説明

粘着性シート及び保持治具

【課題】基体の特定位置に正確かつ容易に取り付けることができると共に、基体から容易に取り外すことができる粘着性シート及びこの粘着性シートを備えた保持治具の提供。
【解決手段】気体を流通する通気孔21を有する基体20に装着されるところの、表面に非粘着部又は弱粘着部及び強粘着部を有し、強粘着部で被粘着物30を粘着保持し、通気孔21から気体を圧入又は排気して、非粘着部又は弱粘着部を基体20から突出させ、又は強粘着部を基体20側に陥没させることによって、被粘着物30を分離可能な粘着性シートであって、粘着性シートの端部近傍に、平面における仮想的なXY座標において、基体20の特定位置に対してX方向及びY方向に位置決め可能なX方向規制部11及びY方向規制部12を有する粘着性シート10、及び、この粘着性シート10と、粘着性シート10を固定し、気体を流通する通気孔21を有する基体20とを備えた保持治具1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性シート及び保持治具に関し、さらに詳しくは、基体への取り付け作業及び基体からの取り外し作業が容易な粘着性シート及びこの粘着性シートを備えた保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコンウェハ、フレキシブルプリント基板、大画面表示装置用のガラス板等の薄板状物、セラミックコンデンサ、コイルフィルター等の電子部品等の製造工程、搬送工程等においては、前記薄板状物等は破損しやすく、前記電子部品等は特定位置に固定しにくく転倒しやすいので、一般に、これらの薄板状物又は電子部品等を保持可能な保持治具等が用いられている。このような保持治具としては、例えば、「基板を真空吸着して保持する基板保持チャックにおいて、前記基板を真空吸引する際の負圧を形成する壁体と、前記真空吸引の際の基板の変形を抑制する複数の補助支持体とを備え、前記壁体と前記補助支持体の内少なくとも補助支持体を、ガラス基板表面に突出形成したことを特徴とする基板保持チャック」等が挙げられる(特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、前記基板保持チャックは、基板を真空吸引によって固定するものであるから、製造工程中及び/又は搬送中等には、常に真空吸引する必要があり、特に基板の質量が大きい場合には真空度を高める必要があり、保持具自体の構造、製法が複雑で高価なものであった。さらに、基板を真空吸引によって固定する際に、基板と壁体又は補助支持体とが接触し、前記壁体又は補助支持体によって基板が損傷することもあった。したがって、被粘着物を損傷させることがなく、簡単な構造であっても、十分な保持力で被粘着物を保持すると共に、被粘着物を容易に取り外すこともできる保持治具が求められていた。
【0004】
【特許文献1】特開2000−286329号公報
【0005】
本出願人は、被粘着物を損傷させることがなく、十分な保持力で被粘着物を保持すると共に、被粘着物を容易に取り外すこともできる、簡単な構造の保持治具として、「上面に少なくとも一つの凸状体を有するベース部と、前記凸状体と隔ててその外側を囲う周壁部と、前記凸状体の頂部及び前記周壁部の頂部と下面で密着固定し、かつ上面に粘着部を有する粘着シート部材と、該粘着シート部材と前記ベース部及び前記周壁部によって形成される空隙部に連通する通気孔を備えた部品保持具であって、前記凸状体の頂部と対応させた前記粘着シート部材の上面部位には、前記粘着部よりも弱い粘着力を有する弱粘着部又は非粘着部を形成されており、前記空隙部内の気体を前記通気孔を介して外部から吸引することで、前記粘着シート部材の前記空隙部に対応する部位が前記ベース部の下面側に弾性変形するようにしたことを特徴とする部品保持具。」を案出している(特願2004−141761号明細書参照)。
【0006】
この部品保持具においては、粘着シート部材の前記空隙部に対応する部位が前記ベース部の下面側に弾性変形するのであるから、粘着シート部材の上面部位に形成された粘着部よりも弱い粘着力を有する弱粘着部又は非粘着部が凸状体の頂部に正確に対応するように、ベース部に粘着シート部材を装着する必要がある。しかし、粘着シート部材はその厚さが薄く設定されるうえ、柔軟性を有しているから、粘着シート部材をベース部の特定の位置に正確に装着するのは難しい。他方、粘着シート部材が破損し、又は、粘着シート部材における粘着性表面の粘着力が低下した部品保持具は、前記薄板状物又は前記電子部品等を確実に粘着保持することができなくなるから、交換する必要がある。しかし、例えば、粘着シート部材を溶剤に浸漬する方法、ベース部と粘着シート部材との装着面にナイフやヘラ等の鋭利な工具を挿入する方法等によっても、ベース部に一旦装着された粘着シート部材を取り外すのは容易ではない。また、前記鋭利な工具によって、ベース部に傷が付くこともある。
【0007】
なお、特願2004−141761号明細書に記載の前記部品保持具は、未だ公開されておらず、本件発明の先行技術となり得る技術ではないが、本件発明の充分な理解を助けるために、ここに引用して説明した。
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、基体の特定位置に正確かつ容易に取り付けることができると共に、基体から容易に取り外すことができる粘着性シートを提供することを目的とする。
【0010】
この発明は、また、粘着性シートを基体の特定位置に正確かつ容易に取り付けることができると共に、粘着性シートを基体から容易に取り外すことができる保持治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、気体を流通する通気孔を有する基体に装着されるところの、表面に非粘着部又は弱粘着部及び強粘着部を有し、前記強粘着部で被粘着物を粘着保持し、前記通気孔から気体を圧入して、前記非粘着部又は弱粘着部を前記基体から突出させることによって、又は、前記通気孔から気体を排気して、前記強粘着部を前記基体側に陥没させることによって、前記強粘着部に粘着保持された前記被粘着物を分離可能な粘着性シートであって、前記粘着性シートの端部近傍に、平面における仮想的なXY座標において、前記基体の特定位置に対して、X方向及びY方向に位置決め可能なX方向規制部及びY方向規制部を有することを特徴とする粘着性シートであり、
