説明

糖鎖精製装置および糖鎖精製方法

【課題】簡単にかつ優れた精度で多量の糖鎖を分離精製することができる糖鎖精製装置および糖鎖精製方法を提供すること。
【解決手段】糖鎖精製装置1は、糖鎖を含有する溶液中から糖鎖を精製する装置であり、第1の上側プレート100と、第2の上側プレート100’と、第1の下側プレート300と、第2の下側プレート200と、第1の上側プレート100および第2の上側プレート100’のうちの一方の上側プレートと、第1の下側プレート300および第2の下側プレート200のうちの一方の下側プレートとを上下に配置して組み立てた状態で支持する支持体700とで構成されたプレート組立体10と、プレート組立体10が載置されるステージ3と、プレート組立体10を加熱する加熱手段6とを備えている。そして、プレート組立体10は、ステージ3上で、第1の下側プレート300と第2の下側プレート200とが交換され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖鎖精製装置および糖鎖精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖鎖とは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、シアル酸等の単糖およびこれらの誘導体がグリコシド結合によって鎖状に複数結合した分子の総称である。
【0003】
糖鎖は、非常に多様性に富んでおり、天然に存在する生物が有する様々な機能に関与する物質である。糖鎖は生体内でタンパク質や脂質等に結合した複合糖質として存在することが多く、生体内の重要な構成成分の一つである。生体内の糖鎖は細胞間情報伝達、タンパク質の機能や相互作用の調整等に深く関わっていることが明らかになりつつある。
【0004】
糖鎖を有する生体高分子としては、例えば、細胞の安定化に寄与する植物細胞の細胞壁のプロテオグリカン、細胞の分化、増殖、接着、移動等に影響を与える糖脂質、および細胞間相互作用や細胞認識に関与している糖タンパク質等が挙げられるが、これらの高分子の糖鎖が、互いに機能を代行、補助、増幅、調節、あるいは阻害しあいながら高度で精密な生体反応を制御する機構が次第に明らかにされつつある。さらに、このような糖鎖と細胞の分化増殖、細胞接着、免疫、および細胞の癌化との関係が明確にされれば、この糖鎖工学と、医学、細胞工学、あるいは臓器工学とを密接に関連させて新たな展開を図ることが期待できる(非特許文献1)。
【0005】
特に細胞表面に存在する糖鎖は、様々な生体反応の足場として重要な役割をしている事が明らかとなってきた。例えば、レセプターとの相互作用異常による疾病の発生、あるいはエイズウイルスやインフルエンザウイルス等の感染、病原性大腸菌O157の毒素やコレラ毒素の細胞への侵入に関わるとされている。また、ある種の癌細胞では特異的な糖鎖が細胞表面に現れる等、細胞表面糖鎖は細胞に個性をあたえる重要な分子とされている。
【0006】
これらの解析のため、糖鎖構造解析の技術が開発されており、これらの技術は、複合糖質からの糖鎖切り出し、糖鎖の分離精製、糖鎖の標識化等の工程を組み合わせたものであるが、これらの工程はきわめて煩雑である。
【0007】
さらに、糖鎖の分離精製には、例えば、イオン交換樹脂、逆相クロマトグラフィ、活性炭、ゲル濾過クロマトグラフィ等の手法が用いられるが、これらの分離手段は糖を特異的に認識する方法ではないので、莢雑物(ペプチド、タンパク質等)の混入が避けられず、また糖鎖の構造によって回収率に差異が生じることが多い。
【0008】
また、クロマトグラフィで糖鎖を高精度に分離する場合には、糖鎖にピリジルアミノ化等の蛍光標識を施す必要があり、煩雑な操作が必要となる。そして、蛍光標識した糖鎖を分析するには、標識後の反応液中より未反応の2−アミノピリジン等の夾雑物を除き、この標識化糖鎖を精製することが必要である。
【0009】
一般には、標識化糖鎖と夾雑物の分子量の差を利用してゲルろ過を行い、夾雑物を除去する。しかしながら、この方法は器具を多く用いる点と、操作に多くの時間を要する点から、多数の試料を短時間に処理するのは困難である。
【0010】
また、簡易な方法として共沸により夾雑物を留去する方法も試みられているが、十分に夾雑物を除去するのは難しい。
【0011】
さらに、糖鎖構造と各種疾患の関係を調べるためには、統計的処理が可能な多数の検体の糖鎖構造を調べる必要がある。
【0012】
上述したような従来法では、糖鎖を分離するために、煩雑な工程を経る必要があり、膨大なコストと時間が必要となるため、簡単にかつ優れた精度で多量の糖鎖を分離精製する手段が求められていた。
【0013】
さらに、糖鎖に蛍光標識を施す方法は、種々開発されている(例えば、特許文献1、2、3)が、その標識化効率は100%ではなく、1つのサンプルに標識された糖鎖とされていない糖鎖が混在していた。この状況は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)や、キャピラリー電気泳動法(CE法)を用いて蛍光検出している際には大きな問題とならないが、質量分析法により糖鎖を分析する際にピークが複雑化するという問題点があった。また、標識化効率が悪い場合、HPLCやCEによる分析においても、感度が低下するという問題が生じる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−20131号公報
【特許文献2】特開2006−098367号公報
【特許文献3】特開2008−309501号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】糖鎖生物学入門 化学同人 2005年11月1日発行 第1版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、簡単にかつ優れた精度で多量の糖鎖を分離精製することができる糖鎖精製装置、および、かかる装置を用いた糖鎖精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような目的は、下記(1)〜(24)の本発明により達成される。
(1) 糖鎖を含有する溶液中から糖鎖を精製する際に用いられる複数のウェルを有するプレートを備えるプレート組立体と、該プレート組立体が載置されるステージと、該ステージ上の前記プレート組立体に対し、液体を吸引・吐出するノズルを有する分注手段と、前記ステージ上の前記プレート組立体と前記ノズルとを相対的に移動させる移動手段とを備える糖鎖精製装置であって、
前記プレート組立体を加熱する加熱手段を備え、
前記プレート組立体は、板状をなし、その上面に開口する凹部で構成され、該凹部の底部を貫通する貫通孔が形成された複数の第1のウェルと、該各第1のウェルの貫通孔をそれぞれ覆うように設置された第1のフィルタとを有する第1の上側プレートと、
板状をなし、その上面に開口する凹部で構成され、該凹部の底部を貫通する貫通孔が形成された複数の第2のウェルと、該各第2のウェルの貫通孔をそれぞれ覆うように設置され、前記第1のフィルタと異なる第2のフィルタとを有する第2の上側プレートと、
板状をなし、その上面に開口する凹部で構成された1つの第1の貯留部を有する第1の下側プレートと、
板状をなし、その上面に開口する凹部で構成された複数の第2の貯留部を有する第2の下側プレートと、
前記第1の上側プレートおよび前記第2の上側プレートのうちの一方の上側プレートと、前記第1の下側プレートおよび前記第2の下側プレートのうちの一方の下側プレートとを上下に配置して組み立てた状態で支持する支持体とを備え、
前記プレート組立体は、前記ステージ上で、前記第1の下側プレートと前記第2の下側プレートとが交換され得ることを特徴とする糖鎖精製装置。
【0018】
(2) 前記第1の下側プレートと前記第2の下側プレートとの交換が行われるときには、前記加熱手段の作動が停止する上記(1)に記載の糖鎖精製装置。
【0019】
(3) 前記プレート組立体は、前記支持体に前記第1の上側プレートが支持され、前記第1の下側プレートが支持された第1の状態と、
前記第1の状態から前記第1の下側プレートと前記第2の下側プレートとが交換され、該第2の下側プレートが前記支持体に支持された第2の状態と、
前記第2の状態から前記第1の上側プレートと前記第2の上側プレートとが交換され、該第2の上側プレートが前記支持体に支持され、前記第2の下側プレートと前記第1の下側プレートとが交換され、該第1の下側プレートが前記支持体に支持された第3の状態と、
前記第3の状態から前記第1の下側プレートと前記第2の下側プレートとが交換され、該第2の下側プレートが前記支持体に支持された第4の状態とを取り得る上記(1)または(2)に記載の糖鎖精製装置。
【0020】
(4) 前記第1の状態では、前記各第1のウェルは、その貫通孔を介して、前記第1の貯留部と一括して連通しており、
前記第2の状態では、前記各第1のウェルは、その貫通孔を介して、前記各第2の貯留部とそれぞれ連通しており、
前記第3の状態では、前記各第2のウェルは、その貫通孔を介して、前記第1の貯留部と一括して連通しており、
前記第4の状態では、前記各第2のウェルは、その貫通孔を介して、前記各第2の貯留部とそれぞれ連通している上記(3)に記載の糖鎖精製装置。
【0021】
(5) 当該糖鎖精製装置は、前記各第1のウェルにそれぞれ前記糖鎖と特異的に結合する捕捉担体を供給する第1の工程と、
前記各第1のウェルにそれぞれ前記溶液を前記ノズルから分注して、該溶液と前記捕捉担体とを接触させ、該捕捉担体上に前記糖鎖を捕捉する第2の工程と、
前記捕捉担体に結合した糖鎖以外の物質を除去する第3の工程と、
前記捕捉担体に結合した糖鎖を再遊離させる第4の工程と、
再遊離した前記糖鎖を前記捕捉担体と分離して精製する第5の工程とを順に行なうよう構成され、
前記第1の工程、前記第2の工程および前記第3の工程では、前記プレート組立体を前記第1の状態とし、前記第4の工程では、前記プレート組立体を前記第2の状態とし、前記第5の工程では、前記プレート組立体を順に前記第3の状態、前記第4の状態とする上記(4)に記載の糖鎖精製装置。
【0022】
(6) 前記加熱手段は、前記第1の工程、前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4の工程および前記第5の工程の各工程で、前記プレート組立体または前記第1の上側プレートに対する加熱温度を変更可能に構成されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【0023】
(7) 前記加熱手段は、前記ステージに埋設されたヒータを有する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【0024】
(8) 前記加熱手段は、ヒータを有する恒温槽である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【0025】
(9) 前記支持体は、前記一方の上側プレートを支持する上側支持部材と、該上側支持部材と別体で構成され、前記一方の下側プレートを支持する下側支持部材とを有し、
前記上側支持部材と前記下側支持部材とは、前記上側支持部材が前記一方の上側プレートを支持し、前記下側支持部材が前記一方の下側プレートを支持した状態で、分解・組立可能に構成されている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【0026】
(10) 前記第1の下側プレートと前記第2の下側プレートとの交換は、前記上側支持部材と前記下側支持部材とが分解された状態で行なわれる上記(9)に記載の糖鎖精製装置。
【0027】
(11) 前記プレート組立体では、前記一方の上側プレートの下面と前記一方の下側プレートの上面とが離間して配置され、その離間距離が0.5mm以上10mm以下である上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【0028】
(12) 前記第1のフィルタは、多孔性フィルムまたは不織布で構成されている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【0029】
(13) 前記第1のフィルタの目開きは、0.1〜50μmである上記(12)に記載の糖鎖精製装置。
【0030】
(14) 前記第2のフィルタは、シリカゲルで構成されている上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【0031】
(15) 前記分注手段は、ポンプと、該ポンプと前記ノズルとを連結するチューブとを有する上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【0032】
(16) 前記移動手段は、前記ノズルを水平方向に移動させる水平方向移動機構と、ノズルを鉛直方向に移動させる鉛直方向移動機構とを有する上記(1)ないし(15)のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【0033】
(17) 前記ステージには、前記第1の下側プレートが複数枚重ねて載置される第1の下側プレート載置部と、前記第2の下側プレートが複数枚重ねて載置される第2の下側プレート載置部とが設けられている上記(1)ないし(16)のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【0034】
(18) 前記ノズルを洗浄する洗浄槽をさらに備える上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【0035】
(19) 上記(5)に記載の糖鎖精製装置を用いて、前記糖鎖を精製する方法であって、
前記第4の工程において、前記捕捉担体に結合した糖鎖を再遊離させるとともに、該糖鎖をラベル化試薬でラベル化することを特徴とする糖鎖精製方法。
【0036】
(20) 前記第4の工程で、前記捕捉担体からの前記糖鎖の再遊離の後に、前記糖鎖をラベル化試薬でラベル化する上記(19)に記載の糖鎖精製方法。
【0037】
(21) 前記ラベル化試薬は、芳香族アミンで構成される蛍光物質である上記(20)に記載の糖鎖精製方法。
【0038】
