説明

紫外線蛍光ランプ

【課題】本発明が解決しようとする課題は、紫外線照射により接着力が低下する粘着剤の剥離工程用途において、粘着剤の剥離性が高く、また、寿命時間が長い紫外線蛍光ランプを提供することである。
【解決手段】実施形態の紫外線蛍光ランプ100は、紫外線照射により接着力が低下する粘着剤の剥離工程に使用する紫外線蛍光ランプであって、放電容器101と、放電容器101に封入される放電媒体と、放電媒体に電力を供給する電極105a、105bと、放電容器101の内側に塗布された蛍光体層110と、を具備し、第1の蛍光体YPO:Ceと、第2の蛍光体SrB:Euとを有する蛍光体層110における前記第1の蛍光体YPO:Ceと前記第2の蛍光体SrB:Euの総量に対する、前記第1の蛍光体YPO:Ceの重量比が60〜95%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紫外線蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線蛍光ランプは、半導体、液晶、PDP、EL等の製造工程の紫外線処理等に使用されている。例えば、半導体用途では、ウェハを複数の半導体チップに分割する工程で使用されるウェア保持部材の交換作業の際に使用される。ウェハ保持部材の構成部材は、紫外線照射により接着力が低下する粘着剤で接着されており、これに紫外線照射を行い、粘着体の剥離を行う。
【0003】
上記の蛍光ランプは、効率よく紫外線処理を行うと同時に、紫外線蛍光ランプの長寿命化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−27768号公報
【特許文献2】特開2003−109541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線照射により接着力が低下する粘着剤の剥離工程用途において、粘着剤の剥離性が高く、また、寿命時間が長い紫外線蛍光ランプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の紫外線蛍光ランプは、紫外線照射により接着力が低下する粘着剤の剥離工程に使用する紫外線蛍光ランプであって、放電容器と、放電容器に封入される放電媒体と、前記放電媒体に電力を供給する電極と、前記放電容器の内側に塗布された蛍光体層と、を具備し、第1の蛍光体YPO:Ceと、第2の蛍光体SrB:Euとを有する前記蛍光体層における前記第1の蛍光体YPO:Ceと前記第2の蛍光体SrB:Euの総量に対する、前記第1の蛍光体YPO:Ceの重量比が60〜95%である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】紫外線蛍光ランプの第1の実施形態について説明するための断面図である。
【図2】図1の紫外線蛍光ランプに使用する2種類の蛍光体YPO:Ceと蛍光体SrB:Euの、分光分布図である。
【図3】蛍光体YPO:Ceと蛍光体SrB:Euを混合した紫外線蛍光ランプの分光分布図である。
【図4】蛍光体YPO:Ceと蛍光体SrB:Euを混合した紫外線蛍光ランプの波長別の相対エネルギーとその強度比を説明するための表である。
【図5】紫外線照射により接着力が低下する粘着剤の剥離工程を説明するための概略図である
【図6】紫外線照射後の粘着剤の剥離状況および紫外線蛍光ランプの寿命時間を説明するための表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の紫外線蛍光ランプを、図面を参照して説明する。図1は紫外線蛍光ランプの断面図、図2は紫外線蛍光ランプに使用する2種類の蛍光体の分光分布図、図3は2種類の蛍光体を混合した紫外線蛍光ランプの分光分布図である。
【0010】
紫外線蛍光ランプ100の構成を以下に説明する。紫外線蛍光ランプ100は、例えば、図1に示す熱陰極蛍光ランプである。紫外線蛍光ランプ100の放電容器101は、例えば、ソーダガラス等の軟質ガラス製のガラス管で、その両端101a、101bをステム等で気密に封止し、内部空間102を形成した構成である。内部空間102には放電媒体として、例えば、封入圧力1Torr〜10Torrのアルゴンと、封入量1mg〜10mgの水銀が封入される。放電容器101のガラス管の寸法は、例えば、外径が14mm〜34mm、肉厚が0.4mm〜1.0mm、長さが135mm〜2400mm程度である。
【0011】
