説明

組成物

本発明は組成物並びにそのような組成物を調製する方法及び使用する方法を提供する。組成物は(i)表面コーティング物質、及び(ii)架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物であって、ここで、酵素が多官能性架橋剤と架橋し、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物が、防汚活性を有する又は防汚化合物を生成することを特徴とする架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を含む。適切に、組成物はバイオフィルム形成を防止するために使用されてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、防汚組成物に関する。特に、本発明は、表面コーティング物質及び多官能性剤と架橋する酵素を含む組成物に関する。また、本発明は、組成物を生産する方法及び組成物を使用して、バイオフィルムの形成を阻害する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の記載
生物付着(Biofouling)は、絶えず又は断続的に水に接触するあらゆる表面で問題となる。表面上の生体の付着及び増殖は、医療用インプラント及び電子回路類から処理装置、製紙工場及び船のような大きな構築まで及ぶ多くのタイプの設備及び装置に衛生及び機能的な問題をもたらす。
【0003】
多くの場合では、生物付着は、微視的な有機不純物又はバクテリア及び他の微生物を含んでいる細胞外高分子物質(extracellular polymeric substances)(EPS)の目に見える粘液性の層から成る。生物付着のこのカテゴリーは、マイクロファウリング(microfouling)、又はより一般的にはバイオフィルムと呼ばれ、表面が水に露出される自然及び産業環境の両方のどこにでも生じる。また、海洋環境における生物付着も藻類及びエボシガイなど、巨視的な有機体を含んでいる。この種の生物付着は、パイプライン、ケーブル、漁網、橋及び石油プラットフォームの柱、及び他の港又は水中技術(hydrotechnical)の構築物など、船及び水中の構造にとって特に問題である。船の燃料消費は、生物付着により40%まで増加しうる。図1は、バクテリアのバイオフィルムに含まれる細胞外の高分子物質(EPS)の構造成分の化学的性質の図式的概観である。
【0004】
特に、US5071479で議論されるように、船の船体の水中側の海洋生物の増殖は、特別問題である。そのような増殖は、水通過に対する船体の摩擦の抵抗を増加させ、燃料消費を増加及び/又は船の速度の減少に至る。海洋生物の付着が非常に急速に蓄積するので、乾ドックで要求に応じて洗浄し及び塗り重ねる改善策は、高価すぎると一般に考えられる。代替手段であって、この数年にわたって効率を増加して実行されたものは、船体に防汚剤を含むトップコート塗料を塗ることにより汚れる範囲を制限することである。防汚剤は、バイオサイドでよく、これは、長い期間にわたってペンキの表面から除かれるが、船体表面での海洋生物による汚染が阻害できる程度に十分に高い濃度が保たれる。
【0005】
従来、トリブチルスズ(TBT)は特に海中用防汚剤において、広く用いられているバイオサイドだった。しかしながら、水中(海洋)利用でのコーティング組成物中の防汚剤活性成分として商業レベルでのそのような有機スズバイオサイドを使用することにより引き起こされる環境効果に対して高まっている懸念により、使用は事実上止められた。船底用の塗料中20重量%もの高い濃度で、特に、トリブチルスズ(tributyltin)−タイプ化合物の広範囲の使用により、浸出による周囲の水の汚染は、ムラサキイガイ及び貝の生物体の減少を引き起こすようなレベルに達した。これらの影響は、フランス‐英国の海岸線に沿って観察され、及び同様の影響が米国と極東の水域で確認された。2001年の船舶の有害な防汚方法の規制に関する国際条約(International Convention on the Control of Harmful Anti−Fouling Systems)(AFS条約)について国際海事機関(International Maritime Organisation)(IMO)国際会議は、IMOの外交会議にて2001年10月に船上のTBT塗装禁止を採用した。これは2003年1月1日に発効し、続いて、船から活性のあるTBTコーティングの使用の除去が決定され、2008年9月17日に発効した。
【0006】
現在、最も広く使用された防汚塗料は、ブースターバイオサイド(booster biocides)を有する銅を基材とする(Yebra et al, 2004. Progress in Organic coatings 50:75−104)。しかしながら、ブースターバイオサイド、例えば、銅ピリチオン(pyrithione)又はイソチアゾロン(isothiazolone)は、銅のバイオサイドの作用を補足するのに必要であり、それは、銅に耐性であるいくつかの広範囲の藻の種(例えば、あおのり(Enteromorpha spp))に対して効果がない。ブースターバイオサイドは、同様に、環境に有害であるという嫌疑をかけられている。ブースターバイオサイドの安全性は、数人の著者によって調査された。(Boxall, 2004. Chemistry Today 22(6):46−8; Karlsson and Eklund, 2004. Marine Pollution Bulletin 2004;49:456−64; Kobayashi and Okamura, 2002. Marine Pollution Bulletin 2002;44:748−51; Konstantinou and Albanis, 2004. Environment International 2004;30:235−48; Ranke and Jastorff, 2002 Fresenius Environmental Bulletin 2002;11(10a):769−72)
【0007】
従って、環境にやさしい防汚成分を提供する要求がある。例えばコーティング組成物など、防汚組成物の中で異なる酵素を使用することは、先行技術から理解される。しかしながら、一旦それが水和されれば、実質的に、ほとんどの酵素がコーティングから比較的速く拡散するので、塗料中で長期に活性を維持することは極めて困難である。更に、乾燥前の塗料中の酵素の安定性は、有機溶媒系塗料中の溶剤により阻害される。本発明は、これらの問題を緩和する。なぜなら、溶液中の酵素と比較して、架橋酵素結晶(CLEC)及び架橋酵素凝集(CLEA)が、安定性を増加させたからだ。さらに、CLECとCLEAの粒子はそれらの物理的なサイズにより塗料の中で保持されうる。
【発明の概要】
【0008】
ある態様においては、本発明は、
(i) 表面コーティング物質、及び
(ii)架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集であって、ここで、酵素が多官能性架橋剤と架橋し、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集が、防汚活性を有する又は防汚化合物を生成することを特徴とする架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集
を含む組成物を提供する。
【0009】
別の態様においては、本発明は、
(a)酵素結晶又は酵素凝集物を調製し、酵素結晶又は酵素凝集物を多官能性架橋剤と反応させ、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を生成する工程、
(b)任意に、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を乾燥する工程、
(c)任意に、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の表面の疎水性を増加させる工程、及び
(d)表面コーティング物質に架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を添加し、本明細書に記載の組成物を生成する工程
を含む防汚組成物の調製方法を提供する。
【0010】
別の態様においては、本発明は、汚損を防止するために架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の使用を提供する。
【0011】
別の態様においては、本発明は、本明細書に記載のような有効な量の防汚組成物と製品を接触させることを含む製品上のバイオフィルム形成を防止する方法を提供する。
【0012】
別の態様においては、本発明は、本明細書に記載のような有効な量の防汚組成物を製品に適用することを含む製品上のバイオフィルム形成を防止する方法を提供する。
【0013】
別の態様においては、本発明は、本明細書に記載のような組成物を有する製品を提供する。
【0014】
本発明のさらなる態様は、添付された特許請求の範囲に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明は、添付の図を参照しつつ、単なる例示としてさらに詳細に記載される。

