説明

粘着剤組成物とそれを用いた積層フィルム及びその用途

【課題】 易開封性を有し且つ再封止し得る包装材料として好適な適度の粘着性を有する
粘着剤組成物と、該粘着剤組成物を中間層とした積層フィルム及び積層フィルムからなる
易開封性と繰返し再封止し得る包装材料を提供する。
【解決手段】 オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)、酢酸ビニル含有量が
25〜80重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(B)および粘着付与剤(C)を含ん
でなる粘着剤組成物を基本構成とし、該組成物からなる中間層を介して熱可塑性樹脂(D
)からなるラミネート層及び熱可塑性樹脂(E)からなるヒートシール層が積層されてな
る積層フィルム、ならびに該積層フィルムからなる容器蓋材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性を有し且つ再封止し得る包装材料として好適な適度の粘着性を有す
る粘着剤組成物、かかる粘着剤組成物を中間層とした積層フィルム及び積層フィルムから
なる易開封性と繰返し再封止し得る包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
せんべい、ポテトチップス等のスナック菓子類の包装、あるいはゼリー、ミルク、ヨー
グルト、プリン、豆腐、乳酸飲料等の食品包装や、ブリスター包装、その他、医薬品、医
療器具、日用品、雑貨等の包装材料として、ボトル、カップないしトレー状のプラスチッ
ク容器をプラスチックラミネートフィルムないしアルミ箔ラミネートフィルムからなる蓋
材でシールした包装が広く採用されている。このような包装材料に要求される物性は、流
通経路に耐える機械的な強度、衛生性の保持ができるシール強度及び使用時における開封
性の良さである。
【0003】
しかしながら、従来のかかる包装材料は、易開封性には優れるが、内容物を取出すため
に一度開封してしまうと再封止(リシール)は全く不可能であるものが殆どである。
一方、再封止可能な包装材料として、表基材と裏基材とを粘着剤層を介して接合してな
る蓋材を用い、開封時に粘着剤層が露出することにより、開閉自在とする容器(例えば、
特許文献1)、粘着剤層として、スチレン・ブタジエンコポリマー、エチレン・酢酸ビニ
ルコポリマー等のエラストマーとテルペン樹脂類、石油炭化水素樹脂類等の接着付与剤(
粘着付与剤)とのブレンド物からなる粘着接着剤を用いてなる再シール可能な包装材料(
例えば、特許文献2及び特許文献3)、あるいはエラストマーとしてスチレン・ブタジエ
ンコポリマーの水素添加物を用いた粘着剤を用いてなる多層フィルム(例えば、特許文献
4及び5)等、中間層として粘着剤層を用いる方法が種々提案されている。
【0004】
【特許文献1】実公昭62−31422号公報
【特許文献2】特表平4−502588号公報
【特許文献3】特開2002−301786号公報
【特許文献4】特開2003−175567号公報
【特許文献5】特開2004−58568号公報
【0005】
しかしながら、かかる特許文献に記載されたスチレン・ブタジエンコポリマー等のエラ
ストマーとテルペン樹脂類等の粘着付与剤からなる粘着剤組成物を中間層とした積層フィ
ルムを易開封性の包装材料として用いても、開封時に、表面樹脂層と粘着樹脂層、もしく
はヒートシール樹脂層と粘着樹脂層の層間が剥離するためか、あるいは粘着樹脂層の粘着
力が未だ充分でないためか、いずれも、ヒートシール強度(初期開封強度)が強すぎたり
、リシール強度が不十分であったりして、易開封性とリシール強度のバランスに欠ける場
合があることが分った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、ヒートシール性、易開封性と繰返しリシールが可能で、且つ、
リシール強度に優れた、易開封性とリシール性のバランスがとれた包装材料を得ることに
ある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)、酢酸ビニル含有量が2
5〜80重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(B)および粘着付与剤(C)を含んで
なることを特徴とする粘着剤組成物、熱可塑性樹脂(D)からなるラミネート層の片面に
、かかる粘着剤組成物からなる中間層を介して、熱可塑性樹脂(E)からなるヒートシー
ル層が積層されてなることを特徴とする積層フィルム、積層フィルムからなる容器蓋材、
積層フィルムを用いてなる包装体及び容器蓋材を用いてなる容器を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粘着剤組成物は、易開封性を有するとともに、再封止し得る包装材料として好
適な適度の粘着性を有すると言う優れた特性がある。かかる特性を利用して、該組成物を
中間層として、熱可塑性樹脂からなるラミネート層と、熱可塑性樹脂からなるヒートシー
ル層を積層したフィルムを包装材料として用いた場合、ヒートシール性に優れ、且つヒー
トシール(熱融着)して封緘した包装体を開封する際に、適度なヒートシール強度(剥離
強度)を有しているため、開封し易く、しかも、開封する際にヒートシール層が破断し、
ヒートシール層と粘着剤組成物層とが層間で界面剥離、あるいは粘着剤組成物層が凝集破
壊もしくは粘着剤組成物層も破断して、粘着剤組成物層とラミネート層との層間で界面剥
離することにより、中間層の粘着剤組成物層が開封面に露出し、かかる粘着剤組成物層は
自己粘着性に優れるため、指先で押圧しただけでも十分な接着力を有し、且つ常温(室温
)においては勿論のこと低温下(冷蔵庫への出し入れ)での剥離・接着を繰返しても粘着
剤層の自己粘着性が低下しないという特徴を有している。
また、本発明の積層フィルムは粘着剤組成物に用いる重合体等の種類もしくは組成比、
ラミネート層に用いる熱可塑性樹脂とヒートシール層に用いる熱可塑性樹脂を適宜選択す
ることにより、包装体に用いた積層フィルムのヒートシール部を剥離する際に、ヒートシ
ール層が破断するとともに中間層の粘着剤組成物が凝集破壊し、且つ剥離部が白濁し、再
封止した際にも再封止部は白濁状態を維持しているので、一旦開封して再封止した包装体
か未開封の包装体かを外視によって判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を構成する要件について説明する。
〔オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)〕
本発明に係わるオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)とは、分子内に少な
くとも一つのオレフィン系エラストマー重合体部からなる所謂非晶性のソフトセグメント
と少なくとも一つの所謂ハードセグメントを有するブロック共重合体である。オレフィン
系エラストマー重合体部からなるソフトセグメントは、通常、エチレン、プロピレン、1
−ブテンなどのα―オレフィンのランダム重合体部、ブタジエン、イソプレンなどのジエ
ン化合物(ジオレフィン)の重合体部あるいはその水素添加物であり、ハードセグメント
は、通常、ポリスチレン重合体部などのガラス転移点が常温以上の重合体部、エチレン、