請求項2は、請求項1に記載の粘着性シートと、前記粘着性シートを固定し、気体を流通する通気孔を有する基体とを備えたことを特徴とする保持治具であり、
請求項3は、前記基体は、さらに、周壁部と、前記周壁部で包囲された内部空間に形成された少なくとも一つの凸状体とを備え、前記通気孔は前記周壁部と前記凸状体との間隙部に連通することを特徴とする請求項2に記載の保持治具であり、
請求項4は、前記基体は、さらに、前記粘着性シートにおける前記X方向規制部及び前記Y方向規制部と符合する符合部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の保持治具である。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る粘着性シートによれば、粘着性シートの端部近傍に、平面における仮想的なXY座標において、基体の特定位置に対して、X方向及びY方向に位置決め可能なX方向規制部及びY方向規制部を有しているから、基体に粘着性シートを取り付ける際に、X方向規制部及びY方向規制部それぞれを基体に当接させることによって、基体に対して粘着性シートがX方向及び/又はY方向にずれることを防止することができ、基体の特定位置に正確かつ容易に装着することができる。また、この粘着性シートによれば、基体から粘着性シートを取り外す際に、X方向規制部及び/又はY方向規制部を起点として、X方向規制部及び/又はY方向規制部が形成された端部から引き剥がすことによって、基体に傷を付けることなく、容易に取り外すことができる。
【0013】
また、この発明に係る保持治具によれば、この発明に係る粘着性シートを備えて成るから、粘着性シートを基体の特定位置に正確かつ容易に取り付けることができると共に、粘着性シートを基体から容易に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の一実施例である粘着性シート及び保持治具を、図1〜図5を参照して、説明する。保持治具1Aは、被粘着物を製造し、搬送する際等に使用され、図3に示されるように、図1に示される基体20Aと図2に示される粘着性シート10Aとを備えてなる。
【0015】
前記基体20Aは、図1に示されるように、気体を流通する通気孔21と、周壁部22と、周壁部22で包囲された内部空間23に形成された4つの凸状体24とを有し、略正方形に形成されている。周壁部22と凸状体24とは、共になって、後述する粘着性シート10Aを支持し、固定する。
【0016】
前記通気孔21は、図1及び図3に示されるように、周壁部22と凸状体24との間隙部29及び基体20Aの外部とを連通し、外部に設置された圧縮装置例えばコンプレッサー(図示しない。)等、又は、吸引装置例えば真空ポンプ(図示しない。)等に接続される。通気孔21の孔径は、高い圧縮効率又は吸引効率と基体20Aの強度とを両立することができる孔径に設定される。この通気孔21は、基体20Aの表面から所定の位置まで裏面側に延在し、そこから基体20Aの側面まで延在するように形成されているが、基体20Aの表面から裏面に貫通するように形成されてもよい。
【0017】
前記周壁部22は、基体20Aの周縁部に凸状の枠として形成され、その上部には、粘着性シートを支持し、固定する頂上面25を有する。この周壁部22及び基体20Aの表面によって、上面が開口した内部空間23が形成される。
【0018】
前記凸状体24は、図1に示されるように、内部空間23内に、周壁部22から離れて、略均一の間隔を設けて縦横2個ずつ、合計4個が形成されている。4つの凸状体24は何れも、周壁部22の高さと略同じ高さを有する略正方形の角柱状に形成されている。このように周壁部22及び各凸状体24が略同じ高さに形成されていると、粘着性シートを基体20Aに確実に支持し、固定することができる。凸状体24(その上面)の大きさは、粘着性シートを確実に固定することができ、被粘着物を保持した粘着性シートを支持することができる大きさであればよく、凸状体24の数、被粘着物、粘着性シートの弱粘着部又は非粘着部及び強粘着部の配列パターン等に応じて決定される。
【0019】
基体20Aは、通気孔21から、気体が圧入され、又は、気体が排気されても、変形等しない程度の強度を有する材料で形成され、このような材料として、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、ニッケル合金等の金属、多孔質セラミック等の多孔性物質、樹脂、ガラス又はこれらの複合体等が挙げられる。基体20Aは、加工性、操作性の観点から、ステンレス鋼又はアルミニウム合金で形成されるのがよい。なお、基体20Aを多孔性物質で形成される場合には、前記通気孔21を特段形成する必要はないが、基体20Aの側面及び底面を密閉する必要がある。
【0020】
基体20Aの大きさは、用途、後述する被粘着物に応じて、所望の大きさに設計される。基体20Aの厚さは、粘着性シート10Aを支持し、固定することができればよく、用途等に応じて適宜決定される。例えば、数mm程度以上の厚さが選択される。
【0021】
基体20Aは、前記材料により形成することができれば、その製造方法は、特に限定されず、例えば、真空成形、射出成形、金型成形等が挙げられる。通気孔21は別途掘削してもよい。基体20Aは、周壁部22及び凸状体24と一体に成形されるのがよいが、それぞれ別々に製造することもできる。
【0022】