(22) 再遊離した前記糖鎖を含む前記溶液における前記蛍光物質の濃度は、0.5mol/L以上である上記(21)に記載の糖鎖精製方法。
【0039】
(23) 前記蛍光物質は、2−Aminobenzamide、2−Aminobenzoic acid、8−Aminopyrene−1,3,6−trisulfonate、8−Aminonaphthalene−1,3,6−trisulphonate、2−Amino9(10H)−acridone、5−Aminofluorescein、Dansylethylenediamine、7−Amino−4−methylcoumarine、3−Aminobenzoic acid、7−Amino−1−naphthol、3−(Acetylamino)−6−aminoacridineから選ばれる少なくとも1種である上記(21)または(22)に記載の糖鎖精製方法。
【0040】
(24) 前記捕捉担体は、ヒドラジド基またはオキシルアミノ基を有するポリマー粒子である上記(19)ないし(23)のいずれかに記載の糖鎖精製方法。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、簡単にかつ優れた精度で糖鎖を分離精製することができる。さらに、複数の第1のウェルや複数の第2のウェルにそれぞれ供給された液体(溶液)を一括して処理することができるため、一度の精製処理で、多量の糖鎖を精製することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の糖鎖精製装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す糖鎖精製装置が備えるプレート組立体を示す斜視図である。
【図3】図2に示すプレート組立体の分解斜視図である。
【図4】図2中のB−B線断面図(プレート組立体の第1の状態を示す断面図)である。
【図5】図2中のB−B線断面図(プレート組立体の第2の状態を示す断面図)である。
【図6】図2中のB−B線断面図(プレート組立体の第3の状態を示す断面図)である。
【図7】図2中のB−B線断面図(プレート組立体の第4の状態を示す断面図)である。
【図8】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図9】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図10】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図11】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図12】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図13】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図14】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図15】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図16】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図17】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図18】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図19】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図20】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図21】図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。
【図22】本発明の糖鎖精製装置の第2実施形態を示す斜視図である。
【図23】本発明の糖鎖精製装置の第3実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の糖鎖精製装置および糖鎖精製方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0044】
<第1実施形態>
図1は、本発明の糖鎖精製装置の第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示す糖鎖精製装置が備えるプレート組立体を示す斜視図、図3は、図2に示すプレート組立体の分解斜視図、図4〜図7は、それぞれ、図2中のB−B線断面図(図4は、プレート組立体の第1の状態を示し、図5は、プレート組立体の第2の状態を示し、図6は、プレート組立体の第3の状態を示し、図7は、プレート組立体の第4の状態を示す)、図8〜図21は、それぞれ、図1に示す糖鎖精製装置で糖鎖を精製する工程を順に示す断面図(図1中の矢印A方向から見た断面図)である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図21中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、水平方向であって装置の横方向(前後方向)をx軸方向、水平方向であって前記x軸方向に対し垂直な方向(装置の左右方向)をy軸方向、鉛直方向(上下方向)をz軸方向と言う。
【0045】
図1に示す糖鎖精製装置(以下単に「精製装置」と言う)1は、糖鎖を含有する溶液(以下「糖鎖含有液」と言う)23中から糖鎖を精製する糖鎖精製方法で用いられる装置である。精製装置1は、ステージ3と、ステージ3に載置されるプレート組立体10と、ステージ3上のプレート組立体10に対して液体を分注する機能を有する分注手段4と、ステージ3上のプレート組立体10に対して分注手段4のノズル(ピペッタ)41を移動する移動手段5と、ステージ3上のプレート組立体10をステージ3ごと加熱する加熱手段6と、ノズル41を洗浄する洗浄槽7と、分注手段4、移動手段5および加熱手段6の作動を制御する機能を有するコントロールパネル11とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0046】
図2、図3に示すように、プレート組立体10は、第1の上側プレート(マルチウェルフィルタプレート)100と、第2の上側プレート(クリーンアッププレート)100’と、第1の下側プレート(廃液トレイ)300と、第2の下側プレート(マルチウェルプレート)200と、調整板(スペーサ)600と、支持体700とを備え、これら部材同士を分解・組立可能なものである。そして、プレート組立体10は、各プレートの選択により、4つの組立状態を取り得る。4つの組立状態としては、図4に示す第1の状態と、図5に示す第2の状態と、図6に示す第3の状態と、図7に示す第4の状態とがある。
【0047】
第1の状態では、第1の上側プレート100および第2の上側プレート100’のうちの第1の上側プレート100が選択され、第1の下側プレート300および第2の下側プレート200のうちの第1の下側プレート300が選択されている。そして、選択された第1の上側プレート100および第1の下側プレート300は、上下に配置されるように組み立てられ、支持体700に支持される。
【0048】
第2の状態では、第1の上側プレート100および第2の上側プレート100’のうちの第1の上側プレート100が選択され、第1の下側プレート300および第2の下側プレート200のうちの第2の下側プレート200が選択されている。そして、選択された第1の上側プレート100および第2の下側プレート200は、上下に配置されるように組み立てられ、支持体700に支持される。
【0049】
第3の状態では、第1の上側プレート100および第2の上側プレート100’のうちの第2の上側プレート100’が選択され、第1の下側プレート300および第2の下側プレート200のうちの第1の下側プレート300が選択されている。そして、選択された第2の上側プレート100’および第1の下側プレート300は、上下に配置されるように組み立てられ、支持体700に支持される。
【0050】
第4の状態では、第1の上側プレート100および第2の上側プレート100’のうちの第2の上側プレート100’が選択され、第1の下側プレート300および第2の下側プレート200のうちの第2の下側プレート200が選択されている。そして、選択された第2の上側プレート100’および第2の下側プレート200は、上下に配置されるように組み立てられ、支持体700に支持される。
【0051】
ステージ3は、y軸方向に長い平板状をなすものであり、その上面が複数の領域に分けられている。図1に示すように、ステージ3は、プレート組立体載置部31と、第1の上側プレート載置部32と、第2の上側プレート載置部33と、第1の下側プレート載置部34と、第2の下側プレート載置部35と、洗浄槽載置部36と、処理液載置部37とに分けられている。
【0052】
プレート組立体載置部31は、ステージ3の長手方向のほぼ中央部に位置し、1組のプレート組立体10が載置される領域である。プレート組立体載置部31に載置されたプレート組立体10上の糖鎖含有液23から糖鎖が精製される。
【0053】
第1の上側プレート載置部32は、精製装置1に向かってステージ3の右側手前に位置し、第1の上側プレート100が1枚以上重ねて載置される領域である。第1の上側プレート載置部32に載置された各第1の上側プレート100は、それぞれ、未使用のものであり、交換に用いられる。
【0054】
第2の上側プレート載置部33は、精製装置1に向かって第1の上側プレート載置部32よりもさらに右側に位置し、第2の上側プレート100’が1枚以上重ねて載置される領域である。第2の上側プレート載置部33に載置された各第2の上側プレート100’は、それぞれ、未使用のものであり、交換に用いられる。
【0055】
第1の下側プレート載置部34は、精製装置1に向かって第2の上側プレート載置部33よりもさらに奥側に位置し、第1の下側プレート300が1枚以上重ねて載置される領域である。第1の下側プレート載置部34に載置された各第1の下側プレート300は、それぞれ、未使用のものであり、交換に用いられる。
【0056】
第2の下側プレート載置部35は、精製装置1に向かって第1の上側プレート載置部32よりもさらに奥側に位置し、第2の下側プレート200が1枚以上重ねて載置される領域である。第2の下側プレート載置部35に載置された各第2の下側プレート200は、それぞれ、未使用のものであり、交換に用いられる。
【0057】
なお、精製装置1では、各プレートの交換は、精製装置1を操作する操作者の手作業により行なわれる。
また、プレート組立体10の詳細な構成については、後述する。
【0058】
洗浄槽載置部36は、精製装置1に向かってステージ3の左側手前に位置し、洗浄槽7が載置される領域である。洗浄槽載置部36に載置された洗浄槽7は、図示にしない固定機構により固定される。
【0059】
処理液載置部37は、精製装置1に向かって洗浄槽載置部36よりもさらに左側に位置し、各種液体(処理液)がそれぞれ貯留されたマルチウェルプレート81、タンク82〜87が載置される領域である。
【0060】
ステージ3の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムやアルミニウム合金などの各種金属材料を用いることができる。
【0061】
分注手段4は、ノズル41と、ノズル41を支持、固定するノズルヘッド44と、ポンプ42と、ノズル41とポンプ42とを連結するチューブ43と有している。
【0062】
ノズル41は、先端(下端)が開口した管状部材で構成されている。このノズル41は、ポンプ42の作動により、先端開口部411を介して液体を吸引・吐出することができる。なお、ノズル41は、図1に示す構成では1本であるが、これに限定されず、例えば、複数本配置されていてもよい。
【0063】
ポンプ42は、例えば歯車ポンプやベーンポンプであり、ステージ3から立設する壁部12の裏側に配置されている。
【0064】
チューブ43は、ノズル41とポンプ42とを連結している。これにより、ノズル41とポンプ42とがチューブ43を介して連通する。また、チューブ43は、可撓性を有し、移動手段5の作動によってノズル41が移動した際、その移動に追従することができる。
【0065】
移動手段5は、x軸方向移動機構(水平方向移動機構)51と、y軸方向移動機構(水平方向移動機構)52と、z軸方向移動機構(鉛直方向移動機構)53とを有している。
【0066】
x軸方向移動機構51、y軸方向移動機構52、z軸方向移動機構53は、それぞれ、例えば、モータ(図示せず)と、モータに連結されたボールネジ(図示せず)と、ボールネジに連結されたリニアガイド(図示せず)とで構成されている。
【0067】
そして、ノズル41は、ノズルヘッド44を介してz軸方向移動機構53に支持されており、当該z軸方向移動機構53によってz軸方向に移動することができる。
【0068】
また、x軸方向移動機構51は、z軸方向移動機構53ごとノズル41を支持している。これにより、ノズル41は、z軸方向移動機構53とともにx軸方向に移動することができる。
【0069】
さらに、y軸方向移動機構52は、x軸方向移動機構51を介して、z軸方向移動機構ごとノズル41を支持している。これにより、ノズル41は、x軸方向移動機構51、z軸方向移動機構53とともにy軸方向に移動することができる。
【0070】
このような構成の移動手段5により、ノズル41がプレート組立体10とマルチウェルプレート81、タンク82〜87との間を往復することができる。
【0071】
加熱手段6は、ステージ3のプレート組立体載置部31の直下に埋設されたヒータ61を有している。ヒータ61は、通電により発熱するニクロム線等のような電熱線をリング状に巻回して構成されたものである。また、ヒータ61は、平面視でプレート組立体10を包含している、すなわち、平面視でその内側にプレート組立体10が配置される。
【0072】
