説明

細線巻取方法及び細線巻取装置

【課題】 線癖が抑制された直進性の良好な細線をスプールに巻き取ることができる細線巻取方法及び細線巻取装置を提供すること。
【解決手段】 金線2が巻回されたボビン3から繰り出された金線2をスプール4で巻き取る細線巻取方法において、ボビン3による繰出位置とスプール4による巻取位置とを結ぶ巻線経路上の一点に対する前記繰出位置の変化を検出し、該変化が所定の閾値を超えたときに、前記一点に対する前記繰出位置を前記閾値内とするように、ボビン3を移動させながら金線2をスプール4で巻き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばボンディングワイヤとして用いられる金線などの金属細線を巻き取る細線巻取方法及び細線巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製品、例えばLSIなどのような大規模集積回路の結線には、ボンディングワイヤが使用されている。近年、このようなボンディングワイヤは、その線径がより細くなる傾向があるほか、ワイヤ自体の曲がりの影響によってショート不良が発生しやすくなることから、これを回避するために張力を均一に低減させて巻き取る細線巻取装置によって製造されている(例えば、特許文献1参照)。
この細線巻取装置は、金線が巻回されている繰出体としてのボビンと、ボビンから繰り出された金線を巻き取る巻取体としてのスプールとを備えている。また、ボビンからの金線の繰出位置とスプールによる金線の巻取位置とを結ぶ巻線経路上に、巻線経路上の金線の張力を調整するダンサー及びガイドローラとしてのシーブが設けられている。
【特許文献1】特開平5−132232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の細線巻取装置には、以下の問題が残されている。すなわち、ボビンに巻回されている金線を順次繰り出していくと、金線の繰出位置がボビンの軸方向で移動していく。そして、ボビンから繰り出された金線が、シーブに対して角度を持って入ることとなる。したがって、金線に対して負荷がかかり、スプールに巻き取られた金線に線癖が発生しやすくなるという問題がある。
【0004】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、線癖が抑制された直進性の良好な金線などの細線をスプールに巻き取ることができる細線巻取方法及び細線巻取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の細線巻取方法は、細線が巻回された繰出体から繰り出された前記細線を巻取体で巻き取る細線巻取方法において、前記繰出体による繰出位置と前記巻取体による巻取位置とを結ぶ巻線経路上の一点に対する前記繰出位置の変化を検出し、該変化が所定の閾値を超えたときに、前記一点に対する前記繰出位置を前記閾値内とするように、前記繰出体を移動させながら前記細線を前記巻取体で巻き取ることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の細線巻取装置は、細線が巻回された繰出体と、前記細線を巻き取る巻取体とを備え、前記繰出体から繰り出された前記細線を前記巻取体で巻き取る細線巻取装置において、前記繰出体を、該繰出体による繰出位置と前記巻取体による巻取位置とを結ぶ巻線経路上の一点に対して移動させる繰出体移動手段と、前記一点に対する前記繰出位置を検出する繰出位置検出手段と、該繰出位置検出手段で検出した前記繰出位置が、前記一点に対して所定の閾値を超えたことを判別する判別手段と、前記繰出体移動手段による移動方向を変化させる移動方向変更手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
これらの発明によれば、繰出体から細線を繰り出していくと細線が繰出体に巻回されているので、巻取位置に対する繰出位置が変化する。そこで、巻線系路上の一点に対する繰出位置が所定の閾値内となるように、繰出体をこの一点に対して適宜移動させながら細線を繰り出すことで、巻線経路の変動が小さくなる。これにより、巻取体への細線の巻取時に細線への与える負荷を低減することができる。したがって、線癖の抑制された細線が巻回された巻取体を得ることができる。
【0008】
また、本発明の細線巻取方法は、前記繰出体が、該繰出体の回転軸方向で往復移動可能であり、前記変化が前記閾値を超えたときに前記繰出体の移動方向を反転することが好ましい。
また、本発明の細線巻取装置は、前記繰出体移動手段が、前記繰出体を該繰出体の回転軸方向で往復移動させ、前記移動方向変更手段が、前記繰出体の移動方向を反転させることが好ましい。