図1は、バクテリアのバイオフィルムに含まれる細胞外の高分子物質(EPS)の構造成分化学的性質の概要の概観を示す。
図2は、サブチリシンプロテアーゼの結晶を示す。
図3は、塗料中のプロテアーゼ活性の棒グラフを示す。
図4は、現場の浮き台(raft)の試験からのパネルを示す。
図5は、配列番号1のアミノ酸配列を示す。
図6は、異なる系の中でラッカーゼの触媒性能を示す。
図7は、乾燥塗料の中でラッカーゼの相対的な触媒性能を示す。
図8は、乾燥塗料の中のサブチリシン及びサブチリシン‐キトサン複合体の相対的な触媒性能を示す。
図9は、異なる系の中でプロテアーゼの触媒性能を示す。
図10は、乾燥海中用塗料の中でプロテアーゼの触媒性能を示す。
図11は、乾燥海中用塗料の中でプロテアーゼの相対的な触媒性能を示す。
図12は、ASWの中でインキュベーションの間に触媒活性化の主要なスキームを示す。
図13は、プロテアーゼのSEM顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、用語「汚損」は、表面上の望まない物質の堆積をいう。この望まない物質は、生物体及び/又は生きていないもの(有機や無機の)を含んでよい。
【0017】
本明細書において、「防汚(anti−foul(s))」、「防汚する(anti−fouling)」、「防汚(anti−foulants)」なる用語における「汚れ(foulants)」は、本発明の組成物で処理された表面上に付着及び/又は存在し及び/又は増殖し得る生物体及び生きていないものを含む。生物体は、バクテリア、菌類及び原生動物(特に、バクテリア)など微生物、及び藻類、動植物(特に、脊椎動物、無脊椎動物、エボシガイ類、軟体動物、コケムシ及び多毛虫)のような生物体を含む。生物体は海洋生物でよい。
【0018】
本明細書では、「防汚活性」は、表面上の望まない物質の堆積を防ぐ又は低減するための、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の活性に関係がある。つまり、本発明の組成物で処理された表面に付着及び/又は存在及び/又は増殖し得る生物体及び生きていないものの量を防ぐ又は低減することである。
【0019】
当分野では、用語「バイオフィルム」は、一般的に微生物だけによる汚損を記載するために用いる一方、用語「生物付着」はより一般的で、微視的及び肉眼的生物体の両方による汚損をいう。また、用語「バイオフィルム」は、時々「マイクロファウリング(microfouling)」ともいう一方、肉眼で見える生物体による汚損は、時々「マクロファウリング(macrofouling)」ともいう。
【0020】
本明細書では、「表面コーティング物質」は、表面に付着する物質、又は化合物又は組成物で、表面上にコーティングを提供するものをいう。表面コーティング物質は塗料の分野で周知である。
【0021】
本明細書において、「架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物が、組成物でコーティングされた表面の汚損を低減する又は防止するために有効な量で存在する」とは、それ自身防汚活性を有する架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を、又は基質上に作用して防汚化合物を生じる架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物、又はさらなる酵素及び/又は架橋酵素結晶及び/又は架橋酵素凝集物及び/又は基質と共役反応に関与して防汚化合物を生じる酵素及び/又は架橋酵素結晶及び/又は架橋酵素凝集物を意味し得る。防汚剤として働く架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の能力、又は防汚剤を生成する酵素/基質システムの能力は、本明細書に記載されたものから選択されるアッセイを使用して決定してよい。本明細書では、汚損を低減することは、本発明の組成物で処理されていない表面と比較して、これに対応する本発明の組成物で処理した表面上に付着及び/又は存在及び/又は増殖し得る生物体及び生きていないもの量の低減をいう。表面上の生物体及び生きていないものの量のこの低減は、処理されていない対応する表面と比較して、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%であり得る。本明細書では、汚損を防ぐことは、本発明の組成物で処理されていない対応する表面と比較して、本発明の組成物で処理した表面上に付着及び/又は存在及び/又は増殖し得る生物体及び生きていないもの量の低減をいう。
【0022】
本明細書では、用語「架橋酵素結晶」(CLEC)は、まず、結晶化され、続いて、適切な多官能性架橋剤と架橋された酵素をいう。
【0023】
本明細書では、用語「架橋酵素凝集物」(CLEA)は、まず、水溶液から沈殿され、酵素分子の物理的な凝集物を得て、続いて、適切な多官能性架橋剤と架橋された酵素をいう。酵素を無機塩類又は有機溶媒を使用して、例えば硫酸アンモニウム又はポリエチレングリコールを使用して沈殿してよい。
【0024】
組成物
好ましくは、組成物は架橋酵素結晶を含む。好ましくは、組成物は複数の架橋酵素結晶を含む。好ましくは、架橋酵素結晶は同じものである。さらなる態様においては、架橋酵素結晶が少なくとも2つの異なるタイプの酵素結晶を含み、各タイプの酵素結晶は異なる酵素を有する。
【0025】
好ましくは、組成物は架橋酵素凝集物を含む。好ましくは、組成物は複数の架橋酵素凝集物を含む。好ましくは、架橋酵素凝集物は同じものである。さらなる態様においては、架橋酵素凝集物が少なくとも2つの異なるタイプの酵素凝集物を含み、各タイプの酵素凝集物が異なる酵素を含む。
【0026】
好ましくは、組成物は油を基材とした塗料である。好ましくは、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は油を基材とした塗料に添加する前に乾燥される。好ましくは、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は凍結乾燥又はスプレー乾燥される。
【0027】
表面コーティング物質
任意の適切な表面コーティング物質は、本発明の組成物及び/又はコーティングに組み入れられてよい。
【0028】
表面コーティング物質が、溶剤を基材とした系におけるポリ塩化ビニル樹脂、溶剤を基材とした系における塩化ゴム、溶剤を基材とした系又は水性系におけるアクリル樹脂及びメタクリル樹脂、水性の分散系又は溶剤を基材とした系として塩化ビニル‐酢酸ビニルコポリマー系、ポリビニルメチルエーテル、ブタジエン‐スチレンゴム、ブタジエン‐アクリロニトリルゴム及びブタジエン‐スチレン‐アクリロニトリルゴムのようなブタジエンコポリマー、アマニ油のような乾性油、アルキド樹脂、アスファルト、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、天然ロジン、ロジン誘導体、不均化ロジン、部分的重合化ロジン、水素化ロジン、ガムロジン、不均化ガムロジン、非水分散型バインダー系、シリル化アクリレートバインダー系、金属アクリレートバインダー系、誘導体及びそれらの混合物から選択される成分を含む。
【0029】
好ましくは、表面コーティング物質はバインダーを含む。好ましくは、バインダーは(天然)ロジン、ロジン誘導体、不均化ロジン、部分的重合化ロジン、水素化ロジン、ガムロジン、不均化ガムロジン、アクリル樹脂、ポリビニルメチルエーテル、酢酸ビニル−塩化ビニル−エチレン ターポリマー、非水分散型バインダー系、シリル化アクリレートバインダー系及び金属アクリレートバインダー系から選択される。そのようなバインダーは、海洋目的に使用される防汚組成物に特に関心がある。
【0030】
非水分散型バインダー系(system)
「非水分散型樹脂」及び同様の表現は、高分子量成分(「シェル成分」)を用いて低い極性溶剤中の非水溶性液体基材へ高い極性、高分子量樹脂の粒状成分(「コア成分」)を安定的に分散させることにより得られる樹脂を含むシェル‐コア構造を意味する。
【0031】
非水分散型樹脂は、重合性エチレン系不飽和モノマーを炭化水素溶剤中溶解又は膨張するポリマーから作られるシェル成分(分散安定化剤)存在下、炭化水素溶剤中、通常の方法に従って分散重合処理される方法によって調製されてよい。ここで、重合性エチレン系不飽和モノマーは、炭化水素溶剤に可溶性であり、重合して炭化水素溶剤に不溶性であるポリマー(コア成分)を形成する。
【0032】
使用する非水分散型樹脂はそれ自身知られた樹脂でよく、又は、それは既知の樹脂のように生産することができる。そのような非水分散型樹脂剤及びそれらの調製方法は、例えばUS3,607,821、US4,147,688、US4,493,914、US4,960,828、日本特許公報29,551/1973番及び日本公開特許出願177,068/1982番に記載される。特に、非水分散型樹脂を構成するシェル成分として、例えばUS4,960,828(日本公開特許出願43374/1989番)に記載される低い極性の溶剤に溶解する様々な高分子性物質を使用することができる。
【0033】
最終のペイント塗料の防汚性の態様から、アクリル樹脂又はビニル樹脂のようなシェル成分を使用してよい。
【0034】
コア成分として、一般に、高い極性を有するエチレン系不飽和モノマーのコポリマーを使用してよい。
【0035】
非水分散型樹脂はそれ自身知られた方法によって形成することができる。その例は、コア成分及びシェル成分があらかじめブロック共重合又はグラフト共重合によって形成され、それから、それらは低い極性の溶剤中で混合され、もし必要ならば、反応させ、非水分散型(日本特許公報29,551/1973を参照願いたい。)を形成する方法、及び高い極性基を少なくとも一つ有するエチレン系不飽和モノマーが、そのエチレン系不飽和モノマーを溶解するがそこから形成されたポリマー(コア成分)を溶解しない溶剤中、この溶剤中に溶解するか、安定に分散する分散安定剤の存在下、共重合し、もし必要ならば、得られたコポリマーをさらにこの分散安定剤と反応させ、最終の非水分散型をえる方法(米国特許第3,607,821、日本特許公報48,566/1982番、日本公開特許出願177,068/1982番、270,972/2001番、40,010/2001番及び37,971/2002を参照願いたい)である。後者の方法では、分散安定剤は、分子に低い極性中溶解する成分及び分散される樹脂に親和性を有する成分を含んでいる又は、低い極性溶剤に溶ける特定の組成物の分散安定剤が、シェル成分として存在し、コア成分として分散される成分がモノマーの共重合によって形成される。
【0036】
本発明において使用されるシェル‐コア構造の非水分散型樹脂では、少なくともコア成分が、遊離酸性基又は海水での加水分解により酸性基に変換可能な遊離酸性基及びシリルエステル基を有することは重要である。好ましくは、コアポリマーのモノマーの5−75wt.%、好ましくは5−60wt.%、好ましくは7−50wt.%が、遊離酸性基を保持すべきである。シリルエステル基は、海水中の加水分解の後、影響力を有するのみである一方、遊離酸性基は、ペイント調合物の特性に直接影響を有するので、シリルエステルモノマーは、コア成分のモノマーの3wt.%以下であることが重要である。典型的には、コア成分のモノマーの1wt.%以下がシリルエステルモノマーであり、最も多くの場合、シリルエステル基はコア成分の中に存在しない。
【0037】
シリルエステルモノマーの例は、アクリル酸又はメタクリル酸のシリルエステルである。
【0038】
必要であれば、遊離酸性基又はシリルエステル基のごく一部がシェル成分に含まれてよい。しかしながら、シェル成分のモノマーの3wt.%未満が遊離酸性基又はシリルエステル基であると考えられる。
【0039】
用語「遊離酸性基」は、酸性形態の酸性基であることを意図する。適切な対イオンが組成物又は環境の中にある場合、そのような酸性基が塩の形態に一時的に存在してよいことは理解されるに違いない。説明に役立つ例として、遊離酸性基が塩水に露出される場合、若干のそのような基がナトリウム塩の形態で存在することがあり得る。
【0040】
従って、好ましくは、非水分散型樹脂は15−400mgKOH/gの樹脂酸価、好ましくは15〜300mgKOH/g、好ましくは18〜300mgKOH/gを有する。非水分散型樹脂の総酸価が15mgKOH/g未満である場合、ペイント塗料の研磨速度はとても遅くなり得、防汚性がしばしば不十分になる。他方では、総酸価が400mgKOH/g以上である場合、研磨速度は、とても速くなり、水抵抗性(海水中のペイン塗料の耐久性)の課題が、問題となり得る。(コア成分及び/又はシェル成分が、前駆体酸性基を含む場合、樹脂酸価は、前駆体酸性基が加水分解によって酸性基に変換された後与えられた樹脂酸価である。)。本明細書において用いられる「樹脂酸価」は、1gの樹脂(固形分)を中和するために消費されたKOHの量(mg)をいい、樹脂(固形分)の酸性基(前駆体酸性基の場合、加水分解により形成される酸性基の含有量)の含有量を示す。
【0041】
酸性基及び/又は前駆体酸性基の含有量が樹脂酸価として、非水分散型樹脂の総樹脂酸価の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%になるように酸性基及び/又は前駆体酸性基がコア成分に含まれることが望ましい。
【0042】
非水分散型樹脂のコア成分中の酸価が、非水分散型樹脂の総酸価値の80%未満である場合、つまり、シェル成分の酸価が総酸価値の20%以上ある場合、水抵抗性及び耐久性に関して上記に記載されたような潜在的問題がありうる。更に、コーティング組成物が遊離金属イオンを含む場合、シェル成分の酸価が総酸価の20%以上ある場合、ゲル化に関する問題が生じうる。
【0043】
通常、シェル成分が疎水性であることが好ましいといわれる。
【0044】
通常、非水分散型樹脂中のシェル成分に対するコア成分の乾燥重量比は90/10から10/90、好ましくは80/20から25/75、好ましくは60/40から25/75の範囲の中にあるが、特に限定されない。
【0045】
更に、非水分散型樹脂の乾燥物質は、通常、コーティング組成物の含水重量に基づき2−30%、好ましくは4−25%、好ましくは、5−25%、好ましくは、5−20%の範囲を構成されると考えられる。
【0046】
バインダーになる非水分散型樹脂を分散させるための溶剤として、塗料に一般に使用される様々な有機溶媒は特に制限されずに使用することができる。
【0047】
非水分散型樹脂塗料組成物の成分を溶解する又は分散する溶剤の例は、
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール及びベンジルアルコールのようなアルコール類、
エタノール/水混合物のようなアルコール/水混合物類、
ホワイトスピリット、シクロヘキサン、トルエン、キシレン及びナフサ溶剤のような脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類及び芳香族炭化水素類、
メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、ジアセトンアルコール及びシクロヘキサノンのようなケトン類、
2−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチルエーテル及びブチルジグリコールのようなエーテルアルコール類、
酢酸エチル、酢酸プロピル、メトキシプロピルアセテート、n−ブチルアセテート及び2−エトキシエチルアセテートのようなエステル類、
塩化メチレン、テトラクロロエタン及びトリクロロエチレンのような塩素化炭化水素類、及びそれらの混合物である。
【0048】
有用な溶剤は、特に炭化水素型溶剤であり、脂肪族溶剤、脂環式溶剤及び芳香族溶剤を含む。本発明では、脂肪族炭化水素溶剤及び/又は脂環式炭化水素溶剤を使用することは好ましい。又は、そのような溶剤を多量に使用することは好ましい。
【0049】
適切な脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤は例えば、n‐ヘキサン、イソ‐ヘキサン、n−ヘプタン、n‐オクタン、イソオクタン、n−デカン、n−ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びシクロヘプタンを含む。商品は例えば、ミネラルスピリットec、vm&pナフサ及びshellzole 72(シェル・ケミカル Co.製)、ナフサ3番、ナフサ5番、ナフサ6番及び溶剤7番(エクソン・ケミカル Co.製)、ip溶剤、1016、ip溶剤1620及びip溶剤2835(出光石油化学co.、ltd製)、及びpengazole an−45及びpengazole 3040(モービル石油 Co.製)を含む。
【0050】
さらに、芳香族溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びデカリンを含む。商品は例えば、Solvesso 100及びSolvesso 150(エクソン・ケミカル Co.製)、及びSwazole(丸善石油会社製)を含む。
【0051】
これらの炭化水素型溶剤を単独で又はそれらの2つ以上の混合物として組み合わせて使用してよい。
【0052】
シリル化アクリレートバインダーシステム系(system)
さらなる態様においては、コーティング組成物中で使用されるコポリマーが、一般式Iの末端基の少なくとも1つを有する側鎖を少なくとも1つ含む:
【化1】

