説明

糖衣製剤及びその製造方法

【課題】不快な臭いのマスキング能及び防湿性が強い薄層糖衣製剤を簡便に製造する方法の提供。
【解決手段】薬効成分を含む固形組成物と糖衣層とを含む糖衣製剤の製造方法であって、前記糖衣層を、マンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂とを含む糖衣組成物から形成することを特徴とする糖衣製剤の製造方法、並びに、薬効成分を含む固形組成物と糖衣層とを含む糖衣製剤であり、前記糖衣層が、マンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂とを含む糖衣組成物から形成されていることを特徴とする糖衣製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の糖衣組成物により形成された糖衣層を有する糖衣製剤、及び当該糖衣製剤の製造方法に関する。さらに詳しくは、不快な臭いのマスキング及び防湿性に優れ、かつ簡便な製造工程で薄層の糖衣を施した薄層糖衣製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤は、粉末や顆粒等を一定の形状に圧縮した製品形態であり、手軽に持ち歩くことができることや容易に一定量を服用できることから、医薬品、医薬部外品、化粧品、機能性食品及び健康食品等の分野で、最も汎用される剤形である。錠剤には、内容成分の性質や利用目的に応じて、素錠、コーティング錠、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、発泡錠等の種類があり、さまざまな分野で利用されている。
【0003】
コーティング錠は、内容成分の不快な味・臭いのマスキング、湿度等による内容物の変質・劣化の防止、外観・舌触り向上等の目的で、素錠の表面に均一に被膜を施したものである。コーティング錠には主に、糖類を主体とする層を被膜とする糖衣錠と、水溶性高分子又は難水溶性高分子を被膜とするフィルムコーティング錠とがある。
【0004】
糖衣錠は、臭いのマスキング力が強く、耐湿性が高く、かつ、外観が美しいという利点を有する。その反面、ショ糖を主とする多量の糖衣液を用いて液掛け・展延・乾燥を繰り返すことによりコーティングするため、製造操作が煩雑であるという欠点がある。その他にも、割れ・欠けが発生しやすい、高カロリーである、製剤の水分含量が高い、といった欠点もある。一方、フィルムコーティング錠は、少量のコーティング液によりコーティングするため、製造操作が容易である。また、低カロリーであり、割れ・欠けが少ないという利点もある。その反面、耐湿性が低く、不快な臭いのマスキング力が弱いという欠点がある。このように、糖衣錠の性質とフィルムコーティング錠の性質は表裏を成している。
【0005】
そこで、近年、糖衣錠が有する臭いに対する強いマスキング能を維持しつつ、耐湿性が高く、被膜量を少なくした薄層糖衣錠が開発されている。薄層糖衣錠は通常、素錠を順次、プロテクティブコート層、サブコーティング層、カラーリング層、及びポリッシング層で被覆することにより製造される。各層は、白糖を基剤とし、これにゼラチン、アラビアゴム末を結合剤として製したシロップを用い、必要に応じてタルク、沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等の粉末を散布又は懸濁した組成物を用いて形成される。素錠を被覆するプロテクティブコート層は、サブコーティング層やカラーリング層で使用する糖衣液又はシロップ液の水分が、錠剤内部へ移行することを抑制するために形成される。プロテクティブコート層の上面に形成されるサブコーティング層は、中心錠に丸みを与え、被膜強度を上げるために形成される。カラーリング層は、糖成分の緻密な結晶を形成することにより、透気性や透湿性を抑制するために形成される。最後にポリッシング層を形成することにより、錠剤表面の艶出しがなされる。薄層糖衣錠のコーティング被膜層は、糖衣錠と比較して薄いが、このように多層コートとして製造されるため、製造操作の煩雑性が課題である。
【0006】
従来より、より優れたマスキング能や内容物の変質・劣化の防止能を有し、かつより簡便に製造可能なコーティング錠の開発が盛んに行われている。例えば特許文献1には、不快な臭いのマスキング、ウイスカー発生の防止、高水分で分解する薬物の安定化、及び錠剤の小型化を可能にするために、糖質、賦形剤、及び結合剤を含む糖衣液を用いて、素錠重量の5〜60重量%の糖衣で被覆された薄層糖衣錠、並びにその製造方法が開示されている。また、特許文献2には、L−システインを乾式で配合することにより、不快な臭いが低減されたL−システイン配合固形製剤及びその製造方法が開示されている。特許文献3には、臭い、色、味等のマスキング効果を高め、小型化及び製造時間の短縮化を可能にするために、素錠又はフィルムコーティング錠と糖衣層との間に、粉体、結合剤及び10重量%未満の糖質を含有するコーティング層を形成させた糖衣錠及びその製造方法が開示されている。
【0007】
一方で、エリスリトールは甘味が強く、カロリーが低いため、糖衣層の基材として好ましいが、糖衣層を形成しにくく、かつ結晶化しやすい。そこで、エリスリトールを用いて糖衣層を形成する方法として、例えば、特許文献4には、所定の割合でポリビニルアルコール系樹脂をエリスリトールと共存させることによりエリスリトールの結晶化が阻害された糖衣液を用いて、糖衣層を形成させた糖衣錠及びその製造方法が開示されている。また、特許文献5には、エリスリトール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びアラビアガムからなる糖衣液を用いることにより、肌理が非常に滑らかで、素錠との結合性も良好であり、十分な強度を有するノンカロリーの糖衣層を形成できることが開示されている。
【0008】
また、薄層糖衣錠をより簡便に製造する方法として、例えば特許文献6には、ポリエチレングリコールと、プルランと、ポリビニルピロリドン及び/又はコポリビドンとを含む単一の糖衣液で、糖衣層が形成された糖衣錠が開示されている。当該糖衣液でサブコーティング層及びカラーリング層に相当する糖衣層を形成することにより、ポリッシング層が無くても十分な光沢を有し、滑りの良い糖衣錠が製造できる。また、特許文献7には、美しい外観や優れた臭いのマスキング能という従来の糖衣錠が有する利点を維持しつつ、さらに、糖衣層が薄くても充分な強度を有し、製造時間が短く、水に不安定な成分の配合にも適する糖衣錠を製造するための、エリスリトールと、乳酸カルシウム、キシリトール、及びクエン酸の少なくとも1種と、炭酸カルシウム及びタルクの少なくとも1種と、プルランとを、特定の配合量で含む糖衣液、及び当該糖衣液でコーティングされた薄層糖衣錠が開示されている。
【0009】
その他、フィルムコーティング錠のマスキング能を改善する方法として、例えば特許文献8には、L−システイン又はその塩を含有する固形製剤に、ポリビニルアルコール系樹脂の部分けん化物を含有するコーティング被膜を施した被覆固形製剤が開示されている。また、特許文献9には、ポリビニルアルコール系樹脂を含有し、かつ素錠に対して10質量%以下の量で形成されてなるフィルムコーティング層を有する、素錠の臭いが軽減されたフィルムコーティング錠剤、及び当該フィルムコーティング層を利用した臭いのマスキング方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−179559号公報
【特許文献2】特開2003−155232号公報
【特許文献3】特開2004−155656号公報
【特許文献4】特許第4391732号公報
【特許文献5】特開2004−137224号公報
【特許文献6】特開2004−155775号公報
【特許文献7】特開2009−73814号公報
【特許文献8】特開2008−201711号公報
【特許文献9】特開2008−260778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、臭いのマスキング能、防湿性、及び製造容易性の全てを十分に満足させる薄層糖衣錠は、未だ開発されていなかった。
本発明は、不快な臭いをマスキングし、防湿性に優れ、かつ製造操作が容易な薄層糖衣製剤及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、斯かる実状に鑑み鋭意研究を行った結果、マンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂とを含む糖衣組成物を用いることにより、素錠等の薬効成分を含む固形組成物を一層のみコーティングした場合であっても、不快な臭いのマスキング能が高く、防湿性に優れた糖衣製剤が製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(13)を提供するものである。
(1) 薬効成分を含む固形組成物と糖衣層とを含む糖衣製剤の製造方法であって、
前記糖衣層を、マンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂とを含む糖衣組成物から形成することを特徴とする糖衣製剤の製造方法。
(2) 前記糖衣層が、薬効成分を含む固形組成物を前記糖衣組成物により被覆することによって形成することを特徴とする前記(1)に記載の糖衣製剤の製造方法。
(3) 前記糖衣組成物の前記糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂の質量比が15:2〜15:20であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の糖衣製剤の製造方法。
(4) 前記糖衣組成物の前記糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂の質量比が15:2.5〜15:8であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の糖衣製剤の製造方法。
(5) スプレー法により前記糖衣組成物を一層コーティングすることにより、前記糖衣層を形成することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の糖衣製剤の製造方法。
(6) 薬効成分を含む固形組成物と糖衣層とを含む糖衣製剤であり、
