説明

糖尿病の予測手段および予測方法

【課題】 糖尿病の素因を効率的かつ確実に診断するための手段および方法の提供。
【解決手段】 本発明は、糖尿病の素因を有している疑いのある被験者の被験サンプル中の少なくとも1種の代謝物質を測定することと、該少なくとも1種の代謝物質を参照と比較することにより糖尿病の素因を診断することと、を含む、糖尿病の素因の診断方法に関する。さらに、本発明は、一群の代謝物質と、代謝物質の特性値を含むデータ集合と、該データ集合を含む記憶媒体と、を包含する。そのうえさらに、本発明はまた、サンプルの代謝物質の特性値を比較するための手段をデータ記憶媒体に作動的にリンクして含むシステムに関する。本発明にさらに包含されるのは、少なくとも1種の代謝物質を含む診断手段と、糖尿病の素因を診断するための診断手段を作製するための該少なくとも1種の代謝物質の使用と、である。最後に、本発明は、糖尿病関連代謝物質の同定方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病の素因を有している疑いのある被験者の被験サンプル中の少なくとも1種の代謝物質を測定することと、該少なくとも1種の代謝物質を参照と比較することにより糖尿病の素因を診断することと、を含む、糖尿病の素因の診断方法に関する。さらに、本発明は、一群の代謝物質と、代謝物質の特性値を含むデータ集合と、該データ集合を含む記憶媒体と、を包含する。そのうえさらに、本発明はまた、サンプルの代謝物質の特性値を比較するための手段をデータ記憶媒体に作動的にリンクして含むシステムに関する。本発明にさらに包含されるのは、少なくとも1種の代謝物質を含む診断手段と、糖尿病の素因を診断するための診断手段を作製するための該少なくとも1種の代謝物質の使用と、である。最後に、本発明は、糖尿病関連代謝物質の同定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病の有病率は、工業化社会では約6%に達しており、2030年には全世界で罹患者が3億6600万人にまで増大するであろう。世界中で糖尿病の最も多い原因(タイプ)(約90%)は、多因子性病因を有する2型糖尿病で占められる。2型糖尿病の病理学的過程は、多くの要素を伴う。現時点では十分に理解されていない遺伝的素因を有することが不可欠であると考えられる。その際、糖尿病表現型が現れるかどうかは、インスリン抵抗性の惹起もしくは悪化またはインスリン分泌の障害のいずれかによりグルコース恒常性システムにストレスを与える能力を共有する多くの環境因子の影響を受ける。もちろん、多くのホルモンがグルコース代謝のレギュレーションに関与しているが、主要なホルモンはインスリンである。正常血糖は、インスリン作用とインスリン分泌との間の平衡関係により保持される。インスリンは、さまざまなグルコース要求量に合わせて非常に迅速にレギュレーションを行いうる膵臓β細胞により産生される。2型糖尿病の主要な原因は、インスリン抵抗性の増大である。したがって、通常は、インスリン作用が減少するが、初期は、β細胞機能の増大によりシステムでこれを補償することが可能である。この時点では、おそらく、空腹時グルコース障害またはOGTTで耐グルコース能障害が測定可能であるにすぎないであろう。しかし、時間が経過すると、β細胞は、インスリン抵抗性およびグルコース毒性の増大により過度のストレスを受けるであろうから、2型糖尿病の診断が可能になるであろう。
【0003】
高血糖または低血糖による直接的な医療上の問題以外に、関連合併症により疾患の医療上および社会経済上の大きな負担を生じる。真性糖尿病の重篤な合併症は、主に、慢性腎不全、網膜症、末梢神経および自律神経の障害、または心筋梗塞のような大血管および微小血管の疾患である。したがって、2型糖尿病患者の心臓血管罹患率は、非糖尿病者の2〜4倍である(Stumvoll et al., Type 2 diabetes: principles of pathogenesis and therapy, Lancet 2005)。
【0004】
この機序を考慮して、糖尿病の治療は、現在、血糖レベルをモニターして高レベルの血糖を外因性インスリンの投与により正常レベルに低下させることに基づく。この目的のために、外因性インスリンは血液中に注射される。他の選択肢として、血液中のグルコースレベルは、栄養食により、ならびに喫煙、運動不足、高コレステロールレベル、および一定しない体重のような生活習慣上の危険因子を除去することにより、レギュレート可能である。
【0005】
ADA(米国糖尿病協会(American Diabetes Association))の専門委員会は、糖尿病の基準を満たさないがそれにもかかわらず正常であるとみなすには高すぎるグルコースレベルを有する中間グループの被験者の存在に気付いた。このグループは、空腹時血漿中グルコース(FPG)レベル>100mg/dl(5.6mmol/l)ただし<126mg/dl(7.0mmol/l)または経口耐グルコース能検査(OGTT)の2時間値>140mg/dl(7.8mmol/l)ただし<200mg/dl(11.1mmol/l)として定義される。この場合、FPG値の分類は次のとおりである。
【0006】
・FPG<100mg/dl(5.6mmol/l)=正常空腹時グルコース;
・FPG 100〜125mg/dl(5.6〜6.9mmol/l)=IFG(空腹時グルコース障害);
・FPG>126mg/dl(7.0mmol/l)=糖尿病の仮診断(以下に記載されるように診断の確認を行わなければならない)。
【0007】
OGTTを使用した場合の対応する分類は、以下のようになる。
【0008】
・負荷2時間後のグルコース<140mg/dl(7.8mmol/l)=正常耐グルコース能
・負荷2時間後のグルコース 140〜199mg/dl(7.8〜11.1mmol/l)=IGT(耐グルコース能障害)
・負荷2時間後のグルコース>200mg/dl(11.1mmol/l)=糖尿病の仮診断(以下に記載されるように診断の確認を行わなければならない)。
【0009】
2型真性糖尿病の診断:
1.糖尿病の症状+一時的血漿中グルコース濃度>200mg/dl(11.1mmol/l)。一時的とは、最後の食事をした後の時間に関係なく任意の時刻として定義されるものである。糖尿病の典型的な症状としては、多尿、多飲、および不可解な体重減少が挙げられる。他の選択肢として、2.FPG>126mg/dl(7.0mmol/l)。空腹時とは、少なくとも8時間にわたりカロリー摂取なしとして定義されるものである。他の選択肢として、3.OGTT時の負荷2時間後のグルコース>200mg/dl(11.1mmol/l)。検査は、無水グルコース75g相当を水に溶解して含有するグルコース負荷を用いてWHOにより記載されるように実施することが望ましい。
【0010】
明確な高血糖症の不在下では、異なる日に反復検査を行うことにより、これらの基準を確認することが望ましい。第3の測定(OGTT)は、日常的な臨床用途には推奨されない。
【0011】
(American Diabetes Association, Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus, Diabetes Care 2006)しかしながら、血糖レベルの増大または利用可能なインスリンの減少は、糖尿病の発症および進行においてかなり後期に出現する。現在までのところ、他の選択肢の診断手段は利用可能でなく、それどころか疾患の初期発症前または少なくとも疾患の初期状態の危険にさらされている個人を同定する診断手段も利用可能でない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Stumvoll et al., Type 2 diabetes: principles of pathogenesis and therapy, Lancet 2005
【非特許文献2】American Diabetes Association, Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus, Diabetes Care 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、糖尿病の素因を効率的かつ確実に診断するための手段および方法の提供とみなされるものでなければならない。技術的課題は、特許請求の範囲に特徴付けられておりかつ以下に記載されている実施形態により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、
(a)糖尿病に罹患しているかまたはその素因を有している疑いのある被験者の被験サンプル中の少なくとも1種の代謝物質を測定すること(ただし、該少なくとも1種の代謝物質は、クリプトキサンチン、2−ヒドロキシ−パルミチン酸、トリアシルグリセリド(C16:0,C18:1,C18:2)、ゴンド酸、トリコサン酸、5−オキソプロリンよりなる群から選択される。)、および
(b)工程(a)の測定の結果を参照と比較することにより糖尿病の素因を診断すること
を含む、糖尿病の素因の診断方法に関する。
【0015】
該代謝産物のそれぞれは、それ自体で、本明細書中で参照される疾患の素因の好適なバイオマーカーである。しかしながら、最も好ましくは、上述のグループのうちの1つのバイオマーカーを含むかまたはそれらよりなる一群のバイオマーカーを本発明に係る方法により測定する。一群のバイオマーカーは、好ましくは、上述のバイオマーカーのうちの少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、好ましくは最高すべての種よりなる。
【0016】