これらの発明によれば、繰出体を繰出体の回転軸方向で移動させ、巻線経路上の一点に対する繰出位置が所定の閾値を超えたときに繰出体の移動方向を反転させる。そして、繰出位置が閾値内にある状態で細線の巻き取りが行われる。このようにして、上述と同様に、線癖の抑制された細線とする。
【0009】
また、本発明の細線巻取方法は、前記繰出体の移動を停止した状態で該繰出体から前記細線を繰り出して前記繰出位置の移動方向を検出し、該繰出位置の移動方向に対して逆方向に前記繰出体を移動させる巻回方向判別工程を備えることが好ましい。
この発明によれば、繰出位置の移動方向に対して逆方向に繰出体を移動させることによって、巻取体で細線の巻き取る際、巻線経路上の一点に対する繰出位置が閾値内となるように繰出体が移動する。
【0010】
また、本発明の細線巻取装置は、前記繰出位置検出手段が、前記巻線経路に対して交差するように配置された複数の細線検知手段を備えることが好ましい。
この発明によれば、繰出体から細線を繰り出して繰出位置が移動することで巻線経路が変化したときに、複数配置された細線検知手段で変化した巻線経路を検知する。この検知した結果から繰出位置を検出して巻線経路上の一点に対する繰出位置の制御を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明の細線巻取方法及び細線巻取装置によれば、巻線経路上の一点に対する繰出位置を所定の閾値内として繰出体から繰り出される細線への負荷を低減する。これにより、巻取体に巻回された細線を、線癖が抑制され、直進性の良好な細線とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明にかかる細線巻取装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態による細線巻取装置1は、例えばICチップ電極と外部のリード端子とを接続するボンディングワイヤである金線(細線)2の巻き替えを行うものである。そして、この細線巻取装置1は、図1に示すように、金線2が巻回されたボビン(繰出体)3と、ボビン3から繰り出された金線2を巻き取るスプール(巻取体)4と、ボビン3からの金線2の繰出位置及びスプール4による金線2の巻取位置を結ぶ巻線経路上に設けられたダンサー5と、複数のガイドローラとしてのシーブ6a、6bと、繰出位置検出手段(繰出位置検出手段)7と、これらを制御する制御部8とを備えている。
【0013】
金線2は、例えば純度99.99%のAu(金)によって形成され、その線径が、例えば18μmである。そして、この金線2は、前工程である伸線工程及びアニール工程を経て製造されている。
ボビン3は、駆動源としての繰出モータ11の出力軸に装着されており、この繰出モータ11の駆動によって回転することで、金線2を繰り出す。この繰出モータ11は、繰出モータ11及びボビン3をボビン3の回転軸方向で往復移動させる繰出トラバースモータ(繰出体移動手段)12に接続されている。これにより、ボビン3は、図1に示す矢印A1、A2方向に移動可能となる。なお、本実施形態において、繰出位置とは、図1に示す点P1のように、金線2がボビン3から繰り出される位置を示している。
【0014】
スプール4は、駆動源としての巻取モータ15の出力軸に設けられたスプールホルダ16の外周に装着されており、所定の回転速度でボビン3から繰り出された金線2を巻き付ける。また、スプールホルダ16は、巻取モータ15の駆動によって回転されると共に、巻取トラバースモータ17によって軸方向に往復移動することにより、スプール4に金線2が互いに軸線方向で付着しないように巻き付けられるように構成されている。
【0015】
ダンサー5は、巻線経路上の金線2の張力を検出して金線2に対して一定の負荷をかける機能を果たすものであって、支点21を中心として揺動自在に支持されたアーム22と、アーム22の先端に回転自在に軸支されたローラ23とを有する。そして、ダンサー5は、ローラ23上に繰り出された金線2をローラ23上でガイドしている。このダンサー5は、スプール4で巻き取られる金線2の単位時間当たりの巻取量に応じて変化する金線2の張力に応じて揺動する。
また、ダンサー5には、揺動角度検出器24が設けられている。この揺動角度検出器24は、金線2の張力の変化に応じてダンサー5が支点21を中心として揺動したときの角度を検出する。そして、揺動角度検出器24は、角度の検出結果を、制御部8の後述する張力制御手段41に送信する。
シーブ6a、6bは、巻線経路においてダンサー5の両側に配置されており、巻線経路上に回転自在に軸支されている。