前記糖衣層が、マンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂とを含む糖衣組成物から形成されていることを特徴とする糖衣製剤。
(7)前記糖衣組成物の前記糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂の質量比が15:2〜15:20であることを特徴とする前記(6)に記載の糖衣製剤。
(8) 前記糖衣組成物の前記糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂の質量比が15:2.5〜15:8であることを特徴とする前記(6)に記載の糖衣製剤。
(9) 前記糖衣層が、前記糖衣組成物をスプレー法により一層コーティングすることによって形成されたことを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか一つに記載の糖衣製剤。
(10) 錠剤、顆粒剤、又は細粒剤であることを特徴とする前記(6)〜(9)のいずれか一つに記載の糖衣製剤。
(11) マンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコールと、前記糖アルコールの0.13倍量(質量比)以上のポリビニルアルコール系樹脂とを含むことを特徴とする糖衣組成物。
(12) 前記(11)に記載の糖衣組成物により被覆されていることを特徴とする糖衣製剤。
(13) 錠剤、顆粒剤、又は細粒剤であることを特徴とする前記(12)に記載の糖衣製剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明の糖衣製剤の製造方法により、不快な臭いに対するマスキング能及び防湿性の高い糖衣製剤を、少ない工程で簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】25℃75%RH条件下に48時間曝した後の実施例1の錠剤の状態を示した図である。
【図2】25℃75%RH条件下に48時間曝した後の比較例1の錠剤の状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
なお、本発明及び本願明細書において、糖衣製剤とは、薬効成分を含む固形組成物が糖衣層で被覆された製剤を意味する。糖衣製剤には、例えば、素錠が糖衣層で被覆された糖衣錠、素顆粒が糖衣層で被覆された糖衣顆粒剤、細粒核が糖衣層で被覆された糖衣細粒剤等が挙げられる。また、素錠、素顆粒、及び細粒核等の薬効成分を含む固形組成物を、「素錠等」ということがある。
【0017】
<糖衣製剤の製造方法>
本発明の糖衣製剤の製造方法(以下、「本発明の製造方法」ということがある。)は、薬効成分を含む固形組成物と糖衣層とを含む糖衣製剤の製造方法であって、前記糖衣層を、マンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂とを含む糖衣組成物から形成することを特徴とする。特定の糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂とを含む糖衣組成物を用いることにより、少ない被膜量で糖衣層を形成した場合であっても、マスキング能が高い糖衣製剤を製造することができる。さらに、当該糖衣組成物中の特定の糖アルコール及びポリビニルアルコール系樹脂の配合比を適宜調整することにより、マスキング能のみならず耐湿性にも優れた糖衣製剤を製造することができる。よって、本発明の製造方法を用いることによって、不快な臭いがマスキングされ、かつ吸湿による内容物の変質・劣化が防止された糖衣製剤も、容易に製造することができる。
【0018】
本発明の製造方法に用いられる糖衣組成物は、マンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコール(以下、「糖アルコール(Man/ERT)」と記載することがある。)とポリビニルアルコール系樹脂とを含有する。当該糖衣組成物は、マンニトールとポリビニルアルコール系樹脂とを含有するものであってもよく、エリスリトールとポリビニルアルコール系樹脂とを含有するものであってもよく、マンニトールとエリスリトールとポリビニルアルコール系樹脂とを含有するものであってもよい。なお、以下、「糖アルコール(Man/ERT)の含有量」とは、マンニトールの含有量とエリスリトールの含有量の総和を意味する。
【0019】
本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール部分けん化物(けん化度:97mol%未満)、ポリビニルアルコール完全けん化物(けん化度:97mol%以上)、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。本発明において、いずれを用いてもよいが、ポリビニルアルコール部分けん化物であることが好ましく、本発明において用いられるポリビニルアルコールのけん化度は、特に限定されるものではないが、78〜96mol%であることが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法に用いられる糖衣組成物中のマンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコール(以下、「糖アルコール(Man/ERT)」と記載することがある。)とポリビニルアルコール系樹脂との含有量比は、特に限定されるものではない。高いマスキング能を発揮し得るため、当該糖衣組成物には、糖アルコール(Man/ERT)の0.13倍量(質量比)以上のポリビニルアルコール系樹脂が含まれていることが好ましい。中でも、高マスキング能に加えて、耐湿性も改善し得るため、糖アルコール(Man/ERT)とポリビニルアルコール系樹脂の質量比は、15:2〜15:20であることが好ましく、15:2〜15:15であることがより好ましく、15:2〜15:8であることがさらに好ましく、15:2.5〜15:8であることがよりさらに好ましく、15:4〜15:8が特に好ましく、15:4〜15:6が最も好ましい。
【0021】
本発明の製造方法に用いられる糖衣組成物の糖アルコール(Man/ERT)含有量は、糖衣用組成物中の固形分として5〜90質量%であることが好ましく、20〜90質量%であることがより好ましく、40〜86質量%であることがさらに好ましく、65〜86質量%であることがよりさらに好ましい。
【0022】
本発明の製造方法に用いられる糖衣組成物のポリビニルアルコール系樹脂含有量は、糖衣用組成物中の固形分として1〜60質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましく、5〜40質量%であることがさらに好ましく、8〜35質量%であることがよりさらに好ましく、14〜35質量%であることが特に好ましい。
【0023】
本発明の製造方法に用いられる糖衣組成物は、マンニトール又はエリスリトール並びにポリビニルアルコール系樹脂の他に、少ない被覆量でコーティングした後の防臭性(マスキング能)を損なわない範囲で、一般的に用いられる各種添加剤を適宜配合することができる。当該添加剤としては、例えば、結合剤、賦形剤、香料、フレーバー、着色料、甘味料、酸味剤等が挙げられる。
【0024】
結合剤としては、例えば、アラビアゴム末、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルファー化デンプン、エチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、グリセリン、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、ゼラチン、低置換度ヒドロキシピロピルセルロース、デキストリン、トウモロコシデンプン、トラガント、トラガント末、乳糖、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、ヒドロキシプロピルスターチ、部分アルファー化デンプン、プルラン、粉末セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000、マクロゴール35000、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ポリオキシエチレン〔105〕ポリオキシプロピレン〔5〕グリコール等が挙げられる。
【0025】
賦形剤としては、例えば、カオリン、含水二酸化ケイ素、乾燥水酸化アルミニウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、乳酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
香料及びフレーバーとしては、例えば、ジャコウ、シベット、カストリウム、アンバーグリス等の天然動物性香料;ウイキョウ精油、オレンジ精油、カルダモン精油、クミン精油、ケイヒ精油、コリアンダー精油、ジャスミン精油、スペアミント精油、ゼラニウム精油、チョウジ精油、バニラ精油、ハッカ精油、ヒノキ精油、白檀精油、ベルガモット精油、ライム精油、ラベンダー精油、レモン精油、レモングラス精油、ローズ精油、ローズマリー精油等の植物性香料;メントール等の合成香料等を挙げることができる。
【0027】
着色料としては、例えば、赤米色素、ウコン色素、カラメル、クチナシ色素、クロロフィル色素、コチニール色素、ベニバナ色素、マリーゴールド色素、紫イモ色素、ルチン等の天然食用色素;赤色2号、3号、40号、102号、104号、106号、黄色4号、5号、青色1号、2号等の合成系食用色素;黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、酸化チタン等が挙げられる。
【0028】
甘味料としては、具体的には、アスパルテーム、アセスルファムK、グリチルリチン二カリウム、サッカリン、スクラロース、ステビア、ソーマチン等が挙げられる。
また、酸味剤としては、具体的には、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0029】