プロピレン、1−ブテンなどのα―オレフィン重合体部で結晶性を有するもの、あるいは
ブタジエン重合体部の水素添加物で結晶性を有するものである。
かかるオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)として好ましい例としては、
少なくとも一つのジエンブロック(ジエン重合体部;ジオレフィン重合体部)からなるソ
フトセグメントと少なくとも一つのスチレンブロック(スチレン重合体部)からなるハー
ドセグメントとを有するスチレン・ジエンブロック共重合体(A1)及び少なくとも一つ
の非晶性オレフィンブロック(非晶性オレフィン重合体部)からなるソフトセグメントと
少なくとも一つの結晶性オレフィンブロック(結晶性オレフィン重合体部)からなるハー
ドセグメントとを有するオレフィン・非晶性オレフィンブロック共重合体(A2)を例示
することができ、これらブロック共重合体は、一般的に熱可塑性エラストマーとして製造
・販売されている。
【0010】
〔スチレン・ジエンブロック共重合体(A1)〕
本発明に係るスチレン・ジエンブロック共重合体(A1)は、ジエンブロック(ジエン
重合体部)からなるソフトセグメントとスチレンブロック(スチレン重合体部)からなる
ハードセグメントとを有するブロック共重合体であり、所謂、熱可塑性エラストマーとし
て製造・販売されているブロック共重合体の一種であって、具体的には、例えば、スチレ
ン−ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共
重合体(SBS)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)及びスチレン−イソ
プレン−スチレンブロック共重合体(SIS)若しくはそれらブロック共重合体の水素添
加物が挙げられる。かかる水素添加物は、スチレンブロックとジエンブロックの全てが水
素添加されたブロック共重合体であっても、ジエンブロックのみ水素添加されたブロック
共重合体あるいはスチレンブロックとジエンブロックの一部が水素添加されたブロック共
重合体等の部分水素添加物であってもよい。
これらブロック共重合体若しくはその水素添加物を粘着剤組成物として用いる際には、
単独でも2種以上用いてもよい。
これらブロック共重合体の中でも、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)の
水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物
、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物、スチレン
−イソプレンブロック共重合体(SI)の水素添加物等のスチレンブロックとジエンブロ
ックとを含有するブロック共重合体の水素添加物がより好ましく、具体的には、スチレン
−ブタジエンブロック共重合体(SB)の水素添加物であるスチレン−エチレン・ブテン
ブロック共重合体(SEB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SB
S)の水素添加物であるスチレン−エチレン・ブテン−スチレンブロック共重合体(SE
BS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物であ
るスチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が押出成形
時の熱安定性に優れ、加工時の安定性や、劣化物の発生及び臭いの発生を抑制する点で、
最も好ましい。
本発明に係るスチレン・ジエンブロック共重合体(A1)は、後述のエチレン・酢酸ビ
ニル共重合体(B)及び粘着付与剤(C)と混合してなる粘着剤組成物がフィルム形成能
を有する限り、MFR(メルトフローレート;ASTM D−1238 荷重5kg、温
度200℃)は特に限定はされないが、通常0.5〜20g/10分、好ましくは1〜1
5g/10分の範囲にある。
【0011】
〔オレフィン・非晶性オレフィンブロック共重合体(A2)〕
本発明に係るオレフィン・非晶性オレフィンブロック共重合体(A2)は、少なくとも
分子内に一つの非晶性オレフィンブロック(非晶性オレフィン重合体部)からなるソフト
セグメントと結晶性オレフィンブロック(結晶性オレフィン重合体部)からなるハードセ
グメントとを有するブロック共重合体であり、所謂、熱可塑性エラストマーとして製造・
販売されているブロック共重合体の一種である。
オレフィン・非晶性オレフィンブロック共重合体(A2)は非晶性オレフィンブロック
Aと結晶性オレフィンブロックBをそれぞれ分子内に少なくとも1個有する限りその構造
は特に制限されず、(B−A)n1 、(B−A)n2 −B、(A−B)n3 −A(n1
2 、n3 は1以上の整数)や、これらをカップリング剤で結合した構造が例示される。
これらの中ではトリブロックの共重合体またはそれ以上の数のブロックを有する共重合体
が好適である。
かかるブロック共重合体(A2)としては、具体的には、ジエン化合物を主体とする重
合体ブロックあるいはそれら重合体ブロックを水素添加処理してエチレン・ブテン共重合
体、エチレン・プロピレン共重合体に類似した構造を持つ非晶性オレフィンブロックから
なるソフトセグメントと、ジエン化合物を主体とし水素添加処理などにより結晶性ポリオ
レフィンとなり得る重合体部からなるハードセグメントとを有するブロック共重合体を例
示できる。また、ジエン化合物を主体とし水素添加処理などにより結晶性ポリオレフィン
となり得る重合体部の一部をスチレンなどのビニル芳香化合物の重合体部からなるハード
セグメントで置き換えたブロック共重合体を例示できる。ジエン化合物としては、具体的
には1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3
−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエンが例示される。
ジエン化合物を主体とする重合体ブロックを水素添加処理してエチレン・ブテン共重合
体、エチレン・プロピレン共重合体に類似した構造を持つ非晶性オレフィンブロックから
なるソフトセグメントは、例えば、ポリブタジエンのビニル結合(1,2−及び3,4−
結合の含有量)を、25〜85%程度にした重合体ブロックを水素添加することにより、
非晶性のエチレン・ブテン共重合体と類似した構造を持つ非晶性オレフィンブロックが得
られる。
ジエン化合物を主体とし水素添加処理などにより結晶性ポリオレフィンとなり得る重合
体部は、例えばポリブタジエンのビニル結合(1,2−及び3,4−結合の含有量)を、
25%以下にした重合体ブロックを水素添加することにより、エチレン重合体に類似した
構造を持つ結晶性オレフィンブロックが得られる。
かかるブロック共重合体(A2)としては、具体的には、結晶性オレフィン(結晶性エ
チレン重合体部)−エチレン・ブテン(非晶性オレフィン重合体部)−結晶性オレフィン
(結晶性エチレン重合体部)ブロック共重合体(CEBC)、スチレン−エチレン・ブテ
ン(非晶性オレフィン重合体部)−結晶性オレフィン(結晶性エチレン重合体部)ブロッ
ク共重合体(SEBC)が挙げられ、JSR株式会社から商品名:DYNARONとして
、DR6100P、DR6200P(CEBC)、DR4600P、DR4630P(S