ここでnは1以上の整数である。
【0053】
nが1、2、3又は4以上の整数である場合、これらの場合において、nが約5,000までであることが好ましく、好ましくは、nは1から50の整数であること、好ましくは、nは2から15の整数である。
【0054】
Xは、
【化2】

から選択される。
【0055】
−Rは、C1−20−アルキル、C1−20−アルコキシ、フェニル、任意に置換されたフェニル、フェノキシ及び任意に置換されたフェノキシからなる群から選択される各々独立した基である。上記の式Iに関して、一般的にアルキル及びアルコキシ基の各々が約5つまでの炭素原子(C1−5−アルキル)を有することは好ましい。置換されたフェニル基及びフェノキシ基の置換基の説明に役立つ例は、ハロゲン、C1−5−アルキル、C1−5−アルコキシ、又はC1−10−アルキルカルボニルを含む。上記に示すように、R−Rは同じ基又は異なる基でよい。
【0056】
上記一般式Iの末端基を含むモノマーは、EP 0 297 505 B1に記載のように合成してよく、つまり、例えばモノマーは縮合により合成してよく、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はマレイン酸モノエステルをその分子にR−Rを有するオルガノシリル化合物と脱水素縮合してよい。例えば、前記オルガノシリル化合物は、1つの末端に2置換されたモノヒドロキシシラン基、3置換モノヒドロキシシラン基、一つの末端に、ヒドロキシメチル基又はクロロメチル基のようなハロゲンメチル基を有するオルガノシロキサン、又は3置換されたシランである。
【0057】
そのようなモノマーは、(本発明によるコーティング組成物中で使用されるコポリマーを得るために)ビニル重合性モノマーAと共重合してよい。適切なビニル重合性モノマーの例は、
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート及びメトキシエチルメタクリレートのようなメタクリル酸エステル、
エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2エチルヘキシルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレートのようなアクリル酸エステル、
マレイン酸ジメチル及びマレイン酸ジエチルのようなマレイン酸エステル、
フマル酸ジメチル及びフマル酸ジエチルのようなフマル酸エステル、
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、アクリル酸、イソボルニルメタクリル酸塩及びマレイン酸
を含む。
【0058】
これらのビニル重合性モノマー(A)は、得られるコポリマーに所望の特性を与える成分を修飾するように作用する。また、これらのポリマーは、一般式II及びIII(下記)の末端基を含むモノマーから構成されたホモポリマーより高い分子量を有するポリマーを得る目的で有用である。ビニル重合性モノマーの量は、得られるコポリマーの全重量の95のwt.%以下、好ましくは90のwt.%以下である。従って、上記一般式Iの末端基を含むモノマーの量は、少なくとも5wt.%、特に、少なくとも10のwt.%である。
【0059】
一般式I(上記に示される)の少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つの側鎖を含むコポリマーは、一般式Iの末端基を含む少なくとも1つのモノマーをルーチン手順に従って適切な(ビニル)重合開始剤の存在下、上記ビニル重合性モノマー(A)の1以上と重合することにより形成してよい。重合の方法は溶液重合、バルク重合、エマルション重合、サスペンション重合、陰イオン重合及び配位重合を含む。適切なビニル重合開始剤の例は、アゾビスイソブチロニトリル及びトリフェニルメチルアゾベンゼンのようなアゾ化合物、並びに過酸化ベンゾイル及びジ−tert−ブチルペルオキシドのような過酸化物である。
【0060】
好ましくは、上記に記載された方法によって調製されたコポリマーは、1,000−1,500,000の範囲に重量平均分子量を有し、例えば、5,000−1,000,000の範囲の中、5,000−500,000の範囲の中、5,000−250,000の範囲の中、又は5,000−100,000の範囲の中のように5,000−1,500,000の範囲の中で重量平均分子量を有する。コポリマーの重量平均分子量が低すぎる場合、硬質で、均一な、かつ耐久性のあるフィルムを形成することは難しい。他方では、コポリマーの重量平均分子量が高すぎる場合、それはワニスを高度に粘着性にする。そのような高粘度ワニスはコーティング組成物の調合物用の溶剤で薄くすべきである。従って、コーティング組成物の樹脂固形分が低減し、1回の適用では薄い乾燥塗膜のみが形成される。これは、適切な乾燥塗膜厚さを得るために、コーティング組成物を何回か適用することが必要であり、不便である。
【0061】
求められるポリマーの重量平均分子量を決定方法は、多くの異なる方法が当業者に知られるが、WO 97/44401の34ページに記載されたGPC方法に従って重量平均分子量が決定されることが望ましい。
【0062】
別の態様では、コーティング組成物中で使用されるコポリマーは、下記一般式IIの少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つの側鎖を含む。
【化3】

