説明

精神高揚剤および精神高揚用組成物

【課題】口腔内刺激または皮膚刺激による精神高揚剤、または該精神高揚剤を含有する組成物の提供。
【解決手段】キク科スピランテス属(Spilanthes)、ミカン科サンショウ属(Zanthoxylum)、ミカン科イヌサンショウ属(Fagara)、コショウ科コショウ属(Piper)等の植物の抽出物、または下記一般式(1)で表されるアミド誘導体等の収れん性を有する辛味成分による精神高揚剤、および該辛味成分含有組成物。


(式中、R1は、末端にメチレンジオキシフェニル基が置換していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基を表し、R2およびR3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、水酸基が置換していてもよい低級アルキル基であり、R2とR3は、それぞれ互いに隣接する窒素原子と一緒になって複素環を形成していてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神を高揚させる効果を有する、精神高揚剤、精神高揚用組成物、およびそれらを含有した香料組成物、飲食品、口腔用組成物および皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間が毎日心身ともに充実した生活を送ることに対するニーズが高まっている。これに伴い様々な方面で研究が進み、有用物質が製品化されている。ストレス緩和や気分転換を図ることに対する関心が強い現代において、人間の意識水準を高揚あるいは鎮静させる効果を有する物質に対して関心が集まっている。
【0003】
人間の意識水準を高揚あるいは鎮静させる効果について調べる方法として、人間の脳の緩徐な電位変動(Contingent Negative Variation:CNV:随伴性陰性変動)を指標とする方法がある。CNVは注意、期待、予期といった心的過程、さらに意識レベルの変動と関連する。高揚水準が高いときはCNVの早期成分値が増大し、一方高揚水準が低いときはCNVの早期成分値が減少することが分かっており、経験的に興奮効果が認められているジャスミンオイルをかぐとCNV早期成分値が増大すること、鎮静効果が認められているラベンダー系の調合品ラバンドではCNV早期成分値が減少することが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。同様にこれまで高揚効果を持つものの探索が行われており、香りをかぐことによって高揚効果をもつ天然精油および単体の合成香料が見つかっている(特許文献1参照)。また、精油に含まれる特定の成分および該成分を含有する組成物が高揚効果を持つことも知られている(特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−199293号公報
【特許文献2】特開2001−19992号公報
【特許文献3】特開2003−119491号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】鳥居ら、第19回味とにおいのシンポジウム、9月11日(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、人間の意識水準を高揚させるものは知られているが、従来のものは、香りとして鼻腔から吸入することによって神経を高揚させるものがほとんどである。食習慣の変化にともない、缶、PETボトルなど容器の多様化が進み、グラスなどに移さず容器から直接飲む機会が近年増加してきていることから、飲食による香味あるいは口腔刺激を通してあるいは皮膚刺激などを通して人間の意識水準を高揚させる効果をもたらす成分の開発も求められている。
【0007】
本発明は、このような状況においてなされたものであり、本発明の目的は、飲食による香味あるいは口腔刺激を通してあるいは皮膚刺激などを通して人間の意識水準を高揚させる効果をもたらす新規な精神高揚剤を提供すること、さらに本発明は、このような新規な精神高揚剤を含有する精神高揚用組成物並びにこれら新規な精神高揚剤あるいは精神高揚組成物を含有する香料組成物、飲食品、口腔用組成物および皮膚外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記課題を解決するために、精神的な高揚効果を有する化合物あるいは組成物がないか鋭意検討を重ねてきた。その結果、収れん性を有する辛味成分および収れん性を有する辛味成分を有効成分として含有する組成物が、口腔内刺激または皮膚刺激を通して、精神的な高揚効果(以下、精神高揚効果)を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に示す精神高揚剤、精神高揚用組成物、およびそれらを含有した香料組成物、飲食品、口腔用組成物および皮膚外用剤に関する。
【0010】
(1)収れん性を有する辛味成分からなる精神高揚剤。
【0011】
(2)収れん性を有する辛味成分が、キク科スピランテス属(Spilanthes)、ミカン科サンショウ属(Zanthoxylum)、ミカン科イヌサンショウ属(Fagara)およびコショウ科コショウ属(Piper)からなる群より選ばれる属に属する植物の1種または2種以上の植物の抽出物であることを特徴とする上記(1)記載の精神高揚剤。
【0012】
(3)収れん性を有する辛味成分が、下記一般式(1)で表されるアミド誘導体であることを特徴とする上記(1)記載の精神高揚剤。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R1は、末端にメチレンジオキシフェニル基が置換していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基を表し、R2およびR3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、水酸基が置換していてもよい低級アルキル基であり、R2とR3は、それぞれ互いに隣接する窒素原子と一緒になって複素環を形成していてもよい。)
【0015】
(4)上記一般式(1)で表わされるアミド誘導体が、スピラントール類、サンショオール類、ヒドロキシサンショオール類およびピペリン類からなる群より選ばれる1種または2種以上のアミド誘導体であることを特徴とする上記(3)記載の精神高揚用剤。
【0016】
(5)収れん性を有する辛味成分を有効成分として含有する精神高揚用組成物。
【0017】