ここで、ダンサー5及びシーブ6a、6bは、これらに金線2が繰り出されたときに、金線2がほぼ平面上に位置するように設けられている。これにより、ダンサー5及びシーブ6a、6bに繰り出される金線2に与える余分な負荷が低減される。なお、本実施形態において、巻線経路上の一点とは、図1に示す点P2のように、金線2がシーブ6aに至る位置を示している。
【0016】
繰出位置検出手段7は、8個のファイバセンサ(細線検知手段)31a〜31hと、ファイバセンサ31a〜31hが上面に設けられた基台32と、ボビン3の位置を検出するリニアエンコーダ33とを備えている。
8個のファイバセンサ31a〜31hは、ファイバセンサ31a〜31dとファイバセンサ31e〜31hとが金線2の巻線経路に対してほぼ平行な対称軸Lに対して線対称となるようにそれぞれ配置されている。これらファイバセンサ31a〜31hは、それぞれのファイバセンサ上を金線2が通過したときに、金線2が通過した旨の情報を、制御部8の後述するセンサ検知判別手段42に送信する。
【0017】
ファイバセンサ31a、31eは、他のファイバセンサ31b〜31hと比較して、巻線経路の金線2の繰出方向の基端側であって、対称軸Lからの距離が最も遠くなる位置に設けられている。
ファイバセンサ31b、31fは、ファイバセンサ31a、31eと比較して巻線経路の金線2の繰出方向の先端側であって、他のファイバセンサ31a、31c、31d、31g、31hと比較して対称軸Lとの距離が小さい位置に設けられている。
ファイバセンサ31c、31gは、ファイバセンサ31b、31fと比較して巻線経路の金線2の繰出方向の先端側であって、対称軸Lとの距離がやや大きい位置に設けられている。
ファイバセンサ31d、31hは、ファイバセンサ31c、31gと比較して巻線経路の金線2の繰出方向の先端側であって、対称軸Lとの距離がやや大きい位置に設けられている。
これらファイバセンサ31a〜31hの設置箇所は、ボビン3と各ファイバセンサ31a〜31hとの距離によるが、ボビン3から繰り出される金線2の繰出位置が巻線経路上の一点に対して、図1に示す矢印A1方向またはA2方向で、閾値である、例えば2cm移動したときに繰出位置が移動したことを検出できるように配置されている。
【0018】
リニアエンコーダ33は、アブソルート型のリニアエンコーダであって、基台32に設けられた被検出器33aと、ボビン3と共に移動する検出器33bとを備えている。そして、リニアエンコーダ33は、繰出トラバースモータ12によって移動したボビン3の基台32に対する相対的な位置を検出し、制御部8の後述する初期位置判別手段43に送信する。
【0019】
制御部8は、張力制御手段41と、センサ検知判別手段42と、初期位置判別手段43と、巻解方向判別手段44と、トラバース反転手段45と、巻取制御手段46とを備えている。
張力制御手段41は、ダンサー5の揺動角度検出器24からダンサー5の揺動角度の検出結果に基づいて、繰出モータ11によるボビン3の回転速度を制御する。
センサ検知判別手段42は、ファイバセンサ31a〜31hのうちのいずれかで金線2の検知の有無を行ったか判別して、初期位置判別手段43と巻解方向判別手段44とトラバース反転手段45に送信する。
【0020】
初期位置判別手段43は、後述する初期工程において、ボビン3から繰り出される金線2の繰出位置が対称軸Lに沿うように繰出位置を制御する。
巻解方向判別手段44は、後述する巻解方向判別工程において、ボビン3に巻回された金線2の巻解方向を判別し、繰出トラバースモータ12によるボビン3のトラバース方向を判別する。
トラバース反転手段45は、後述する巻取工程において、ボビン3から繰り出される金線2の繰出位置の対称軸Lに対するズレが所定の範囲内となるように、繰出トラバースモータ12によるボビン3のトラバース方向やトラバース速度を制御する。
巻取制御手段46は、巻取モータ15によるスプール4の回転速度や、巻取トラバースモータ17によるスプール4の巻取位置を制御し、金線2がスプール4に対して所定の張力であると共に所定の長さで巻き替えられるようにする。
【0021】
次に、この細線巻取装置1を用いた金線の巻取方法について説明する。
この細線巻取方法は、図3に示すように、初期工程ST1と巻解方向判別工程ST2と巻取工程ST3とを備えている。
最初に、初期工程ST1について説明する。この初期工程ST1では、まず、ボビン3からスプール4まで金線2を巻線経路に沿って配線する。このとき、スプール4による金線2の巻取位置が、ダンサー5及びシーブ6a、6bに配線された金線2とほぼ同一平面上にあるようにする。
【0022】
