説明

粒子群の充填方法

【課題】基板全体にわたり帯電性粒子を含んだ粒子群を均一に充填する方法を提供する。
【解決手段】基板上に形成された隔壁で区画されたセル内に、帯電性粒子を含んだ粒子群を充填する方法であって、前記セルの開口部に対応して、前記隔壁と近接させてマスクを配置し、前記マスク上で粒子群移動部材を移動させた際の、前記マスクと前記基板の電極との間の距離を測定し、前記マスクと前記基板の電極とに電圧を印加し、前記測定した距離に基づき、前記マスクと前記基板の電極との距離および前記印加電圧の少なくとも一方を制御することにより、前記マスクと前記基板の電極との間の空間全体にわたり一定の電界を生成し、前記マスク上に配置された前記粒子群を、前記粒子群移動部材によって移動させて、前記マスクの開口部を経て前記セルに充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された隔壁で区画されたセル内に、帯電性粒子を含んだ粒子群を充填する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報表示用パネルのような、帯電性粒子を用いたパネル構造体を製造する際に、帯電性粒子を含んだ粒子群を、パネル構造体の2枚の基板間に充填する方法としては、パネルとする基板上にマスクを配置し、そのマスク上で粒子群移動部材を移動させて、粒子群を、マスクの開口部を介して基板上に形成された隔壁で区画されたセル内に充填する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、マスクを基板からわずかに離して配置し、マスクと基板に設けた電極との電位を制御しながら粒子群を充填する方法が記載されている。
帯電性粒子を用いたパネル構造体には、特許文献2に示される音響発生装置などもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−271510号公報
【特許文献2】特開2011−151673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した充填方法では、粒子群移動部材をマスクに押し付けながら粒子群を充填するため、粒子群移動部材を押し付けている箇所のマスクがたわむ。すると、マスクと、基板の電極との間に形成される電界が変化するため、マスク上からマスクの開口部を経て基板上へ移動する粒子群の量にむらができてしまい、その結果、均一な粒子群の充填が行えないという問題点が生じていた。粒子群が均一に充填されないと、例えば、情報表示用パネルの場合には、その表示画像にむらが発生してしまう。
そこで、本発明は、マスクと、基板の電極との間に形成される電界を一定に調節し、パネル構造体とする基板の全体にわたり粒子群を均一に充填する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基板上に形成された隔壁で区画されたセル内に、帯電性粒子を含んだ粒子群を充填する方法であって、前記セルの開口部に対応して、前記隔壁と近接させてマスクを配置し、前記マスク上で粒子群移動部材を移動させた際の、前記マスクと前記基板の電極との間の距離を測定し、前記マスクと前記基板の電極とに電圧を印加し、前記測定した距離に基づき、前記マスクと前記基板の電極との距離および前記印加電圧の少なくとも一方を制御することにより、前記マスクと前記基板の電極との間の空間全体にわたり一定の電界を生成し、前記マスク上に配置された前記粒子群を、前記粒子群移動部材によって移動させて、前記マスクの開口部を経て前記セルに充填することを特徴とするものである。
【0006】
本発明は、前記基板の電極または前記マスクのいずれかを接地すること、前記印加電圧は、一定電圧にサイン波が重畳されていることが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、基板上に配置されたマスクと、基板の電極と、の間に形成される電界を一定に調節し、パネル構造体とする基板全体にわたり粒子群を均一に充填する方法を提供し、情報表示用パネルにおいては、均一な表示特性を有し、他のパネル構造体においては、粒子群の特性を均一に発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の対象となるパネル構造体の一例である情報表示用パネルの一例を説明するための図である。
【図2】パネル構造体を製造する際に、パネルの基板上のセル内に、粒子群を充填する方法を説明するための図である。
【図3】マスクのたわみを示すグラフである。
【図4】本発明の充填方法を実現する装置の全体構成図である。
【図5】印加電圧に重畳する電圧波形の例を示す図である。
