説明

糖尿病の治療及び予防のためのフタリド誘導体の使用

【課題】哺乳動物における糖尿病の予防又は治療に有効な薬剤としての化合物の提供。
【解決手段】(E)−センキュウノリドE、センキュウノリドC、センキュウノリドB、3−ブチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3,6,7−トリヒドロキシ−1(3H)−イソベンゾフラノン、3−ブチル−1(3H)−イソベンゾフラノン、3−ブチルフタリド、3−ブチリデンフタリド、クアングキシノール、リグスチリジオール、センキュウノリドF、3−ヒドロキシ−センキュウノリドA、アンゲロイルセンキュウノリドF、センキュウノリドM、3−ヒドロキシ−8−オキソ−センキュウノリドA、リグスチリド、6,7−ジヒドロ−(6S,7R)−ジヒドロキシリグスチリド、3a,4−ジヒドロ−3−(3−メチルブチリデン)−1(3H)−イソベンゾフラノン、セダノリド、及びクニジリドよりなる群から選択される化合物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、哺乳動物における糖尿病の予防又は治療に有効な薬剤としての化合物の使用に関する。上記化合物は、フタリド誘導体の群より選択され、そして、糖尿病の予防又は治療のためにそれを必要とする哺乳動物に与えられる医薬組成物又は食餌療法組成物の製造に有用である。
【0002】
糖尿病は、多数の原因因子に由来する代謝性疾患が複合したものであると定義され、インスリン分泌不全及び/又はインスリン抵抗性不全に伴う炭水化物、たんぱく質、脂質の代謝障害により特徴付けられる。これは、治療しないまま放置すると合併症を引き起こす空腹時及び食後の血清グルコースの上昇という結果となる。糖尿病の4つの異なる型、(1)1型糖尿病、(2)2型糖尿病、(3)いわゆる妊娠糖尿病(これは、妊娠期間中に初めて発症するか又は認識される)、及び(4)主として遺伝子欠損に基づく他の型が知られている。
【0003】
糖尿病の2つの主要な型は1型及び2型糖尿病であり、2型糖尿病は最も一般的な型である。1型及び2型糖尿病は、高血糖症、高コレステロール血症及び高脂質血症を伴う。1型及び2型糖尿病におけるインスリンに対する非感受性及びインスリンの絶対的不足が、肝臓、筋肉及び脂肪組織によるグルコース利用を減少させ、血中グルコースレベルを上昇させる。コントロールされていない高血糖症は、腎症、末消神経障害、網膜症、高血圧症、発作及び心臓病などの微小血管疾患及び大血管疾患のリスクの増加による、死亡率の上昇及び夭折を伴う。最近の証拠は、厳しい血糖コントロールは、1型及び2型糖尿病の両方でこれらの合併症の予防の主要な要素であることを示している。したがって、薬又は療法上の養生法による最適の血糖コントロールは、糖尿病治療のための重要な方法である。
【0004】
1型糖尿病は、通常、幼年期又は思春期に発症し、そして完全なインスリン分泌不全をもたらすインスリン産生β細胞の自己免疫性破壊により特徴付けられる糖尿病の型である。2型糖尿病は、主に成人で発症し、その成人においてインスリンの産生は十分で利用可能であるが、末梢組織におけるインスリンが介在したグルコースの利用及び代謝に欠陥が存在する糖尿病の型である。2型糖尿病に伴う様々な組織における変化は、臨床症状が認められる前でさえ存在する。
【0005】
2型糖尿病の療法は、初期には食餌及び生活習慣の変更を伴い、これらの方法が十分な血糖コントロールを維持できないときは、患者を経口血糖降下薬及び/又は外因性インスリンで処置する。2型糖尿病の処置のための現行の経口医薬は、インスリン分泌を増強するもの(スルホニル尿素剤)、肝臓におけるインスリンの作用を改善するもの(ビグアニド剤)、インスリン感作剤(チアゾリジンジオン)、及び消化管でのグルコース吸収を抑制する働きをする薬剤(α−グルコシダーゼ抑制剤)を含む。しかしながら、膵臓細胞機能の進行性低下に起因する高血糖症の進行性悪化のために、現在使用できる薬剤は、一般的に、長期間十分な血糖コントロールを維持することができない。目標血糖レベルを維持することが可能な患者の割合は、追加の/代替の医薬の投与を要する超過時間で際立って減少する。更に、薬は、望ましくない副作用を有しているかも知れず、高い一次的及び二次的障害率を伴う。
【0006】
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)は、脂質代謝の脂質センサー及びレギュレーターとして重要な生理学的役割を果たしていることが知られている。PPARは、高濃度の長鎖脂肪酸により様々な度合に活性化される。合成PPARリガンド(フィブレート及びチアゾリジンジオンを含む)は、異常脂質血症及び糖尿病、特に2型糖尿病の処置に有効であることが証明されている。主として、これらの化合物は、PPARγ(PPARファミリーの一つのイソ型である)に作用し、それらのいくつかはまた、PPARα及び/又はPPARδイソ型と相互作用することが可能である。
【0007】
