説明

細胞成長のための片状ミクロフィブリル化物品

本発明は、ミクロフィブリル化された熱可塑性ポリマー材料のマトリックスを用いる細胞の培養に関する。より詳細には、本発明は、細胞を培養する方法に関する。さらに、本発明は、細胞培養培地に分散された、細胞を培養するためのミクロフィブリル化物品に関する。本発明の、細胞を培養する熱可塑性ポリマー材料のマトリックスは、組織工学及び創傷治癒用途での使用が見出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロフィブリル化された熱可塑性ポリマー材料のマトリックスを利用する細胞の培養に関する。
【背景技術】
【0002】
組織工学及び創傷治癒は、失われた若しくは損傷した組織の再構築及び/又は再生へのアプローチである。細胞成長のための細胞外マトリックスを開発するこれまでの取り組みは、生体分解性及び生体吸収性材料の使用を伴ってきた。これらのマトリックスの開発では、臓器の置換、火傷若しくは潰瘍のための皮膚の置換、骨喪失の置換、又はさらに脳組織の置換において、工学組織(engineering tissues)として使用するためにヒアルロン酸及びコラーゲンが採用されてきた。これらの材料は典型的に高価であり、大量に生産されるときには多様な特性を有する。
【0003】
ポリ乳酸ホモポリマー及びポリカプロラクトンホモポリマーなどのポリマー、並びにそれらの関連コポリマー及びブレンドは、スカフォールド及び/又は細胞外マトリックスとして細胞浸透及びポリマー分解のための多孔質構造を提供する。しかし、組織再生の成功のためには、十分な細胞増殖及び適切な分化が三次元細胞複合物で達成されなければならない。アイグナー・J(Aigner,J.)らによる、「ヒアルロン酸ベンジルエステルに基づいた新規の不織布構造生体材料による軟骨組織工学(Cartilage Tissue Engineering with Novel Nonwoven Structured Biomaterial Based on Hyaluronic Acid Benzyl Ester)」、生物医学材料研究雑誌(J.Biomed.Mater.Res.)、1998年、42巻、172〜181貢;バット・G.S(Bhat,G.S.)による、「複合物のための三次元織物としての不織布(Nonwovens as Three-Dimensional Textiles for Composites)」、材料製造プロセス(Mater.Manuf.Process)、1995年、10巻、67〜688貢;マー・T(Ma,T.)による、「3D繊維性マトリックスにおける組織工学ヒト胎盤栄養膜細胞:細胞増殖及び機能に対する空間的効果(Tissue Engineering Human Placenta Trophoblast Cells in 3-D Fibrous Matrix:Spatial Effects on Cell Proliferation and Function)」、バイオテクノロジー進展(Biotechnol.Prog.)、1999年、15巻、715〜724貢、並びに、バタライ・S.R(Bhattarai,S.R.)らによる、「新規の生体分解性エレクトロスパン膜:組織工学のためのスカフォールド(Novel Biodegradable Electrospun Membrane:Scaffold for Tissue Engineering)」、生体材料(Biomaterials)、2004年、25巻、2595〜2602貢に記載のように、不織布が、組織用途におけるスカフォールドとして使用されてきた。
【0004】
細胞生物学は、生体を構成する基本単位である細胞の構造及び機能を伴う。人体の形態及び機能は、その構成細胞の形態、機能、及び挙動の合計である。その結果、疾病の予防及び処置並びにヒトの挙動をより深く理解するために、この分野の研究が発展してきた。技術及び方法の改良が、細胞生物学を、細胞を理解する新たなレベルへと進化させてきた。
【0005】
成長している細胞系では、母細胞が2つの娘細胞へと分裂することによる細胞の形成から周期が起こる。この周期は、多細胞生物でも、単離細胞の培養物でも起こる。細胞の構成成分は全て、有糸分裂(核の分裂)及び細胞質分裂(細胞質の分裂)の分裂イベントで終わる周期の間に2倍になる。
【0006】
多細胞生物の細胞は、細胞分化を通じて固有の機能を果たすように特化するようになる。より高等な生物の生活周期は、単細胞ステージから始まり、個体が成長してその特徴的な形態を呈するにつれてより複雑になる。分化した細胞は、特化した細胞タイプの集団が特定のパターンで集まったままとなるので、それらの特徴的な形態及び個性を維持する。いくつかの細胞タイプは、組織を構成し、様々な組織が臓器を構築する。
【0007】
細胞及びそれらの細胞構成成分の動きは、その環境に関係している。運動の形態としてのきわめて多様な動きは、アメーバの動きに類似している。この細胞内運動は、仮足の形成によって達成され、仮足の伸長及び縮退の間に細胞質が活発に流れる。一部の場合には、細胞は、胎児の発達している組織及び臓器の形状を変化させる力を及ぼすことが知られている。細胞は、体腔、リンパ管、及び組織間隙をはい進んで、細菌、異物、及び死んだ若しくは死にかけている細胞を見つけ出して取り込む。創傷治癒活動では、隣接した細胞が、創傷面を横切ってはい進んで該創傷面を覆い、他の細胞が隙間に浸潤して満たす。組織細胞は、約0.5〜50マイクロメートル/分の速度で非常にゆっくりとはい進み、他方、線維芽細胞などの構造細胞は、それら自体の長さを1時間程度かけて前進し、約1〜2mm/日動く。細胞及び細胞生物学に関するさらなる情報は、マグローヒル科学技術百科事典(McGraw-Hill Encyclopedia of Science & Technology)、1987年、3巻、317〜384貢に見ることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
細胞成長のためのマトリックスの開発においては、細胞分化及び増殖が、従来の培養技術に対して困難である場合が多い。培養細胞は普通、それらの組織特異的な細胞外マトリックスから単離され、続いて成長培地中に懸濁され、その成長培地で、細胞は、培養皿の底に接着してコンフルエントな単層を形成する。細胞は、それらのモルホロジー並びにそれらの生化学的及び機能的特性を失うことが多い。その結果、脱分化した細胞は、それらの元の組織環境に比べて異なる挙動をとることがある。細胞増殖及び分化が起こるためには、十分な表面積でのスカフォールドへの付着が起こらなければならない。スカフォールド又はマトリックス表面は、細胞の認識及び急速な接着を促進するためにペプチド配列によって修飾されることがある。さらに、三次元マトリックスは、栄養素及びガスをフレークに付着した細胞の塊へと拡散させることのできる多孔質構造を必要とする。スカフォールド全体にわたって増殖している細胞との栄養素、ガス、及び排出物の自由交換は、細胞生存能力を維持するために必要である。これによって、マトリックスは、長期間にわたって分化及び増殖のためのキャリアとしての役割を果たすことができるようになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、細胞を培養する物品及び方法を目的とする。一つの態様では、細胞培養培地に分散された片状構造を有する2軸配向熱可塑性基材のマトリックスと、マトリックスに細胞を接種する工程とを含む、細胞を培養する方法が提供される。片状表面は、20マイクロメートル未満、一般に1〜3マイクロメートルの平均長さを有するマイクロフレークを含む。マイクロフレークの平均幅は、200マイクロメートル未満、一般に5〜30マイクロメートルである。マイクロフレークは、表面のアスペクト比1:1〜1:20で、1〜20マイクロメートルの平均厚さを有する。マイクロフレークの表面積は、0.5m/グラムを超える。本発明のマイクロフレークは、互いに概ね平行となる傾向にあり、より大きな表面積での細胞付着に有利なプレート又はプレート状リボンのような形状をしている。マトリックス内のフレークの剛性及び三次元構造によって、細胞がそれらの分化及び増殖能力を保持できるようになる。
【0010】
他の態様では、本発明は、細胞を培養するためのミクロフィブリル化物品を提供し、該物品が片状表面からの2軸配向熱可塑性マイクロフレークの一体型マトリックスを有する熱可塑性ポリマーフィルムを含み、そこではミクロフィブリル化物品が細胞培養培地内に分散される。基材のマイクロフレークは、熱可塑性フィルムの少なくとも1つの表面上に位置するミクロフィブリル化物品において10マイクロメートル以上の深さまで一体的である。或いは、ミクロフィブリル化物品は、熱可塑性フィルムの厚さ全体にわたってミクロフィブリル化されたモルホロジーを有してよい。
【0011】
本発明は、マイクロフレークのマトリックスの片状表面上に接種された細胞を提供し、その際、マトリックスは、細胞培養培地に浸される。細胞培養培地は、様々な細胞株からの細胞を包含することもある。さらに、本発明は、細胞成長マトリックスが組織スカフォールドである、少なくとも1つのミクロフィブリル化表面を有するフィルムの物品を含む。また、本発明は、マルチウェルデバイス(multi-well device)又は容器のためのマトリックスである、ミクロフィブリル化物品を含む。
【0012】
本発明の上述の「課題を解決するための手段」は、開示された各実施形態又は本発明の全ての実施を記載しようと意図していない。以下の図及び発明を実施するための最良の形態は、説明に役立つ実施形態をより具体的に例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下の定義された用語に関して、別の定義が特許請求の範囲又は本明細書の他の箇所において示されない限り、これらの定義が適用される。
【0014】
用語「ミクロフィブリル化物品」は、表面を破壊するのに十分な流体エネルギーを付与することによってミクロフィブリル化をすることができる、2軸配向ボイド形成若しくはマイクロボイド形成熱可塑性フィルム、シート、又は発泡体として定義される。片状表面は、2軸配向フィルム基材から調製される2軸配向熱可塑性マイクロフレークのマトリックスを含む。所望により、マイクロフレークは、フィルムのミクロフィブリル化表面から採取してよい。
【0015】
用語「ミクロフィブリル化表面」は、ミクロフィブリル化可能な材料の1又はそれより多くの層からのマイクロフレークを含む表面である。マイクロフレークは、連続フィルムから少なくとも部分的に機械的に分離又は断片化された材料の部分である。マイクロフレークのサイズ及び形状は典型的に、これら全てを含めるわけではないが、配向の種類及び程度、ボイドの存在及びサイズ、多数の層、層の厚さ、並びにスフェルライトなど、ミクロフィブリル化可能な材料の種類、並びにその物理的及び化学的特性に応じた寸法を有する。マイクロフレークは、好ましくは、一端でミクロフィブリル化材料に付着したままであるが、また、ベースフィルムから完全に引き離されることになる場合もある。
【0016】
用語「マイクロフレーク」は、片状構造を含むミクロフィブリル化構造である。マイクロフレークは、互いに概ね平行となる傾向にあり、マイクロフレークの寸法のうちの2つの長さスケールが、該マイクロフレークの第3の寸法の長さスケールの少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍である、プレート又はプレート状リボンのような形状をしている。フレークは、互いに連結することができ、幅又は長さ方向に連続的となる傾向にある。寸法を、走査型電子顕微鏡を使用して測定することができる。
【0017】
用語「ボイド形成フィルム」は、熱可塑性ポリマーのマイクロボイド形成フィルムであってもよく、半結晶性ポリマーとボイド開始粒子との不混和性混合物から調製されるボイド形成フィルムであってよい。本明細書で使用するとき、用語「フィルム」は、発泡シートを含めたシートを包含するものであり、また、チューブなどの他の構成及びプロファイルに、同じく容易にミクロフィブリル化表面を設けることができ得ることを理解することもできる。用語「ボイド形成」は、「マイクロボイド形成」を含むものとする。
【0018】
用語「細胞株」は、好ましい条件下で継続的に成長及び複製する細胞の培養物である。細胞株は、限られた寿命をもつ細胞培養物に由来し、必要な間隔で維持され分裂する場合、定期的に培養することができる。
【0019】
用語「細胞培養培地」は、塩、炭水化物、ビタミン、アミノ酸、代謝前駆体、成長因子、ホルモン、及び微量元素の複合混合物である。培地構成成分は、対象となる特定の細胞株によって異なる場合がある。
【0020】
