紙葉類集積繰出装置
【課題】この発明は、構造を単純化してコストを減少し、小型コンパクトにできてロスタイムを削減する紙葉類集積繰出装置を提案し、設計・製造期間の短縮、装置購入者の経費負担の削減、装置利用者の利便性向上に貢献することを目的とする。
【解決手段】紙幣2の集積処理及び繰出処理を行う紙葉類集積繰出装置1であって、集積処理時と繰出処理時に紙葉類を搬送するフィードローラ31と、フィードローラ31に対向して設けられ、集積処理時にはフィードローラ31と共に回転する一方、繰出処理時にはフィードローラ31と共に回転せず一枚出し制御するゲートローラ25と、ゲートローラ25と同軸に設けられて回転し、弾性部材からなる1枚以上の羽21aを備えた遠心力羽根車21とを有し、遠心力羽根車21が、紙幣2の集積処理時に、紙幣2の繰出処理時よりも羽21aを広げる紙葉類集積繰出装置1。
【解決手段】紙幣2の集積処理及び繰出処理を行う紙葉類集積繰出装置1であって、集積処理時と繰出処理時に紙葉類を搬送するフィードローラ31と、フィードローラ31に対向して設けられ、集積処理時にはフィードローラ31と共に回転する一方、繰出処理時にはフィードローラ31と共に回転せず一枚出し制御するゲートローラ25と、ゲートローラ25と同軸に設けられて回転し、弾性部材からなる1枚以上の羽21aを備えた遠心力羽根車21とを有し、遠心力羽根車21が、紙幣2の集積処理時に、紙幣2の繰出処理時よりも羽21aを広げる紙葉類集積繰出装置1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば入金処理(集積処理)で紙幣を集積部に集積し、出金処理(繰出処理)で紙幣を集積部から繰り出すような、紙葉類に対して集積処理及び繰出処理を行う紙葉類集積繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばATMで必要な紙幣を集積、繰り出しする紙幣集積繰出装置として、紙幣を搬送して集積部に放出する搬送口近傍に羽根車を備え、該羽根車の位置が集積処理時と繰出処理時で上下動するような紙幣集積繰出装置1’が存在しており、該紙幣集積繰出装置1’の構造と動作について、図1,2に示す右側面断面図と共に簡単に説明する。
【0003】
この紙幣集積繰出装置1’は、紙幣投入口55から紙幣2が適宜の搬送手段によって搬入されると搬送路51内を搬送して集積空間3に放出して集積する動作と、該集積した紙幣2を逆に前記搬送路51を搬送して紙幣繰出口54から繰り出す動作を実行する。
【0004】
紙幣集積繰出装置1’が紙幣2を集積する集積動作時は、図1に示すように、アーム71はローラ71bがフィードローラ31と接触する状態になるよう制御され、ピックアップ回転体61は集積空間3に割り込まない状態になるよう制御されている。
【0005】
紙幣集積繰出装置1’は、フィードローラ31を反時計回りに回転させ、その回転力で紙幣投入口55から搬入された紙幣2が搬送路51を搬送される。搬送された紙幣2は集積空間3に放出され、前記アーム71の羽71aで叩き落とされ、昇降板11の上に平積みされていく。
【0006】
紙幣集積繰出装置1’が紙幣2を繰り出す繰出動作時は、図2に示すようにアーム71は、ローラ71bがフィードローラ31から離間し羽71aが搬送路51から離間するように制御されて下方に揺動し、ピックアップ回転体61は集積空間3に突き出すように制御されて下方に揺動した状態になる。
【0007】
紙幣集積繰出装置1’は、ピックアップ回転体61を時計回りに回転させて紙幣2を搬送路51に繰り出し、該紙幣2は時計回りに回転するフィードローラ31で紙幣繰出口54から上方へ繰り出される。
【0008】
以上のようにして、従来の紙幣集積繰出装置1’は、アーム71を揺動することで、集積時には紙幣2を羽71aで叩き落とし、繰出時には紙幣2の繰り出しを羽71aが妨げないように退避していた。
【0009】
しかしこの方法では、繰出動作時にアーム71を退避させる空間が必要であった。また、アーム71の揺動には時間を要し、さらにその揺動の成否をセンサによって検知して、正常な位置に移動してなければリトライするといった制御も行われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、従来の紙幣集積繰出装置1’では、紙幣2の集積時に次の紙幣2が衝突しないように羽根車(羽71a)が回転可能でかつ移動可能にする必要があり、その構造は複雑で部品点数も多く、ATMのコスト増加の原因となっていた。
