説明

紙幣識別機

【課題】小型でコンパクトに構成された持ち運びに便利な紙幣識別機を提案すること。
【解決手段】紙幣識別機1では、紙幣載置面2に紙幣Pを載せ、この紙幣Pの表面に沿ってスライド枠5を手動により移動させ、スライド枠5に搭載されているイメージセンサ6によって紙幣Pの情報を読み取る。紙幣搬送路および紙幣搬送機構が不要になり、また、バッテリも不要であるので、小型でコンパクトな紙幣識別機を実現できる。また、紙幣挿入口から紙幣を入れる等の操作が不要なので、紙幣の取り扱い操作も容易になる。さらに、識別動作中においても紙幣載置面2に載せた識別対象の紙幣Pを直接に目視できるので、識別対象の紙幣Pを差し出した顧客の安心感も得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯に便利なように小型でコンパクトに構成された紙幣識別機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙幣識別機では、識別対象である紙幣がセンサ部に接するか、あるいは、センサ部の中を通過するように、一方向に紙幣を搬送して、当該紙幣に印刷されている識別情報をセンサ部によって取得するように構成されている。紙幣識別動作は、紙幣挿入口に紙幣が挿入されたことを検知すると開始するようになっている。このため、使用者は、紙幣識別の都度、比較的狭い紙幣挿入口に紙幣を挿入する必要がある。この構成の紙幣識別装置は特許文献1に開示されている。
【0003】
一方、識別対象の紙幣を収納する収納部を備えた紙幣識別機も知られている。この紙幣識別機では、収納部に収納された紙幣を、一枚ずつ分離してセンサ部に送り込む搬送機構が備わっている。
【特許文献1】特開平05−043087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の紙幣識別機は、紙幣に担持されている識別情報を読み取るためのセンサ部に向けて紙幣を搬送するための搬送路および搬送機構が必要である。このために、持ち運びに便利な小型でコンパクトに構成することが困難である。また、搬送機構を駆動するための駆動電源が必要であり、携帯するためには大容量のバッテリを搭載する必要がある。よって、この点からも、紙幣識別機の小型化、コンパクト化が困難である。
【0005】
さらに、紙幣を一枚ずつ紙幣挿入口から挿入して識別を行う形式の紙幣識別機では、狭い紙幣挿入口に紙幣を入れる操作が必要である。暗い場所などにおいては、紙幣を狭い紙幣挿入口に挿入することが容易でない場合がある。また、折り目、皺などの付いている紙幣を狭い紙幣挿入口に挿入することも容易でない場合がある。
【0006】
一方、店舗などにおいて顧客から受け取った紙幣を識別する場合、紙幣の識別動作を、顧客が直接に目視できる状態で行うことができれば、顧客に信頼感、安心感を与えることができるので好ましい。しかし、従来の紙幣識別機では、紙幣挿入口などから紙幣が内部に取り込まれ、顧客が直接に目視できない状態で当該紙幣の識別が行われる。よって、渡した紙幣がすりかえられたのではないかという顧客の不安感を払拭できないという問題点もある。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、小型・コンパクトで、低消費電力型の紙幣識別機を提案することにある。
【0008】
また、本発明の課題は、狭い紙幣挿入口から識別対象の紙幣を挿入することなく、操作性よく紙幣の識別を行うことのできる紙幣識別機を提案することにある。
【0009】
さらに、本発明の課題は、識別中の紙幣を直接に目視可能な紙幣識別機を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の紙幣識別機は、直接に目視できる状態で紙幣を載せるための紙幣載置面を備えた紙幣載置台と、前記紙幣載置面に載せた紙幣に担持されている紙幣情報を読み取るための紙幣センサとを有し、前記紙幣センサは、前記紙幣載置面に載せた紙幣の表面に沿って移動して、当該紙幣の紙幣情報を読み取るようになっていることを特徴としている。
【0011】
本発明の紙幣識別機では、識別対象の紙幣を紙幣載置面に載せ、紙幣センサを当該紙幣載置面に載せた紙幣の表面に沿って移動させることにより、紙幣に担持されている紙幣情報を読み取ることができる。紙幣載置面は直接に目視でき、紙幣センサによって紙幣情報を読み取っている間においても、その状態を直接に目視可能である。
【0012】