本発明に従って参照される「診断方法」という表現は、本方法が上述の工程より本質的になりうるかまたはさらなる工程を含みうることを意味する。しかしながら、本方法は、好ましい実施形態では、in vitroで行われる方法、すなわち、人体または動物体で実施されない方法であることを理解されたい。本明細書中で用いられる診断とは、被験者が本明細書中で参照される疾患(すなわち糖尿病)の素因を有している可能性を評価することを意味する。素因の診断は、予後診断または被験者が疾患を発症する尤度の予測と呼ばれることもある。当業者であればわかるであろうが、そのような評価は、診断される被験者の100%に対して正しいことが好ましいが、通常はそうでない可能性がある。しかしながら、この用語は、統計学的に有意な一部の被験者を本明細書中で参照される疾患の素因を有していると同定可能であることを必要とする。当業者であれば、あとは苦もなく、種々の周知の統計学的評価手段を用いて、たとえば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデント(Student)のt検定、マン・ホイットニー(Mann−Whitney)検定などを行って、一部が統計学的に有意であるかどうかを決定することが可能である。詳細な内容は、Dowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に見いだされる。好ましい信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、好ましくは、0.2、0.1、0.05である。
【0017】
本発明に係る診断は、関連疾患またはその症状の素因のモニタリング、確認、および分類を包含する。モニタリングとは、たとえば、疾患の進行を分析したり、疾患または疾患期間中もしくは疾患の奏効的治療の後に生じる合併症の進行に及ぼす特定の治療の影響を分析したりするために、すでに診断された素因(疾患の)または合併症を追跡することを意味する。確認とは、他のインジケーターまたはマーカーを用いてすでに行われた診断を強化または実証することを意味する。分類とは、症状の強さまたは種類に基づいて診断結果をさまざまなクラスに割り当てること、たとえば、本明細書の他の箇所に示されるような糖尿病タイプに割り当てることを意味する(上記参照)。特定的には、被験者は、好ましくは、以下の表に示されるように代謝物質およびレギュレーションの種類に基づいてさまざまなリスクグループに分類されうる。代謝物質バイオマーカーは、増大された糖尿病リスクを有する被験者の指標となりうる。こうした被験者は、以下の表に示されるように、空腹時グルコース障害(IFG)、耐グルコース能障害(IGT)、またはその両方(IFG&IGT)のリスクグループに分類される。したがって、好ましくは、本発明に係る方法は、添付の表に列挙されるような該増大されたリスクに関連付けられる代謝物質に基づいて、被験者が糖尿病の素因を有しているかまたはIFG、IGT、もしくはIFG&IGTに罹患しているかどうかを診断する方法である。
【0018】
本明細書中で用いられる「糖尿病」または「真性糖尿病」という用語は、グルコース代謝が障害された疾患症状を意味する。該障害は、高血糖を引き起こす。世界保健機関(World Health Organisation)(WHO)によれば、糖尿病は4つのクラスに細分可能である。1型糖尿病は、インスリンの不足により引き起こされる。インスリンは、いわゆる膵島細胞により産生される。該細胞は、1型糖尿病(1a型)において自己免疫反応により破壊される可能性がある。さらに、1型糖尿病は、特発性異型(1b型)を包含する。2型糖尿病は、インスリン抵抗性により引き起こされる。3型糖尿病は、現在の分類によれば、他のすべての特定の型の真性糖尿病を包含する。たとえば、ベータ細胞が、インスリン産生に影響を及ぼす遺伝的欠陥を有する可能性があるか、インスリン抵抗性が、遺伝的にもたらされる可能性があるか、または膵臓それ自体が、破壊もしくは障害される可能性がある。さらに、ホルモンのデレギュレーションまたは薬剤が、3型糖尿病を引き起こす可能性もある。4型糖尿病は、妊娠中に起こる可能性がある。本明細書中で用いられる糖尿病とは、好ましくは、2型糖尿病を意味する。ドイツ糖尿病学会(German Society for Diabetes)によれば、糖尿病は、血漿中グルコースレベルが空腹状態で110mg/dl超であるかまたは食後に220mg/dl超であるかのいずれかにより診断される。さらなる好ましい診断技術は、本明細書中の他の箇所に開示される。糖尿病のさらなる症状は、当技術分野で周知であり、ステッドマン(Stedman)やシレンベル(Pschyrembl)のような医学の標準的教科書に記載されている。
【0019】
本明細書中で用いられる「素因(predisposition)」という用語は、被験者がまだ疾患を発症しておらず上述の疾患症状や他の診断基準のいずれをも呈していないが、それにもかかわらず、特定の尤度を有して今後は指定の期間内(予想期間内)に疾患を発症するであろうことを意味する。予想期間とは、被験者が予想確率に従って疾患または病状を発症すると思われる期間のことである。予想期間は、本発明に係る方法による分析時の被験者の残りの全寿命でありうる。しかしながら、好ましくは、予想期間は、本発明に係る方法により分析されるサンプルを取得した後の1ヶ月間、6ヶ月間、または1、2、3、4、5、もしくは10年間の期間である。本明細書中で参照される疾患発症の尤度は、素因を有する被験者では、所与の被験者コホート内における真性糖尿病の統計学的出現の尤度よりも有意に大きいものとする。好ましくは、個々の被験者では、糖尿病発症の素因に関連付けられる尤度は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは100%であるか、または所与のコホートの被験者が糖尿病を発症する平均尤度と比較して、少なくとも1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、もしくは10倍である。本明細書中で参照される被験者コホートとは、同一の種、好ましくは同一の遺伝的背景または民族、より好ましくはそのうえ同一の年齢および性別である複数の個々の被験者を意味する。
【0020】
本明細書中で用いられる「少なくとも1種の代謝物質」という用語は、単一の代謝物質または複数の代謝物質(すなわち、好ましくは、少なくとも2、3、4、5、10、50、100、500、1,000、2,000、3,000、5,000、もしくは10,000種の代謝物質)を意味する。当然のことながら、本明細書中で用いられる「代謝物質」とは、少なくとも1分子の該代謝物質〜複数分子の該代謝物質でありうるものであり、複数の代謝物質とは、各代謝物質ごとに少なくとも1分子〜複数分子が存在しうる複数の化学的に異なる分子を意味する。本発明に係る代謝物質は、生物などのような生物学的材料に含まれるものをはじめとしてすべてのクラスの有機もしくは無機の化学化合物を包含する。好ましくは、本発明に係る代謝物質は、小分子化合物である。より好ましくは、複数の代謝物質が想定される場合、該複数の代謝物質とは、メタボローム、すなわち、特定の時間に特定の条件下で生物、器官、組織、または細胞に含まれる一群の代謝物質を意味する。
【0021】
代謝物質とは、代謝経路の酵素に対する基質、そのような経路の中間体、または代謝経路により得られる産物のような小分子化合物のことである。代謝経路は、当技術分野で周知であり、種間で異なりうる。好ましくは、該経路は、少なくとも、クエン酸回路、呼吸鎖、光合成、光呼吸、解糖、糖新生、ヘキソース一リン酸経路、酸化的ペントースリン酸経路、脂肪酸の産生およびβ酸化、尿素回路、アミノ酸生合成経路、タンパク質分解経路たとえばプロテアソームによる分解、アミノ酸分解経路、次の物質の生合成または分解を包含する:脂質類、ポリケチド類(たとえば、フラボノイド類およびイソフラボノイド類を包含する)、イソプレノイド類(たとえば、テルペン類、ステロール類、ステロイド類、カロテノイド類、キサントフィル類を包含する)、炭水化物類、フェニルプロパノイド類およびその誘導体、アルカロイド類、ベンゼノイド類、インドール類、インドール硫黄化合物類、ポルフィリン類、アントシアン類、ホルモン類、ビタミン類、補因子たとえば補欠分子族または電子伝達体、リグニン、グルコシノレート類、プリン類、ピリミジン類、ヌクレオシド類、ヌクレオチド類、および関連分子、たとえば、tRNA、マイクロRNA(miRNA)、またはmRNA。したがって、小分子化合物代謝物質は、好ましくは、次のクラスの化合物を包含する:アルコール類、アルカン類、アルケン類、アルキン類、芳香族化合物類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸、エステル類、アミン類、イミン類、アミド類、シアニド類、アミノ酸類、ペプチド類、チオール類、チオエステル類、ホスフェートエステル類、スルフェートエステル類、チオエーテル類、スルホキシド類、エーテル類、または上述の化合物類の組合せもしくは誘導体。代謝物質のうちの小分子は、正常な細胞機能、器官機能、または動物の成長、発育、もしくは健康に必要とされる一次代謝物質でありうる。さらに、小分子代謝物質は、不可欠な生態学的機能を有する二次代謝物質、たとえば、生物をその環境に適応できるようにする代謝物質をも包含する。そのうえさらに、代謝物質は、該一次代謝物質および該二次代謝物質に限定されるものではなく、人工小分子化合物をも包含する。該人工小分子化合物は、投与されるかまたは生物により取り込まれるが上で定義したような一次代謝物質でも二次代謝物質でもない外因的に提供される小分子に由来する。たとえば、人工小分子化合物は、動物の代謝経路により薬剤から得られる代謝産物でありうる。さらに、代謝物質は、ペプチド類、オリゴペプチド類、ポリペプチド類、オリゴヌクレオチド類、およびポリヌクレオチド類、たとえば、RNAまたはDNAをも包含する。より好ましくは、代謝物質は、50Da(ダルトン)〜30,000Da、最も好ましくは、30,000Da未満、20,000Da未満、15,000Da未満、10,000Da未満、8,000Da未満、7,000Da未満、6,000Da未満、5,000Da未満、4,000Da未満、3,000Da未満、2,000Da未満、1,000Da未満、500Da未満、300Da未満、200Da未満、100Da未満の分子量を有する。しかしながら、好ましくは、代謝物質は、少なくとも50Daの分子量を有する。最も好ましくは、本発明に係る代謝物質は、50Da〜1,500Daの分子量を有する。
【0022】
当然のことであろうが、上述の代謝物質または代謝物質グループのほかに、追加の代謝物質または一群の追加の代謝物質を同様に本発明に係る方法により測定可能である。該追加の代謝物質またはその一群は、糖尿病または糖尿病の素因に関連付けられることが公知である代謝物質を包含しうる。好ましくは、該追加の代謝物質はグルコースである。