また、羽根車を移動させるため、移動用の空間を確保する必要があり、さらには、羽根車の移動には物理的に移動時間が必要であり、ロスタイムが発生していた。
この発明は、構造を単純化してコストを減少し、小型コンパクトにできてロスタイムを削減する紙葉類集積繰出装置を提案し、設計・製造期間の短縮、装置購入者の経費負担の削減、装置利用者の利便性向上に貢献することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、紙葉類の集積処理及び繰出処理を行う紙葉類集積繰出装置であって、集積処理時と繰出処理時に紙葉類を搬送するフィードローラと、前記フィードローラに対向して設けられ、集積処理時にはフィードローラと共に回転する一方、繰出処理時にはフィードローラと共に回転せず一枚出し制御するゲートローラと、前記ゲートローラと同軸に設けられて回転し、弾性部材からなる1枚以上の羽を備えた羽根車とを有し、前記羽根車が、紙葉類の集積処理時に、紙葉類の繰出処理時よりも前記羽を広げる紙葉類集積繰出装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明により、メーカは紙葉類集積繰出装置の部品点数を減少して設計、製造時間を短縮することができ、十分なコストダウンを図ることができる。
【0013】
紙葉類集積繰出装置の購入者は、処理速度が向上してかつ低価格な紙葉類集積繰出装置を得ることができ、経費負担を削減することができる。
【0014】
紙葉類集積繰出装置の利用者は、処理速度の向上によってストレスを感じることなく利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明を実施するための一形態を図3以降の図面と共に説明する。
まず、図3,4と共に、紙幣集積繰出装置1の外観と構造について説明する。
図3は紙幣集積繰出装置1の斜視図を示しており、該紙幣集積繰出装置1は外形をボックス状に形成し、内部に紙幣を水平横に整列して積み重ねる集積空間3を有し、該集積空間3の底部に紙幣大の昇降板11を備えている。
【0016】
なお、紙幣は、この発明における「紙葉類」の一例であって、「紙葉類」には、紙幣、カード、紙、印刷された紙が含まれる。
【0017】
前記昇降板11は、水平状態での上下動が可能なようにガイドされており、固着部12で固定された昇降ベルト13が、正逆転モータ(パルスモータ)14の回転力で正逆に回転することで、上下動が制御される。
【0018】
紙幣集積繰出装置1の上部には、紙幣を上方及び後方に搬送する円柱形のフィードローラ31,31を固着したフィード軸32が横方向に架設されて軸受されている。
【0019】
前記フィード軸32の右端には、歯車34が固着されており、歯車43及び正逆転モータ41に固着した歯車42を介して、正逆転モータ41の回転力を駆動力として得る。
【0020】
前記フィード軸32の左端には、歯車33が固着されており、前記フィード軸32の手前下に配設して軸受した羽根車軸22に歯車24を介して動力を伝達する。
【0021】
前記歯車24は、前記羽根車軸22の左端に備えられており、歯車24に内蔵して紙幣を集積する集積動作時に回転力を伝達するワンウェイクラッチ23(図示省略)によって、集積動作時(正回転時)には羽根車軸22を正回転させ、紙幣を繰り出す繰出動作時(逆回転時)には羽根車軸22を前記正逆転モータ41の駆動力で逆回転させないように構成されている。
【0022】
前記歯車24の右横には繰出動作時に回転を防止するもうひとつのワンウェイクラッチ23が備えられており、集積動作時(正回転時)には羽根車軸22の正回転を許容し、繰出動作時(逆回転時)には羽根車軸22を後述のフィードローラ31の影響で回転させないよう固定するように構成されている。これら2つのワンウェイクラッチ23により、集積動作時に前記羽根車軸22が必ず正回転し、繰出動作時には非回転となって前記羽根車軸22が固定するように構成されている。
【0023】
前記羽根車軸22には、該羽根車軸22の回転と関係なくフィードローラ31に合わせて自由に回転するゲートローラ25,25を、前記フィードローラ31と対向して備え、その外側には、集積時に紙幣を叩き落とすため遠心力の利用で羽を広げる構成を有した羽根車である遠心力羽根車21,21を備える。