したがって、1型及び2型糖尿病の処置において選択される療法は、基本的にインスリン及び経口血糖降下薬の投与をベースとするが、糖尿病の治療及び予防にとって、最小限の副作用しかない化合物の必要性がある。多くの患者が、高用量の薬に伴う副作用を最小にし、臨床上の付加的な便宜をもたらすことができる代替療法に関心を有している。2型糖尿病は、進行性且つ慢性の疾患であり、それは、通常、顕著な障害がインスリンの産生の役割を果している膵臓細胞及び循環器系に起きるまで認識されない。したがって、また、リスクのある人々、特に進行性糖尿病の高いリスクのある高齢者の糖尿病の進行を抑制する食餌療法用栄養補助食品の開発に関心が高まっている。
【0008】
我々は、現在、一群の公知化合物が優れた血糖降下効果を示し、そのために哺乳動物の糖尿病の予防又は治療に有効な薬剤であることを見い出した。これら無毒性の化合物はPPARγのためのリガンドとして機能する。これらのリガンドの療法上の効果は、制限されるものではないが、血糖レベルの低下、肥満の予防、インスリン抵抗性の低下、2型糖尿病及び異常脂質血症の遅発又は予防、脂肪細胞の分化、トリグリセリドレベルの低下及び耐糖能の正常化を含む。
【0009】
本発明の目的は、抗糖尿病薬として式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
〔式中、
点線は場合により結合であり、
がヒドロキシルであるならば、Rはブチル又はブチリルであるが、Rが水素であるならば、Rはブチルであるか、或はR及びRは、一緒になって、場合により、ヒドロキシル若しくはメチルにより置換されている1−ブチリデン、又は3−(α,β−ジメチルアクリリルオキシ)−ペンチリデニルであり、
Xは、X1、X2、X3、X4、及びX5:
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、
点線が上記式(I)で結合を意味しないならば、Xは、X2、X3又はX5であり、点線が上記式(I)で結合を意味するならば、Xは、X1、X4又はX5であり、
はヒドロキシル又はブチリルであり、そして、
nは1又は2である)よりなる群から選択される残基である〕で表される化合物の使用である。
【0014】
したがって、上記式(I)の化合物において、テトラヒドロフランの場合には、すなわち式(I)中の点線が結合を意味しないならば、Xは、X2、X3又はX5であり、一方、ジヒドロフランの場合には、すなわち式(I)中の点線が結合を意味するならば、Xは、X1、X4又はX5である。
【0015】
また、本明細書で用いる上記式(I)の化合物は、薬学的に許容しうる塩の形態であってもよい。
【0016】
本明細書で用いる場合、用語「抗糖尿病薬」は、それを必要とする哺乳動物で、糖尿病、特に2型糖尿病を予防又は治療することができる薬剤を意味する。これらの薬剤は、関連した症状の治療又は予防にも有用である。
【0017】
用語「糖尿病」は、制限されるものではないが、血糖レベルの上昇、肥満症、インスリン抵抗性の上昇、高脂血症、異常脂質血症、コレステロールの増加(高コレステロール血症、高トリグリセリド血症)、高インスリン血症、及び耐糖能異常をも含む。耐糖能異常及び空腹時グルコース異常が、前糖尿病とみなされる2つの症状である。この段階は、X症候群としても知られている、いわゆるインスリン抵抗性症候群に関連している。X症候群は、直接的には2型糖尿病の発生機序が含まれるので、本発明で使用される化合物は、X症候群の治療及び予防にも有用である。
【0018】
PPARγのアゴニストは、PPARγ、特にそのリガンドの結合領域と直接相互作用し、そしてそれによりPPARγを活性化する小分子に関係している。
【0019】
本発明で使用される化合物は、フタリド誘導体の群より選択され、IUPAC規則C−473による2−ヒドロキシメチル安息香酸の置換ラクトンを意味する。この部類の化合物は1(3H)−イソベンゾフラノンCをベースとしている。
【0020】
抗糖尿病薬として用いられる好ましい化合物は、(E)−センキュウノリドE、センキュウノリドC、センキュウノリドB、3−ブチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3,6,7−トリヒドロキシ−1(3H)−イソベンゾフラノン、3−ブチル−1(3H)−イソベンゾフラノン、3−ブチルフタリド、3−ブチリデンフタリド、クアングキシノール(chuangxinol)、リグスチリジオール、センキュウノリドF、3−ヒドロキシ−センキュウノリドA、アンゲロイルセンキュウノリドF、センキュウノリドM、3−ヒドロキシ−8−オキソ−センキュウノリドA、リグスチリド、6,7−ジヒドロ−(6S,7R)−ジヒドロキシリグスチリド、3a,4−ジヒドロ−3−(3−メチルブチリデン)−1(3H)−イソベンゾフラノン、セダノリド、及びクニジリドよりなる群から選択される。最も好ましく用いられる化合物は、リグスチリド、3−ブチルフタリド、3−ブチリデンフタリド、及びセダノリドからなる群から選択される。好ましい実施態様を表1に挙げる。
【0021】
【表1A】