本発明の糖衣製剤の製造方法において被覆される素錠等は、製剤化されるものであれば特に限定されるものではないが、当該糖衣組成物により形成される糖衣層は優れたマスキング能を有するため、不快な臭いを有する内容物を含む固形組成物であることが好ましい。不快な臭いを有する内容物としては、例えば、ビタミンB類(塩酸チアミン、硝酸チアミン、塩酸フルスルチアミン等)、劣化・分解等により硫化水素を発生する化合物(例えば、L−システイン等)、天然に存在する素材の全部又は一部をそのまま又は加工処理し、薬用に供しうるもの(例えば、アカメガシワ、アセンヤク、アロエ、イカリソウ、イチョウ、ウイキョウ、ウバイ、ウヤク、ウワウルシ、ウコン、エイジツ、エゾウコギ、エンゴサク、エンメイソウ、オウギ、オウゴン、オウセイ、オウバク、オウヒ、オウレン、オンジ、カシュウ、ガジュツ、カイクジン、カイバ、カッコン、カノコソウ、カミツレ、ガラナ、カンゾウ、キキョウ、キクカ、キジツ、キョウニン、クコシ、ケイガイ、ケイヒ、ケツメイシ、ゲンチアナ、ゲンノショウコ、コウカ、コウジン、コウボク、ゴオウ、ゴカヒ、ゴシツ、ゴシュユ、ゴミシ、サイコ、サイシン、サイム、サラシア、サルビア、サンキライ、サンザシ、サンシシ、サンシュユ、サンショウ、サンソウニン、サンヤク、ジオウ、シベット、シャクヤク、ジャショウシ、シャゼンソウ、ジュウヤク、シュクシャ、ショウキョウ、ショウズク、ジョテイシ、ジリュウ、シンイ、セネガ、センキュウ、ゼンコ、センブリ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソヨウ、ダイオウ、タイソウ、チョウジ、チョウトウコウ、チンピ、トウガラシ、トウキ、トウジン、トウチュウカソウ、トウニン、トウヒ、トコン、トシシ、トチュウ、ナンテンジツ、ナンバンゲ、ニクジュヨウ、ニンジン、ニンドウ、ニンニク、バクモンドウ、ハマボウフウ、ハンゲ、ハンピ、ビャクジュツ、ブクリョウ、ブルーベリー、ボウイ、ホコツシ、ボタンピ、ホップ、マオウ、モクテンリョウ、ムイラプアマ、モッコウ、ヨクイニン、リュウガンニク、リュウタン、ロートコン、ローズマリー、動物の肝臓、心臓若しくは胎盤等)等が挙げられる。
【0030】
また、当該糖衣組成物により形成される糖衣層は、耐湿性にも優れているため、水分により分解されやすい内容物を含む固形組成物であってもよい。水分により分解されやすい内容物としては、例えば、ビタミンA類、ビタミンB類(塩酸ジセチアミン、塩酸チアミン、塩酸ピリドキシン、オクトチアミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、メコバラミン、チアミンジスルフィド、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、フルスルチアミン、ベンフォチアミン、酪酸リボフラビン、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、リン酸ピリドキサール等)、ビタミンC類(アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸ナトリウム等)、ビタミンD類、ビタミンE類(コハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸d−α−トコフェロールカルシウム、酢酸dl−α−トコフェロール、酢酸d−α−トコフェロール等)、ビタミンK類、ビタミンP類、さらにアスピリン、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アセトアミノフェン、イソプロピルアンチピリン、イブプロフェン、インドメタシン、ウルソデオキシコール酸、エテンザミド、塩化リゾチーム、L−システイン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸クロペラスチン、塩酸フェニルプロパノールアミン、塩酸ノスカピン、dl−塩酸メチルエフィエドリン、オロチン酸、ガンマーオリザノール、グアイフェネシン、グルクロノラクトン、グルクロン酸アミド、ケトプロフェン、L−システイン、シメチジン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ニコチン酸アミド、ニコチン酸、ノスカピン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸カルシウムタイプS、パントテン酸ナトリウム、ビオチン、ファモチジン、フマル酸クレマスチン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、dl−マレイン酸クロルフェニラミン、メキタジン、葉酸、リン酸ジヒドロコデイン、リン酸コデイン等が挙げられる。
【0031】
本発明の製造方法は、糖衣層を、前記糖衣組成物から形成することを特徴とする。例えば、素錠等を直接、前記糖衣組成物で被覆することにより、糖衣層を形成することができる。当該糖衣組成物の被覆量は特に限定されるものではないが、素錠等よりも少量であることが好ましく、素錠等の60質量%以下であることがより好ましく、素錠等の10〜50質量%であることがさらに好ましい。
【0032】
当該糖衣組成物で被覆する方法は、特に限定されるものではなく、液体組成物を固形物に被覆する際に用いられる手法の中から適宜選択して用いることができる。例えば、滴下法又はスプレー法で行ってもよく、糖衣パンを用いてもよく、当該糖衣組成物を素錠に手掛けしてもよい。本発明においては、少量の被覆量で素錠表面に薄い糖衣層を形成できることから、スプレー法で行うことが好ましい。
【0033】
本発明の製造方法において製造される糖衣製剤は、素錠等と、当該素錠を被覆する当該糖衣組成物により形成された糖衣層のみからなるものであることが好ましい。素錠等の被覆を、当該糖衣組成物からなる一層のみとすることにより、被覆工程を簡略化し、より容易かつ低コストで、糖衣製剤を製造することができる。
【0034】
本発明の製造方法において用いられる糖衣組成物は、非常に高いマスキング能を発揮するため、従来の薄層糖衣錠のようなプロテクティブコート層を有さずとも、素錠等の臭いがマスキングされた糖衣製剤を製造することができる。また、当該糖衣組成物により形成された糖衣層の表面は、凹凸が少なく、十分な光沢を有し、滑りが良い。このため、当該糖衣層の表面にさらにポリッシング層を形成せずとも、外観の良好な糖衣製剤を得ることができる。つまり、当該糖衣組成物を用いることにより、糖衣層を多層形成することなく、一層のみを形成することによって、高いマスキング能を有し、かつ外観も良好な糖衣製剤を製造することができる。
【0035】
なお、本発明の製造方法においては、素錠等に代えて、素錠等をプロテクティブコート層で被覆させたフィルムコーティング錠を、前記糖衣組成物で被覆させ、糖衣層を形成させてもよい。この場合にも、従来の薄層糖衣錠をはじめとする糖衣製剤の製造工程のうち、ポリッシング層形成工程等を省略することができる。
【0036】
その他、本発明の製造方法は、前記糖衣組成物により糖衣層を形成する方法であればよく、得られた糖衣製剤は、前記糖衣組成物以外の糖衣組成物による糖衣層も備える多層コート錠であってもよい。例えば、素錠をプロテクティブコート層で被覆した後、さらに前記糖衣組成物以外の糖衣組成物からなるサブコーティング層で被覆させた錠剤を、前記糖衣組成物で被覆させ、糖衣層を形成させてもよい。
【0037】
本発明の製造方法により製造された糖衣製剤(本発明の糖衣製剤)は、他の製造方法により製造された糖衣製剤と同様、医薬品、医薬部外品、化粧品、機能性食品、健康食品、一般食品等の種々の用途に利用することができる。
【0038】
また、本発明の製造方法に用いられる糖衣組成物は、その他の糖衣組成物と同様に、錠剤以外にも、顆粒剤や細粒剤の糖衣を形成するためにも用いることができる。
【実施例】
【0039】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
L−システイン(妙中鉱業株式会社製)120g、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成ケミカルズ株式会社製)300g、バレイショデンプン(日澱化學株式会社製)132gを、流動層造粒機(MP−01、株式会社パウレック社製)を用いて、10%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SL、日本曹達株式会社製)水溶液180gを噴霧することにより、流動層造粒した。その後、篩(30メッシュ)を用いて整粒し、整粒末を得た。得られた整粒末536gに、二酸化ケイ素(マイコンF、富田製薬株式会社製)2.82g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)2.82gをビニール袋中で混合し、得られた混合末をロータリー式打錠機(株式会社畑鉄工所社製)で、1錠当りの重量120mg、直径7mmφ、厚さ3.8mmになるように製錠し、素錠を得た。素錠の成分組成(8錠中)を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
得られた素錠100gに、D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g及びポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)32gを精製水648gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:4)を、コーティング機(ドリアコーター DRC−200、株式会社パウレック製)を用いて、素錠重量の50質量%コーティングし、薄層の糖衣錠を得た。
【0043】
[比較例1]
エリスリトール(日研化学株式会社製)50g、タルク(株式会社勝光山鉱業所社製)28g、結晶セルロース(セオラスPH−F20JP)10g、アラビアゴム末(三栄薬品貿易株式会社製)12gを精製水120gに溶解、懸濁した糖衣液を用いた以外は、実施例1と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0044】
[実施例2]