粘着性シート10Aは、図2に示されるように、その四隅それぞれに、平面における仮想的なXY座標において、前記基体20Aの特定位置に対して、X方向及びY方向に位置決め可能なX方向規制部11A及びY方向規制部12Aを有する。X方向規制部11A及びY方向規制部12Aは、基体20Aに粘着性シート10Aを取り付ける際に、平面における仮想的なXY座標において、粘着性シート10AがX方向及びY方向にずれるのを防止すると共に、基体20Aから粘着性シート10Aを取り外す際の起点となる。
【0023】
X方向規制部11Aは、図2に示されるように、粘着性シート10AのY方向に延在する側面における両端部それぞれに、柱体又は壁状体の脚として、4個設けられている。Y方向規制部12Aは、図2に示されるように、粘着性シート10AのX方向に延在する側面における両端部それぞれに、柱体又は壁状体の脚として、4個設けられている。粘着性シート10Aの各角部に設けられたX方向規制部11A及びY方向規制部12Aはその角部において一体になっている。すなわち、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aは、粘着性シート10Aの角部それぞれに、各角部を覆うように、約90°の角度を有する鉤型の柱体又は壁状体の脚として、設けられている。なお、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aは、基体20Aにおける特定位置に粘着性シート10Aを装着することができる位置に、設けられる。
【0024】
X方向規制部11A及びY方向規制部12Aは、粘着性シート10AがX方向及びY方向にずれるのを防止することができ、粘着性シート10Aを取り外す際の起点となりうる大きさであればよく、例えば、図3に示されるように、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aの高さ、すなわち、柱体又は壁状体の脚の長さは、粘着性シート10Aの厚さよりも長く、かつ、前記基体20Aの厚さよりも短く、形成されるのがよい。また、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aは、粘着性シート10Aを取り外す際の起点となるから、全ての表面が弱粘着部又は非粘着部とされるのがよい。
【0025】
粘着性シート10Aは、図2に示されるように、その表面に、非粘着部又は弱粘着部からなる島部分13及び強粘着部からなる海部分14を有する海島構造を表面に有する。粘着性シート10Aがその表面に前記海島構造を有していると、後述する被粘着物の粘着保持及び取り外しを容易に行うことができる。ここで、強粘着部は、被粘着物を保持するのに十分な粘着力、例えば、1〜60(g/mm)の粘着力を有する部分である。強粘着部が前記範囲の粘着力を有すると、粘着性シート10Aに被粘着物を確実に保持することができる。弱粘着部は、強粘着部の粘着力よりも弱い粘着力、例えば、0(g/mm)を超え、1(g/mm)未満の粘着力を有する部分である。弱粘着部が前記範囲の粘着力を有すると、前記強粘着部によって粘着性シート10Aに保持された被粘着物を容易に取り外すことができる。非粘着部は、実質的に粘着力を有しない部分である。粘着性シートが非粘着部を有していると、前記強粘着部によって粘着性シート10Aに保持された被粘着物をきわめて容易に取り外すことができる。
【0026】
前記強粘着部及び前記弱粘着部における粘着力は、次のようにして求める。まず、粘着性シート10Aを水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製)又は真空吸引チャックプレート等と、測定部先端に、直径10mmの円柱をなしたステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP−50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意する。この試験台上に粘着性シートを固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次いで、20mm/minの速度で強粘着部又は前記弱粘着部の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部位に対して垂直に3秒間押圧する。ここで、前記所定の荷重を、25g/mmに設定する。次いで、180mm/minの速度で前記接触子を被測定部位から引き離し、このときに前記デジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる平均値を強粘着部又は前記弱粘着部の粘着力とする。なお、この測定方法は、手動で行ってもよいが、例えば、テストスタンド(例えば、商品名:VERTICAl MODEL MOTORIZED STAND シリーズ、(株)イマダ製)等の機器を用いて、自動で行ってもよい。
【0027】
前記海島構造は、強粘着部からなる海部分14に、弱粘着部又は非粘着部からなる島部分13が碁盤目状に配列された構造とされ、島部分13を構成する弱粘着部又は非粘着部は、被粘着物を粘着保持させる粘着保持部分の全面積に対する面積率が20〜95%に設定されている。弱粘着部又は非粘着部の面積率がこの範囲であると、十分な保持力で被粘着物を粘着性シート10Aに保持することができると共に、粘着性シート10Aに保持された被粘着物を容易に取り外すことができる。
【0028】
粘着性シート10Aは、その裏面に強粘着部を有している。裏面に強粘着部を有していると、粘着性シート10Aを基体20Aに容易にかつ強固に装着することができる。
【0029】
粘着性シート10Aは、0.05〜2mm程度の厚さを有し、その表面は平滑であるのがよい。粘着性シート10Aの厚さが、0.05mm未満であると粘着性シート10A自体の機械的強度が低下し、粘着性シート10A自体の耐久性が十分でないことがあり、一方、2mmを越えると、粘着性シート10Aが弾性変形しにくくなり、被粘着物を粘着性シート10Aから容易に取り外すことができなくなることがある。粘着性シート10Aの表面が平滑であると、強粘着部又は弱粘着部の粘着力を均一にすることができる。粘着性シート10Aは、基体20Aと異なる形状及び大きさに設定されてもよいが、通常は、基体20Aと同じ形状及びほぼ同じ大きさに設定される。