EBC)の各種銘柄が市販されている。
ブロック共重合体(A2)の他の例としては、プロピレンの単独重合体若しくはプロピ
レンと少量のエチレンあるいは1−ブテン等の他のα―オレフィンとのプロピレンを主体
とした結晶性プロピレン系重合体をリビング重合して結晶性オレフィン重合体部を得、次
いでプロピレンとエチレン、1−ブテン等の他のα―オレフィンとを共重合して非晶性の
オレフィン重合体部を得てなるプロピレン−プロピレン・α―オレフィン−プロピレンブ
ロック共重合体などが挙げられる。
【0012】
〔エチレン・酢酸ビニル共重合体(B)〕
本発明に係るエチレン・酢酸ビニル共重合体(B)は、酢酸ビニル含有量が25〜80
重量%、好ましくは30〜80重量%、より好ましくは35〜70重量%の範囲にあるエ
チレンとの共重合体である。酢酸ビニル含有量が25重量%未満のエチレン・酢酸ビニル
共重合体は、前記オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)及び後述の粘着付与
剤(C)と混合して粘着剤組成物として積層フィルムの中間層に用いても、良好なリシー
ル強度が得られない虞があり、一方、80重量%を超えるエチレン・酢酸ビニル共重合体
は前記オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)及び後述の粘着付与剤(C)と
混合して粘着剤組成物として積層フィルムの中間層に用いても、良好なリシール強度が得
られない虞がある。
本発明に係るエチレン・酢酸ビニル共重合体(B)は、前記オレフィン系ブロック共重
合体エラストマー(A)及び後述の粘着付与剤(C)と混合して粘着剤組成物としてフィ
ルム形成能がある限り、MFR(メルトフローレート;ASTM D−1238 荷重2
160g、温度190℃)は特に限定はされないが、通常0.5〜20g/10分、好ま
しくは1〜15g/10分の範囲にある。これらの中から、押出しラミ、共押出し成形性
を考慮して適宜選択すれば良い。
【0013】
〔粘着付与剤(C)〕
本発明に係る粘着付与剤(C)は、一般に粘着付与剤として製造・販売されている樹脂
状物質で、具体的には、クマロン・インデン樹脂等のクマロン樹脂;フェノール・ホルム
アルデヒド樹脂及びキシレン・ホルムアルデヒド樹脂等のフェノール系樹脂;テルペン・
フェノール樹脂、テルペン樹脂(α, β−ピネン樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂、水素
化テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;合成ポリテルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂
肪族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系石油樹脂、脂肪族・
芳香族系石油樹脂、不飽和炭化水素重合体、水素添加炭化水素樹脂及び炭化水素系粘着化
樹脂等の石油系炭化水素樹脂;ロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリ
セリン・エステル、水素添加ロジン、水素添加ロジン・エステル、特殊ロジン・エステル
及びロジン系粘着付与剤等のロジン誘導体;等を例示できる。
これらの中では、軟化点が70℃以上、好ましくは70〜130℃の範囲にある水素添
加炭化水素樹脂、水素添加脂肪族系環状炭化水素樹脂、水素添加脂肪族・脂環族系石油樹
脂、水素添加テルペン樹脂、水素添加合成ポリテルペン樹脂等の水素添加樹脂、ロジンの
ペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセリン・エステル、水素添加ロジン・エ
ステルが、オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)及びエチレン・酢酸ビニル
共重合体(B)との相溶性が良好なので好ましい。軟化点が70℃未満のものは、タック
力は良好であるが、接着力、凝集力が小さく、軟化点が130℃を超えるものは、接着力
、凝集力は良好であるがタック力が小さくなる虞がある。
【0014】
〔粘着剤組成物〕
本発明の粘着剤組成物は、前記オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)、前
記エチレン・酢酸ビニル共重合体(B)及び前記粘着付与剤(C)を含んでなる組成物で
あり、好ましくはオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)が10〜80重量%
、より好ましくは20〜70重量%の範囲、エチレン・酢酸ビニル共重合体(B)10〜
80重量%、より好ましくは20〜70重量%の範囲及び粘着付与剤(C)10〜40重
量%、より好ましくは10〜30重量%の範囲〔但し、(A)+(B)+(C)=100
重量%とする。〕にある。
粘着剤組成物として、オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)、エチレン・
酢酸ビニル共重合体(B)及び粘着付与剤(C)の何れかが欠ける粘着剤組成物は、後述
の熱可塑性樹脂(D)と熱可塑性樹脂(E)との中間層に用いて積層フィルムとした場合
、ヒートシール強度(初期開封強度)が強すぎたり、リシール強度が不十分であったりし
て、易開封性とリシール強度のバランスに欠ける虞がある。
本発明の粘着剤組成物は、オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)、エチレ
ン・酢酸ビニル共重合体(B)及び粘着付与剤(C)の組成量を前記範囲にすることによ
り、よりヒートシール強度(初期開封強度)とリシール強度とのバランスに優れた易開封
性とリシール性を備えた積層フィルムが得られる。
本発明の粘着剤組成物あるいは粘着剤組成物の成分であるオレフィン系ブロック共重合
体エラストマー(A)若しくエチレン・酢酸ビニル共重合体(B)の何れか、若しくは双
方に、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチ・ブロ
ッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常熱可塑
性樹脂に用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0015】
〔熱可塑性樹脂(D)〕
本発明に係る熱可塑性樹脂(D)は、種々公知の熱可塑性樹脂、具体的には、例えば、
ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4−メチル・1−ペ
ンテン、不飽和カルボン酸若しくはその誘導体でグラフト変性された変性ポリオレフィン
等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ
エチレンナフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポ
リブチレンテレフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン
−MXD6等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、
ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチ
レン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリカーボネート、
エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体もし
くはそのアイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン・
酸(誘導体)共重合体、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。
ポリオレフィンとしては、高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE)、線状低密度
ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)及び高密度ポリエチレン
(HDPE)等のエチレンの単独重合体若しくはエチレンと他のα―オレフィンとのラン
ダム共重合体等のエチレンを主体とするエチレン系重合体(ポリエチレン);ポリプロピ
レン(PP)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブ
テンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレ
ンブロック共重合体等のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと他のα―オレフィ
ンとの共重合体等、プロピレンを主体とするプロピレン系重合体(ポリプロピレン);ポ
リ1−ブテン、1−ブテン・プロピレンランダム共重合体、1−ブテン・エチレンランダ
ム共重合体等の1−ブテンの単独重合体若しくは1−ブテンと他のα―オレフィンとの共
重合体等の1−ブテンを主体とする1−ブテン系重合体(ポリブテン);ポリ4−メチル
・1−ペンテン、4−メチル・1−ペンテン・α―オレフィンランダム共重合体等の4−
メチル・1−ペンテンの単独重合体若しくは4−メチル・1−ペンテンと他のα―オレフ
ィンとの共重合体等の4−メチル・1−ペンテンを主体とした4−メチル・1−ペンテン
系重合体(ポリ4−メチル・1−ペンテン)等を例示することができる。
かかるポリオレフィンは、一部若しくは全部がマレイン酸あるいは無水マレイン酸等の
不飽和カルボン酸あるいはその無水物等の誘導体でグラフト変性されたものであってもよ
い。また、後述の熱可塑性樹脂(E)との組合せにもよるが、これら熱可塑性樹脂(D)
の中でも、比較的融点(Tm)が高く、剛性を有する、MDPE、HDPE等のエチレン
系重合体、プロピレン系重合体、4−メチル・1−ペンテン系重合体、ポリエステル、ポ
リアミド、ポリスチレン等が好ましい。
本発明に係わる熱可塑性樹脂(D)には、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑
剤、スリップ剤、核剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無
機または有機の充填剤等の通常熱可塑性樹脂に用いる各種添加剤を本発明の目的を損なわ
ない範囲で添加しておいてもよい。
【0016】
〔熱可塑性樹脂(E)〕
本発明に係る熱可塑性樹脂(E)は、前記熱可塑性樹脂(D)と同じく、種々公知の熱
可塑性樹脂、具体的には、例えば、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピ
レン、ポリブテン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、不飽和カルボン酸若しくはその誘導
体でグラフト変性された変性ポリオレフィン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタ
レート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、グリコール変性ポリ
エチレンテレフタレート、グリコール変性ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアミド
(ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−MXD6等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミ
ド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリ
ル、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエ
ン・スチレン共重合体、ポリカーボネート、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、
エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体もしくはそのアイオノマー、エチレン・(メタ)
アクリル酸エステル共重合体等のエチレン・酸(誘導体)共重合体、あるいはこれらの混
合物等を例示することができる。
ポリオレフィンとしては上記記載のエチレン系重合体、プロピレン系重合体、1−ブテ
ン系重合体等が同じく用い得る。
これら熱可塑性樹脂(E)の中でも、融点(Tm)が90〜130℃の範囲にある超低
密度ポリエチレン(VLDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(HP―LDPE)、線状
低密度ポリエチレン(LLDPE)及び中密度ポリエチレン(MDPE)等のエチレン単
独重合体もしくはエチレンと他のα―オレフィンとのランダム共重合体;融点(Tm)が
110〜150℃の範囲にあるプロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エ
チレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体等のプ
ロピレンと他のα―オレフィンとのランダム共重合体;融点(Tm)が75〜125℃の
範囲にある1−ブテン・プロピレンランダム共重合体、1−ブテン・エチレンランダム共
重合体等の1−ブテンと他のα―オレフィンとのランダム共重合体;エチレン・酢酸ビニ
ル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)ア
クリル酸エステル共重合体及びアイオノマー等のエチレン・酸(誘導体)共重合体;非晶
性あるいは融点が70〜180℃の範囲にある低結晶性ポリエステル;アクリロニトリル
・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体等のスチレン系
重合体;等のヒートシール性に優れた熱可塑性樹脂が好ましい。これら熱可塑性樹脂は単
独でも2種以上の組成物として用いてもよい。
かかる熱可塑性樹脂(E)には、低温ヒートシール性、易開封性をより改良するために
、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体、プロピレン・
α―オレフィンランダム共重合体等、所謂エラストマーとも呼ばれている共重合体を添加