【0024】
遠心力羽根車21,21は、この発明における「羽根車」の一例であって、この「羽根車」には、ゴム材、金属部材等の変形可能で弾性のある部材で形成し、回転の遠心力で羽を広げ、非回転時にはその材料自体の弾性で羽を畳む構造のもの、あるいは、羽を軸心近傍で枢着し、回転時はその遠心力で羽を略放射状に広げ、非回転時は重力によって垂れ下がるように畳まれる構造のもの、さらには、羽を押し広げる部材及び/又は羽を畳ませる部材によって羽の状態を制御する構造のものが含まれる。また、常態が羽を広げた状態で必要なときに畳むように制御する構成、前記羽自体が伸縮する構成、前記羽自体を回転部材として軸心に装着して機能する構成のものも含まれる。
【0025】
この例における前記遠心力羽根車21は、後述するように集積動作時には回転による遠心力で羽21aが広がり、繰出動作時には非回転のため羽21aが収縮した形態に畳まれるように適宜のゴム材で形成されている。
【0026】
前記羽根車軸22の右端は、集積空間3の外側で位置決め板44に軸受されており、同様に該位置決め板44に軸受されているフィード軸32と共に、右端を位置決めされている。
【0027】
図4の右側面断面図に示すように、フィードローラ31の後方には、プーリ63,64にベルト62を張架したピックアップ回転体61が備えられており、該ピックアップ回転体61は、集積動作時と繰出動作時で、奥側のプーリ64を中心に上下揺動し、繰出時には集積された紙幣2と接触してこれを繰出方向に送出するように適宜の駆動手段で駆動されるように構成されている。
【0028】
紙幣を搬送する搬送路51は、フィードローラ31の外周よりわずかに内側の位置で上、手前、下をガイドしてそのまま後方へ水平に伸びるガイド板53と、紙幣集積繰出装置1の上端手前の紙幣繰出口54から真下に伸びて一部フィードローラ31の外周に沿って湾曲した後再度真下に伸びるガイド板52によって形成されている。
【0029】
前記紙幣繰出口54の少し後方には紙幣投入口55を備えており、該紙幣投入口55及び紙幣繰出口54は内部で統合されて前記搬送路51につながっている。
【0030】
以上の構成及び構造により、集積時には紙幣投入口55から搬入された紙幣2が、フィードローラ31の搬送力を受けて搬送路51内を搬送され、集積空間3に放出されて昇降板11の上に集積され、繰出時にはピックアップ回転体61でピックアップされた紙幣2が、フィードローラ31の搬送力とゲートローラ25の一枚出し制御を受け、前記搬送路51を逆に搬送されて紙幣繰出口54から繰り出される。
【0031】
次に、集積時の遠心力羽根車21の動作について図4に示した右側面断面図と共に説明する。
この集積動作時には、遠心力羽根車21が回転していてその遠心力で羽21aが広がっており、フィードローラ31の搬送力を受けて集積空間3に略水平に放出される紙幣2の後端側を羽21aが叩き落とす。
【0032】
なお、ピックアップ回転体61は上げられた状態になっており、紙幣2の集積を妨げないようになっている。
【0033】
以上の動作により、紙幣2は集積空間3に放出される都度叩き落とされるため、連続して搬送されても先の紙幣2と次の紙幣2が衝突することを回避でき、高速で紙幣2を集積することができる。
【0034】
次に、繰出時の動作について、図5に示す右側面断面図と共に説明する。
ピックアップ回転体61は、図に示すように下げられた状態になっており、平積みされている紙幣2をピックアップして搬送路51に送り出す。
【0035】
このとき、フィードローラ31は集積時と逆回転しているが、図3と共に説明した2つのワンウェイクラッチ23によって羽根車軸22は非回転となっており、羽根車軸22に固着されている遠心力羽根車21も非回転となって、羽21aがその弾性力で本来の収縮した形状に戻って畳まれた状態になっている。すなわち、紙幣2の搬送路51の通過を羽21aが妨げない状態になるのであって、換言すれば、紙幣2の繰り出しを許容する。この許容には、繰り出される紙葉類に畳んだ辺が非接触となる状態であることが含まれる。
【0036】
搬送路51に送り出された紙幣2は、フィードローラ31で上方へ送り出され、紙幣繰出口54から繰り出される。
以上の繰出動作により、紙幣2は遠心力羽根車21に妨げられずに順調に繰り出される。
【0037】