【0030】
粘着性シート10Aは、強粘着性材料又は弱粘着性材料若しくは非粘着性材料によって形成される。強粘着性材料をとしては、例えば、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等の各種エラストマーが挙げられるが、強度、耐候性に優れたシリコーンゴム、フッ素系ゴム等がよい。これらの中でも、5〜60程度のゴム硬度(JIS K 6253[デュロメータA])を有するのが特によい。前記ゴム硬度が、5未満であると粘着力が強くなりすぎることがあり、一方、60を越えると粘着力が弱くなりすぎることがある。前記シリコーンゴムとしては、例えば、オルガノポリシロキサン、シリカ系充填剤及びパーオキサイド等の硬化剤等を含有するシリコーンゴム組成物が挙げられる。このようなシリコーンゴム組成物としては、例えば、信越化学工業株式会社から商品名「KE−520U」、「KE−530U」等が入手可能である。また、前記フッ素系ゴムとしては、例えば、フッ化ビニリデン・六フッ化プロピレン共重合体、カーボン等の充填剤、トリアルイソシアネート等の架橋助剤及びパーオキサイド等の硬化剤等を含有するフッ素系ゴム組成物が挙げられる。このようなフッ素系ゴム組成物としては、例えば、ダイキン工業株式会社から商品名「DC−2050」、「DC−2260」等が入手可能である。弱粘着性材料又は非粘着性材料としては、弱粘着性又は非粘着性のシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0031】
粘着性シート10Aは、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aを別に形成し、粘着性シートに接着してもよいが、例えば、射出成形、真空成形、金型成形等の成形方法によって、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aを一体に形成するのがよい。粘着性シート10Aの表面に海島構造を形成するには、例えば、強粘着性材料を用いてシート状に成形し、(1)所望の配列パターンを有するマスキング部材を前記シート部の表面に載置し、マスキング部材上から照射量を制御して紫外線を照射する方法、(2)弱粘着部又は非粘着部を形成する部分に弱粘着性材料又は非粘着性材料を塗布する方法、(3)弱粘着部又は非粘着部を形成する部分の表面を粗面化する方法、(4)弱粘着性材料又は非粘着性材料を用いてシート状に成形し、強粘着部を形成する部分に強粘着性材料を塗布する方法等が挙げられる。
【0032】
次に、基体20Aに粘着性シート10Aを取り付ける方法を説明する。保持治具1Aは、後述するように、粘着性シート10Aにおける強粘着部を基体20A側に陥没させることによって、粘着性シート10Aの強粘着部に粘着保持された被粘着物を分離可能にする保持治具であるから、粘着性シート10Aの弱粘着部又は非粘着部が基体20Aにおける凸状体24の上部に正確に対応するような、基体20AにおけるX方向及びY方向の特定位置に粘着性シート10Aを装着する必要がある。粘着性シート10Aを基体20Aの特定位置に取り付けるには、まず、図4(a)に示されるように、粘着性シート10Aを上方に反らして、粘着性シート10Aに形成されたX方向規制部11A及びY方向規制部12Aそれぞれ少なくとも1個、好ましくは2個、すなわち、鉤型の柱体又は壁状体の脚の少なくとも1個、好ましくは隣接する2個を、基体20Aの角部に符合させる。この符合状態によって、粘着性シート10Aが基体20Aに対してX方向及びY方向に位置決めされ、X方向及びY方向にずれることを規制することができる。次いで、図4(b)に示されるように、この符合状態を維持しつつ、上方に反らした粘着性シート10Aを少しずつ基体10A上に置いていき、最後に、粘着性シート10Aに形成された残りのX方向規制部11A及びY方向規制部12Aを、基体20Aの角部に符合させる。X方向規制部11A及びY方向規制部12Aは粘着性シート10Aの各角部に設けられており、また、前記したように、粘着性シート10Aは基体20Aとほぼ同じ大きさに形成されているから、この取り付け方法によれば、基体20Aの特定位置に粘着性シート10Aが装着された保持治具1Aを容易に準備することができる。したがって、この発明に係る粘着性シート10Aによれば、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aを有し、基体20Aに粘着性シート10Aを取り付ける際に、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aを基体20Aの角部に符合させることによって、基体20Aに対して粘着性シート10Aが位置決めされ、X方向及びY方向にずれが生じることを規制することができる。故に、基体20Aの特定位置に正確かつ容易に粘着性シート10Aを装着することができる。
【0033】
基体20Aから粘着性シート10Aを取り外す方法を説明する。基体20Aから粘着性シート10Aを取り外すには、まず、基体20Aに装着された粘着性シート10AのX方向規制部11A及びY方向規制部12Aそれぞれ少なくとも1個、好ましくは2個、すなわち、鉤型の柱体又は壁状体の脚の少なくとも1個、好ましくは隣接する2個を、工具又は手で掴む。X方向規制部11A及びY方向規制部12Aは、図3に示されるように、基体20Aから突出しているから、工具又は手で容易かつ確実に掴むことができる。次いで、掴んだX方向規制部11A及びY方向規制部12Aを起点にして、基体20Aから粘着性シート10Aを上方に捲り上げて、基体20Aから少しずつ引き剥がす。このようにして、基体20Aから粘着性シート10Aを取り外すことができる。したがって、この発明に係る粘着性シート10Aによれば、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aを起点にして、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aが形成された粘着性シート10Aの端部から引き剥がすことによって、基体20Aに傷を付けることなく、容易に取り外すことができる。