放電容器101の両端101a及び101bには、夫々、2本の導入線103aと104a、及び、103bと104bが気密に封止されている。導入線103a、104a、103b、104bは、放電容器101に使用されるガラス管の膨張係数との調整を図った金属線で、例えば、ジュメット線や鉄・ニッケル合金線等を用いる。
【0012】
導入線103aと104a、及び、導入線103bと104bの内部空間102側の先端には、それぞれ、電極105a、105bが電気的に接続されている。電極105a、105bは、例えば、熱陰極で、線径15μm〜30μmのタングステン、レニューム・タングステン合金等を、ダブルコイルまたはトリプルコイル状に加工し、その表面にエミッタ材料を塗布した構成である。エミッタ材料は、例えば、仕事関数が低いBaO、SrO、CaOの混合体や、更に、エミッタ材料の蒸発を抑制するZrO等を添加した材料を使用する。電極105a、105bのフィラメントに電流を流すと、フィラメントが温度600℃〜1100℃に加熱され、その表面に塗布されたエミッタから熱電子放出が放出され、紫外線蛍光ランプ100の始動電圧や管電圧を低減することができる。
【0013】
放電容器101の両端には、例えば、口金106aと106bが、セメント(図示無)等を介して接続・固定されている。口金106a及び106bには、夫々、2本の電力供給ピン107aと108a及び107bと108bとが装着されており、これらは、導入線103aと104a及び導入線103bと104bと電気的に接続されている。
【0014】
放電容器101の両端を除く内壁には、例えば、アルミナやシリカ等の保護膜109が膜厚0.5μm〜5μm形成され、更にその内面側には、蛍光体層110が膜厚5〜30μmで形成されている。
【0015】
蛍光体層110には、図2(a)に示す分光分布を有する第1の蛍光体のYPO:Ce(セリウム賦活リン酸イットリウム)と、図2(b)に示す分光分布を有する第2の蛍光体のSrB:Eu(ユーロピウム賦活ホウ酸ストロンチウム)が混合して塗布されている。また、蛍光体層110には、上述した蛍光体以外に、蛍光体層110の膜強度を向上させるため、例えば、0.3CaO・0.7BaO・1.6B等のボレート系結着材、Ca等のカルシウム系結着材、またはAl等のアルミナ系結着剤が、単体または混合されて、添加されている。その他に、暗黒中の放電遅れを改善するためのAlも添加することができる。
【0016】
点灯回路(図示無)により、電極105aと105bとの間に、例えば、周波数20kHz〜80kHzで、電圧実効値が50〜1000Vの正弦波電圧を印加すると、内部空間102内の水銀とアルゴンが放電し、水銀から波長185nmと254nmの紫外線が放射される。この水銀からの紫外線が、蛍光体層110に当たると、蛍光体が励起され、蛍光体層110から紫外線が放射される。
【0017】
蛍光体層110に含まれる第1の蛍光体YPO:Ceと、第2の蛍光体SrB:Euとの重量比別の、紫外線蛍光ランプから放射される分光分布図を図3に示す。第1の蛍光体YPO:Ceと第2の蛍光体SrB:Euとの総和に対する第1の蛍光体YPO:Ceの重量比が90%の場合を図3(a)に、80%の場合を図3(b)に、60%の場合を図3(c)に、40%の場合を図3(d)に、20%の場合を図3(e)に示している。蛍光体層110に含まれる蛍光体の重量比は、紫外線蛍光ランプ100を破壊して、蛍光体層110の粉末を取り出し、例えば、電子プローブマイクロアナライザ(日本電子株式会社製JXA―8200)による定性分析法等により、各蛍光体成分及び含有比率を測定し、このデータより重量比の換算を行うことができる。
【0018】
第1の蛍光体YPO:Ceと第2の蛍光体SrB:Euとを混合させることで、これらの蛍光体から放射させる紫外線発光が合成されるため、これら蛍光体を単体で使用した場合より、波長320nm〜400nmの範囲の幅広い紫外線放射を得ることができる。
【0019】
第1の蛍光体YPO:Ceの放射のピーク波長337nmと355nm、及び、第2の蛍光体SrB:Euの放射のピーク波長369nmの相対エネルギーを、それぞれ、A、B、Cとして、図4に示す。また、波長369nmの相対エネルギーCに対する、波長337nmの相対エネルギーAの比率A/C(%)も同時に示す。紫外線の相対エネルギーの相対値は、例えば、分光器(株式会社オプトリサーチ製MSR―7000)等で測定し、得られた強度を相対エネルギーで値付けされた値との間で補正することにより、得ることができる。