L−システイン(妙中鉱業株式会社製)312.5g、結晶セルロース(セオラスPH−101、旭化成ケミカルズ株式会社製)781.25g、バレイショデンプン(日澱化學株式会社製)343.75gを、流動層造粒機(FLO−25、フロイント産業株式会社製)を用いて、10%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−SL、日本曹達株式会社製)水溶液468.8gを噴霧することにより、流動層造粒した。(素錠の成分組成は実施例1、表1と同じである。)その後、篩(30メッシュ)を用いて整粒し、整粒末を得た。得られた整粒末1291gに、二酸化ケイ素(マイコンF、富田製薬株式会社製)6.79g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)6.79gをビニール袋中で混合し、得られた混合末をロータリー式打錠機(株式会社畑鉄工所社製)で、1錠当りの重量120mg、直径7mmφ、厚さ3.8mmになるように製錠し、素錠を得た。
【0045】
得られた素錠200gに、D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)20gを精製水560gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:2.5)を、コーティング機(ドリアコーター DRC−200、株式会社パウレック製)を用いて、素錠重量の50質量%コーティングし、薄層の糖衣錠を得た。
【0046】
[実施例3]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)240g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)64gを精製水1216gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:4)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0047】
[実施例4]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)48gを精製水672gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:6)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0048】
[実施例5]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)64gを精製水736gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:8)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0049】
[実施例6]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)20gを精製水560gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:2.5)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0050】
[実施例7]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)32gを精製水608gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:4)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0051】
[実施例8]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)48gを精製水672gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:6)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0052】
[実施例9]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)64gを精製水736gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:8)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0053】
[実施例10]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)16gを精製水544gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:2)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0054】
[実施例11]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)96gを精製水864gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:12)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0055】
[実施例12]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)120gを精製水960gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:15)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0056】
[実施例13]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)160gを精製水2520gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:20)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0057】
[実施例14]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)16gを精製水544gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:2)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0058】
[実施例15]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)96gを精製水864gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:12)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0059】
[実施例16]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)120gを精製水960gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:15)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0060】
[実施例17]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)160gを精製水2520gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:20)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0061】
[比較例2]
実施例2の素錠100gに、ポリビニルアルコール配合フィルムコーティング用組成物(OPADRY AMB、日本カラコン株式会社)の15%水溶液を、コーティング機(ドリアコーター DRC−200、株式会社パウレック製)を用いて、素錠重量の5質量%コーティングし、フィルムコーティング錠を得た。
【0062】
[比較例3]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)8gを精製水512gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:1)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0063】
[比較例4]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)200gを精製水2880gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:25)を用いた以外は、実施例2と同様にコーティングを実施したが、被膜形成できず薄層の糖衣錠を得られなかった。
【0064】
[比較例5]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)8gを精製水512gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:1)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0065】
[比較例6]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)200gを精製水2880gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:25)を用いた以外は、実施例2と同様にコーティングを実施したが、被膜形成できず薄層の糖衣錠を得られなかった。
【0066】
[不快臭のマスキング評価:既存技術との比較]
実施例1及び比較例1の薄層糖衣錠について、錠剤50錠を規格瓶(6K)に入れた後、開封状態でアルミ袋に入れて密封した。その後、60℃に1日保存し、アルミ袋内で発生したL−システイン由来の不快臭(硫化水素)を、北川式ガス検知管(光明理化学工業社製)を用いて測定し、臭いマスキング効果を評価した。
【0067】
<パラメーター>
硫化水素発生量(ppm):アルミ袋内に含まれる硫化水素濃度
【0068】
<結果>
表2に示すように、比較例1の一層コーティングの薄層糖衣錠は、不快臭(硫化水素)が発生し、マスキング効果が不十分であった。これに対して、実施例1の一層コーティングの薄層糖衣錠では、不快臭が全くなかった。
【0069】
【表2】