【0034】
次に、保持治具1Aの作用について説明する。保持治具1Aに粘着保持される被粘着物は、薄板状物、電子部品等の破損又は損傷しやすいもの、小型で取り扱いが困難であるもの等であるのが有利である。薄板状物としては、例えば、シリコンウェハ、フレキシブルプリント基板、大画面表示装置用のガラス板等が挙げられ、電子部品としては、例えば、セラミックコンデンサ、コイルフィルター等が挙げられる。
【0035】
保持治具1Aにおいて、製造工程中及び/又は搬送中等に、被粘着物30を粘着保持する場合には、図3に示される保持治具1Aの粘着性シート10A上に被粘着物30を載置する。この初期状態においては、図5(a)に示されるように、被粘着物30の底面に、粘着性シート10Aの強粘着部である海部分14が密着しているから、被粘着物30は粘着性シート10Aに粘着保持されている。したがって、被粘着物30は保持治具1Aに十分な粘着力で粘着保持されており、被粘着物30を保持治具1Aと共に製造工程に供給し、又は、搬送等することができる。このように、被粘着物30は、粘着性シート10A上に置いただけで保持治具1Aに粘着保持されるから、保持治具1Aは、簡単な構成で、小型かつ低エネルギで、被粘着物30を粘着保持することができる。
【0036】
一方、保持治具1Aにおいて、製造工程終了後及び/又は製造工程間の搬送後等に、粘着保持された被粘着物30を取り外す場合には、図5(b)に示されるように、保持治具1Aの外部に設置された吸引装置等(図示しない。)を通気孔21に接続し、基体20Aと粘着性シート10Aとで形成された閉塞空間26内の気体を排気し、閉塞空間26内を減圧又は真空にする。そうすると、弾性を有する粘着性シート10Aの強粘着部である海部分14は、被粘着物30との粘着力に反して弾性変形し、閉塞空間26内に陥没する。この排気状態においては、粘着性シート10Aの上面における強粘着部である海部分14が被粘着物30の底面から引き離されている。その結果、被粘着物30は、粘着性シート10Aの弱粘着部又は非粘着部である島部分13に接しているだけで、もはや粘着保持されていない。したがって、わずかな力で、保持治具1Aを傾けるだけで、又は、被粘着物30の自重で、被粘着物30を取り外すことができるうえ、被粘着物30を取り外す際に、被粘着物30が変形し又は損傷することを確実に防止することができる。
【0037】
保持治具1Aにおいては、このように初期状態及び排気状態を繰り返すことによって、被粘着物30の保持及び取り外しが容易に行われる。
【0038】
この発明の別の一実施例である粘着性シート及び保持治具を、図6〜図9を参照して、説明する。保持治具1Bは、被粘着物を製造し、搬送する際等に使用され、図8に示されるように、図6に示される基体20Bと図7に示される粘着性シート10Bとを備えてなる。
【0039】
基体20Bは、図6に示されるように、通気孔21を有する板状体である。この基体20Bは、その表面が平坦に形成されているのがよい。また、基体20Bは、後述する粘着性シート10BにおけるX方向規制部11B及びY方向規制部12Bと符合する符合部27を有する。符合部27は、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bと符合すればよく、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bの形状、大きさ、数等に応じて、形状、大きさ、数等が決定される。基体20Bにおける符合部27は、図6に示されるように、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bに対応する基体20Bの側面に凹設されている。符合部27が凹設される側面の位置は、符合部27とX方向規制部11B及びY方向規制部12Bとが符合したときに、後述する基体20Bの特定位置に粘着性シート10Bが装着される位置である。基体20Bの材質等は基本的には基体20Aと同様である。
【0040】
粘着性シート10Bは、図7に示されるように、平面における仮想的なXY座標において、裏面におけるX方向に隣接する角部近傍それぞれに、前記基体20Bの特定位置に対してX方向に位置決め可能なY方向規制部12Bを有し、前記角部におけるY方向規制部12Bが形成された側の端部近傍にそれぞれ、前記基体20Bの特定位置に対してY方向に位置決め可能なX方向規制部11Bを有する。X方向規制部11B及びY方向規制部12Bが形成される位置は、粘着性シート10Bの裏面であって、符合部27とX方向規制部11B及びY方向規制部12Bとが符合したときに、基体20Bにおける特定位置に粘着性シート10Bを装着することができる位置である。X方向規制部11B及びY方向規制部12Bは、図7に示されるように、柱体又は壁状体の脚として、それぞれ2個ずつ設けられている。X方向規制部11B及びY方向規制部12Bは前記符合部27と共に、基体20Bに粘着性シート10Bを取り付ける際に、平面における仮想的なXY座標において、粘着性シート10BがX方向及びY方向にずれるのを防止すると共に、基体20Bから粘着性シート10Bを取り外す際の起点となる。
【0041】