このように、本発明の紙幣集積繰出装置1では、集積する紙葉類を回転部材の辺で叩き落としてその処理速度を促進し、繰出し時には前記辺を畳んで繰り出しを妨げない動作が簡単な構造で実現でき、各処理の切替えを短時間で実行することができる。そして、従来の紙幣集積繰出装置1’で必要であったアーム71の揺動の制御とその成否によるリトライ動作、及びアーム71及び羽71aを退避させる空間が不要となった。
【0038】
すなわち、本発明の紙幣集積繰出装置1の歯車24内部に備えたワンウェイクラッチ23の機構、すなわち1方向にのみ回転を許容する機構のみによって、遠心力羽根車21の羽21aを広げる又は畳むことができ、またセンサによるその成否の確認とリトライ動作が不要となり、単純で効果の高い構造が完成した。
【0039】
なお、本発明の特徴点である遠心力羽根車21は、様々な形態が可能であり、その一例を図6の説明図と共に説明する。
図中の(A)に示すタイプは、羽21aの先端に重錘部21bを設けて先端部を重くし、該重錘部21bによって回転時の遠心力で広がりやすいように構成している。
【0040】
図中の(B)に示すタイプは、非回転時はパイプの片面に切り込みを複数入れた形状になっており、その切り込みによって形成された羽21aが、先端の該重錘部21bの重みによって回転時に広がるように構成している。
【0041】
図中の(C)に示すタイプは、前述の(A)のタイプにカバー21cを備えた構成になっており、カバー21cを回転させて羽21aの根元近傍を押し回すことで、羽21aを広げるように構成している。羽21aは前述したように紙幣2を叩き落すため、その時の紙幣2からの抵抗力に逆らってカバー21cで押し回すことができ、回転中は常に羽21aが広がった状態になる。
【0042】
また、以上の各タイプの遠心力羽根車21は、重錘部21bの代わりに羽21aを先端側(外周側)に行くほど厚く又は幅広く形成して先端側を重く構成しても良い。
また、搬送路51及びフィードローラ31からなる搬送機構は、紙葉類集積繰出装置1と別体に構成しても良い。
【0043】
以上のような遠心力羽根車21を形成した場合でも、前述したように単純で効果の高い構造で、紙幣2の集積及び繰り出しを実行することができる。
【0044】
この発明の構成と、上述の一形態との対応において、
この発明の紙葉類集積繰出装置は、一形態の紙幣集積繰出装置1に対応し、
以下同様に、
紙葉類は、紙幣2に対応し、
羽根車は、遠心力羽根車21に対応し、
集積処理は、集積動作に対応し、
繰出処理は、繰出動作に対応するも、
この発明は、上述の一形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】従来の紙幣集積繰出装置の右側面断面図。
【図2】従来の紙幣集積繰出装置の右側面断面図。
【図3】本発明の紙幣集積繰出装置の外観を示す斜視図。
【図4】本発明の紙幣集積繰出装置の右側面断面図。
【図5】本発明の紙幣集積繰出装置の右側面断面図。
【図6】他の実施形態における遠心力羽根車の説明図。
【符号の説明】
【0046】
1…紙幣集積繰出装置
2…紙幣
3…集積空間
21…遠心力羽根車
21a…羽
23…ワンウェイクラッチ
25…ゲートローラ
31…フィードローラ
41…正逆転モータ
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば入金処理(集積処理)で紙幣を集積部に集積し、出金処理(繰出処理)で紙幣を集積部から繰り出すような、紙葉類に対して集積処理及び繰出処理を行う紙葉類集積繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばATMで必要な紙幣を集積、繰り出しする紙幣集積繰出装置として、紙幣を搬送して集積部に放出する搬送口近傍に羽根車を備え、該羽根車の位置が集積処理時と繰出処理時で上下動するような紙幣集積繰出装置1’が存在しており、該紙幣集積繰出装置1’の構造と動作について、図1,2に示す右側面断面図と共に簡単に説明する。
【0003】
この紙幣集積繰出装置1’は、紙幣投入口55から紙幣2が適宜の搬送手段によって搬入されると搬送路51内を搬送して集積空間3に放出して集積する動作と、該集積した紙幣2を逆に前記搬送路51を搬送して紙幣繰出口54から繰り出す動作を実行する。
【0004】