【図6】パネル構造体を製造する際に、パネルの基板上のセル内に、粒子群を充填する方法をさらに説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明の対象となるパネル構造体の一例として、帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体とする情報表示用パネルの基本的な構成について説明する。この情報表示用パネルでは、対向する基板間に配置した帯電性粒子を含んだ粒子群として構成した表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向に沿って、粒子群が電界による力やクーロン力等によって引き寄せられ、粒子群が電界方向の変化によって移動方向が切り換わることにより、画像等の情報表示がなされる。したがって、表示媒体とする粒子群が、均一に移動し、かつ、表示情報を書き換える時或いは表示した情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネル(パネル構造体)を設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付け合う力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力等が考えられる。
【0010】
図1を参照して、上述した帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体とする情報表示用パネルの一例を説明する。
図1に示す例では、光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと、正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で区画形成された各セル7において、背面側の基板1に設けた電極5(ストライプ電極)と観察側の透明な基板2に設けた透明電極6(ストライプ電極)とが対向交差(好ましくは対向直交交差)して形成する電極対に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と略垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色の表示を、或いは、図1(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色の表示を行う。マトリックス配置した電極対を画素(ドット)とする白黒のドットマトリックス表示を行うことができる。
なお、図1において、図面手前にある隔壁は省略している。ここではセルと画素(ドット)とが一対一に対応する例を示しているが、セルと画素とは対応していなくてもよい。なお、隔壁4と基板1とは接着剤8を介して接着されている。
【0011】
本発明は、上述した情報表示用パネルのようなパネル構造体を製造する際に、パネルの基板上のセル内に、粒子群を充填する方法に関するものであり、以下、本発明の特徴を説明する。
図2(a)に示すように、ステージ20上に、隔壁4が形成された基板1を配置し、この基板1上に、隔壁4と近接させてマスク21を配置する。このとき、マスク21と基板1に設けた電極5との間の距離はd0である。マスク21の開口部21aを、セル7の開口部に対応させる。図示例では、1つのセル7に1つの開口部21aを対応させているが、1つのセル7に複数の開口部21aを対応させてもよい。なお、隔壁4とマスク21とが絶縁されていれば、隔壁4とマスク21とが接触することになってもよい。
粒子群を充填する工程の前に、マスク21上で粒子群移動部材22を移動させた際の、マスク21と基板1の電極5との間の距離をマスク21全体にわたって測定する。すなわち、マスク21上に粒子群を配置せずに、マスク21上で粒子群移動部材22を移動させる。上述したとおり、粒子群移動部材22をマスク21に押し付けながら移動させることによりマスク21が撓むので、図2(b)に示すように、マスク21と電極5との間の距離は、マスク21の端部ではd0であるのに対して、マスク21の中央部ではd1となる(d1<d0)。測定した距離(マスク21の撓み量△d)は、例えば、図3のようなグラフとなる。
次に、マスク21に電圧V0を印加し、基板1に設けた電極5に0ボルトの電圧を印加し、マスク21と電極5との間に電界を生成する。ここでは、基板1に設けた電極5を接地している。
マスク21が撓むことにより、マスク21と電極5との間の距離が変化すると、マスク21と電極5との間の電界が変化する。その結果、粒子群にかかる電界が変化するため、マスク21から基板1に移動する粒子群の量にばらつきが生まれ、基板全面にわたり均一に粒子群を充填することができない。それゆえ、マスク21と電極5との間の空間全体にわたり、電界を一定にする必要がある。
【0012】
マスク21と電極5との間の空間全体にわたり、電界を一定にするための第1の方法は、測定した距離(例えば、図3に示すグラフ)に基づき、マスク21と電極5との間の距離を制御することである。