X方向規制部11B及びY方向規制部12Bは、粘着性シート10BがX方向及びY方向にずれるのを防止することができ、粘着性シート10Bを取り外す際の起点となりうる大きさであればよく、例えば、図8に示されるように、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bの高さ、すなわち、柱体又は壁状体の脚の長さは、基体20Bの厚さよりも短く形成されるのがよい。また、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bは、粘着性シート10Bを取り外す際の起点となるから、全ての表面が弱粘着部又は非粘着部とされるのがよい。
【0042】
粘着性シート10Bは、図7に示されるように、その表面に、非粘着部又は弱粘着部からなる海部分14及び強粘着部からなる島部分13を有する海島構造を表面に有する。粘着性シート10Bがその表面に前記海島構造を有していると、後述する被粘着物の粘着保持及び取り外しを容易に行うことができる。ここで、強粘着部、弱粘着部及び非粘着部の粘着力は、粘着性シート10Aにおける強粘着部、弱粘着部及び非粘着部の粘着力と同様である。
【0043】
基体20Bにおける海島構造の配列パターン、弱粘着部又は非粘着部の面積率、厚さ、製造方法等は、前記基体20Aと同様である。なお、基体20Bは、前記弱粘着性材料又は非粘着性材料を用いてシート状に成形し、強粘着部を形成する部分に強粘着性材料を塗布する方法等で成形され、その裏面は弱粘着部又は非粘着部であるのがよい。
【0044】
保持治具1Bは、後述するように、基体20Bと粘着性シート10Bとの間に気体を圧入するので、基体20Bと粘着性シート10Bとを強固に固定する接着層28を、基体20Bと粘着性シート10Bとの間であって、基体20Bの周縁部及び粘着性シート10Bの強粘着部に対応する基体20Bの表面に設けるのがよい。
【0045】
次に、基体20Bに粘着性シート10Bを取り付ける方法を説明する。保持治具1Bは、後述するように、通気孔21から気体を圧入して、粘着性シート10Bにおける弱粘着部又は非粘着部を基体20Bから突出させることによって、粘着性シート10Bの強粘着部に粘着保持された被粘着物を分離可能にする保持治具であるから、粘着性シート10Bの弱粘着部又は非粘着部が基体20Bに形成された通気孔21の開口の上部に正確に位置するような、基体20BにおけるX方向及びY方向の特定位置に粘着性シート10Bを装着する必要がある。粘着性シート10Bを基体20Bの特定位置に取り付けるには、基本的には、基体20Aに粘着性シート10Aを取り付ける方法と同様にする。まず、粘着性シート10Bを上方に反らして、粘着性シート10Bに形成されたX方向規制部11B及びY方向規制部12B、すなわち、柱体又は壁状体の脚を、基体20Bの側面に形成された符合部27にそれぞれ挿入して、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bと符合部27とを符合させる。この符合状態によって、粘着性シート10Bが基体20Bに対してX方向及びY方向に位置決めされ、X方向及びY方向にずれることを規制することができる。基体20Bには、その周縁部及び粘着性シート10Bの強粘着部に対応する表面に予め接着組成物が塗布されている。次いで、基体20Aの場合と同様にして、この符合状態を維持しつつ、上方に反らした粘着性シート10Bを少しずつ基体10B上に置いていく。X方向規制部11B及びY方向規制部12Bと、粘着性シート10Bの符号部27とは、前記したように、特定位置に設けられており、また、粘着性シート10Bは基体20Bとほぼ同じ大きさに形成されているから、この取り付け方法によれば、基体20Bの特定位置に粘着性シート10Bが装着された保持治具1Bを容易に準備することができる。したがって、この発明に係る粘着性シート10Bによれば、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bを有し、基体20Bに粘着性シート10Bを取り付ける際に、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bを基体20Bの符号部27に符合させることによって、基体20Bに対して粘着性シート10BがX方向及びY方向に位置決めされ、X方向及びY方向にずれが生じることを規制することができる。故に、基体20Bの特定位置に正確かつ容易に粘着性シート10Bを装着することができる。
【0046】
基体20Bから粘着性シート10Bを取り外す方法を説明する。基体20Bから粘着性シート10Bを取り外す方法は、基本的には、基体20Aから粘着性シート10Aを取り外す方法と同様にする。まず、基体20Bに装着された粘着性シート10BのX方向規制部11B及びY方向規制部12B、すなわち、柱体又は壁状体の脚における表面を、手で押圧しながら上方に押し上げる。X方向規制部11B及びY方向規制部12Bは基体20Bの側面と面一になっているが、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bは弱粘着部又は非粘着部とされているから、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bと符合部27との密着状態はそれほど強くなく、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bを容易に上方に押し上げることができる。次いで、押し上げたX方向規制部11A及びY方向規制部12Aを起点にして、基体20Bから粘着性シート10Bを上方に捲り上げて、基体20Bから少しずつ引き剥がす。このようにして、基体20Bから粘着性シート10Bを取り外すことができる。したがって、この発明に係る粘着性シート10Bによれば、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bを起点にして、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bが形成された粘着性シート10Bの端部から引き剥がすことによって、基体20Bに傷を付けることなく、容易に取り外すことができる。