紙幣集積繰出装置1’が紙幣2を集積する集積動作時は、図1に示すように、アーム71はローラ71bがフィードローラ31と接触する状態になるよう制御され、ピックアップ回転体61は集積空間3に割り込まない状態になるよう制御されている。
【0005】
紙幣集積繰出装置1’は、フィードローラ31を反時計回りに回転させ、その回転力で紙幣投入口55から搬入された紙幣2が搬送路51を搬送される。搬送された紙幣2は集積空間3に放出され、前記アーム71の羽71aで叩き落とされ、昇降板11の上に平積みされていく。
【0006】
紙幣集積繰出装置1’が紙幣2を繰り出す繰出動作時は、図2に示すようにアーム71は、ローラ71bがフィードローラ31から離間し羽71aが搬送路51から離間するように制御されて下方に揺動し、ピックアップ回転体61は集積空間3に突き出すように制御されて下方に揺動した状態になる。
【0007】
紙幣集積繰出装置1’は、ピックアップ回転体61を時計回りに回転させて紙幣2を搬送路51に繰り出し、該紙幣2は時計回りに回転するフィードローラ31で紙幣繰出口54から上方へ繰り出される。
【0008】
以上のようにして、従来の紙幣集積繰出装置1’は、アーム71を揺動することで、集積時には紙幣2を羽71aで叩き落とし、繰出時には紙幣2の繰り出しを羽71aが妨げないように退避していた。
【0009】
しかしこの方法では、繰出動作時にアーム71を退避させる空間が必要であった。また、アーム71の揺動には時間を要し、さらにその揺動の成否をセンサによって検知して、正常な位置に移動してなければリトライするといった制御も行われていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、従来の紙幣集積繰出装置1’では、紙幣2の集積時に次の紙幣2が衝突しないように羽根車(羽71a)が回転可能でかつ移動可能にする必要があり、その構造は複雑で部品点数も多く、ATMのコスト増加の原因となっていた。
また、羽根車を移動させるため、移動用の空間を確保する必要があり、さらには、羽根車の移動には物理的に移動時間が必要であり、ロスタイムが発生していた。
この発明は、構造を単純化してコストを減少し、小型コンパクトにできてロスタイムを削減する紙葉類集積繰出装置を提案し、設計・製造期間の短縮、装置購入者の経費負担の削減、装置利用者の利便性向上に貢献することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、紙葉類の集積処理及び繰出処理を行う紙葉類集積繰出装置であって、集積処理時と繰出処理時に紙葉類を搬送するフィードローラと、前記フィードローラに対向して設けられ、集積処理時にはフィードローラと共に回転する一方、繰出処理時にはフィードローラと共に回転せず一枚出し制御するゲートローラと、前記ゲートローラと同軸に設けられて回転し、弾性部材からなる1枚以上の羽を備えた羽根車とを有し、前記羽根車が、紙葉類の集積処理時に、紙葉類の繰出処理時よりも前記羽を広げる紙葉類集積繰出装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明により、メーカは紙葉類集積繰出装置の部品点数を減少して設計、製造時間を短縮することができ、十分なコストダウンを図ることができる。
【0013】
紙葉類集積繰出装置の購入者は、処理速度が向上してかつ低価格な紙葉類集積繰出装置を得ることができ、経費負担を削減することができる。
【0014】
紙葉類集積繰出装置の利用者は、処理速度の向上によってストレスを感じることなく利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明を実施するための一形態を図3以降の図面と共に説明する。
まず、図3,4と共に、紙幣集積繰出装置1の外観と構造について説明する。
図3は紙幣集積繰出装置1の斜視図を示しており、該紙幣集積繰出装置1は外形をボックス状に形成し、内部に紙幣を水平横に整列して積み重ねる集積空間3を有し、該集積空間3の底部に紙幣大の昇降板11を備えている。
【0016】
なお、紙幣は、この発明における「紙葉類」の一例であって、「紙葉類」には、紙幣、カード、紙、印刷された紙が含まれる。
【0017】
前記昇降板11は、水平状態での上下動が可能なようにガイドされており、固着部12で固定された昇降ベルト13が、正逆転モータ(パルスモータ)14の回転力で正逆に回転することで、上下動が制御される。
【0018】