すなわち、図2(c)に示すように、昇降機構23を用いてマスク21を上下方向に移動させる。例えば、マスク21の端部ではマスク21を移動させず、マスク21の中央部では撓み量△d=d0−d1だけマスク21を上昇させる。すると、マスク21と電極5との間の距離を、マスク21の全面にわたり一定値d0にすることができるので、マスク21と電極5との間の空間全体にわたり電界を一定にすることができる。
【0013】
昇降機構23としては、モータ駆動を用いることができる。利用するモータをステッピングモータ、サーボモータ、あるいはリニアモータとすることで、精密な距離の制御が可能となり、マスク21と電極5との間の空間全体にわたり電界を一定にすることができる。
図4(a)に本発明の充填方法を実現する装置の全体構成図の一例を示す。マスク台座24上にマスク21が配置され、マスク台座24は昇降機構23により昇降可能になっている。図4(b)に示すステージ20には、距離測定用レーザー装置25が内蔵され、距離測定用レーザー装置25は、粒子群移動部材22の移動に従って、ステージ20に設けられたガイドレール26に沿って移動することによりマスク21と基板1の電極5(不図示)との間の距離を測定する。
この装置を用いた動作フローを説明する
(1)マスク21と電極5との間の距離として、設計値を入力する。この設計値は、制御したいギャップ量となる。
(2)粒子群をマスク21上に配置せずに、あるいは、試し刷り用の粒子群をマスク21上に配置して、マスク21上で粒子群移動部材22を移動させ、距離測定用レーザー装置25によりギャップ情報を測定する。試し刷り用の粒子群をマスク21上に配置することにより、マスク21を傷つけることを防止することができる。
なお、試し刷り時に基板に充填された粒子は原則廃棄される。
(3)測定して得たギャップ情報と、このギャップ情報に対応する粒子群移動部材22の位置情報とを、マスク間ギャップ処理計算器(不図示)に記憶させる。
(4)記憶させたギャップ情報から、粒子群充填工程時の補正量を決定する。
(5)粒子群をマスク21上に配置し、マスク21上で粒子群移動部材22を移動させる。このとき、決定した補正量に基づき、粒子群移動部材22の位置情報に応じた補正を行う。すなわち、決定した補正量に基づき、粒子群移動部材22の押し込み量および/または昇降機構23を制御する。
なお、ステージ20を昇降させることにより、距離を制御することもできる。
【0014】
マスク21と電極5との間の空間全体にわたり、電界を一定にするための第2の方法は、測定した距離(例えば、図3に示すグラフ)に基づき、マスク21に印加する電圧と電極5に印加する電圧とを制御することである。
マスク21と電極5との間の空間全体にわたり、電界E(E=V0/d)を一定にしたいところ、距離dが変化するため、距離dに応じて印加する電圧V0も変化させることにより電界Eを一定に保つことができる。
なお、マスク21と電極5との間の距離dおよび電圧V0の両方を制御することにより、電界Eを一定に保つこともできる。
【0015】
本発明において、マスク21と電極5との距離は10mm以下であり、マスク21と電極5との間に形成する電圧V0は10kV以下である。
【0016】
本発明において「基板の電極」という用語は、図示例のように基板1の内表面に設けられた電極5だけでなく、基板1の内部に埋設された電極および基板1の外部に設けた電極5も含むものとする。いずれの場合でも、マスク21と電極5との間の距離を測定し、この測定した距離に基づき電界を一定に保つものとする。
【0017】
上述した例では、粒子群を充填する工程の前に、マスク21と電極5との距離を測定したが、マスク21と電極5との距離を測定しながら距離および/または電圧の制御をリアルタイムに行い、粒子群を充填することもできる。なお、この方法ではわずかな遅れが生ずるが、この遅れは許容できるものと考える。あるいは、より正確なリアルタイム処理が必要な場合には、ある時点における粒子群移動部材22によるマスク21の押し込み量およびマスク21の傾きを測定し、次の時点における押し込み量を予測してこの予測値に基づき、距離および/または電圧を制御することができる。
【0018】
上述した例では、基板1に設けた電極5を接地(すなわち、電極5の電位は0ボルトであり、電極5への印加電圧は0ボルトである)していたが、マスク21に電圧V1を印加し、電極5に電圧V2を印加して、マスク21と電極5との間の電位差(電圧)|V1−V2|をV0にすることもできる。
【0019】
また、印加電圧は、電圧値V0の直流(DC)または交流(AC)電圧に、図5(a)に示すサイン波(Sin波)または、図5(b)に示す方形波または、図5(c)に示す三角波が重畳されている電圧であることが好ましい。方形波や三角波は、周波数の異なる複数のサイン波を、フーリエ変換を適用して合成して得られるので、サイン波は、方形波(図5(b)に示す)や三角波(図5(c)に示す)を含むといえる。このような波形(サイン波)が重畳された電圧を印加することにより、粒子群を振動させ、粒子群の移動を促進し、粒子群をセル内に効率的に充填することができる。電圧V0は、直流(DC)であれば、+V0でも−V0でもよい。また、電圧V0に重畳するサイン波(方形波、三角波を含む)も、プラス側やマイナス側にあってもよい。