【0020】
第1の蛍光体YPO:Ceの重量比を増加させることで、長波長の紫外線に対する短波長の紫外線の比率を増加させることができる。
【0021】
紫外線蛍光ランプ100は、例えば、図5(a)に示すように、接着対象物200と300との間に介在し、両者を接着した粘着体400に、図5(b)に示すように紫外線照射500を行い、図5(c)に示すように粘着体400の接着力を低下させて、接着対象物200と300を分離させる工程で使用される。
【0022】
粘着体400は、例えば、粘着剤支持体401の両面に、第1の粘着剤402aと第2の粘着剤402bをコートした両面テープで、少なくとも一方の粘着剤に紫外線照射により接着力を失う粘着剤を使用している。
【0023】
粘着剤支持体401は、紫外線の透過率が高い樹脂シート、例えば、ポリ塩化ビニール、ポリエステル、ポリブデン、ポリブタジエン、ポリエチレン等である。粘着剤支持体401の厚みは、例えば、5μm〜100μmである。また、粘着剤支持体401を省略し、直接、紫外線照射により接着力が低下する粘着剤を、接着対象物200または300に塗布して、接着させる構成でも良い。
【0024】
第1の粘着剤402aは、例えば、紫外線照射により硬化して接着力を失う紫外線硬化樹脂である。紫外線硬化樹脂は、例えば、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などで、これらに、粘着付与樹脂、紫外線架橋性オリゴマ及び/又はモノマ、光重合開始剤を添加した構成である。第1の粘着剤402aの厚みは、例えば、5〜100μmである。第2の粘着剤402bは、これと同構成としても良いし、紫外線硬化しない粘着剤とすることもできる。
【0025】
粘着付与樹脂は、粘着性を向上させるための樹脂で、例えば、テンペル系樹脂、ロジン系樹脂等が使用される。
【0026】
紫外線架橋性オリゴマ及び/又はモノマは、紫外線照射受けた重合開始剤によって粘着剤全体を硬化させて、その接着力を低下させるためのものである。紫外線架橋性オリゴマ及び/又はモノマは、例えば、アクリレート系化合物、ウレタンアクリレート系オリゴマ等を用いる。重合開始剤は、例えば、ベンゾイン、ベンゾイメチルエーテル、ベンゾイエチルエーテル、ベンゾイイソプロピルエーテル、ベンジルジフエニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β―クロールアンスラキノン等を用いる。
【0027】
蛍光体の重量比別に、紫外線蛍光ランプ100からの紫外線を粘着体400に照射し、第1の粘着剤402aの剥離状況を評価した結果を図6に示す。図中の印◎は第1の粘着剤402aと接着対象物300が綺麗に剥離した状態を示し、印○は接着対象物300上に第1の粘着剤402aが少量残存するものの剥離する状態を示し、これらが実用上問題無い状態である。一方、印×は接着対象物300上に第1の粘着剤402aが多量に残存する状態や、第1の粘着剤402aが接着対象物300と剥離しない状態で、剥離が不十分で実用上使用できない状態を示す。
【0028】
蛍光体層110の第1の蛍光体YPO:Ceと第2の蛍光体SrB:Euとの総和に対する第1の蛍光体YPO:Ceの重量比が60%〜95%の範囲において、実用上問題無い剥離特性が得られ、更に、重量比が80%〜90%の範囲において、良好な剥離特性が得られる。
【0029】
また、図4との関係により、波長369nmの相対エネルギーCに対する、波長337nmの相対エネルギーAの比率A/Cが60%〜225%の範囲において、実用上問題無い剥離特性が得られ、更に、比率A/Cが120%〜180%の範囲において、良好な剥離特性が得られる。
【0030】
紫外線蛍光ランプ100からの放射のうち、短波長側の紫外線は、光エネルギーが強いものの、第1の粘着剤402aで吸収されやすいため、第1の粘着剤402aの光照射側の表面硬化に寄与する。一方、紫外線放射の長波長側の紫外線は、短波長の紫外線より光エネルギーが弱いものの、第1の粘着剤402aの内部に浸透するため、第1の粘着剤402aの光照射面から内側部の硬化に寄与する。上述した短波長と長波長の比率を得ることが出きる蛍光体の重量比に設定することで、第1の粘着剤402aの表面と内側の両方の紫外線硬化を促進でき、剥離特性を向上させることができる。
【0031】