このようなヒータ61が作動、すなわち、発熱することにより、その熱がステージ3、プレート組立体10の支持体700(第2の支持台(下側支持部材)500、第1の支持台(上側支持部材)400)を順に伝わり、第1の上側プレート100上の液体を加熱して蒸発させることができる(図9(5)、図12(14)参照)。
【0073】
また、ヒータ61がステージ3に埋設されていることにより、精製装置1の操作者が誤ってヒータ61に触れるのを確実に防止することができる。これにより、ヒータ61が発熱していたとしても、操作者が火傷を負うのを防止または抑止することができる。
【0074】
また、加熱手段6は、ステージ3のプレート組立体載置部31上の温度を検出し、その検出結果に応じて、ヒータ61に印可される電圧を制御することができるよう構成されている。これにより、精製装置1で行なわれる各工程(第1の工程、第2の工程、第3の工程、第4の工程および第5の工程)で、プレート組立体10に対する加熱温度を変更して、最適な温度とすることができ、優れた精度で糖鎖を精製するのに寄与する。
【0075】
洗浄槽7は、有底筒状をなす部材で構成され、その内側に、ノズル41を洗浄する洗浄液71を貯留することができる。ノズル41は、プレート組立体10からマルチウェルプレート81やタンク82〜87に向かう途中で、毎回、洗浄槽7内に挿入され、当該洗浄槽7中の洗浄液71で洗浄される。これにより、例えばプレート組立体10でのコンタミネーションを防止することができる。
【0076】
また、精製装置1では、洗浄液71は、ノズル41を洗浄するごとに、すなわち、使用されるごとに、未使用ものに交換されるよう構成されている。これにより、前記コンタミネーションを確実に防止することができる。
【0077】
洗浄液71としては、特に限定されず、例えば、精製水(蒸留水)、メタノール、エタノールに代表されるアルコール類を用いることができる。また、洗浄槽7を2つ以上設置しておき、2種類以上の洗浄液71で連続的に洗浄することもできる。
【0078】
コントロールパネル11は、ステージ3上の第1の上側プレート載置部32の近傍に配置されている。コントロールパネル11には、表示部および操作部(入力部)としての液晶画面111が設置されている。そして、液晶画面111には、例えば精製装置1の各種動作条件を設定する入力画面等が表示される。操作者は、液晶画面111を指で触れることにより、各種動作条件の設定等を行なうことができる。この設定により、分注手段4、移動手段5および加熱手段6の作動がそれぞれ制御される。
【0079】
前述したように、ステージ3のプレート組立体載置部31には、1組のプレート組立体10が載置される。図2、図3に示すように、このプレート組立体10は、第1の上側プレート100と、第2の上側プレート100’と、第1の下側プレート300と、第2の下側プレート200と、調整板600と、支持体700とを備えている。また、プレート組立体10は、図4に示す第1の状態と、図5に示す第2の状態と、図6に示す第3の状態と、図7に示す第4の状態との4つの組立状態を取り得る。そして、前記4つの組立状態に応じて、支持体700は、第1の支持台400で第1の上側プレート100または第2の上側プレート100’を支持するとともに、第2の支持台500で第1の下側プレート300または第2の下側プレート200を支持する。
【0080】
図3に示すように、第1の上側プレート100は、その全体形状が平板状をなし、その厚さ方向(上下方向)に設けられた、すなわち、その上面108に開口する凹部で構成された複数(本実施形態では96個)のウェル(第1のウェル)101を備えている。これらのウェル101は、行列状(x軸方向に12行、y軸方向に8列)に配置されており、糖鎖含有液23中から糖鎖を精製する際に用いられる。
【0081】
図3、図4に示すように、これらのウェル101は、それぞれ、その下側に底部103を備える構成をなしており、さらに、この底部103のほぼ中心部に当該底部103を貫通する貫通孔104が設けられている。これにより、この貫通孔104を介した、ウェル101に供給(収納)された液体の外部への流出が、底部103側から許容される。
【0082】
貫通孔104の孔径は、好ましくは0.1〜1mm程度、より好ましくは0.2〜0.7mm程度に設定される。
【0083】
さらに、各ウェル101の下側(底部103側)には、それぞれ、その貫通孔104を塞ぐ(覆う)ように、膜状のフィルタ(第1のフィルタ)105が配置されている。このフィルタ105と貫通孔104の孔径との関係により、第1の上側プレート100の静置時には、ウェル101に供給された液体が貫通孔104を介して、その外部へ流出することが阻害される(阻止される)。これに対して、後述するように、第1の上側プレート100を第1の支持台400に装着して、吸引ポンプ13を用いて、第2の支持台500が有する凹部505内を吸引した際には、前記液体のフィルタ105の透過(通過)が許容される。そのため、前記液体が貫通孔104を介して、その外部に、底部103側から流出される。
【0084】
フィルタ105の素材としては、特に限定されないが、例えば、多孔性フィルムおよび不織布等が挙げられる。また、その構成材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースエステル、フッ化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびナイロン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
なお、このフィルタ105には、親水処理が施されているのが好ましい。これにより、前記液体の透過性の向上を図ることができる。この親水処理は、例えば、プラズマ処理、コロナ放電、グラフト処理、酸処理などに代表される表面改質、または、界面活性剤、水溶性シリコン、ポリプロピレングリコール等を付与(塗布)等することにより行うことができる。
【0086】
フィルタ105が備える細孔の孔径、すなわち、フィルタ105の目開きは、好ましくは0.1〜50μm程度、より好ましくは0.2〜20μm程度、さらに好ましくは0.4〜10μmに設定される。これにより、前記液体に含まれる液状成分の透過は許容されるとともに、後述するようなポリマー粒子20の透過は確実に許容されなくなる。
【0087】
第2の上側プレート100’は、その全体形状が平板状をなし、その厚さ方向(上下方向)に設けられた、すなわち、その上面108’に開口する凹部で構成された複数(本実施形態では96個)のウェル(第2のウェル)101’を備えている。これらのウェル101’は、第1の上側プレート100のウェル101と同様に、行列状(x軸方向に12行、y軸方向に8列)に配置されており、糖鎖含有液23中から糖鎖を精製する際に用いられる。
【0088】
図6、図7に示すように、これらのウェル101’は、それぞれ、その下側に底部103’を備える構成をなしており、さらに、この底部103’のほぼ中心部に当該底部103’を貫通する貫通孔104’が設けられている。これにより、この貫通孔104’を介した、ウェル101’に供給(収納)された液体の外部への流出が、底部103’側から許容される。
【0089】
さらに、各ウェル101の下側(底部103側)には、それぞれ、その貫通孔104を塞ぐ(覆う)ようにフィルタ(第2のフィルタ)106が配置されている。これにより、第2の上側プレート100’の静置時には、ウェル101’に供給された液体が貫通孔104’を介して、その外部へ流出することが阻害される(阻止される)。これに対して、後述するように、第2の上側プレート100’を第1の支持台400に装着して、吸引ポンプ13を用いて、第2の支持台500の凹部505内を吸引した際には、前記液体のフィルタ106の透過(通過)が許容される。そのため、前記液体が貫通孔104’を介して、その外部に、底部103’側から流出される。
【0090】
フィルタ106は、フィルタ105と異なる構成材料で構成され、捕捉機能、すなわち、捕捉対象物が異なる。フィルタ106は、例えば、シリカゲルで構成されている。
【0091】
以上のような第1の上側プレート100、第2の上側プレート100’は、支持体700の第1の支持台400に装着される。
【0092】
図3〜図7に示すように、第1の支持台400は、平板状をなし、その中央部で開口する開口部402を備える底部401と、底部401の外縁に沿って上方に突出するように設けられた上側外壁403と、底部401の外縁に沿って下方に突出するように設けられた下側外壁404とを有している。
【0093】
そして、上側外壁403で囲まれた凹部405が形成され、この凹部405内に第1の上側プレート100または第2の上側プレート100’を挿入することで、当該挿入された上側プレートが第1の支持台400により支持される。
【0094】
また、底部401の開口部402の縁部に沿って溝が設けられており、この溝に対応するようにパッキン(シール部材)407が配置されている。これにより、凹部405内に第1の上側プレート100または第2の上側プレート100’を挿入した際に、開口部402とその外部との連通が遮断される。
【0095】
なお、上側外壁403は、対向する2つの長辺の中央部において、厚さ方向(上下方向)に直交する方向に開口部408を有する構成をなしており、これにより、凹部405内に挿入(載置)された第1の上側プレート100または第2の上側プレート100’を取り出す際に、開口部408に指を入れて、当該凹部405内に挿入された上側プレートを持ち上げることができ、その取り出し作業を容易に行なうことができる。
【0096】
さらに、下側外壁404で囲まれた凹部406が形成され、この凹部406の内周面に沿って、後述する第2の支持台500が有する突出部502を挿入することで、第2の支持台500上に第1の支持台400が固定される。
【0097】
なお、本実施形態では、上側外壁403の外周面と下側外壁404の外周面とが、一体的に形成されていることで、1つの平坦面により構成されている。
【0098】
図4、図6に示すように、第1の下側プレート300は、その全体形状が平板状をなし、その上面302に開口する1つの凹部(第1の貯留部)301を有する。
【0099】
図3に示すように、第1の下側プレート300は、凹部301が形成された凹部形成部303と、この凹部形成部303の周囲を取り囲むように配置されたフレーム部304とを有する構成をなしており、凹部形成部303の厚さは、フレーム部304の厚さより厚くなっている。これにより、凹部形成部303の上面302は、フレーム部205の上面から突出する。この凹部形成部303の平面視形状は、第1の支持台400の開口部402に挿入可能な大きさに設定されている。従って、第2の支持台500の凹部505内に第1の下側プレート300を配置した状態(図4、図6参照)で、第2の支持台500上に第1の支持台400を載置すると、凹部形成部303を、第1の支持台400の開口部402内に挿入させることができる。
【0100】
なお、ウェル形成部202の上面302は、前述したようにフレーム部205の上面から突出しているが、これに限定されず、フレーム部205の上面と同じ高さであってもよい。この場合も、糖鎖を確実に分離精製することができる。
【0101】
図5、図7に示すように、第2の下側プレート200は、第1の下側プレート300と同様に、その全体形状が平板状をなし、その厚さ方向(上下方向)に設けられた、すなわち、その上面204に開口する凹部で構成された複数(本実施形態では96個)のウェル(第2の貯留部)201を備えている。これらのウェル201は、行列状(x軸方向に12行、y軸方向に8列)に配置されている。
【0102】
これらのウェル201は、それぞれ、その下側に底部203を備えている。これにより、ウェル201に供給(収納)された液体がその内部に貯留される。
【0103】
また、図3に示すように、第2の下側プレート200は、複数のウェル201が形成されたウェル形成部202と、このウェル形成部202の周囲を取り囲むように配置されたフレーム部205とを有する構成をなしており、ウェル形成部202の厚さは、フレーム部205の厚さより厚くなっている。これにより、ウェル形成部202の上面は、フレーム部205の上面から突出する。このウェル形成部202の平面視形状は、第1の支持台400の開口部402に挿入可能な大きさに設定されている。従って、第2の支持台500の凹部505内に第2の下側プレート200を配置した状態(図5、図7参照)で、第2の支持台500上に第1の支持台400を載置すると、ウェル形成部202を、第1の支持台400の開口部402内に挿入させることができる。
【0104】
調整板600は、第1の下側プレート300または第2の下側プレート200に先立って、第2の支持台500が備える凹部505内に挿入して用いられるものである。
【0105】
この調整板600は、平板状をなしており、その厚さの異なるものが複数枚用意されている。
【0106】
そして、凹部505内に挿入する第1の下側プレート300、第2の下側プレート200の種類に応じて、適切な厚さの調整板600を選択することで、第1の状態で第1の上側プレート100と第1の下側プレート300とをできる限り接近させることができ、第2の状態で第1の上側プレート100と第2の下側プレート200とをできる限り接近させることができ、第3の状態で第2の上側プレート100’と第1の下側プレート300とをできる限り接近させることができ、第4の状態で第2の上側プレート100’と第2の下側プレート200とをできる限り接近させることができる。特に、第2の状態で第1の上側プレート100と第2の下側プレート200とをできる限り接近させることができ、第4の状態で第2の上側プレート100’と第2の下側プレート200とをできる限り接近させることができるのは、後述する工程で有効である。
【0107】
第2の支持台500は、第1の下側プレート300または第2の下側プレート200を支持するための部材である。図4〜図7に示すように、第2の支持台500は、第1の支持台400と別体で構成され、平板状をなす底部501と、底部501の外縁に沿って上方に突出するように設けられた外壁503とを有している。
【0108】
このような外壁503で取り囲まれることにより、その内側に凹部505が形成され、この凹部505内に第1の下側プレート300または第2の下側プレート200を挿入することで、第1の下側プレート300または第2の下側プレート200が第2の支持台500により支持される。