ここで、X、R、R、及びRは一般式Iで記載される。
【0063】
一般式II(上記に示すように)の末端基を有するモノマーの例は、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸(好ましくは1−6の炭素原子を有するモノアルキルエステルの形式で)又はフマル酸(好ましくは1−6の炭素原子を有するモノアルキエステルの形式で)に由来するモノマーのような酸官能性ビニル重合性モノマーである。
【0064】
上記の式I又はIIの中で示されたトリオルガノシリル(triorganosilyl)基、つまり―Si(R)(R)(R)基)に関して、R、R及びRは、C1−20−アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル及び置換されたシクロヘキシルのようなシクロアルキル)、アリール基(例えばフェニル及びナフチル)又は置換されたアリール基(例えば、置換されたフェニル及び置換されたナフチル)など、同じものでも異なるものでもよい。置換基の例は、アリールハロゲン、C1−18−アルキル、C1−10−アシル、スルホニル、ニトロ又はアミノを含む。
【0065】
従って、一般式I又はIIの中で示される、適切なトリオルガノシリル基(つまり―Si(R)(R)(R)基)の具体的な例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ−n−プロピルシリル、トリ−n−ブチルシリル、トリ−イソ−プロピルシリル、トリ−n−ペンチルシリル、トリ−n−ヘキシルシリル、トリ−n−オクチルシリル、トリ−n−ドデシルシリル、トリフェニルシリル、トリ−p−メチルフェニルシリル、トリベンジルシリル、トリ−2−メチルイソプロピルシリル、トリ−tert−ブチルシリル、エチルジメチルシリル、n−ブチルジメチルシリル、ジ−イソ−プロピル−n−ブチルシリル、n−オクチル−ジ−n−ブチルシリル、ジ−イソ−プロピルオクタデシルシリル、ジシクロヘキシルフェニルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、ドデシルジフェニルシリル及びジフェニルメチルシリルを含む。
【0066】
一般式I又はIIの少なくとも1つの末端基を有する適切なメタクリル酸誘導モノマーの具体的な例は、トリメチルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリエチルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリ−n−プロピルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリイソプロピルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリ−n−ブチルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリイソブチルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリ−tert−ブチルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリ‐n−アミルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリ−n−ヘキシルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリ−n−オクチルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリ−n−ドデシルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリフェニルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリ−p−メチルフェニルシリル(メタクリレート)アクリレート、トリベンジルシリル(メタクリレート)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタクリレート)アクリレート、n−ブチルジメチルシリル(メタクリレート)アクリレート、ジイソプロピル−n−ブチルシリル(メタクリレート)アクリレート、n−オクチルジ−n−ブチルシリル(メタクリレート)アクリレート、ジイソプロピルステアリルシリル(メタクリレート)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタクリレート)アクリレート、t−ブチルジフェニルシリル(メタクリレート)アクリレート及びラウリルジフェニルシリル(メタクリレート)アクリレートを含む。
【0067】
一般式I又はIIの少なくとも1つの末端基を有する適切なマレイン酸誘導及びフマル酸誘導モノマーの具体的な例は、トリイソプロピルシリルメチルマレエート、トリイソプロピルシリルアミルマレエート、トリ−n−ブチルシリルn−ブチルマレエート、tert−ブチルジフェニルシリルメチルマレエート、t−ブチルジフェニルシリルn−ブチルマレエート、トリイソプロピルシリルメチルフマラート、トリイソプロピルシリルアミルフマラート、トリ−n−ブチルシリルn−ブチルフマラート、tert−ブチルジフェニルシリルメチルフマラート、及びtert−ブチルジフェニルシリルn−ブチルフマラートを含む。
【0068】
別の態様では、コーティング組成物中で使用されるコポリマーは、一般式IIIの第二のモノマーBとともに一般式II(上記に議論されたように)の末端基を有するモノマー単位を含む。

Y-(CH(RA)-CH(RB)-O)p-Z (III)

ここで、ZはC1−20−アルキル基又はアリール基であり、
Yは、アクリロイルオキシ(acryloyloxy)基、メタクリロイルオキシ(methacryloyloxy)基、マレイノイルオキシ(maleinoyloxy)基又はフマロイルオキシ(fumaroyloxy)基であり、
とRは、水素、C1−20−アルキル及びアリールから成る群から独立して選択され、
pは1から25の整数である。
【0069】
p>2の場合、R及びRは、好ましくは水素又はCHである、つまり、p>2の場合、好ましくは、モノマーBは、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール由来である。
【0070】
p=1ならば、C1−20−アルキル、又はアリールなどR及びRがより大きな基であるモノマーを意図する。
【0071】
式IIIの中で示すように、モノマーBは、その分子の中で、不飽和基(Y)及びアルコキシグリコール又はアリールオキシポリエチレングリコールとして、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基(好ましくは、モノ−C1−6−アルキルエステルの形式で)又はフマロイルオキシ基(好ましくは、モノ−C1‐6つのアルキルエステルの形式で)を有する。アルコキシグリコール基又はアリールオキシポリエチレングリコール基において、ポリエチレングリコールの重合(p)の程度は1〜25である。
【0072】
アルキル又はアリール基(Z)の例は、C1−12−アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル及び置換されたシクロヘキシルのようなシクロアルキル)、アリール(例えばフェニル及びナフチル)及び置換されたアリール(例えば置換されたフェニル及び置換されたナフチル)を含む。アリール用置換基の例は、ハロゲン、C1−18−アルキル基、C1−10−アルキルカルボニル、ニトロ又はアミノを含む。
【0073】
分子中に(メタクリロイルオキシ)アクリロイルオキシ基を有するモノマーBの具体的な例は、メトキシエチル(メタクリレート)アクリレート及びエトキシエチル(メタクリレート)アクリレート、プロポキシエチル(メタクリレート)アクリレート、ブトキシエチル(メタクリレート)アクリレート、ヘキソキシエチル(メタクリレート)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタクリレート)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタクリレート)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタクリレート)アクリレート、及びエトキシトリエチレングリコール(メタクリレート)アクリレートを含む。
【0074】
分子中にマレイノイルオキシ基又はフマロイルオキシ基を有するモノマーBの具体的な例は、メトキシエチルn−ブチルマレエート、エトキシジエチレングリコールメチルマレエート、エトキシトリエチレングリコールメチルマレエート、プロポキシジエチレングリコールメチルマレエート、ブトキシエチルメチルマレエート、ヘキソキシエチルメチルマレエート、メトキシエチルn−ブチルフマラート、エトキシジエチレングリコールメチルフマラート、エトキシトリエチレングリコールメチルフマラート、プロポキシジエチレングリコールメチルフマラート、ブトキシエチルメチルフマラート及びヘキソキシエチルメチルフマラートを含む。
【0075】
当業者によって理解されるように、他のビニルモノマーは、一般式II(上記に示すように)の末端基を有するモノマー単位を含んで得られるコポリマーや、式III(上記に示すように)の第2のモノマーBと組み合わせて一般式II(上記に示すように)の末端基を有するモノマー単位を含んで得られるコポリマーに組み入れられてよい。
【0076】
前述のモノマーと共重合する他のモノマーに関して、上記に議論されたビニル重合性モノマー(A)のような様々なビニルモノマーを使用してよい。
【0077】
モノマー混合物では、一般式IIの末端基を有するモノマー、モノマーB及びそれらと共重合する他のモノマー(例えばモノマーA)の割合は、コーティング組成物の使用に依存して、適切に決定されてよい。しかしながら、一般式IIの末端基を有するモノマーの割合が、一般的に、モノマーの全重量に基づいて、1−95wt.%、モノマーBの割合は、1−95wt.%及びそれらと共重合する他のモノマーの割合は、0−95wt.%が望ましい。
【0078】
従って、一般式IIの末端基を有するモノマー単位及びモノマー単位B(及び任意にモノマーA)の組合せを含むコポリマーは、ポリマー化学において当業者に知られるだろう通常の方法で、溶液重合、バルク重合、エマルション重合及びサスペンション重合のような様々な方法のいずれかで、ビニル重合開始剤存在下そのようなモノマー混合物を重合することにより得ることができる。しかしながら、溶液重合方法又はバルク重合方法を用いることが好ましい。
【0079】
ビニル重合開始剤の例は、アゾビスイソブチロニトリル及びトリフェニルメチルアゾベンゼンのようなアゾ化合物、並びに、過酸化ベンゾイル、ジ‐tert‐ブチルペルオキシド、tert‐ブチルペルオキシベンゾエート及びtert‐ブチルペルオキシイソプロピルカルボネートのような過酸化物を含む。
【0080】
かくして、得られたコポリマーの分子量は、重量平均分子量において、1,000−150,000の範囲が望ましく、好ましくは3,000−100,000の範囲、好ましくは5,000−100,000の範囲である。分子量が低すぎると、正常な塗膜を形成するのが困難になり、一方、分子量が高すぎると、1回のコーティング操作では薄い塗膜を与えるだけという不利益をもたらし、つまり、コーティング操作を何度も行なわれなければならない。ポリマー溶液の固形分を5−90wt.%の範囲に、好ましくは15−85wt.%の範囲に調整することが好ましい。
【0081】
さらなる態様においては、コーティング組成物の中で使用されるコポリマーが、一般式IVの第二のモノマーCと組み合わせて一般式II(上記に議論されたように)の末端基を有するモノマー単位を含む
【化4】