初期の紫外線照度値に対して70%の値まで低下したときの寿命時間を図6に示す。比較例の蛍光体BaSi:Pbの場合が約1000時間に対して、第1の実施形態における第1の蛍光体YPO:Ceと第2の蛍光体SrB:Euを混合した構成では約1700Hrと長くなる。蛍光体BaSi:Pbは、Pbが水銀とアマルガムを反応しやすい材料のため、点灯中に水銀が蛍光体に付着して、水銀からの紫外線吸収及び蛍光体からの紫外線放出を阻害する。一方、蛍光体YPO:CeとSrB:Euは、水銀とのアマルガム形成を低減することができため、寿命時間を長くすることができる。
【0032】
また、第1の蛍光体YPO:Ceと第2の蛍光体SrB:Euには、比較例の蛍光体BaSi:Pbのように環境負荷物質のPb等が含まれない構成のため、例えば、紫外線蛍光ランプの廃棄時に環境を汚染する恐れがない。
【0033】
上述したように、第1の実施形態の紫外線蛍光ランプは、紫外線照射により接着力が低下する粘着剤の剥離工程用途において、粘着体の剥離性が高く、また、寿命時間が長い特性を有する。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0035】
紫外線蛍光ランプ100は、熱陰極蛍光ランプ以外に、冷陰極蛍光ランプや、外部電極蛍光ランプ、無電極蛍光ランプ等の形態も採ることができる。また、紫外線蛍光ランプの形状は、直管形状以外に、ランプを熱加工して、U字形状、C字形状、コ字形状、L字形状、W字形状、平板形状等、任意の形状を採ることが出来る。放電媒体は、水銀と共に添加するアルゴンの代わりに、ネオン、アルゴン、クリプトン、またはキセノンを単体または少なくとも1種類以上混合した構成とすることができる。また、水銀を封入せずに、紫外線を照射するキセノンとその他の希ガスを混合する構成も採ることができる。
【0036】
蛍光体層110には、第1の蛍光体YPO:Ceと、第2の蛍光体SrB:Euに加えて、更に、その他の蛍光体を添加する構成でも構わない。この場合、第1の蛍光体YPO:Ceと、第2の蛍光体SrB:Euの重量比と、波長369nmの相対エネルギーCに対する、波長337nmの相対エネルギーAの比率A/Cの関係は満足するものとする。
【0037】
半導体用途の一例を示したが、紫外線を照射すると接着力を低下する粘着剤を接着させた対象物の剥離を行う工程であればよく、液晶、PDP、EL等の他分野の工程に応用できるものである。
【0038】
紫外線照射により接着力が低下する粘着剤は、紫外線硬化樹脂を記載したが、その他、紫外線照射により発泡して接着力を低下させる紫外線発泡樹脂を使用することができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
100 紫外線蛍光ランプ
101 放電容器
102 内部空間
103a、103b 導入線
104a、104b 導入線
105a、105b 電極
106a、106b 口金
107a、107b 供給ピン
108a、108b 供給ピン
109 保護膜
110 蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線照射により接着力が低下する粘着剤の剥離工程に使用する紫外線蛍光ランプであって、
放電容器と、放電容器に封入される放電媒体と、前記放電媒体に電力を供給する電極と、前記放電容器の内側に塗布された蛍光体層と、を具備し、第1の蛍光体YPO:Ceと、第2の蛍光体SrB:Euとを有する前記蛍光体層における前記第1の蛍光体YPO:Ceと前記第2の蛍光体SrB:Euの総量に対する、前記第1の蛍光体YPO:Ceの重量比が60〜95%である紫外線蛍光ランプ。
【請求項2】
放電容器と、放電容器に封入される放電媒体と、前記放電媒体に電力を供給する電極と、前記放電容器の内側に塗布された蛍光体層と、を具備し、第1の蛍光体YPO:Ceと、第2の蛍光体SrB:Euとを有する前記蛍光体層からの波長369nmの放射の相対エネルギーCに対する、波長337nmの放射の相対エネルギーAの比率A/Cが60〜225%である紫外線蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−97952(P2013−97952A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238448(P2011−238448)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】