【0023】
上述の代謝物質または代謝物質グループと一緒に、すなわち、同時または連続的のいずれかで測定される他の好ましい代謝物質は、以下の物質よりなる群から選択される代謝物質である。
【0024】
(i)長鎖飽和脂肪酸、好ましくは、リグノセリン酸(C24:0)、メリシン酸(C30:0)、またはトリコサン酸(C23:0)、
(ii)多価不飽和脂肪酸、好ましくは、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16、19]6)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、アラキドン酸(C20:cis−[5,8,11,14]4)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、またはリノレン酸(C18:cis[9,12,15]3)、
(iii)アミノ酸、好ましくは、リシン、アラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、ロイシン、システイン、メチオニン、チロシン、フェニルアラニン、グリシン、プロリン、またはグルタミン、
(iv)抗酸化剤、好ましくは、アスコルビン酸、コエンザイムQ10、またはα−トコフェロール、
(v)クエン酸回路の代謝物質、好ましくは、ピルベート、シトレート、またはマレート、
(vi)尿素回路の代謝物質、好ましくは、ウレア、シトルリン、スクシネート、またはオルニチン、
(vii)マンノース、α−ケトイソカプロン酸、グリセロール(脂質画分)、または3−ヒドロキシ酪酸、
(viii)グルコース。
【0025】
本発明に従って参照される「長鎖飽和脂肪酸」は、好ましくは、C18〜C30脂肪酸〔ここで、「18」および「30」という数は、脂肪酸鎖中の炭素原子の数を示す〕を包含する。より好ましくは、それは、C20〜C30脂肪酸、最も好ましくは、リグノセリン酸(C24:0)、メリシン酸(C30:0)、またはトリコサン酸(C23:0)を意味する。
【0026】
本明細書中で用いられる「多価不飽和脂肪酸」とは、2個以上の不飽和炭素結合を含む脂肪酸を意味する。好ましくは、本発明で想定される多価不飽和脂肪酸は、C18〜C22多価不飽和脂肪酸、最も好ましくは、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16、19]6)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、アラキドン酸(C20:cis−[5,8,11,14]4)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、またはリノレン酸(C18:cis[9,12,15]3)である。
【0027】
本明細書中で用いられる「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸さらにはその誘導体を包含する。天然に存在するアミノ酸は、当技術分野で周知であり、生化学の標準的教科書に記載されている。より好ましくは、この用語は、リシン、アラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、ロイシン、システイン、メチオニン、チロシン、フェニルアラニン、グリシン、プロリン、またはグルタミンを意味する。
【0028】
本明細書中で用いられる「抗酸化剤」という用語は、被験者において酸化を防止しうる化合物を包含する。好ましくは、この用語は、被験者の細胞内で補酵素として機能しうるかまたは外因的に供給する必要のあるものを包含するビタミン類であるかのいずれかの天然に存在する代謝物質を意味する。より好ましくは、本発明に係る抗酸化剤は、アスコルビン酸、コエンザイムQ10、またはα−トコフェロールである。
【0029】
「クエン酸回路の代謝物質」または「尿素回路の代謝物質」という用語は、前述の周知の生化学的変換カスケードにおける産物と、中間体と、基質として合成または使用される反応物と、を意味する。それらの産物、中間体、または反応物は、生化学の標準的教科書に記載されており、当業者に周知である。好ましくは、ピルベート、シトレート、またはマレートが、クエン酸回路の代謝物質である。ウレア、シトルリン、スクシネート、またはオルニチンが、好ましくは、本明細書中で参照される尿素回路の代謝物質である。
【0030】
好ましくは、一群のバイオマーカーが、本発明に係る方法に従って測定される。より好ましくは、該一群は、上の(i)〜(vii)に明記された異なる代謝物質グループに属するバイオマーカーよりなる。最も好ましくは、上述のグループ(i)〜(vii)のうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、またはすべてのグループの少なくとも1種の代謝物質が測定される。上述の代謝物質クラスのメンバーは、糖尿病または糖尿病の素因を診断するための支援バイオマーカーを提供することが判明した。さらに、上述の代謝物質クラスの組合せは、より一層優れた信頼性の高い結果を提供する。
【0031】
同様に好ましくは、上述の支援代謝物質または支援代謝物質グループに加えて、次の物質よりなる次の群のうちのいずれかから選択される少なくとも1種の支援代謝物質が測定される:3−ヒドロキシ酪酸、アラニン、α−ケトイソカプロン酸、α−トコフェロール、アルギニン、アスコルビン酸、アスパラギン、β−カロテン、コレステノール、シトレート、シトルリン、クレアチニン、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ホレート、グルコース、グルコース−1−リン酸、グルタメート、グルタミン、グリセリン酸、グリセロール−3−リン酸、グリシン、イソロイシン、ラクテート、ロイシン、マレート、マンノース、メチオニン、myo−イノシトール、オルニチン、パルミチン酸、リン脂質類、プレグネノロン硫酸、ステアリン酸、スクシネート、トレオン酸、トレオニン、トリアシルグリセリド類、トリプトファン、尿酸、およびバリン。
【0032】
より好ましくは、少なくとも1種の支援代謝物質は、トリプトファン、アラニン、ロイシン、パルミチン酸、エイコサトリエン酸、グリセロリン脂質類、イソロイシン、エイコサトリエン酸、トリプトファン、リグノセリン酸、リノール酸、セリン、チロシン、リノール酸、プレグネノロン硫酸、アスパルテート、アラキドン酸、およびスクシネートよりなる群から選択される。最も好ましくは、被験者は、この場合、男性である。
【0033】
より好ましくは、少なくとも1種の支援代謝物質は、アラニン、パルミチン酸、イソロイシン、エイコサトリエン酸、尿酸、ステアリン酸、およびセリンよりなる群から選択される。最も好ましくは、被験者は、この場合、女性である。
【0034】
該代謝産物のそれぞれは、それ自体で、本明細書中で参照される疾患の素因の好適な支援バイオマーカーである。しかしながら、最も好ましくは、上述のグループのうちの1つのバイオマーカーを含むかまたはそれらよりなる一群の支援バイオマーカーを本発明に係る方法により測定する。一群のバイオマーカーは、好ましくは、上述の支援バイオマーカーのうちの少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、好ましくは最高すべての種よりなる。
【0035】
上で参照した支援代謝物質はまた、好ましくは、本明細書中の他の箇所に明記されるような好適な参照結果と比較されるであろう。該比較の結果は、被験者が本明細書中で参照される疾患の素因を有するかどうかに関する知見をさらに裏付けるであろう。好ましい参照結果、相対量の変化値、およびレギュレーションの種類の指標は、以下の添付の実施例に見いだされる。
【0036】
本明細書中で用いられる「被験サンプル」という用語は、本発明に係る方法により糖尿病の素因を診断するために使用されるサンプルを意味する。該被験サンプルは生物学的サンプルである。生物源に由来するサンプル(すなわち生物学的サンプル)は、通常、複数の代謝物質を含む。本発明に係る方法に使用される好ましい生物学的サンプルは、体液、好ましくは、血液、血漿、血清、リンパ、汗、唾液、涙、精子、膣液、糞便、尿、もしくは脳脊髄液に由来するサンプル、または生検などにより細胞、組織、もしくは器官から得られるサンプルである。これはまた、細胞内の区画またはオルガネラ、たとえば、ミトコンドリア、ゴルジネットワーク、またはペルオキシソームを含むサンプルを包含する。さらに、生物学的サンプルはまた、気体サンプル、たとえば、生物の揮発性物質を包含する。生物学的サンプルは、本明細書中の他の箇所に明記されるような被験者に由来する。上述のさまざまなタイプの生物学的サンプルを取得するための技術は、当技術分野で周知である。たとえば、血液サンプルは、血液採取により取得可能であり、一方、組織または器官のサンプルは、生検などにより取得可能である。
【0037】
上述のサンプルは、好ましくは、本発明に係る方法に使用される前に前処理される。以下にさらに詳細に記載されるように、該前処理としては、化合物の放出もしくは分離または過剰の材料もしくは廃物の除去に必要な処理が挙げられうる。好適な技術としては、化合物の遠心分離、抽出、分画、精製、および/または富化が挙げられる。さらに、化合物分析に好適な形態または濃度で化合物を提供するために、他の前処理が行われる。たとえば、本発明に係る方法でガスクロマトグラフィー結合質量分析を使用する場合、該ガスクロマトグラフィーを行う前に化合物を誘導体化する必要があろう。好適な所要の前処理は、本発明に係る方法を実施するために使用される手段に依存し、当業者に周知である。上に記載したように前処理されたサンプルもまた、本発明に従って用いられる「サンプル」という用語に包含される。
【0038】