次に、繰出トラバースモータ12を駆動させることによってボビン3を図1に示す矢印A1方向または矢印A2方向に移動させ、リニアエンコーダ33が初期位置判別手段43にボビン3と基台32との相対的な位置情報を送信する。そして、初期位置判別手段43は、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31a上を金線2が通過したとの判別を行ったときの位置情報を、例えばメモリなどに記録する。ボビン3を図1に示す矢印A2方向または矢印A1方向に移動させ、初期位置判別手段43は、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31e上を金線2が通過したとの判別を行ったときの位置情報を同様に記録する。その後、初期位置判別手段43は、記録した両位置情報からその中間の位置にある対称軸Lに沿ってボビン3から金線2が繰り出されるように繰出トラバースモータ12を駆動させてボビン3を矢印A1または矢印A2方向に移動させ、繰出位置を変更する。
以上のようにして、初期工程ST1を行う。ここで、初期工程ST1では、巻取モータ15及び巻取トラバースモータ17が駆動されていない。
【0023】
なお、初期工程ST1において、位置情報の取得は、ファイバセンサ31a、31eの順で行ったが、ファイバセンサ31e、31aの順で行ってもよい。また、ファイバセンサ31a、31eを用いて初期位置を判別したが、ファイバセンサ31a〜31hのうちのいずれか2つを用いて取得してもよい。また、ファイバセンサ31a〜31hのうちのいずれか1つを初期位置の取得のために用い、あらかじめそのファイバセンサと対称軸Lとの距離を記録しておくことで、1つのファイバセンサのみで初期位置の取得を行ってもよい。
【0024】
次に、巻解方向判別工程ST2について説明する。この巻解方向判別工程ST2は、繰出トラバースモータ12を駆動させない状態で繰出モータ11及び巻取モータ15を駆動させ、ボビン3に巻回されている金線2をボビン3から繰り出してく。このとき、金線2が繰り出されることによってボビン3からの金線2の繰出位置が、ボビン3に巻回された金線2の巻回方向に応じて図1に示す矢印A1方向またはA2に移動する。
【0025】
ここで、ボビン3からの金線2の繰出位置が図1に示す矢印A1方向に移動した場合には、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31b、31cの順で金線2を検知する。そして、巻解方向判別手段44は、ファイバセンサ31b、31cの順で金線2を検知したと判別したときに、ボビン3に巻回されている金線2の巻解方向が図1に示す矢印A1方向であると判別する。そして、巻解方向判別手段44は、ボビン3のトラバース方向が図1に示す矢印A2方向となるように繰出トラバースモータ12を駆動させる。
【0026】
一方、ボビン3からの金線2の繰出位置が図1に示す矢印A2方向に移動した場合には、上述と同様に、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31f、31gの順で金線2を検知する。そして、巻解方向判別手段44は、ファイバセンサ31f、31gの順で金線2を検知したと判別したときに、ボビン3のトラバース方向が図1に示すA1方向となるように繰出トラバースモータ12を駆動させる。このようにして、ボビン3から繰り出された金線2が、対称軸Lに沿って繰り出されるようになる。
以上のようにして、巻解方向判別工程ST2を行う。
【0027】
次に、巻取工程ST3について説明する。この巻取工程ST3は、上述したように繰出トラバースモータ12でボビン3を図1に示す矢印A1または矢印A2方向に移動させながら、ボビン3からの金線2の繰り出し及びスプール4による金線2の巻き取りを行う。ここで、ボビン3から金線2を順次繰り出していくと、金線2の繰出位置がボビン3の端部に至ることによって、金線2の巻解方向が反転する。また、ボビン3から金線2を繰り出すことによって金線2の繰出位置が移動する速度が、ボビン3のトラバース方向でのトラバース速度よりも遅くなることがある。これにより、金線2の繰出位置が、図1に示す点P1′または点P1″のように移動していく。このように、金線2の繰出位置が移動することによって、ボビン3から繰り出された金線2に余分な負荷がかかってしまう。
【0028】
そこで、まずトラバース方向が図1に示す矢印A1方向であるか矢印A2方向であるか判別する(図4に示すステップST31)。
ステップST31において、トラバース方向が図1に示すA2方向である場合には、センサ検知判別手段42が、ファイバセンサ31f、31gの順で金線2を検知したか否かの判別を行う(図4に示すステップST32)。すなわち、繰出位置が移動することによって金線2がファイバセンサ31f、31g上をこの順番で通過したか判別を行う。
【0029】
