説明

粘着テープ

【課題】入力装置の製造に好適に用いられ、金属薄膜面に貼り合わせて高温高湿に曝した後で常温に戻した場合に、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がる現象(パターン見え)の消失までの時間を短縮することのできる粘着テープを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とする粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープであって、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位、n−ブチル(メタ)アクリレート由来の構成単位、イソボルニル(メタ)アクリレート由来の構成単位、及び、エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマー由来の構成単位を有し、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における前記2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位の割合が、5重量%以上である粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置の製造に好適に用いられ、金属薄膜面に貼り合わせて高温高湿に曝した後で常温に戻した場合に、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がる現象(パターン見え)の消失までの時間を短縮することのできる粘着テープに関する。また、本発明は、該粘着テープを用いて製造されるカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体、金属薄膜付フィルム積層体、及び、入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯情報端末等の画像表示装置においては、例えばアクリル系粘着剤等の透明性の高い粘着剤又は粘着テープを介して、ディスプレイパネルモジュール上に表面のカバーパネルが貼り合わされている。また、入力装置においても、同様の粘着剤又は粘着テープを介して、ディスプレイパネルモジュール上にタッチパネルモジュールが貼り合わされ、更に、タッチパネルモジュール上に表面のカバーパネルが貼り合わされている。従来、カバーパネルにはガラス板が用いられてきたが、最近ではガラス板に替えてより安全で軽量なポリカーボネート板、アクリル板等の樹脂板を用いるのが一般的である。これらの樹脂板は高温高湿に曝すとアウトガスを生じ、これが原因となって樹脂板と粘着剤層との接着界面に発泡又は浮き剥がれが起こり、外観不良を生じることが問題となっている。
【0003】
また、カバーパネルには印刷段差等の段差を有するものがあるため、このような用途に用いられる粘着剤又は粘着テープには、貼り合せの際に段差に追従し、気泡等を巻き込まないことが要求される。
このような用途に用いられる粘着剤又は粘着テープとして、例えば、特許文献1には、透明性を有する両面粘着テープ又はシートであって、透明基材の両面に透明粘着剤層が形成されており、かつ、透明基材の少なくとも一方の面に形成されている透明粘着剤層が、特定のアクリル系ポリマー(a)及びオリゴマー(b)を含む粘着剤組成物より形成されている透明両面粘着テープ又はシートが記載されている。また、特許文献2には、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなるABA型トリブロック共重合体と、水酸基を有する樹脂とをポリマーブレンドしてなるアクリル系透明粘着剤組成物が記載されている。
【0004】
一方、タッチパネルモジュールは複数のフィルムを含む積層体からなっており、銀、ITO、ZnO等の金属又は金属酸化物を含有する金属薄膜付フィルムが最表面となることが多い。従って、タッチパネルモジュールの貼り合わせのために用いられる粘着剤又は粘着テープは、金属薄膜付フィルムの金属薄膜面に対して粘着剤層が直接接触することになる。
【0005】
しかしながら、金属薄膜面に対して粘着剤層が直接接触した状態で、高温高湿に曝した後、常温に戻した場合、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がって透明性が損なわれる現象(パターン見え)が生じることが問題となっている。浮き上がったパターンは時間が経つと消失するが、消失までの時間が長いと、入力装置を高温高湿の夏場等に使用すると、表示画面に金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がって透明性を失い視認性を低下させることになる。これまで、粘着剤又は粘着テープにおいて、このようなパターン見えの問題を軽減する観点からは充分な検討が行われて来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−255877号公報
【特許文献2】特開2009−102467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、入力装置の製造に好適に用いられ、金属薄膜面に貼り合わせて高温高湿に曝した後で室温に戻した場合に、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がる現象(パターン見え)の消失までの時間を短縮することのできる粘着テープを提供することを目的とする。また、本発明は、高温高湿に曝したときにアウトガスを発生する被着体を用いた場合にも接着界面で発生する発泡及び浮き剥がれを抑制することができ、段差追従性にも優れた粘着テープを提供することを目的とする。また、本発明は、該粘着テープを用いて製造されるカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体、金属薄膜付フィルム積層体、及び、入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とする粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープであって、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位、n−ブチル(メタ)アクリレート由来の構成単位、イソボルニル(メタ)アクリレート由来の構成単位、及び、エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマー由来の構成単位を有し、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における前記2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位の割合が、5重量%以上である粘着テープである。