本発明では、識別対象の紙幣を紙幣載置面に載せ、紙幣センサの側を移動させるようにしているので、紙幣搬送路および紙幣搬送機構が不要である。紙幣センサは、紙幣載置面に載っている紙幣を読み取ることができる移動範囲内を移動させればよいので、紙幣搬送路を配置する場合に比べて、紙幣センサの移動経路は少なくて済む。また、紙幣搬送用モータ、紙幣搬送路に沿って配置した搬送ローラ、ガイドローラなどを備えた紙幣搬送機構に比べて、紙幣センサの移動機構も小型でコンパクトに構成できる。
【0013】
よって、本発明によれば、従来に比べて小型でコンパクトな紙幣識別機を実現できる。特に、紙幣センサを手動によって移動させるようにした場合には、紙幣センサの移動機構が不要であり、また、その駆動電源として用いるバッテリも不要であるので、より一層の小型化およびコンパクト化を達成できる。
【0014】
また、識別対象の紙幣を狭い紙幣挿入口に入れる必要がなく、単に紙幣載置面に置くだけでよい。したがって、紙幣識別時の操作性も改善される。
【0015】
ここで、本発明の紙幣識別機は、前記紙幣載置面に載せた紙幣を位置決めするための一対の直交する位置決め端面を有していることを特徴としている。これらの位置決め端面に、識別対象の紙幣の縦横の縁を当てることにより、紙幣載置面上において簡単に紙幣を位置決めできる。
【0016】
また、本発明の紙幣識別機は、前記紙幣センサと共に移動して、当該紙幣センサの検出面に対峙している前記紙幣載置面上の紙幣の部位を当該紙幣載置面に押え付けるための紙幣押さえ部を有していることを特徴としている。折り目や皺の付いた紙幣を紙幣載置面に載せた場合であっても、紙幣押さえ部によって紙幣載置面に押し付けられながら紙幣の情報が読み取られる。したがって、紙幣センサによって確実に紙幣情報を読み取ることができる。
【0017】
さらに、本発明の紙幣識別機は、前記紙幣載置面の前後方向の角度、および、左右方向の角度のうち、少なくとも一方の角度を切り替え可能としたことを特徴としている。このようにすれば、紙幣を載せる作業をやりやすいように紙幣載置面の角度を設定でき、また、紙幣を見やすいように紙幣載置面の角度を設定できる。
【0018】
次に、前記紙幣センサとして、紙幣の透過光を検出するイメージセンサを用いることができる。この場合、前記紙幣載置面には、前記イメージセンサの移動軌跡を包含する状態に発光面を配置すればよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の紙幣識別機は、紙幣搬送路、紙幣搬送機構が不要であるので、携帯に便利な小型でコンパクトで、低消費電力型の紙幣識別機を実現できる。また、狭い紙幣挿入口から識別対象の紙幣を挿入する必要がなく、紙幣載置面に直接に紙幣を置くだけでよいので、操作性よく紙幣の識別を行うことのできる紙幣識別機を実現できる。さらに、識別中の紙幣を外部から視認可能な紙幣識別機を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した紙幣識別機を説明する。
【0021】
図1は本発明を適用した紙幣識別機の概略斜視図であり、図2はその概略横断面図である。紙幣識別機1は、その前面に、僅かに後方に傾斜した平坦な紙幣載置面2を備えている。紙幣載置面2の下端側のケース前面部分は前方にせり出しており、このせり出した前面部分が操作面3とされ、ここに、液晶表示器4aおよび動作状態等を表すLEDランプからなる表示部4bが配置されている。また、紙幣載置面2の表面に沿って矢印方向に移動自在なスライド枠5が配置されており、このスライド枠5には、紙幣載置面2に載せた紙幣Pを読み取るためのイメージセンサ6(紙幣センサ)が配置されている。紙幣識別機1のケース内部には、液晶表示器4a、表示部4bの表示制御およびイメージセンサ6からの読取情報に基づき紙幣Pの識別を行う制御回路7aが搭載された制御基板7が配置されている。
【0022】
紙幣載置面2の下端面部分2aには前方に傾斜した紙幣案内面8が対峙しており、これら下端面部分2aと紙幣案内面8によって上方に広がったV溝9が形成されている。このV溝9の底が細幅の紙幣位置決め端面10となっている。V溝9の一方の端は開口状態となっており、他方の端部近傍の部位には、紙幣位置決め端面10から直角に上方に立ち上がっている細幅の紙幣位置決め端面11が形成されている。紙幣載置面2に載せた紙幣Pの長辺縁および短辺縁をそれぞれ紙幣位置決め端面10、11に当てることにより、紙幣Pが位置決めされた状態になる。
【0023】
スライド枠5の上端部には下向きのスライド爪12が形成されており、このスライド爪12は、紙幣識別機上端面に形成したスライド溝13に嵌っており、当該スライド溝13に沿ってスライド自在となっている。また、スライド枠5の下端部には後方に突出したスライド爪14が形成されており、このスライド爪14は、操作面3の上端部分に形成したスライド溝15に前側から嵌っており、当該スライド溝15に沿ってスライド自在となっている。