用語「完全成長培地」は、ホルモン、微量元素、成長因子、及び血清が添加された細胞培養培地から成るものとする。それは、細胞又は微生物の生存能力を維持するための物質である。
【0021】
「培養細胞」は、合成環境で、すなわち、完全成長培地で成長している細胞として定義される。例えば、哺乳類細胞は、成長培地、pH、温度、オスモル濃度、及び他の因子に応じて培養してよい。細胞培養は、生物から切り離された細胞の成長である。
【0022】
用語「細胞の採取」は、細胞培養培地から細胞を取り除くことと見なされる。細胞株は、皿又はフラスコに固着して単層で成長する場合がある。細胞株をまた、マイクロフレークを含む片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材のマトリックスに固着して、三次元構造で成長することもある。これらの細胞を、細胞生存能力を維持するために一定の間隔で継代培養する場合がある。
【0023】
用語「密集度」は、基材上の細胞の成長度を指す。
【0024】
用語「接種」又は「播種」は、細胞培養培地に分散されたマイクロフレークを含む片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材のマトリックス上に細胞を置く行為又は工程を指す。
【0025】
用語「哺乳類細胞」は、これら全てを含めるわけではないが、マウス、ヒト、サル、及びラット細胞株に由来する様々な供給源を指す。
【0026】
用語「細胞外マトリックス」は、三次元構造での細胞の増殖及び分化のためのマイクロフレークを含む片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材のマトリックスを含む合成スカフォールドから成る。
【0027】
用語「生体分解性」は、マイクロファイバー又はミクロフィブリル化物品が、細菌類、真菌類、藻類、及び/若しくは自然環境因子など、天然に存在する微生物の活動によって分解することを意味する。
【0028】
用語「生体吸収性」は、マイクロファイバー又はミクロフィブリル化物品が、生化学的且つ/若しくは加水分解プロセスによって細分化され、生体組織によって吸収される場合があることを意味する。
【0029】
用語「ミクロフィブリル化の程度又は深さ」は、わずか10マイクロメートル程度を指すが、最高で50マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上、ロフトによって測定したときの完全にミクロフィブリル化したフィルムの厚さまでであってよい。
【0030】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包括される全ての数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
【0031】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば「化合物」を含有する組成物の言及は、2つ以上の化合物の混合物を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するとき、用語「又は」は、その内容によって別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0032】
特に指示のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される量若しくは成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解される。それゆえに、反対の指示がない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明の教示を用いて当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低でも、特許請求の範囲への同等物の原則の適用を限定する試みとしてではなく、少なくとも各数値的パラメータは、報告された有効数字の数を考慮して、通常の四捨五入の適用によって解釈されなければならない。本発明の広い範囲で示す数値範囲及びパラメータは、近似値であるが、具体例に記載の数値は、可能な限り正確に報告する。しかし、いずれの数値もそれらの各試験測定値において見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本来包含する。
【0033】
本発明は、細胞を培養するための方法を提供する。該方法は、細胞培養培地に分散されたマイクロフレークを含む片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材のマトリックスを提供する工程を包含する。別の実施形態では、該方法は、細胞培養マトリックスに分散されたミクロフィブリル化物品を含んでおり、マイクロフレークがさらに細胞に接種される。マイクロフレークは、20マイクロメートル未満の平均長さと、0.5m/グラムを超える表面積とを有する。
【0034】
本発明で使用されるミクロフィブリル化物品は、細胞の増殖及び分化のための、三次元配列で細胞を培養するための配向熱可塑性フィルムに一体的な片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材のマトリックスを含む。ミクロフィブリル化物品は、創傷治癒及び組織工学用途で利用するための細胞付着及び増殖をもたらす。マイクロフレークを含む2軸配向熱可塑性ポリマー基材は、剛性及び矩形形状をもたらす。これらのフレークの製造は、高い強度、フレーク間の隙間空間、及びフレーク形状をもたらす。マイクロフレークは、細胞培養培地に分散され、さらに培養細胞を接種される。フレークに細胞を接種すると、細胞の高い密度及び広範囲におよぶ伸展が可能となる。
【0035】
マイクロフレークを含む片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材のマトリックス並びにミクロフィブリル化物品を形成する際に有用なポリマーとしては、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、及びランダムコポリマーを含む、あらゆる溶融加工可能な熱可塑性の結晶性、半結晶性、若しくは結晶化可能なポリマー又はコポリマーが挙げられる。半結晶性ポリマーは、非晶質領域と結晶性領域との混合物からなる。結晶性領域は、より秩序化されており、鎖のセグメントは、実際に結晶格子中に収まっている。一部のポリマーは、熱処理、伸張、又は配向と、溶媒誘導とによって、半結晶性にすることができ、これらのプロセスは、真の結晶化度を制御することができる。本発明で有用な半結晶性ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンのコポリマー、ポリエチレンのコポリマー、ポリ(α)オレフィン、ポリオキシメチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メチルペンテン)、ポリ(エチレン−クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12、ポリブテン、ポリ(ラクチド)、シンジオタクチックポリスチレン、及びサーモトロピック液晶ポリマーが挙げられる。好ましいポリオレフィンとしては、低コストで容易に入手可能であり、ミクロフィブリル化物品において高い弾性率及び高い引張り強度などの望ましい特性を提供できる、ポリプロピレン及びポリエチレンが挙げられる。
【0036】
有用なポリマーは、好ましくは、それらの機械的一体性を高める方式で高い配向比を付与するための処理を受けることができ、半結晶の性質のものである。半結晶性ポリマーを配向させると、配向方向の強度及び弾性率が大きく改善され、その融点未満の半結晶性ポリマーの配向は、鎖の折り畳み及び欠陥が少ない配向した結晶相をもたらす。半結晶性ポリマーを配向させる最も効果的な温度範囲は、ポリマーのα結晶化温度とその融点との間である。α結晶化温度若しくはα遷移温度は、結晶サブユニットをより大きな結晶ユニット内で動かすことのできる、ポリマーの二次遷移に相当する。
【0037】
したがって、この態様で好ましいポリマーは、α遷移温度(Tαс)を示すものであり、それには、例えば、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレンα−オレフィンコポリマー、ポリプロピレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(エチレンクロロトリフルオロエチレン)、ポリオキシメチレン、ポリ(エチレンオキシド)、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、及びそれらのブレンドが挙げられる。
【0038】
マイクロファイバー及びミクロフィブリル化物品はまた、熱可塑性ポリマー成分とボイド開始成分とを有するボイド形成配向フィルムから調製される場合もある。そのような配向ボイド形成フィルムは、米国特許第6,331,343号(ペレス(Perez)ら)、同第6,468,451号(ペレスら)、及び同第6,645,618号(ホッブスら)に記載されており、それらの開示全体を本明細書に参考として組み込む。
【0039】
ボイド形成配向フィルムを使用するときには、熱可塑性ポリマー成分は、ホモポリマー、コポリマー、及びブレンドを含む前述のポリマーを含む。熱可塑性ポリマー成分は、本発明のミクロフィブリル化物品に所望の特性を付与するために少量の第2のポリマーをさらに含んでよい。そのようなブレンドの第2のポリマーは、半結晶性又は非晶質であってよく、一般に、脂肪族ポリエステル成分の重量に基づいて30重量パーセント未満である。当技術分野で公知のごとく、例えば、剛性、耐亀裂性、エルメンドルフ引裂強度、伸び、引張り強度、及び衝撃強度を増強すべく、少量の他のポリマーを添加しうる。
【0040】
ボイド開始成分は、半結晶性ポリマー成分中で不混和性であるように選択される。それは、約0.1〜20マイクロメートル、好ましくは1〜10マイクロメートルの平均粒径を有する有機又は無機の固体であってもよく、また、無定形の形状、菱面体、スピンドル、プレート、ダイヤモンド、立方体、及び球体を含むいずれかの形状であってよい。
【0041】
ボイド開始成分として有用な無機固体としては、固体若しくは中空ガラス、セラミック若しくは金属粒子、微小球若しくはビーズ;ゼオライト粒子;これらに限定されないが、二酸化チタン、アルミナ、及び二酸化ケイ素などの金属酸化物を含む無機化合物;金属、アルカリ若しくはアルカリ土類炭酸塩又は硫酸塩;カオリン、タルク、カーボンブラックなどが挙げられる。無機のボイド開始成分は、脂肪族ポリエステル成分に分散されたときに、化学的性質又は物理的形状により、表面相互作用をほとんどもたないように選択される。広くは、無機のボイド開始成分は、ルイス酸/塩基相互作用を含むポリマー成分との化学的反応性があるべきではなく、最小限のファンデルワールス相互作用を有するべきである。
【0042】
好ましくは、ボイド開始成分は、第2のポリマー成分と不混和性のブレンドを提供するために、半結晶性ポリマー及び非晶質ポリマーを含んでいる熱可塑性ポリマーを含む。不混和性ブレンドは、例えば、示差走査熱量計又は動的機械分析を使用して多数の非晶質ガラス遷移温度の存在によって決定される、多数の非晶相を示す。本明細書で使用するとき、「不混和性」は、限られた溶解度及び非ゼロ界面張力をもつポリマーブレンド、すなわち、その混合の自由エネルギーがゼロを超えるブレンドを指す:
ΔG≒ΔH>0
ポリマーの混和性は、熱力学的考察及び動力学的考察の両方によって決定される。非極性ポリマーに対する共通の混和性予測子は、溶解度パラメータ又はフローリー・ハギンズ相互作用パラメータの差である。ポリオレフィンのような非特異的互作用を有するポリマーの場合、フローリー・ハギンズ相互作用パラメータは、溶解度パラメータの差の2乗に係数(V/RT)を掛けることにより算出することができ、ここで、Vは、反復単位のアモルファス相のモル体積であり、Rは気体定数であり、そしてTは絶対温度である。その結果、2つの非極性ポリマー間のフローリー・ハギンズ相互作用パラメータは、常に正数となる。
【0043】
ボイド開始成分として有用なポリマーとしては、前述の半結晶性ポリマーに加えて、溶融物から冷却すると離散相を形成するように選択される非晶質ポリマーが挙げられる。有用な非晶質ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリカーボネート、一部のポリオレフィン、エチレンノルボルネンコポリマーなどの環状オレフィンコポリマー(COC)、並びに、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)及びエチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)などの強化ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