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、特定の組み合わせの構成単位を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を用いることにより、入力装置の製造に用いられる粘着テープに必要とされる性能を保持したまま、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がる現象(パターン見え)の消失までの時間が極めて短くなる粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の粘着テープは、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とする粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する。
本明細書において「主成分とする」とは、粘着剤組成物が(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を全量に対して、通常、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上含有することを意味する。
【0011】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する。本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味する。
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を用いることにより、粘着テープを金属薄膜面に貼り合わせて高温高湿に曝した後で常温に戻した場合に、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がる現象(パターン見え)の消失までの時間を短縮することができる。具体的には、浮き上がったパターンの消失までの時間は60分以下であることが好ましく、30分以下であることがより好ましい。消失までの時間が60分を超えると、表示画面に金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がって透明性を失い視認性を低下させることになる。
【0012】
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを用いなかったり、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの代わりに、例えばエチル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数がより少ない(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを用いたりした場合には、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がる現象(パターン見え)の消失までの時間が長くなってしまう。
【0013】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における上記2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位の割合は、5重量%以上である。上記構成単位の割合が5重量%未満であると、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がる現象(パターン見え)の消失までの時間が長くなることがある。上記構成単位の割合の好ましい下限は10重量%である。
【0014】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、n−ブチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する。
n−ブチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を用いることにより、高温高湿に曝したときにアウトガスを発生する被着体を用いた場合にも接着界面で発生する浮き剥がれを抑制することができる。
【0015】
n−ブチル(メタ)アクリレートを用いなかったり、n−ブチル(メタ)アクリレートの代わりに、例えばエチル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数がより少ない(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを用いたりした場合には、高温高湿に曝したときにアウトガスを発生する被着体を用いた場合に、接着界面で浮き剥がれが生じやすくなる。
【0016】
上記2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位と上記n−ブチル(メタ)アクリレート由来の構成単位の合計量に対する、上記2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位の比(2EHA/(2EHA+BA))は、好ましい下限が0.1、好ましい上限が0.98である。2EHA/(2EHA+BA)の値が0.1未満であると、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がる現象(パターン見え)の消失までの時間が長くなることがある。2EHA/(2EHA+BA)の値が0.98を超えると、粘着剤の凝集力が低くなり、被着体との接着界面に浮き剥がれが生じることがある。2EHA/(2EHA+BA)の値のより好ましい下限は0.14、より好ましい上限は0.9である。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、イソボルニル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する。