(6)収れん性を有する辛味成分が、キク科スピランテス属(Spilanthes)、ミカン科サンショウ属(Zanthoxylum)、ミカン科イヌサンショウ属(Fagara)およびコショウ科コショウ属(Piper)からなる群より選ばれる属に属する植物の1種または2種以上の植物の抽出物であることを特徴とする上記(5)記載の精神高揚用組成物。
【0018】
(7)収れん性を有する辛味成分が、下記一般式(1)で表されるアミド誘導体であることを特徴とする上記(5)記載の精神高揚用組成物。
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、R1は、末端にメチレンジオキシフェニル基が置換していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基を表し、R2およびR3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、水酸基が置換していてもよい低級アルキル基であり;R2とR3は、それぞれ互いに隣接する窒素原子と一緒になって複素環を形成していてもよい。)
【0021】
(8)一般式(1)で表わされるアミド誘導体が、スピラントール類、サンショオール類、ヒドロキシサンショオール類およびピペリン類からなる群より選ばれる1種または2種以上のアミド誘導体であることを特徴とする上記(7)記載の精神高揚用組成物。
【0022】
(9)前記収れん性を有する辛味成分を0.000001〜10.0質量%含有することを特徴とする上記(5)〜(8)のいずれかに記載の精神高揚用組成物。
【0023】
(10)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の精神高揚剤または上記(5)〜(9)のいずれかに記載の精神高揚用組成物を含有することを特徴とする香料組成物。
【0024】
(11)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の精神高揚剤または上記(5)〜(9)のいずれかに記載の精神高揚用組成物を含有することを特徴とする飲食品、口腔用組成物または皮膚外用剤。
【0025】
(12)上記(10)に記載の香料組成物を含有することを特徴とする飲食品、口腔用組成物または皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0026】
本発明の精神高揚剤および精神高揚用組成物は、これを香料組成物、飲食品、口腔用組成物、皮膚外用剤に添加することにより、飲食品の場合であれば、これを食した場合、また、香料組成物の場合にも、これを添加した食料品を食した場合、口腔内刺激または皮膚刺激を通して、精神高揚効果を得ることができる。また口腔用組成物の場合にも、口に含んだとき、あるいは口から吐き出した後に、口腔内刺激または皮膚刺激を通して、精神高揚効果を得ることができる。さらに皮膚外用剤の場合にも、皮膚に接触させた場合、皮膚刺激を通じて精神高揚効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の精神高揚剤であるジャンブーエキストラクト30ppm水溶液100mlを口腔摂取した際のCNV測定結果を示す図である(実施例1)。縦軸は、警告音刺激(S1)後400〜1000msec.の前記成分の面積(単位:msec×μV)を、サンプル摂取前の結果を100%として比較した百分率(%)で表したものである。太い線は測定結果の平均値で、上方向は高揚状態を、下方向は鎮静状態を表している。また、細い線は、標準誤差(SEM)を表わしている。
【0028】
【図2】図2は、本発明の精神高揚剤であるサンショウエキストラクト75ppm水溶液100mlを口腔摂取した際のCNV測定結果を示す図である(実施例2)。縦軸は、警告音刺激(S1)後400〜1000msec.の前記成分の面積(単位:msec×μV)を、サンプル摂取前の結果を100%として比較した百分率(%)で表したものである。太い線は測定結果の平均値で、上方向は高揚状態を、下方向は鎮静状態を表している。また、細い線は、標準誤差(SEM)を表わしている。
【0029】
【図3】図3は、本発明の精神高揚剤であるホワイトペッパーオレオレジン50ppm水溶液100mlを口腔摂取した際のCNV測定結果を示す図である(実施例3)。縦軸は、警告音刺激(S1)後400〜1000msec.の前記成分の面積(単位:msec×μV)を、サンプル摂取前の結果を100%として比較した百分率(%)で表したものである。太い線は測定結果の平均値で、上方向は高揚状態を、下方向は鎮静状態を表している。また、細い線は、標準誤差(SEM)を表わしている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の精神高揚剤、精神高揚用組成物、およびそれらを含有した香料組成物、飲食品、口腔用組成物および皮膚外用剤について、順次詳細に説明する。
【0031】
まず、本発明において、精神高揚剤、精神高揚用組成物とは、これらを用いることにより、使用者に精神的な高揚感を与える効果を発揮する剤または組成物を意味する。また収れん性を有する辛味成分とは、辛味を有する成分として知られた化合物のうち収れん性をも有するものをいうが、本発明においては辛味とは口内粘膜を刺激して痛感や温感(刺激感)を引き起こす作用を有するものであり、また収れん性とは、口内表面の粘膜や皮膚を引き締めたり収縮させたり口をすぼめさせたりする複合感覚のことをいう。また、収れん性を有する辛味成分は、少なくとも1種の収れん性および辛味を示す少なくとも1種の化合物からなるものであり、複数の収れん性および辛味を示す化合物からなるものであってもよい。
【0032】
本発明の精神高揚剤または精神高揚用組成物は、これらを、飲食品、歯磨き、口腔清涼剤などの口腔用組成物や、化粧料、制汗剤等の皮膚外用剤等に含有させて、これらの製品に精神高揚作用付与効果を持たせることができる。精神高揚効果とは、例えば、ヒトが日常生活で経験する気分の落ち込みや不安等の生理的心理状態から開放し、気分を上昇させると共に、精神活動を活発化する効果を意味するものであり、この効果は、パネルを用いた官能評価や、精神的な高揚感を検出可能な指標(例えば、CNV測定等)により確認することが可能である。
【0033】
これまで、収れん性を有する辛味成分としては、サンショオールやピペリン、スピラントール、ファガラミドなど種々のものが知られている。スピラントールは、キク科スピランテス属(Spilanthes)、例えば南米原産のキク科一年生草木であり、ブラジルではジャンブーと称せられるキバナオランダセンニチ(S. acmella var. oleracea)またはオランダセンニチ(S.