しておいてもよい。
本発明に係わる熱可塑性樹脂(E)には、夫々にあるいは何れかに、耐熱安定剤、耐候
安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤
、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の通常熱可塑性樹脂に用いる各種添加
剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加しておいてもよい。
【0017】
〔積層フィルム〕
本発明の積層フィルムは、前記熱可塑性樹脂(D)からなるラミネート層の片面に、前
記粘着剤組成物からなる中間層を介して、前記熱可塑性樹脂(E)からなるヒートシール
層(熱融着層)が積層されてなる積層フィルムである。ラミネート層及びヒートシール層
は夫々単層であっても2層以上の多層であってもよい。また、本発明の積層フィルムは、
フィルム状に限らず、テープ状であってもよい。
本発明の積層フィルムの厚さは、種々用途により決め得るが、通常ラミネート層の厚さ
が1〜100μm、より好ましくは5〜60μm、粘着剤組成物からなる中間層の厚さが
1〜498μm、より好ましくは1〜94μm、ヒートシール層の厚さが1〜20μm、
より好ましくは1〜10μmの範囲にある。
本発明の積層フィルムは、印刷性あるいは他のフィルムとの接着性、滑り性等を改良す
るために、ラミネート層の表面を、たとえば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、ア
ンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
また、用途によっては本発明の積層フィルムのラミネート層に後述の基材層を貼り合せ
て種々の用途に用いることもできる。
【0018】
〔基材層〕
本発明に係る基材層は、熱可塑性樹脂からなるシート状またはフィルム状のもの、紙、
アルミニウム箔等からなる。熱可塑性樹脂としては、前記熱可塑性樹脂(D)若しくは前
記熱可塑性樹脂(E)と同じく、種々公知の熱可塑性樹脂、具体的には、例えば、ポリオ
レフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ4−メチル・1−ペンテン
等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ
エチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−M
XD6等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ
ビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、エチレン
・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体もしくはその
アイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー等のエチ
レン・酸(誘導体)共重合体、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。
これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延
伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。又、かかる熱可塑性樹脂フィルムからな
る基材層は、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであっても良いし、1種或いは2
種以上の共押し出し品、押出しラミネート品、ドライラミネート品等の積層体であっても
良い。
これら基材層の中でも、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等
からなる二軸延伸フィルムが透明性、剛性に優れるので好ましい。
これら基材層にはガスバリア性を付与するために、アルミニウム、亜鉛等の金属若しく
は酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素(シリカ)等の無機酸化物が蒸着されていて
もよい。
基材層の片面あるいは両面を、本発明の積層フィルムのラミネート層との接着性を改良
するために、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プラ
イマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。基材層の厚
さは、通常5〜1000μm、好ましくは9〜100μmの範囲にある。
かかる基材層と本発明の積層フィルムとからなる積層体の具体的構成例としては、例え
ば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)/積層フィルム〔熱可塑性
樹脂(D)からなるラミネート層/粘着剤組成物からなる中間層/熱可塑性樹脂(E)か
らなるヒートシール層〕、PET/PET/積層フィルム、PET/アルミニウム箔/積
層フィルム、PET/蒸着PET/積層フィルム、透明蒸着PET/積層フィルム、二軸
延伸ポリアミドフィルム(ONY)/積層フィルム、ONY/エチレン・ビニルアルコー
ル共重合体フィルム/積層フィルム、透明蒸着PET/ONY/積層フィルムを挙げるこ
とができる。かかる積層体において基材層と積層フィルムを貼り合わせる際には、前述の
ように、例えばウレタン系ドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネートする方法
、高圧法ポリエチレン等を基材層と積層フィルムとの間に押出して貼り合わせる押出ラミ
ネートする方法など種々公知の方法を採用し得る。また、基材層と積層フィルムの間には
印刷層を設けていてもよい。
【0019】
〔積層フィルムの製造方法〕
本発明の積層フィルムは種々公知の方法で製造し得る。
例えば、予め熱可塑性樹脂(D)からなるラミネート層となるフィルム及び熱可塑性樹
脂(E)からなるヒートシール層となるフィルムを夫々別個に得た後、粘着剤組成物を溶
融押出し成形してラミネート層となるフィルムとヒートシール層となるフィルムとを貼り
合せて積層する、所謂サンドラミネート法;予め熱可塑性樹脂(D)からなるラミネート
層となるフィルム若しくは熱可塑性樹脂(E)からなるヒートシール層となるフィルムを
得た後、当該フィルム上に熱可塑性樹脂(E)と粘着剤組成物、若しくは熱可塑性樹脂(
D)と粘着剤組成物とを共押出し成形し、粘着剤組成物層と当該フィルムとを貼り合せて
積層する、所謂共押出しラミネート法;予め熱可塑性樹脂(D)からなるラミネート層と
なるフィルム、熱可塑性樹脂(E)からなるヒートシール層となるフィルム及び粘着剤組
成物からなるフィルムを夫々別個に得た後、粘着剤組成物からなるフィルムを中間層とし
て、接着剤を用いてあるいは用いずに、熱可塑性樹脂(D)からなるラミネート層となる
フィルムと熱可塑性樹脂(E)からなるヒートシール層となるフィルムとを貼り合せて積
層する、所謂ドライラミネート法;あるいは熱可塑性樹脂(D)、熱可塑性樹脂(E)及
び粘着剤組成物を、三層以上の多層ダイを用いて、粘着剤組成物が中間層となるように共