イソボルニル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を用いることにより、被着体に対する粘着剤層の粘着力を劇的に向上させることができる。このように粘着力を高めることにより、高温高湿に曝したときにアウトガスを発生する被着体を用いた場合にも気泡の成長を妨げ、接着界面で発生する浮き剥がれを抑制することができる。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における上記イソボルニル(メタ)アクリレート由来の構成単位の割合は特に限定されないが、好ましい下限が15重量%、好ましい上限が40重量%である。上記構成単位の割合が15重量%未満であると、アウトガスを発生する被着体を用いた場合に被着体との接着界面に浮き剥がれが生じることがある。上記構成単位の割合が40重量%を超えると、被着体に印刷された段差に対する粘着剤層の密着性が低下して、気泡等の巻き込み泡を排除することが困難になることがある。上記構成単位の割合のより好ましい下限は18重量%、より好ましい上限は35重量%である。
【0019】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド(PEO)鎖と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマー(以下、PEO鎖含有モノマーともいう)由来の構成単位を有する。
従来、アクリル系粘着剤は、高温高湿に曝した後で室温に戻した場合に、吸収した水分が結露することによって白化し、視認性の低下をもたらすことが問題となっていた。とりわけ、金属薄膜を被着体とした場合にアクリル系粘着剤の白化は顕著となる。PEO鎖含有モノマー由来の構成単位を有する(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を用いることにより、粘着テープを金属薄膜面に貼り合わせて高温高湿に曝した後で常温に戻した場合にも、水分を微分散させることができ、その結果、粘着剤層が白化するのを抑制することができる。
【0020】
上記PEO鎖含有モノマーにおいて、エチレンオキサイドの繰り返し数が8未満又は45を超えると、白化抑制効果が充分に得られなくなる。また、エチレンオキサイドの繰り返し数が45を超えると、PEO鎖含有モノマーと他の主成分となるモノマー等との相溶性が低下し、被着体に対する粘着剤層の粘着力が低下する。
【0021】
上記PEO鎖含有モノマーは特に限定されないが、白化をより効果的に抑制することができることから、下記一般式(1)で表される構造を有するモノマーであることが好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜30のアルキル基を表し、nは8〜45の整数を表す。
【0024】
なかでも、上記PEO鎖含有モノマーは、特に白化抑制効果が高いため、一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数18のアルキル基であり、nは30であるモノマー、又は、一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1のアルキル基であり、nは23であるモノマーが特に好ましい。これらのモノマーは少量での添加によって白化を抑制できることから、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体のガラス転移温度(Tg)を必要以上に上昇させることがなく、そのため粘着テープの信頼性に悪影響を及ぼすことがない。
【0025】
上記PEO鎖含有モノマーのうち、市販品として、例えば、ブレンマーPME−1000(エチレンオキサイドの繰り返し数=23、末端メチル基、日油社製)、ブレンマーPME−400(エチレンオキサイドの繰り返し数=9、末端メチル基、日油社製)、ブレンマーPME−2000(エチレンオキサイドの繰り返し数=45、末端メチル基、日油社製)、NKエステルAM−130G(エチレンオキサイドの繰り返し数=13、末端メチル基、新中村化学工業社製)、ライトエステル041MA(エチレンオキサイドの繰り返し数=30、末端メチル基、共栄社化学社製)、ブレンマーPSE−1300(エチレンオキサイドの繰り返し数=30、末端オクタデシル基、日油社製)、ブレンマーAE−400(エチレンオキサイドの繰り返し数=10、末端水酸基、日油社製)、ブレンマーANE−1300(エチレンオキサイドの繰り返し数=30、末端ノニルフェニル基、日油社製)等が挙げられる。
【0026】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における上記PEO鎖含有モノマー由来の構成単位の割合は特に限定されないが、好ましい下限が0.5重量%、好ましい上限が10重量%である。上記構成単位の割合が0.5重量%未満であると、白化抑制効果が得られないことがある。上記構成単位の割合が10重量%を超えると、被着体に対する粘着剤層の密着性が低下して、信頼性が低下することがある。上記構成単位の割合のより好ましい下限は0.7重量%、より好ましい上限は8重量%であり、更に好ましい下限は0.9重量%、更に好ましい上限は6重量%であり、特に好ましい下限は1重量%、特に好ましい上限は5重量%である。
【0027】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、カルボキシル基と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマー(以下、カルボキシル基含有モノマーともいう)由来の構成単位を含有していてもよい。
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体がカルボキシル基含有モノマー由来の構成単位を含有することにより、分子間相互作用が増大して、粘着剤層の凝集力が向上する。
【0028】
上記カルボキシル基含有モノマーは特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイル酢酸、(メタ)アクリロイルプロピオン酸、(メタ)アクリロイル酪酸、(メタ)アクリロイルペンタン酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における上記カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位の割合は特に限定されないが、好ましい上限が3重量%である。上記構成単位の割合が3重量%を超えると、金属薄膜を被着体とした場合に金属薄膜を劣化させやすくなることがある。上記構成単位の割合のより好ましい上限は2重量%、更に好ましい上限は1.5重量%である。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量は、好ましい下限が60万、好ましい上限が200万である。重量平均分子量が60万未満であると、粘着剤層の高温弾性率が低下して、信頼性が低下することがある。重量平均分子量が200万を超えると、粘着剤層の流動性が低下し、被着体に対する密着性が低下することがある。重量平均分子量のより好ましい下限は70万、より好ましい上限は180万であり、更に好ましい下限は80万、更に好ましい上限は160万であり、特に好ましい下限は90万、特に好ましい上限は140万である。