【0024】
イメージセンサ6は、スライド枠5における上下方向の中程の部位において、その受光面6aが紙幣載置面2に向く姿勢で取り付けられている。スライド枠5は、上記のように、上下のスライド溝13、15に沿って左右にスライド自在であり、図1に示す右側の端がホームポジション5Aとされており、ここから左端の想像線で示す位置5Bまでの間を往復移動自在である。スライド枠5をスライドさせると、そこに搭載されているイメージセンサ6の検出位置が、図1において一点鎖線の矢印Aで示す直線移動軌跡を描く。この直線移動軌跡A内の領域Bがイメージセンサ6の読取領域である。
【0025】
読取領域Bの開始位置および終了位置は例えば次のように検出される。これらに対応する部位に、それぞれマイクロスイッチ(図示せず)が配置されており、スライド枠5が移動すると、これらのマイクロスイッチによってその移動位置が検出される。制御回路7aは、マイクロスイッチからの検出信号に基づき、スライド枠5の位置を検出して、イメージセンサ6による読取動作の開始および終了を制御し、紙幣情報を読み取るようになっている。
【0026】
紙幣載置面2には、この読取領域Bを包含する状態で、横長の細い長方形をした発光面17が形成されている。発光面17の背面側には対応する大きさの面発光源18が配置されている。面発光源18は、例えば、図2に示すように、光源ランプ18aと、この光源ランプ18aからの射出光を拡散させて均一照明光として表面から出射する拡散板18bとを備えている。
【0027】
ここで、スライド枠5におけるイメージセンサ6の上下の部位には、紙幣押し付けローラ21、22が回転自在の状態で取り付けられている。これらの紙幣押し付けローラ21、22は、例えば、それらの回転軸(図示せず)が紙幣載置面2に対して接近および離れる方向にわずかに移動可能であり、ばね部材(図示せず)によって紙幣載置面2に押し付けられている。識別対象の紙幣Pを紙幣載置面2に載せて、スライド枠5をスライドさせると、これら一対の紙幣押し付けローラ21、22によって紙幣Pが押し付けられ、これらの間の紙幣Pの表面部分と、イメージセンサ6の受光面6aとのギャップが常に一定に保持される。
【0028】
なお、制御回路7aは、マイクロコンピュータを中心に構成され、CPU、ROM、およびRAMを備え、ROM内に格納されている制御プログラムを実行することにより後述する紙幣識別動作を行うことが可能となっている。ROMには紙幣の識別パターンが記憶されており、RAMには、イメージセンサ6で読み取られた識別対象の紙幣の読取情報が記憶保持される。
【0029】
この構成の紙幣識別機1を用いた紙幣識別動作を説明する。まず、紙幣Pを紙幣載置面2に載せ、紙幣位置決め端面10、11に押し当て、当該紙幣Pを位置決めする。紙幣載置面2に載せた紙幣Pは直接に手で触れることができ、また、直接に目視可能である。
【0030】
次に、手動によりスライド枠5をそのホームポジション5Aから左端の位置5Bまでスライドさせた後に、当該スライド枠5を再びホームポジション5Aに戻す。スライド枠5が移動を開始して、そこに搭載されているイメージセンサ6が読取領域Bに到ると、面発光源18が点灯し、イメージセンサ6による読取動作が開始する。イメージセンサ6は領域Bを移動する間に、紙幣Pの情報(透過光の強度変化)をライン状に読み取る。このようなイメージセンサ6による紙幣Pの読取動作も、紙幣載置面2に載せた紙幣Pを直接に目視可能な状態で行われる。
【0031】
読み取られた情報は、制御回路7aにおいて、記憶保持されているパターンとのパターンマッチングが行われ、紙幣Pの種類、真贋が判別され、判別結果が液晶表示器4aなどに表示される。イメージセンサ6による読取領域Bを外れた位置までスライド枠5を移動すると、イメージセンサ6による読取動作が終了し、面発光源18も消灯する。
【0032】
(その他の実施の形態)
上記の紙幣識別機1では、その紙幣載置面2の姿勢が固定されている。紙幣載置面2の角度を多段階、あるいは無段階に切り替えるようにしてもよい。例えば、図3に示すように、紙幣識別機1Aを、装置架台30Aと、紙幣載置面2を備えた紙幣載置台31Aから構成し、当該紙幣載置台31Aの一方の端部を支軸32を中心として上下に旋回可能な状態で、装置架台30Aに取り付け、紙幣載置面2の左右の傾斜角度αを多段階あるいは無段階に切り替え可能としてもよい。
【0033】
