッドを移動し、ビーム軸の延長線上に患者の患部(照射対象)が位置するように位置決めする。
【0068】
加速器制御装置40は、統括制御装置41からの治療計画情報から照射ビームエネルギーを決定し、シンクロトロン13およびビーム輸送装置14を構成する機器の運転制御パラメータを設定する。出射制御装置20に対しては、出射ビームのエネルギーに対応して、出射用高周波信号の運転制御パラメータである中心周波数Fc、周波数幅Fw、振幅変調データAm、フィードバックゲインGfbを設定する。
【0069】
医師は、前述の制御室内の操作盤から照射開始信号を統括制御装置41に指示する。照射開始指示に基づき、前段加速器12は、イオン源より発生したイオンビーム(例えば、陽子(または炭素イオンなどの重粒子))を加速し、シンクロトロン13に供給する。
【0070】
シンクロトロン13は、前段加速器から入射したイオンビーム10aを所望のエネルギーまでシンクロトロン13内を周回させながら加速する。イオンビーム10bは、目標のビームエネルギーまで加速された後、タイミングシステム50から出力される蓄積ビーム電荷量確認信号501に基づき、蓄積ビーム電荷量検出手段15にて蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を計測する。この蓄積ビーム電荷量(Qmeas)に基づき、目標ビーム電流補正演算部29にて出射ビーム電流フィードバック制御回路24の目標ビーム電流値(Ifb)を設定する。その後、タイミングシステム50から出力されるビーム出射制御信号502により、出射用高周波電極16に出射用高周波信号が印加されることによって、目標ビーム電流値(Ifb)に基づいて制御されたビームがシンクロトロン13から出射される。
【0071】
なお、本実施例では、蓄積ビーム電荷量の検出は、最初の一単位の照射に対応した蓄積ビーム電荷量の検出をタイミングシステム50から出力される蓄積ビーム電荷量確認信号501に基づき検出し、次の単位以降の蓄積ビーム電荷量確認信号501は、タイミングシステム50から入力されたビーム出射制御信号502の入力を起点として一単位の走査時間(Tscan)と照射停止時間(Toff)に基づき、出射制御装置20で演算された信号に基づき検出しているが、照射制御装置44等の出射制御装置20の外部に全ての照射面に対応した蓄積ビーム電荷量確認信号501を発生する装置を設けても効果は変わらない。
【0072】
また、本実施例でのビーム出射制御は、タイミングシステム50からのビーム出射制御信号502を出射制御装置20に入力し、一単位の照射が終了毎に目標ビーム電流補正演算部29からビーム出射制御信号252に基づき高周波スイッチ25を開くことで、一単位の照射間での照射停止時間(Toff)中にシンクロトロン13から照射装置30へビームの供給を停止している。
【0073】
シンクロトロン13から出射されたイオンビーム10cは、ビーム輸送装置14を通過して、照射装置30に到着する。さらに、照射装置30内のビーム経路に沿ってイオンビーム10dは進行し、走査電磁石32でイオンビーム10dが走査され、エネルギー吸収体33でSOBPを形成し、患者の患部に照射される。
【0074】
患部に照射されるイオンビームの線量は線量モニタ31で計測する。線量モニタ31での検出信号311を出射ビーム電流フィードバック制御回路24に入力し、目標ビーム電流値(Ifb)と線量モニタ31での検出ビーム電流値(Idose)の偏差に基づく高周波電圧の振幅制御値をフィードバック補正により、出射ビーム電流を一定値に制御する。
【0075】
患部への一単位の照射が完了すると、ビーム出射制御を停止し、走査電磁石の励磁量を照射開始位置に復帰し、累積照射電荷量(Qsum)を記録する。その後、蓄積ビーム電荷量を計測する。計測結果により目標ビーム電流値を補正し、再び一単位の照射を開始する。これらの制御を繰り返し、累積照射電荷量(Qsum)が総照射電荷量(Qtarget)に到達するまでビームを照射する。
【0076】
なお、粒子線照射システム1を構成する機器において、照射制御中に患者へのビーム照射を妨げる何らかの障害が生じた場合、インターロックシステム60は、機器の状態が異常であることを示す信号(異常信号)601を統括制御装置41と並列に出射用制御装置20のインターロック用高周波スイッチ26に出力する。出射用制御装置20は、インターロックシステム60からの異常信号601をビーム出射停止指令として受信し、インターロック用高周波スイッチ26を即座に開く。インターロック用高周波スイッチ26が開かれることによって、高周波電極16への出射用高周波信号の印加が停止される。これにより、シンクロトロン13はイオンビーム10bの出射を停止するインターロック制御を実現できる。