押出し成形する、所謂共押出し成形法等により製造し得る。
これら製造方法の中でも、共押出し成形法が各層の厚みを均一に精度良くコントロール
出来る点で最も好ましい。
共押出し成形は、T−ダイ等のフラットダイを用いるキャスト法であっても、サーキュ
ラーダイを用いるインフレーション法の何れでもよい。
【0020】
〔容器蓋材〕
本発明の容器蓋材は、前記積層フィルムからなる。本発明の前記積層フィルムを容器蓋
材に用いる場合は、積層フィルムのみを蓋材として用いてもよいし、積層フィルムのラミ
ネート層に前記基材層を貼り合せて、積層フィルムのヒートシール層を内面(融着層)と
して用いてもよい。
かかる容器蓋材の具体的構成としては、前記基材層と本発明の積層フィルムからなる積
層体を用い得る。
本発明の容器蓋材が適用される容器は、熱融着可能な容器である限り、種々公知の容器
が使用し得る。具体的には、例えば、プロピレン系重合体、エチレン系重合体、スチレン
系重合体、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなるシート、トレー、カップ
、ボトル等の形状を有するもの、あるいはエチレン系重合体が内面に積層された紙製の上
記形状を有するもの等が挙げられる。熱可塑性樹脂製の容器は、単層であっても二種以上
の熱可塑性樹脂からなる積層体であってもよい。
かかる容器としてはプロピレン系重合体からなる容器が、耐熱性と適度な柔軟性のバラ
ンスが良く、本発明の容器蓋材との組み合わせにおいて優れている。
【0021】
〔包装体〕
本発明の包装体は、少なくとも一方が前記積層フィルムからなる包装体である。かかる
包装体は少なくとも一方が積層フィルム、必要に応じて積層フィルムのラミネート層面に
基材層が張り合わされた2枚の積層フィルムから形成された三方シール袋に被包装材料(
内容物)を充填した後、口部をヒートシールしてなる四方シール包装体、あるいは積層フ
ィルムを折り曲げて側部をシールした二方シール袋に被包装材料を充填した後、口部をヒ
ートシールしてなる三方シール包装体を挙げることができる。
本発明の包装体としては、上記形態に限らず、熱融着可能な熱シール層を備えたフィル
ム、シート、トレー、カップ、ボトル等の容器に、被包装材料を充填した後、前記積層フ
ィルムからなる容器蓋材(シール材)等で上面(口部)等をシールしてなる包装体等が挙
げられる。
また、本発明の包装体は開口部となる部分の少なくとも一方にテープ状の積層フィルム
が貼付されていてもよい。
【実施例】
【0022】
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は、発明の要旨を逸脱しない限
りこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0023】
〔物性の評価方法〕
本発明における各種試験法および評価法は次の通りである。
(1)ヒートシール強度;
ヒートシール強度を測定する前に、コロナ処理を施した積層フィルムのラミネート層と
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムをウレタン系接着剤(三井
武田ケミカル製:商品名「タケラックA616」(50%)+「タケラックA65」(3
.13%)+酢酸エチル(46.87%))を用い、ドライラミネートして多層フィルム
を用意した。
ヒートシール強度の測定は、積層フィルムのヒートシール層と厚さ300μmの無延伸
ポリプロピレンシートを、テスター産業社製ヒートシーラーTP−701−Bを用いて、
各温度で、シールゲージ圧0.2MPa、時間1秒、シール幅5mmの条件下でヒートシ
ールした。尚、加熱は上側のみとした。次いで、ヒートシールした試験片を15mm幅に
カットし、オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTM−100を用いて、500m
m/分の引張速度で剥離し、その最大強度をヒートシール強度とした。測定値は5回の平
均値である。ヒートシール強度以外にもヒートシール開封部の剥離の状態を観察した。
(2)リシール強度;
ヒートシール強度を測定した試験片のヒートシール剥離面同士を合わせ、テスター産業
社製ヒートシーラーTP−701−Bを用いて、設定温度30℃で、シールゲージ圧1.
5kg/m2 、時間1秒、シール幅10mmの条件下でヒートシール剥離面同士を再封止
(リシール)した。尚、加熱は上下両面から行った。次いで、リシールした試験片を、オ
リエンテック社製テンシロン万能試験機RTM−100を用いて、500mm/分の引張
速度で剥離し、その最大強度をリシール強度とした。測定値はリシール可能であった試験
片の平均値である。
(3)低温下でのヒートシール強度とリシール強度;
低温下でのヒートシール強度の測定は、積層フィルムのヒートシール層と厚さ300μ
mの無延伸ポリプロピレンシートを、テスター産業社製ヒートシーラーTP−701−B
を用いて、シールゲージ圧0.2MPa、時間1秒、シール幅5mm、温度200℃の条
件下でヒートシールした。尚、加熱は上側のみとした。次いで、ヒートシールした試験片
を15mm幅にカットし、オリエンテック社製引張試験機用恒温槽TLF−R3−Cをセ
ットしたオリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC−1225を用いて所定の温度
となってから5分経過後、500mm/分の引張速度で剥離し、その最大強度をヒートシ
ール強度とした。測定値は5回の平均値である。
ヒートシール強度以外にもヒートシール開封部の剥離の状態を観察した。
低温下でのリシール強度は、上記所定の温度でヒートシール強度を測定した試験片を恒
温槽から取り出した後、剥離したヒートシール剥離面同士を合わせ、テスター産業社製ヒ
ートシーラーTP−701−Bを用いて、設定温度30℃、シールゲージ圧1.5kg/
2 、時間1秒、シール幅10mmの条件下でヒートシール剥離面同士をリシールした。
なお、加熱は上下行った。次いで、リシールした試験片を直ちに恒温槽に入れ、オリエン
テック社製引張試験機用恒温槽TLF−R3−Cをセットしたオリエンテック社製テンシ
ロン万能試験機RTC−1225を用いて所定の温度となってから2分経過後、500m
m/分の引張速度で剥離し、その最大強度をリシール強度とした。測定値はリシール可能
であった試験片の平均値である。
(4)融点(Tm);
JIS K 7121に準拠し、DSCを用い加熱速度:毎分10℃で測定した。
【0024】
〔各原料〕
実施例及び比較例で使用した重合体等は次の通りである。
(1)オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)
(1−1)スチレン・ジエンブロック共重合体(A1)
(i) スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物(SE
BS)
クレイトンポリマージャパン製、商品名;「クレイトン G1657」、MFR;8g
/10分。
(1−2)オレフィン・非晶性オレフィンブロック共重合体(A2)
(i)スチレン−エチレン・ブテン−結晶性オレフィンブロック共重合体(SEBC)
JSR製、商品名;ダイナロン 4600P、MFR;5.6g/10分(230℃、
2.16kg、ASTM D1238)