【0031】
なお、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算により測定した値を意味する。具体的には、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体をテトラヒドロフラン(THF)により100倍に希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液について、カラム(例えば、SHOWDEXカラム LF−804等)を用いたGPC法にて測定することにより、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量を求めることができる。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を製造する方法は特に限定されず、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、PEO鎖含有モノマー、及び、必要に応じて添加する他のモノマーを含有する混合モノマーを、重合開始剤の存在下にてラジカル重合させる方法等が挙げられる。重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の従来公知の重合方法が挙げられる。
【0033】
上記溶液重合に用いる溶媒は特に限定されず、例えば、酢酸エチル、トルエン、ジメチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。
上記溶液重合に用いる溶媒の配合量は特に限定されないが、上記混合モノマー100重量部に対する好ましい下限が25重量部、好ましい上限が300重量部である。配合量が25重量部未満であると、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の分子量分布が広くなることがある。このような(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層は、被着体に対する粘着力及び凝集力が低下して、信頼性が低下することがある。配合量が300重量部を超えると、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を用いて粘着剤組成物を調製し、粘着剤層を形成する際に、溶媒を除去する手間が必要となることがある。
【0034】
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、過硫酸塩、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。なかでも、金属薄膜を被着体とした場合に金属薄膜に与える影響を考慮すると、有機過酸化物又はアゾ化合物が好ましい。
上記過硫酸塩は特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。上記有機過酸化物は特に限定されず、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物は特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。
これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記重合開始剤の配合量は特に限定されないが、上記混合モノマー100重量部に対する好ましい下限が0.02重量部、好ましい上限が0.5重量部である。配合量が0.02重量部未満であると、重合反応が不充分となったり、重合反応に長時間を要したりすることがある。配合量が0.5重量部を超えると、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重量平均分子量が低くなりすぎたり、分子量分布が広くなりすぎたりすることがある。このような(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含有する粘着剤組成物からなる粘着剤層は、被着体に対する粘着力及び凝集力が低下して、信頼性が低下することがある。
【0036】
上記粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。
上記粘着剤組成物に架橋剤を添加することで、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体に架橋構造を形成することができる。また、上記架橋剤の種類又は量を適宜調整することで、粘着剤層のゲル分率を調整することができる。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、耐熱性及び耐久性等の性能を発現しやすいことから、イソシアネート系架橋剤及び/又はエポキシ系架橋剤が好適である。
【0037】
上記イソシアネート系架橋剤は特に限定されないが、脂肪族イソシアネート系架橋剤が好ましい。上記脂肪族イソシアネート系架橋剤のうち、市販品として、例えば、コロネートHX(日本ポリウレタン社製)、マイテックNY260A(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記エポキシ系架橋剤は特に限定されないが、脂肪族エポキシ系架橋剤が好ましい。上記脂肪族エポキシ系架橋剤のうち、市販品として、例えば、デナコールEX212、デナコールEX214(いずれもナガセケムテックス社製)、E−5C(綜研化学社製)等が挙げられる。その他のエポキシ系架橋剤としては、例えば、E−AX(綜研化学社製)等が挙げられる。
【0038】
上記架橋剤の配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部であり、より好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。
【0039】
上記粘着剤組成物は、更に、粘着付与樹脂を含有してもよい。
上記粘着付与樹脂は特に限定されず、例えば、キシレン樹脂、フェノール樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、キシレン樹脂が好ましく、キシレン樹脂のアルキルフェノール反応物がより好ましい。また、上記粘着付与樹脂は、水素添加された樹脂であることが好ましく、このような水素添加された樹脂を用いることで、粘着剤層の透明性を高めることができる。
【0040】