【0070】
[不快臭のマスキング評価:重量比の検討]
実施例2の素錠及び実施例2〜17及び比較例2、3、5の薄層糖衣錠について、錠剤50錠を規格瓶(6K)に入れた後、開封状態でアルミ袋に入れて密封した。その後、60℃に1日又は1週間保存し、アルミ袋内で発生したL−システイン由来の不快臭(硫化水素)を北川式ガス検知管(光明理化学工業社製)にて測定し、臭いマスキング効果を評価した。
【0071】
<パラメーター>
硫化水素発生量(ppm):アルミ袋内に含まれる硫化水素濃度
【0072】
<結果>
実施例2〜9の薄層糖衣錠について、60℃に1日保存した結果を表3に、60℃に1週間保存した結果を表4に示した。また、比較例2、3及び実施例10〜13の薄層糖衣錠について、60℃に1週間保存した結果を表5に示し、比較例5及び実施例14〜17の薄層糖衣錠について、60℃に1週間保存した結果を表6に示した。表2〜6中、実施例番号又は比較例番号の下の括弧内は、使用した糖衣液のD−マンニトール又はエリスリトールとポリビニルアルコール部分けん化物の重量比([D−マンニトール又はエリスリトールの含有量]:[ポリビニルアルコール部分けん化物の含有量])を表す。D−マンニトール又はエリスリトールとポリビニルアルコール部分けん化物の重量比が15:2〜20の糖衣液を用いてコーティングした薄層糖衣錠(実施例2〜17)は、D−マンニトール又はエリスリトールとポリビニルアルコール部分けん化物の重量比が15:1の糖衣液を用いてコーティングした薄層糖衣錠(比較例2〜5)よりも、不快臭(硫化水素)が顕著に低減していた。中でも、D−マンニトール又はエリスリトールとポリビニルアルコール部分けん化物の重量比が15:2.5〜15の糖衣液を用いてコーティングした薄層糖衣錠(実施例2〜9、11、12、15、16)は、不快臭(硫化水素)が全くない、若しくは大きく低減されていた。これらの結果から、本発明の製造方法により、不快臭がマスキングされた薄層糖衣錠を製造できることが明らかである。
【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
【表6】