acmella)などに含まれる成分である。サンショオール類は、ミカン科サンショウ属(Zanthoxylum)、ミカン科イヌサンショウ属(Fagara)、例えばサンショウ(Zanthoxylum piperitum)やイヌザンショウ(Fagara
schinifolium)などに含まれる成分であり、ファガラミド類はイヌザンショウ(Fagara schinifolium)などに含まれる成分である。ピペリン類は、コショウ科コショウ属(Piper)、例えばコショウ(Piper nigrum)、ナガコショウ(Piper longum)、ジャワナガコショウ(Piper retrofractum)などに含まれる成分である。
【0034】
本発明において、収れん性を有する辛味成分を構成する1種または2種以上の化合物は、合成されたものであってもよく、また天然のもの、例えば収れん性を有する辛味成分を含む植物からの抽出によって得られた抽出物であってもよい。
【0035】
本発明の精神高揚剤および精神高揚用組成物の含有成分である収れん性を有する辛味成分としては、前記一般式(1)で表わされるアミド誘導体が代表的なものとして挙げられる。ここで、前記アミド誘導体の一般式(1)中、R1は、末端にメチレンジオキシフェニル基が置換していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基を表す。具体的には、ビニル基、1−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、5−ヘキセニル基、1,5−ヘキサジエニル基、1,3,5−ヘキサトリエニル基、7−オクテニル基、1,7−オクタジエニル基、1,3,7−オクタトリエニル基、1,5,7−ノナトリエニル基、1,3,9−デカトリエニル基、1,3,11−トリデカトリエニル基、1,5,7,9−ウンデカテトラエニル基などが挙げられる。また、前記アミド誘導体の一般式(1)中、R2およびR3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、水酸基が置換していてもよい低級アルキル基であり;R2とR3は、それぞれお互いに隣接する窒素原子と一緒になって複素環を形成していてもよい。具体的には、水酸基が置換していてもよい低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル基などが、またR2とR3が互いに隣接する窒素原子と一緒になって形成する複素環としては、ピペリジニル基などが挙げられる。
【0036】
上記一般式(1)で表わされ、収れん性を有する辛味成分であるアミド誘導体としては、上記するようなサンショオール類やヒドロキシサンショオール類、ピペリン類、スピラントール類、ファガラミドなどが代表的なものとして挙げられる。
【0037】
上記サンショオール類としては、例えば下記式で示されるα−サンショオール、β−サンショオール、その他、γ−サンショオール、δ−サンショオールなどが挙げられる。
【0038】
α−サンショオール
【化3】

【0039】
β−サンショオール
【化4】

【0040】
ヒドロキシサンショオール類としては、例えば下記式で示されるヒドロキシ−α−サンショオール、ヒドロキシ−β−サンショオール、さらには、ヒドロキシ−γ−サンショオール、ヒドロキシ−δ−サンショオールなどが挙げられる。
【0041】
ヒドロキシ−α−サンショオール
【化5】

【0042】
ヒドロキシ−β−サンショオール
【化6】

【0043】
また、スピラントール類としては、下記構造を有するスピラントール、その他、ホモスピラントールなどが挙げられる。
【0044】
【化7】

【0045】
ピペリン類は、ピペリジンとピペリン酸がアミド結合をしているものであり、下記の構造を有している。
【0046】
【化8】

【0047】
上記構造において、(2,3)−trans、(4,5)−trans体がピペリンであり、(2,3)−cis、(4,5)−trans体がイソピペリンであり、(2,3)−trans、(4,5)−cis体がイソシャビシンであり、(2,3)−cis、(4,5)−cis体がシャビシンである。更には、上記構造においてピペリジンがピロリジンとなったピペリリンなども挙げられる。
【0048】
ファガラミドは次のような構造を有している。
【化9】

【0049】
また、収れん性を有する辛味成分が、収れん性を有する辛味成分を含む植物からの抽出によって得られた抽出物としては、例えば、スピラントール類を含むキク科スピランテス属(Spilanthes)、サンショオール類を含むミカン科サンショウ属(Zanthoxylum)及びミカン科イヌサンショウ属(Fagara)、ピペリン類を含むコショウ科コショウ属(Piper)などの抽出により得られる抽出物などが挙げられる。これら抽出物は、ジャンブーエキストラクト、ジャンブーオレオレジン、サンショウエキストラクト、サンショウエッセンシャルオイル、ホワイトペッパーオレオレジン、ホワイトペッパーエッセンシャルオイル、ブラックペッパーオレオレジン、ブラックペッパーエッセンシャルオイルなどとして入手することができる。
【0050】
前記収れん性を有する辛味成分を含む植物の抽出物の抽出方法としては、従来知られた方法でよく、例えば、ジャンブーエキストラクトはキバナオランダセンニチまたはオランダセンニチの全草乾燥品または、花部の乾燥品をそのまま、あるいは粉砕し、アルコール、アセトン、ヘキサンなどの有機溶媒で抽出したのち溶剤を除去した濃縮物を蒸留し、さらにカラム処理などを経て得られるものであり、スピラントール濃度は約80%である。