【0022】
【表1B】

【0023】
【表1C】

【0024】
したがって、抗糖尿病薬として、リグスチリド、3−ブチルフタリド、3−ブチリデンフタリド、及びセダノリドよりなる群から選択される化合物を使用することが本発明の目的である。
【0025】
上記で定義された式(I)の化合物は、糖尿病の予防又は治療のための医薬組成物又は食餌療法組成物の製造に使用される。好ましい化合物を表1に示す。最も好ましく使用される化合物は、リグスチリド、3−ブチルフタリド、3−ブチリデンフタリド、及びセダノリドよりなる群から選択される。
【0026】
本発明の別の態様は、上記で定義された式(I)の化合物の有効な量を含む糖尿病の治療又は予防に使用するための医薬組成物又は食餌療法組成物を提供することである。好ましい化合物を表1に示す。最も好ましい化合物は、リグスチリド、3−ブチルフタリド、3−ブチリデンフタリド、及びセダノリドよりなる群から選択される。
【0027】
医薬組成物は、制限されるものではないが、滑沢剤、着色料、湿潤剤、増量剤、崩壊剤、及び香味料などの薬学的に許容しうる担体、賦形剤、又は希釈剤を更に含んでもよい。
【0028】
食餌療法組成物は、そのような組成物の製造で、通常、使用及び許容される公知のいずれの物質をも更に含んでもよい。
【0029】
医薬組成物又は食餌療法組成物は、強化食品若しくは飼料、飲料、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、パスタ剤、及び発泡性製剤よりなる群から選択される形態であってよい。パスタ剤は、硬又は軟ゼラチンカプセルに充填されていてよい。
【0030】
一つの態様において、本発明は、哺乳動物における糖尿病の予防又は治療の方法を提供するが、該方法は、
(a)上記で定義された式(I)の化合物を含む組成物を製造すること、そして、
(b)上記組成物の有効量をそれを必要とする哺乳動物に対して投与すること
を含む。
【0031】
本明細書で用いる場合、本発明の化合物の「有効量」は、PPARγの活性化をもたらすのに十分多い量であり、これにより、哺乳動物における血糖レベルを低下させる。適切な投与量は、約0.01〜約50mg/体重kg/日の範囲内である。
【0032】
上記で定義し、抗糖尿病薬として使用される式(I)の化合物は、
Angelica glauca, Angelica acutiloba, Angelica sinensis,Angelicae dahuricae,Ligusticum acutilobum, Ligusticum officinale, Ligusticum sinense, Ligusticum wallichii, Cnidium officinale, Rhizoma Chuanxiong, Pleurospermum hookeri, Trachyspermum roxburghianum, Meum athamanticum, Lomatium torreyi, Scutellaria baicalensis, Opopanax chironium, Cenolophium denudatum, Coriandrum sativuum, Silaum silausなどの様々な植物から、当該技術分野で公知の方法(例えば、Beck J. J. and Stermitz F.R., J.Natural Products, Vol.58, No.7, pp.1047-1055, 1995を参照)により単離することができる。本明細書で用いられる化合物は、合成由来であってもよい。本明細書で用いられる全ての化合物が純粋な形態にあることが理解される。
【0033】
実施例1:脂肪細胞のグルコース取り込みに対するリグスチリドの効果
特に明記しない限り、本明細書で使用したリグスチリドは、GAIA ケミカル・コーポレーション、23 ジョージワシントンプラザ、ゲイロルスビル、コネティカット06755、アメリカ合衆国から購入し、約95%の純度であった(カラム・クロマトグラフィーにより精製されている)。
【0034】
C3H10T1/2細胞(ATCC CCL−226)を、10%FBSを補充したDMEM培地で集密した状態になるまで5日間増殖させ、そしてインスリン、デキサメタソン及び3−イソブチル−1−メチルキサンチンの混合物で誘発し脂肪細胞に分化させた。誘発開始後9日目に、細胞を表2に示したとおりの異なる濃度のリグスチリドで48時間処理した。グルコース取り込み量は放射性2−デオキシグルコース(HBS中の2−DG10μM+0.5μCi/mlの3[H]−2−DG)を用い、インスリン非存在下におけるグルコース取り込み量を測定して決定した。基礎グルコース取り込み量はリグスチリドで48時間処理することにより用量に依存して増加した(表2)。このグルコース取り込み量の増加は、フロレチン(特異的グルコース取り込みの公知の阻害剤)の存在下では見られないので、特異的である。陽性対照として、公知のPPARγアゴニストのシグリタゾンを表2に示した濃度で使用した。
【0035】
実施例2:脂肪細胞のグルコース取り込みに対する3−ブチルフタリドの効果
特に明記しない限り、本明細書で使用した3−ブチルフタリドは、アドバンスト・シンセシス・テクノロジー、私書箱437920、サン・イシドロ、カリフォルニア92173、アメリカ合衆国から購入した。
C3H10T1/2細胞の増殖、誘発及び処理は、リグスチリドの代わりに3−ブチルフタリドを異なる濃度で使用したことを除き、実施例1に記載したとおりであった。表2に示すとおり、基礎グルコース取り込み量の増加が見い出された。
【0036】
実施例3:脂肪細胞のグルコース取り込みに対する3−ブチリデンフタリドの効果
特に明記しない限り、本明細書で使用した3−ブチリデンフタリドは、アルドリッチ・ケミカル・カンパニー有限会社、1001ウエスト・セント・ポール・アベニュー、ミルウォーキー、ウィスコンシン53233、アメリカ合衆国から購入し、純度>96%を有していた。
C3H10T1/2細胞の増殖、誘発及び処理は、リグスチリドの代わりに3−ブチリデンフタリドを異なる濃度で使用したことを除き、実施例1に記載したとおりであった。表2に示すとおり、基礎グルコース取り込み量の増加が見い出された。
【0037】
【表2】