【0109】
また、外壁503は、外壁503の内縁に沿って上方に突出する突出部502を有している。この突出部502は、第1の支持台400が備える凹部406の内周面に沿って、挿入し得るように設定されており、これにより、第2の支持台500上に第1の支持台400を載置した際に、突出部502が第1の支持台400の凹部406に挿入されることで、第2の支持台500上に第1の支持台400が固定される。
【0110】
外壁503の上面には、突出部502を取り囲むように溝が設けられており、この溝に対応するようにパッキン(シール部材)507が配置されている。これにより、第2の支持台500上に第1の支持台400を載置した際に、第1の支持台400、第2の支持台500同士間での外部との連通が遮断される。
【0111】
さらに、図3に示すように、外壁503は、外壁503の側面に、凹部505に貫通する貫通孔506を有している。図1に示すように、貫通孔506には、ステージ3から立設する壁部12の裏側でポンプ42に隣接して配置され、真空ポンプで構成された吸引ポンプ13が、チューブ14を介して、連結されている。これにより、吸引ポンプ13を作動させることで、凹部505内を減圧することができる。
【0112】
なお、第1の上側プレート100、第2の上側プレート100’、第1の下側プレート300、第2の下側プレート200の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0113】
また、第1の支持台400、第2の支持台500の構成材料としては、前記樹脂材料を用いることができるが、例えばステンレス鋼等のFe系合金、CuまたはCu系合金、AlまたはAl系合金のような金属系材料、アルミナ、アパタイト、窒化アルミのようなセラミックス系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。第1の支持台400、第2の支持台500の構成材料として金属材料を用いることにより、ヒータ61からの熱がステージ3、第2の支持台500、第1の支持台400を順に伝わり、第1の上側プレート100上の液体を確実に加熱して蒸発させることができる(図9(5)、図12(14)参照)。
【0114】
次に、プレート組立体10での第1の状態、第2の状態、第3の状態、第4の状態について説明する。プレート組立体10を第1の状態、第2の状態、第3の状態、第4の状態のいずれの状態とするのかは、当該プレート組立体10が、後述する精製装置1で糖鎖を精製する各工程のうちのどの工程を経ているのかで選択される。
【0115】
なお、プレート組立体10では、第1の上側プレート100のウェル101同士のピッチと、第2の上側プレート100’のウェル101’同士のピッチと、第2の下側プレート200のウェル201同士のピッチとは、互いに同じ大きさに設定されている。
【0116】
図4に示すように、第1の状態では、第1の支持台400の凹部405に第1の上側プレート100が挿入され、さらに第2の支持台500の凹部505に調整板600および第1の下側プレート300が挿入され、この状態で、第2の支持台500上に、第1の支持台400が載置される。このとき、第1の下側プレート300の凹部形成部303が第1の支持台400の開口部402に挿入され、さらに、第2の支持台500の突出部502が第1の支持台400の凹部406に挿入される。
【0117】
このような組立により、第1の上側プレート100の各ウェル101は、その貫通孔104を介して、第1の下側プレート300の凹部301と一括して連通しており、この状態で、第2の支持台500上に第1の支持台400が固定される。
【0118】
また、かかる状態では、パッキン507により、第1の支持台400、第2の支持台500同士間での外部との連通が遮断され、パッキン407により、第1の支持台400と第1の上側プレート100との間での連通が遮断される。これにより、第1の上側プレート100と、第1の支持台400と、第2の支持台500とで形成される(画成される)内部空間9aを、外部に対して閉鎖された閉鎖空間とすることができる。
【0119】
そして、貫通孔506に連結された吸引ポンプ13を作動させて、内部空間9a(凹部505)を減圧することで、当該内部空間9aをその外部に対して負圧とすることができる。そのため、第1の上側プレート100の各ウェル101内では、それぞれ、フィルタ105を介して、その上下で圧力差が生じることから、この圧力差によって、ウェル101内の液体がフィルタ105を透過する。従って、各ウェル101から貫通孔104を介して液体を流出させて、第1の下側プレート300の凹部301内に一括して貯留することができる。
【0120】
なお、ウェル101内の液体がフィルタ105を透過するには、本実施形態ではフィルタ105の下側をその上側より負圧とする圧力差を利用しているが、これに限定されず、例えば、フィルタ105の上側に位置する液体に遠心力や、重力を作用させることによっても可能である。例えば、ウェル101内の液体の粘度等が比較的低く、当該液体がフィルタ105を容易に透過する場合には、重力すなわち自由落下により、液体がフィルタ105を透過するようにすることができる。
【0121】
図5に示すように、第2の状態では、第1の支持台400の凹部405に第1の上側プレート100が挿入され、さらに第2の支持台500の凹部505に調整板600および第2の下側プレート200が挿入され、この状態で、第2の支持台500上に、第1の支持台400が載置されている。このとき、第2の下側プレート200のウェル形成部202が第1の支持台400の開口部402に挿入され、さらに、第2の支持台500の突出部502が第1の支持台400の凹部406に挿入される。
【0122】
このような組立により、第1の上側プレート100の各ウェル101は、その貫通孔104を介して、第2の下側プレート200のウェル201とそれぞれ連通しており、この状態で、第2の支持台500上に第1の支持台400が固定される。
【0123】
また、第2の状態でも、内部空間9aを、外部に対して閉鎖された閉鎖空間とすることができる。そして、貫通孔506に連結された吸引ポンプ13を作動させて、内部空間9a(凹部505)を減圧することで、各ウェル101から貫通孔104を介して液体を流出させることができる。その結果、各ウェル101から流出した液体を、第2の下側プレート200のウェル201にそれぞれ独立して貯留することができる。
【0124】
図6に示すように、第3の状態では、第1の支持台400の凹部405に第2の上側プレート100’が挿入され、さらに第2の支持台500の凹部505に調整板600および第1の下側プレート300が挿入され、この状態で、第2の支持台500上に、第1の支持台400が載置される。このとき、第1の状態と同様に、第1の下側プレート300の凹部形成部303が第1の支持台400の開口部402に挿入され、さらに、第2の支持台500の突出部502が第1の支持台400の凹部406に挿入される。
【0125】
このような組立により、第2の上側プレート100’の各ウェル101’は、その貫通孔104’を介して、第1の下側プレート300の凹部301と一括して連通しており、この状態で、第2の支持台500上に第1の支持台400が固定される。
【0126】
また、かかる状態では、パッキン507により、第1の支持台400、第2の支持台500同士間での外部との連通が遮断され、パッキン407により、第1の支持台400と第2の上側プレート100’との間での連通が遮断される。これにより、第2の上側プレート100’と、第1の支持台400と、第2の支持台500とで形成される(画成される)内部空間9bを、外部に対して閉鎖された閉鎖空間とすることができる。
【0127】
そして、貫通孔506に連結された吸引ポンプ13を作動させて、内部空間9b(凹部505)を減圧することで、当該内部空間9bをその外部に対して負圧とすることができる。そのため、第2の上側プレート100’の各ウェル101’内では、それぞれ、フィルタ106を介して、その上下で圧力差が生じることから、この圧力差によって、ウェル101’内の液体がフィルタ106を透過する。従って、各ウェル101’から貫通孔104’を介して液体を流出させて、第1の下側プレート300の凹部301内に一括して貯留することができる。
【0128】
図7に示すように、第4の状態では、第1の支持台400の凹部405に第2の上側プレート100’が挿入され、さらに第2の支持台500の凹部505に調整板600および第2の下側プレート200が挿入され、この状態で、第2の支持台500上に、第1の支持台400が載置されている。このとき、第2の下側プレート200のウェル形成部202が第1の支持台400の開口部402に挿入され、さらに、第2の支持台500の突出部502が第1の支持台400の凹部406に挿入される。
【0129】
このような組立により、第2の上側プレート100’の各ウェル101’は、その貫通孔104’を介して、第2の下側プレート200のウェル201とそれぞれ連通しており、この状態で、第2の支持台500上に第1の支持台400が固定される。
【0130】
また、第4の状態でも、内部空間9bを、外部に対して閉鎖された閉鎖空間とすることができる。そして、貫通孔506に連結された吸引ポンプ13を作動させて、内部空間9b(凹部505)を減圧することで、各ウェル101’から貫通孔104’を介して液体を流出させることができる。その結果、各ウェル101’から流出した液体を、第2の下側プレート200のウェル201にそれぞれ独立して貯留することができる。
【0131】
前述したように、プレート組立体10では、調整板600により、第1の状態で第1の上側プレート100の下面109と第1の下側プレート300の上面302とをできる限り接近させて、これらの離間距離dをできる限り小さく設定することができる。第2の状態でも、第1の上側プレート100の下面109と第2の下側プレート200の上面204とをできる限り接近させて、これらの離間距離dをできる限り小さく設定することができる。第3の状態でも、第2の上側プレート100’の下面109’と第1の下側プレート300の上面302とをできる限り接近させて、これらの離間距離dをできる限り小さく設定することができる。第4の状態でも、第2の上側プレート100’ の下面109’と第2の下側プレート200の上面204とをできる限り接近させて、これらの離間距離dをできる限り小さく設定することができる。
【0132】
そして、特に第2の状態で、貫通孔104を通過した液体がたとえ飛散したとしても、各ウェル101に対応する、第2の下側プレート200のウェル201内に当該液体を高効率に供給する(回収する)ことができる。これと同様に、第4の状態でも、貫通孔104’を通過した液体がたとえ飛散したとしても、各ウェル101’に対応する、第2の下側プレート200のウェル201内に当該液体を高効率に供給することができる。
【0133】
なお、離間距離d〜dとしては、特に限定されず、例えば、好ましくは10mm以下、より好ましくは0.5mm以上、10mm以下、さらに好ましくは0.5mm以上、3mm以下に設定される。離間距離d〜dをかかる範囲内に設定することにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0134】
また、図7(図6も同様)に示すように、第2の上側プレート100’の底面(下面109’)には、各貫通孔104’を囲むようにリング状の突起部107が突出形成されているのが好ましい。突起部107が形成されていることにより、貫通孔104’を通過した液体を第2の下側プレート200のウェル201内に向かって導くことができ、よって、該液体をさらに高効率に回収することができる。
【0135】
次に、精製装置1で糖鎖を精製する工程について、図8〜図21を参照しつつ説明するが、その前に、「糖鎖」と「糖鎖と特異的に結合する捕捉担体」とについて説明する。
【0136】
ここでは、糖鎖は、当該糖鎖を備える糖タンパク質から得られる場合を一例に挙げる。糖タンパク質を含む試料としては、特に限定されないが、例えば、全血、血清、血漿、尿、唾液、細胞、組織等の生体試料が挙げられる。
【0137】
そして、この試料を、例えば、SDS−PAGE(SDS変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動)や、等電点電気泳動とSDS−PAGEを組み合わせた二次元電気泳動等の所定処理を施すことにより、ゲル中において試料に含まれる糖タンパク質を分離する。その後、ゲル内に保持されている糖タンパク質から、糖鎖遊離手段を用いて糖鎖を遊離させる。糖鎖を遊離させる手段としては、特に限定されないが、例えば、N−グリコシダーゼまたはO−グリコシダーゼを用いたグリコシダーゼ処理、ヒドラジン分解、アルカリ処理によるβ脱離等の方法を用いることができる。この糖鎖遊離処理後のゲルを取り出し、このゲルを、例えば水等の洗浄液を用いてリンスすることで、遊離された糖鎖をゲルから洗浄液中に溶出させる。そして、洗浄液中においてゲルを沈殿させた後、この上清を回収することで、糖鎖含有液23を得る。この糖鎖含有液23は、複数(本実施形態では96個)のウェル811を有するマルチウェルプレート81内にそれぞれ予め貯留されている。
【0138】
なお、糖鎖の遊離は、本実施形態では電気泳動処理を用いているが、これに限定されず、例えば、アフィニティークロマトグラフィー処理またはイオン交換クロマトグラフィー処理を用いてもよい。また、前記試料からの糖タンパク質の精製を省略してもよい場合には、前記試料に含まれる糖タンパク質に対して直接糖鎖を遊離させる処理を施すようにしてもよい。
【0139】
また、糖鎖は、生体内物質のなかで唯一、アルデヒド基をもつ物質である。すなわち、糖鎖は、水溶液等の状態で環状のヘミアセタール型と、非環状型のアルデヒド型とが平衡で存在する物質である。
【0140】
これに対して、タンパク質、核酸および脂質等の糖鎖以外の生体内物質には、通常、アルデヒド基が含まれていない。
【0141】
このことから、アルデヒド基と特異的に反応して安定な結合を形成する官能基を有する捕捉担体を利用すれば、糖鎖のみを選択的に捕捉することが可能である。
【0142】