【0047】
次に、保持治具1Bの作用について説明する。保持治具1Bにおいて、製造工程中及び/又は搬送中等に、被粘着物30を粘着保持する場合には、図8に示される保持治具1Bの粘着性シート10B上に被粘着物30を載置する。この初期状態においては、図9(a)に示されるように、被粘着物30の底面に、粘着性シート10Bの強粘着部である島部分13が密着しているから、被粘着物30は粘着性シート10Bに粘着保持されている。したがって、被粘着物30は保持治具1Bに十分な粘着力で粘着保持されており、被粘着物30を保持治具1Bと共に製造工程に供給し、又は、搬送等することができる。このように、保持治具1Bは、保持治具1Aと同様に、簡単な構成で、小型かつ低エネルギで、被粘着物30を保持することができる。
【0048】
一方、保持治具1Bにおいて、製造工程終了後及び/又は製造工程間の搬送後等に、粘着保持された被粘着物30を取り外す場合には、図9(b)に示されるように、保持治具1Bの外部に設置された圧縮装置等(図示しない。)を通気孔21に接続し、基体20Bと粘着性シート10Bとの間に気体を圧入する。そうすると、弾性を有する粘着性シート10Bは、接着層28で接着されていない海部分14が、被粘着物30と強粘着部である島部分13との粘着力に反して弾性変形し、基体20Bの表面から隆起する。この圧入状態においては、粘着性シート10Bの上面における強粘着部である島部分13が被粘着物30の底面から引き離されている。その結果、被粘着物30は、粘着性シート10Bの弱粘着部又は非粘着部14に接しているだけで、もはや粘着保持されていない。したがって、わずかな力で、保持治具1Bを傾けるだけで、又は、被粘着物30の自重で、被粘着物30を取り外すことができるうえ、被粘着物30を取り外す際に、被粘着物30が変形し又は損傷することを確実に防止することができる。
【0049】
保持治具1Bにおいては、このように初期状態及び圧入状態を繰り返すことによって、被粘着物30の保持及び取り外しが容易に行われる。
【0050】
前記X方向規制部11A及びY方向規制部12Aは、粘着性シート10Aにおける角部それぞれに形成されているが、この発明においては、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aは、少なくとも1つの角部に形成されていればよく、2つ以上の角部に形成されているのが好ましい。例えば、図10(a)に示される粘着性シート10Cが挙げられる。この粘着性シート10Cは、その隣り合う2つの角部それぞれに、粘着性シート10AにおけるX方向規制部11A及びY方向規制部12Aが形成されている以外は、粘着性シート10Aと同様である。
【0051】
X方向規制部11A、11B及びY方向規制部12A、12Bは、粘着性シート10A、10Bの角部近傍に形成されているが、この発明においては、X方向規制部及びY方向規制部が形成される位置は、粘着性シートの端部近傍であれば、その角部近傍でなくてもよい。例えば、図10(b)に示される粘着性シート10Dが挙げられる。この粘着性シート10Dは、粘着性シート10Cにおける2つのY方向規制部12Aが連続して、粘着性シート10DにおけるX方向に延在する側面全体に延在する1つのY方向規制部12Dと、このY方向規制部12Dと一体に、2つのX方向規制部11Aが形成されている以外は、前記粘着性シート10Aと同様である。
【0052】
前記X方向規制部11A〜11D及びY方向規制部12A〜12Dは何れも、柱体又は壁状体とされているが、この発明においては、X方向規制部及びY方向規制部の形状は特に限定されず、例えば、角柱体、円柱体、棒状体等であってもよい。また、前記X方向規制部11A〜11D及びY方向規制部12A〜12Dそれぞれは何れも、1つの柱体又は壁状体とされているが、この発明においては、X方向規制部及びY方向規制部それぞれを、複数の柱体又は壁状体が間隔を置いて配置された構成とされてもよい。
【0053】
前記X方向規制部11A及びY方向規制部12A、12Dは何れも、粘着性シートの側面に形成されているが、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bと同様に、粘着性シートの裏面における端部近傍に形成されていてもよく、逆に、X方向規制部11B及びY方向規制部12Bは、X方向規制部11A及びY方向規制部12A等と同様に、粘着性シートの側面に形成されていてもよい。
【0054】
前記粘着性シート10A〜10Dは何れも、略正方形に形成されているが、この発明においては、粘着性シートの形状は特に限定されず、例えば、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形、不定形、又は、これらを組み合わせた形状等に形成されてもよい。例えば、円形の粘着性シートとして、図11に示される粘着性シート10E及び10Fが挙げられる。この粘着性シート10Eは、円盤状に形成され、その周縁部に、柱体又は壁状体のX方向規制部11E及びY方向規制部12Eが、X方向規制部11Eの定点及び円盤の中心点を結ぶ線と、Y方向規制部12Eの定点及び円盤の中心点を結ぶ線とが交わる角度θが約90°になるように、形成されている。この粘着性シート10Eにおいて、前記交わる角度は、45〜135°程度であればよい。また、粘着性シート10Fは、円盤状に形成され、その周縁部に沿って、この周縁部の約1/4の長さに延在する柱体又は壁状体のX方向規制部兼Y方向規制部15が形成されている。この粘着性シート10Fにおいて、X方向規制部兼Y方向規制部15が延在する長さは、周縁部の約1/5〜1/2程度であればよい。なお、前記粘着性シート10E及び10F等のように粘着性シートが円形に形成される場合に、この発明の目的をよく達成するためには、前記X方向規制部11E若しくは前記Y方向規制部12Eの少なくとも一方の表面(基体と当接する表面)、又は、X方向規制部兼Y方向規制部15における基体と当接する表面の一部が粘着性を有しているのがよく、又は、粘着性シートが装着される基体の表面又は周側面等に、粘着性シートが基体の円周方向に移動することを防止する周方向規制部、例えば突起等を設けておくのがよい。