紙幣集積繰出装置1の上部には、紙幣を上方及び後方に搬送する円柱形のフィードローラ31,31を固着したフィード軸32が横方向に架設されて軸受されている。
【0019】
前記フィード軸32の右端には、歯車34が固着されており、歯車43及び正逆転モータ41に固着した歯車42を介して、正逆転モータ41の回転力を駆動力として得る。
【0020】
前記フィード軸32の左端には、歯車33が固着されており、前記フィード軸32の手前下に配設して軸受した羽根車軸22に歯車24を介して動力を伝達する。
【0021】
前記歯車24は、前記羽根車軸22の左端に備えられており、歯車24に内蔵して紙幣を集積する集積動作時に回転力を伝達するワンウェイクラッチ23(図示省略)によって、集積動作時(正回転時)には羽根車軸22を正回転させ、紙幣を繰り出す繰出動作時(逆回転時)には羽根車軸22を前記正逆転モータ41の駆動力で逆回転させないように構成されている。
【0022】
前記歯車24の右横には繰出動作時に回転を防止するもうひとつのワンウェイクラッチ23が備えられており、集積動作時(正回転時)には羽根車軸22の正回転を許容し、繰出動作時(逆回転時)には羽根車軸22を後述のフィードローラ31の影響で回転させないよう固定するように構成されている。これら2つのワンウェイクラッチ23により、集積動作時に前記羽根車軸22が必ず正回転し、繰出動作時には非回転となって前記羽根車軸22が固定するように構成されている。
【0023】
前記羽根車軸22には、該羽根車軸22の回転と関係なくフィードローラ31に合わせて自由に回転するゲートローラ25,25を、前記フィードローラ31と対向して備え、その外側には、集積時に紙幣を叩き落とすため遠心力の利用で羽を広げる構成を有した羽根車である遠心力羽根車21,21を備える。
【0024】
遠心力羽根車21,21は、この発明における「羽根車」の一例であって、この「羽根車」には、ゴム材、金属部材等の変形可能で弾性のある部材で形成し、回転の遠心力で羽を広げ、非回転時にはその材料自体の弾性で羽を畳む構造のもの、あるいは、羽を軸心近傍で枢着し、回転時はその遠心力で羽を略放射状に広げ、非回転時は重力によって垂れ下がるように畳まれる構造のもの、さらには、羽を押し広げる部材及び/又は羽を畳ませる部材によって羽の状態を制御する構造のものが含まれる。また、常態が羽を広げた状態で必要なときに畳むように制御する構成、前記羽自体が伸縮する構成、前記羽自体を回転部材として軸心に装着して機能する構成のものも含まれる。
【0025】
この例における前記遠心力羽根車21は、後述するように集積動作時には回転による遠心力で羽21aが広がり、繰出動作時には非回転のため羽21aが収縮した形態に畳まれるように適宜のゴム材で形成されている。
【0026】
前記羽根車軸22の右端は、集積空間3の外側で位置決め板44に軸受されており、同様に該位置決め板44に軸受されているフィード軸32と共に、右端を位置決めされている。
【0027】
図4の右側面断面図に示すように、フィードローラ31の後方には、プーリ63,64にベルト62を張架したピックアップ回転体61が備えられており、該ピックアップ回転体61は、集積動作時と繰出動作時で、奥側のプーリ64を中心に上下揺動し、繰出時には集積された紙幣2と接触してこれを繰出方向に送出するように適宜の駆動手段で駆動されるように構成されている。
【0028】
紙幣を搬送する搬送路51は、フィードローラ31の外周よりわずかに内側の位置で上、手前、下をガイドしてそのまま後方へ水平に伸びるガイド板53と、紙幣集積繰出装置1の上端手前の紙幣繰出口54から真下に伸びて一部フィードローラ31の外周に沿って湾曲した後再度真下に伸びるガイド板52によって形成されている。
【0029】
前記紙幣繰出口54の少し後方には紙幣投入口55を備えており、該紙幣投入口55及び紙幣繰出口54は内部で統合されて前記搬送路51につながっている。
【0030】
以上の構成及び構造により、集積時には紙幣投入口55から搬入された紙幣2が、フィードローラ31の搬送力を受けて搬送路51内を搬送され、集積空間3に放出されて昇降板11の上に集積され、繰出時にはピックアップ回転体61でピックアップされた紙幣2が、フィードローラ31の搬送力とゲートローラ25の一枚出し制御を受け、前記搬送路51を逆に搬送されて紙幣繰出口54から繰り出される。
【0031】