アルデヒド基と特異的に反応する官能基としては、例えば、ヒドラジド基、オキシルアミノ基、アミノ基、セミチオカルバジド基およびそれらの誘導体が好ましく、ヒドラジド基またはオキシルアミノ基がより好ましく用いられる。オキシルアミノ基とアルデヒド基との反応によって生じるオキシム結合、およびヒドラジド基とアルデヒド基との反応によって生じるヒドラゾン結合は、酸処理等によって容易に切断されるため、糖鎖を捕捉したのち、糖鎖を担体から簡単に切り離すことができる。
【0143】
なお、一般的に,生理活性物質の捕捉・担持にはアミノ基が多用されているが、アミノ基とアルデヒド基の反応によって生じる結合(シッフ塩基)は結合力が弱いため、還元剤等を用いた二次処理が必要であることから、アミノ基は糖鎖の捕捉には好ましくない。
【0144】
糖鎖を捕捉するための担体としては、ポリマー粒子を用いることが好ましい。さらに、このポリマー粒子は、少なくとも表面の一部に糖鎖のアルデヒド基と特異的に反応する官能基を有した固体またはゲル粒子であることが好ましい。
【0145】
ポリマー粒子が固体粒子またはゲル粒子であれば、ポリマー粒子に糖鎖を捕捉させた後に、第1の上側プレート100が備えるウェル101を用いて、かかる粒子を容易に回収することができる。
【0146】
このようなポリマー粒子としては、例えば、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0147】
【化1】

【0148】
精製装置1では、糖鎖と特異的に結合する捕捉担体として、ポリマー粒子20を用い、ポリマー粒子20上に糖鎖を捕捉する。
【0149】
ポリマー粒子20は、当該ポリマー粒子20を純水21中に分散させた粒子分散液22としてタンク82に予め貯留されている。
【0150】
なお、ポリマー粒子20の形状は、特に限定されないが、例えば、球状またはそれに類する形状が好ましい。ポリマー粒子20が球状の場合、平均粒径は、好ましくは0.05〜1000μm程度、より好ましくは0.05〜200μm程度、さらに好ましくは0.1〜200μm程度、最も好ましくは0.1〜100μm程度に設定される。平均粒径が下限値未満では、ポリマー粒子20を遠心分離やろ過で回収することが困難となるおそれがある。また、平均粒径が上限値を超えると、ポリマー粒子20と、後述する試料溶液との接触面積が少なくなり、糖鎖捕捉の効率が低下するおそれがある。
【0151】
さて、精製装置1では、以下の「捕捉担体供給工程(第1の工程)」、「糖鎖捕捉工程(第2の工程)」、「物質除去工程(第3の工程)」、「再遊離工程(第4の工程)」、「糖鎖精製工程(第5の工程)」が順に行なわれる。また、これらの工程の間に、必要に応じて、1以上の任意の目的の工程が行なわれる。
【0152】
捕捉担体供給工程は、第1の上側プレート100の各ウェル101にそれぞれ糖鎖と特異的に結合する捕捉担体(ポリマー粒子20)を供給する工程である。この捕捉担体供給工程では、プレート組立体10を第1の状態として用いる。
【0153】
糖鎖捕捉工程は、第1の上側プレート100の各ウェル101にそれぞれ糖鎖含有液23をノズル41から分注して、糖鎖含有液23とポリマー粒子20とを接触させ、ポリマー粒子20上に糖鎖を捕捉する工程である。この糖鎖捕捉工程では、捕捉担体供給工程に引き続き、プレート組立体10を第1の状態として用いる。
【0154】
物質除去工程は、ポリマー粒子20に結合した糖鎖以外の物質を除去する工程である。この物質除去工程では、プレート組立体10を第1の状態として用いる。
【0155】
再遊離工程は、ポリマー粒子20に結合した糖鎖を再遊離させる工程である。この再遊離工程では、物質除去工程に引き続き、プレート組立体10を第1の状態として用いる。
【0156】
糖鎖精製工程は、再遊離した糖鎖をポリマー粒子20と分離して精製する工程である。この糖鎖精製工程では、プレート組立体10を順に第2の状態、第3の状態、第4の状態として用いる。第2の状態は、ステージ3上で、第1の状態のプレート組立体10から、第1の下側プレート300と第2の下側プレート200とを交換して、当該第2の下側プレート200を第2の支持台500(支持体700)に支持することによりなる。第3の状態は、第2の状態のプレート組立体10から、第1の上側プレート100と第2の上側プレート100’とを交換して、当該第2の上側プレート100’が第1の支持台400(支持体700)を支持し、第2の下側プレート200と第1の下側プレート300とを交換して、当該第1の下側プレート300を第2の支持台500(支持体700)に支持することによりなる。また、第4の状態は、第3の状態のプレート組立体10から、第1の下側プレート300と第2の下側プレート200とを交換して、当該第2の下側プレート200が第2の支持台500(支持体700)に支持することによりなる。
【0157】
[1] 捕捉担体供給工程
[1−1(プレート組立体載置)] 図8(1)に示すように、プレート組立体10を第1の状態とし、当該プレート組立体10をステージ3(プレート組立体載置部31)上に載置する。なお、ステージ3に埋設されているヒータ61の作動は、未だ停止している。
【0158】
[1−2(粒子分散液吸引)] また、ノズル41を、粒子分散液22が貯留されているタンク82内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して当該ノズル41内に粒子分散液22が吸引される。
【0159】
[1−3]そして、移動手段5を作動させて、粒子分散液22を吸引したノズル41をプレート組立体10上に移動させる。また、この移動に伴って、プレート組立体10の第1の上側プレート100の各ウェル101にそれぞれ粒子分散液22(ポリマー粒子20)を供給する(分注する)。
【0160】
[2] 吸引工程
次に、図8(2)に示すように、吸引ポンプ13を作動させて、プレート組立体10の内部空間9aを負圧とし、これにより、各ウェル101内の粒子分散液22をそれぞれ吸引する。
【0161】
これにより、各ウェル101では、それぞれ、粒子分散液22中の純水21はフィルタ105を透過する。これに対して、フィルタ105の細孔径と、ポリマー粒子20の粒径との関係により、ポリマー粒子20はフィルタ105を透過することができない。そのため、フィルタ105を透過した純水21が、貫通孔104を介して、第1の下側プレート300(凹部301)内に選択的に供給される。
【0162】
その結果、図8(3)に示すように、ポリマー粒子20が第1の上側プレート100のウェル101内に単独で充填された状態となる。
【0163】
[3] ノズル洗浄工程
次に、移動手段5を作動させて、ノズル41を、洗浄液71が充填された洗浄槽7内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して洗浄液71が出入りを繰り返し、ノズル41が洗浄される。
【0164】
[4] 糖鎖捕捉工程
[4−1(糖鎖含有液吸引)] 次に、移動手段5を作動させて、ノズル41を、糖鎖含有液23が貯留されているマルチウェルプレート81のウェル811内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して当該ノズル41内に糖鎖含有液23が吸引される。糖鎖含有液23は、アセトニトリルに代表される揮発性の有機溶剤およびpH調整剤としての酸(酢酸等)を含んでいてもよい。
【0165】
[4−2(糖鎖含有液供給)] そして、図9(4)に示すように、移動手段5を作動させて、糖鎖含有液23を吸引したノズル41をプレート組立体10上に移動させる。また、この移動に伴って、プレート組立体10の第1の上側プレート100の各ウェル101にそれぞれ糖鎖含有液23を供給する(分注する)。
【0166】
[4−3(糖鎖含有液加熱)] 次に、図9(5)に示すように、ヒータ61を作動させる。これにより、ヒータ61の熱がステージ3、第2の支持台500、第1の支持台400、第1の上側プレート100を順に伝わり、第1の上側プレート100上の糖鎖含有液23が加熱される。この加熱は、糖鎖含有液23が乾燥するまで、一定の温度範囲(加熱温度)に保たれる。
【0167】
これにより、ポリマー粒子20と、糖鎖含有液23中に含まれる糖鎖とが反応し、ポリマー粒子20上に糖鎖が捕捉される。
【0168】
この際の反応系のpHは、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜7であり、さらに好ましくは2〜6である。なお、pH調整は、例えば、第1の上側プレート100の各ウェル101の糖鎖含有液23に、各種緩衝液または有機溶媒を添加することにより行うことができる。
【0169】
糖鎖捕捉時の温度は、好ましくは4〜100℃程度、より好ましくは25〜90℃程度、さらに好ましくは30〜80℃程度、最も好ましくは60〜80℃程度の温度範囲に保たれるように設定する。
【0170】
また、反応時間、すなわち、糖鎖含有液23が乾燥するまでの時間は、かかる温度範囲に設定した場合、通常、0.1〜3時間程度、好ましくは、0.6〜2時間程度に設定される。
【0171】
かかる条件で、ポリマー粒子20と糖鎖とを反応させることで、ポリマー粒子20上に糖鎖が確実に捕捉されることとなる。
【0172】
なお、本実施形態のように、糖鎖含有液23が乾燥するまで加熱する構成とすることにより、ポリマー粒子20と糖鎖との反応率の向上を確実に図ることができる。
【0173】
また、ポリマー粒子20がヒドラジド基を有するものである場合、ヒドラジド基と、糖鎖が有する還元末端との間で、下記式(2)で表される反応が進行することで、ポリマー粒子20上に糖鎖が捕捉される。
【0174】
【化2】

【0175】
以上のように、第1の状態のプレート組立体10を用いることで、第1の上側プレート100の各ウェル101内では、供給された液体の反応を進行させることができる。さらに、プレート組立体10の内部空間9aの吸引により、ウェル101に供給した液体中に含まれる固定成分と、液状成分との分離を容易に行うことができる。
【0176】
[5] ノズル洗浄工程
次に、移動手段5を作動させて、ノズル41を、洗浄液71が充填された洗浄槽7内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して洗浄液71が出入りを繰り返し、ノズル41が洗浄される。
【0177】
[6] 使用済み第1の下側プレート交換工程
[6−1(プレート組立体分解)] 図10(6)に示すように、精製装置1の操作者は、ステージ3上でプレート組立体10の支持体700を、第1の上側プレート100を支持した第1の支持台400と、使用済みの(純水21が貯留された)第1の下側プレート300を支持した第2の支持台500とに分解する。この分解操作は、第1の支持台400を第1の上側プレート100ごと持ち上げることにより、行なわれる。
【0178】
[6−2(第1の下側プレート取り外し)] 次に、図10(7)に示すように、第2の支持台500から使用済みの第1の下側プレート300を取り除く。
【0179】
[6−3(第1の下側プレート装填)] 次に、図10(8)に示すように、空の第2の支持台500に未使用の第1の下側プレート300を装填する。
【0180】
[6−4(プレート組立体組み立て)] 次に、図10(9)に示すように、未使用の第1の下側プレート300が装填された第2の支持台500上に、第1の上側プレート100を支持した第1の支持台400を重ね、プレート組立体10を再度第1の状態とする。
【0181】
なお、本工程[5]を行なうときには、ヒータ61の作動を停止する。第1の下側プレート300の交換は、操作者の手作業によるので、当該操作者が火傷を負うのを確実に防止することができる。
【0182】
[7] 物質除去工程
ここで、上記のように捕捉担体としてポリマー粒子20を用いた場合、ポリマー粒子20に捕捉された糖鎖以外の物質(以下、この物質を「洗浄物質」ということもある)としては、例えば、ポリマー粒子20に捕捉されなかった糖鎖の他、ポリマー粒子20の表面に、非特異的に吸着している糖鎖以外の莢雑物(タンパク質、ペプチド、脂質等)が挙げられる。
【0183】
そのため、本工程[7]では、これらの物質を洗浄液24で洗浄することで除去する。洗浄液24としては、特に限定されないが、水、各種緩衝液、各種有機溶媒等が挙げられ、これらを適宜組み合わせて用いることができる。
【0184】
[7−1(洗浄液吸引)] まず、移動手段5を作動させて、ノズル41を、洗浄液24が貯留されているタンク83内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して当該ノズル41内に洗浄液24が吸引される。
【0185】
[7−2(洗浄液供給)] そして、図11(10)に示すように、移動手段5を作動させて、洗浄液24を吸引したノズル41をプレート組立体10上に移動させる。また、この移動に伴って、プレート組立体10の第1の上側プレート100の各ウェル101にそれぞれ洗浄液24を供給する(添加する)。
【0186】
[7−3(洗浄液吸引)] 次に、図11(11)に示すように、吸引ポンプ13を作動させて、プレート組立体10の内部空間9aを負圧とし、これにより、各ウェル101内の洗浄液24をそれぞれ吸引する。
【0187】
その結果、洗浄液24をフィルタ105を透過させることができ、図11(12)に示すように、第1の上側プレート100にポリマー粒子20を残存させた状態で、第1の上側プレート100から選択的に洗浄液24を、第1の下側プレート300内に除去することができるとともに、洗浄液24中に溶解した洗浄物質を除去することができる。
【0188】
図11(10)〜(12)に示す作動を、複数回繰り返して行うことで、洗浄物質を洗浄液24中に溶解させた状態で、第1の下側プレート300に分離することができるため、洗浄物質を糖鎖が捕捉されたポリマー粒子20から確実に除去することができる。
【0189】
なお、この場合、まず水または緩衝液を洗浄液24として用いて十分にポリマー粒子20を洗浄したのち、さらに有機溶媒の洗浄液24で洗浄し、必要に応じてこれら洗浄液24による洗浄を繰り返し行い、最後に有機溶媒の洗浄液24で洗浄するのが好ましい。これにより、洗浄物質、特に、非特異的にポリマー粒子20の表面に吸着する夾雑物をより確実に除去することができるようになる。
【0190】
[8] ノズル洗浄工程