不混和性ポリマーブレンドを使用するときには、第1の熱可塑性ポリマー成分とボイド開始ポリマー成分との相対量は、第1の熱可塑性ポリマーが連続相を形成し、ボイド開始ポリマー成分が不連続相を形成するように選択する場合がある。ブレンド中のボイド開始ポリマーの量が増加するにつれて、組成範囲は、ボイド開始ポリマーが分散した相若しくは離散相としてもはや容易には識別できないところまで到達する。ブレンド中のボイド開始ポリマーの量のさらなる増加は、2つの共連続相をもたらし、次いで、ボイド開始ポリマーが連続相となる転相をもたらす。好ましくは、熱可塑性ポリマー成分が連続相を形成し、他方、ボイド開始成分が、第1のポリマーの連続相内に分散した不連続相又は離散相を形成する。ボイド開始ポリマーが半結晶性であり、共連続相を形成するのに十分な量で使用される場合、配向後のミクロフィブリル化は、それぞれ熱可塑性ポリマー成分及びボイド開始ポリマーに由来する異なる2つのマイクロフレークの複合構造をもたらす。
【0045】
広くは、ボイド開始成分の量が増加するにつれて、最終的なフィルム中のボイド形成量もまた増加する。その結果、機械的特性、密度、光透過など、フィルム中のボイド形成量による影響を受ける特性は、添加されたボイド開始成分の量によって決まる。
【0046】
好ましくは、ボイド開始成分が有機であるか無機であるかにかかわらず、組成物中のボイド開始成分の量は、1重量%〜49重量%、より好ましくは5重量%〜40重量%、最も好ましくは5重量%〜25重量%である。これらの組成範囲では、第1の熱可塑性ポリマーは、連続相を形成する場合があり、他方、ボイド開始成分は、離散不連続相を形成する。
【0047】
さらに、選択されたボイド開始ポリマー成分は、選択された半結晶性ポリマー成分と不混和性でなければならない。この状況では、不混和性は、離散相が連続相中に実質的に溶解しないことを意味しており、すなわち、離散相は、連続相によって提供されるマトリックス内に別個の識別可能な領域を形成しなければならない。
【0048】
高溶融強度ポリプロピレン発泡体は、ミクロフィブリル化物品を調製するのに有用である。発泡性ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマーから構成されてもよく、又は50重量%以上のプロピレンモノマー含有量を有するコポリマーを含んでもよい。さらに、発泡性ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー若しくはコポリマーと、米国特許第6,468,451号(ペレスら)に記載のプロピレンホモポリマー若しくはコポリマー以外のホモポリマー若しくはコポリマーとの混合物又はブレンドを含むことができる。
【0049】
特に有用なプロピレンコポリマーは、プロピレンと1種類以上の非プロピレン系モノマーとのプロピレンコポリマーである。プロピレンコポリマーとしては、プロピレンと、C3〜C8α−オレフィン及びC4〜C10ジエンから成る群から選択されるオレフィンモノマーとの、ランダム、ブロック、及びグラフトコポリマーが挙げられる。プロピレンコポリマーとしてはまた、プロピレンと、C3〜C8α−オレフィンから成る群から選択されるα−オレフィンとのターポリマーが挙げられ、そのようなターポリマーのα−オレフィン含有量は、好ましくは45重量%未満である。C3〜C8α−オレフィンとしては、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセンなどが挙げられる。C4〜C10ジエンの例としては、1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、イソプレン、1,5−ヘキサジエン、2,3−ジメチルヘキサジエンなどが挙げられる。
【0050】
発泡性組成物中の高溶融強度ポリプロピレンに添加してよい他のポリマーとしては、高密度、中密度、低密度、及び線状低密度ポリエチレン、フルオロポリマー、ポリ(1−ブテン)、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー、エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、アイオノマー、並びに、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)及びエチレン/プロピレン/ジエンコポリマー(EPDM)などの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
【0051】
脂肪族ポリエステルはまた、ミクロフィブリル化物品又はマイクロフレークを調製するにも有用であり、それには、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)のホモポリマー及びコポリマー、並びに、1つ若しくはそれより多くのアルカンジオールと1つ若しくはそれより多くのアルカンジカルボン酸(又はアシル誘導体)との反応生成物から誘導される脂肪族ポリエステルのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。また、脂肪族ポリエステルと1つ若しくはそれより多くの追加の半結晶性又は非晶質ポリマーとの混和性及び不混和性ブレンドも使用してよい。
【0052】
脂肪族ポリエステルの有用な1つの部類は、ヒドロキシ酸の縮合若しくは開環重合によって誘導されるポリ(ヒドロキシアルカノエート)、又はそれらの誘導体である。好適なポリ(ヒドロキシアルカノエート)は、式H(O−R−C(O)−)−OHによって表すことができ、式中、Rは、直鎖又は分枝鎖であってよいアルキレン部分であり、nは、1〜20、好ましくは1〜12の数である。Rは、1又はそれより多くのカテナリー(すなわち、鎖内の)エーテル酸素原子をさらに含んでもよい。一般に、ヒドロキシル酸のR基は、ペンダントヒドロキシル基が一級又は二級ヒドロキシル基であるようなものである。
【0053】
有用なポリ(ヒドロキシアルカノエート)としては、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(乳酸)(ポリラクチドとしても知られる)、ポリ(3−ヒドロキシプロパノエート)、ポリ(4−ヒドロペンタノエート(hydropentanoate))、ポリ(3−ヒドロキシペンタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)、ポリジオキサノン、及びポリカプロラクトン、ポリグリコール酸(ポリグリコリドとしても知られる)のホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。また、前述のヒドロキシ酸の2つ以上のコポリマー、例えば、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクテート−コ−3−ヒドロキシプロパノエート)、及びポリ(グリコリド−コ−p−ジオキサノン)も使用してよい。また、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)の2つ若しくはそれ以上のブレンド、並びに1つ若しくはそれより多くの半結晶性又は非晶質ポリマーとのブレンドも使用してよい。
【0054】
脂肪族ポリエステルの別の有用な部類としては、1つ若しくはそれより多くのアルカンジオールと1つ若しくはそれより多くのアルカンジカルボン酸(又はアシル誘導体)との反応生成物から誘導される脂肪族ポリエステルが挙げられる。そのようなポリエステルは、次の一般式を有する:
【0055】
【化1】

【0056】
式中、R’及びR”は、それぞれ、1〜20個、好ましくは1〜12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖であってよいアルキレン部分を表しており、mは、エステルがポリマーであるような数であり、好ましくは、脂肪族ポリエステルの分子量が10,000〜300,000、好ましくは約30,000〜200,000であるような数である。各nは、独立して0又は1である。R’及びR”は、1又はそれより多くのカテナリー(すなわち、鎖内の)エーテル酸素原子をさらに含む場合がある。
【0057】
脂肪族ポリエステルの例としては、次から誘導されるホモポリマー及びコポリマーが挙げられる:(a)次の二塩基酸(又はそれらの誘導体)のうちの1つ以上:コハク酸、アジピン酸、1,12−ジカルボキシドデカン、フマル酸、及びマレイン酸、並びに(b)次のジオールのうちの1つ以上:エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール、並びに(c)任意で、少量の、すなわち0.5〜7.0モル%の、グリセロール、ネオペンチルグリコール、及びペンタエリスリトールなどの2つを超える官能性をもつポリオール。
【0058】
そのようなポリマーとしては、ポリ(ブチレンサクシネート)ホモポリマー、ポリ(ブチレンアジペート)ホモポリマー、ポリ(ブチレンアジペート−サクシネート)コポリマー、ポリ(エチレンサクシネート−アジペート)コポリマー、及びポリ(エチレンアジペート)ホモポリマーを挙げてよい。
【0059】
市販の脂肪族ポリエステルとしては、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリ(L−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ブチレンサクシネート)、及びポリ(ブチレンアジペート)が挙げられる。
【0060】
特に有用な脂肪族ポリエステルとしては、半結晶性ポリ乳酸から誘導されるものが挙げられる。ポリ乳酸(又はポリラクチド)は、その主要分解産物として乳酸を有しており、これは、普通に自然界に見られ、無毒性であり、食品、製薬、及び医療業界で広く使用されている。ポリマーは、乳酸二量体であるラクチドの開環重合によって調製してよい。乳酸は、光学的に活性であり、二量体は、4つの異なる形態:L,L−ラクチド、D,D−ラクチド、D,L−ラクチド(メソラクチド)、及びL,L−とD,D−とのラセミ混合物の形態で現れる。これらのラクチドを純粋な化合物又はブレンドとして重合することによって、異なる立体化学及び結晶化度を含む異なる物理的特性を有するポリラクチドポリマーを得る場合がある。L,L−又はD,D−ラクチドは、半結晶性ポリラクチドをもたらし、それは好ましく、他方、D,L−ラクチドから誘導されるポリラクチドは、非晶質である。
【0061】
ポリラクチドは、好ましくは、ポリマーの固有の結晶化度を最大にするために高い鏡像異性体比を有する。ポリ(乳酸)の結晶化度は、ポリマー主鎖の規則性及び他のポリマー鎖と線状結晶化(line crystallize)する能力に基づく。比較的少量の1つの鏡像異性体(D−など)が反対の鏡像異性体(L−など)と共重合される場合、ポリマー鎖は、不規則な形状となり、結晶性が低下する。これらの理由から、結晶化度を最大にするために、1つの異性体の少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%であるポリ(乳酸)を有することが望ましい。
【0062】
また、D−ポリラクチドとL−ポリラクチドとのほぼ等モルのブレンドも本発明で有用である。このブレンドは、D−ポリラクチド及びL−ポリラクチドのいずれもが単独で有する融点(約190℃)よりも高い融点(約210℃)を有する独特の結晶構造を形成し、改善された熱的安定性を有する。H・ツジ(H.Tsuji)ら、ポリマー、1999年、40巻、6699〜6708貢を参照してよい。
【0063】
また、ポリ(乳酸)と他の脂肪族ポリエステルとのブロックコポリマー及びランダムコポリマーを含むコポリマーも使用することができる。有用なコモノマーとしては、グリコリド、β−プロピオラクトン、テトラメチルグリコリド、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、2−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシイソ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、α−ヒドロキシイソ吉草酸、α−ヒドロキシカプロン酸、α−ヒドロキシエチル酪酸、α−ヒドロキシイソカプロン酸、α−ヒドロキシ−β−メチル吉草酸、α−ヒドロキシオクタン酸、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシミリスチン酸、及びα−ヒドロキシステアリン酸が挙げられる。