本明細書中で用いられる「被験者」という用語は、動物、好ましくは、マウス、ラット、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、サル、またはウシのような哺乳動物、および同様に好ましくはヒトを意味する。本発明に係る方法を適用して診断しうる他の動物は、トリまたは爬虫動物である。糖尿病に罹患しているかまたはその素因を有している疑いのある被験者とは、本明細書中で用いられる場合、好ましくは糖尿病の症状もしくは臨床徴候または糖尿病の指標となるパラメーターを示す被験者を意味する。しかしながら、この用語はまた、外見上健常な被験者、すなわち、上述の症状、臨床徴候、およびパラメーターのいずれをも示さない被験者をも意味する。外見上健常な被験者は、予防的ケアの手段としてまたは集団スクリーニングを目的として本発明に係る方法により検査可能である。
【0039】
「該少なくとも1種の代謝物質を測定する」という用語は、本明細書中で用いられる場合、本明細書中で参照されるサンプルに含まれる少なくとも1種の代謝物質の少なくとも1つの特徴的特性を測定することを意味する。本発明に係る特徴的特性とは、代謝物質の物理的性質および/または化学的性質(生化学的性質を包含する)を特徴付ける特性のことである。そのような性質としては、たとえば、分子量、粘度、密度、電荷、スピン、光学活性、色、蛍光、化学発光、元素組成、化学構造、他の化合物と反応する能力、生物学的読取りシステムで応答を引き起こす能力(たとえば、レポーター遺伝子の誘導)などが挙げられる。該性質の値は、特徴的特性として機能しうる。また、当技術分野で周知の技術により測定可能である。さらに、特徴的特性は、標準的操作、たとえば、乗算、除算、または対数計算のような数学的計算により代謝物質の物理的性質および/または化学的性質の値から得られる任意の特性でありうる。最も好ましくは、少なくとも1つの特徴的特性は、該少なくとも1種の代謝物質の測定および/または化学的同定を可能にする。
【0040】
被験サンプルに含まれる少なくとも1種の代謝物質は、本発明に従って定量的または定性的に測定可能である。定性的測定では、好適な技術により代謝物質の存在または不在が測定されるであろう。さらに、定性的測定は、好ましくは、代謝物質の化学構造または組成の測定を包含しうる。定量的測定では、好ましくは、上で本明細書中で参照した特徴的特性(複数可)に関して測定される値に基づいて、サンプル中に存在する少なくとも1種の代謝物質の正確な量が測定されるかまたは少なくとも1種の代謝物質の相対量が測定されるかのいずれかであろう。代謝物質の正確な量を測定できないかまたは測定しない場合、相対量を測定しうる。この場合、代謝物質の存在量が、該代謝物質を第2の量で含む第2のサンプルと対比して増大または低減されているかどうかを、測定することが可能である。この場合、代謝物質の定量分析は、代謝物質の半定量分析と呼ばれることもある分析をも包含する。
【0041】
さらに、本発明に係る方法に使用される測定は、好ましくは、上で参照した分析工程の前に化合物分離工程を使用することを含む。好ましくは、該化合物分離工程では、サンプルに含まれる代謝物質の時間分解分離が得られる。したがって、好ましくは、本発明に従って使用される分離に好適な技術は、すべてのクロマトグラフィー分離技術、たとえば、液体クロマトグラフィー(LC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、またはアフィニティークロマトグラフィーを包含する。これらの技術は、当技術分野で周知であり、当業者であればあとは苦もなく適用可能である。最も好ましくは、LCおよび/またはGCが、本発明に係る方法で想定されるクロマトグラフィー技術である。代謝物質のそのような測定に好適な装置は、当技術分野で周知である。好ましくは、質量分析、特定的には、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)、直接注入質量分析もしくはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT−ICR−MS)、キャピラリー電気泳動質量分析(CE−MS)、高性能液体クロマトグラフィー結合質量分析(HPLC−MS)、四重極質量分析、任意の逐次結合質量分析たとえばMS−MSもしくはMS−MS−MS、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)、熱分解質量分析(Py−MS)、イオン移動度質量分析、または飛行時間質量分析(TOF)が使用される。最も好ましくは、以下に詳細に記載されるようにLC−MSおよび/またはGC−MSが使用される。該技術については、たとえば、Nissen, Journal of Chromatography A, 703, 1995: 37-57、US 4,540,884、またはUS 5,397,894(その開示内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に開示されている。質量分析技術の他の選択肢としてまたはそれに追加して、次の技術を化合物測定に使用可能である:核磁気共鳴(NMR)、磁気共鳴イメージング(MRI)、フーリエ変換赤外分析(FT−IR)、紫外(UV)分光、屈折率(RI)、蛍光検出、放射化学的検出、電気化学的検出、光散乱(LS)、分散ラマン分光、またはフレームイオン化検出(FID)。これらの技術は、当業者に周知であり、あとは苦もなく適用可能である。本発明に係る方法は、好ましくは、自動化により支援されるものとする。たとえば、サンプルの処理または前処理をロボット工学により自動化することが可能である。データの処理および比較は、好ましくは、好適なコンピュータープログラムおよびデータベースにより支援される。上で本明細書に記載したような自動化を行えば、本発明に係る方法をハイスループット方式で使用することが可能である。
【0042】
さらに、少なくとも1種の代謝物質はまた、特異的な化学的アッセイまたは生物学的アッセイにより測定可能である。該アッセイは、サンプル中の少なくとも1種の代謝物質を特異的に検出できるようにする手段を含むものとする。好ましくは、該手段は、他の化合物と反応する能力または生物学的読取りシステムで応答を引き起こす能力(たとえば、レポーター遺伝子の誘導)に基づいて、代謝物質の化学構造を特異的に認識可能であるかまたは代謝物質を特異的に同定可能である。代謝物質の化学構造を特異的に認識可能な手段は、好ましくは、化学構造と特異的に相互作用する抗体または他のタンパク質、たとえば、レセプターまたは酵素である。たとえば、特異的抗体は、当技術分野で周知の方法により代謝物質を抗原として用いて取得可能である。本明細書中で参照される抗体は、ポリクロナール抗体およびモノクロナール抗体の両方、さらにはそれらの断片、たとえば、抗原またはハプテンに結合可能なFv、Fab、およびF(ab)フラグメントを包含する。本発明はまた、所望の抗原特異性を呈する非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列とヒトアクセプター抗体の配列とが組み合わされたヒト化ハイブリッド抗体を包含する。さらに、一本鎖抗体も包含される。ドナー配列は、通常、ドナーの少なくとも抗原結合性アミノ酸残基を含むであろうが、ドナー抗体の他の構造上および/または機能上適合するアミノ酸残基をも含みうる。そのようなハイブリッドは、当技術分野で周知のいくつかの方法により調製可能である。代謝物質を特異的に認識可能な好適なタンパク質は、好ましくは、該代謝物質の代謝変換に関与する酵素である。該酵素は、代謝物質を基質として使用可能であるかまたは基質を代謝物質に変換可能である。さらに、該抗体は、代謝物質を特異的に認識するオリゴペプチドを生成する基礎として使用可能である。該オリゴペプチドは、たとえば、この代謝物質に対する酵素の結合ドメインまたは結合ポケットを含むものとする。好適な抗体および/または酵素に基づくアッセイは、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、サンドイッチ酵素免疫検査、電気化学発光サンドイッチ免疫アッセイ(ECLIA)、解離増強ランタニド蛍光免疫アッセイ(DELFIA)、または固相免疫検査でありうる。さらに、他の化合物と反応する能力に基づいて、すなわち、特異的な化学反応により、代謝物質を同定することも可能である。好適な反応は、当技術分野で周知であり、好ましくは、酵素反応(たとえば、マンノースの場合 Pitkanen E, Pitkanen O, Uotila L.; Eur J Clin Chem Clin Biochem. 1997 Oct; 35(10):761-6;またはアスコルビン酸の場合 Winnie Lee, Susan M. Roberts and Robert F. Labbe; Clinical Chemistry 43: 154-157, 1997)、酵素分光光度法(BN La Du, RR Howell, PJ Michael and EK Sober; Pediatrics, Jan 1963, 39-46, Vol 31, No. 1)、分光蛍光定量法(Sumi T, Umeda Y, Kishi Y, Takahashi K, Kakimoto F. ; Clin Chim Acta. 1976 Dec 1;73(2):233-9)、および蛍光;化学発光(J.J. Thiele, H.J. Freisleben, J. Fuchs and F.R. Ochsendorf; Human Reproduction, Vol. 10, No. 1, pp. 110-115, 1995)を包含する。さらなる検出方法、たとえば、キャピラリー電気泳動法(Hubert A. Carchon and Jaak Jaeken; Clinical Chemistry 47: 1319-1321, 2001)および比色法(Kyaw A; Clin Chim Acta. 1978 Jun;86(2):153-7)を使用することが可能である。さらに、生物学的読取りシステムで応答を引き起こす能力に基づいて、サンプル中の代謝物質を測定することが可能である。生物学的応答は、サンプルに含まれる代謝物質の存在および/または量を示す読取り値として検出されるものとする。生物学的応答は、たとえば、遺伝子発現の誘導または細胞もしくは生物の表現型応答でありうる。
【0043】