この効果についての理由は明確にはなっていないが、以下のように推察している。
マスク21上の粒子群は、粒子群移動部材22で押されて移動しているときに粒子単体同士が凝集して、凝集塊を形成する性質を有していることが一般的である。印加電圧にサイン波が重畳された電圧を用いると、このような粒子の凝集塊ができたとしても、これを解砕するといった効果がある。すなわち、凝集塊としてマスク開口部21aを通過した粒子群があっても、マスク21と基板1との間を移動する間に、サイン波が重畳された印加電圧による電界の揺らぎによって解砕され基板1上のセル7内に均一に充填されやすい粒子群となるものとの推察である。
【0020】
また、本発明の粒子群の充填方法は、基板1の厚さが一定でない場合にも用いることができる。
図6(a)に示すように、基板1の厚さが一定でない場合、マスク21と、基板1の電極5との間の距離を測定し、図6(b)に示すように、測定した距離に基づき、マスク21を傾ける。この状態で、上述したようにマスク21のたわみも考慮してマスク21と電極5との間の距離を制御することにより、マスク21と電極5との間の電界を一定に保つことができる。
なお、マスク21を傾ける代わりに、ステージ20を傾けてもよい。
【0021】
マスク21は、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル、アルミニウム、鉄、銅等の導電性金属を用いた導電性を有するメタルマスクや、これら導電性金属を用いたメタルマスクと汎用プラスチックを用いた樹脂製マスクとを組み合わせた導電性を有する積層マスク等とすることができる。
メタルマスクの作製方法としては、ニッケル電鋳法が知られている。ニッケル電鋳法で作製したマスクは導電性を有しており、本発明で用いるマスクとして好適である。
マスク21の厚さは、充填する粒子群の種類にもよるが、粒子径に合わせて決める。平均粒子径が5μm〜20μmの粒子群の場合のマスク厚は、25μm〜100μmの範囲で決める。
【0022】
粒子群移動部材22は、板状部材としたり、ローラ状部材としたり、ブラシ状部材としたりすることができる。板状部材とする場合の材料としては、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどのゴム材料や、ナイロン、ポリエチレンなどのプラスチック材料のような弾性材料が挙げられる。板状部材22全体をこのような弾性材料で構成してもよいし、少なくともマスク21面に当たる部分に上述した硬度を有する弾性材料を配置した構成としてもよい。板状部材の厚さを制御して、適度に撓むようにすることも好ましい態様である。板状部材とした場合、先端を薄くしたブレード状にすることもできる。ローラ状部材とした場合、回転できるようにしてローラがマスク上を転がるようにして粒子群を移動させるようにすることもできる。ローラ状部材の材料としては、PVA(ポリビニルアルコール)やウレタンフォームをはじめとしたスポンジや、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどのゴム材料、表面状態を制御した金属材料、プラスチック材料が挙げられる。
【0023】
距離測定に使用するセンサーの種類は、光学センサーや静電容量式センサーを利用するが、測定するマスク21面が磁性体であり、基板1に磁性体を使用していなければ、渦電流式近接センサーを利用した方が、基板や非磁性体障害物の影響を受けず、精度の高い距離測定が可能となる。
【0024】
以下、本発明の対象となるパネル構造体の一例である情報表示用パネルを構成するその他の部材について説明する。
【0025】
まず、隔壁の形状は、表示にかかわる表示媒体の種類や、配置する電極の形状、配置により適宜最適に設定され、特に限定はされないが、隔壁の幅は2μm〜100μm、好ましくは3μm〜50μmとし、隔壁の高さは10μm〜500μm、好ましくは10μm〜200μmとする。基板間ギャップを確保するために配置する隔壁の高さは、確保したい基板間ギャップと合わせる。基板間空間をセルに仕切るために配置する隔壁の高さは、基板間ギャップと同じにしても、幾分低くしてもよい。
また、隔壁を形成するにあたり、対向する両基板1、2の各々にリブを形成した後に接合する両リブ法、片側の基板上にのみリブを形成する片リブ法が考えられる。この発明では、いずれの方法も好適に使用できる。この隔壁により区画されるセルの形状は、基板平面方向からみて四角状、三角状、六角状、円形状、ライン状が例示され、配置としては格子状やハニカム状、網目状が例示される。なお、隔壁(リブ)の幅はできるだけ小さくした方が良く、表示状態の鮮明さが増す。