次に、集積時の遠心力羽根車21の動作について図4に示した右側面断面図と共に説明する。
この集積動作時には、遠心力羽根車21が回転していてその遠心力で羽21aが広がっており、フィードローラ31の搬送力を受けて集積空間3に略水平に放出される紙幣2の後端側を羽21aが叩き落とす。
【0032】
なお、ピックアップ回転体61は上げられた状態になっており、紙幣2の集積を妨げないようになっている。
【0033】
以上の動作により、紙幣2は集積空間3に放出される都度叩き落とされるため、連続して搬送されても先の紙幣2と次の紙幣2が衝突することを回避でき、高速で紙幣2を集積することができる。
【0034】
次に、繰出時の動作について、図5に示す右側面断面図と共に説明する。
ピックアップ回転体61は、図に示すように下げられた状態になっており、平積みされている紙幣2をピックアップして搬送路51に送り出す。
【0035】
このとき、フィードローラ31は集積時と逆回転しているが、図3と共に説明した2つのワンウェイクラッチ23によって羽根車軸22は非回転となっており、羽根車軸22に固着されている遠心力羽根車21も非回転となって、羽21aがその弾性力で本来の収縮した形状に戻って畳まれた状態になっている。すなわち、紙幣2の搬送路51の通過を羽21aが妨げない状態になるのであって、換言すれば、紙幣2の繰り出しを許容する。この許容には、繰り出される紙葉類に畳んだ辺が非接触となる状態であることが含まれる。
【0036】
搬送路51に送り出された紙幣2は、フィードローラ31で上方へ送り出され、紙幣繰出口54から繰り出される。
以上の繰出動作により、紙幣2は遠心力羽根車21に妨げられずに順調に繰り出される。
【0037】
このように、本発明の紙幣集積繰出装置1では、集積する紙葉類を回転部材の辺で叩き落としてその処理速度を促進し、繰出し時には前記辺を畳んで繰り出しを妨げない動作が簡単な構造で実現でき、各処理の切替えを短時間で実行することができる。そして、従来の紙幣集積繰出装置1’で必要であったアーム71の揺動の制御とその成否によるリトライ動作、及びアーム71及び羽71aを退避させる空間が不要となった。
【0038】
すなわち、本発明の紙幣集積繰出装置1の歯車24内部に備えたワンウェイクラッチ23の機構、すなわち1方向にのみ回転を許容する機構のみによって、遠心力羽根車21の羽21aを広げる又は畳むことができ、またセンサによるその成否の確認とリトライ動作が不要となり、単純で効果の高い構造が完成した。
【0039】
なお、本発明の特徴点である遠心力羽根車21は、様々な形態が可能であり、その一例を図6の説明図と共に説明する。
図中の(A)に示すタイプは、羽21aの先端に重錘部21bを設けて先端部を重くし、該重錘部21bによって回転時の遠心力で広がりやすいように構成している。
【0040】
図中の(B)に示すタイプは、非回転時はパイプの片面に切り込みを複数入れた形状になっており、その切り込みによって形成された羽21aが、先端の該重錘部21bの重みによって回転時に広がるように構成している。
【0041】
図中の(C)に示すタイプは、前述の(A)のタイプにカバー21cを備えた構成になっており、カバー21cを回転させて羽21aの根元近傍を押し回すことで、羽21aを広げるように構成している。羽21aは前述したように紙幣2を叩き落すため、その時の紙幣2からの抵抗力に逆らってカバー21cで押し回すことができ、回転中は常に羽21aが広がった状態になる。
【0042】
また、以上の各タイプの遠心力羽根車21は、重錘部21bの代わりに羽21aを先端側(外周側)に行くほど厚く又は幅広く形成して先端側を重く構成しても良い。
また、搬送路51及びフィードローラ31からなる搬送機構は、紙葉類集積繰出装置1と別体に構成しても良い。
【0043】
以上のような遠心力羽根車21を形成した場合でも、前述したように単純で効果の高い構造で、紙幣2の集積及び繰り出しを実行することができる。
【0044】
この発明の構成と、上述の一形態との対応において、
この発明の紙葉類集積繰出装置は、一形態の紙幣集積繰出装置1に対応し、
以下同様に、
紙葉類は、紙幣2に対応し、
羽根車は、遠心力羽根車21に対応し、
集積処理は、集積動作に対応し、
繰出処理は、繰出動作に対応するも、
この発明は、上述の一形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】従来の紙幣集積繰出装置の右側面断面図。