【0051】
本発明の精神高揚剤は、これらを、飲食品、歯磨き、口腔清涼剤などの口腔用組成物や、化粧料、制汗剤等の皮膚外用剤等に含有させて、これらの製品に精神高揚作用付与効果を持たせることができる。精神高揚剤は、収れん性を有する辛味成分として知られた化合物そのものまたは抽出物そのものが用いられてもよいし、溶剤に溶解した溶液として用いられてもよい。溶剤としては、例えばエタノール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、ベンジルベンゾエート、水、トリアセチン、トリエチルシトレート、中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)などが挙げられる。
【0052】
また、本発明においては、収れん性を有する辛味成分の形態加工体を利用することもできる。形態加工体とは、収れん性を有する辛味成分を粉末化、顆粒化、乳化などの加工を行い、様々な形態とさせたものをいう。形態加工体の形態は、通常知られている形態であればどのような形態でもよい。形態加工方法としては、通常行なわれている粉末化、顆粒化、乳化などの加工方法を適宜採用することができる。
【0053】
粉末化法としては、収れん性を有する辛味成分をオリゴ糖、デキストリン、澱粉等の糖質類を賦形剤(キャリアー)として吸着させる吸着粉末化法、また上記賦形剤を用い、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、キラヤサポニンなどの乳化剤と共に噴霧乾燥を行なう方法も挙げられる。また、アラビアガム等天然ガム質若しくは加工澱粉などを用い、噴霧乾燥する方法も挙げられる。さらに、収れん性を有する辛味成分を、ショ糖、マルトースなどの糖質、パラチニット、マルチトール等の糖アルコールの2種以上と配合し、水などと共に加熱溶解した後、押出し、乾燥して粉末化する押出し形成法、ゼラチン、寒天などによる相分離を利用したコアセルベーション法など、用途に応じた粉末化法を採用し、粉末形態の形態加工体とすることもできる。
【0054】
その他、前述の方法で得られた粉体を、更にゼラチン、プルラン、乳糖などを結着剤として用い、流動層造粒法によって、顆粒状に造粒化した形態加工体とすることもできる。また、前述の方法により得られた粉末若しくは顆粒に対し、コーティングを施すことも可能である。コーティングの方法としては、それ自体は既知の方法でよく、噴霧コーティング、流動層コーティング、遠心力コーティング、接触コーティング法などがある。コーティング剤もその用途に応じ、糖類、ペクチン、寒天、メチルセルロース、プルラン、ゼラチンなどの水溶性コーティング剤;米ヌカワックス、パーム油など常温固体の硬化油脂などの油溶性コーティング剤を適宜選択すればよい。また、水溶性コーティング剤と油溶性コーティング剤を併用することも可能である。
【0055】
乳化による形態加工体も既知の方法で作成されたものでよく、例えば、アミド誘導体をショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、キラヤサポニン、レシチン等の乳化剤やアラビアガム等天然ガム質と共に溶解液とし、これをTKミキサー等により攪拌混合する、若しくは高圧ホモジナイザーにより乳化液とされたものが挙げられる。
【0056】
本発明では、収れん性を有する辛味成分を単独で精神高揚剤として用いることができるが、前記収れん性を有する辛味成分に、必要に応じて、他の精神高揚効果を有する成分、精神高揚効果を有しない他の成分、例えば香料、色素、酸味料、ビタミン類、甘味料、調味料、香辛料、食品素材、機能性物質など、さらには溶剤等から選ばれる1種、若しくは2種以上を配合して精神高揚用組成物として用いることもできる。本発明の精神高揚用組成物においては、収れん性を有する辛味成分を有効成分として含有することが必要とされるが、「有効成分として含有する」とは、収れん性を有する辛味成分が、精神高揚性効果を与えるに足る量で含まれているということを意味する。収れん性を有する辛味成分の精神高揚用組成物中の含有量は、収れん性を有する辛味成分の種類によって異なるし、また本発明の組成物を配合するものの用途や性状、使用方法などにより一概には規定できるものではないが、精神高揚効果が発揮され得る限度内で、対象物の種類や配合する香料の種類等に応じて自由に選択することが可能である。
【0057】
これら他の精神高揚効果を有する成分、精神高揚効果を有しない他の成分、溶剤等は、収れん性を有する辛味成分と混合された混合物の形態、溶液の形態、形態加工体として利用することができる。形態加工体は、上記精神高揚効果を有する成分の形態加工体で説明したと同様の形態、方法により形成することができる。
【0058】