ステップST32において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31f、31gの順で金線2を検知したとの判別を行った場合には、トラバース反転手段45が繰出トラバースモータ12によるボビン3のトラバース速度を減速し(図4に示すステップST33)、ステップST31に戻る。
また、ステップST32において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31f、31gの順で金線2が通過したと判別されない場合には、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31hで金線2を検知したか否かの判別を行う(図4に示すステップST34)。
【0030】
ステップST34において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31hで金線2が通過したと判別した場合には、トラバース方向を図1に示す矢印A1方向に反転し、加速する(図4に示すステップST35)。そして、ステップST31に戻る。なお、反転後に加速しなくてもよい。
また、ステップST34において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31hで金線2が通過したと判別されない場合は、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31b、31cの順で金線2を検知したか否かの判別を行う(図4に示すステップST36)。すなわち、繰出位置が移動することによって金線2がファイバセンサ31b、31c上をこの順番で通過したか判別を行う。
【0031】
ステップST36において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31b、31cの順で金線2を検知したとの判別を行った場合には、トラバース反転手段45が繰出トラバースモータ12によるボビン3のトラバース速度を加速し(図4に示すステップST37)、ステップST31に戻る。
また、ステップST36において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31b、31cの順で金線2が通過したと判別されない場合には、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31dで金線2を検知したか否かの判別を行う(図4に示すステップST38)。
【0032】
ステップST38において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31dで金線2を検知したと判別した場合には、トラバース反転手段45が繰出トラバースモータ12によるボビン3のトラバース速度を加速する(図4に示すステップST39)。そして、ステップST31に戻る。
また、ステップST38において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31dで金線2が通過したと判別されない場合には、トラバース速度を維持した状態で金線2の繰り出し及び巻き取りを行う。そして、スプール4による金線2の巻き取りが巻き終わりとなっているかの判別を行う(図4に示すステップST40)。
【0033】
ステップST40において、スプール4が巻き終わりとなっていないときには、ステップST31に戻ってボビン3のトラバース方向を維持した状態で金線2の繰り出し及び巻き取りを行う。また、スプール4が巻き終わりとなっているときは、終了する。
【0034】
一方、ステップST31において、トラバース方向が図1に示すA1方向である場合には、上述と同様に、センサ検知判別手段42が、ファイバセンサ31b、31cの順で金線2を検知したか否かの判別を行う(図4に示すステップST41)。
ステップST41において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31b、31cの順で金線2を検知したとの判別を行った場合には、トラバース速度を減速し(図4に示すステップST42)、ステップST31に戻る。
また、ステップST41において判別されない場合には、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31dで金線2を検知したか否かの判別を行う(図4に示すステップST43)。
【0035】
ステップST43において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31dで金線2が通過したと判別した場合には、トラバース方向を図1に示す矢印A2方向に反転し、加速する(図4に示すステップST46)。そして、ステップST31に戻る。なお、反転後に加速しなくてもよい。