【0055】
前記粘着性シート10A〜10Dは何れも、基体20A及び20Bと同様に、略正方形に形成されているが、この発明においては、基体と同一の形状に形成されなくてもよく、例えば、略正方形の基体に、円形、楕円形等の粘着性シートを取り付けてもよい。
【0056】
前記粘着性シート10A及び粘着性シート10Bにおいては、弱粘着部若しくは非粘着部又は強粘着部からなる海部分14に、強粘着部又は弱粘着部若しくは非粘着部からなる島部分13が碁盤目状に配列された海島構造を有しているが、この発明においては、海島構造は、これに限定されることなく、弱粘着部若しくは非粘着部又は強粘着部からなる海部分に、強粘着部又は弱粘着部若しくは非粘着部からなる島部分が、棒状に配列された海島構造、放射状又は同心円状に配列された海島構造等であってもよい。また、これらの海島構造における海部分及び島部分は、正方形、長方形、五角形、六角形等の多角形、円形、リング状、楕円、不定形、又は、これらを組み合わせた形状等に形成されてもよい。
【0057】
前記基体20Aは、粘着性シート10Aの強粘着部を基体20A側に陥没させるタイプの保持治具1Aに用いられているが、この発明において、基体20Aは、弱粘着部又は非粘着部を突出させるタイプの保持治具に用いられてもよい。
【0058】
前記基体20A及び基体20Bは、略正方形に成形されているが、基体の形状は、被粘着物の形状、その製造工程、取り扱い性等に応じて、例えば、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形、不定形、又は、これらを組み合わせた形状等に形成されてもよい。
【0059】
前記基体20Aの側面及び基体20Bの側面には、粘着性シートを取り外しやすくするための凹部を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、周壁部及び凸状体を有する基体の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、粘着性シートの一例を示す概略斜視図である。
【図3】図3は、図1に示される基体と図2に示される粘着性シートとを備えた保持治具の示す概略斜視図である。
【図4】図4は、基体に粘着性シートを取り付ける方法を説明する説明図であり、図4(a)は、X方向規制部11A及びY方向規制部12Aを基体20に符合させた符合状態を示す図であり、図4(b)は、符合状態を維持しつつ、粘着性シートを基体に装着する状態を示す図である。
【図5】図5は、図3におけるA−A線に沿った概略断面図であり、図5(a)は保持治具の初期状態を示す概略断面図であり、図5(b)は保持治具の排気状態を示す概略断面図である。
【図6】図6は、平坦面を有する基体の一例を示す概略斜視図である。
【図7】図7は、粘着性シートの一例を示す概略斜視図である。
【図8】図8は、図6に示される基体と図7に示される粘着性シートとを備えた保持治具の示す概略斜視図である。
【図9】図9は、図8におけるA−A線に沿った概略断面図であり、図9(a)は保持治具の初期状態を示す概略断面図であり、図9(b)は保持治具の圧入状態を示す概略断面図である。
【図10】図10は、粘着性シートの変形例を示す概略斜視図である。
【図11】図11は、粘着性シートの変形例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 保持治具
10 粘着性シート
11 X方向規制部
12 Y方向規制部
13 島部分
14 海部分
15 X方向規制部兼Y方向規制部
20 基体
21 通気孔
22 周壁部
23 内部空間
24 凸状体
25 頂上面
26 閉塞空間
27 符合部
28 接着層
29 間隙部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を流通する通気孔を有する基体に装着されるところの、表面に非粘着部又は弱粘着部及び強粘着部を有し、前記強粘着部で被粘着物を粘着保持し、前記通気孔から気体を圧入して、前記非粘着部又は弱粘着部を前記基体から突出させることによって、又は、前記通気孔から気体を排気して、前記強粘着部を前記基体側に陥没させることによって、前記強粘着部に粘着保持された前記被粘着物を分離可能な粘着性シートであって、
前記粘着性シートの端部近傍に、平面における仮想的なXY座標において、前記基体の特定位置に対して、X方向及びY方向に位置決め可能なX方向規制部及びY方向規制部を有することを特徴とする粘着性シート。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着性シートと、
前記粘着性シートを固定し、気体を流通する通気孔を有する基体とを備えたことを特徴とする保持治具。
【請求項3】
前記基体は、さらに、周壁部と、前記周壁部で包囲された内部空間に形成された少なくとも一つの凸状体とを備え、前記通気孔は前記周壁部と前記凸状体との間隙部に連通することを特徴とする請求項2に記載の保持治具。
【請求項4】
前記基体は、さらに、前記粘着性シートにおける前記X方向規制部及び前記Y方向規制部と符合する符合部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の保持治具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−157822(P2007−157822A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347771(P2005−347771)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】