ここで、Yは、アクリロイルオキシ(acryloyloxy)基、メタクリロイルオキシ(methacryloyloxy)基、マレイノイルオキシ(maleinoyloxy)基又はフマロイルオキシ(fumaroyloxy)基であり、
及びRの両者は、C1−12−アルキルである。
【0082】
式IVの中で示されるように、モノマーCは、不飽和基(Y)及びヘミ‐アセタール基として、その分子の中にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、マレイノイルオキシ基(好ましくはモノ−C1−6−アルキルエステルの形式で)、又はフマロイルオキシ基(好ましくはモノ−C1−6−アルキルエステルの形式で)を有する。
【0083】
ヘミ‐アセタール基では、Rの例は、C1−12−アルキル、好ましくはC1−4−アルキル(例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、イソプロピル、イソブチル及びtert-ブチル)を含み、Rの例は、C1−12−アルキル、好ましくはC1−8−アルキル(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びtert-ブチル)及び置換又は非置換のC5−8−シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)を含む。
【0084】
モノマーCは、アルキルビニルエーテル(例えばエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル及び2‐エチルヘキシルビニルエーテル)、又はシクロアルキルビニルエーテル(例えばシクロヘキシルビニルエーテル)とアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸(又はそのモノエステル)及びフマル酸(又はそのモノエステル)から選択されるカルボキシ基含有ビニルモノマーの通常の付加反応によって調製することができる。
【0085】
当業者によって理解されるように、他のビニルモノマーも、式IV(上記に示すように)の第2のモノマーCとともに一般式II(上記に示すように)の末端基を有するモノマー単位を含む得られるコポリマーに組み入れられてよい。
【0086】
前述のモノマーと共重合する他のモノマーに関して、上記に議論されたビニル重合性モノマー(A)のような様々なビニルモノマーを使用してよい。
【0087】
モノマー混合物では、一般式IIの末端基を有するモノマー、モノマーC及びそれらと共重合する他のモノマー(例えばモノマーA)の割合は、コーティング組成物の使用に依存して、適切に決定されてよい。しかしながら、一般的に、一般式IIの末端基を有するモノマーの割合が、モノマーの全重量に基づいて、1−95wt.%(好ましくは1−80wt.%)、モノマーCの割合は、1−95wt.%(好ましくは1−80wt.%)及びそれらと共重合する他のモノマーの割合は、98wt.%以下が望ましい。
【0088】
従って、一般式IIの末端基を有するモノマー単位及びモノマー単位C(及び任意にモノマーA)の組合せを含むコポリマーは、ポリマー化学分野において当業者に知られるだろう通常の方法で、溶液重合、バルク重合、エマルション重合及びサスペンション重合のような様々な方法のいずれかで、ビニル重合開始剤存在下そのようなモノマー混合物を重合することにより得ることができる。しかしながら、溶液重合方法又はバルク重合方法を用いることが好ましい。
【0089】
ビニル重合開始剤の例は、アゾビスイソブチロニトリル及びトリフェニルメチルアゾベンゼンのようなアゾ化合物、並びに、過酸化ベンゾイル、ジ‐tert‐ブチルペルオキシド、tert‐ブチルペルオキシベンゾエート及びtert‐ブチルペルオキシイソプロピルカルボネートのような過酸化物を含む。
【0090】
このようにして、得られたコポリマーの分子量は、重量平均分子量において、1,000−150,000の範囲が望ましく、好ましくは3,000−100,000の範囲、好ましくは5,000−100,000の範囲である。分子量がとても低すぎると、正常な塗膜を形成するのが困難になり、一方、分子量が高すぎると、1回のコーティング操作では薄い塗膜しか与えないという不利益をもたらし、従って、コーティング操作を何度も行なわれなければならない。
【0091】
バインダーコポリマーの化学的性質が上述のようであることが好ましいけれども、少し異なる構造を有する他のシリル含有コポリマーも本明細書に記載の目的に有用であり得る。従って、上記の化学的性質と比較して、少し異なる構造を有するバインダーコポリマーの例は、式Vの少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つの側鎖を含むバインダーコポリマーである。
【化5】

ここで、X、n、R、R、R、R及びRは一般式Iに関連して上記に記載の通りである。
【0092】
金属アクリレートバインダー系(system)
別の様相では、本発明によるコーティング組成物中で使用されるコポリマーは、一般式VIの少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つの側鎖を含む。

-X-O-M-(L)n (VI)
【0093】
ここで、Xは、
【化6】

から選択される。
【0094】
ここで、nは、一般式Iに関して上記に記載の通りである。
【0095】
Mは金属である。2以上の原子価を有する任意の金属である金属(M)を使用してよい。適切な金属の具体的な例は、Ca、Mg、Zn、Cu、Ba、Te、Pb、Fe、Co、Ni、Bi、Si、Ti、Mn、Al及びSnから選択されてよい。好ましい例は、Co、Ni、Cu、Zn、Mn及びTeであり、特に、Cu及びZnである。金属を含むコポリマーを合成する場合、金属はその酸化物、水酸化物又は塩化物の形態で使用されてよい。しかしながら、金属は、他のハロゲン化物(そのフッ化物、ヨウ化物又は臭化物塩など)の形態又はその硫化物又は炭酸塩の形態で使用されてもよい。
【0096】
Lはリガンドである。
【0097】
一般式I又はII(上記に示すように)の末端基を有するモノマーの例は、酸官能性ビニル重合性モノマーであり、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、p−スチレンスルホン酸、2−メチル−2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、メタクリルアシッドホスホキシプロピル(methacryl acid phosphoxy propyl)、メタクリル3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピル(methacryl 3−chloro−2−acid phosphoxy propyl)、メタクリルアシッドホスホキシエチル(methacryl acid phosphoxy ethyl)、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、モノアルキルイタコネート(例えばメチル、エチル、ブチル、2‐エチルヘキシル)、モノアルキルマレエート(例えばメチル、エチル、ブチル、2‐エチルヘキシル)重合性不飽和モノマーを含む水酸基を有する酸無水物のハーフエステル(例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレートを有する無水コハク酸、無水マレイン酸又は無水フタル酸のハーフエステル)である。
【0098】
当業者によって理解されるとともに、及び詳細に下記に議論されるように、前述のモノマーは1つ以上のビニル重合性モノマーと共重合してもよい(本発明によるコーティング組成物の中で使用されるコポリマーを得るために)。そのようなビニル重合性モノマーの例は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、2‐エチルヘキシルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルアセテート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジメチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−2−エチル・ヘキシル・イタコネート、マレイン酸ジメチル、ジ(2‐エチルヘキシル)マレエート、エチレン、プロピレン及び塩化ビニルある。
【0099】
リガンド(L)に関して、個々のリガンドがそれぞれ好ましくは、
【化7】

からなる群から選択される。
ここで、Rは、1価の有機残基である。
【0100】
好ましくは、Rは、
【化8】

からなる群から選択される。
ここでRは、水素又は1から20の炭素原子を有する炭化水素基であり、R及びRは、1から12の炭素原子を有する炭化水素基を各々が独立して表わす。
【0101】
は1から4の炭素原子を有する炭化水素基であり、Rは、アビエチン酸、パルストリック酸(pallustric acid)、ネオアビエチン酸、レボピマール酸、デヒドロアビエチン酸(dehydroabietic acid)、ピマール酸、イソピマール酸(isopimaric acid)、サンダラコピマル酸(sandaracopimaric acid)、及びΔ8、9−イソピマール酸のような5から20の炭素原子を有する環式炭化水素基である。
【0102】
リガンド(L)として用いてよい化合物の例は次のとおりである。
(1)下記の基を含む化合物
【化9】

例えば、レブリン酸のような脂肪族系酸、
ナフテン酸、ショールムーグリン酸、ヒドノカルプシック酸(hydnocarpusic acid)、ネオアビエチン酸(neo abietic acid)、レボピマール酸(levo pimaric acid)、パルストリン酸、2−メチル−ビシクロ−2,2,1−ヘプタン−2−カルボン酸のような脂環式酸、
サリチル酸、クレソチン酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、p−オキシ安息香酸のような芳香族カルボン酸、
モノクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸のようなハロゲンを含む脂肪族系酸、
2、4、5つのトリクロロフェノキシ酢酸、2、4‐ジクロロフェノキシ酢酸、3、5‐ジクロロ安息香酸のようなハロゲンを含む芳香族酸、
キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ジニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸のような窒素を含む有機酸、
プルビン酸、ブルピン酸(vulpinic acid)のような、ラクトンカルボン酸、
ウラシル−4−カルボキシル酸、5つのフルオロウラシル−4−カルボキシル酸、ウラシル−5−カルボキシル酸のようなウラシル誘導体、
ペニシリンV、アンピシリン、ペニシリンBT、ペニシラン酸、ペニシリンG、ペニシリンOのようなペニシリン誘導カルボン酸、
リファマイシンB、ルセンソマイシン、サルコマイシン(Salcomycin)、クロラムフェニコール(chloroamphenicol)、バリオチン、トリパシジン(Trypacidine)、及び様々な合成脂肪酸。
【0103】
(2)下記の基を含む化合物
【化10】

例えば、ジメチルジチオカルバメート及び他のジチオカルバメート。
【0104】
(3)下記の基を含む化合物
【化11】

例えば1−ナフトール−4−スルホン酸、p−フェニルベンゼンスルホン酸、β−ナフタレンのスルホン酸及びキノリンスルホン酸のような硫黄を含む芳香族化合物。
【0105】
(4)下記に示す基を含む化合物のような基を含む化合物
【化12】