【0038】
実施例4:脂肪細胞の分化に対するリグスチリドの効果
実施例1に記載したようにして、C3H10T1/2細胞を、集密した常態になるまで増殖させ、次いで、10日間、48時間ごとに新しい培地及び化合物を再供給しながら、インスリン単独(陰性対照)又はインスリンとリグスチリドとの混合物で、異なる濃度で処理した(表3を参照)。10日間の処理後、細胞をオイルレッドOで以下のように染色した:細胞をPBS中で2回洗浄し、室温で1時間、10%ホルマリンで固定した。ホルマリンの除去後、オイルレッドO染色液(0.5% w/vオイルレッドO原液及び水の3:2混合液)200μlを各ウェルに加えた。細胞を室温で20分間培養し、2倍のPBS中で2回洗浄し、オイルレッドO抽出のためにイソプロパノール300μl/ウェルで10分間培養した。オイルレッドOの定量化は540nmで吸光度を測定することにより行なった(平均OD)。インスリンとリグスチリドとを用いたC3H10T1/2細胞の共処理は、より多いオイルレッド染色量で示されるように、インスリン単独より、脂肪細胞への細胞のより高い分化をもたらす結果になった(表3)。
【0039】
【表3】

【0040】
実施例5:脂肪細胞の分化に対する3−ブチルフタリドの効果
C3H10T1/2細胞を、リグスチリドの代わりに3−ブチルフタリドを用いたことを除いては、実施例4に記載したようにして増殖させ処理した。オイルレッドOアッセイを用いて、脂肪細胞分化の測定を実施例4に記載したようにして行った。インスリンと3−ブチルフタリドとを用いたC3H10T1/2細胞の共処理は、インスリン単独より、脂肪細胞への細胞のより高い分化をもたらす結果になった(表4)。
【0041】
【表4】