【0077】
[耐湿性評価:既存技術との比較]
実施例1及び比較例1の薄層糖衣錠について、錠剤25錠を25℃75%RH条件下に曝し、48時間後の重量変化によって耐湿性を評価した。
【0078】
<パラメーター>
水の取込み率(%)=(B−A)/A×100
水の取込み率(%):錠剤25錠が吸湿した水分量
A:錠剤25錠の吸湿前重量合計
B:錠剤25錠の吸湿後重量合計
【0079】
<結果>
表7及び図1、2に示すように、比較例1の薄層糖衣錠は、吸湿により錠剤が割れ、高い吸湿性を示したのに対し、実施例1の薄層糖衣錠は吸湿量が少なく、割れ等の外観上の変化も観察されなかった。これらの結果から、本発明の製造方法により、高い耐湿性を有する薄層糖衣錠を製造できることが明らかである。
【0080】
【表7】

【0081】
[耐湿性評価:重量比の検討]
実施例2の素錠及び実施例2〜17及び比較例2、3、5の薄層糖衣錠について、錠剤25錠を25℃75%RH条件下に曝し、48時間後の重量変化によって耐湿性を評価した。
【0082】
<パラメーター>
水の取込み率(%)=(B−A)/A×100
水の取込み率(%):錠剤25錠が吸湿した水分量
A:錠剤25錠の吸湿前重量合計
B:錠剤25錠の吸湿後重量合計
【0083】
<結果>
実施例2〜9の薄層糖衣錠の水の取込み率の測定結果を表8に、比較例2、3及び実施例10〜13の薄層糖衣錠の水の取込み率の測定結果を表9に、比較例5及び実施例14〜17の薄層糖衣錠の水の取込み率の測定結果を表10に、それぞれ示す。表8〜10中、実施例番号又は比較例番号の下の括弧内は、使用した糖衣液のD−マンニトール又はエリスリトールとポリビニルアルコール部分けん化物の重量比([D−マンニトール又はエリスリトールの含有量]:[ポリビニルアルコール部分けん化物の含有量])を表す。この結果、D−マンニトール又はエリスリトールとポリビニルアルコール部分けん化物の重量比が15:2〜15:20にてコーティングした薄層糖衣錠(実施例2〜17)は、いずれも水の取込み率が2%以下であり、吸湿量が非常に低かった。特に、表8に示すように、D−マンニトール又はエリスリトールとポリビニルアルコール部分けん化物の重量比が15:2.5〜8にてコーティングした薄層糖衣錠(実施例2〜9)は、実施例2の素錠に比べ吸湿量が顕著に少なかった。これらの結果から、本発明の製造方法により、高い耐湿性を有する薄層糖衣錠を製造できることが明らかである。
【0084】
【表8】

【0085】
【表9】

【0086】
【表10】

【0087】
[比較例7]
キシリトール(東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)48gを精製水672gに溶解した糖衣液(キシリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:6)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0088】
[比較例8]
マルチトール(東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)32gを精製水608gに溶解した糖衣液(マルチトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:4)を用いた以外は、実施例2と同様にして、コーティングを実施したが、被膜形成できず薄層の糖衣錠を得られなかった。
【0089】
[比較例9]
マルチトール(東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)120gを精製水960gに溶解した糖衣液(マルチトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:15)を用いた以外は、実施例2と同様にして、コーティングを実施したが、被膜形成できず薄層の糖衣錠を得られなかった。
【0090】
[不快臭のマスキング評価:キシリトールを用いた場合]
比較例7の薄層糖衣錠について、実施例2と同様にして、60℃に1週間保存し、硫化水素発生量を測定し、臭いマスキング効果を評価した。
硫化水素発生量の測定結果を表11に示す。糖衣液のキシリトールとポリビニルアルコール部分けん化物の重量比が15:6であった比較例7の薄層糖衣錠は、硫化水素発生量が10ppm以上であり、臭いマスキング効果は観察されなかった。
【0091】
【表11】