ここで、上記他の精神高揚効果を有する成分としては、香料素材や香料成分などである、例えばメントール、メントン、リモネン、ピネン類、リナロール、ゲラニアール、シトロネラール、シトロール、カンファー、チモール、ピペリトン、アンゲリカ酸イソアミル、アンゲリカ酸フエニルエチル、クミンアルコール、メンタラクトン、ミリスチン酸エチル、ペリラアルデヒド(特開2010−65233号公報参照)、2,2,6−トリアルキリシクロデキサンカルボン酸エステル類および2,2,6−トリアルキリシクロヘキセンカルボン酸エステル類(WO2005/049773号参照)、アニスアルデヒド、シンナミックアルデヒド、アネトール、オイゲノール、カルボン、ヘリオトロピン、ミントオイル、シナモンオイル、スターアニスオイル、クローブオイル、キャラウェイオイル、ペッパーオイル、カルダモンオイル、ナツメグオイル(特開2001−19992号公報参照)、バジルオイル、カシアオイル、ジャスミンオイル、ネロリオイル、ローズオイル、イランイランオイルなどが挙げられるし、さらに、カフェインやカプサイシンおよびスパイス類などとともに用いることができる。それらを配合することにより、アミド誘導体の精神高揚効果を増強することも可能となる。
【0059】
使用する溶剤としては、前記収れん性を有する辛味成分の溶解に用いられたと同様の溶剤、例えばエタノール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、ベンジルベンゾエート、水、トリアセチン、トリエチルシトレート、中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)などが挙げられる。
【0060】
また、本発明の精神高揚剤および精神高揚用組成物に、香りの嗜好性を向上させる等のために、一般に使用される香料成分や精油等を、所望する精神高揚効果が相殺されない限度内で適宜含有させて精神高揚用の香料組成物とすることができる。また、この香料組成物には、さらに一般的に香料組成物において含有させることができる成分、例えば、抗酸化剤、防腐剤、キレート剤、紫外線吸収剤、色素等を含有させることもできる。
【0061】
さらに、本発明の精神高揚剤および精神高揚用組成物は、主に、調合香料として、香料を含有させることが可能な対象物に含有させて、精神高揚作用を発揮させることができる。かかる対象物としては、飲食品、口腔用組成物、皮膚外用剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明の精神高揚剤あるいは本発明の精神高揚用組成物、本発明の香料組成物の飲食品、口腔用組成物、皮膚外用剤などの適用対象物への配合量は、対象物の用途や性状、使用方法などにより一概には規定できるものではないが、精神高揚効果が発揮され得る限度内で、対象物の種類や配合する香料の種類等に応じて自由に選択することが可能である。通常、前記収れん性を有する辛味成分の量は、製品の全組成に対して0.000001〜10.0質量%程度が好ましい。かかる含有成分量が対象物に対して0.000001質量%未満であると、他の配合成分の影響を最小限にしても、十分な精神高揚効果が発揮されない傾向があり、10.0質量%を超えて配合しても、精神高揚効果を有する成分の含有量に見合った、精神高揚効果の向上は認められなくなるうえ、香気のバランスが一般的に好ましくない傾向が認められる。収れん性を有する辛味成分の量は各種製品に対し広範囲の量とされるし、精神高揚用組成物、香料組成物の各種製品への添加量も種々の条件で異なることから、精神高揚用組成物、香料組成物の前記製品に対する添加量も、前記収れん性を有する辛味成分の含有量と同様の範囲、すなわち前記製品を全組成に対し0.000001〜10.0質量%含有させることが好ましい。
【0063】
本発明の精神高揚剤、精神高揚用組成物、香料組成物を含有させる対象物である飲食品としては、例えば、茶、コーヒー、清涼飲料、豆乳、乳酸菌飲料、果汁飲料、野菜飲料、炭酸飲料、酒、ドリンク剤などの飲料類;チョコレート、キャンディー、チューインガム、などの菓子類;アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット、かき氷などの冷菓類;ケーキ、クリーム、ゼリー、ムース、プリンなどのデザート類;サラダドレッシング、たれ、マーガリン等の調味類;などが挙げられる。
【0064】
また、口腔用組成物としては、歯磨、口腔洗浄料等が挙げられる。さらに皮膚外用剤としては、軟化粧水、収れん化粧水、ふきとり用化粧水、乳液、全身用ローション、アフターシェービングローションおよびジェル、マッサージクリーム、クレンジングクリームおよびジェル等の化粧料、シャンプー、コンディショナー類、ヘアートニック、ヘアークリーム類等の頭髪化粧料、制汗剤、液体、粉末入浴剤等の日用・雑貨品、育毛ローション、軟膏、温感・冷感パップ剤等の医薬部外品などが挙げられる。
【0065】
本発明の精神高揚剤、精神高揚用組成物およびそれらを含有する香料組成物などを口腔摂取する対象は、通常は人間であるが、犬や猫等の哺乳動物であってもよい。また、口腔摂取させる手段は、通常は、精神高揚剤、精神高揚用組成物およびそれらを含有する香料組成物を含有する飲食品、口腔用品、皮膚外用剤などの医薬部外品などの物を介して行われる。すなわち、これら飲食品、口腔用品、医薬部外品などの物の通常の使用態様に従い、物に含有された精神高揚剤、精神高揚用組成物およびそれらを含有する香料組成物を吸引対象が口腔摂取し、精神高揚成分により、口腔摂取した対象(人、哺乳動物)の精神が高揚される。
【実施例】
【0066】
以下、本発明について実施例を用いて、さらに具体的に説明する。なお、%で表した配合量は、配合対象に対する質量%である。
【0067】
(CNV試験方法)