上記粘着剤組成物は、更に、シランカップリング剤を含有することが好ましい。
通常、金属薄膜を被着体とした場合にアクリル系粘着剤を用いると、金属薄膜の劣化による抵抗値の低下が起こる。上記粘着剤組成物にシランカップリング剤を添加することにより、粘着テープを金属薄膜面に貼り合わせて高温高湿に曝した場合にも、金属薄膜の劣化による抵抗値の低下を抑制することができる。また、上記粘着剤組成物にシランカップリング剤を添加することで、被着体に対する粘着剤層の密着性を向上させることができる。
【0041】
上記シランカップリング剤は特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメチルメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、エポキシ基含有シランカップリング剤が好適である。
【0042】
上記シランカップリング剤の配合量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が5重量部である。配合量が0.01重量部未満であると、被着体に対する粘着剤層の密着性が低下して剥がれが発生したり、金属薄膜の劣化による抵抗値の低下を抑制する効果が充分に得られなかったりすることがある。配合量が5重量部を超えると、粘着剤層に対する離型紙又は離型フィルムの剥離性が低下し、離型紙又は離型フィルムが剥離できなくなったり、剥離できたとしても粘着剤層の表面荒れが発生したりすることがある。配合量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0043】
上記粘着剤組成物は、更に、本発明の効果を阻害しない範囲内で、必要に応じて充てん剤、老化防止剤等の従来公知の添加剤を含有してもよい。
【0044】
上記粘着剤組成物を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、及び、必要に応じて添加する上記架橋剤、上記粘着付与樹脂、上記シランカップリング剤、上記添加剤等を混合し、攪拌する方法が挙げられる。
【0045】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限が5μm、好ましい上限が1mmである。厚みが5μm未満であると、被着体に対する粘着剤層の粘着力が低下して、信頼性が低下することがある。厚みが1mmを超えると、粘着剤成分の染み出し等が生じ、粘着テープの取扱性が低下することがある。上記粘着剤層の厚みのより好ましい下限は10μm、更に好ましい下限は20μmであり、より好ましい上限は500μm、更に好ましい上限は300μmである。
【0046】
本発明の粘着テープは、基材を有さないノンサポートタイプであってもよいし、基材の両面に粘着剤層が形成されたサポートタイプであってもよい。
上記基材は、透明性を有する基材であれば特に限定されず、例えば、アクリル、オレフィン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ウレタン、ポリイミド等の透明な樹脂からなるシート、網目状の構造を有するシート、孔が開けられたシート等が挙げられる。
【0047】
上記基材の厚みは特に限定されないが、好ましい下限が2μm、好ましい上限が200μmである。厚みが2μm未満であると、粘着テープの強度が不足し、破れたり、取扱性が低下したりすることがある。厚みが200μmを超えると、基材の腰が強すぎて、粘着テープの段差への追従性が悪くなることがある。上記基材の厚みのより好ましい下限は5μm、より好ましい上限は100μmである。
【0048】
本発明の粘着テープを製造する方法は特に限定されない。ノンサポートタイプの粘着テープを製造する方法として、例えば、上記粘着剤組成物を離型紙又は離型フィルムの離型処理面に塗工することによって粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層の上に、離型処理面が粘着剤層に接するようにして新たに用意した離型紙又は離型フィルムを重ね合わせて積層体を得た後、得られた積層体をゴムローラ等により加圧する方法等が挙げられる。
【0049】
また、本発明の粘着テープを製造する方法として、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の原料となる上記の各モノマーを含有する混合モノマーを、塊状重合によってラジカル重合させ、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を製造すると同時にテープ化まで行う方法も好適である。
【0050】
上記塊状重合は、重合熱の除去がしやすく、反応制御がしやすいことから、光重合であることが好ましい。
特に、本発明の粘着テープを製造する方法として、上記混合モノマー、光重合開始剤、及び、必要に応じて添加剤等を含有し、かつ、溶剤を含有しないモノマー組成物を、一方の面が離型処理された透明な合成樹脂フィルムの離型処理面に塗工してモノマー層を形成した後、このモノマー層上に、一方の面が離型処理された別の透明な合成樹脂フィルムの離型処理面を重ね合わせ、合成樹脂フィルムを透してモノマー層に紫外線照射等の光照射を行うことにより、上記混合モノマーをラジカル重合させる方法が好適に用いられる。
なお、上記透明な合成樹脂フィルムは特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
【0051】
また、本発明の粘着テープを光重合によって製造する場合には、重合と同時に架橋構造を形成できることから、上記混合モノマーは、重合性官能基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
上記多官能(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、得られる粘着剤層の応力分散性の低下が小さく粘着性能に優れる点から、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、水添ポリブタジエンジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、ポリエステルジアクリレートが好ましい。
【0052】
上記多官能(メタ)アクリレートの配合量は特に限定されないが、上記混合モノマー中の好ましい下限が0.02重量%、好ましい上限が5重量%である。配合量が0.02重量%未満であると、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の架橋が不充分となり、粘着剤層の凝集力が低下して加工性が低下することがある。配合量が5重量%を超えると、被着体に対する粘着剤層の粘着力及び初期接着性が低下して、信頼性が低下することがある。配合量のより好ましい下限は0.05重量%、より好ましい上限は3重量%である。