(ii)結晶性オレフィン−エチレン・ブテン−結晶性オレフィンブロック共重合体(C
EBC)
JSR製、商品名;ダイナロン 6200P、MFR;2.5g/10分(230℃、
2.16kg、ASTM D1238)
(2)エチレン・酢酸ビニル共重合体(B)
(i) エチレン・酢酸ビニル共重合体(40%EVA)
酢酸ビニル含有量;40重量%、密度;970kg/m3 、MFR;2g/10分。
(ii) エチレン・酢酸ビニル共重合体(33%EVA)
酢酸ビニル含有量;33重量%、密度;960kg/m3 、MFR;1g/10分。
(3)粘着付与剤(C)
(i) テルペン樹脂
ヤスハラケミカル製、商品名;「YSレジン PX1150N」、環球法軟化点;11
5℃
(ii) 脂環族炭化水素樹脂
荒川化学工業製、商品名;「アルコン P115」、環球法軟化点;115℃
(4)熱可塑性樹脂(D)(ラミネート層樹脂)
(i) ポリプロピレン単独重合体(H−PP)
三井化学製、商品名;「三井ポリプロ F107DV」、密度;910kg/m3 、融
点;160℃、MFR;7g/10分。
(5)熱可塑性樹脂(E)(ヒートシール層樹脂)
(i) プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(R−PP)
三井化学製、商品名;「三井ポリプロ F329D」、密度;910kg/m3 、融点
;139℃、MFR;9g/10分。
【0025】
<実施例1>
ラミネート層用の樹脂として、H−PPを用い、粘着剤組成物からなる中間層として、
SEBS;40重量%、40%EVA;40重量%及びテルペン樹脂;20重量%に、フ
ェノール系酸化防止剤0.1重量部を2軸押出機で均一に混合した粘着剤組成物を用い、
ヒートシール層用の樹脂として、R−PPを用い、三種三層無延伸フィルム成形機の40
mmφ押出機×3台に各々投入し、180〜230℃の押出温度で、210℃のフィード
ブロック方式のTダイより押し出し、30℃のキャスティングロールで急冷した後、ラミ
ネート層をコロナ処理して、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの総厚は50μmで、各層の厚みはラミネート層/粘着剤組成物
からなる中間層/ヒートシール層=15/30/5μmであった。
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0026】
<実施例2>
粘着剤組成物からなる中間層として、SEBS;40重量%、40%EVA;40重量
%、脂環族炭化水素樹脂;20重量%、フェノール系酸化防止剤;0.1重量部を2軸押
出機で均一に混合した樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た

得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0027】
<実施例3>
粘着剤組成物からなる中間層として、SEBS;30重量%、40%EVA;50重量
%、テルペン樹脂;20重量%、フェノール系酸化防止剤;0.1重量部を2軸押出機で
均一に混合した樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0028】
<実施例4>
粘着剤組成物からなる中間層として、SEBS;30重量%、40%EVA;50重量
%、脂環族炭化水素樹脂;20重量%、フェノール系酸化防止剤;0.1重量部を2軸押
出機で均一に混合した樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た

得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0029】
<実施例5>
粘着剤組成物からなる中間層として、SEBS;20重量%、40%EVA;60重量
%、脂環族炭化水素樹脂;20重量%、フェノール系酸化防止剤;0.1重量部を2軸押
出機で均一に混合した樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た

得られた積層フィルムの評価結果を表1に示す。
【0030】
<実施例6>
粘着剤組成物からなる中間層として、SEBS;40重量%、33%EVA;40重量
%、脂環族炭化水素樹脂;20重量%、フェノール系酸化防止剤;0.1重量部を2軸押
出機で均一に混合した樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。
得られた積層フィルム評価結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
<実施例7>
粘着剤組成物からなる中間層として、SEBC;30重量%、40%EVA;50重量
%、テルペン樹脂;20重量%、フェノール系酸化防止剤;0.1重量部を2軸押出機で
均一に混合した樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0033】
<実施例8>
粘着剤組成物からなる中間層として、CEBC;30重量%、40%EVA;50重量
%、テルペン樹脂;20重量%、フェノール系酸化防止剤;0.1重量部を2軸押出機で
均一に混合した樹脂を用いた以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0034】
<比較例1>
粘着剤組成物からなる中間層として、40%EVA;80重量%、脂環族炭化水素樹脂
;20重量%、フェノール系酸化防止剤;0.1重量部を2軸押出機で均一に混合した樹
脂を用いた以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0035】
<比較例2>
粘着剤組成物からなる中間層として、SEBS;80重量%、テルペン樹脂;20重量
%、フェノール系酸化防止剤;0.1重量部を2軸押出機で均一に混合した樹脂を用いた
以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0036】
<比較例3>
粘着剤組成物からなる中間層として、SEBC;80重量%、テルペン樹脂;20重量
%、フェノール系酸化防止剤;0.1重量部を2軸押出機で均一に混合した樹脂を用いた
以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0037】
<比較例4>
粘着剤組成物からなる中間層として、CEBC;80重量%、テルペン樹脂;20重量
%、フェノール系酸化防止剤;0.1重量部を2軸押出機で均一に混合した樹脂を用いた
以外は実施例1と同様の方法で、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの評価結果を表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
<実施例9>
実施例1で用いた積層フィルムの低温下(10℃、5℃、−10℃)での評価結果を表
3に示す。
【0040】
【表3】

表1及び表2の実施例から明らかなように、中間層としてオレフィン系ブロック共重合
体エラストマー(A)、酢酸ビニル含有量が25〜80重量%のエチレン・酢酸ビニル共
重合体(B)および粘着付与剤(C)を含んでなる粘着剤組成物を用いてなる積層フィル
ムを包装材料の蓋材等に用いた場合は、適度なヒートシール強度(開封時の強度)を有し