【0077】
本実施例によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0078】
(1)本実施の形態では、照射領域内を照射開始位置から終了位置までを一単位の走査範囲とし、この一単位の走査範囲を照射単位として管理している。そして、この一単位の照射範囲へのビーム照射を開始する前に、逐次、シンクロトロン13内の蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を計測し、一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)に対する蓄積ビーム電荷量(Qmeas)に応じて、目標ビーム電流補正演算部29で出射ビーム電流フィードバック制御回路24の目標ビーム電流値を補正することで、シンクロトロン13から出射するビーム電流値を制御している。これにより、一単位を照射中にシンクロトロン13内の蓄積ビーム電荷量の枯渇が生じることを抑制できる。
【0079】
(2)本実施の形態では、先に示した通り、一面を照射する前に逐次、シンクロトロン13内の蓄積ビーム電荷量を計測し、計測結果に基づいて出射ビーム電流フィードバック制御の目標ビーム電流値を補正するため、一面を照射中の枯渇は生じない。そのため、従来のように、途中で蓄積ビーム電荷量が枯渇した際の線量一様度の悪化を考慮して、出射ビーム電流フィードバック制御の目標ビーム電流値を低くする必要がなくなる。これにより、一面を照射する際の出射ビーム電流フィードバック制御の目標ビーム電流値を高めることが可能となり、線量率を向上することができ、しいては治療時間を短縮できる。
【0080】
(3)本実施の形態では、蓄積ビーム電荷量70の枯渇を逐次監視する必要はなく、蓄積ビーム電荷量70の枯渇に伴うビーム出射制御とビーム走査制御の停止処理が不要となるため、粒子線照射システムを構成する制御装置の構成および制御方法を簡素にすることができる。一面を照射中にシンクロトロン13内の蓄積ビーム電荷量70が枯渇したかどうかを逐次監視するシステムでは、ビーム10bが枯渇した場合、ビーム10bの出射制御の停止とともに、走査電磁石32でのビーム走査制御を停止する。その後、シンクロトロン13で再度ビームを入射・加速した後、引き続きシンクロトロン13からのビーム出射制御と、走査電磁石32でのビーム走査制御を開始する必要がある。
【実施例2】
【0081】
本発明の第2実施例を示す。本実施例の機器構成は第1実施例と同一であるが、目標ビーム電流補正演算部29での目標ビーム電流値(Ifb)の補正方法が異なる。
【0082】
ビームの照射制御フローについて、図9を用いて説明する。図6との違いは、比較電荷量(Qcomp)に基づく目標ビーム電流値(Ifb)の補正制御(図6の818〜820)の代わりに、繰り上げ照射電荷量(Qcarry)に基づく目標ビーム電流値(Ifb)の繰り上げ補正制御(図9の825〜828)を設けたことにある。
【0083】
第1実施例の場合、シンクロトロンの出射制御時間(Text)の経過に伴い、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)は減少していく。そして、出射制御時間(Text)の後半になると、一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)に対して、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)が非常に少ない場合が生じることが考えられる。これは、照射制御が進んで残照射電荷量(Qrest)が少なくなった場合にも同様に、わずかな電荷量だけ照射する必要性が生じてしまう。そのため、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を有効に利用するために、もしくは、総照射電荷量(Qtarget)を満足するために、一単位の照射制御を実施する必要が生じる。
【0084】
このような処理は、加速制御終了後のシンクロトロン13に蓄積されているビーム電荷量(Qmeas)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)の整数倍にならない場合には、シンクロトロンの運転周期の度に生じてしまう。
【0085】