【0053】
上記光重合開始剤は特に限定されず、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(メルク社製、商品名「ダロキュア2959」)等のケトン系光重合開始剤、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチル−アセトフェノン(メルク社製、商品名「ダロキュア1173」)、メトキシアセトフェン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェン(チバガイギー社製、商品名「イルガキュア651」)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(チバガイギー社製、商品名「イルガキュア184」)等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルジメチルケタール等のケタール系光重合開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0054】
上記光重合開始剤の配合量は特に限定されないが、上記混合モノマー100重量部に対する好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が5重量部である。配合量が0.01重量部未満であると、混合モノマーの重合が不完全となり、凝集力の低下が原因となって粘着剤層に必要な物性が得られないことがある。配合量が5重量部を超えると、光照射時にラジカル発生量が多くなり、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の分子量が低下したり、粘着剤層のゲル分率が低下したりすることにより、例えばアウトガス抑制効果等が低下することがある。配合量のより好ましい下限は0.03重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0055】
上記光照射に用いられるランプは特に限定されず、例えば、波長400nm以下に発光分布を有するランプ等が挙げられる。
上記波長400nm以下に発光分布を有するランプとして、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀ランプ、メタルハライドランプ等が挙げられる。なかでも、上記光重合開始剤の活性波長領域の光を効率よく発光するとともに、上記モノマー層に含まれる上記光重合開始剤以外の成分の光吸収が少なく、上記モノマー層の内部にまで光が充分に到達して上記混合モノマーを効果的に重合させることができることから、ケミカルランプが好ましい。
【0056】
上記光照射における光照射強度は特に限定されず、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重合度を左右する因子であることから、目的とする(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の重合度又は粘着剤層の性能等に合わせて、適宜調整される。
例えば、上記光重合開始剤としてアセトフェノン系光重合開始剤を用いた場合、該アセトフェノン系光重合開始剤の光分解に有効な波長領域の光照射強度は、0.1〜100mW/cmであることが好ましい。なお、上記アセトフェノン系光重合開始剤の光分解に有効な波長領域は、光重合開始剤によって異なるが、通常、365nm〜420nm程度である。
【0057】
本発明の粘着テープは、ポリカーボネート板と金属薄膜付フィルムの金属薄膜面とを貼り合せた積層体、アクリル板と金属薄膜付フィルムの金属薄膜面とを貼り合せた積層体、又は、2枚の金属薄膜付フィルム同士を貼り合わせた積層体を、85℃かつ相対湿度(RH)85%の高温高湿下に240時間放置した後に発生する直径10μm以上の気泡の個数が、いずれも0個であることが好ましい。
【0058】
本発明の粘着テープを用いれば、金属薄膜面に貼り合わせて高温高湿に曝した後で室温に戻した場合に、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がる現象(パターン見え)の消失までの時間を短縮することができる。また、高温高湿に曝したときにアウトガスを発生する被着体を用いた場合にも、接着界面で発生する浮き剥がれを抑制することができる。更に、本発明の粘着テープは印刷段差に対する追従性もよく、例えば総厚み10μmの段差に対しても気泡を巻き込むことなく追従することができる。従って、本発明の粘着テープは、携帯電話、携帯情報端末等の入力装置の製造に好適に用いることができる。
【0059】
本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、携帯電話、携帯情報端末等の入力装置を製造する際に、表面を保護するためのカバーパネルとタッチパネルモジュールとを接着するのに好適に用いることができる(図1参照)。とりわけ、上記カバーパネルがポリカーボネート板又はアクリル板である場合に好適である。
本発明の粘着テープを介して、カバーパネルとタッチパネルモジュールとが接着されているカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体もまた、本発明の1つである。
【0060】
本発明の粘着テープは、2枚の金属薄膜付フィルムの金属薄膜面同士の接着にも好適に用いることができる(図1参照)。
本発明の粘着テープを介して、2枚の金属薄膜付フィルムの金属薄膜面同士が接着されている金属薄膜付フィルム積層体もまた、本発明の1つである。
本発明のカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体、又は、本発明の金属薄膜付フィルム積層体を有する入力装置もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、入力装置の製造に好適に用いられ、金属薄膜面に貼り合わせて高温高湿に曝した後で常温に戻した場合に、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がる現象(パターン見え)の消失までの時間を短縮することのできる粘着テープを提供することができる。また、本発明によれば、該粘着テープを用いて製造されるカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体、金属薄膜付フィルム積層体、及び、入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の粘着テープを用いて、表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュールの表面に貼り合わせた携帯電話、携帯情報端末等の入力装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