【0106】
(5)下記に示す基を含む化合物
【化13】

多様なチオカルボン酸の化合物など
【化14】

【0107】
(6)‐O‐又は‐OH基を含む化合物
例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、チモール、カルバコール(carvacol)、オイゲノール、イソオイゲノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、グアヤコール(guajacol)、ブチルスチルベン、(ジ)ニトロフェノール、ニトロクレゾール、サリチル酸メチル、サリチル酸ベンジル、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−及びペンタ−クロロフェノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クロロチモール、p−クロロ−o−シクロ−ヘキシルフェノール、p−クロロ−o−シクロペンチルフェノール、p−クロロ−o−n−ヘキシルフェノール、p−クロロ−o−ベンジルフェノール、p−クロロ−o−ベンジル−m−クレゾール及び他のフェノール、
β‐ナフトール、8−ヒドロキシキノリン。
【0108】
一般的に好ましくはないが、1つ以上又はすべてのリガンド(L)が―OH基であることもありえる。
【0109】
本発明によるコーティング組成物の中で使用されるコポリマーは、例えばEP 0 204の471 B1、EP 0 342 276のB1、EP 0 204 456 B1に記載されたように調製されよく、つまり、下記方法のうちの1つによって調製されてよい。
【0110】
末端部分で所望の有機酸金属エステル結合を有する重合性不飽和モノマーが、まず調製され、他の重合性不飽和モノマーと共同重合される方法。
【0111】
他の重合性不飽和モノマーと重合性不飽和有機酸モノマーの共重合によって得られるコポリマーを1価の有機酸及び金属酸化物、塩化物又は水酸化物と反応させる、あるいは1価のカルボキシル酸金属エステルとエステル交換反応させる方法。より具体的には、コポリマーは下記方法のうちどちらかで調製されてよい。
【0112】
(1)
(a)金属酸化物、水酸化物、硫化物又は塩化物、
(b)1価の有機酸又はそのアルカリ金属塩、及び、
(c)重合性不飽和有機酸又はそのアルカリ金属塩
の混合物を所望の金属エステル生成物の分解温度より低い温度で攪拌下で加熱し、アルカリ金属塩化物、水、1価の有機酸金属エステル;二官能基重合性不飽和有機酸金属塩など副産物を除き、重合性不飽和有機酸と1価の有機酸の間で精製した金属エステルを得る。
【0113】
前述の反応において、(a)、(b)及び(c)の化学量を使用することは、必ずしも必要なく、所望の生成物を得るために、当量比において、(a):(b):(c)=1:0.8−3:0.8−2で使用してよい。
【0114】
重合性不飽和有機酸及び1価の有機酸又は前記金属エステルと1価の有機金属エステルの混合物の間でこのように得られた金属エステルをその後、他の共重合性モノマーとホモ重合又は共重合させ、上記の式I又はIIに示すように少なくとも末端基を有する少なくとも1つの側鎖を有する所望のコポリマーを得る。
【0115】
(2)あるいは、
(d)側鎖に有機酸又はそのアルカリ金属塩を有するコポリマー、
(e)金属酸化物、水酸化物、硫化物又は、塩化物、及び
(f)1価の有機酸
の混合物を所望の金属エステルを含むコポリマーの分解温度より低い温度で攪拌下で加熱し、所望により、副産物を除去し、また、上記式I又はIIに示されるように少なくとも1つの末端基を有する少なくとも1つの側鎖を有するコポリマーを得る。
【0116】
この反応で使用される材料の比率に関して、当量比に換算して、(d):(e):(f)=1:0.8−1.5:0.8−2及びより好ましくは、1:1.0−1.2:1.0−1.5で用いることが望ましい。
【0117】
低沸点の1価の有機酸を選択し、反応を脱水より行う場合、1価の有機酸が水と一緒に蒸留され、金属結合がポリマー鎖間で形成されるという恐れがあり、それによって、生成物の粘性及びゲル化の増加を引き起こす。従って、特にこの場合では、上記に示すものより高い量の(f)を使用することが好ましい。
【0118】
(3)あるいは、所望の生成物は、側鎖にて有機酸(g)を有するコポリマーを所望の生成物の分解温度より高くない温度にて1価の有機酸金属エステル(h)と反応させ、それにより、使用される材料間のエステル交換反応をもたらすことにより調製してよい。
【0119】
この反応において、選択された1価の有機酸が低沸点(例えば、酢酸のように)を有する場合、金属エステル結合形成がポリマー鎖間で形成されるという恐れがあり、従って反応を注意深くコントロールしかつ進めるべきである。通常、材料(h)は、(g)の1当量当たり、0.3〜3当量、より好ましくは、0.4〜2.5当量の量で用いる。
【0120】
使用される重合性不飽和有機酸(c)の例は、メタクリル酸、アクリル酸、p−スチレンスルホン酸、2−メチル−2−アクリルアミドプロパンスルホン酸、メタクリルアシッドホスホキシプロピル(methacryl acid phosphoxy propyl)、メタクリル3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピル(methacryl 3−chloro−2−acid phosphoxy propyl)、メタクリルアシッドホスホキシエチル(methacryl acid phosphoxy ethyl)、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、モノアルキルイタコネート(例えばメチル、エチル、ブチル、2‐エチルヘキシル)、モノアルキルマレエート(例えばメチル、エチル、ブチル、2‐エチルヘキシル)重合性不飽和モノマーを含む水酸基を有する酸無水物のハーフエステル(例えば2−ヒドロキシエチル(メタクリレート)アクリレートを有する無水コハク酸、無水マレイン酸又は無水フタル酸のハーフエステル)を含む。
【0121】
1価の有機酸(b)に関して、任意の脂肪族、芳香族、脂環式、又はヘテロ環式の有機酸を使用してよい。そのような酸の代表例は次のとおりである。それは、
酢酸、プロピオン酸、レブリン酸安息香酸、サリチル酸、乳酸、3、5‐ジクロロ安息香酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ニトロ安息香酸、リノレン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、フルオロ酢酸、プルビン酸、アビエチン酸、メルカプトベンゾチアゾール、o−クレソチン酸、ナフトール−1−カルボン酸、p−フェニルベンゼンスルホン酸、p−オキシ安息香酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ナフテン酸、b−ナフタレンスルホン酸、ナフトール−1−スルホン酸、5−クロロ−α、α−ビス(3,5−ジクロロ−2−ヒドロキシフェニル)トルエンスルホン酸、p−フェニル安息香酸、p−トルエンスルホン酸、p−ベンゼンクロロスルホン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、リトコール酸、フェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ピバル酸、吉草酸及び様々な合成脂肪酸である。
【0122】
前述の他の重合性不飽和モノマーに関して、通常使用する任意のエチレン系不飽和モノマーを使用してよい。そのようなモノマーの例は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、2‐エチルヘキシルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルアセテート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジメチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジ−2−エチルヘキシルイタコネート、マレイン酸ジメチル、ジ(2‐エチルヘキシル)マレエート、エチレン、プロピレン及び塩化ビニルある。コモノマーのあるタイプは、アクリル又はメタクリルエステルであって、ここでアルコール残基がかさばった炭化水素基又はソフトセグメントを含み、例えば、4以上の炭素原子を有する分岐アルキルエステル又は6以上の原子を有するシクロアルキルエステル又は末端アルキルエーテル基を任意に有するポリアルキルエングリコールモノアクリレート又はモノメタクリレート又はカプロラクトンを有する2−ヒドロキシエチルアクリレート又はメタクリレート付加物、例えば、EP 0 779に304のA1に記載されるものである。
【0123】
所望により、ヒドロキシを含むモノマー、2−ヒドロキシ−エチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなども使用してよい。
【0124】
側鎖にて有機酸基を有するポリマー(d)及び(g)に関して、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、脂肪酸変性アルキド樹脂及び/又はエポキシ樹脂を有する有機酸である。
【0125】
得られるコポリマーにおいて、すべての有機酸側基が金属エステル結合を含む必要性が必ずしもないことが注目されるべきである。必要に応じて、有機酸側基のいくつかは遊離酸の形で未反応のままでよい。
【0126】
メタルを含むコポリマーの重量平均分子量は、一般的に1,000から150,000までの範囲、例えば、3,000から100,000までの範囲のような、好ましくは5,000から60,000までの範囲である。
【0127】
問題のポリマーの重量平均分子量を決定するための多くの異なる方法は、当業者に知られるが、WO 97/44401の34ページに記載されるGPC方法に従って重量平均分子量を決定することが好ましい。
【0128】
本発明の別の興味ある実施態様においては、コーティング組成物は、1:1のリガンド対金属配位比に少なくとも等しい有機リガンドの量をさらに含み、前記有機リガンドは、芳香族ニトロ化合物、ニトリル、尿素化合物、アルコール、フェノール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸及び有機硫黄化合物からなる群から選択され、それにより、イン シトゥ(in situ)で、上記に記載のコポリマーは、有機リガンドとポリマー錯体を形成する。
【0129】