さらに、当然のことながら、該少なくとも1種の代謝物質の測定に使用される技術に依存して、検出されるアナライトは、生理学的に生じる代謝物質すなわち被験者中に存在する代謝物質の誘導体でありうる。そのようなアナライトは、サンプルの調製手段または検出手段に起因して生成されうる。本明細書中で参照される化合物は、アナライトであるとみなされる。しかしながら、上に示されるように、これらのアナライトは、定性的および定量的に代謝物質に対応する。さらに、当然のことながら、複数の代謝物質の場合、代謝物質はアナライトと同一になるであろう。
【0044】
「参照」という用語は、糖尿病の素因に相関付けることのできる結果、すなわち、少なくとも1種の代謝物質の特徴的特性のデータを意味する。そのような参照結果は、好ましくは、糖尿病の素因を有していることがわかっている被験者に由来するサンプルから得られる。参照結果は、本発明に係る方法を適用することにより取得可能である。他の選択肢として、とはいえ同様に好ましいことであるが、参照結果は、糖尿病の素因を有していないことがわかっている被験者、すなわち、今後、糖尿病を発症しない被験者、より好ましくは他の疾患をも発症しない被験者のサンプルから取得可能である。さらに、参照は、同様に好ましくは、計算された参照、最も好ましくは、個体集団(検査される被験者を含む)の代謝物質の相対量または絶対量の平均値または中央値でありうる。該個体集団の代謝物質の絶対量または相対量は、本明細書中の他の箇所に明記されるように測定可能である。好適な参照値、好ましくは平均値または中央値の計算方法は、当技術分野で周知である。上で参照した被験者集団は、複数の被験者、好ましくは、少なくとも5、10、50、100、1,000、または10,000名の被験者を含むものとする。当然のことながら、本発明に係る方法により診断される被験者と該複数の被験者の被験者とは、同一種である。
【0045】
より好ましくは、参照結果、すなわち、少なくとも1種の代謝物質の少なくとも1つの特徴的特性の値は、データベースのような好適なデータ記憶媒体中に記憶されるであろう。したがって、将来の診断にも利用可能であろう。これはまた、疾患の素因の効率的な診断を可能にする。なぜなら、対応する参照サンプルの取得の対象となった被験者が(実際に)糖尿病を発症したことを確認(将来)した後、データベース中の好適な参照結果を同定しうるからである。ヒトにおいて糖尿病またはその素因に関連付けられる好ましい参照結果は、添付の実施例の表に示されるものである。
【0046】
「比較」という用語は、上に詳細に記載した測定の結果、すなわち、少なくとも1種の代謝物質の定性的もしくは定量的な測定の結果が参照結果と同一であるかもしくは類似しているかまたは参照結果と異なっているかを評価することを意味する。
【0047】
糖尿病の素因を有していることがわかっている被験者から参照結果を取得する場合、被験サンプルから得られる検査結果と上述の参照結果と間の同一度または類似度に基づいて、すなわち、少なくとも1種の代謝物質に関する同一もしくは類似の定性的もしくは定量的な組成に基づいて、該素因を診断することが可能である。特徴的特性の値、定量的測定の場合は強度値が同一であれば、被験サンプルの結果と参照結果とは同一である。特徴的特性の値は同一であるが強度値に差があれば、該結果は類似している。そのような差は、好ましくは、有意ではなく、強度の値が参照値に基づいて少なくとも1〜99パーセンタイル、5〜95パーセンタイル、10〜90パーセンタイル、20〜80パーセンタイル、30〜70パーセンタイル、40〜60パーセンタイルの範囲内、参照値に基づいて50、60、70、80、90、もしくは95パーセンタイルであることにより特徴付けられるものとする。
【0048】
糖尿病の素因を有していないことがわかっている被験者または一群の被験者から参照結果を取得する場合、被験サンプルから得られる検査結果と上述の参照結果と間の差、すなわち、少なくとも1種の代謝物質に関する定性的もしくは定量的な組成の差に基づいて、該素因を診断することが可能である。上に明記されたように計算された参照を使用するのであれば、同じことがあてはまる。差は、代謝物質の絶対量もしくは相対量の増大(代謝物質のアップレギュレーションと呼ばれることもある;実施例も参照されたい)または該量のいずれかの減少もしくは代謝物質の検出可能量の不在(代謝物質のアップレギュレーションと呼ばれることもある;実施例も参照されたい)でありうる。好ましくは、相対量または絶対量の差は、有意である。すなわち、参照値に基づいて、45〜55パーセンタイル、40〜60パーセンタイル、30〜70パーセンタイル、20〜80パーセンタイル、10〜90パーセンタイル、5〜95パーセンタイル、1〜99パーセンタイルの範囲外にある。本明細書中の他の箇所で参照される特異的代謝物質の場合、相対量の変化(すなわち、変化「倍率」)の好ましい値または変化の種類(すなわち、より多いもしくはより少ない相対量および/もしくは絶対量をもたらす「アップ」レギュレーションもしくは「ダウン」レギュレーション)は、以下に添付の表に示される。被験者において所与の代謝物質が「アップレギュレート」されることが該表で示されるのであれば、相対量および/または絶対量は増加するであろう。「ダウンレギュレート」されるのであれば、代謝物質の相対量および/または絶対量は減少するであろう。さらに、変化「倍率」は、増加または減少の度合いを示す。たとえば、2倍増加とは、代謝物質に関して量が参照と比較して2倍量であることを意味する。
【0049】
したがって、好ましい実施形態の本発明に係る方法は、糖尿病の素因を有していることがわかっている被験者もしくはグループに由来する参照を含む。その場合、最も好ましくは、被験サンプルおよび該参照の同一もしくは類似の結果(すなわち、少なくとも1種の代謝物質の類似の相対量または絶対量)は、糖尿病の素因の指標となる。本発明に係る方法の他の好ましい実施形態では、参照は、糖尿病の素因を有していないことがわかっている被験者またはグループに由来するか、または計算された参照である。そのような場合、最も好ましくは、少なくとも1種の代謝物質の不在または被験サンプルと参照サンプルとを比較して好ましくは有意に異なる量(すなわち、絶対量または相対量の有意差が観測される)は、糖尿病の素因の指標となる。
【0050】
比較は、好ましくは、自動化により支援される。たとえば、2つの異なるデータセット(たとえば、特徴的特性(複数可)の値を含むデータセット)を比較するためのアルゴリズムを含む好適なコンピュータープログラムを使用することが可能である。そのようなコンピュータープログラムおよびアルゴリズムは、当技術分野で周知である。上に述べたとおりであるが、手動で比較を行うことも可能である。
【0051】
少なくとも1種の代謝物質を測定するための上述の方法は、装置に組み込むことが可能である。本明細書中で用いられる装置とは、少なくとも上述の手段を含んでなるものとする。さらに、装置は、好ましくは、少なくとも1種の代謝物質の検出された特徴的特性(複数可)、同様に好ましくは、測定されたシグナル強度を比較および評価するための手段をも含む。装置の手段は、好ましくは、互いに作動的にリンクされる。作動的に手段をリンクする方法は、装置に組み込まれる手段のタイプに依存するであろう。たとえば、自動で定性的もしくは定量的に代謝物質を測定するための手段を適用する場合、診断を容易にするために、該自動作動手段により得られたデータをコンピュータープログラムなどにより処理することが可能である。好ましくは、そのような場合、手段は、単一の装置内に含まれる。したがって、該装置は、代謝物質用の分析ユニットと得られた診断用データを処理するためのコンピューターユニットとを含みうる。他の選択肢として、検査ストリップ(stripes)のような手段を代謝物質の測定に使用する場合、診断手段は、上で述べたように糖尿病の素因を伴なうことがわかっている結果データまたはそのような素因を有していない被験者の指標となる結果データに測定結果データを割り当てる対照ストリップまたは対照表を含みうる。好ましい装置は、専門臨床医の特別な知識がなくても適用可能なもの、たとえば、単にサンプルを充填することだけを必要とする検査ストリップまたは電子装置である。
【0052】
他の選択肢として、少なくとも1種の代謝物質の測定方法は、好ましくは互いに作動的にリンクされたいくつかの装置を含むシステムに組み込むことが可能である。特定的には、上に詳細に記載したように本発明に係る方法を実施できるように手段をリンクしなければならない。したがって、作動的に(operatively)リンクされたとは、本明細書中で用いられる場合、好ましくは、機能的にリンクされたことを意味する。本発明に係るシステムに使用される手段に依存して、該手段間のデータ伝送を可能にする手段、たとえば、ガラスファイバーケーブルおよびハイスループットデータ伝送用の他のケーブルを用いて各手段を他の手段に接続することにより、該手段を機能的にリンクすることが可能である。それにもかかわらず、本発明では、たとえばLAN(無線LAN、W−LAN)を介する手段間の無線データ転送も想定される。好ましいシステムは、代謝物質の測定手段を含む。本明細書中で用いられる代謝物質の測定手段とは、代謝物質の分離手段たとえばクロマトグラフィー装置および代謝物質の測定手段たとえば質量分析装置を含んでなるものである。好適な装置については、上に詳細に記載されている。本発明に係るシステムに使用される好ましい化合物分離手段としては、クロマトグラフィー装置、より好ましくは、液体クロマトグラフィー用、HPLC用、および/またはガスクロマトグラフィー用の装置が挙げられる。好ましい化合物測定装置は、質量分析装置、より好ましくは、GC−MS、LC−MS、直接注入質量分析装置、FT−ICR−MS、CE−MS、HPLC−MS、四重極質量分析装置、逐次結合質量分析装置(たとえばMS−MSもしくはMS−MS−MS)、ICP−MS、Py−MS、またはTOFを含む。好ましくは、分離手段と測定手段とを互いに結合させる。最も好ましくは、本明細書中の他の箇所に詳細に記載されるように、LC−MSおよび/またはGC−MSを本発明に係るシステムに使用する。さらに、代謝物質の測定手段から得られた結果の比較手段および/または分析手段も含まれるものとする。結果の比較手段および/または分析手段は、少なくとも1つのデータベースおよび結果を比較するために組み込まれたコンピュータープログラムを含みうる。また、上述のシステムおよび装置の好ましい実施形態については、以下に詳細に記載する。
【0053】