(1)(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の製造
温度計、攪拌機、冷却管を備えた反応器内に、2−エチルヘキシルアクリレート37.3重量部と、n−ブチルアクリレート30重量部と、イソボルニルアクリレート30重量部と、PEO鎖含有モノマーとしてブレンマーPSE−1300(エチレンオキサイドの繰り返し数=30、末端オクタデシル基、日油社製)1.5重量部と、アクリル酸1重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.2重量部と、これらモノマー100重量部に対して酢酸エチル60重量部とを加え、窒素ガスを30分間吹き込んで窒素置換した後、反応器を70℃に加熱した。30分間後、モノマー100重量部に対して0.12重量部の重合開始剤としてのt−ヘキシルパーオキシピバレートを40重量部の酢酸エチルで希釈し、得られた重合開始剤溶液を上記反応器内に5時間かけて滴下添加した。その後、70℃にて、重合開始剤の添加開始から8時間反応させて、固形分50%の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体溶液を得た。
【0065】
得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を構成する各モノマー由来の構成単位の割合(重量%)を、熱分解装置(フロンティア・ラボ社製、ダブルショットパイロライザー)、GC−MS装置(日本電子社製、Q−1000GC)、FT−IR(Thermo Fisher Scientific社製、NICOLET6700)及びNMR(日本電子社製、JNM−ECA400)を用いて測定した(表1)。
また、得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体について、カラムとしてSHOWDEX LF−804を用いて、GPC法によってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定した(表1)。
【0066】
(2)粘着テープの製造
得られた(メタ)アクリル酸エステル系共重合体溶液に、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の固形分100重量部に対して、架橋剤としてマイテックNY260A(三菱化学社製)を固形分換算で3.3重量部、E−AX(綜研化学社製)を固形分換算で0.1重量部、シランカップリング剤としてKBM−403(信越化学工業社製)を固形分換算で0.5重量部となるように添加し、攪拌して、粘着剤組成物を調製した。
得られた粘着剤組成物を、離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの離型処理面に塗工し、100℃で10分間乾燥させて粘着剤組成物溶液中の酢酸エチルを除去して、厚み50μm及び100μmの粘着剤層を形成し、更に得られた粘着剤層の上に、離型処理面が粘着剤層に接するようにして新たに用意した離型PETフィルムを重ね合わせて積層体を得た。得られた積層体をゴムローラにより加圧することにより、離型PETフィルムが両面に貼り付けられた粘着テープ(厚み50μm及び100μm)を得た。
【0067】
(実施例2〜13及び比較例1〜3)
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を構成するモノマー種及び比率、シランカップリング剤量、架橋剤種及び量等を表1又は2のようにした以外は実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体及び粘着テープを得た。
【0068】
<評価>
実施例及び比較例で得られた粘着テープについて、下記の評価を行った。結果を表1又は2に示した。
【0069】
(1)パターン見え消失までの時間
積水ナノコートテクノロジー製ITOフィルム(厚み50μm)のITO面にエッチングを施し、ダイヤ形状の模様がITO面にパターニングされたフィルムを作製した。作製したパターン付きITOフィルムのITO面へ、平面形状(40mm×60mm)に裁断した厚さ100μmの粘着テープを貼り付けた。このとき、粘着テープの一方の離型PETフィルムを剥離して、貼り付けを行った。更に、もう一方の離型PETフィルムを剥離し、積水ナノコートテクノロジー製ITOフィルム(厚み50μm)のITO面の裏面(ハードコート面)に貼り付けて、積層体を作製した。オートクレーブ処理(23℃、0.5MPa、15分)を行い、積層体を温度85℃かつ85%RHの環境試験室へ投入し、240時間後に取り出した。
積層体表面に発生したパターン(ダイヤ形状の模様)の状態を観察した。具体的には、5分間隔でパターンの消失までの時間を評価し、60分以内で消失した場合を「○」と、消失しなかった場合を「×」とした。
【0070】
(2)段差追従性
基材レス透明両面テープ(粘着層の厚み5μm)にPETフィルム(厚み5μm)を貼り合わせ、総厚10μmの段差テープを作製した。50mm×100mmの矩形のガラス板の四辺に沿う周縁部分に上記段差テープを2mm幅の額縁状に加工し、貼り付けて、段差付きガラス板を作製した。この段差付きガラス板の段差テープを貼付した面の全面に対し、実施例及び比較例で得られた厚さ100μmの粘着テープの一方の離型PETフィルムを剥がしてPETフィルム(50μm)を貼り合わせて作製した粘着シートを、もう一方の離型PETフィルムを剥がして貼り合わせ、段差部分の粘着層の浮きを目視で観察した。
段差部分にて粘着剤層の浮きが確認されなかった場合を合格「○」と、浮きが確認された場合を不合格「×」とした。
【0071】
(3)気泡発生状態(耐発泡性試験)
得られた厚さ100μm及び50μmの粘着テープを45mm×60mmの平面形状を有するように裁断した。裁断された粘着テープの一方の離型PETフィルムを剥離し、粘着テープの露出した面を厚みが0.18mmのITO付フィルム(非晶質ITO膜、積水ナノコートテクノロジー社製)のITO面上に貼り合わせた。更に、粘着テープのもう一方の離型PETフィルムを剥離し、粘着テープの露出した面を厚みが1mmの平面形状を有するPC板上に貼り合わせることにより、PC板上に、粘着テープとITO付フィルムとがこの順で積層されている積層サンプルを得た。その後、得られた積層サンプルを23℃、0.5MPaのオートクレーブにて15分間処理を行った後、温度85℃かつ85%RHの条件、又は、温度60℃かつ90%RHの条件で240時間静置し、試験サンプルを得た。得られた試験サンプルの接着界面における気泡発生状態を目視により観察した。