【0064】
また、ポリ(乳酸)と、1つ若しくはそれより多くの他の脂肪族ポリエステル、又は1つ若しくはそれより多くの他のポリマーとのブレンドも、本発明で使用してもよい。有用なブレンドの例としては、ポリ(乳酸)と、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール/ポリサクシネート、ポリエチレンオキシド、ポリカプロラクトン、及びポリグリコリドが挙げられる。
【0065】
脂肪族ポリエステルと第2の非晶質若しくは半結晶性ポリマーとのブレンドでは、第2のポリマーが比較的少量で存在する場合、第2のポリマーは一般に、脂肪族ポリエステルの連続相内に分散された離散相を形成する。ブレンド中の第2のポリマーの量が増加するにつれて、組成範囲は、第2のポリマーが分散した相若しくは離散相としてもはや容易には識別できないところまで到達する。ブレンド中の第2のポリマーの量のさらなる増加は、2つの共連続相をもたらし、次いで、第2のポリマーが連続相となる転相をもたらす。好ましくは、脂肪族ポリエステル成分が連続相を形成し、他方、第2の構成成分が、第1のポリマーの連続相内に分散した不連続相又は離散相を形成するか、或いは、両方のポリマーが共連続相を形成する。第2のポリマーが共連続相を形成するのに十分な量で存在する場合、その後の配向及びミクロフィブリル化は、両方のポリマーのマイクロファイバーを含む複合物品をもたらすことがある。
【0066】
有用なポリラクチドは、米国特許第6,111,060号(グルーバー(Gruber)ら);同第5,997,568号(リュー(Liu));同第4,744,365号(カプラン(Kaplan)ら);同第5,475,063号(カプランら);PCT国際公開特許第98/24951号(ツァイ(Tsai)ら);同第00/12606号(ツァイら);同第84/04311号(リン(Lin));米国特許第6,117,928号(ヒルツネン(Hiltunen)ら);同第5,883,199号(マッカーシー(McCarthy)ら);PCT国際公開特許第99/50345号(コルスタッド(Kolstad)ら);同第99/06456号(ワン(Wang)ら);同第94/07949号(グルーバーら);同第96/22330号(ランドル(Randall)ら);同第98/50611号(ライアン(Ryan)ら);米国特許第6143863号(グルーバーら);同第6,093,792号(グロス(Gross)ら);同第6,075,118号(ワン(Wang)ら)、及び同第5,952,433号(ワンら)に記載のように調製することができ、各米国特許の開示を本明細書に参照として組み込む。また、J.W.リーンスラグ(J.W.Leenslag)らによる、応用ポリマー科学雑誌(J.Appl.Polymer Science)、1984年、29巻、2829〜2842貢、及びH.R.クリチェルドルフ(H.R.Kricheldorf)による、ケモスフィア(Chemosphere)、2001年、43巻、49〜54貢も参照することができる。
【0067】
マイクロフレーク又はミクロフィブリル化物品を調製する際には、ポリマーの分子量が、所与の加工条件下で該ポリマーが溶融加工可能であるように選択されるべきである。例えば、ポリラクチドの場合の分子量は、約10,000〜300,000であってよく、好ましくは約30,000〜200,000である。ポリプロピレン及びポリエチレンの場合、分子量は、5,000〜500,000であってよく、好ましくは約190,000〜300,000である。溶融加工可能とは、ポリマー材料が、フィルムを加工するために使用される温度で流体又はポンプ輸送可能であり、それらの温度で著しく分解もゲル化もしないことを意味する。一般に、ポリマーのMは、粘度対分子量のlog−logプロットによって決定される絡み合い分子量(M)を上回る。絡み合い分子量を上回ると、プロットの勾配は、約3.4となり、他方、より低分子量のポリマーの勾配は、1である。
【0068】
最大の物理的特性を得て、ポリマーフィルムがフィブリル化を受けられるようにするために、ポリマー鎖を、2つの主軸に沿って配向する必要がある(2軸配向)。分子配向度は、一般に、延伸比、すなわち、機械寸法及び横寸法の最終長さと元の長さとの比によって確定される。配向は、カレンダー加工及び長さ配向の工程を含めた技術の組合せによって達成してよい。
【0069】
配向のための条件は、フィルムの一体性が維持されるように選択される。ゆえに、機械方向及び/又は横方向に伸張するときには、温度は、連続相の実質的な引き裂け若しくは断片化が回避され、且つフィルムの一体性が維持されるように選択される。温度が低すぎる場合、又は配向比が過度に高い場合、フィルムは、特に引き裂けに対して、場合によっては壊滅的な破損に対しても脆弱となる。好ましくは、配向温度は、連続相のガラス遷移温度よりも高い。そのような温度条件は、フィルム一体性を失うことなくX及びY方向の最大配向を可能にし、フィルムに付与されるボイド形成を最大にし、したがって表面をミクロフィブリル化できる容易さを最大にする。フィルムでは、配向が変形応力がポリマー分子の絡み合いが解ける速度を超えることに起因して、小さな破断又は引き裂け(マイクロボイド)が生じることがある。例えば、ロジャー・S.ポーター(Roger S.Porter)及びリーホイ・ワン(Li-Hui Wang)による、巨大分子科学雑誌−巨大分子化学物理学概説(Journal of Macromolecular Science-Rev.Macromol.Chem.Phys.)、C35(1)、63〜115貢(1995年)を参照のこと。
【0070】
高度に配向したミクロフィブリル化された熱可塑性ポリマーフィルムを生成する一般的な方法が開発されてきた。ポリマーフィルムは、T又は「コートハンガーダイ」を使用する典型的な溶融押出によって形成され、複数のロール巻取りスタック(multiple roll take up stack)を使用してクエンチングされる。押し出されたフィルムが急速にクエンチングされ、結晶化が最小限に抑えられる、すなわち、フィルムが実質的に非晶質となるように、ロールの温度は、約21℃に維持される。次いで、フィルム又は押し出されたプロファイルは、2段階プロセスを使用して伸張される。第1の段階では、フィルムは、該フィルムがマイクロボイドを形成するが壊滅的には破損しないように、比較的高いひずみ速度でガラス遷移温度よりも上で十分な延伸比まで伸張される。フィルムは、これらに限定されないが、ロール延伸(カレンダー加工)、熱ロールを使用する長さ配向、ゾーン延伸、又は液体媒質中での熱延伸を含めた様々な方法によって伸張させることができる。長さ配向は、従来のフィルム加工において、しばしば逐次2軸配向プロセスの第1の工程で、広く使用されてきた。ボイド形成剤が使用される場合、粒子が熱可塑性ポリマーから剥離するときに、広範なボイド形成を実現することができる。また、非相溶性ポリマー、シリカ、炭酸カルシウム、若しくは雲母材料など、ミクロフィブリル化効率を改善するために、又は、帯電防止剤若しくは着色剤など、マイクロファイバーに所望の特性を付与するために、ボイド形成剤がポリマー溶融物に添加されてよい。典型的には、使用されるポリマーに応じて、4:1〜6:1の延伸比を第1の段階で達成することができる。微小繊維状フレーク又はマイクロフレークの調製のためにフィルムを2軸配向させ、そのようなフィルムをミクロフィブリル化するプロセスは、米国特許第6,331,433号に記載されており、その特許もまた本明細書に参照として組み込む。
【0071】
第2段階の伸張プロセスは、第1段階の温度よりも高く、ポリマーの融点未満の延伸温度で実施される。この段階では、フィルムは、高い比までさらに延伸され、ミクロフィブリル構造が観察される。分子配向の増加を、X線散乱、及びDSCによる結晶化度の変化を使用して測定することができる。通常、第2段階では、結晶化度は、プロセスで与えられるより高い配向及び温度によって、大幅に増大する。好ましい伸張の方法は、異なる速度で動く熱ロールを使用する長さ配向である。最終的なボイド形成又はマイクロボイド形成フィルムは、銀のような外観を有し、延伸方向(機械方向)に容易に裂かれることができる。さらなる延伸段階によって、フィルムをさらに配向させることができるが、必ずしも必要ではない。
【0072】
例えば、ポリラクチドでは、フィルムを、その長さの6倍よりも大きく伸張させてよい。一つの実施形態では、総延伸比は、ポリラクチドに対して6:1を超え、好ましくは9:1〜約18:1の範囲である。「総延伸比」は、フィルムの最終面積とフィルムの初期面積との比である。
【0073】
さらに、例えば、脂肪族ポリエステルと、ボイド開始成分とを含む溶融加工されたフィルムにおける結晶化度を高めてよい。脂肪族ポリエステルフィルムが実質的に非晶質であり、結晶化度が、カレンダー加工、伸張、再結晶化、及び再結晶化後のアニーリングなど、後続の加工の最適な組合せによって高められることが好ましい。フィルムの結晶化度を最大にすると、ミクロフィブリル化効率が向上すると考えられている。通常、脂肪族ポリエステルは、実質的に非晶質のフィルムとしてキャスティングされ、次いで、ひずみ誘起結晶化(strain induced crystallization)によって結晶化度が高められる。脂肪族ポリエステル/ボイド開始成分ブレンドの有用な具体的な組合せとしては、例えば、ポリラクチドとCaCOなどの無機粒子、及びポリラクチドとポリプロピレンが挙げられる。
【0074】
フィルム又は発泡体は、熱可塑性ポリマー相のガラス遷移温度を上回る温度で互いに垂直な方向に伸張させることによって、2軸配向される場合がある。一般に、最初にフィルムをある方向に伸張させ、次いで第1の方向と直交する第2の方向に伸張させる。しかし、所望により、同時に両方向に伸張を実施することもできる。典型的なプロセスでは、フィルムは、最初に、1組の回転ローラー上又は2対のニップローラー間で押出の方向に伸張され、次に、テンター装置により、それを横切る方向に伸張される。フィルムは、伸張方向でそれらの原寸の2倍〜10倍になるまで、各方向に伸張可能である。
【0075】
一部のポリマー材料では横方向の伸張を2倍未満に制限することが好ましい。フィルムが第1の方向(例えば機械方向)に配向され、続いて垂直方向に2倍よりも大きく配向される場合、フィルムをミクロフィブリル化する能力が損なわれることが判明している。フィルムが第1の方向に所望の延伸比まで一軸配向され、次いで垂直方向に2倍未満配向されることが好ましい。ただし、一軸配向では、テンター装置を用いてフィルムが横方向に収縮するのを抑制することができ、そのような抑制がフィルムにわずかな2軸配向を与えることが理解されよう。そのようなわずかな2軸配向が、その後のミクロフィブリル化を増進する場合がある。
【0076】
フィルムを伸張させた後、さらに処理を施すことが可能である。例えば、フィルムが両方の伸張の方向に収縮するのを抑制しながら、脂肪族ポリエステル成分をさらに結晶化させるのに十分な温度にフィルムを曝すことによって、フィルムをアニーリング又はヒートセットしてよい。
【0077】
配向したら、不混和性ブレンドのフィルムにボイドを付与してよい。フィルムが伸張されるとき、2つの構成成分は、2つの構成成分の不混和性及び2つの相間の接着の弱さに起因して分離する。フィルムが連続相と不連続相とを含むとき、不連続相は、連続相のマトリックス内に実質的に離散した不連続ボイドとして残るボイドを開始させる働きをする。2つの連続相が存在するとき、形成されるボイドは、ポリマーフィルム全体にわたってほぼ連続的である。典型的なボイドは、機械方向及び横方向の配向度にそれぞれ比例する主要寸法X及びYを有する。フィルムの平面に垂直な小寸法(minor dimension)Zは、配向前の離散相(ボイド開始成分)の断面寸法とほぼ同一のままである。ボイドは、不混和性ブレンドの相間の応力転移が低いために生じる。ブレンド構成成分間の低い分子引力が不混和性相挙動の原因であり、フィルムが配向又は伸張による応力を受けるときに、低い界面張力がボイド形成をもたらすと考えられている。
【0078】
ボイドは、比較的平面的な形状であり、不規則なサイズであり、明確な境界をもたない。ボイドは、一般的には、フィルムと共面をなし、機械(X)方向及び横(Y)方向(配向方向)に主軸を有する。ボイドのサイズは、離散相のサイズ及び配向度により変化し、それらに比例する。比較的大きな離散相領域及び/又は比較的高い配向度を有するフィルムは、比較的大きなボイドを生成する。離散相の高い比率を有するフィルムは、一般に、配向すると比較的高いボイド率を有するフィルムを生成する。フィルムマトリックス中のボイドのサイズ、分布、及び量は、小角X線散乱(SAXS)、共焦点顕微鏡法、走査電子顕微鏡法(SEM)、又は密度測定などの技術によって決定されてよい。さらに、フィルムの目視検査により、著しく高いボイド率に起因する、増進された不透明度又は銀のような外観を明らかにすることができ得る。