随伴性陰性変動(CNV:Contingent Negative Variation,以下CNVと記す。)と呼ばれる、陰性の電位の変化を測定することにより、精神高揚効果の検討を行った。CNVは、注意、期待、予期等の心理過程、また、意識レベルの変動と連動する、脳の緩徐な電位変動として知られており、ヒトに、高揚効果を示すカフェインを内服させると、CNVの振幅が増大し、鎮静効果を示すニトロゼパムを吸引させると、CNVの振幅が減少することが報告されている。このCNVは、例えば、特開昭63−199292号公報および特開昭63−199293号公報に記載されているように精神高揚効果の測定方法としては周知である。
【0068】
本発明におけるCNV測定は、以下の条件で行った。
【0069】
CNV測定のための脳波電極は国際10−20法に従いFzに装着し、耳タブを不関電極として時定数5.0秒で単極誘導し、NEC社製SYNAFIT2500デジタル脳波計にて測定した。脳波への眼球運動のアーチファクト混入の状態を知るために、左眼球の上下方向の記録を行った。
【0070】
試料の精神高揚効果の確認は、S1(トーンバースト音)を提示し、続いて2.3秒後にS2(CRT上に表示された光刺激)を提示し、S2後ボタン押しによる運動反応(MR)を行わせることで行なった。コントロール(ブランク)条件は、試料に替え水摂取とした。
【0071】
CNVの加算平均は、誘発電位研究用プログラムEPLYZERIIを用い、眼球運動などのアーチファクトを除き、20回以上加算することによって求めた。また、CNVの基線(Base line)は、S1前500msec.の期間の脳波の平均電圧から求めた。測定により得られたCNV波形の評価方法についても鳥居らの方法に従い、警告音刺激(S1)後400〜1000msec.の前期成分の面積(単位:msec.×μV)により判定した。即ち、試料または水摂取前測定時に比較して試料または水摂取後測定時のCNV前記成分の面積が増加・減少した場合には効果があると判断し、ブランク(無臭刺激の場合)を100%として比較した百分率(%)で表し、これを精神高揚効果についての指標とした。面積変動が100%を越える場合は高揚効果が、100%未満の場合は鎮静効果が認められることを示している。
【0072】
(被験者および実験方法)
飲用実験では健康な5〜8名の成人を被験者として、試料およびコントロール摂取前、摂取直後、摂取10分後、摂取30分後に上記の要領でCNV測定を行った。被験者ごとに摂取前セッションに対する摂取直後、摂取10分後、摂取30分後セッションのCNV面積変化率を求め、それらの平均値を算出した。
【0073】
(実施例1)
試料として、ジャンブーエキストラクトのエタノール溶液を室温の水で30ppmとなるように調製した水溶液(以下「スピラントール水溶液」と記載することもある。)100mlを用いた。
【0074】
その結果を、図1に示す。スピラントール水溶液摂取では、どのセッションでも高揚傾向を示した。また、スピラントール水溶液摂取によって、少なくとも10分後まで高揚効果を得られることが確認された。なお、水100mlを摂取したときには少なくとも30分後まで精神高揚効果が得られない。
【0075】
(実施例2)
試料として、サンショウエキストラクトのエタノール溶液を室温の水で75ppmとなるように調製したサンショウエキストラクト水溶液(以下「サンショオール水溶液もしくはヒドロキシサンショオール水溶液」と記載することもある。)100mlを用いた。
【0076】
その結果を、図2に示す。ヒドロキシサンショオール水溶液摂取では、どのセッションでも高揚傾向を示した。このことから、ヒドロキシサンショオール水溶液摂取によって、少なくとも30分後まで高揚効果を得られることが確認された。
【0077】
(実施例3)
試料として、ホワイトペッパーオレオレジンのエタノール溶液を室温の水で50ppmとなるように調製したホワイトペッパーオレオレジン水溶液(以下「ピペリン水溶液」と記載することもある。)100mlを用いた。
【0078】
その結果を、図3に示す。ピペリン水溶液摂取ではどのセッションでも高揚傾向を示した。このことから、ピペリン水溶液摂取によって少なくとも30分後まで高揚効果を得られることが確認された。
【0079】
以下に、本発明の精神高揚剤および精神高揚用組成物を含有する香料組成物を典型的な製品形態に処方した際の精神高揚効果の確認を行った例を示す。
【0080】
(実施例4)
精神高揚用香料組成物として以下の配合成分・配合量(質量%)の香料組成物を準備した。
【0081】
〔精神高揚ガム用香料組成物(コーラフレーバー)〕
配 合 成 分 配合量(質量%)
レモンコールドプレスオイル 30.0%
蒸留ライムオイル 30.0%
オレンジコールドプレスオイル 2.5%
桂皮オイル 0.5%
ナツメグオイル 0.2%
丁子オイル 0.2%
カルダモンオイル 0.1%
コリアンダーオイル 0.1%
バニリン 0.2%
スピラントール0.1%溶液 10.0%
中鎖脂肪酸トリグリセライド 26.2%
計 100.0%
【0082】
次に、以下の配合成分・配合量(質量%)の粒ガム組成物を準備した。
【0083】
配 合 成 分 配合量(質量%)
キシリトール 15.0%
マルチトール 48.8%
ガムベース(レギュラー) 28.0%
マルチトールシロップ(BRIX75) 5.0%
グリセリン 3.0%
アセスルファムK 0.1%
アスパルテーム 0.1%
計 100.0%
(なお、アセスルファムKは、6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4(3H)−オン−2,2−ジオキシドである。)
【0084】