【0092】
[耐湿性評価:キシリトールを用いた場合]
比較例7の薄層糖衣錠について、実施例2と同様にして、錠剤25錠を25℃75%RH条件下に曝し、48時間後の重量変化によって耐湿性を評価した。
水の取込み率の測定結果を表12に示す。糖衣液のキシリトールとポリビニルアルコール部分けん化物の重量比が15:6であった比較例7の薄層糖衣錠は、水の取込み率が3%以上であり、耐湿性に劣っていた。
【0093】
【表12】

【0094】
[実施例18]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール完全けん化物(和光純薬工業株式会社製)32gを精製水608gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール完全けん化物=15:4)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0095】
[実施例19]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(大同化成工業株式会社製)32gを精製水608gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体=15:4)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0096】
[実施例20]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール完全けん化物(和光純薬工業株式会社製)32gを精製水608gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール完全けん化物=15:4)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0097】
[実施例21]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー(BASF社製)32gを精製水608gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー=15:4)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0098】
[実施例22]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(大同化成工業株式会社製)32gを精製水608gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体=15:4)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0099】
[不快臭のマスキング評価:各種ポリビニルアルコール系樹脂を用いた場合]
実施例18〜22の薄層糖衣錠について、実施例2と同様にして、60℃に1週間保存し、硫化水素発生量を測定し、臭いマスキング効果を評価した。
硫化水素発生量の測定結果を表13に示す。表13中、「Man」はD−マンニトール、「ERT」はエリスリトール、「完全けん化物」はポリビニルアルコール完全けん化物、「共重合体」はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、「グラフトコポリマー」はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを、それぞれ示す。マンニトール又はエリスリトールと、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーとを含む糖衣液を用いた実施例18〜22の薄層糖衣錠は、いずれも硫化水素発生量が5ppm以下と非常に低く、臭いマスキング効果が高かった。
【0100】
【表13】

【0101】
[耐湿性評価:各種ポリビニルアルコール系樹脂を用いた場合]
実施例18〜22の薄層糖衣錠について、実施例2と同様にして、錠剤25錠を25℃75%RH条件下に曝し、48時間後の重量変化によって耐湿性を評価した。
水の取込み率の測定結果を表14に示す。マンニトール又はエリスリトールと、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、又はポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーとを含む糖衣液を用いた実施例18〜22の薄層糖衣錠は、いずれも水の取込み率が2%以下と非常に低く、耐湿性が良好であった。
【0102】
【表14】

【0103】
[実施例23]
ニンニク抽出エキス(自家調製)90g、ニンジン乾燥エキス(日本粉末薬品株式会社製)27g、ゴオウ末(三星製薬株式会社製)0.3g、シベット散(松浦薬業株式会社製)2.25g、ロクジョウ末(日本粉末薬品株式会社製)4.5g、トシシ乾燥エキス(アルプス薬品工業株式会社製)3g、イカリソウ(アルプス薬品工業株式会社製)0.3g、肝臓分解エキス(日水製薬株式会社製)15g、チアミン塩化物塩酸塩(日本バルク薬品株式会社製)3g、ベンフォチアミン(金剛化学株式会社製)3g、リボフラビンリン酸エステルナトリウム(DSMニュートリションジャパン株式会社製)0.6g、ピリドキシン塩酸塩(第一ファインケミカル株式会社製)3g、シアノコバラミン(サノフィ・アベンティス株式会社製)0.003g、アスコルビン酸カルシウム(武田薬品工業株式会社製)15g、酢酸d−α−トコフェロール(理研ビタミン株式会社製)6g、ニコチン酸アミド(ロンザジャパン株式会社製)3g、パントテン酸カルシウム(武田薬品工業株式会社製)3g、葉酸(DSMニュートリションジャパン株式会社製)0.06g、 結晶セルロース(セオラスPH−102、旭化成ケミカルズ株式会社製)499g、クロスカルメロースナトリウム(FMC社製)30gを、加水混合機(PM−5W、株式会社菊水製作所製)を用いて練合し、流動層造粒機(MP−01、株式会社パウレック社製)を用いて乾燥し、造粒した。その後、篩(30メッシュ)を用いて整粒し、整粒末を得た。得られた整粒末673gに、二酸化ケイ素(マイコンF、富田製薬株式会社製)8.55g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製)2.85gをビニール袋中で混合し、得られた混合末をロータリー式打錠機(株式会社畑鉄工所社製)で、1錠当りの重量120mg、直径7mmφ、厚さ3.8mmになるように製錠し、素錠を得た。素錠の成分組成(20錠中)を表15に示す。
【0104】
【表15】

【0105】
得られた素錠100gに、D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)32gを精製水608gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:4)を、コーティング機(ドリアコーター DRC−200、株式会社パウレック製)を用いて、素錠重量の50質量%コーティングし、薄層の糖衣錠を得た。
【0106】
[実施例24]
エリスリトール(日研化学株式会社製)120g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)32gを精製水608gに溶解した糖衣液(エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=15:4)を用いた以外は、実施例23と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0107】
[比較例10]
実施例23の素錠100gに、ポリビニルアルコール配合フィルムコーティング用組成物(OPADRY AMB、日本カラコン株式会社)の15%水溶液を、コーティング機(ドリアコーター DRC−200、株式会社パウレック製)を用いて、素錠重量の5質量%コーティングし、フィルムコーティング錠を得た。
【0108】
[不快臭のマスキング評価:素錠が硫化水素以外の臭いを有する原料を含む場合]
実施例23の素錠、比較例10のフィルムコーティング錠、並びに実施例23及び24の薄層糖衣錠について、錠剤50錠をポリ容器に入れた後、閉栓した。その後、60℃に1週間保存し、開栓後の臭いの強さをパネラー5名にて官能評価した。臭いの強さを表16に示す4段階にてポイント化した。
【0109】
<パラメーター>
臭いの程度:官能評価による臭いの強さ
【0110】
【表16】