そこで、本実施例では、比較電荷量(Qcomp)を設定した後(図9の815〜817の制御フロー)、(式6)に示す繰り上げ照射電荷量(Qcarry)を算出する(825)。
【0086】
【数6】

【0087】
(式6)に示した繰り上げ照射電荷量(Qcarry)は、比較電荷量(Qcomp)から一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)を差し引いたものである。この繰り上げ照射電荷量(Qcarry)と一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)とを比較する(826)。
【0088】
繰り上げ照射電荷量(Qcarry)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも少ない場合(Qcarry≦Qscan)は、目標電流値の繰り上げ補正は実施せず(827)、繰り上げ照射電荷量(Qcarry)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも多い場合(Qcarry>Qscan)は、(式7)に示した目標電流値の繰り上げ補正を実施する(828)。
【0089】
【数7】

【0090】
繰り上げ照射電荷量(Qcarry)は、実施例1では目標電流値の補正の判定に使用していた比較電荷量(Qcomp)からさらに一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)を差し引いたものとなっている。つまり、二回にわたって一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)を差し引くことで、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)に対して二回分に満たない場合、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を一回の照射に繰り上げて照射することで、照射時間の短縮を実現できる。
【0091】
上記は一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)を2倍したものと比較電荷量(Qcomp)とを比較しているとも表現できる。比較電荷量(Qcomp)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)の2倍よりも少ない場合に、目標ビーム電流値(Ifb)を一単位の照射に必要なビーム電流値(Iscan)よりも大きくなるように補正することで、繰り上げ照射により照射時間を短縮できる。具体的には(式7)で示すように、目標ビーム電流値(Ifb)は、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を一単位の照射に必要な走査時間(Tscan)で除算したものとしている。
【0092】
このように、補正の要否の判断基準として、比較電荷量(Qcomp)と一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)との比較値を利用することで、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)に応じた適切な制御が可能となる。すなわち実施例1のように比較電荷量(Qcomp)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)より少ない場合には、一面照射中のビーム枯渇を回避しつつビーム効率を高いものとする制御ができる。また実施例2で示すように、比較電荷量(Qcomp)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)と比べて適度に高い場合には、繰り上げ照射により照射時間を短縮できる。実施例1の判断基準と実施例2の判断基準とを組み合わせた判断基準を採用することも可能である。この場合両者のメリットを享受できる。
【0093】
なお実施例2では、一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)を2倍したものと比較電荷量(Qcomp)とを比較しているが、2倍でなくとも1倍より大きければ同様の効果が得られる。何倍にするかは、一単位の照射でどの程度多量の電荷量を照射できるかで決定できる。出射制御期間の後半でシンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量が一単位の照射に必要な電荷量よりも若干多い場合に、照射電荷量繰り上げ手段により一回でビーム照射を完了すれば、二回に分けてビームを照射するのに比べて所定の線量の照射に必要な時間を短縮し治療時間を短くすることができる。