上記粒ガム組成物99質量に対して、上記精神高揚用香料組成物を1質量添加し、常法により精神高揚用香料組成物含有粒ガムを得た。
【0085】
製造された精神高揚用香料組成物を含有したガム3.0gを試料にし、被験者を用いた主観評価における高揚効果の質問紙による評価を行ったところ、どのセッションでも高揚傾向を示し、精神高揚用香料組成物の摂取によって少なくとも20分後まで高揚効果を得られることが確認された。
【0086】
(実施例5)
精神高揚用香料組成物として以下の配合成分・配合量(質量%)の香料組成物を準備した。
【0087】
〔精神高揚ハードキャンディー用香料組成物(コーラフレーバー)〕
配 合 成 分 配合量(質量%)
レモンコールドプレスオイル 25.0%
蒸留ライムオイル 25.0%
オレンジコールドプレスオイル 2.0%
桂皮オイル 0.5%
ナツメグオイル 0.2%
丁子オイル 0.2%
カルダモンオイル 0.1%
コリアンダーオイル 0.1%
バニリン 0.2%
スピラントール0.1%溶液 2.0%
中鎖脂肪酸トリグリセライド 44.7%
計 100.0%
【0088】
次に、以下の配合成分・配合量のキャンディー原料を用意した。
【0089】
配 合 成 分 配合量
グラニュー糖 560.0g
水飴(47DE,BRIX85) 500.0g
水 160.0g
クエン酸 12.0g
色素 適量
【0090】
グラニュー糖、水飴、水を加えて加熱し完全に溶解し、これを150℃まで火詰めした。火詰めが終わったら120℃に冷却し、クエン酸、色素、および上記香料組成物の含有量が0.2質量%となるように添加し、よく混合した後冷却板に移し、適度に冷却後成型し、精神高揚用香料組成物含有キャンディーを得た。
【0091】
製造された精神高揚用香料組成物を含有したキャンディー4.0gを試料にし、被験者を用いた主観評価における高揚効果の質問紙による評価を行ったところ、どのセッションでも高揚傾向を示し、精神高揚用香料組成物の摂取によって少なくとも20分後まで高揚効果を得られることが確認された。
【0092】
(実施例6)
精神高揚用香料組成物として以下の配合成分・配合量(質量%)の香料組成物を準備した。
【0093】
〔精神高揚飲料用香料組成物(ドリンクフレーバー)〕
配 合 成 分 配合量(質量%)
オレンジ エッセンス 40.0%
ライム エッセンス 20.0%
ピーチ ベース 0.1%
パイナップル ベース 0.4%
スピラントール0.1%溶液 2.0%
95%アルコール 22.9%
イオン交換水 14.6%
計 100.0%
【0094】
次に、炭酸水500mlに上記精神高揚用香料組成物0.5mlを添加することにより、精神高揚用香料組成物含有飲料を得た。
【0095】
製造された精神高揚用香料組成物を含有した飲料300mlを試料にし、被験者を用いた主観評価における高揚効果の質問紙による評価を行ったところ、どのセッションでも高揚傾向を示し、精神高揚用香料組成物の摂取によって少なくとも20分後まで高揚効果を得られることが確認された。
【0096】
(実施例7)
精神高揚用香料組成物として以下の配合成分・配合量(質量%)の香料組成物を準備した。
【0097】
〔精神高揚歯磨剤用香料組成物(ペパーミントタイプ)〕
配 合 成 分 配合量(質量%)
L−メントール 40%
ペパーミント油 30%
アネトール 5%
オイゲノール 1%
ユーカリ油 3%
レモン油 2%
スピラントール 1%
エチルアルコール 18%
計 100%
【0098】
下記処方の歯磨基剤に上記歯磨剤用香料組成物1.0質量%を加えて練歯磨原料を得た。この原料を撹拌擂潰機中で混和しつつ脱気(100mmHg、10分間)した後、取り出し、アルミニウム製チューブに1本あたり15g充填し、密封した。
【0099】
〔歯磨基剤処方〕
配 合 成 分 配合量(重量%)
重質炭酸カルシウム 50.00
グリセリン 25.00
精製水 21.80
カルボキシメチルセルロース 1.50
ラウリル硫酸ナトリウム 1.40
サッカリンナトリウム 0.25
安息香酸モノナトリウム 0.05
計 100.00
【0100】
上記練歯磨を50℃の恒温槽に2週間保存したのち、取り出して室温に戻したものを試料とした。内容物をチューブから歯ブラシにのせてブラッシングしたときの高揚効果について、ブラッシング直後またはその後所定時間ごとに質問紙による主観評価を行った。その結果、どのセッションでも高揚傾向を示し、精神高揚用香料組成物の摂取によって少なくとも20分後まで高揚効果が得られることが確認された。
【0101】
(実施例8)
精神高揚用香料組成物として、以下の配合成分・配合量(質量%)の香料組成物を準備した。
【0102】
〔精神高揚洗口剤または液体歯磨用香料組成物(ペパーミントタイプ)〕
配 合 成 分 配合量(質量%)
L−メントール 25%
ペパーミント油 45%
アネトール 1%
オイゲノール 1%
ユーカリ油 3%
サリチル酸メチル 1%
レモン油 1%
スピラントール 0.5%
エチルアルコール 22.5%
計 100.0%
【0103】
下記処方の洗口液基剤に、マウスウオッシュフレーバー (ペパーミントタイプ)0.1重量%を加え、洗口液を得た。この洗口液を100mlの透明ガラス瓶に充填して密封した。
【0104】
〔洗口液基剤処方〕
配 合 成 分 配合量(重量%)
95%エチルアルコール 10.00
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(EO−60) 2.00
