説明

紫外線ランプ、空気清浄機

【課題】 紫外線強度を弱めずに、殺菌効果を維持しながらオゾン発生量を規定内に抑える紫外線ランプを実現する。
【解決手段】 石英ガラス製のバルブ11の外表面および内表面の少なくともいずれかの表面に254nmを透過し、185nmを吸収する膜厚が0.1μm以上2.0μm以下の酸化ジルコニウム膜13を形成し、酸化ジルコニウム膜13の形成される面積によって、オゾン発生量のコントロールを図る。これにより、254nmの紫外線強度を弱めずに殺菌効果を維持するとともに、オゾン発生量を規定内に抑制しつつ消臭効果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定波長の紫外線を透過する石英ガラス製のバルブを使用する紫外線ランプおよびこれを搭載した空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紫外線ランプは、酸化チタンまたは酸化セリウムがドープされた石英ガラス製発光管の内表面に酸化ジルコニウム被膜を形成し、この被膜により185nmの短波長紫外線を吸収し、石英ガラス製の発光管への短波長紫外線の照射量を減らして、石英ガラスの収縮速度を抑制し、水銀蒸気放電灯の寿命中の発光管破損の発生をなくしている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平10−69886号公報(第4〜6頁、図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、機外に排出するオゾンをJIS規格で規定される濃度に減らすために、紫外線ランプのランプ電力を減少させてオゾン量を減らす手段が考えられるが、同時に254nmの紫外線も弱くなってしまうため、殺菌効果が減少してしまう、という問題がある。
【0004】
この発明の目的は、254nmの紫外線強度を弱めずに、オゾン発生量の抑制が可能な紫外線ランプおよびこれを搭載した空気清浄機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線ランプは、185nmと254nmの紫外線を透過する希ガスと水銀を封入された石英ガラス製のバルブの両端内部に電極を備え、該電極に電力を供給して前記バルブ内の水銀に励起エネルギーを与えて放電させるものにあって、前記バルブの内外表面の少なくとも一方の表面に酸化ジルコニウム膜を形成し、該酸化ジルコニウム膜の形成面積に基づきオゾン発生量をコントロールすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、254nmの紫外線強度を弱めずに殺菌効果を維持するとともに、オゾン発生量を規定内に抑制しつつ消臭効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、この発明の紫外線ランプの一実施形態について説明するための外観図である。図1において、11は、φ6mm程度の透光性の石英ガラス製のバルブである。このバルブ11の両端にはコイル状に巻回された電極121,122がそれぞれ対向配置される。高い電圧が印加される側の電極121は、タングステン(W)に酸化トリウム(ThO)が含有されたトリエーテッドタングステン材を、低い電圧が印加される側の電極122は、タングステンにドープが含有されたドープタングステン材を使用する。電極122の材料としては、ドープタングステンの他に、タングステン、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)でも構わない。
【0008】
13は、バルブ11の外表面に膜厚10μm程度で形成された254nmの光を透過し、185nmの光を吸収する酸化ジルコニウム膜である。酸化ジルコニウム膜13の膜厚は、図2に示すように、薄すぎると185nm紫外線を透過してしまい、厚すぎると254nm紫外線の吸収・膜剥がれの原因となるため、0.1μm以上2.0μm以下とする。酸化ジルコニウム膜13は、図1に示すようにバルブ11の全面に形成するのではなく、所望の面積を残して形成する。これにより、185nmの波長の光は透過を抑え、254nmの波長の光は透過させることができる。酸化ジルコニウム膜13は、バルブ11の例えば60%に形成し、他の40%は非形成とする。なお、酸化ジルコニウム膜13は、バルブ11の内表面、外表面の少なくともいずれか一方に形成する。内外表面に形成する場合、内外表面に形成された酸化ジルコニウム膜を合わせた膜厚が0.1μm以上2.0μm以下となるような値に形成すればよい。
【0009】
電極121,122は、反対方向に伸びるレグ部141,142と金属箔151,152の一端に溶着される。金属箔151,152の他端は、例えばタングステン製の引出し線161,162の一端とをかしめ等の接続手段を用いて電気的に接続する。レグ部141,142から引出し線161,162の一端までのバルブ11を加熱して封止する。金属箔151,152は、バルブ11を形成する石英ガラスの熱膨張率に近い材料であれば何でもよいが、この条件に適ったものとしてモリブデンを使用する。バルブ11には、50Torrの気圧下で水銀とアルゴンガスが封入される。
【0010】
引出し線161,162の他端は、例えばセラミック製の口金171,172の内部で電気的に接続された図示しない給電用のリード線を絶縁封止するとともに耐紫外線を有する例えば架橋ポリエチレンなどの樹脂管181,182を介して図示しない電源回路に接続される。