有利なことに、少なくとも1種の上述の代謝物質は糖尿病の素因の好適なバイオマーカーになることが本発明により判明した。これらの代謝物質をバイオマーカーとして適用すれば、迅速で信頼性の高い費用効果的な糖尿病の素因の診断が可能である。さらに、本明細書中の他の箇所に記載されるように自動化により本方法を支援することが可能であり、したがって、糖尿病に罹患する危険性のある被験者のハイスループットスクリーニングが可能である。その結果として、本発明に係る方法により糖尿病予防のための健康プログラムを支援することが可能であり、本方法を用いて糖尿病の予防的治療または栄養食をはじめとする糖尿病の他の予防対策の奏効度をモニターすることが可能である。さらに、本明細書に記載される代謝プロファイリング技術により、本明細書中で参照される代謝物質または代謝物質の組合せを時間効果的かつ費用効果的に同時に測定することが可能である。そのうえさらに、本発明に係る方法により、被験者が特定の糖尿病リスクグループ(すなわち、IFG、IGT、もしくはIFG&IGT)のメンバーであるかまたはそのメンバーになるかのリスクを評価することが可能である。IFGおよびIGTの報告された有病率は、民族、年齢、および性別の分布に依存して、5〜26%の間で大幅に変化する。リスクグループIFGおよびIGTはいずれも、近い将来、増大することが予想される。IFGまたはIGTのリスクグループでは、いずれの場合も、3〜5年間以内に25%は偶発性糖尿病に進行し、50%は異常な血糖状態が持続し、25%は正常なグルコースレベルに復帰すると報告されている。より長期的な観察を行えば、IFGまたはIGTを有する者の大多数は、糖尿病を発症すると思われる。IFGおよびIGT(IFG&IGT)の両方を有する者は、IFGまたはIGTのいずれか一方を有する被験者と比較して約2倍の糖尿病発症率を有する(Nathan 2007, Diabetes Care 30(3): 753-759)。
【0054】
上で行われた用語の説明および解釈は、以下で本明細書中に明記される他の実施形態にも同様にあてはまる。
【0055】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、該少なくとも1種の代謝物質は、ジアシルグリセリド(C18:1,C18:2)およびトリアシルグリセリド(C16:0,C18:2,C18:2)よりなる群から選択される。
【0056】
該代謝産物のそれぞれは、それ自体で、本明細書中で参照される素因の好適なバイオマーカーである。しかしながら、最も好ましくは、上述のグループのうちの1つのバイオマーカーを含む一群のバイオマーカーを本発明に係る方法により測定する。一群のバイオマーカーは、好ましくは、上述のバイオマーカーのうちの少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、好ましくは最高すべての種よりなる。そのうえさらに、本発明の根底をなす試験により、上述のグループの代謝物質は男性において糖尿病の素因のバイオマーカーとしてとくに好適であることが判明した。したがって、本発明に従って診断される被験者、より好ましくは男性被験者は、上述の好ましい実施形態に関連する範囲内にある。
【0057】
上に記載したように、本発明に係る方法の好ましい実施形態では、少なくとも1種の代謝物質の該測定は、質量分析(MS)を含む。本明細書中で用いられる質量分析とは、本発明に従って測定される化合物すなわち代謝物質に対応する分子量(すなわち質量)または質量変量の測定を可能にするすべて技術を包含するものである。好ましくは、本明細書中で用いられる質量分析とは、GC−MS、LC−MS、直接注入質量分析、FT−ICR−MS、CE−MS、HPLC−MS、四重極質量分析、任意の逐次結合質量分析たとえばMS−MSもしくはMS−MS−MS、ICP−MS、Py−MS、TOF、または上述の技術を用いる任意の組合せ手段を意味する。これらの技術の適用方法は、当業者に周知である。さらに、好適な装置は市販されている。より好ましくは、本明細書中で用いられる質量分析とは、LC−MSおよび/またはGC−MSすなわち従来のクロマトグラフィー分離工程に作動的にリンクされた質量分析を意味する。より好ましくは、本明細書中で用いられる質量分析とは、四重極MSを包含するものである。最も好ましくは、該四重極MSは、次のように行われる:a)質量分析計の第1の分析四重極内における、イオン化により生成されたイオンの質量/電荷比(m/z)の選択、b)衝突ガスで充填され衝突室として作用する追加の後続四重極内における、加速電圧の印加による工程a)で選択されたイオンのフラグメント化、追加の後続四重極内における、工程b)のフラグメント化プロセスにより生成されたイオンの質量/電荷比の選択、ただし、この方法の工程a)〜c)は、少なくとも1回行われ、イオン化プロセスの結果として物質混合物中に存在するすべてのイオンの質量/電荷比が分析され、その際、四重極は衝突ガスで充填されるが、分析時、加速電圧は印加されない。本発明に従って使用される該最も好ましい質量分析に関する詳細な内容は、WO 03/073464に見いだしうる。
【0058】
より好ましくは、該質量分析は、液体クロマトグラフィー(LC)MSおよび/またはガスクロマトグラフィー(GC)MSである。本明細書中で用いられる液体クロマトグラフィーとは、液相中または超臨界相中の化合物(すなわち代謝物質)の分離を可能にするすべての技術を意味する。液体クロマトグラフィーは、移動相中の化合物が固定相を通過することを特徴とする。化合物が異なる速度で固定相を通過する場合、時間の経過とともに分離された状態になる。なぜなら、個々の化合物は、その固有の保持時間(すなわち、化合物が系を通過するのに必要な時間)を有するからである。本明細書中で用いられる液体クロマトグラフィーとは、HPLCをも包含するものである。液体クロマトグラフィー用の装置は、たとえば、Agilent Technologies, USAから市販されている。本発明に従って適用されるガスクロマトグラフィーは、原理的には、液体クロマトグラフィーと同等に動作する。しかしながら、固定相を通過する液体移動相中に化合物(すなわち代謝物質)を有するのではなく、化合物は、ガス空間内に存在するであろう。化合物は、固定相として固体担体材料を含有しうるかまたは壁が固定相として機能しうるかもしくは固定相でコーティングされうるカラムを通過する。この場合も、各化合物は、カラムを通過するのに必要な固有の時間を有する。さらに、ガスクロマトグラフィーの場合、好ましくは、ガスクロマトグラフィーにかける前に化合物を誘導体化することが想定される。誘導体化に好適な技術は、当技術分野で周知である。好ましくは、本発明に係る誘導体化とは、好ましくは極性化合物のメトキシル化(methoxymation)およびトリメチルシリル化ならびに好ましくは非極性(すなわち親油性)化合物のメチル基転移、メトキシル化、およびトリメチルシリル化を意味する。
【0059】
そのうえさらに、本発明は、糖尿病の素因の指標となる少なくとも1種の代謝物質の特性値を含むデータ集合に関する。ただし、該代謝物質は、上で参照したグループのうちのいずれか1つから選択される。「データ集合」という用語は、物理的および/または論理的に一まとめにしうる一群のデータを意味する。したがって、データ集合は、単一のデータ記憶媒体または互いに作動的にリンクされて物理的に分離されたデータ記憶媒体に組込み可能である。好ましくは、データ集合は、データベースを利用して組み込まれる。したがって、本明細書中で用いられるデータベースとは、好適な記憶媒体上のデータ集合を包含するものである。さらに、データベースは、好ましくは、データベース管理システムをも含む。データベース管理システムは、好ましくは、ネットワーク型、階層型、またはオブジェクト指向型のデータベース管理システムである。そのうえさらに、データベースは、連邦データベースまたは統合データベースでありうる。より好ましくは、データベースは、分散型(連邦)システムとして、たとえばクライアントサーバーシステムとして組み込まれるであろう。より好ましくは、データベースは、検索アルゴリズムにより被験データセットをデータ集合に含まれるデータセットと比較できるように構造化可能である。特定的には、そのようなアルゴリズムを用いて、糖尿病またはその素因の指標となる類似もしくは同一のデータセットが得られるように、データベースを検索することが可能である(たとえば、クエリー検索)。したがって、データ集合で同一もしくは類似のデータセットを同定できれば、被験データセットは、糖尿病の素因に関連付けられるであろう。その結果として、データ集合から得られた情報を用いることにより、被験者から得られた被験データセットに基づいて糖尿病の素因を診断することが可能である。より好ましくは、データ集合は、上に列挙したグループのうちのいずれか1つに含まれるすべて代謝物質の特性値を含む。
【0060】
以上を考慮して、本発明は、上述のデータ集合を含むデータ記憶媒体を包含する。本明細書中で用いられる「データ記憶媒体」という用語は、単一の物理的要素に基づくデータ記憶媒体、たとえば、CD、CD−ROM、ハードディスク、光記憶媒体、またはディスケットを包含する。さらに、この用語は、好ましくはクエリー検索に好適な方式で上述のデータ集合を提供するように互いに作動的にリンクされて物理的に分離された要素よりなるデータ記憶媒体をも包含する。
【0061】
本発明はまた、
(a)サンプルの代謝物質の特性値を比較するための手段、および
(b)(a)の手段を作動的にリンクした、上に記載したようなデータ記憶媒体
を含むシステムに関する。
【0062】
本明細書中で用いられる「システム」という用語は、互いに作動的にリンクされた異なる手段を意味する。該手段は、単一の装置に組み込みうるか、または互いに作動的にリンクされて物理的に分離された装置でありうる。代謝物質の特性値を比較するための手段は、好ましくは、上で述べたような比較のアルゴリズムに基づいて動作する。データ記憶媒体は、好ましくは、それぞれの記憶データセットが糖尿病の素因の指標となる上述のデータ集合またはデータベースを含む。したがって、本発明に係るシステムを用いれば、データ記憶媒体に記憶されたデータ集合に被験データセットが含まれるかどうかを同定することが可能である。その結果として、本発明に係るシステムは、糖尿病の素因を診断する際の診断手段として適用可能である。