次に、移動手段5を作動させて、ノズル41を、洗浄液71が充填された洗浄槽7内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して洗浄液71が出入りを繰り返し、ノズル41が洗浄される。
【0191】
[9] 再遊離工程
ここでは、ポリマー粒子20に結合した糖鎖を再遊離させるとともに、この糖鎖を別の化合物(以下、「化合物A」と言うこともある。)に置換する、すなわち、化合物Aで糖鎖をラベル化する。なお、この化合物Aとしては、蛍光物質、吸光物質および放射性物質等を備えるラベル化試薬が好ましく用いられる。
【0192】
[9−1(化合物含有液吸引)] まず、移動手段5を作動させて、ノズル41を、化合物Aを含有する化合物含有液25が貯留されているタンク84内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して当該ノズル41内に化合物含有液25が吸引される。
【0193】
[9−2(化合物含有液供給)]そして、図12(13)に示すように、移動手段5を作動させて、化合物含有液25を吸引したノズル41をプレート組立体10上に移動させる。また、この移動に伴って、プレート組立体10の第1の上側プレート100の各ウェル101にそれぞれ化合物含有液25を供給する。
【0194】
第1の上側プレート100のウェル101内に添加する化合物Aの添加量は、糖鎖が捕捉されたポリマー粒子20に対して、過剰量となっているのが好ましい。これにより、次で化合物含有液25を加熱した際における糖鎖に対する化合物Aの置換率の向上を図ることができる。
【0195】
具体的には、化合物Aの添加量は、ポリマー粒子20が有する糖鎖と特異的に反応する官能基量に対して、好ましくは1.5倍量以上、より好ましくは3倍量以上、さらに好ましくは5倍量以上であり、最も好ましくは10倍量以上に設定される。
【0196】
[9−3(化合物含有液加熱)] 次に、図12(14)に示すように、ヒータ61を作動させる。これにより、第1の上側プレート100上の化合物含有液25が加熱される。この加熱は、化合物含有液25が乾燥するまで、一定の温度範囲(加熱温度)に保たれる。
【0197】
これにより、捕捉された糖鎖はポリマー粒子20から切り離され、それとほぼ同時に糖鎖に化合物Aが付加することとなるため、糖鎖は化合物Aでラベル化されることとなる。以下、化合物Aでラベル化された糖鎖を「ラベル化糖鎖」と言うこともある。
【0198】
また、この際の反応系のpHは、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜7であり、さらに好ましくは2〜6である。なお、pH調整は、例えば、第1の上側プレート100の各ウェル101にそれぞれ化合物含有液25を供給した後に、各種緩衝液を添加することにより行うことができる。
【0199】
ラベル化時の温度は、好ましくは4〜100℃程度、より好ましくは25〜90℃程度、さらに好ましくは30〜80℃程度、最も好ましくは60〜80℃程度の温度範囲に保たれるように設定する。
【0200】
また、反応時間、すなわち溶液が乾燥するまでの時間は、かかる温度範囲に設定した場合、通常、0.1〜3時間程度、好ましくは、0.6〜2時間程度に設定される。
かかる条件で、ラベル化を行うことで、糖鎖が確実に化合物Aによりラベル化される。
【0201】
なお、本実施形態のように、化合物含有液25が乾燥するまで加熱する構成とすることにより、糖鎖と化合物Aとの反応率の向上を確実に図ることができる。
【0202】
なお、化合物Aとしては、アミノオキシ基またはヒドラジド基を有する化合物が好ましく用いられ、ポリマー粒子20がヒドラジド基を有するものである場合、特に、下記化学式(3)で表されるN-aminooxyacetyl-tryptophanyl(arginine methyl ester)が好ましく用いられる。
【0203】
【化3】

【0204】
[10] ノズル洗浄工程
次に、移動手段5を作動させて、ノズル41を、洗浄液71が充填された洗浄槽7内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して洗浄液71が出入りを繰り返し、ノズル41が洗浄される。
【0205】
[11] 第1・第2下側プレート交換工程
[11−1(プレート組立体分解)] 図13(15)に示すように、精製装置1の操作者は、ステージ3上でプレート組立体10の支持体700を、第1の上側プレート100を支持した第1の支持台400と、純水21と洗浄液24との混合液が貯留された第1の下側プレート300を支持した第2の支持台500とに分解する。この分解操作は、第1の支持台400を第1の上側プレート100ごと持ち上げることにより、行なわれる。
【0206】
[11−2(第1の下側プレート取り外し)] 次に、図13(16)に示すように、第2の支持台500から第1の下側プレート300を取り除く。
【0207】
[11−3(第2の下側プレート装填)] 次に、図13(17)に示すように、空の第2の支持台500に未使用の第2の下側プレート200を装填する。
【0208】
[11−4(プレート組立体組み立て)] 次に、図13(18)に示すように、未使用の第2の下側プレート200が装填された第2の支持台500上に、第1の上側プレート100を支持した第1の支持台400を重ね、プレート組立体10を第2の状態とする。
【0209】
なお、本工程[11]を行なうときには、ヒータ61の作動を停止する。第1の下側プレート300と第2の下側プレート200との交換は、操作者の手作業によるので、当該操作者が火傷を負うのを確実に防止することができる。
【0210】
[12] 糖鎖精製工程
ここで、上記のようにポリマー粒子20に捕捉された糖鎖を再遊離させることで、ラベル化糖鎖を得た場合、化合物Aでラベル化された糖鎖以外に、第1の上側プレート100中に含まれる物質としては、糖鎖が遊離したポリマー粒子20および糖鎖のラベル化に使用されなかった化合物A(以下、「未使用化合物A」と言うこともある。)が挙げられる。
【0211】
そのため、本工程[12]では、これらポリマー粒子20および未使用化合物Aを除去することで、ラベル化糖鎖の精製を行う。
【0212】
[12−1(溶解液吸引)] まず、移動手段5を作動させて、ノズル41を、乾燥したラベル化糖鎖を溶解し得る液剤である溶解液26が貯留されているタンク85内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して当該ノズル41内に溶解液26が吸引される。この溶解液26としては、特に限定されるものではないが、水、各種緩衝液、各種有機溶剤等が挙げられる。
【0213】
[12−2(溶解液供給)] そして、図14(19)に示すように、移動手段5を作動させて、溶解液26を吸引したノズル41をプレート組立体10上に移動させる。また、この移動に伴って、プレート組立体10の第1の上側プレート100の各ウェル101にそれぞれ溶解液26を供給する。
【0214】
[12−3(溶解液吸引)] 次に、図14(20)に示すように、吸引ポンプ13を作動させて、プレート組立体10の内部空間9aを負圧とし、これにより、各ウェル101内の溶解液26をそれぞれ吸引する。これにより、第1の上側プレート100の各ウェル101では、それぞれ、溶解液26がフィルタ105を透過する。
【0215】
そして、図14(21)に示すように、第1の上側プレート100の各ウェル101では、ポリマー粒子20を残存させた状態となっており、このウェル101に対応する、第2の下側プレート200のウェル201では、溶解液26が貯留されている。また、その際には、溶解液26中に溶解したラベル化糖鎖も第2の下側プレート200のウェル201に移動させることができる。その結果、ラベル化糖鎖とポリマー粒子20とが分離される。また、未使用化合物Aも、通常、溶解液26に対して溶解性を示すため、溶解液26に溶解した状態で、第2の下側プレート200のウェル201に移動する。
【0216】
[12−4(ノズル洗浄)] 次に、移動手段5を作動させて、ノズル41を、洗浄液71が充填された洗浄槽7内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して洗浄液71が出入りを繰り返し、ノズル41が洗浄される。
【0217】
[12−5(プレート組立体分解)] 図15(22)に示すように、精製装置1の操作者は、ステージ3上でプレート組立体10の支持体700を、第1の上側プレート100を支持した第1の支持台400と、溶解液26が貯留された第2の下側プレート200を支持した第2の支持台500とに分解する。この分解操作は、第1の支持台400を第1の上側プレート100ごと持ち上げることにより、行なわれる。
【0218】
[12−6(第1の上側プレート取り外し)] 次に、図15(23)に示すように、第1の支持台400を第2の支持台500の隣に載置して、第1の支持台400から、使用済みの(ポリマー粒子20が残留した)第1の上側プレート100を取り除く。
【0219】
[12−7(第2の上側プレート装填)] 次に、図15(24)に示すように、空の第1の支持台400に未使用の第2の上側プレート100’を装填する。
【0220】
[12−8(洗浄液移し換え)] 次に、図16(25)および(26)に示すように、移動手段5を作動させつつ、ノズル41を用いて、第2の下側プレート200のm行n列のウェル201内の溶解液26を、未使用の第2の上側プレート100’のm行n列(ウェル201と同じ行列)のウェル101’に移し換える(本実施形態では、mは1〜12までの整数であり、nは1〜8までの整数である)。
【0221】
[12−9(第2の下側プレート取り外し)] 次に、図17(27)に示すように、第2の支持台500から第2の下側プレート200を取り除く。
【0222】
[12−10(第1の下側プレート装填)] 次に、図17(28)に示すように、空の第2の支持台500に未使用の第1の下側プレート300を装填する。
【0223】
[12−11(プレート組立体組み立て)] 次に、図17(29)に示すように、未使用の第1の下側プレート300が装填された第2の支持台500上に、第2の上側プレート100’を支持した第1の支持台400を重ね、プレート組立体10を第3の状態とする。
【0224】
[12−12(溶解液吸引)] 次に、図18(30)に示すように、吸引ポンプ13を作動させて、プレート組立体10の内部空間9bを負圧とし、これにより、各ウェル101’内の溶解液26をそれぞれ吸引する。
【0225】
この際、フィルタ106をアセトニトリル等の非水溶媒で希釈した溶解液26が透過するため、当該溶解液26に含まれるラベル化糖鎖と未使用化合物Aとは、シリカゲルで構成されたフィルタ106に吸着する。フィルタ106(シリカゲル)への吸着力は、未使用化合物Aよりもラベル化糖鎖の方が高い。したがって、図18(31)に示すように、第1の下側プレート300(凹部301)内には、未使用化合物Aの一部が溶解液26とともに流入する(貯留される)。なお、フィルタ106には、ラベル化糖鎖と、溶解液26に含まれていた未使用化合物Aのうちの、前記第1の下側プレート300内に流入した未使用化合物Aの一部を除く残りの未使用化合物Aとが吸着した状態となっている。
【0226】
[12−13(非水溶媒吸引)] 次に、移動手段5を作動させて、ノズル41を、アセトニトリル等の非水溶媒27が貯留されているタンク86内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して当該ノズル41内に非水溶媒27が吸引される。
【0227】
[12−14(非水溶媒供給)] そして、図19(32)に示すように、移動手段5を作動させて、非水溶媒27を吸引したノズル41をプレート組立体10上に移動させる。また、この移動に伴って、プレート組立体10の第2の上側プレート100’の各ウェル101’にそれぞれ非水溶媒27を供給する。
【0228】
[12−15(非水溶媒吸引)] 次に、図19(33)に示すように、吸引ポンプ13を作動させて、プレート組立体10の内部空間9bを負圧とし、これにより、各ウェル101’内の非水溶媒27をそれぞれ吸引する。これにより、第2の上側プレート100’の各ウェル101’では、それぞれ、非水溶媒27がフィルタ106を透過する。この際、図19(34)に示すように、フィルタ106に吸着した状態となっている未使用化合物Aのほとんどが、フィルタ106から洗い流されて、すなわち、除去されて、非水溶媒27ともに第1の下側プレート300内に流入する。なお、未使用化合物Aが若干フィルタ106に吸着していたとしても、その量は、後述するHPLCや質量分析装置での測定時に、実質的に影響のない程度である。また、フィルタ106には、依然としてラベル化糖鎖が吸着した状態となっている。
【0229】
[12−16(ノズル洗浄)] 次に、移動手段5を作動させて、ノズル41を、洗浄液71が充填された洗浄槽7内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して洗浄液71が出入りを繰り返し、ノズル41が洗浄される。
【0230】
[12−17(プレート組立体分解)] 図20(35)に示すように、精製装置1の操作者は、ステージ3上でプレート組立体10の支持体700を、第2の上側プレート100’を支持した第1の支持台400と、溶解液26と非水溶媒27との混合液が貯留された第1の下側プレート300を支持した第2の支持台500とに分解する。この分解操作は、第1の支持台400を第2の上側プレート100’ごと持ち上げることにより、行なわれる。
【0231】
[12−18(第1の下側プレート取り外し)] 次に、図20(36)に示すように、第2の支持台500から第1の下側プレート300を取り除く。
【0232】
[12−19(第2の下側プレート装填)] 次に、図20(37)に示すように、空の第2の支持台500に未使用の第2の下側プレート200を装填する。
【0233】
[12−20(プレート組立体組み立て)] 次に、図20(38)に示すように、未使用の第2の下側プレート200が装填された第2の支持台500上に、第2の上側プレート100’を支持した第1の支持台400を重ね、プレート組立体10を第4の状態とする。