【0011】
酸化ジルコニウム膜13の形成の仕方については種々考えられるが、例えば、図3(a)や(b)に示す形状としても構わない。つまり、図3(a)はバルブ11の図中の下側を所望の面積だけ酸化ジルコニウム膜13を形成したもので、図3(b)は酸化ジルコニウム膜13を形成した部分としない部分を、バルブ11の長手方向に交互に形成したものである。いずれにしても、酸化ジルコニウム膜13の形成面積の調整により、ランプが点灯された場合に発生する185nmの光の透過は抑え、254nmの光は透過させることをコントロールすることができる。
【0012】
次に、図1のように構成される、直管タイプのランプ管長を150mmとした紫外線ランプ100で測定測定した結果について説明する。
【0013】
図4は、紫外線ランプ100のバルブ11の外表面に酸化ジルコニウム膜13が膜厚0.25mで各種面積で形成し、各種ランプを密閉容器内25±1℃の条件下、始動電圧1000Vの点灯回路にて点灯したときの、酸化ジルコニウム膜13の形成面積とオゾン発生量および254nmの紫外線強度との関係について説明するめたのものである。
【0014】
この結果からも分かる通り、酸化ジルコニウム膜13の形成面積を調整することによりオゾン量の抑制コントロールが可能であることが分かる。
【0015】
図5は、上記した紫外線ランプ100を搭載したこの発明の空気清浄機の一実施形態について説明するための構成図である。
図5において、51はシステム本体であり、システム本体51内に紫外線ランプ100を配置する。紫外線ランプ100は図示しない点灯装置からバルブ11内の電極121,122に電力を供給して点灯するように構成する。システム本体100の両側にはオゾンOを酸素Oに分解させるオゾン分解フィルタ52,53を配置する。オゾン分解フィルタ52と対向する位置には、ファン54を配置する。
【0016】
このように構成された空気清浄機200において、紫外線ランプ100を点灯させるとともにファン54を駆動させる。すると、ファン54で発生された風は、オゾン分解フィルタ52を介してシステム本体51内に送られて紫外線ランプ100で発生したオゾンOをオゾン分解フィルタ53に送る。オゾン分解フィルタ53では、ファン54の送風により送り出されたオゾンOを、酸素Oに分解してシステム本体51の外へ送り出される。
【0017】
従って、254nmの紫外線強度を弱めずに、オゾン発生量の抑制が可能な紫外線ランプ100からは、254nmの紫外線と発生量が抑制されたオゾンを発生する。ここで発生されたオゾンOは、オゾン分解フィルタ53の分解能力以内の量となる。オゾン分解フィルタ53からは、浄化された酸素Oを取り出すことが可能となる。このときのオゾン量は、JIS規格の0.01ppm以上が空気洗浄機200外に排出されないようにすることができる。
【0018】
この実施形態では、254nmの紫外線強度を弱めずに殺菌効果を維持しながら、オゾン発生量を規定内に抑えながら消臭効果を得ることのできる空気清浄機が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の紫外線ランプの一実施形態について説明するための外観図。
【図2】酸化ジルコニウム膜の膜厚と透過率の関係について説明するための説明図。
【図3】この発明の紫外線ランプの酸化ジルコニウム膜形成の他の実施形態について説明するための説明図。
【図4】酸化ジルコニウム膜の形成面積とオゾン発生量および254nm紫外線強度との関係について説明するための説明図。
【図5】発明の空気清浄機の一実施形態について説明するための構成図。
【符号の説明】
【0020】
11 バルブ
121,122 電極
13 酸化ジルコニウム膜
141,142 レグ部
151,152 金属箔
161,162 引出し線
171,172 口金
181,182 樹脂管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
185nmと254nmの紫外線を透過する希ガスと水銀を封入された石英ガラス製のバルブの両端内部に電極を備え、該電極に電力を供給して前記バルブ内の水銀に励起エネルギーを与えて放電させる紫外線ランプにおいて、
前記バルブの内外表面の少なくとも一方の表面に酸化ジルコニウム膜を形成し、該酸化ジルコニウム膜の形成面積に基づきオゾン発生量をコントロールすることを特徴とする紫外線ランプ。
【請求項2】
前記酸化ジルコニウムの膜厚は、0.1μm以上2.0μm以下としたことを特徴とする請求項1記載の紫外線ランプ。
【請求項3】
請求項1または2記載の紫外線ランプを搭載し、送風ファンを用いて前記紫外線ランプから発生されたオゾンをオゾン分解フィルタに送り、該オゾン分解フィルタからオゾンが除去された空気を排出することを特徴とする空気清浄機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−92800(P2006−92800A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273762(P2004−273762)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】