また、図4に示すように、紙幣識別機1Bの装置架台30Bに、紙幣載置台31Bを垂直な姿勢から後方側に水平に倒れた姿勢となるまで前後方向に旋回可能に取り付け、紙幣載置台31Bの前面に形成した紙幣載置面2の前後方向の傾斜角度βを切り替え可能としてもよい。前後方向の傾斜角度および左右方向の傾斜角度を共に切り替え可能とすることもできる。
【0034】
このようにして紙幣載置面2の角度を切り替え可能にすれば、紙幣Pを見やすい角度、あるいは紙幣Pの取り扱いが容易な角度に、紙幣載置面2の姿勢を変更できるので便利である。また、後方側に水平に倒して畳むことができると持ち運びも便利になる。
【0035】
次に、上記の紙幣識別機1では、透過型のイメージセンサを用いているが、反射型のイメージセンサを用いることもできる。また、紙幣の磁気特性など、光学特性以外の紙幣担持情報に基づき紙幣を識別する場合には、磁気ヘッドなどの紙幣センサを搭載すればよい。
【0036】
また、上記の紙幣識別機1では制御回路7aにおいて紙幣識別を行っているが、有線あるいは無線で紙幣識別機1により読み取った紙幣情報を上位の制御装置に提供して、上位の制御装置において紙幣の識別を行うようにしてもよい。
【0037】
さらに、上記の紙幣識別機1では手動によりスライド枠5をスライドさせるようにしているが、モータ駆動などによりイメージセンサ6を移動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を適用した紙幣識別機の概略斜視図である。
【図2】図1の紙幣識別装置の概略横断面図である。
【図3】紙幣載置面の角度を上下方向に切り替え可能にした紙幣識別機の説明図である。
【図4】紙幣載置面の角度を前後方向に切り替え可能にした紙幣識別機の説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1、1A、1B 紙幣識別機
2 紙幣載置面
3 操作面
4a 液晶表示器
4b 表示部
5 スライド枠
5A、5B スライド枠の位置
6 イメージセンサ(紙幣センサ)
7 制御基板
7a 制御回路
8 紙幣案内面
9 V溝
10、11 紙幣位置決め端面
12、14 スライド爪
13、15 スライド溝
17 発光面
18 面発光源
21、22 紙幣押し付けローラ
30A、30B 装置架台
31A、31B 紙幣載置台
P 紙幣
A イメージセンサの検出位置の移動軌跡
B イメージセンサの読取領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接に目視できる状態で紙幣を載せるための紙幣載置面を備えた紙幣載置台と、
前記紙幣載置面に載せた紙幣に担持されている紙幣情報を読み取るための紙幣センサとを有し、
前記紙幣センサは、前記紙幣載置面に載せた紙幣の表面に沿って移動して、当該紙幣の紙幣情報を読み取るようになっていることを特徴とする紙幣識別機。
【請求項2】
請求項1において、
前記紙幣センサは、その移動が手動操作によって行われるようになっていることを特徴とする紙幣識別機。
【請求項3】
請求項1において、
前記紙幣センサを移動させるためのセンサ移動機構を有していることを特徴とする紙幣識別機。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項において、
前記紙幣載置面に載せた紙幣を位置決めするための一対の直交する位置決め端面を有していることを特徴とする紙幣識別機。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記紙幣センサと共に移動して、当該紙幣センサの検出面に対峙している前記紙幣載置面上の紙幣の部位を当該紙幣載置面に押え付けるための紙幣押さえ部を有していることを特徴とする紙幣識別機。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
前記紙幣載置面の前後方向の角度および左右方向の角度のうち、少なくとも一方の角度を切り替え可能であることを特徴とする紙幣識別機。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項において、
前記紙幣センサは紙幣の透過光を検出するイメージセンサであり、
前記紙幣載置面には、前記イメージセンサの移動軌跡を包含する状態に発光面が配置されていることを特徴とする紙幣識別機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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