【0042】
実施例6:脂肪細胞の分化に対する3−ブチリデンフタリドの効果
C3H10T1/2細胞を、リグスチリドの代わりに3−ブチリデンフタリドを用いたことを除いては、実施例4に記載したようにして増殖させ処理した。オイルレッドOアッセイを用いて、脂肪細胞分化の測定を実施例4に記載したようにして行った。インスリンと3−ブチリデンフタリドとを用いたC3H10T1/2細胞の共処理は、インスリン単独より、脂肪細胞への細胞のより高い分化をもたらす結果になった(表4)。
【0043】
実施例7:脂肪細胞の分化に対するセダノリドの効果
特に明記しない限り、本明細書で使用した3−ブチリデンフタリドは、シグマ、私書箱14508、セント・ルイス、ミズーリ63178、アメリカ合衆国から購入し、約>98%の純度を有していた。
C3H10T1/2細胞を、リグスチリドの代わりにセダノリドを用いたことを除いては、実施例4に記載したようにして増殖させ処理した。オイルレッドOアッセイを用いて脂肪細胞分化の測定を実施例4に記載したようにして行った。インスリンとセダノリドとを用いたC3H10T1/2細胞の共処理は、インスリン単独より、脂肪細胞への細胞のより高い分化をもたらす結果になった(表5)。
【0044】
【表5】

【0045】
実施例8:耐糖能に対するリグスチリドの効果
耐糖能に対するリグスチリドの効果を、C57BLKS/J db/db マウス(PPARγリガンドの効果を決定するために広く使用される重篤な高血糖症を伴った遅発性2型糖尿病モデル)(n=10/グループ)で7日スタディーの試験をした。
【0046】
オスのdb/dbマウスをジャクソン研究所(Jackson Laboratory)〔バー・ハーバー、メイン州、アメリカ合衆国〕から得た。12週令の成長したマウスを実験で使用した。マウスを床敷のあるプラスチックのケージに個別に入れ、標準的なげっ歯類のえさ及びタップ水に自由にアクセスできるようにした。動物飼育室は、温度(24℃)、湿度(55%)及び明かり(12時間の明暗サイクル)について管理された。マウスを無作為に2つの群に分け、1つの群にリグスチリドを用量200mg/体重kg/日で7日間経口投与した。7日間の処置後、えさを与えられたマウス、すなわち、えさを制限されていないマウスの血中グルコース濃度を測定した。5日間の処置の期間後、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行った。OGTTのために、マウスを一晩絶食させ、次いで、1−gグルコース/体重kg溶液を経口投与した。血糖レベルの測定のために、血液サンプルをグルコース投与前及び投与15、30、45、60、90、120、150、180分後に採取し、次いで、血中濃度曲線下面積(AUC)を測定した。血糖をグルコース分析装置〔グルコトレンド・プレミアム、ロシュ・ダイアグノスティクス、ロートクロイツ、スイス〕で測定した。OGTT測定のための血糖レベル及びAUCを表6に示す。えさを与えられたマウス(上記を参照)の血糖レベルは、7日のリグスチリド処置後、著しく低下した。5日のリグスチリド処置後、絶食させたマウス、すなわち、一晩絶食させたマウス(上記を参照)の血糖レベルは、無処置の対照群と比較して著しく減少した。OGTT試験中、リグスチリド処置を施したマウスの血糖レベルは、対照群と比較した時、どの時点でもより低かった。したがって、リグスチリドは5日目にOGTT(1gグルコース/体重kg)のグルコースAUCを著しく減少させた。
【0047】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗糖尿病薬として式(I):
【化1】


〔式中、
点線は場合により結合であり、
がヒドロキシルであるならば、Rはブチル又はブチリルであるが、Rが水素であるならば、Rはブチルであるか、或はR及びRは、一緒になって、場合により、ヒドロキシル若しくはメチルにより置換されている1−ブチリデン、又は3−(α,β−ジメチルアクリリルオキシ)−ペンチリデニルであり、
Xは、X1、X2、X3、X4、及びX5:
【化2】