【0079】
ボイドを発生させる微量の不混和性構成成分を含有するポリマー混合物から形成される発泡体及びフィルムは、片状ミクロフィブリル化物品を形成するのに重要である。典型的には、連続プロセスによって配向された発泡体又はフィルムは、機械方向には最高約6:1までの延伸比をもたらし、横方向には最高約10:1までの延伸比をもたらす場合がある。バッチプロセスにおいて配向されたフィルム又は発泡体は、機械方向及び横方向の両方で最高約15:1までの延伸比を達成し得る。
【0080】
一般に、より大きなボイド率はその後のミクロフィブリル化を増進し、続いて本発明のプロセスを使用すると、一軸配向フィルムでは繊維の収率が大きくなる。好ましくは、少なくとも1つのミクロフィブリル化表面を有する物品を調製するとき、ポリマーフィルムは、密度、すなわち、密度変化を初期密度によって除したもの;(δ初期−δ最終)/δ初期によって測定されたときに、5%を超える、より好ましくは10%を超えるボイド率を有するべきである。予想外に、前述のマイクロボイド形成フィルムにマイクロボイドを付与するために必要な条件よりもはるかに厳密ではない条件下で、2構成成分(第1のポリマー及びボイド開始)ポリマーフィルムにボイドを付与できることが判明した。2相の溶解度が限られ、混合の自由エネルギーがゼロを超える不混和性ブレンドが、後続のミクロフィブリル化に必要なボイドの形成を促進すると考えられている。さらに、ボイド形成は、第1の配向段階で用いられるより低い配向温度によって助長される。マイクロボイド形成フィルムは、マイクロボイドが一般に非多孔性(non-cellular)であり、比較的平面状で、フィルムの機械方向(配向の方向)に主軸を有するという点で、ミクロ孔質フィルム若しくは発泡物品などの他のボイド形成フィルム又は物品とは区別し得る。マイクロボイドは、一般に、相互連結していないが、隣接したマイクロボイドは、交わることがある。
【0081】
低すぎる配向温度は、不均一な外観をもつフィルムをもたらすことがある。第1の配向温度を高くすれば、不均一な伸張が低減され、より均一な外観を伸張されたフィルムに与えることが可能である。第1の配向温度はまた、配向時に生じるボイド形成量に影響を及ぼす。ボイド形成が起こる温度範囲では、一般的には、配向温度を低くするほど、配向時に生じるボイド形成量は多くなる。第1の配向温度を上昇させるにつれて、ボイド形成度は、消滅点まで減少する。サンプルの電子顕微鏡写真から、ボイド形成が起こらない温度では、離散相領域がしばしば伸張中に変形することがわかる。これは、高度にボイド形成された配向サンプルとは対照的であり、高度にボイド形成されたサンプルの電子顕微鏡写真から、離散相領域が配向中にそれらのおおよその形状を保持することがわかる。第1の配向と同じ方向、又は第1の配向に垂直な方向での第2の配向が、望ましい場合がある。そのような第2の配向の温度は一般に、第1の配向の温度と同様又はより高温である。
【0082】
フィルムの目視検査により、ミクロフィブリル化表面の生成のための配向フィルムの適性についての経験的テストの役割を果たすことのできる、著しく高いマイクロボイド率に起因する、増進された不透明度又は銀のような外観を明らかにすることができ得る。対照的に、有意なマイクロボイドを欠いているフィルム表面は、透明な外観を有する。繊維性モルホロジーを有する高度に配向したポリマーフィルムに特徴的なようにフィルムを長手方向に裂くことができ得るとしても、有意な量のマイクロボイドを欠いている配向フィルムが、容易にはミクロフィブリル化されないことが判明している。
【0083】
フィルムの厚さを、所望の最終用途にしたがって選択し、プロセス条件の制御によって達成することができる。キャストフィルムは典型的に、2.5mm(100mil)未満、好ましくは0.8mm(20mil)〜1.8mm(70mil)の間の厚さを有する。ただし、得られる物品に望まれる特徴によっては、この範囲外の厚さでそれらをキャスティングしてよい。また、キャストフィルム及びインフレーションフィルムを、ミクロフィブリル化物品を生成するために使用してもよい。フィルムの最終厚さは、1つには、キャスティングの厚さ及び配向度によって決定される。ほとんどの使用では、ミクロフィブリル化前のフィルムの最終厚さは、0.025mm(1mil)〜0.5mm(20mil)、好ましくは0.075mm(3mil)〜0.25mm(10mil)である。さらに、本明細書に記載のプロセスをまた、同時に2軸伸張されたフィルム上で有利に使用することもできる。そのような伸張は、例えば、米国特許第4,330,499号(アウフゼス(Aufsess)ら)及び同第4,595,738号(ハフナゲル(Hufnagel)ら)に開示されている方法及び装置によって、より好ましくは同第4,675,582号(ホメス(Hommes)ら);同第4,825,111号(ホメスら);同第4,853,602号(ホメスら);同第5,036,262号(ショーンバック(Schonbach));同第5,051,225号(ホメスら);及び同第5,072,493号(ホメスら)に開示されている方法及びテンター装置によって達成することができ、これらの開示を本明細書に参照として組み込む。
【0084】
押し出された物品の厚さ、フィルムがそれによってクエンチングされる温度及び手段によっては、熱可塑性基材のモルホロジーは、物品の厚さ全体にわたって同一でなくてよい、すなわち、2つの表面のモルホロジー並びに/又は表面及びマトリックスのモルホロジーは、異なるものであってよい。モルホロジーの小さな相違は、通常、フィルム上のどちらの主表面上でもミクロフィブリル化表面の形成を妨げないが、物品の両方の表面上でミクロフィブリル化表面が望まれる場合、物品の厚さにわたって比較的均一な非晶質モルホロジーを保証するようにキャスティング条件が慎重に制御されることが好ましい。本発明で使用されるポリマーマトリックスは、20マイクロメートル以下の平均長さを有するマイクロフレーク及び/又はミクロフィブリル化物品を含む。
【0085】
ミクロフィブリル化材料はまた、2軸配向及び発泡ポリマー、好ましくは熱可塑性ポリマーも含むことができる。発泡体は、2軸スクリュー又は1軸スクリュー押出成形機に1つ若しくはそれより多くのポリマーとガス又は超臨界流体とを加えることによって、押出プロセスを使用して製造されてよい。その後、発泡ポリマーは、2軸配向される。代表的な高溶融強度の発泡性熱可塑性ポリマーとしては、プロピレンホモポリマーから成り得る、又は50重量パーセント以上のプロピレンモノマー含有量を有するコポリマーを含み得る、ポリプロピレンが挙げられる。発泡性ポリプロピレンは、プロピレンホモポリマー若しくはコポリマーと、プロピレンホモポリマー若しくはコポリマー以外のホモポリマー若しくはコポリマーとの混合物又はブレンドを含んでよい。材料及び物品を含有するさらなるミクロフィブリル化ポリプロピレンは、米国特許第6,692,823号(コディ(Kody)ら)、同第6,468,451号(ペレスら)、及び同第6,890,649号(ホッブスら)に記載されている。
【0086】
一つの実施形態では、マイクロファイバー及び/又はミクロフィブリル化物品を、米国特許第6,110,588号に記載のプロセスを使用してマイクロボイド形成フィルムから調製してもよく、その開示全体を本明細書に参照として組み込む。開示されているマイクロボイド形成フィルムは、ひずみ誘起結晶化度を有する、高度に配向した半結晶性の溶融加工フィルムから得られる。ひずみ誘起結晶化度は、カレンダー加工、アニーリング、伸張、及び再結晶化など、後続の加工の最適な組合せによって得ることのでき得る結晶化度である。
【0087】
配向熱可塑性フィルムを、マイクロファイバーをポリマーマトリックスから解放するのに十分な流体エネルギーを表面に付与することによって、ミクロフィブリル化してよい。ミクロフィブリル化プロセスでは、マイクロフレークを解放するために、従来の機械的フィブリル化プロセスに比べて比較的多量のエネルギーがフィルム表面に付与される。マイクロフレークは、2軸配向ボイド形成又は発泡熱可塑性基材から得られる。ミクロフィブリル化後、材料の表面の大部分は、片状構造を含む。これらの構造は、1〜20マイクロメートル、好ましくは5マイクロメートル未満の平均厚さと、1〜数百マイクロメートル、好ましくは約5〜約30マイクロメートルの平均幅とを有する。片状構造は典型的に、吸着質として窒素を用いてオートソーブ−6物理吸着分析器(Autosorb-6 Physisorption Analyzer)(フロリダ州ボイントンビーチ(Boynton Beach)、カンタクローム・インスツルメンツ(Quantachrome Instruments))を使用して測定され、0.5m/グラムを超える、好ましくは0.7m/グラムを超える表面積を示すことができる。走査電子顕微鏡法により、本発明で使用されるマイクロフレークが互いに概ね平行であり、マイクロフレーク寸法のうちの2つの長さスケールが、該マイクロフレークの第3の寸法の長さスケールの少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍である、プレート又はプレート状リボンのような形状であることが明らかになる。マイクロフレークの片状表面のアスペクト比は、1:1〜1:20におよぶことがあり、フィルム又は発泡体の配向がどのようにバランスを保っているかによって決まる可能性がある。よりバランスのとれてない伸張は、よりテープ状のマイクロフレークをもたらす。さらに、フレークは、互いに連結することができ、幅又は長さ方向に連続的となる傾向にある。寸法は、走査型電子顕微鏡を使用して測定することができる。表面積は、矩形形状のマイクロファイバーから予想し得る表面積を超えており、そのような表面積は、コンクリート及び熱硬化性プラスチックなどのマトリックスにおける結合を強化し、望ましい場合さらに向上した生分解性のためのより大きな表面積を提供する。
【0088】
所望により、ミクロフィブリル化前に、2軸配向フィルムから巨視的フレークを生成するために、フィルムを、従来の機械的手段によるマクロフィブリル化工程に曝してもよい。機械的フィブリル化の従来の手段は、移動しているフィルムと接触する針若しくは歯などの切断要素を有する回転ドラム又はローラーを使用する。歯は、フィルムにマクロフィブリル化表面を付与するために、該フィルムの表面に完全に又は部分的に貫入する場合がある。他の類似のマクロフィブリル化処理が知られており、それには、ねじり、ブラッシング(ポーキュパインローラ(porcupine roller)などによる)、例えば革パッドによる摩擦、及び屈曲のような機械的作用が挙げられる。そのような従来のマクロフィブリル化プロセスによって得られるフレークは、サイズが巨視的であり、一般に断面が数百マイクロメートルである。
【0089】
フィルムの表面をミクロフィブリル化する一つの方法は、流体噴流を用いるものである。このプロセスでは、細かい流体ストリームの1つ若しくはそれより多くの噴流が、スクリーン又は移動ベルトによって支持され得る熱可塑性ポリマーフィルムの表面に衝突し、それによってポリマーマトリックスからマイクロフレークを解放する。フィルムの一方又は両方の表面がミクロフィブリル化されてよい。ミクロフィブリル化の程度は、流体噴流へのフィルムの曝露時間、流体噴流の圧力、流体噴流の断面積、流体接触角、ポリマー特性によって、また、さほどではないが流体温度によって決まる。様々なタイプ及びサイズのスクリーンを、フィルムを支持するために使用することができる。
【0090】
あらゆるタイプの液体又はガス状流体を使用してよい。液体流体としては、水、又はエタノール若しくはメタノールなどの有機溶媒を挙げてよい。窒素、空気、又は二酸化炭素などの好適なガス、並びに液体とガスとの混合物を使用してよい。いずれのそのような流体は、好ましくは、マイクロフレークの配向及び結晶化度を低減する非膨潤性である(すなわち、ポリマーマトリックスによって吸収されない)。ミクロフィブリル化の間に電荷を付与するために、好ましい流体は、水であり、最も好ましくは、静電電荷を消散させる可能性のある塩若しくは鉱物などのいかなる汚染物質も実質的に含まない脱イオン水又は蒸留水である。流体温度を、上昇させてもよいが、好適な結果は、周囲温度の流体を使用して得ることができ得る。流体の圧力は、フィルムの少なくとも一部分にある程度のミクロフィブリル化を付与するのに十分なものであるべきであり、好適な条件は、流体、組成及びモルホロジーを含めたポリマーの性質、流体噴流の構成、衝突角度、及び温度によって大きく異なる可能性がある。一般に、マイクロボイド形成されたフィルムと比べたときに、ボイド形成フィルム及びボイド形成発泡体をミクロフィブリル化するには、さほど厳密ではない条件が必要とされる。