【0234】
[12−21(水吸引)] 次に、移動手段5を作動させて、ノズル41を、水28が貯留されているタンク87内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して当該ノズル41内に水28が吸引される。
【0235】
[12−22(水供給)] そして、図21(39)に示すように、移動手段5を作動させて、水28を吸引したノズル41をプレート組立体10上に移動させる。また、この移動に伴って、プレート組立体10の第2の上側プレート100’の各ウェル101’にそれぞれ水28を供給する。
【0236】
[12−23(水吸引)] 次に、図21(40)に示すように、吸引ポンプ13を作動させて、プレート組立体10の内部空間9bを負圧とし、これにより、各ウェル101’内の水28をそれぞれ吸引する。これにより、第2の上側プレート100’の各ウェル101’では、それぞれ、水28がフィルタ106を透過する。この際、図21(41)に示すように、フィルタ106に吸着した状態となっているラベル化糖鎖が、フィルタ106から剥離して、水28とともに第2の下側プレート200のウェル201内に流入する、すなわち、精製(分離)される。
【0237】
[12−24(ノズル洗浄)] 次に、移動手段5を作動させて、ノズル41を、洗浄液71が充填された洗浄槽7内に挿入し、その状態でポンプ42を作動させる。これにより、ノズル41の先端開口部411を介して洗浄液71が出入りを繰り返し、ノズル41が洗浄される。
【0238】
以上のような工程を経ることで、プレート組立体10を用いて、化合物Aでラベル化された糖鎖が精製される。
【0239】
また、化合物Aでラベル化された糖鎖は、MALDI-TOF MSに代表される質量分析、さらに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の手法で分析することができる。特に、糖鎖が前述した化学式(3)で表されるN-aminooxyacetyl-tryptophanyl(arginine methyl ester)でラベル化されている場合、MALDI-TOF MSを用いて高感度分析を行うことができる。また、糖鎖が例えば2−アミノベンズアミドでラベル化されている場合、HPLCを用いて高感度分析が可能である。
【0240】
このような精製装置1によれば、ステージ3上のプレート組立体10に対し、第1の上側プレート100と第2の上側プレート100’とを交換することができるとともに、第1の下側プレート300と第2の下側プレート200とを交換することができる。
【0241】
特に、前記のように、第1の支持台400と第2の支持台500とは、第1の支持台400が第1の上側プレート100または第2の上側プレート100’を支持し、第2の支持台500が第1の下側プレート300または第2の下側プレート200を支持した状態で、分解・組立可能に構成されている。そして、第1の支持台400と第2の支持台500とが分解された状態で、第1の上側プレート100と第2の上側プレート100’との交換と、第1の下側プレート300と第2の下側プレート200との交換とをそれぞれ行なうことができ、その後の組立も容易に行なうことができる。
【0242】
このように精製装置1では、プレート交換をステージ3上で容易かつ迅速に行なうことができるよう構成されている。
【0243】
これにより、各工程での使用に適するように、ステージ3上のプレート組立体10を第1の状態〜第4の状態のうちのいずれかの状態に容易かつ確実にすることができ、よって、簡単にかつ優れた精度で多量の糖鎖を分離精製することができる。
【0244】
なお、[7]物質除去工程の直後か、または[9]再遊離工程の直前に、捕捉担体(ポリマー粒子20)が備える官能基を失活させる工程が行なわれるのが好ましい。この工程では、前記工程[4]において、糖鎖の捕捉に用いられなかった、捕捉担体が備える官能基(糖鎖のアルデヒド基と特異的に反応する官能基)を失活させる。これにより、捕捉担体に糖鎖以外の不純物が化学的に結合するのを確実に防止することができるため、糖鎖の精製率の向上を図ることができる。
【0245】
捕捉担体が備える官能基の失活は、例えば、前記官能基を失活させる機能を有する失活液を、捕捉担体に接触させ、静置することにより行うことができる。失活液としては、特に限定されないが、官能基がヒドラジド基である場合、例えば、無水酢酸、無水コハク酸等の酸無水物が挙げられる。これにより、官能基を容易に失活させることができる。
【0246】
反応条件としては、失活液:10%無水酢酸/メタノール、温度:常温(室温)、静置時間:30分間が好ましいが、これに限定されることはない。また、プレート組立体10を第1の状態として使用する。
【0247】
また、[12−4(ノズル洗浄)]と[12−5(プレート組立体分解)]との間に、「非水溶媒供給」が行なわれるのが好ましい。この非水溶媒供給とは、アセトニトリルを第1の上側プレート100の各ウェル101に供給し、吸引することをいう。この非水溶媒供給により、ウェル101内に残っているラベル化糖鎖を残らず第2の下側プレート200に回収する(洗い流す)とともに、第2の下側プレート200に溜まっているラベル化糖鎖溶液をアセトニトリル溶液に調製することができる。なお、アセトニトリルを加えることにより、溶液の疎水性が上がるため、ラベル化糖鎖(親水性)が、シリカゲルで構成されたフィルタ106(親水性)に保持され易くなる。ラベル化糖鎖が水溶液の状態では、フィルタ106に保持され難い。通常、アセトニトリル含量が90%以上(好ましくは95%)となるように調製される。
【0248】
<第2実施形態>
図22は、本発明の糖鎖精製装置の第2実施形態を示す斜視図である。
【0249】
以下、この図を参照して本発明の糖鎖精製装置および糖鎖精製方法の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、加熱手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0250】
図22に示す本実施形態の精製装置1では、ステージ3からヒータ61(加熱手段6)が省略されており、それに代えて、加熱手段6Aは、ステージ3と異なる位置に配置されたチャンバ62と、チャンバ62内を加熱するヒータ63とを備えたものとなっている。
【0251】
チャンバ62は、箱状をなし、第1の上側プレート100が出し入れられる口部641を有するチャンバ本体64と、口部641を開閉する扉65とを有している。
【0252】
また、ヒータ63は、チャンバ62内に配置され、通電により発熱するニクロム線等のような電熱線で構成されている。
【0253】
そして、第1の上側プレート100のウェル101内の液体を加熱したいときには、精製装置1の操作者は、第1の上側プレート100をチャンバ62内に移して、ヒータ63を作動させ、その加熱を行なうことができる。
【0254】
<第3実施形態>
図23は、本発明の糖鎖精製装置の第3実施形態を示す斜視図である。
【0255】
以下、この図を参照して本発明の糖鎖精製装置および糖鎖精製方法の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、加熱手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0256】
図23に示す本実施形態の精製装置1では、ステージ3からヒータ61(加熱手段6)が省略されており、それに代えて、加熱手段6Bは、ステージ3のプレート組立体載置部31に隣接して配置され、熱媒体が充填された凹部661を有する加熱装置本体66と、凹部661内を加熱するヒータ67とを備えた恒温槽(ヒートブロック)である。なお、熱媒体としては、特に限定されず、例えば、水等のような液体を用いることができる。
【0257】
加熱装置本体66は、図中の上方に向かって開口した凹部661を有している。この凹部661に熱媒体を充填して、その充填状態のまま第1の上側プレート100を収納することができる。
【0258】
また、ヒータ67は、凹部661の外側に配置され、通電により発熱するニクロム線等のような電熱線で構成されている。このヒータ67の熱は、熱媒体を介して第1の上側プレート100に伝達される。
【0259】
そして、第1の上側プレート100のウェル101内の液体を加熱したいときには、精製装置1の操作者は、熱媒体が充填された凹部661に第1の上側プレート100を移して、ヒータ67を作動させ、その加熱を行なうことができる。
【0260】
<第4実施形態>
以下、本発明の糖鎖精製装置および糖鎖精製方法の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0261】
本実施形態は、再遊離工程では、再遊離とラベル化とのタイミングがズレている、すなわち、再遊離の後にラベル化すること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0262】
本工程では、化合物Aとして、芳香族アミンで構成される蛍光物質が用いられる。
化合物Aとして、このような芳香族アミンを用いた場合、ポリマー粒子20上に捕捉された糖鎖は、まずポリマー粒子20から切り離されて再遊離した後に、化合物Aによりラベル化されることとなる。
【0263】
以下、化合物Aとして芳香族アミンを用いて、糖鎖を化合物Aでラベル化する場合について説明する。
【0264】
[9−1’]まず、ノズル41を用いて、糖鎖を再遊離させる糖鎖遊離液を、糖鎖が捕捉されたポリマー粒子20が充填された第1の上側プレート100の各ウェル101内に添加する(供給する)。
【0265】
[9−2’]次に、ヒータ61を作動させて糖鎖遊離液を加熱することで、添加した糖鎖遊離液が乾燥するまで、糖鎖遊離液を一定の温度範囲に保つ。これにより、捕捉された糖鎖がポリマー粒子20から切り離されることで、糖鎖は再遊離する。
【0266】
この際の反応系のpHは、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜7であり、さらに好ましくは2〜6である。このpH調整が、前記工程[9−1’]における糖鎖遊離液の添加により行われ、各種緩衝液が糖鎖遊離液として用いられる。
【0267】
糖鎖遊離時の温度は、好ましくは4〜100℃程度、より好ましくは25〜90℃程度、さらに好ましくは30〜80℃程度、最も好ましくは60〜80℃程度の温度範囲に保たれるように設定する。
【0268】
また、反応時間、すなわち溶液(糖鎖遊離液)が乾燥するまでの時間は、かかる温度範囲に設定した場合、通常、0.1〜3時間程度、好ましくは、0.6〜2時間程度に設定される。
【0269】
かかる条件で、糖鎖の再遊離を行うことで、糖鎖がポリマー粒子20から確実に切り離される。
【0270】
なお、本実施形態のように、糖鎖遊離液が乾燥するまで加熱する構成とすることにより、糖鎖の遊離率の向上を確実に図ることができる。
【0271】
[9−3’]次に、化合物Aとして芳香族アミンを含有する化合物含有液25を、ポリマー粒子20から糖鎖が遊離している、マルチウェルフィルタプレート100のウェル101内にノズル41を用いて添加する。
【0272】
芳香族アミン(化合物A)としては、特に限定されないが、例えば、2−Aminobenzamide、2−Aminobenzoic acid、8−Aminopyrene−1,3,6−trisulfonate、8−Aminonaphthalene−1,3,6−trisulphonate、2−Amino9(10H)−acridone、5−Aminofluorescein、Dansylethylenediamine、7−Amino−4−methylcoumarine、3−Aminobenzoic acid、7−Amino−1−naphtholおよび3−(Acetylamino)−6−aminoacridine等が挙げられる。中でも2−aminobenzamideまたは2−aminobenzoic acidであるのが好ましい。これらの化合物は、試薬としての入手、反応の簡便性から好適に用いられる。
【0273】
また、芳香族アミンとして2−aminobenzamideまたは2−aminobenzoic acidを用いる場合、一般的な条件では0.35mol/Lで使用されるが、本工程では、化合物含有液25添加後のウェル101内の溶液、すなわち、再遊離した糖鎖を含む溶液における芳香族アミンの濃度は、好ましくは0.5mol/L以上、より好ましくは1.4mol/L以上に設定される。これにより、化合物Aによる糖鎖の標識効率を向上させることが可能となる。ただし、濃度が3mol/L以上になると、後の糖鎖精製工程において、反応に使用されなかった芳香族アミン(化合物A)を除去するのが困難となるおそれがあるため、最も好ましい濃度は1.4mol/L以上3mol/L以下に設定される。
【0274】
また、液量に関して、ウェル101内に充填されたポリマー粒子20で規定する場合、通常はポリマー粒子20が浸る程度の液量、例えば、5mgのポリマー粒子20に対して50μL程度に設定されるが、液量(容量)を倍量の100μL程度に設定するのが好ましい。これにより、化合物Aによる糖鎖の標識効率を向上させることが可能となる。ただし、液量は100μLを超えても良いが、一定量を超えると、後の糖鎖精製工程において、反応に使用されなかった芳香族アミン(化合物A)を除去するのが困難となるおそれがあるため、最も好まし液量は100μL〜200μLの間に設定される。
【0275】
より具体的には、芳香族アミンとして2−aminobenzamideを用いる場合、ウェル101内に、1.4 M 2-Aminobenzamid, 1 M sodium cyanoborohydrideの濃度になるように30%酢酸/ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた溶液100μLを化合物含有液25として添加する。
【0276】
[9−4’]次に、ヒータ61を作動させて化合物含有液25を加熱することで、化合物含有液25を一定の温度範囲に保つ。これにより、ポリマー粒子20から再遊離している糖鎖は化合物Aと反応し、その結果、糖鎖は化合物Aでラベル化されることとなる。
【0277】