また、ステップST43において判別されない場合は、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31f、31gの順で金線2を検知したか否かの判別を行う(図4に示すステップST45)。
【0036】
ステップST45において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31f、31gの順で金線2を検知したとの判別を行った場合にはトラバース速度を加速し(図4に示すステップST46)、ステップST31に戻る。
また、ステップST45において判別されない場合には、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31hで金線2を検知したか否かの判別を行う(図4に示すステップST47)。
【0037】
ステップST47において、センサ検知判別手段42がファイバセンサ31hで金線2を検知したと判別した場合には、トラバース反転手段45が繰出トラバースモータ12によるボビン3のトラバース速度を加速し(図4に示すステップST48)、ステップST31に戻る。
また、ステップST38において判別されない場合には、ステップST40に進む。
【0038】
以上のようにして、巻取工程ST3を行う。そして、金線2を巻き終わったスプール4をスプールホルダ16から取り外し、新たに金線2を巻き取るスプール4をスプールホルダ16に装着する。また、スプール4で巻き終えるだけの十分な金線2がボビン3に巻回されていない場合には、新たなボビン3を繰出モータ11の出力軸に装着する。
この巻取工程ST3において、巻取制御手段46は、巻取モータ15によるスプール4の回転速度や巻取トラバースモータ17によるスプール4のトラバース方向及びトラバース速度を適宜調整している。これにより、スプール4に金線2が互いに軸線方向で付着しないように巻き付けられ、ボビン3からの金線2がスプール4に対して所定の張力であると共に所定の長さで巻き替えられる。
なお、ステップST36、ST41において、ファイバセンサ31b、31cの順で金線2を検知したことの判別を行っているが、ファイバセンサ31b、31dの順であってもよく、ファイバセンサ31c、31dの順であってもよい。また、同様に、ステップST32、ST45において、ファイバセンサ31f、31gの順で金線2を検知したことの判別を行っているが、ファイバセンサ31f、31hの順であってもよく、ファイバセンサ31g、31hの順であってもよい。
【0039】
このような細線巻取方法及び細線巻取装置1によれば、巻線経路上の一点に対する繰出位置を所定の閾値内となるように適宜繰出位置を繰出トラバースモータ12及びトラバース反転手段45で反転することで、繰出位置からシーブ6aまで金線2がまっすぐ繰り出される。これにより、ボビン3からシーブ6aに繰り出された金線2への負荷が低減される。したがって、スプール4で線癖が抑制されて直進性が良好な金線2を巻き取ることができる。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、細線として金線を用いたが、鉄線、タングステン線、アルミニウム線、銅線、クロム線、ニッケル線や、貴金属線(銀線、白金線、パラジウム線)や、合金線(例えば、金―パラジウム線、金―銀線、金―白金線、18金線、硬鋼線、ピアノ線、ステンレス線)や、これらの金属線に他の物質(金属、無機物、有機物など)を被覆した細線などであってもよい。さらに、金属の細線に限らず、例えば光ファイバケーブルのように金属でない無機物や、無機物で構成された細線などであってもよい。
また、巻線経路上の一点は、巻取体による巻取位置や他方のシーブに至る位置など、他の一点であってもよい。
また、繰出体の回転軸と巻取体の回転軸とを平行となるように配置しているが、例えば互いの回転軸の延長軸が直交するように配置してもよく、他の角度で交差するように配置してもよい。
また、位置情報を、例えば2進符号などの符号で表すアブソルート型のリニアエンコーダを用いたが、位置情報を、例えば単相パルス信号などのパルス数で表すインクリメンタル型のリニアエンコーダを用いてもよい。また、繰出トラバースモータにロータリーエンコーダを設け、ロータリーエンコーダの出力を基に初期工程における繰出位置を調整するような構成としてもよい。
また、基台上の8箇所にファイバセンサを設けているが、少なくとも2箇所にファイバセンサが設けられた構成であればよい。ここで、2つのファイバセンサを用いて金線を検知した順番を判断することによって、金線の通過方向を判別しているが、金線の検知と同時に金線の通過方向を判別可能であるファイバセンサを用いてもよい。
【0041】