【0094】
ビーム照射時の制御フローによるビーム照射制御時の目標ビーム電流値とそれに伴う蓄積ビーム電荷量の時間変化について、図10を用いて説明する。説明を分かりやすくするため、図10の加速制御終了後の蓄積ビーム電荷量(Qmeas1)と一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)は、図7と同一である。
【0095】
図10では、蓄積ビーム電荷量の1回目から3回目の計測(Qmeas1〜Qmeas3)では、繰り上げ照射は実施しないが、4回目の計測(Qmeas4)の際、繰り上げ照射を実施することで、図7で2回に分けて照射していた電荷量を1回に繰り上げて照射している。よって、図7と比較して、4回目の照射の目標ビーム電流値(Ifb)は、一単位の照射での基準ビーム電流値(Iscan)よりも高くなっており、5回目の照射制御は実施せず、減速制御に移行することで、一単位の走査時間(Tscan)と一単位の照射間での照射停止時間(Toff)の分だけ、照射時間を短縮できる。
【0096】
本実施例によれば、加速制御終了後の蓄積ビーム電荷量(Qmeas)が一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)の整数倍とならない場合に生ずる、一単位の照射に必要な電荷量(Qscan)よりも少ない蓄積ビーム電荷量を繰り上げ照射することにより、照射時間の短縮を実現できる。このような繰り上げ処理は、シンクロトロンの運転周期の度に生じるため、照射時間の短縮効果は大きく、更なる治療時間の短縮が実現できる。
【0097】
これにより、出射制御期間の後半でシンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量が一単位の照射に必要な電荷量よりも若干多い場合、二回に分けてビームを照射していたところを、照射電荷量繰り上げ手段により、一回でビーム照射を完了することができるため、所定の線量の照射に必要な時間を短縮し、治療時間を短くすることができる。
【0098】
以上説明した各実施例の粒子線照射システムでは、照射制御装置44が一単位の照射に必要なビーム電流値(Iscan)を算出し、蓄積ビーム電荷量計測手段が前記シンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量(Qmeas)を計測し、目標電流設定手段が、蓄積ビーム電荷量(Qmeas)に基づき一単位の照射に必要なビーム電流値(Iscan)を補正することでシンクロトロン13から出射する目標ビーム電流値(Ifb)を設定し、出射ビーム電流補正制御手段を有する出射用制御装置20が、目標ビーム電流値(Ifb)に基づきビーム電流を制御することで、荷電粒子ビームを補正している。このように荷電粒子ビームを補正することで、照射線量一様度を低下させずにビーム利用効率を高めることのできる粒子線照射システムを実現できる。
【符号の説明】
【0099】
1 粒子線照射システム
10a、10b、10c、10d ビーム
11 イオンビーム発生装置
12 前段加速器
13 シンクロトロン
14 ビーム輸送装置
15 蓄積ビーム電荷量検出手段
16 高周波電極
17 高周波電力増幅器
18 偏向電磁石
20 出射用制御装置
21 出射用の高周波発振器(高周波発振器)
22 帯域制限高周波信号発生部
23 振幅変調器
24 ビーム電流フィードバック制御回路
25、26 高周波スイッチ
27 出射用高周波信号処理部
29 目標ビーム電流補正演算部
30 照射装置
31 線量モニタ
32 走査電磁石
33 エネルギー吸収体
34 コリメータ
35 ボーラス
36 患者
37 患部形状
38 ビーム走査経路
40 加速器制御装置
41 統括制御装置
42 記憶装置
43 治療計画装置
44 照射制御装置
50 タイミングシステム
60 インターロックシステム
221 高周波ミキサ
241、242 フィードバックループゲイン調整器
243 加算演算回路
252 ビーム出射制御信号
311 線量モニタ検出信号
501 蓄積ビーム電荷量確認信号
502 ビーム出射制御信号
Qtarget 総照射電荷量
Qscan 一単位の照射に必要な電荷量
Qrest 残照射電荷量
Qsum 累積照射電荷量
Qmeas 蓄積ビーム電荷量
Qcomp 比較電荷量
Qcarry 繰り上げ照射電荷量
Qext シンクロトロンからの出射ビーム電荷量