【0091】
典型的には、流体は、室温において、且つ6,800kPa(1,000psi)を超える圧力、好ましくは10,300kPa(1,500psi)を超える圧力において水であるが、より低い圧力及びより長い曝露時間を使用してもよい。そのような流体は、一般に、流体の非圧縮性、平滑面、及び摩擦による損失なしを仮定した計算に基づいて、最低でも10ワット又は20W/cmを与える。
【0092】
流体噴流の構成、すなわち、断面形状は、名目上円形としてよいが、同様に他の形状も使用してもよい。1つ若しくは複数の噴流は、断面を横切る、又はフィルムの幅を横切るスロットを含んでよい。噴流を固定式であってよく、他方、フィルムが噴流に関連して運ばれ、噴流が固定フィルムに関連して動いてよく、又はフィルム及び噴流の両方が互いに関連して動いてよい。例えば、フィルムがフィードローラを用いて機械(長手)方向に運ばれながら、噴流がウェブを横切って動くことがある。好ましくは、複数の噴流が使用され、フィルムが、スクリーン若しくはスクリムによって支持されながら、ローラーを用いてミクロフィブリル化チャンバを通ってを運ばれ、その結果、流体をミクロフィブリル化表面から排出できるようになる。フィルムは、単一のパスでミクロフィブリル化されてよく、又は複数のパスを使用して噴流を通過してミクロフィブリル化されてもよい。
【0093】
噴流を、フィルム表面の全て又は一部がミクロフィブリル化されるように構成してよい。或いは、噴流を、フィルムの選択された領域だけがミクロフィブリル化されるように構成してもよい。また、選択された領域をミクロフィブリル化されないままにするために、従来のマスキング剤を使用してフィルムの特定の領域をマスクしてもよい。同様に、プロセスを、ミクロフィブリル化表面が出発フィルムの厚さに部分的にだけ又は完全に貫通するように実施してよい。ミクロフィブリル化表面がフィルムの厚さにわたって延びることが望ましい場合、物品の一体性が維持され、且つフィルムが個々の糸若しくはフレークへと切り離されないように、条件を選択し得る。スクリーン又はメッシュを使用して、ミクロフィブリル化物品の表面にパターンを付与してよい。
【0094】
例えば、水流交絡機械を使用して、繊維性材料を流体噴流に曝露することによって一方又は両方の表面をミクロフィブリル化することができる。水流交絡機械は、一般に、ウェブ結合プロセスにおいて個々のマイクロファイバーを巻きつける又はもつれさせるため、高速水噴流を用いてマイクロファイバー又は糸の嵩高性を高めるために使用され、噴流レーシング若しくはスパンレーシングとも呼ばれる。或いは、旋回又は振動ヘッドによる圧水噴流を使用してもよく、それによって流体噴流の衝突の手動制御が可能となる。
【0095】
流体噴流を用いて、低い又は高いミクロフィブリル化度をもたらすようにミクロフィブリル化の程度を制御することができる。低いミクロフィブリル化度は、表面のところで最小限の量のマイクロファイバーを部分的に曝露し、それによりフィルムの表面に繊維状組織を付与することによって表面積を増大させるのに望ましい場合がある。表面積の増大は、結果として、表面の結合性を高める。そのような物品、例えば、研磨剤コーティングのための基材及び印刷のための受容面、フック・ループ式ファスナー、層間接着剤及びテープ裏材などのような物品が有用である。反対に、高いミクロフィブリル化度は、布状のフィルム、絶縁物品、フィルタ物品を提供するために表面に高度に繊維状の組織を付与するために、又はポリマーマトリックスから個々のマイクロフレークのその後の採取(すなわち、マイクロフレークの除去)をもたらすために、必要な場合がある。
【0096】
別の実施形態では、ミクロフィブリル化は、高エネルギーキャビテーション媒質(high-energy cavitating medium)にサンプルを浸すことによって実施してよい。このキャビテーションを達成する一つの方法は、流体に超音波を印加することによる。ミクロフィブリル化の速度は、キャビテーション強度によって決まる。超音波システムは、低音響振幅・低エネルギー超音波洗浄浴(low acoustic amplitude, low energy ultrasonic cleaner baths)から、集中的低振幅システム(focused low amplitude systems)、高振幅・高強度音響プローブシステム(high amplitude, high intensity acoustic probe systems)までおよぶことができる。
【0097】
超音波エネルギーの印加を含む一つの方法は、繊維性フィルムがそれに浸される液体媒質中でプローブシステムを使用することを伴う。ホーン(プローブ)は、少なくとも部分的に液体に浸されるべきである。プローブシステムでは、配向したフィルムは、それを媒質中の振動ホーンと穿孔金属又はスクリーンメッシュとの間に位置決めすることによって(他の位置決めの方法も可能である)超音波振動に曝露される。有利には、超音波を使用するときにはフィルムの両方の主表面がミクロフィブリル化される。繊維性材料におけるミクロフィブリル化の深さは、キャビテーションの強度、該材料がキャビテーション媒質中に置かれる時間量、及び繊維性材料の特性によって決まる。キャビテーションの強度は、印加される振動の振幅及び周波数、液体特性、流体温度、及び印加圧力、並びにキャビテーション媒質中の場所などの多くの変数の因子である。強度(単位面積当たりの出力)は典型的に、ホーンの下で最高となるが、これは、音波の集束によって影響を受けることがある。
【0098】
方法は、タンク内で保持されたキャビテーション媒質(典型的には水)中の超音波ホーンとフィルム支持体との間にフィルムを位置決めする工程を含む。支持体は、この領域で起こる極度のキャビテーションによるフィルムがホーンから離れることを抑える働きをする。フィルムは、スクリーンメッシュ、穿孔されていてよい回転デバイスなどの様々な手段によって、又はフィルムを超音波浴へと送るテンションローラの調節によって、支持することができる。ホーンに対するフィルム張力を代替的に使用することができるが、正確な位置決めは、より良好なフィブリル化効率をもたらす。フィルムの両面とホーン及びスクリーンとの間の距離は、一般に、約5mm(0.2インチ)未満である。フィルムからタンクの底部までの距離を、フィルム上のキャビテーション力を最大にすることのできる定在波を作り出すように調節することができ、又は、他の集束技術を使用することもできる。また、他のホーンとフィルムの間の距離も使用することができる。最良の結果は典型的に、フィルムがホーンの近く又はホーンから1/4波長の距離のところに位置決めされるときに起こるが、これは、流体容器の形状及び使用される放射表面などの因子によって左右される。一般に、サンプルをホーンの近く、又は第1若しくは第2の1/4波長距離に位置決めすることが好ましい。
【0099】
超音波圧力振幅は、次式として表すことができる:
=2πΒ/λ=(2π/λ)ρcmax
強度は、次式として表すことができる:
I=(Po)/2ρc
式中、
=最大(ピーク)音圧振幅
I=音響強度
Β=媒質の体積弾性率
λ=媒質中の波長
max=ピーク音響振幅
ρ=媒質の密度
c=媒質中の波の速度
超音波洗浄浴システムは典型的に、1〜10ワット/cmにおよぶことができ、他方、ホーン(プローブ)システムは、300〜1000ワット/cm以上に達することができる。一般に、これらのシステムに対しての出力密度レベル(単位面積当たりの出力、又は強度)は、放出された電力を放射表面の表面積で除すことによって決定する場合がある。ただし、実際の強度は、流体中の波の減衰のためにいくらか低いことがある。条件は、音響キャビテーションを提供するように選択される。広くは、より高い振幅及び/又は印加圧力は、媒質中でより多くのキャビテーションをもたらす。一般に、キャビテーション強度が高いほど、マイクロフレーク生成の速度が速くなり、より微細な(より小さい直径の)マイクロフレークを生み出す。理論に束縛されるものではないが、初生キャビテーション気泡の崩壊によって高圧衝撃波が生成され、それがフィルムに衝突してミクロフィブリル化をもたらすと考えられている。
【0100】
超音波振動周波数は、通常、20〜500kHz、好ましくは20〜200kHz、より好ましくは20〜100kHzである。ただし、本発明の範囲から逸脱することなく、可聴周波数もまた使用することができる。出力密度(単位面積当たりの出力、又は強度)は、1W/cm〜1kW/cm以上におよぶことができる。このプロセスでは、出力密度が10ワット/cm以上、好ましくは50ワット/cm以上であることが好ましい。
【0101】
フィルムとホーンとの間の隙間は、0.03mm(0.001インチ)〜76mm(3.0インチ)、好ましくは0.13mm(0.005インチ)〜1.3mm(0.05インチ)とすることができるが、これらに限定されない。温度は、5〜150℃、好ましくは10〜100℃、より好ましくは20〜60℃におよぶことができる。界面活性剤又は他の添加剤を、キャビテーション媒質に添加することができ、又は繊維性フィルム内に組み込むこともできる。処理時間は、サンプルの初期モルホロジー、フィルム厚さ、及びキャビテーション強度によって決まる。この時間は、1ミリ秒〜1時間、好ましくは1秒の1/10〜15分、最も好ましくは1/2秒〜5分におよぶことができる。
【0102】
さらに、いずれのミクロフィブリル化プロセスでも、ミクロフィブリル化の程度又は深さを制御することができる。ミクロフィブリル化の深さ(すなわち、ミクロフィブリル化層の厚さ)が10マイクロメートル程度のわずかなものである、ミクロフィブリル化物品を調製することができるが、50マイクロメートル以上、100マイクロメートル以上、最大で完全にミクロフィブリル化したフィルムの厚さまでであってもよい。低いミクロフィブリル化度は、表面のところで最小限の量のマイクロフレークを部分的に曝露し、それによりフィルムの表面に繊維状組織を付与することによって表面積を増大させるのに望ましい場合がある。反対に、高いミクロフィブリル化度は、布状のフィルム、絶縁物品、及びフィルタ物品を提供するために、表面に高度に繊維状の組織を付与するのに必要な場合がある。
【0103】
いずれのミクロフィブリル化プロセスでも、マイクロフレークの大部分は、ポリマーマトリックスからの解放が不完全であるのでウェブに付着したままである。有利には、ウェブに固定されているミクロフィブリル化物品は、マイクロフレークを取り扱い、貯蔵し、輸送する、便利で安全な手段を提供する。多くの用途では、米国特許第6,645,618号(ホッブスら)及び同第6,890,649号(ホッブスら)に記載のように、マイクロフレークをウェブに固定された状態で保持することが望ましく、それらの特許を本明細書に参照として組み込む。
【0104】
所望により、マイクロフレークを、ポーキュパインロール、擦過などの機械的手段によってフィルムの表面から採取してよい。採取されたマイクロフレークは、一般に、個々のマイクロフレークの弾性率が高いので、それらの嵩高性(ロフト)を保持する。必要ならば、ロフトは、インフレーションマイクロフレーク(blown microflakes)のロフトを増大させるために使用される手段など、従来の手段によって、例えば短繊維を加えることによって、改善してよい。
【0105】
本発明で使用されるミクロフィブリル化物品及びマイクロフレークは、細胞成長に重要な繊維寸法をもたらす。マイクロフレークのプレート状の形状は、細胞付着に有利であり、大きな表面積は、脂肪族ポリエステルによる、より速い分解を可能にするはずである。マイクロフレークの細胞以下のフレークサイズは、優れた機械的強度及びドレープ性を有し、連続的な方法で生成することができる。
【0106】
本発明に記載されるように、組織細胞は、それらの細胞が固体基質上で動き、短い突起だけを液体媒質内に伸ばすことのできる、固体基質を必要とする。人体では、コラーゲン、他の細胞外繊維、又は他の細胞の表面が、固体基質としての役割を果たす。また、細胞は、ガラス及び他の一般的な組織培養基材上を容易にはい進むことができる。組織細胞の運動性は、マイクロフレークなどの基材の接着性及び物理的形状によって強く影響を受ける可能性があり、細胞は、接着性のより大きい領域に集まり、接着勾配を上げる。これらの細胞は、それらの基材の接着性に比例して平らになる。細胞は、マイクロフレーク及び曲面に沿って配向して、最小の局所的曲率の方向に沿って選択的に伸展し移動することがある。細胞が成長するにつれて、別の細胞との接触が、互いの運動を阻害することがある。ただし、白血球及びがん細胞は、阻害及びそれらの浸潤能力に対して比較的無反応である。