【0111】
<結果>
官能評価の結果を表17に示す。比較例10のポリビニルアルコール配合フィルムコーティング用組成物によるフィルムコーティング錠は、素錠に含まれる原料由来の臭いがはっきりとしていたが、実施例23及び24の薄層糖衣錠では、ほとんど臭いがなかった。
【0112】
【表17】

【0113】
[耐湿性評価:素錠が硫化水素以外の臭いを有する原料を含む場合]
実施例23の素錠、比較例10のフィルムコーティング錠、並びに実施例23及び24の薄層糖衣錠について、実施例2と同様にして、錠剤25錠を25℃75%RH条件下に曝し、48時間後の重量変化によって耐湿性を評価した。
【0114】
<結果>
水の取込み率の測定結果を表18に示す。比較例10のポリビニルアルコール配合フィルムコーティング用組成物によるフィルムコーティング錠は、素錠とほぼ同程度の水分を吸湿していたが、実施例23及び24の薄層糖衣錠は、いずれも水の取込み率が0.5%以下と非常に低く、耐湿性が良好であった。
【0115】
【表18】

【0116】
[実施例25]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)90g、エリスリトール(日研化学株式会社製)30g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)32gを精製水608gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=11.25:3.75:4)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0117】
[実施例26]
D−マンニトール(マンニット−P、東和化成工業株式会社製)30g、エリスリトール(日研化学株式会社製)90g、ポリビニルアルコール部分けん化物(ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業株式会社製)32gを精製水608gに溶解した糖衣液(D−マンニトール:エリスリトール:ポリビニルアルコール部分けん化物=3.75:11.25:4)を用いた以外は、実施例2と同様にして、薄層の糖衣錠を得た。
【0118】
[不快臭のマスキング評価:D−マンニトールとエリスリトールを併用した場合]
実施例25及び26の薄層糖衣錠について、実施例2と同様にして、60℃に1週間保存し、硫化水素発生量を測定し、臭いマスキング効果を評価した。
硫化水素発生量の測定結果を表19に示す。表19中、実施例番号の下の括弧内は、使用した糖衣液のD−マンニトールとエリスリトールとポリビニルアルコール部分けん化物の重量比([D−マンニトールの含有量]:[エリスリトールの含有量]:[ポリビニルアルコール部分けん化物の含有量])を表す。実施例25及び26の薄層糖衣錠は、いずれも硫化水素発生量が1ppm以下と非常に低く、臭いマスキング効果が高かった。
【0119】
【表19】

【0120】
[耐湿性評価:D−マンニトールとエリスリトールを併用した場合]
実施例25及び26の薄層糖衣錠について、実施例2と同様にして、錠剤25錠を25℃75%RH条件下に曝し、48時間後の重量変化によって耐湿性を評価した。
水の取込み率の測定結果を表20に示す。実施例25及び26の薄層糖衣錠は、いずれも水の取込み率が1%以下と非常に低く、耐湿性が良好であった。
【0121】
【表20】

【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の糖衣製剤の製造方法により、不快な臭いのマスキング能及び防湿性に優れた糖衣製剤を、より簡便に製造することができるため、糖衣製剤が使用されている医薬品、医薬部外品、化粧品、機能性食品、健康食品、一般食品等の製造分野で利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬効成分を含む固形組成物と糖衣層とを含む糖衣製剤の製造方法であって、
前記糖衣層を、マンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂とを含む糖衣組成物から形成することを特徴とする糖衣製剤の製造方法。
【請求項2】
前記糖衣層が、薬効成分を含む固形組成物を前記糖衣組成物により被覆することによって形成することを特徴とする請求項1に記載の糖衣製剤の製造方法。
【請求項3】
前記糖衣組成物の前記糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂の質量比が15:2〜15:20であることを特徴とする請求項1又は2に記載の糖衣製剤の製造方法。
【請求項4】
前記糖衣組成物の前記糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂の質量比が15:2.5〜15:8であることを特徴とする請求項1又は2に記載の糖衣製剤の製造方法。
【請求項5】
スプレー法により前記糖衣組成物を一層コーティングすることにより、前記糖衣層を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の糖衣製剤の製造方法。
【請求項6】
薬効成分を含む固形組成物と糖衣層とを含む糖衣製剤であり、
前記糖衣層が、マンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂とを含む糖衣組成物から形成されていることを特徴とする糖衣製剤。
【請求項7】
前記糖衣組成物の前記糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂の質量比が15:2〜15:20であることを特徴とする請求項6に記載の糖衣製剤。
【請求項8】
前記糖衣組成物の前記糖アルコールとポリビニルアルコール系樹脂の質量比が15:2.5〜15:8であることを特徴とする請求項6に記載の糖衣製剤。
【請求項9】
前記糖衣層が、前記糖衣組成物をスプレー法により一層コーティングすることによって形成されたことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の糖衣製剤。
【請求項10】
錠剤、顆粒剤、又は細粒剤であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の糖衣製剤。
【請求項11】
マンニトール及びエリスリトールからなる群より選択される1以上の糖アルコールと、前記アルコールの0.13倍量(質量比)以上のポリビニルアルコール系樹脂とを含むことを特徴とする糖衣組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の糖衣組成物により被覆されていることを特徴とする糖衣製剤。
【請求項13】
錠剤、顆粒剤、又は細粒剤であることを特徴とする請求項12に記載の糖衣製剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−10753(P2013−10753A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−125693(P2012−125693)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【出願人】(000250100)湧永製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】