ここで、隔壁の形成方法を例示すると、金型転写法、スクリーン印刷法、サンドブラスト法、フォトリソ法、アディティブ法が挙げられる。いずれの方法もこの発明の情報表示装置に搭載する情報表示用パネルに好適に用いることができるが、これらのうち、レジストフィルムを用いるフォトリソ法や金型転写法は特に好適である。
【0026】
基板としては、少なくとも一方の基板はパネル外側から表示媒体を確認できる透明基板であり、可視光の透過率が高くかつ耐熱性の良い材料が好適である。もう一方の基板となる背面側基板は、透明でも不透明でも構わない。基板材料を例示すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルフィン(PES)、アクリル等のプラスチック基板や、ガラスシート、石英シート、絶縁膜で被覆した金属シート等を用い、観察側にはこのうち透明なものを用いる。基板の厚みは、好ましくは2μm〜2000μmであり、さらに好ましくは5μm〜1000μmである。薄すぎると、強度、基板間の隔壁均一性を保ちにくくなり、2000μmより厚いと、薄型の情報表示用パネルとする場合に不都合だからである。
【0027】
電極の材料としては、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、金等の金属類や酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化インジウム、導電性酸化錫、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン(PEDOT:PSSなどがある)等の導電性高分子類が例示され、適宜選択して用いられる。なお、電極の厚みは、導電性や光透過性を鑑みて決定され、0.01μm〜10μm、好ましくは0.05μm〜5μmである。背面側基板に設ける電極の材質や厚みについては、光透過性を鑑みる必要はない。
【0028】
情報表示用パネルの表示媒体として用いる帯電性粒子は、平均粒子径d(0.5)が、1μm〜20μmの範囲であり、均一で揃っていることが好ましい。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体としての移動に支障をきたすようになる。
【0029】
本発明を適用するパネル構造体として、情報表示用パネルのほかに、例えば、特許文献2に示されている音響発生パネルが挙げられる。
このように、本発明は、基板間に帯電性粒子を含んだ粒子群を配置した構成のパネル構造体を製造する際の粒子群の充填方法であり、本発明を用いて製造したパネル構造体は、粒子群が、パネル構造体に均一に充填されているので、各パネル構造体が発現する性能おいてばらつきが生じないという利点を有する。
【0030】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な製品を製造する際の実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0031】
1 基板
2 基板
3W 白色粒子群(白色表示媒体)
3Wa 白色負帯電性粒子
3B 黒色粒子群(黒色表示媒体)
3Ba 黒色正帯電性粒子
4 隔壁
5 電極
6 電極
7 セル
8 接着剤
20 ステージ
21 マスク
22 粒子群移動部材
23 昇降機構
24 マスク台座
25 距離測定用レーザー装置
26 ガイドレール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された隔壁で区画されたセル内に、帯電性粒子を含んだ粒子群を充填する方法であって、
前記セルの開口部に対応して、前記隔壁と近接させてマスクを配置し、
前記マスク上で粒子群移動部材を移動させた際の、前記マスクと前記基板の電極との間の距離を測定し、
前記マスクと前記基板の電極とに電圧を印加し、
前記測定した距離に基づき、前記マスクと前記基板の電極との距離および前記印加電圧の少なくとも一方を制御することにより、前記マスクと前記基板の電極との間の空間全体にわたり一定の電界を生成し、
前記マスク上に配置された前記粒子群を、前記粒子群移動部材によって移動させて、前記マスクの開口部を経て前記セルに充填する、
ことを特徴とする粒子群の充填方法。
【請求項2】
前記基板の電極または前記マスクのいずれかを接地することを特徴とする請求項1に記載の粒子群の充填方法。
【請求項3】
前記印加電圧は、一定電圧にサイン波が重畳されていることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子群の充填方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−104977(P2013−104977A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247930(P2011−247930)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】