【図2】従来の紙幣集積繰出装置の右側面断面図。
【図3】本発明の紙幣集積繰出装置の外観を示す斜視図。
【図4】本発明の紙幣集積繰出装置の右側面断面図。
【図5】本発明の紙幣集積繰出装置の右側面断面図。
【図6】他の実施形態における遠心力羽根車の説明図。
【符号の説明】
【0046】
1…紙幣集積繰出装置
2…紙幣
3…集積空間
21…遠心力羽根車
21a…羽
23…ワンウェイクラッチ
25…ゲートローラ
31…フィードローラ
41…正逆転モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の集積処理及び繰出処理を行う紙葉類集積繰出装置であって、
集積処理時と繰出処理時に紙葉類を搬送するフィードローラと、
前記フィードローラに対向して設けられ、集積処理時にはフィードローラと共に回転する一方、繰出処理時にはフィードローラと共に回転せず一枚出し制御するゲートローラと、
前記ゲートローラと同軸に設けられて回転し、弾性部材からなる1枚以上の羽を備えた羽根車とを有し、
前記羽根車が、紙葉類の集積処理時に、紙葉類の繰出処理時よりも前記羽を広げる
紙葉類集積繰出装置。
【請求項2】
前記羽根車を、軸方向における前記ゲートローラよりも外側に備えた
請求項1記載の紙葉類集積繰出装置。
【請求項3】
前記羽根車を、軸に取り付けられる円筒状体に前記羽を備えた形状に、ゴム材で一体形成した
請求項1又は2記載の紙葉類集積繰出装置。
【請求項4】
前記羽を先端側ほど厚く形成して先端側を重くした
請求項1、2又は3に記載の紙葉類集積繰出装置。
【請求項5】
前記羽が、先端部が重くなるよう先端部に重錘部を有する
請求項1、2又は3記載の紙葉類集積繰出装置。
【請求項6】
前記羽根車の前記羽が、紙葉類の集積処理時の回転で、回転に伴う遠心力で広がるものである
請求項1、2、3、4又は5に記載の紙葉類集積装置。
【請求項1】
紙葉類の集積処理及び繰出処理を行う紙葉類集積繰出装置であって、
集積処理時と繰出処理時に紙葉類を搬送するフィードローラと、
前記フィードローラに対向して設けられ、集積処理時にはフィードローラと共に回転する一方、繰出処理時にはフィードローラと共に回転せず一枚出し制御するゲートローラと、
前記ゲートローラと同軸に設けられて回転し、弾性部材からなる1枚以上の羽を備えた羽根車とを有し、
前記羽根車が、紙葉類の集積処理時に、紙葉類の繰出処理時よりも前記羽を広げる
紙葉類集積繰出装置。
【請求項2】
前記羽根車を、軸方向における前記ゲートローラよりも外側に備えた
請求項1記載の紙葉類集積繰出装置。
【請求項3】
前記羽根車を、軸に取り付けられる円筒状体に前記羽を備えた形状に、ゴム材で一体形成した
請求項1又は2記載の紙葉類集積繰出装置。
【請求項4】
前記羽を先端側ほど厚く形成して先端側を重くした
請求項1、2又は3に記載の紙葉類集積繰出装置。
【請求項5】
前記羽が、先端部が重くなるよう先端部に重錘部を有する
請求項1、2又は3記載の紙葉類集積繰出装置。
【請求項6】
前記羽根車の前記羽が、紙葉類の集積処理時の回転で、回転に伴う遠心力で広がるものである
請求項1、2、3、4又は5に記載の紙葉類集積装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2007−39248(P2007−39248A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275250(P2006−275250)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【分割の表示】特願2001−368334(P2001−368334)の分割
【原出願日】平成13年12月3日(2001.12.3)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【分割の表示】特願2001−368334(P2001−368334)の分割
【原出願日】平成13年12月3日(2001.12.3)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
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