【0063】
システムの好ましい実施形態では、サンプルの代謝物質の特性値を測定するための手段が含まれる。
【0064】
「代謝物質の特性値を測定するための手段」という用語は、好ましくは、代謝物質を測定するための上述の装置、たとえば、質量分析装置、NMR装置、または代謝物質の化学的アッセイまたは生物学的アッセイを行うための装置を意味する。
【0065】
さらに、本発明は、上で参照したグループのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種の代謝物質を測定するための手段を含む診断手段に関する。「診断手段」という用語は、好ましくは、本明細書中の他の箇所に詳細に明記されるような診断装置、システム、または生物学的アッセイもしくは化学的アッセイを意味する。「少なくとも1種の代謝物質を測定するための手段」という表現は、代謝物質を特異的に認識可能な装置または作用剤を意味する。好適な装置は、分光測定装置、たとえば、1台もしくは複数台の質量分析装置、NMR装置、または代謝物質の化学的アッセイもしくは生物学的アッセイを行うための装置でありうる。好適な作用剤は、代謝物質を特異的に検出する化合物でありうる。本明細書中で用いられる検出とは、二工程プロセスでありうるものである。すなわち、最初に、化合物を検出対象の代謝物質に特異的に結合させ、続いて、検出可能なシグナル、たとえば、蛍光シグナル、化学発光シグナル、放射性シグナルなどを発生させることが可能である。検出可能なシグナルを発生させるために、さらなる化合物が必要になることもある。こうした化合物はすべて、「少なくとも1種の代謝物質を測定するための手段」という用語に包含される。代謝物質に特異的に結合する化合物は、本明細書中の他の箇所に詳細に記載されており、好ましくは、酵素、抗体、リガンド、レセプター、または代謝物質に特異的に結合する他の生物学的分子もしくは化学物質を包含する。
【0066】
さらに、本発明は、上で参照したグループのうちのいずれか1つから選択される少なくとも1種の代謝物質を含む診断組成物に関する。
【0067】
上述のグループのうちのいずれかから選択される少なくとも1種の代謝物質は、バイオマーカーとして、すなわち、被験者におけるリスク状態すなわち糖尿病の素因のインジケーター分子として機能するであろう。したがって、好ましくは、本明細書中で参照される手段により可視化または検出を行う際、代謝物質分子自体が診断組成物として機能しうる。したがって、本発明に係る代謝物質の存在の指標となる診断組成物はまた、該バイオマーカーを物理的に含みうる。たとえば、抗体と検出対象の代謝物質との複合体は、診断組成物として機能しうる。したがって、診断組成物は、本明細書中の他の箇所に明記されるような代謝物質の検出手段をさらに含みうる。他の選択肢として、MSまたはNMRに基づく技術のような検出手段を使用する場合、リスク状態のインジケーターとして機能する分子種は、検査される被験サンプルに含まれる少なくとも1種の代謝物質であろう。したがって、本発明に従って参照される少なくとも1種の代謝物質は、それ自体で、バイオマーカーとして同定されることに基づく診断組成物として機能するものとする。
【0068】
最後に、本発明は、糖尿病の素因を診断するための診断装置または診断組成物を作製するための、少なくとも1種の代謝物質またはその測定手段の使用に関する。ただし、該少なくとも1種の代謝物質は、上で参照したグループのうちのいずれか1つから選択される。
【0069】
上にすでに明記されたように、該代謝物質のそれぞれは、それ自体で、本明細書中で参照される疾患の素因の好適なバイオマーカーである。しかしながら、最も好ましくは、上述のグループのうちのいずれか1つのバイオマーカーを含む一群のバイオマーカーを本発明に係る方法により測定する。一群のバイオマーカーは、好ましくは、上述のバイオマーカーのうちの少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、好ましくは最高すべての種よりなる。
【0070】
上で参照した参考文献はすべて、以上の説明で明示的に参照されたそれらの特定の開示内容だけでなくそれらの全開示内容に関して、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【実施例】
【0071】
次に、以下の実施例により本発明を例示するが、本発明の範囲を制限したり限定したりするものではない。
【0072】
実施例1:代謝物質の測定
検査予定についてボランティアに通知した。実験プロトコルは、Dife(ドイツ人間栄養研究所(German Institute for Human Nutrition))の施設内治験審査委員会により承認され、すべて被験者は、書面によるインフォームドコンセントを提出した。その後、人体計測値および内膜中膜厚さを測定した。これらの検査の後、75gのグルコースを用いて経口耐グルコース能検査(OGTT)を行った。0、30、60、および120分で血液サンプルを採取した。WHOおよびADAの基準によりボランティアを分類した。抗凝血剤としてEDTAを添加し、続いて遠心分離を行うことにより、全血から血漿を取得した。
【0073】
サンプルを調製し、以下に記載されるようなLCMS分析およびGCMS分析にかけた。
【0074】
サンプルを次のように調製した。血漿から沈殿させることにより、タンパク質を分離した。水と、エタノールとジクロロメタン(dichlormethan)との混合物と、を添加した後、残存サンプルを水性極性相と有機性親油性相とに分画した。
【0075】
脂質抽出物のメタノール交換反応を行うために、140μlのクロロホルムと37μlの塩酸(水中37重量%HCl)と320μlのメタノールと20μlのトルエンとの混合物を蒸発抽出物に添加した。容器を耐密に密封し、振盪しながら100℃で2時間加熱した。続いて、溶液を蒸発乾固させた。残渣を完全に乾燥させた。
【0076】
耐密密封容器内でメトキシアミン塩酸塩(ピリジン中20mg/mlの100μlを60℃で1.5時間)と反応させることにより、カルボニル基のメトキシル化を行った。奇数直鎖状脂肪酸の溶液(3/7(v/v)ピリジン/トルエン中の、7〜25個の炭素原子の脂肪酸各0.3mg/mLと、27、29、および31個の炭素原子の脂肪酸各0.6mg/mLと、の溶液)20μlを時間標準として添加した。最後に、再び耐密密封容器内で、100μlのN−メチル−N−(トリメチルシリル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(MSTFA)による誘導体化を60℃で30分間行った。GCに注入する前の最終体積は、220μlであった。
【0077】
極性相に対して、次のように誘導体化を行った。耐密密封容器内でメトキシアミン塩酸塩(ピリジン中20mg/mlの50μlを60℃で1.5時間)と反応させることにより、カルボニル基のメトキシル化を行った。奇数直鎖状脂肪酸の溶液(3/7(v/v)ピリジン/トルエン中の、7〜25個の炭素原子の脂肪酸各0.3mg/mLと、27、29、および31個の炭素原子の脂肪酸各0.6mg/mLと、の溶液)10μlを時間標準として添加した。最後に、再び耐密密封容器内で、50μlのN−メチル−N−(トリメチルシリル)−2,2,2−トリフルオロアセトアミド(MSTFA)による誘導体化を60℃で30分間行った。GCに注入する前の最終体積は、110μlであった。
【0078】
GC−MSシステムは、Agilent 5973 MSDに結合されたAgilent 6890 GCで構成されたものであった。オートサンプラーは、CTC社製のCompiPalまたはGCPalである。
【0079】
分析のために、分析されるサンプル材料および相分離工程からの画分に応じて、0%〜35%の芳香族部分を含有するさまざまなポリメチルシロキサン固定相を有する通常の市販のキャピラリー分離カラム(30m×0,25mm×0,25μm)を使用した(たとえば、DB−1ms、HP−5ms、DB−XLB、DB−35ms、Agilent Technologies社製)。最終体積を1μLにしてスプリットレス注入し、十分なクロマトグラフィー分離および各アナライトピーク内の十分なスキャン回数を達成するために、サンプル材料および相分離工程からの画分に応じて、さまざまな加熱速度を用いてオーブン温度プログラムを70℃で開始して340℃で終了した。そのうえさらに、RTL(リテンションタイムロッキング、Agilent Technologies社)を分析に使用した。また、通常のGC−MS標準条件を使用した。たとえば、公称1〜1.7ml/分の一定流量および移動相ガスとしてヘリウムを使用し、70eVの電子衝撃によりイオン化を行い、2.5〜3スキャン/秒のスキャン速度および標準的な調整条件を用いて15〜600のm/z範囲内でスキャンした。
【0080】
HPLC−MSシステムは、API 4000質量分析計(Applied Biosystem/MDS SCIEX, Toronto, Canada)に結合されたAgilent 1100 LCシステム(Agilent Technologies, Waldbronn, Germany)で構成される。HPLC分析は、C18固定相(たとえば:GROM ODS 7 pH, Thermo Betasil C18)を有する市販の逆相分離カラムを用いて行った。最終サンプル体積を10μLにして注入し、200μL/分の流量でメタノール/水/ギ酸グラジエントまたはアセトニトリル/水/ギ酸グラジエントを用いてグラジエント溶出により分離を行った。質量分析は、多重反応モニタリング(MRM)モードおよび100〜1000amuのフルスキャンを用いて非極性画分に対してはポジティブモードで極性画分に対してはネガティブモードでエレクトロスプレーイオン化により行った。
【0081】
実施例2:データの評価
プール化血漿参照と一緒にリスク被験者(糖尿病を発症する危険性が高い被験者;「IFG」:IFG陽性を有する非糖尿病被験者、「IGT」:IGT陽性を有する非糖尿病被験者、または「IFG&IGT」:IFG陽性かつIGT陽性を有する非糖尿病被験者のいずれか)および対照被験者のすべての血漿サンプルのGC−MS測定およびLC−MS測定を行った。各測定バッチごとに、単一の被験者の相対シグナル比を計算した。