0.01mm以上の大きさの気泡が全く観察されなかった場合を「○」と、0.01mm以上の大きさの気泡が1つの試験サンプル当たり1〜5個観察された場合を「△」と、0.01mm以上の大きさの気泡が1つの試験サンプル当たり6個以上観察された場合を「×」として、気泡発生状態を評価した。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、入力装置の製造に好適に用いられ、金属薄膜面に貼り合わせて高温高湿に曝した後で常温に戻した場合に、金属薄膜に含まれる金属又は金属酸化物のパターンが浮き上がる現象(パターン見え)の消失までの時間を短縮することのできる粘着テープを提供することができる。また、本発明によれば、該粘着テープを用いて製造されるカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体、金属薄膜付フィルム積層体、及び、入力装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 携帯電話、携帯情報端末等の入力装置
2 本発明の粘着テープ
3 カバーパネル
4 タッチパネルモジュール
5 ディスプレイパネルモジュール
6 金属薄膜付フィルム
7 本発明の粘着テープ
8 支持体(ポリエチレンテレフタレートフィルム等)
9 金属薄膜付フィルム積層体
10 タッチパネルモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を主成分とする粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着テープであって、
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位、n−ブチル(メタ)アクリレート由来の構成単位、イソボルニル(メタ)アクリレート由来の構成単位、及び、エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマー由来の構成単位を有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体における前記2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位の割合が、5重量%以上である
ことを特徴とする粘着テープである。
【請求項2】
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位とn−ブチル(メタ)アクリレート由来の構成単位の合計量に対する、前記2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位の比(2EHA/(2EHA+BA))が、0.1〜0.98であり、
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体におけるイソボルニル(メタ)アクリレート由来の構成単位の割合が、15〜40重量%であり、
エチレンオキサイドの繰り返し数が8〜45のポリエチレンオキサイド鎖と1つのオレフィン性二重結合とを有するモノマーは、下記一般式(1)で表される構造を有するモノマーである
ことを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【化1】

一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1〜30のアルキル基を表し、nは8〜45の整数を表す。
【請求項3】
一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数18のアルキル基であり、nは30であることを特徴とする請求項2記載の粘着テープ。
【請求項4】
一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1のアルキル基であり、nは23であることを特徴とする請求項2記載の粘着テープ。
【請求項5】
粘着剤組成物は、更に、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対してシランカップリング剤を0.01〜5重量部含有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の粘着テープ。
【請求項6】
粘着剤組成物は、更に、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤及び金属キレート型架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の粘着テープ。
【請求項7】
粘着剤層の厚みが5μm〜1mmであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の粘着テープ。
【請求項8】
カバーパネルとタッチパネルモジュールとの接着、又は、2枚の金属薄膜付フィルムの金属薄膜面同士の接着に用いることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の粘着テープ。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の粘着テープを介して、カバーパネルとタッチパネルモジュールとが接着されていることを特徴とするカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体。
【請求項10】
カバーパネルは、ポリカーボネート板又はアクリル板であることを特徴とする請求項9記載のカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の粘着テープを介して、2枚の金属薄膜付フィルムの金属薄膜面同士が接着されていることを特徴とする金属薄膜付フィルム積層体。
【請求項12】
請求項9若しくは10記載のカバーパネル−タッチパネルモジュール積層体、又は、請求項11記載の金属薄膜付フィルム積層体を有することを特徴とする入力装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−91713(P2013−91713A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234403(P2011−234403)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】