、開封した際に、粘着剤組成物層が凝集破壊し、繰返し再封止するに充分な強度(リシー
ル強度)を有する。また、ヒートシール条件を選ぶことにより、粘着剤組成物層が凝集破
壊した界面が白濁するので、改竄防止にも役立つ。
それに対し、中間層としてオレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)を含まな
い組成物を用いたものはリシール強度が弱く、繰返し再封止しできないこと(比較例1)
が明らかであり、一方、エチレン・酢酸ビニル共重合体(B)を含まず、且つオレフィン
系ブロック共重合体エラストマー(A)としてSEBS及びCEBCを用いた組成物から
なる積層フィルムは、ヒートシール強度が強くなり易開封性に劣るとともに、リシール強
度が弱かったり(比較例2)、開封時にシール切れを起こし(比較例4)、また、オレフ
ィン系ブロック共重合体エラストマー(A)としてSEBC用いた組成物からなる積層フ
ィルム(比較例3)は、リシール強度も弱く、繰返し再封止しできず、いずれも易開封性
と繰返し再封止し得る包装材料としてもち得ないことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の粘着剤組成物は、自己粘着性に優れ、且つ繰返し剥離・接着を行っても自己粘
着性が低下しないことから、熱可塑性樹脂からなるフィルムの中間層に用いることにより
、リシール性に優れた包装材料が得られる。
本発明の積層フィルムは、前記熱可塑性樹脂(E)からなるヒートシール層(熱融着層
)同士、あるいはかかるヒートシール層と熱融着可能な熱シール層を備えたフィルムある
いは容器等とヒートシール(熱融着)した後、当該ヒートシール部を剥離(開封)した際
に、ヒートシール層が破断し、中間層の自己粘着性に優れた粘着剤組成物層が剥離面に露
出、好ましくは粘着剤組成物層が凝集破壊して双方の剥離面に露出することから、再度、
当該剥離面を指等で押圧することにより、リシールできるという特徴を有しており、且つ
繰返し開封・接着を行ってもリーシール強度の低下が少ないという利点をも有している。
かかる特徴を利用して、包装材料として、特に、プロピレン系重合体製のシート、トレ
ー、カップ、ボトル等の蓋材として好適であり、せんべい、ポテトチップス等のスナック
菓子類の包装、あるいはゼリー、ミルク、ヨーグルト、プリン、豆腐、乳酸飲料等の食品
包装や、医薬品、医療用器具等の包装、ブリスター包装、その他日用品や雑貨等の包装の
包装材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)、酢酸ビニル含有量が25〜80重
量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(B)および粘着付与剤(C)を含んでなることを
特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)が10〜80重量%、酢酸ビニル含
有量が25〜80重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(B)が10〜80重量%およ
び粘着付与剤(C)が10〜40重量%〔但し、(A)+(B)+(C)=100重量%
とする。〕である請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
オレフィン系ブロック共重合体エラストマー(A)が、スチレン・ジエンブロック共重
合体(A1)及び/又は少なくとも一つの非晶性オレフィン重合体ブロックと結晶性オレ
フィン重合体ブロックを有するオレフィン・非晶性オレフィンブロック共重合体(A2)
である請求項1若しくは2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
スチレン・ジエンブロック共重合体(A1)が水素添加物である請求項3記載の粘着剤
組成物。
【請求項5】
スチレン・ジエンブロック共重合体(A1)の水素添加物が、スチレン−ブタジエンブ
ロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及びスチレン−イソ
プレン−スチレンブロック共重合体の何れか1種以上のブロック共重合体の水素添加物で
ある請求項4記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
オレフィン・非晶性オレフィンブロック共重合体(A2)が、スチレン−エチレン・ブ
テン−結晶性オレフィンブロック共重合体及び結晶性オレフィン−エチレン・ブテン−結
晶性オレフィンブロック共重合体のいずれかである請求項3記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
粘着付与剤(C)が、ロジン誘導体、テルペン系樹脂、石油樹脂及び水素添加石油樹脂
の何れか1種以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
熱可塑性樹脂(D)からなるラミネート層の片面に、請求項1〜7の何れか1項に記載
の粘着剤組成物からなる中間層を介して、熱可塑性樹脂(E)からなるヒートシール層が
積層されてなることを特徴とする積層フィルム。
【請求項9】
熱可塑性樹脂(D)がプロピレン系重合体である請求項8記載の積層フィルム。
【請求項10】
熱可塑性樹脂(E)がプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体である請求項8記
載の積層フィルム。
【請求項11】
積層フィルムの熱可塑性樹脂(E)からなるヒートシール層を他のヒートシール可能な
熱可塑性樹脂層とヒートシールした後に、当該ヒートシール部を剥離する際に、ヒートシ
ール層が破断するとともに粘着剤組成物からなる中間層が凝集破壊し、ヒートシール剥離
部の両面に、粘着剤組成物が露出してなる請求項8〜10のいずれか1項に記載の積層フ
ィルム。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項に記載の積層フィルムからなる容器蓋材。
【請求項13】
請求項8〜11のいずれか1項に記載の積層フィルムのヒートシール層同士をヒートシ
ールしてなる包装体。
【請求項14】
請求項8〜11のいずれか1項に記載の積層フィルムのヒートシール層と他のヒートシ
ール可能な熱可塑性樹脂層とをヒートシールしてなる包装体。
【請求項15】
請求項12記載の容器蓋材で容器上面をヒートシールしてなる包装体。
【請求項16】
包装体を開封した際に、積層フィルムの熱可塑性樹脂(E)からなるヒートシール層が
破断するとともに粘着剤組成物からなる中間層が凝集破壊し、ヒートシール剥離部の両面
に、粘着剤組成物が露出してなる請求項13〜15のいずれか1項に記載の包装体。


【公開番号】特開2006−45527(P2006−45527A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190548(P2005−190548)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000220099)東セロ株式会社 (177)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】