【0107】
哺乳類細胞など、組織由来の細胞を、合成環境として細胞培養培地で培養することができる。完全成長培地は、栄養を包含するものとして定義され、その上又はその中で微生物若しくは細胞が成長できる物質と呼ばれる。細胞培養培地は、塩、炭水化物、ビタミン、アミノ酸、及び代謝前駆体を包含する。さらに、この培地には、血清、成長因子、微量元素、ホルモン、及び抗生物質を添加してもよく、完全成長培地と呼ばれる。培地は、容器の表面に付着した細胞を浸し、その容器で培養物が成長し、その後、継代培養することができる。ホルモン又は成長因子の添加がなければ、一部の細胞株は、成長することができない。培地に必要な構成成分は、細胞株のうちで異なり、細胞培養培地の包括的なリストを占める。いくつかの培地例としては、イーグル最小必須培地(Eagle’s Minimum Essential Medium)、ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、及びイスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)が挙げられる。細胞培養培地は、それらそれぞれの細胞株に特異的である。細胞培養培地のリストは、インビトロジェン・コーポレーション(Invitrogen Corporation)(カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad))から入手可能である。
【0108】
細胞培養培地は、細胞の成長及び発達に有益である。列挙された栄養素に加えて、培地は、培養系のpH及びオスモル濃度を維持するのに役立つ。ほとんどの脊椎動物細胞のための典型的な細胞培養培地は、260〜320mOsm/kg内にあり、より樹立された細胞株は、浸透圧のより大きな変動に耐える。このことは、実際には細胞培養が多細胞の真核生物由来の細胞、特に動物細胞の培養を指すようになってきているものの、原核又は真核細胞のいずれにも当てはまる。培養条件(成長培地、pH、及び温度)は、細胞のタイプごとに大きく異なっており、特定の細胞のタイプに対する条件の変化は、異なる表現型が発現されるという結果をもたらす可能性がある。細胞培養の参考文献は、サンフォード・K.K(Sanford,K.K.)、「単離された単個組織細胞の生体外成長(The growth in vitro of single isolated tissue cells)」、国立がん協会紙(J.Natl.Cancer Inst.)、1948年、9巻、229〜246貢;フレッシュニー・R.I(Freshney,R.I.)、「動物細胞の培養:基本技術マニュアル(Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique)」、第4版、ニューヨーク:ワイリー・リス(New York:Wiley Liss)、2000年;ジャコービー・W.B(Jacoby,W.B.)、パステン・I.H(Pasten,I.H.)編、「酵素学の方法における単層培養技術(Monolayer culture techniques in Methods in Enzymology)」、細胞培養、1979年、58巻「、ニューヨーク、アカデミックプレス(Academic Press);及びウィッカート・P.D(Wickert,P.D.)ら、PCT国際公開特許第00/53721(2000年9月14日)に見ることができる。
【0109】
典型的には、細胞を培養するための容器は、適切な内部環境を維持しながら培養物を外部環境から保護するための汚染障壁(contamination barrier)を提供する。ガラス及びプラスチック(すなわち、ポリスチレン)が、細胞成長用に最も一般的に使用される。本発明では、マイクロフレーク又はミクロフィブリル化物品を、細胞を培養するための容器内の細胞培養培地に分散させてよい。細胞を、ミクロフィブリル化物品の表面上に接種し、成長するための環境を提供する。さらに、ミクロフィブリル化物品は、細胞を培養するためのマルチウェルプレートデバイス用のマトリックスを含んでよい。
【0110】
細胞株を、継続的に成長し複製する細胞の培養物とともに適切な条件下で成長させ、維持する。全ての細胞株は、限られた寿命をもつ細胞培養物に由来するが、時に、一部の細胞は、遺伝的不安定性のために増殖し続ける。これらの細胞を、無限に培養することができる。細胞株を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)バイオプロダクツ(BioProducts)(バージニア州マナッサス(Manassas))で見つけることができる。
【0111】
細胞は、それらが定期的に分裂する場合、より長い時間にわたって培養することができ、その場合、成長培地が取り替えられ、細胞が希釈され(初めにそれらの細胞をトリプシンによって支持体から引き離した後)、これは継代培養と呼ばれる。細胞の培養における成功の鍵は、本発明の物品で記載されるように、それらの細胞が人工環境に移植される前に存在した環境を真似ることである。第2に、培養細胞を、頻繁に継代培養してよい。細胞が約70〜90%コンフルエントの時には、それらを継代培養する必要がある場合がある。細胞単層の継代培養は、細胞間接続及び細胞・細胞表面(cell-to-cell surface)接続の両方の切断を伴う。典型的には、タンパク質付着結合は、トリプシンによって消化される。細胞を分離及び分散させて単個細胞懸濁液にした後、細胞は、さらに希釈され、分けられて、継続した再付着、成長、及び分裂のために新しい培養容器へと移される。コンフルエント細胞層は、細胞が互いに接触して単層を形成する所である。細胞成長の成功のための人工環境を最もうまく複製するために、多くの培養培地が、対象の細胞株に対して利用可能である。
【0112】
最終的には新しい細胞ではなく繊維性組織を生成するので、哺乳類細胞は、創傷治癒の評価に重要である。例えば、マウス及びヒトの2倍体線維芽細胞を、細胞培養培地に加え、高温でインキュベートし、その際、培地を3〜5日ごとに交換し、継代培養してよい。細胞がそこから除去された細胞の単層は、インキュベートされ続ける。また、細胞成長には細胞密度も重要であり、細胞は、それらを維持するためにエネルギー及び材料の絶え間ない供給を必要とする。ミクロフィブリル化物品がその中に分散される完全細胞成長培地は、細胞の生存能力を支える。
【0113】
細胞を培養する方法について記載する。本発明では、マイクロフレークを含む片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材のマトリックスが、細胞培養培地に分散され、マトリックスには細胞が接種される。マトリックスは、細胞外マトリックスとしての役割を果たす。組織スカフォールドでは、細胞をその中に成長させ、付着させ、増殖させる細胞外マトリックスとしての役割を果たすポリマー材料を、細胞が有することが重要である。このマトリックスの小さく扁平なマイクロフレークは、創傷治癒及び組織スカフォールド用途の機会が存在する、生きている組織に類似した細胞成長のための基材を提供する。マイクロフレークは、細胞増殖及び細胞付着を支える。これらの特性は、マイクロフレークが大量のオープンスペース(open space)、剛性、及び扁平なモルホロジーを提供するときに観察される場合がある。マイクロフレークを含む片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材の形状は、そのより大きな表面積の結果として類似の寸法の円形繊維の場合に見られるよりも、一部のポリマー材料のより速い生分解に対して重要な場合がある。走査型電子顕微鏡写真は、繊維サイズ、形状、及び隙間空間が、マトリックス上の細胞の密度、細胞のモルホロジー、及び細胞の伸展量に影響を与えることが示す。ミクロフィブリル化物品のより小さな扁平フレークは、図1の実施例3に示されるように、より大きな伸展及び細胞付着をもつ、より高密度の細胞を有するように見える。
【0114】
さらに、ミクロフィブリル化物品の三次元構造は、剛性、並びにほつれ(snag)及び崩壊に対する抵抗力とをもたらす。細胞外マトリックスは、細胞が互いに相互作用する方法を導き、特異的な細胞機能を引き出す。合成スカフォールドは、脂肪族ポリエステルなどの生体分解性及び生体適合性材料を含む場合がある。スカフォールドのマイクロフレーク間の隙間空間に起因する、物品の高多孔質の性質が、細胞浸透並びにポリマー分解を可能にする。創傷治癒、特に一次創傷及び二次創傷では、上皮細胞が移動し、創傷面にわたり増殖するときに、上皮形成が起こる。生体分解性材料は、これらの細胞が表面を横切って移動するのを導き、創傷治癒を促進する場合がある。
【0115】
ポリラクチド、ポリグリコリド、及びそれらのコポリマーを、他の公知の脂肪族ポリエステルとともに本発明で使用してよい。これらのコポリマーのコモノマー含有量を使用して、分解時間及び速度を制御することができる。プラズマ処理、コロナ処理、及び特定のペプチド配列をもつポリマーの吸着など、様々な表面処理を使用してよい。また、栄養素及び成長因子も表面に適用してよい。その後、ミクロフィブリル化表面を播種し、培養して、生体内組織に類似した機能的組織を作り出してよい。細胞外マトリックスは、さらに、大きな繊維強度の結果として大規模培養のための一般的な細胞培養培地として使用してもよい。
【0116】
培養細胞は、それらがマトリックス上に付着し、増殖し、分化して、さらに新しい組織を発達させることができる環境を必要とする。スカフォールドのモルホロジーは、細胞が生存するための工程を提供する。合成細胞外マトリックスを用いた生体外及び生体内用途は、細胞の三次元配列を可能にすることがある。細胞は、それらが人体の細胞に類似して挙動且つ成長することがあるこの環境で、繁殖し得る。
【0117】
さらに、本発明は、接種し得るマイクロフレークが細胞培養培地内に分散される、細胞成長マトリックスのための物品を提供する。脊椎動物では、ほとんど全ての細胞が、細胞外巨大分子の複雑なネットワーク、又は細胞外マトリックスと接触している。主な構成成分は、コラーゲン及びプロテオグリカンであり、繊維状のコラーゲンは、組織及び生物に応じて0.01〜1マイクロメートルの直径を有する。従来の培養技術で遭遇する困難は、脱分化である。細胞は、普通、それらの組織特異的な細胞外マトリックスから分離され、続いて成長培地中に懸濁され、その成長培地で、細胞は、培養皿の底に接着してコンフルエントな単層を形成する。脱分化した細胞は、それらのモルホロジー並びにそれらの生化学的及び機能的特性を失って、それらの元の組織環境と比較して完全に異なる挙動となることがある。細胞が増殖し、分化するためには、ミクロフィブリル化物品への細胞付着が重要である。マトリックス表面を、認識及び急速な接着を促進するためにペプチド配列によって修飾してよい。マイクロフレークを含む2軸配向熱可塑性基材の三次元マトリックスは、マトリックス内への栄養素の拡散及びマトリックス外への細胞排出物の拡散を可能にする。細胞付着及び増殖を通じた線維芽細胞の使用は、脂肪族ポリエステルマイクロフレークを三次元人工組織の形成におけるパートナーにすることを可能にする。フレークサイズ、形状、表面エネルギー、及び生体吸収性は、これらの繊維を細胞外マトリックスとして、又は生体内用途に対して有用なものにする。
【0118】
ポリ(乳酸)、ポリ(カーボネート)、ポリプロピレン、並びにそれらのコポリマー及びブレンドなど、ミクロフィブリル化されたポリマー材料が、細胞成長におけるそれらの有効性を評価するために、培養細胞を用いて研究されてきた。これらの材料は、三次元マトリックスを達成するために、配向され、ミクロフィブリル化されてきている。組織工学では、生物系において適正に機能していない臓器若しくは組織の一部を置き換える又は一部となるほど十分よく機能することができる構造を作り出すことが望まれる。これは、欠陥のある組織又は臓器を置き換えて回復させるためにより効率的でコストの削減された方法を提供する。組織工学では、組織の供給源は、被験者自身の細胞であり、ゆえに、身体自体の免疫系による拒絶反応が避けられる。ほとんどの組織工学の場合には、マトリックスは、細胞を所望の部位に届け、組織のための空間を画定し、且つ組織発達のためのプロセスを誘導するために使用される。これらの細胞のほとんどは、足場依存性(anchorage dependent)であり、その中に接着するために、接着剤様基材(adhesion-like substrate)を必要とする。理想的には、マトリックスは、身体自体の天然の細胞外マトリックス(ECM)のように機能すべきである。ECMは、特異的な細胞機能を引き出し、細胞が互いに相互作用する方法を導く。本発明で使用される合成熱可塑性組織スカフォールドは、この機能を提供する。