かくて、上記に規定されたコポリマーがハイブリッド塩と考えられる場合、各金属原子への有機リガンドの配位によって、ハイブリッド塩のイオンの会合が、著しく遅れ、有機リガンドを含んでいない対応する溶液と比較して、溶液でのより低い粘性を有するだろう。更に、改善が金属イオンの徐放性及びフィルム消費速度の両方で見られてよい。別の重要な利点は、錯体ハイブリッド塩が従来の防汚剤及び酸化銅(I)、酸化亜鉛などの色素ともはや反応しない事実である。従って、本発明のコーティング組成物は従来の防汚剤及び色素と適合する。
【0130】
ハイブリッド塩の形成に有用な一塩基の有機酸の例は、
酢酸、プロピオン酸、ラク酸、ラウリン酸、ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、ナフテン酸、クロロ酢酸、フルオロ酢酸、アビエチン酸、フェノキシ酢酸、吉草酸、ジクロロフェノキシ酢酸、安息香酸、又はナフトエ酸などモノカルボン酸、及び
ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、又はp−フェニルベンゼンスルホン酸などモノスルホン酸を含む。
【0131】
重合体ハイブリッド塩を生成する好ましい方法は、日本特許公開 16809/1989番に記載されている。この方法によれば、ペンダント酸性基を含んでいるコポリマーを低沸点‐一塩基の有機酸及び高沸点‐一塩基の有機酸の金属塩で同時に反応させ、ポリマーペンダント酸性陰イオン及び高沸点‐一塩基酸性陰イオンの両方が、同じ金属陽イオンに結合するハイブリッド塩を形成する。例えば、ポリマー酸及びナフテン酸を有するハイブリッド銅塩を酢酸銅(II)とナフテン酸でポリマー酸を反応させることにより得てよい。
【0132】
このように生成されたポリマーハイブリッド塩は、イオンの会合により擬架橋形態をとり、従って、溶液での比較的高い粘度を有する。しかしながら、粘性は、本明細書に記載されるようなハイブリッド塩へさらなるリガンドを配位することより著しく減少してよい。また、防汚コーティングフィルムとして適用する場合、このように生成され得られるポリマー錯体は、さらに金属放出及びフィルム消費の両方で相対的に一定の速度を示す。
【0133】
この目的に用いる有機リガンドは、芳香族ニトロ化合物、尿素化合物、ニトリル、アルコール、フェノール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、及び有機硫黄化合物からなる群から選択される。有機リガンドは、単座配位子に制限されず、リガンド分子中に複数の同一又は異なる配位結合原子を含む多座配位子も含む。
【0134】
そのようなリガンドの具体的な例は、
ニトロベンゼンなどの芳香族ニトロ化合物、
イソフタロニトリルなどニトリル、
尿素、チオ尿素、N−(3,4−ジクロフェニル)−N’−メトキシ−N’−メチル尿素又はN−(3,4−ジクロロフェニル)−N)、N’−ジメチル尿素など尿素化合物
ブタノール、オクタノール又はゲラニオールなどアルコール、
ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ノニルフェノール又はBHTなどフェノール、
アセトアルデヒド又はプロピオンアルデヒドなどアルデヒド、
アセチルアセトン、アセトフェノン又は2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノンなどケトン、
酢酸、プロピオン酸、安息香酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸又はグリシンなどカルボン酸、及び
チオフェンとその誘導体、n−プロピルp−トルエンスルホン酸塩、メルカプトベンゾチアゾール、ジメチルジチオカルバミン酸塩又はベンゼンイソチオシアネートなど硫黄化合物
を含む。これらのリガンドのうちのいくつかは、従来の防汚塗料組成物中で防汚目的に使用されてもよい。
【0135】
ポリマーハイブリッド塩を錯体にするための有機リガンドの量は、1:1のリガンド対金属の配位比に少なくとも等しくなるべきである。最大量は、使用される特定金属の配位数を満たす、そのような量になるだろう。例えば、4の配位数を有する金属種を使用する場合、単座配位子の1又は2モルあるいは二座配位子の1モルが、金属原子に配位してよい。
【0136】
イン シトゥ(in situ)でポリマー錯体を形成するために、有機リガンドはポリマーハイブリッド塩の溶液又はワニスに組込まれる。もし食塩水の中で浸漬する時、塗膜がクラック又は水疱の発生のような悪影響を及ぼされなければ、過量の有機リガンドの存在を許容してよい。錯体コポリマーは、0.3から20wt.%まで、好ましくは0.5から15wt.%まで金属含有量を有してよい。
【0137】
そのようなさらなるバインダー成分の例は次のとおりである。
あまに油及びその誘導体、ひまし油及びその誘導体、ダイズ油及びその誘導体のような油、
飽和ポリエステル樹脂のような他のポリマーバインダー成分、
ポリ酢酸ビニル、ポリビニル・ブチレート、ポリ塩化ビニル−アセタート、ビニルアセテートのコポリマー及びビニルイソブチルエーテル、
塩化ビニル、
塩化ビニルとビニルイソブチルエーテルのコポリマー、
アルキド樹脂又は変性アルキド樹脂、
石油留分凝縮液のような炭化水素樹脂;
塩化ゴム、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンのような塩素化されたポリオレフィン、
スチレン/ブタジエンコポリマー、スチレン/メタクリレート及びスチレン/アクリレートコポリマーのようなスチレンコポリマー、
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、nブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート及びイソブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマーのようなアクリル樹脂、
ヒドロキシ−アクリレートコポリマー、
二量化したタル油脂肪酸のような二量化した脂肪酸に基づいたポリアミドのようなポリアミド樹脂、
環化されたゴム、
エポキシエステル、
エポキシウレタン、
ポリウレタン、
エポキシポリマー、
ヒドロキシ‐ポリエーテル樹脂、
ポリアミン樹脂、及び
それらのコポリマー等。
【0138】
他のポリマーバインダー成分の基が、参照によって本明細書に組込まれるWO 97/44401の中で一般的にかつ具体的に規定されたもののようなポリマーの可塑剤を含んでよいことが理解されるに違いない。
【0139】
そのようなさらなるバインダー成分の乾燥物質は、含水重量に基づき典型的に0−10wt.%である。
【0140】
多官能性架橋剤
好ましくは、多官能性架橋剤は、アルコール、アルデヒド、イミド、シアネート、イソシアネート及びそれらの混合物から選択される官能基の2つ以上を含む。
【0141】
典型的に、多官能性架橋剤は次の構造を含む。
A−L−B
ここでA及びBは本明細書に記載されるような官能基であり、Lはリンカー基である。
好ましい実施態様においては、AとBは同じである。好ましくは、リンカー基は、アルキレンとデキストランから選択される。アルキレン基は、直鎖[例えば−(CH−]又は分岐アルキル基[例えば―CHCH(CH)―CH―]でよく、10以下の炭素原子を含んでよい。好ましいアルキレン基は、6以下の炭素原子を含む。好ましくは、アルキル基は5以下の炭素原子を含む。より好ましくは、アルキル基は4以下の炭素原子を含む。好ましいアルキル基は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンである。
【0142】
好ましくは、多官能性架橋剤は、同じ官能基の2つ以上を含む。好ましくは、多官能性架橋剤は、アルコール、アルデヒド、イミド、シアネート、イソシアネートから選択される2以上の官能基を含む。
【0143】
好ましくは、多官能性架橋剤は、アルコール、アルデヒド及びイソシアネートから選択される2以上の官能基を含む。
【0144】
好ましくは、多官能性架橋剤は、グルタルアルデヒド、グリオキサール、デキストランポリアルデヒド、ジイソシアネート、2、3‐ペンタジオン、2、4‐ペンタジオン、2、4−ヘキサジオン、3、4‐ヘキサジオン、3−メチル−2,4−ペンタジオン、3−エチル−2、4−ペンタジオンポリアゼチジン(polyazetidine)及びそれらの混合物から選択される。
【0145】
好ましくは、多官能性架橋剤は、アルコールとアルデヒドから選択される2以上の官能基を含む。
【0146】
好ましくは、多官能性架橋剤は2以上のアルデヒド官能基を含む。
【0147】
好ましくは、多官能性架橋剤はグルタルアルデヒドである。好ましくは、多官能性架橋剤はキトサンである。
【0148】
架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物
架橋酵素結晶(また、CLECとしても知られている)又は架橋酵素凝集物(また、CLEAとしても知られている)は、多官能性架橋剤と架橋された酵素結晶又は酵素凝集物を含む。
【0149】
一般的に、CLEC及びCLEAの粒度はそれが塗料特性(言い換えると、磨き、なめらかさ)に妨害しないように十分に小さい。好ましくは、粒度は、75マイクロメーター未満であり、より好ましくは60マイクロメーター未満、より好ましくは40マイクロメーター未満、より好ましくは30マイクロメーター未満、最も好ましくは20マイクロメーター未満である。
【0150】
CLEC及びCLEAの粒度範囲は、好ましくは0.1マイクロメーターから75マイクロメーターまで、より好ましくは0.2マイクロメーターから60マイクロメーターまで、より好ましくは、0.5マイクロメーターから40マイクロメーターまで、より好ましくは、1.0マイクロメーターから30マイクロメーターまで、最も好ましくは2.0マイクロメーターから20マイクロメーターまでである。
【0151】
CLEC及びCLEAは、このサイズを達成するために粉砕されてよい。
【0152】
好ましくは、酵素は、ヒドロラーゼ、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、リアーゼ及びイソメラーゼから選択される。
【0153】
好ましくは、酵素は、プロテアーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)から選択される。
【0154】
好ましいCLEA及びCLECは、下記に記載される酵素タイプに属してよい。防汚活性を単独で有する酵素、又は基質に作用することにより防汚化合物を生産する酵素、又は防汚化合物を生産する共役反応の一部である酵素を選択することが好ましい。リスト1は、防汚効果があるか又は防汚化合物 (Kristensen et al 2008, Biotechnology Advances 26, 471−481)を生産すると示された又は仮定された酵素タイプのリストを提供する。
【0155】
【表1】