Text 出射制御時間
Tscan 一単位の走査時間
Toff 一単位の照射間での照射停止時間
Nr リペイント回数
Nscan 出射制御時間内での一単位の照射回数
Iscan 一単位の照射での基準ビーム電流値
Ifb 目標ビーム電流値
Idose ビーム電流値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを加速して出射するシンクロトロンと、前記シンクロトロンから出射された前記イオンビームを照射する照射装置とを有し、前記照射装置から一単位の照射を複数回行う粒子線照射システムにおいて、
前記シンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量を計測する蓄積ビーム電荷量計測手段と、
前記蓄積ビーム電荷量計測手段で計測した蓄積ビーム電荷量に基づき、前記シンクロトロンから出射する目標ビーム電流値を設定する目標電流設定手段と、
前記目標電流設定手段より求められた前記目標ビーム電流値に基づきビーム電流を制御する出射ビーム電流補正制御手段を備えることを特徴とする粒子線照射システム。
【請求項2】
請求項1の粒子線照射システムにおいて、
前記複数回の照射に必要な総照射電荷量を受信する受信手段と、
累積照射電荷量を計算する出射用制御装置とを有し、
前記総照射電荷量から前記累積照射電荷量を差し引いた残照射電荷量と前記蓄積ビーム電荷量のうち少ない方を比較電荷量とした場合に、
前記目標電流設定手段による前記目標ビーム電流の目標値の決定に、前記比較電荷量が利用されることを特徴とする粒子線照射システム。
【請求項3】
請求項2の粒子線照射システムにおいて、
一単位の照射に必要な電荷量を算出する照射制御装置を有し、
前記目標電流補正手段は、補正の要否の判断基準として、前記比較電荷量と前記一単位の照射に必要な電荷量との比較値を利用することを特徴とする粒子線照射システム。
【請求項4】
請求項2または3の粒子線照射システムにおいて、
一単位の照射に必要なビーム電流値を算出する照射制御装置を有し、
前記目標電流設定手段は、前記一単位の照射に必要なビーム電流値を基に前記ビーム電流の目標値を補正により決定することを特徴とする粒子線照射システム。
【請求項5】
請求項2から4の何れかの粒子線照射システムにおいて、
前記目標電流設定手段は、前記比較電荷量が前記一単位の照射に必要な電荷量よりも少ない場合に、前記目標ビーム電流値を前記一単位の照射に必要なビーム電流値よりも小さくなるように補正することを特徴とする粒子線照射システム。
【請求項6】
請求項5の粒子線照射システムにおいて、
前記目標ビーム電流値は、前記一単位の照射に必要なビーム電流値を、前記一面の照射に必要な電荷量に対する前記比較電荷量の割合で補正したものであることを特徴とする粒子線照射システム。
【請求項7】
請求項2から6の何れかの粒子線照射システムにおいて、
前記目標電流補正手段は、前記比較電荷量が前記一単位の照射に必要な電荷量の2倍よりも少ない場合に、前記目標ビーム電流値を前記一単位の照射に必要なビーム電流値よりも大きくなるように補正することを特徴とする粒子線照射システム。
【請求項8】
請求項7の粒子線照射システムにおいて、
前記目標ビーム電流値が、前記蓄積ビーム電荷量を一単位の照射に必要な走査時間で除算したものであることを特徴とする粒子線照射システム。
【請求項9】
イオンビームを加速して出射するシンクロトロンと、前記シンクロトロンから出射された前記イオンビームを照射する照射装置とを有し、前記照射装置から一単位の照射を複数回行う粒子線照射システムの荷電粒子ビームの補正方法において、
照射制御装置が一単位の照射に必要なビーム電流値を算出し、
蓄積ビーム電荷量計測手段が前記シンクロトロン内の蓄積ビーム電荷量を計測し、
目標電流設定手段が、前記蓄積ビーム電荷量に基づき前記一単位の照射に必要なビーム電流値を補正することで前記シンクロトロンから出射する目標ビーム電流値を設定し、
前記出射ビーム電流補正制御手段が、前記目標ビーム電流値に基づきビーム電流を制御することを特徴とする粒子線照射システムの荷電粒子ビームの補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−94313(P2013−94313A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238162(P2011−238162)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】