【0119】
熱可塑性ポリマー材料は、合成スカフォールドの良い例を提供する。ただし、ポリマー材料は、生体適合性となることが好ましい。一般的な合成ポリマー材料としては、生体分解性である、ポリ(乳酸)(PLA)、及びポリ(ε−カプロラクトン)PCLが挙げられる。これらの材料は、押し出し、ミクロフィブリル化して、平均有効長が20マイクロメートル未満、幅が200マイクロメートル未満の、高度に交絡した多孔質材料をもたらし得る。
【実施例】
【0120】
これらの実施例は単に例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲を制限することを意味するものではない。特に記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載される部、百分率、比率等は全て、重量による。使用される溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、シグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))より入手した。
【0121】
【表1】

【0122】
実施例1〜3及び比較実施例C1
実施例1〜3には、繊維1〜3を使用した。比較実施例C1には、繊維を使用せず、むしろ、トランスウェル(Transwell)プレート内に存在する膜を残した。細胞成長及び試験のための手順を、以下の多工程プロセスで与える。
【0123】
工程1:滅菌
繊維サンプル繊維−1から繊維−3までそれぞれを、それらのサンプルを37℃(低温サイクル)で4〜4.5時間にわたってエチレンオキシドガスに曝露することによってエチレンオキシドガスを使用して滅菌し、次いで37℃で2〜3日間にわたって曝気した。
【0124】
工程2:細胞培養の準備
細胞培養を開始する際の第1の工程は、それらがその中で成長することになる培地を調製することであった。1パケットの粉末状イーグル基本培地(Basal Medium Eagle)(BME)を1,000ミリリットルの滅菌水に加え、溶解するまで撹拌した。次に、0.35ミリグラムの重炭酸ナトリウムを測定し、BME溶液に溶解させ、溶液のpHを測定した。所望のpHは、約7.4であった。溶液を水浴中で37℃に加熱した。溶液が37℃に達したら、5ミリリットルの抗生物質ペニシリンと、50ミリリットルのウシ胎児血清(FBS)とを加えた(それらもまた37℃に加熱した)。最終溶液を収容するボトルを、それらが必要とするもの全てを包含することを示すために「完全」と印を付けた。
【0125】
使用される細胞は、L929マウス線維芽細胞であった。1ミリリットルのマウス線維芽細胞を、上記で調製した完成培地3ミリリットルに加え、5ミリリットルピペットによって手作業で滴定することによってばらばらにした。完成培地中の懸濁細胞4ミリリットルを、2つの200ミリリットルプラスチック培養フラスコに移した(それぞれ2ミリリットル)。2つのフラスコを37℃に設定されたインキュベータに入れた。4日後、両方のフラスコから古い培地を捨て、各培養フラスコ内にピペットで30ミリリットルのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(37℃)を入れることによって、培地を交換した。細胞は、フラスコの底に付着しており、したがって出てこなかった。培地交換の5日後、細胞は、密集しすぎた状態になり、継代培養した。初めに、BME及び1瓶のトリプシンを水浴中で37℃に加熱した。次に、1つのフラスコをインキュベータから取り出し、その培地を使い捨てフラスコに注ぎ入れた。5ミリリットルのトリプシンを、フラスコ内の細胞の単層に15〜30秒間にわたって加え、次いで使い捨てフラスコに注ぎ入れた。フラスコを緊密に封止し、インキュベータに10〜15分間入れた。フラスコをインキュベータから取り出し、まっすぐ保持したときに細胞が側部から底部へとゆっくり滑り落ちた。5ミリリットルのBMEをフラスコに加え、培地中の細胞を手作業でピペッティングして単個細胞懸濁液にした。懸濁細胞0.2ミリリットルのサンプルを、30ミリリットルのBME(37℃)を収容する新しい2つの培養フラスコに入れた。新しい2つのフラスコをインキュベータに戻した。培地を交換し、次いで継代培養するこのプロセスを、4回続けた。血球計算盤を使用して、培地1ミリメートル当たりにどれだけ懸濁しているかを調べるために、細胞を数えた。濃度5×10細胞/mLの、15ミリリットルの培地中の細胞が必要であった。15ミリリットルの懸濁液中の細胞が作られた後、それらは、材料上に播種される準備ができた。
【0126】
工程3:細胞の播種
細胞を、約2.5センチメートル×2.5センチメートル(1インチ×1インチ)の材料片上に播種した。細胞が加えられる前に、材料片を、プレート当たり6つのウェルを包含するトランスウェルプレートの24ミリメートルウェルに入れた。実施例1〜3については、ウェル内の膜が滅菌かみそり刃で除去され、比較実施例C1については、膜が残され、繊維材料は添加されなかった。この膜は、0.4マイクロメートル孔を備えたポリカーボネート製であった。これは、細胞がその上で成長するのに理想的な表面であり、良好な比較をもたらす。2ミリリットルのBMEをプレートの底(材料の下)に加え、材料片に培地を吸い上げさせた。次いで、1ミリリットルの懸濁液中の細胞を、材料の上に加えた。材料が浮かないようにするために、トランスウェルプレートに付いてきたインサートを、ウェル及び材料の上に置いた。プレートを、テープで覆って封止し、インキュベータに入れた。24時間後、SEM写真を撮影するためにプレートを調製した。
【0127】
工程4:SEM顕微鏡写真を使用した細胞成長の分析
各材料を、細胞成長が起こったかどうかを判定するためにSEM顕微鏡写真によって調査した。結果を表1にまとめる。
【0128】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】実施例3の細胞培養培地に分散された、マイクロフレークを含む片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材の走査型電子顕微鏡写真のデジタル画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を培養する方法であって、
片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材のマトリックスを提供する工程、ここで、前記マトリックスは、細胞培養培地に分散されており;及び
前記マトリックスに細胞を接種する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
前記片状表面は、20マイクロメートル未満の平均長さを有するマイクロフレークを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マイクロフレークは、1〜3マイクロメートルの平均長さを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロフレークは、200マイクロメートル未満の平均幅を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロフレークは、5〜30マイクロメートルの平均幅を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロフレークは、1〜20マイクロメートルの平均厚さを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記マイクロフレークは、1:1〜1:20の表面アスペクト比を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロフレークは、0.5m/グラムを超える表面積を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記マトリックスは、半結晶性ポリマー成分及びボイド開始成分の溶融加工可能な不混和性混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記2軸配向熱可塑性基材のマトリックスは、ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記半結晶性ポリマー成分は、ポリエチレンホモポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、ポリエチレンのコポリマー、ポリプロピレンのコポリマー、ポリプロピレンを含むブレンド、及びポリエチレンを含むブレンドから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記2軸配向熱可塑性基材のマトリックスは、脂肪族ポリエステルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記脂肪族ポリエステルは、ポリ(ブチレンサクシネート)ホモポリマー、ポリ(ブチレンアジペート)ホモポリマー、ポリ(ブチレンアジペート−サクシネート)コポリマー、ポリ(エチレンサクシネート−アジペート)コポリマー、ポリ(エチレンアジペート)ホモポリマー、ポリラクチド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシバレレート)、ポリグリコリド、ポリ(オキシエチレングリコレート)、ポリラクチドのコポリマー、及びポリグリコリドのコポリマーから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ボイド開始成分は、有機及び無機の固体、並びに不混和性ポリマーから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記2軸配向熱可塑性基材のマトリックスは、2つ以上のポリマーのブレンドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記マトリックスは、生体分解性である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記マトリックスは、生体吸収性である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞は、哺乳類細胞、細菌類及び真菌類から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞は、線維芽細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材のマトリックスを含む、細胞を培養するための物品であって、前記マトリックスが細胞培養培地に分散される、前記物品。
【請求項21】
前記片状表面は、マイクロフレークを含む、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
前記マトリックスは、ミクロフィブリル化された2軸配向フィルム又は発泡体を含む、請求項20に記載の物品。
【請求項23】
前記マイクロフレークは、前記マトリックス中の10マイクロメートル以上の深さまで一体的である、請求項21に記載の物品。
【請求項24】
前記細胞培養培地は、細胞をさらに含む、請求項20に記載の物品。
【請求項25】
前記物品は、前記フィルム又は発泡体の厚さ全体を通じてミクロフィブリル化されたモルホロジーを有する前記マトリックスを含む、請求項22に記載の物品。
【請求項26】
容器に収容された、請求項20に記載の物品。
【請求項27】
細胞培養培地内に分散された片状表面を有する2軸配向熱可塑性基材のマトリックスを含む、組織スカフォールド(tissue scaffold)。
【請求項28】
前記マトリックスは、脂肪族ポリエステルを含む、請求項27に記載のスカフォールド。

【図1】
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【公表番号】特表2009−532070(P2009−532070A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504400(P2009−504400)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/065758
【国際公開番号】WO2007/115245
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】