この際の反応系のpHは、好ましくは2〜9、より好ましくは2〜7であり、さらに好ましくは2〜6である。
【0278】
ラベル化時の温度は、好ましくは0〜100℃程度、より好ましくは4〜95℃程度、さらに好ましくは30〜90℃程度の温度範囲に保たれるように設定する。
【0279】
また、反応時間は、かかる温度範囲に設定した場合、通常、0.1〜20時間程度、好ましくは、0.6〜12時間程度に設定される。
【0280】
より具体的には、芳香族アミンとして2−aminobenzamideを用いた場合、化合物含有液25を30〜70℃の温度範囲で加熱して、1〜10時間程度、反応する。
かかる条件で、ラベル化を行うことで、糖鎖が確実に化合物Aによりラベル化される。
【0281】
以上のような工程[9−1’]〜[9−4’]によっても、糖鎖が化合物Aでラベル化される。
【0282】
以上、本発明の糖鎖精製装置および糖鎖精製方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、糖鎖精製装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0283】
また、分注手段のノズルは、前記各実施形態ではノズルヘッドに固定されているが、これに限定されず、ノズルヘッドに着脱自在に装着されていてもよい。
【0284】
また、移動手段は、前記各実施形態ではステージ上のプレート組立体に対して分注手段のノズルを移動するよう構成されていたが、これに限定されず、ノズルに対してステージ上のプレート組立体を移動するよう構成されていてもよい。
【0285】
また、糖鎖精製装置は、前記各実施形態ではプレート組立体において、上側プレート(第1の上側プレート、第2の上側プレート)の各ウェルが有するフィルタの下側を、その上側より負圧とすることでフィルタに液体を透過させる構成としたが、これに限定されず、フィルタの上側を、その下側より正圧とすることでフィルタに液体を透過させる構成のものであってもよい。
【0286】
また、プレート組立体は、ステージ上で、第1の上側プレートと第2の上側プレートとが交換され得るが、その交換は、ステージ上でなくてもよい。
【0287】
また、プレートの移動およびプレート組立体の分解、着脱を、前記各実施形態では精製装置の操作者(作業者)の手作業で行ったが、これに限定されず、例えば、ロボットアーム等の手段を用いて自動化してもよい。
また、糖鎖精製装置全体が、内部を加熱可能なチャンバ内に格納されていてもよい。
【符号の説明】
【0288】
1 糖鎖精製装置(精製装置)
3 ステージ
31 プレート組立体載置部
32 第1の上側プレート載置部
33 第2の上側プレート載置部
34 第1の下側プレート載置部
35 第2の下側プレート載置部
36 洗浄槽載置部
37 処理液載置部
4 分注手段
41 ノズル(ピペッタ)
411 先端開口部
42 ポンプ
43 チューブ
44 ノズルヘッド
5 移動手段
51 x軸方向移動機構(水平方向移動機構)
52 y軸方向移動機構(水平方向移動機構)
53 z軸方向移動機構(鉛直方向移動機構)
6、6A、6B 加熱手段
61 ヒータ
62 チャンバ
63 ヒータ
64 チャンバ本体
641 口部
65 扉
66 加熱装置本体
661 凹部
67 ヒータ
7 洗浄槽
71 洗浄液
81 マルチウェルプレート
811 ウェル
82、83、84、85、86、87 タンク
9a、9b 内部空間
10 プレート組立体
11 コントロールパネル
111 液晶画面
12 壁部
13 吸引ポンプ
14 チューブ
20 ポリマー粒子
21 純水
22 粒子分散液
23 糖鎖含有液(溶液)
24 洗浄液
25 化合物含有液
26 溶解液
27 非水溶媒
28 水
100 第1の上側プレート(マルチウェルフィルタプレート)
100’ 第2の上側プレート(クリーンアッププレート)
101 ウェル(第1のウェル)
101’ ウェル(第2のウェル)
103、103’ 底部
104、104’ 貫通孔
105 フィルタ(第1のフィルタ)
106 フィルタ(第2のフィルタ)
107 突起部
108、108’ 上面
109、109’ 下面
200 第2の下側プレート(マルチウェルプレート)
201 ウェル(第2の貯留部)
202 ウェル形成部
203 底部
204 上面
205 フレーム部
300 第1の下側プレート(廃液トレイ)
301 凹部(第1の貯留部)
302 上面
303 凹部形成部
304 フレーム部
400 第1の支持台(上側支持部材)
401 底部
402 開口部
403 上側外壁
404 下側外壁
405、406 凹部
407 パッキン(シール部材)
408 開口部
500 第2の支持台(下側支持部材)
501 底部
502 突出部
503 外壁
505 凹部
506 貫通孔
507 パッキン(シール部材)
600 調整板(スペーサ)
700 支持体
、d、d、d 離間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖鎖を含有する溶液中から糖鎖を精製する際に用いられる複数のウェルを有するプレートを備えるプレート組立体と、該プレート組立体が載置されるステージと、該ステージ上の前記プレート組立体に対し、液体を吸引・吐出するノズルを有する分注手段と、前記ステージ上の前記プレート組立体と前記ノズルとを相対的に移動させる移動手段とを備える糖鎖精製装置であって、
前記プレート組立体を加熱する加熱手段を備え、
前記プレート組立体は、板状をなし、その上面に開口する凹部で構成され、該凹部の底部を貫通する貫通孔が形成された複数の第1のウェルと、該各第1のウェルの貫通孔をそれぞれ覆うように設置された第1のフィルタとを有する第1の上側プレートと、
板状をなし、その上面に開口する凹部で構成され、該凹部の底部を貫通する貫通孔が形成された複数の第2のウェルと、該各第2のウェルの貫通孔をそれぞれ覆うように設置され、前記第1のフィルタと異なる第2のフィルタとを有する第2の上側プレートと、
板状をなし、その上面に開口する凹部で構成された1つの第1の貯留部を有する第1の下側プレートと、
板状をなし、その上面に開口する凹部で構成された複数の第2の貯留部を有する第2の下側プレートと、
前記第1の上側プレートおよび前記第2の上側プレートのうちの一方の上側プレートと、前記第1の下側プレートおよび前記第2の下側プレートのうちの一方の下側プレートとを上下に配置して組み立てた状態で支持する支持体とを備え、
前記プレート組立体は、前記ステージ上で、前記第1の下側プレートと前記第2の下側プレートとが交換され得ることを特徴とする糖鎖精製装置。
【請求項2】
前記第1の下側プレートと前記第2の下側プレートとの交換が行われるときには、前記加熱手段の作動が停止する請求項1に記載の糖鎖精製装置。
【請求項3】
前記プレート組立体は、前記支持体に前記第1の上側プレートが支持され、前記第1の下側プレートが支持された第1の状態と、
前記第1の状態から前記第1の下側プレートと前記第2の下側プレートとが交換され、該第2の下側プレートが前記支持体に支持された第2の状態と、
前記第2の状態から前記第1の上側プレートと前記第2の上側プレートとが交換され、該第2の上側プレートが前記支持体に支持され、前記第2の下側プレートと前記第1の下側プレートとが交換され、該第1の下側プレートが前記支持体に支持された第3の状態と、
前記第3の状態から前記第1の下側プレートと前記第2の下側プレートとが交換され、該第2の下側プレートが前記支持体に支持された第4の状態とを取り得る請求項1または2に記載の糖鎖精製装置。
【請求項4】
前記第1の状態では、前記各第1のウェルは、その貫通孔を介して、前記第1の貯留部と一括して連通しており、
前記第2の状態では、前記各第1のウェルは、その貫通孔を介して、前記各第2の貯留部とそれぞれ連通しており、
前記第3の状態では、前記各第2のウェルは、その貫通孔を介して、前記第1の貯留部と一括して連通しており、
前記第4の状態では、前記各第2のウェルは、その貫通孔を介して、前記各第2の貯留部とそれぞれ連通している請求項3に記載の糖鎖精製装置。
【請求項5】
当該糖鎖精製装置は、前記各第1のウェルにそれぞれ前記糖鎖と特異的に結合する捕捉担体を供給する第1の工程と、
前記各第1のウェルにそれぞれ前記溶液を前記ノズルから分注して、該溶液と前記捕捉担体とを接触させ、該捕捉担体上に前記糖鎖を捕捉する第2の工程と、
前記捕捉担体に結合した糖鎖以外の物質を除去する第3の工程と、
前記捕捉担体に結合した糖鎖を再遊離させる第4の工程と、
再遊離した前記糖鎖を前記捕捉担体と分離して精製する第5の工程とを順に行なうよう構成され、
前記第1の工程、前記第2の工程および前記第3の工程では、前記プレート組立体を前記第1の状態とし、前記第4の工程では、前記プレート組立体を前記第2の状態とし、前記第5の工程では、前記プレート組立体を順に前記第3の状態、前記第4の状態とする請求項4に記載の糖鎖精製装置。
【請求項6】
前記加熱手段は、前記第1の工程、前記第2の工程、前記第3の工程、前記第4の工程および前記第5の工程の各工程で、前記プレート組立体または前記第1の上側プレートに対する加熱温度を変更可能に構成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、前記ステージに埋設されたヒータを有する請求項1ないし6のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【請求項8】
前記加熱手段は、ヒータを有する恒温槽である請求項1ないし6のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【請求項9】
前記支持体は、前記一方の上側プレートを支持する上側支持部材と、該上側支持部材と別体で構成され、前記一方の下側プレートを支持する下側支持部材とを有し、
前記上側支持部材と前記下側支持部材とは、前記上側支持部材が前記一方の上側プレートを支持し、前記下側支持部材が前記一方の下側プレートを支持した状態で、分解・組立可能に構成されている請求項1ないし8のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【請求項10】
前記第1の下側プレートと前記第2の下側プレートとの交換は、前記上側支持部材と前記下側支持部材とが分解された状態で行なわれる請求項9に記載の糖鎖精製装置。
【請求項11】
前記プレート組立体では、前記一方の上側プレートの下面と前記一方の下側プレートの上面とが離間して配置され、その離間距離が0.5mm以上10mm以下である請求項1ないし10のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【請求項12】
前記第1のフィルタは、多孔性フィルムまたは不織布で構成されている請求項1ないし11のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【請求項13】
前記第1のフィルタの目開きは、0.1〜50μmである請求項12に記載の糖鎖精製装置。
【請求項14】
前記第2のフィルタは、シリカゲルで構成されている請求項1ないし13のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【請求項15】
前記分注手段は、ポンプと、該ポンプと前記ノズルとを連結するチューブとを有する請求項1ないし14のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【請求項16】
前記移動手段は、前記ノズルを水平方向に移動させる水平方向移動機構と、ノズルを鉛直方向に移動させる鉛直方向移動機構とを有する請求項1ないし15のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【請求項17】
前記ステージには、前記第1の下側プレートが複数枚重ねて載置される第1の下側プレート載置部と、前記第2の下側プレートが複数枚重ねて載置される第2の下側プレート載置部とが設けられている請求項1ないし16のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【請求項18】
前記ノズルを洗浄する洗浄槽をさらに備える請求項1ないし17のいずれかに記載の糖鎖精製装置。
【請求項19】
請求項5に記載の糖鎖精製装置を用いて、前記糖鎖を精製する方法であって、
前記第4の工程において、前記捕捉担体に結合した糖鎖を再遊離させるとともに、該糖鎖をラベル化試薬でラベル化することを特徴とする糖鎖精製方法。
【請求項20】
前記第4の工程で、前記捕捉担体からの前記糖鎖の再遊離の後に、前記糖鎖をラベル化試薬でラベル化する請求項19に記載の糖鎖精製方法。
【請求項21】
前記ラベル化試薬は、芳香族アミンで構成される蛍光物質である請求項20に記載の糖鎖精製方法。
【請求項22】
再遊離した前記糖鎖を含む前記溶液における前記蛍光物質の濃度は、0.5mol/L以上である請求項21に記載の糖鎖精製方法。
【請求項23】
前記蛍光物質は、2−Aminobenzamide、2−Aminobenzoic acid、8−Aminopyrene−1,3,6−trisulfonate、8−Aminonaphthalene−1,3,6−trisulphonate、2−Amino9(10H)−acridone、5−Aminofluorescein、Dansylethylenediamine、7−Amino−4−methylcoumarine、3−Aminobenzoic acid、7−Amino−1−naphthol、3−(Acetylamino)−6−aminoacridineから選ばれる少なくとも1種である請求項21または22に記載の糖鎖精製方法。
【請求項24】
前記捕捉担体は、ヒドラジド基またはオキシルアミノ基を有するポリマー粒子である請求項19ないし23のいずれかに記載の糖鎖精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−81939(P2013−81939A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−213078(P2012−213078)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】