【0082】
交絡因子の年齢およびBMI(体重指数)に対して補正を行って、しかも2つの異なる性別を組み入れて、三因子リスク(レベル:IFG、IGT、IFG&IGT)により代謝物質シグナル比の線形モデリングを行うことにより、リスク特異的代謝物質を決定した。すなわち、第1に、いま述べた因子を用いて線形モデルを発生させ、第2に、t−統計により推定効果を評価し、第3に、リスク因子レベルおよび性別とリスク因子レベルとの相互作用に関してt−統計のp値<0.05を有する代謝物質のみを選択した。そのうえさらに、各代謝物質ごとにリスクレベルvs対照の比が>1に増加したときに「アップ」およびリスクレベルvs対照の比が<1に減少したときに「ダウン」としてレギュレーションタイプを決定した。
【0083】
以下の表1〜5にデータの評価の結果を示す。表1および2は、糖尿病患者に対してまだ報告されていない代謝物質の結果を示している。表3〜5中で参照される代謝物質は、糖尿病患者に対してすでに報告されている。表1および3は、主効果の「リスク」に関して有意な代謝物質を列挙したものであり、それぞれの有意因子レベルIFG、IGT、およびIFG&IGTを特定している(t−統計)。表2、4、および5は、リスクと性別との相互作用に関して有意な代謝物質、すなわち、対照とリスク被験者との間で性別特異的示差的レギュレーションを示す代謝物質を列挙したものである。表に示された結果は、糖尿病またはその素因に対するバイオマーカーとしてのそれらの能力および効力に従ってランク付けされている。観測されたレギュレーションの種類も示されている。「アップ」は、代謝物質の絶対量または相対量の増加を意味し、一方、「ダウン」は、該絶対量または該相対量の減少、さらには検出可能量の代謝物質の不在を意味する。糖尿病にとくに強く関連付けられる代謝物質は、表中の分割線により示されたグループに細分される。さらに、リスクグループ、すなわち、IFG、IGT、またはIFG&IGTが表に示されている。
【0084】
表1:全体的結果。2型真性糖尿病のリスクグループ(IFG、IGT、およびIFG&IGT)と対照との間で有意差(p<0,05)がある代謝物質(有意な主効果の「リスク」、すなわち、男性および女性で同一のレギュレーションタイプ(「アップ」、「ダウン」))。p値により並び替えられた代謝物質。[IFG=空腹時グルコース障害;IGT=耐グルコース能障害;IFG&IGT:IFGおよびIGTの両方を有する患者]
【表1】

【0085】
表2:男性対照と糖尿病リスクグループの男性患者との間で特に差がある代謝物質。リスク−性別の相互作用に関して有意差(p<0,05)がある代謝物質、すなわち、2型真性糖尿病のリスク(IFG、IGT、およびIFG&IGT)と対照とに関して男性と女性とでレギュレーションが異なる代謝物質。p値により並び替えられた代謝物質。[IFG=空腹時グルコース障害;IGT=耐グルコース能障害;IFG&IGT:IFGおよびIGTの両方を有する患者]
【表2】

【0086】
表3:全体的結果。2型真性糖尿病のリスクグループ(IFG、IGT、およびIFG&IGT)と対照との間で有意差(p<0,05)がある代謝物質(有意な主効果の「リスク」、すなわち、男性および女性で同一のレギュレーションタイプ(「アップ」、「ダウン」))。p値により並び替えられた代謝物質。[IFG=空腹時グルコース障害;IGT=耐グルコース能障害;IFG&IGT:IFGおよびIGTの両方を有する患者]
【表3】

【0087】

【0088】
表4:男性対照と糖尿病リスクグループの男性患者との間で特に差がある代謝物質。リスク−性別の相互作用に関して有意差(p<0,05)がある代謝物質、すなわち、2型真性糖尿病のリスク(IFG、IGT、およびIFG&IGT)と対照とに関して男性と女性とでレギュレーションが異なる代謝物質。p値により並び替えられた代謝物質。[IFG=空腹時グルコース障害;IGT=耐グルコース能障害;IFG&IGT:IFGおよびIGTの両方を有する患者]
【表4】

【0089】
表5:女性対照と糖尿病リスクグループの女性患者との間で特に差がある代謝物質。リスク−性別の相互作用に関して有意差(p<0,05)がある代謝物質、すなわち、2型真性糖尿病のリスク(IFG、IGT、およびIFG&IGT)と対照とに関して男性と女性とでレギュレーションが異なる代謝物質。p値により並び替えられた代謝物質。[IFG=空腹時グルコース障害;IGT=耐グルコース能障害;IFG&IGT:IFGおよびIGTの両方を有する患者]
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)糖尿病の素因を有している疑いのある被験者の被験サンプル中の少なくとも1種の代謝物質を測定すること、ただし、該少なくとも1種の代謝物質は、トリコサン酸(C23:0)である、
(b)工程(a)の測定の検査結果を参照と比較することにより糖尿病の素因を診検出すること
を含む、糖尿病の素因の検出方法。
【請求項2】
さらに、クリプトキサンチン、2−ヒドロキシ−パルミチン酸、ジアシルグリセリド(C18:1,C18:2)、トリアシルグリセリド(C16:0、C18:2、C18:2)、ゴンド酸、および5−オキソプロリンよりなる群から選択される少なくとも1種の追加の代謝物質を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験者が男性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の代謝物質の前記測定が質量分析(MS)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記質量分析が液体クロマトグラフィー(LC)MSおよび/またはガスクロマトグラフィー(GC)MSである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記参照が、糖尿病の素因を有していることがわかっている患者に由来する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記被験サンプルおよび前記参照の同一もしくは類似の結果が糖尿病の素因の指標となる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記参照が、糖尿病の素因を有していないことがわかっている患者に由来する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記参照が、被験者集団で前記少なくとも1種の代謝物質に対して計算された参照である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の代謝物質の不在または前記被験サンプルと前記参照サンプルとを比較して異なるその量が糖尿病の素因の指標となる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルが前記被験者の体液のサンプルである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記被験者がヒトである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1種の追加の代謝物質が、
(i)長鎖飽和脂肪酸、リグノセリン酸(C24:0)、またはメリシン酸(C30:0)、
(ii)多価不飽和脂肪酸、ドコサヘキサエン酸(C22:cis[4,7,10,13,16、19]6)、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、アラキドン酸(C20:cis−[5,8,11,14]4)、リノール酸(C18:cis[9,12]2)、またはリノレン酸(C18:cis[9,12,15]3)、
(iii)アミノ酸、リシン、アラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、イソロイシン、ロイシン、システイン、メチオニン、チロシン、フェニルアラニン、グリシン、プロリン、またはグルタミン、
(iv)抗酸化剤、アスコルビン酸、コエンザイムQ10、またはα−トコフェロール、
(v)クエン酸回路の代謝物質、ピルベート、シトレート、またはマレート、
(vi)尿素回路の代謝物質、ウレア、シトルリン、スクシネート、またはオルニチン、
(vii)マンノース、α−ケトイソカプロン酸、グリセロール、脂質画分、または3−ヒドロキシ酪酸、および
(viii)グルコース、
よりなる群から選択されて測定される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種の追加の代謝物質が、3−ヒドロキシ酪酸、アラニン、α−ケトイソカプロン酸、α−トコフェロール、アルギニン、アスコルビン酸、アスパラギン、β−カロテン、コレステノール、シトレート、シトルリン、クレアチニン、エイコサペンタエン酸(C20:cis[5,8,11,14,17]5)、ホレート、グルコース、グルコース−1−リン酸、グルタメート、グルタミン、グリセリン酸、グリセロール−3−リン酸、グリシン、イソロイシン、ラクテート、ロイシン、マレート、マンノース、メチオニン、myo−イノシトール、オルニチン、パルミチン酸、リン脂質類、プレグネノロン硫酸、ステアリン酸、スクシネート、トレオン酸、トレオニン、トリアシルグリセリド類、トリプトファン、尿酸、およびバリンよりなる群から選択されて測定される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。

【公開番号】特開2013−76703(P2013−76703A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−247306(P2012−247306)
【出願日】平成24年11月9日(2012.11.9)
【分割の表示】特願2009−500866(P2009−500866)の分割
【原出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【出願人】(507030645)メタノミクス ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】