濃グリセリン 10.00
サッカリンナトリウム 0.01
安息香酸ナトリウム 0.05
リン酸モノナトリウム−1水和物 0.06
水酸化ナトリウム 適量
(PH7.8に調整)
精製水 適量
計 100.00
【0105】
上記洗口液を実施例7と同様に保存し、2週間後に取り出して室温に戻したものを試料とした。内容物を10〜15mlカップに注ぎ、口をすすいだときの高揚効果について、すすぎ直後またはその後所定時間ごとに質問紙による主観評価を行った。その結果、どのセッションでも高揚傾向を示し、精神高揚用香料組成物の摂取によって少なくとも20分後まで高揚効果が得られることが確認された。
【0106】
(実施例9)
3cm四方にカットした脱脂綿に、1%スピラントールエタノール溶液:水=3:7となるよう調製した水溶液を0.3g含浸させたものを試料として準備した。
【0107】
健康な10名の成人を被験者とし、被験者の左腕に上記スピラントール含浸脱脂綿を貼付した。貼付中の高揚効果について質問紙による眠気の主観評価を行った。その結果、貼付15分後に眠気が顕著に低下した被験者が5名おり、時間経過に伴い眠気が増した被験者はいなかった。このことから、少なくとも貼付15分後まで高揚効果が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収れん性を有する辛味成分からなる精神高揚剤。
【請求項2】
収れん性を有する辛味成分が、キク科スピランテス属(Spilanthes)、ミカン科サンショウ属(Zanthoxylum)、ミカン科イヌサンショウ属(Fagara)およびコショウ科コショウ属(Piper)からなる群より選ばれる属に属する植物の1種または2種以上の植物の抽出物であることを特徴とする請求項1記載の精神高揚剤。
【請求項3】
収れん性を有する辛味成分が、下記一般式(1)で表されるアミド誘導体であることを特徴とする請求項1記載の精神高揚剤。
【化1】

(式中、R1は、末端にメチレンジオキシフェニル基が置換していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基を表し、R2およびR3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、水酸基が置換していてもよい低級アルキル基であり、R2とR3は、それぞれ互いに隣接する窒素原子と一緒になって複素環を形成していてもよい。)
【請求項4】
上記一般式(1)で表わされるアミド誘導体が、スピラントール類、サンショオール類、ヒドロキシサンショオール類およびピペリン類からなる群より選ばれる1種または2種以上のアミド誘導体であることを特徴とする請求項3に記載の精神高揚用剤。
【請求項5】
収れん性を有する辛味成分を有効成分として含有する精神高揚用組成物。
【請求項6】
収れん性を有する辛味成分が、キク科スピランテス属(Spilanthes)、ミカン科サンショウ属(Zanthoxylum)、ミカン科イヌサンショウ属(Fagara)およびコショウ科コショウ属(Piper)からなる群より選ばれる属に属する植物の1種または2種以上の植物の抽出物であることを特徴とする請求項5記載の精神高揚用組成物。
【請求項7】
収れん性を有する辛味成分が、下記一般式(1)で表されるアミド誘導体であることを特徴とする請求項5記載の精神高揚用組成物。
【化2】

(式中、R1は、末端にメチレンジオキシフェニル基が置換していてもよい炭素数2〜12のアルケニル基を表し、R2およびR3は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、水酸基が置換していてもよい低級アルキル基であり;R2とR3は、それぞれ互いに隣接する窒素原子と一緒になって複素環を形成していてもよい。)
【請求項8】
一般式(1)で表わされるアミド誘導体が、スピラントール類、サンショオール類、ヒドロキシサンショオール類およびピペリン類からなる群より選ばれる1種または2種以上のアミド誘導体であることを特徴とする請求項7に記載の精神高揚用組成物。
【請求項9】
前記収れん性を有する辛味成分を0.000001〜10.0質量%含有することを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の精神高揚用組成物。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の精神高揚剤または請求項5〜9のいずれか1項に記載の精神高揚用組成物のいずれかを含有することを特徴とする香料組成物。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の精神高揚剤または請求項5〜9のいずれか1項に記載の精神高揚用組成物を含有することを特徴とする飲食品、口腔用組成物または皮膚外用剤。
【請求項12】
請求項10に記載の香料組成物を含有することを特徴とする飲食品、口腔用組成物または皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−246278(P2012−246278A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121650(P2011−121650)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】