(式中、
点線が上記式(I)で結合を意味しないならば、Xは、X2、X3又はX5であり、点線が上記式(I)で結合を意味するならば、Xは、X1、X4又はX5であり、
はヒドロキシル又はブチリルであり、そして、
nは1又は2である)よりなる群から選択される残基である〕で表される化合物の使用。
【請求項2】
前記化合物が、(E)−センキュウノリドE、センキュウノリドC、センキュウノリドB、3−ブチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3,6,7−トリヒドロキシ−1(3H)−イソベンゾフラノン、3−ブチル−1(3H)−イソベンゾフラノン、3−ブチルフタリド、3−ブチリデンフタリド、クアングキシノール、リグスチリジオール、センキュウノリドF、3−ヒドロキシ−センキュウノリドA、アンゲロイルセンキュウノリドF、センキュウノリドM、3−ヒドロキシ−8−オキソ−センキュウノリドA、リグスチリド、6,7−ジヒドロ−(6S,7R)−ジヒドロキシリグスチリド、3a,4−ジヒドロ−3−(3−メチルブチリデン)−1(3H)−イソベンゾフラノン、セダノリド、及びクニジリドよりなる群から選択される、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項3】
前記化合物が、リグスチリド、3−ブチルフタリド、3−ブチリデンフタリド、及びセダノリドよりなる群から選択される、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項4】
糖尿病の予防又は治療のための医薬組成物又は食餌療法組成物の製造のための、式(I):
【化3】


〔式中、
点線は場合により結合であり、
がヒドロキシルであるならば、Rはブチル又はブチリルであるが、Rが水素であるならば、Rはブチルであるか、或はR及びRは、一緒になって、場合により、ヒドロキシル若しくはメチルにより置換されている1−ブチリデン、又は3−(α,β−ジメチルアクリリルオキシ)−ペンチリデニルであり、
Xは、X1、X2、X3、X4、及びX5:
【化4】


(式中、
点線が上記式(I)で結合を意味しないならば、Xは、X2、X3又はX5であり、点線が上記式(I)で結合を意味するならば、Xは、X1、X4又はX5であり、
はヒドロキシル又はブチリルであり、そして、
nは1又は2である)よりなる群から選択される残基である〕で表される化合物の使用。
【請求項5】
式(I):
【化5】


〔式中、
点線は場合により結合であり、
がヒドロキシルであるならば、Rはブチル又はブチリルであるが、Rが水素であるならば、Rはブチルであるか、或はR及びRは、一緒になって、場合により、ヒドロキシル若しくはメチルにより置換されている1−ブチリデン、又は3−(α,β−ジメチルアクリリルオキシ)−ペンチリデニルであり、
Xは、X1、X2、X3、X4、及びX5:
【化6】


(式中、
点線が上記式(I)で結合を意味しないならば、Xは、X2、X3又はX5であり、点線が上記式(I)で結合を意味するならば、Xは、X1、X4又はX5であり、
はヒドロキシル又はブチリルであり、そして、
nは1又は2である)よりなる群から選択される残基である〕で表される化合物の有効量含む、糖尿病の治療又は予防に使用する医薬組成物又は食餌療法組成物。
【請求項6】
(E)−センキュウノリドE、センキュウノリドC、センキュウノリドB、3−ブチル−4,5,6,7−テトラヒドロ−3,6,7−トリヒドロキシ−1(3H)−イソベンゾフラノン、3−ブチル−1(3H)−イソベンゾフラノン、3−ブチルフタリド、3−ブチリデンフタリド、クアングキシノール、リグスチリジオール、センキュウノリドF、3−ヒドロキシ−センキュウノリドA、アンゲロイルセンキュウノリドF、センキュウノリドM、3−ヒドロキシ−8−オキソ−センキュウノリドA、リグスチリド、6,7−ジヒドロ−(6S,7R)−ジヒドロキシリグスチリド、3a,4−ジヒドロ−3−(3−メチルブチリデン)−1(3H)−イソベンゾフラノン、セダノリド、及びクニジリドよりなる群から選択される化合物を含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
リグスチリド、3−ブチルフタリド、3−ブチリデンフタリド、及びセダノリドよりなる群から選択される化合物を含む、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
薬学的に許容しうる担体、賦形剤、又は希釈剤を更に含む、請求項5〜7のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
強化食品若しくは飼料、飲料、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、パスタ剤、及び発泡性製剤よりなる群から選択される形態の、請求項5〜8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
哺乳動物における糖尿病の予防又は治療のための方法であって、該方法が、
(a)請求項5〜9のいずれか一項記載の組成物を製造すること、及び
(b)上記組成物の有効量をそれを必要とする哺乳動物に対して投与すること
を含む方法。

【公開番号】特開2012−6923(P2012−6923A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131574(P2011−131574)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【分割の表示】特願2006−529744(P2006−529744)の分割
【原出願日】平成16年5月5日(2004.5.5)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】