また、初期工程において、基台を図1に示す矢印A1方向またはA2方向に移動させることで、ボビンと基台との相対的な位置情報をリニアエンコーダで取得してもよい。
また、初期工程において、繰出体からの金線の繰出位置を目視で確認し、繰出体を手動で移動させることで繰出位置を調整してもよい。
また、初期工程の後でトラバース方向を図1に示す矢印A1方向またはA2方向のうちのいずれか一方にあらかじめ設定しておくことによって、巻解方向判別工程を省略してもよい。このとき、金線の繰り出しによる巻解方向と繰出体のトラバース方向とが一致しても、後段の巻取工程において、繰出体からの金線の繰出位置を所定の範囲内とすることができる。
また、巻取工程において、トラバース反転手段が金線の繰出位置が所定の範囲外となっていることを判別して繰出体のトラバース方向を反転しているが、制御部によって繰出体のトラバース方向を反転しないような構成としてもよい。すなわち、トラバース反転手段が所定の範囲外に繰出位置が位置しているとの判別を行ったときにその旨を表示する表示手段と、繰出体のトラバース方向を反転させる反転スイッチとが設けられた構成とする。そして、操作者は、繰出位置が範囲外となっている旨の表示を確認したら、反転スイッチによって繰出体のトラバース方向を反転する。以上のようにしても、上述と同様に安定した金線の巻き取りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態における細線巻取装置を示す平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】本発明の一実施形態における細線巻取方法を示すフローチャートである。
【図4】図3の巻取工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 細線巻取装置
2 金線(細線)
3 ボビン(繰出体)
4 スプール(巻取体)
6a、6b シーブ(ガイドローラ)
7 繰出位置検出手段
12 繰出トラバースモータ(繰出体移動手段)
31a〜31h ファイバセンサ(細線検知手段)
45 トラバース反転手段(移動方向変更手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細線が巻回された繰出体から繰り出された前記細線を巻取体で巻き取る細線巻取方法において、
前記繰出体による繰出位置と前記巻取体による巻取位置とを結ぶ巻線経路上の一点に対する前記繰出位置の変化を検出し、
該変化が所定の閾値を超えたときに、前記一点に対する前記繰出位置を前記閾値内とするように、前記繰出体を移動させながら前記細線を前記巻取体で巻き取ることを特徴とする細線巻取方法。
【請求項2】
前記繰出体が、該繰出体の回転軸方向で往復移動可能であり、
前記変化が前記閾値を超えたときに前記繰出体の移動方向を反転することを特徴とする請求項1に記載の細線巻取方法。
【請求項3】
前記繰出体の移動を停止した状態で該繰出体から前記細線を繰り出して前記繰出位置の移動方向を検出し、
該繰出位置の移動方向に対して逆方向に前記繰出体を移動させる巻回方向判別工程を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の細線巻取方法。
【請求項4】
細線が巻回された繰出体と、前記細線を巻き取る巻取体とを備え、
前記繰出体から繰り出された前記細線を前記巻取体で巻き取る細線巻取装置において、
前記繰出体を、該繰出体による繰出位置と前記巻取体による巻取位置とを結ぶ巻線経路上の一点に対して移動させる繰出体移動手段と、
前記一点に対する前記繰出位置を検出する繰出位置検出手段と、
該繰出位置検出手段で検出した前記繰出位置が、前記一点に対して所定の閾値を超えたことを判別する判別手段と、
前記繰出体移動手段による移動方向を変化させる移動方向変更手段とを備えることを特徴とする細線巻取装置。
【請求項5】
前記繰出体移動手段が、前記繰出体を該繰出体の回転軸方向で往復移動させ、
前記移動方向変更手段が、前記繰出体の移動方向を反転させることを特徴とする請求項4に記載の細線巻取装置。
【請求項6】
前記繰出位置検出手段が、前記巻線経路に対して交差するように配置された複数の細線検知手段を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の細線巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−45538(P2007−45538A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229221(P2005−229221)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】