【0156】
好ましくは、酵素はリパーゼである。好ましくは、リパーゼは、カンジダ アンタルティカ(Candida antarctica)リパーゼ アイソフォームA(リパーゼ、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)、カンジダ アンタルティカ(Candida antarctica)リパーゼ アイソフォームB(リパーゼ、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)、カンジダ ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ(リパーゼ、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)、テルモミセス ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ(リパーゼ、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)及びリゾムコール ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ(リパーゼ、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)から選択される。
【0157】
これらのリパーゼの多くは架橋酵素凝集物(CLEA)として市販で入手可能である。好ましくは、CLEAは、リパーゼCLEAから選択され、特に好ましくは、カンジダ アンタルティカ(Candida antarctica)リパーゼ アイソフォームA(リパーゼ、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)由来CLEA、カンジダ アンタルティカ(Candida antarctica)リパーゼ アイソフォームB(リパーゼ、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)由来CLEA、カンジダ ルゴサ(Candida rugosa)リパーゼ(リパーゼ、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)由来CLEA、テルモミセス ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼ(リパーゼ、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)由来CLEA、又はリゾムコール ミエヘイ(Rhizomucor miehei)リパーゼ(リパーゼ、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)由来CLEAである。
【0158】
好ましくは、酵素はエステラーゼである。好ましくは、エステラーゼは、バシルス スブチリス(Bacillus subtilis)エステラーゼBS2(エステラーゼ、カルボン酸エステルヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)又はバシルス スブチリス(Bacillus subtilis)エステラーゼBS3(エステラーゼ、カルボン酸エステルヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)から選択される。
【0159】
また、好ましくは、CLEAは、エステラーゼCLEAであり、より好ましくは、バシルス スブチリス(Bacillus subtilis)エステラーゼBS2 CLEA(エステラーゼ、カルボン酸エステルヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)又はバシルス スブチリス(Bacillus subtilis)エステラーゼBS3 CLEA(エステラーゼ、カルボン酸エステルヒドロラーゼ、EC 3.1.1.3)である。
【0160】
多くのCLEAは、例えばCLEAテクノロジー(Julianalaan、デルフト(オランダ))から市販で入手可能である。
【0161】
好ましくは、酵素はプロテアーゼである。好ましくは、プロテアーゼはセリンプロテアーゼである。好ましくは、プロテアーゼはサブチリシンである。好ましくは、プロテアーゼは、アルカラーゼ(Alcalase)(サブチリシン、セリンエンドプロテアーゼEC 3.4.21.62)、サビナーゼ(Savinase)(サブチリシン、セリンエンドプロテアーゼEC 3.4.21.62)、エスペラーゼ(Esperase)(サブチリシン、セリンエンドプロテアーゼEC 3.4.21.62)、パパイン(システインプロテアーゼ、EC 3.4.22.2)、遺伝子組み換えのバクテリアのセリンエンドプロテアーゼ、バシルス スブチリス(Bacillus subtilis)の遺伝子組み換えの菌株由来セリンプロテアーゼ、バシルス リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来セリンプロテアーゼ(EC 3.4.21.62)及びマンナナーゼ(EC 3.2.1.78)から選択される。好ましくは、酵素は、バシルス スブチリス(B. subtilis)、バシルス レンツス(B. lentus)、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)及びバチルス クラウシ(B. clausii)から得られたもの又は得られうるものから選択されるセリンプロテアーゼである。より好ましくは、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)から得られた又は得られうるプロテアーゼである。
【0162】
好ましくは、CLEAは、プロテアーゼCLEAであり、より好ましくは、サブチリシンである。
【0163】
好ましくは、プロテアーゼCLEAは、Alcalase CLEA(サブチリシン、セリンエンドプロテアーゼ EC 3.4.21.62)、Savinase CLEA(サブチリシン、セリンエンドプロテアーゼ EC 3.4.21.62)、Esperase CLEA(サブチリシン、セリンエンドプロテアーゼ EC 3.4.21.62)又はパパインCLEA(システインプロテアーゼ、EC 3.4.22.2)から選択される。
【0164】
これらのプロテアーゼ生成物の多くはジェネンコー(Genencor)から市販で入手可能であり、例えば、プロペラーゼ(Properase) 1600L(遺伝子組み換えのバクテリアのセリンエンドプロテアーゼ)、プラフェクト(Purafect) 4000L(バシルス スブチリス(Bacillus subtilis)の遺伝子組み換えの菌株由来セリンプロテアーゼ)、プロテックス(Protex) 6L(バシルス リチェニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来セリンプロテアーゼ(EC 3.4.21.62))及びマンナスター(Mannastar)(マンナナーゼ EC 3.2.1.78)である。
【0165】
他の好ましい酵素は、オキシドレダクターゼであり、より好ましくは、ヘキソースオキシダーゼ(EC 1.1.3.5)及びグルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)である。
【0166】
好ましくは、オキシドレダクターゼは、分類グループEC 1.11.1内に属するペルオキシダーゼ、EC 1.10.3.2内に属する任意のラッカーゼ、EC 1.10.3.1内に属する任意のカテコールオキシダーゼ、EC 1.3.3.5内に属する任意のビリルビンオキシダーゼ又はEC 1.14.99.1内に属する任意のモノフェノールモノオキシゲナーゼ又はEC 1.3.3内に属する任意のオキシダーゼである。
【0167】
好ましくは、酵素はハロペルオキシダーゼ(haloperoxidas)である。好ましいハロペルオキシダーゼは、バナジウムクロロペルオキシダーゼ(chloroperoxidase)であり、さらに好ましくは、C.イナエクアリス(C. inaequalis)バナジウムクロロペルオキシダーゼ(Renirie et al, Journal of Applied Microbiology 105 (2008) 264―270)のP395D/L241V/T343Aの変異体である。
【0168】
ラッカーゼ及びラッカーゼ関連酵素
好ましいラッカーゼ酵素及び/又はラッカーゼ関連酵素は微生物の由来の酵素である。酵素は、植物、バクテリア又は菌類(糸状菌と酵母を含む)由来でよい。
【0169】
菌類由来の好適な例は、
アスペルギルス(Aspergillus)、
ニューロスポラ(Neurospora)、例えば、ニューロスポラ クラッサ(N. crassa)、
ポドスポラ(Podospora)、
ボトリチス(Botrytis)、
コリビア(Collybia)、
ツリガネタケ属(Fomes)、
シイタケ属(Lentinus)、
ヒラタケ属(Pleurotus)、
カワラタケ属(Trametes)、例えば、T.ビロサ(T. villosa)及びカワラタケ(T. versicolor)、
リゾクトニア(Rhizoctonia)、例えば、リゾクトニア ソラニ(R. solani)、
ヒトヨタケ属(Coprinus)、例えば、C.シネレウス(C. cinereus)、C.コマツス(C. comatus)、C.フリエシ(C. friesii)及びC.プリカティリス(C. plicatilis)、
プサシレラ(Psathyrella)、例えば、P. コンデレアナ(P. condelleana)、
ワライタケ(Panaeolus)、例えば、P.パピリオナセウス(P. papilionaceus)、
ミセリオプトラ(Myceliophthora)、例えば、M.サーモフィラ(M. thermophila)、
シタリジウム(Schytalidium)、例えば,S.サーモフィルム(S. thermophilum)、
チョレイタケ属(Polyprous)、例えば、P.ピンシタス(P. pinsitus)、
フレビア(Phlebia)、例えば、P.ラジタ(P. radita)(WO 92/01046)
又はカワラタケ属(Coriolus)、例えば、C.ヒルスタス(C. hirsutus)(JP 2−238885)
の菌株由来のラッカーゼを含む。
【0170】
バクテリア由来の好適な例は、バシルス(Bacillus)菌株由来ラッカーゼを含む。
【0171】
ヒトヨタケ属(Coprinus)、ミセリオプトラ(Myceliophthora)、チョレイタケ属(Polyprous)、シタリジウム(Schytalidium)又はリゾクトニア(Rhizoctonia)由来のラッカーゼが好まれ、特に、コプリナス シネレウス(Coprinus cinereus)、ミセリオフトラ サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ポリポラス ピンシタス(Polyprous pinsitus)、シタリジウム サーモフィルム(Scytalidium thermophilum)又はリゾクトニア ソラニ(Rhizoctonia solani)由来のラッカーゼが好ましい。
【0172】
さらに、ラッカーゼ又はラッカーゼ関連酵素は、ラッカーゼ酵素の発現を許容する条件下で培養培地において、組換DNAベクターで形質転換された宿主細胞を培養し、培地からラッカーゼを回収することを含む方法によって生産可能なものでよく、ここで、組換DNAベクターは、前記ラッカーゼをコードするDNA配列及びラッカーゼをコードするDNA配列の発現を許可する機能をコードするDNA配列を含むことを特徴とする。
【0173】
好ましいヒドロラーゼは、プリマグリーン(PrimaGreen)(商標)としてジェネンコー(Genencor)から市販のアリールエステラーゼ(アリール‐エステルヒドロラーゼEC 3.1.1.2)である。
【0174】
好ましくは、酵素はアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)である。バクテリア由来のADH酵素、特にシュードグルコノバクター サッカロケトゲネス(Pseudogluconobacter saccharoketogenes)ADH、乳酸桿菌属ケフィア(Lactobacillus kefir)ADH、サーモアネロビウム ブロッキ(Thermoanaerobium brockii)ADH及び大腸菌(Escherichia coli)アルドース糖デヒドロゲナーゼ(ASD)が好ましい。
【0175】
いくつかのADH酵素の活性は、酸化還元反応の補助因子の存在に依存する。そのようなADH酵素は本明細書において「酸化還元反応補助因子依存アルコールデヒドロゲナーゼ」といい、組成物の中で使用されてよい。
【0176】
酸化還元反応補助因子依存アルコールデヒドロゲナーゼが組成物の中で使用される場合、組成物はさらに酸化還元反応の補助因子を含む。好ましくは、酸化還元反応の補助因子は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)及びキニーネ補助因子から選択される。好ましくは、キノン補助因子は、ピロロキノリンキノン(PQQ)、トリプトフィルトリプトファンキノン(tryptophyl tryptophanquinone)(TTQ)、トパキノン(topaquinone)(TPQ)及びリジンチロシンキノン(lysine tyrosylquinone)(LTQ)から選択される。
【0177】
好ましくは、ADHはキノン酸化還元反応補助因子依存ADH及びニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)酸化還元反応補助因子依存ADHから選択される。
【0178】
キノン−又はNAD/NADP酸化還元反応補助因子依存アルコールデヒドロゲナーゼは、バイオフィルム(汚損)、特にバクテリアのバイオフィルムの形成を防止する又は低減することができる。
【0179】
いくつかのアルコールデヒドロゲナーゼ、特に酵素クラス(E.C.)1.1.1内にあるADH、特にE.C.1.1.1.1又はE.C.1.1.1.2及び酵素クラス(E.C.)1.2.1内にあるものは、一般的に酸化還元反応の補助因子ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)と共に機能し、それぞれNADH又はNADPHへのNAD又はNADPの還元で反応を進行する。
【0180】
他のアルコールデヒドロゲナーゼ、特に酵素クラスEC 1.1.5内にあるもの、特にEC 1.1.5.2内にあるものは、一般的にキノン酸化還元反応の補助因子と共に機能し、特に、ピロロキノリンキノン(PQQ)、トリプトフィルトリプトファンキノン(tryptophyl tryptophanquinone)(TTQ)、トパキノン(topaquinone)(TPQ)、及びリジンチロシンキノン(lysine tyrosylquinone)(LTQ)、及び反応の間ジ‐又はテトラヒドロキノン基に還元されるキノン基から選択されるキノン補助因子と機能する。
【0181】
NAD/NADP補助因子‐又はキノン補助因子依存アルコールデヒドロゲナーゼは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)又はキノン補助因子、特に、ピロロキノリンキノン(PQQ)、トリプトフィルトリプトファンキノン(tryptophyl tryptophanquinone)(TTQ)、トパキノン(topaquinone)(TPQ)、及びリジンチロシンキノン(lysine tyrosylquinone)(LTQ)から選択されるキノン補助因子から選択される酸化還元反応の補助因子と共に機能するADH酵素である。
【0182】
好ましくは、ADHは、酵素クラス(E.C.)1.1、特にサブクラス1.1.1又は1.1.5から選択される。サブクラス1.1.1中のADH酵素のうち、分類1.1.1.1又は1.1.1.2でのものが好ましい。サブクラス1.1.5中のADH酵素のうち、分類1.1.5.2でのものが好ましい。
【0183】
別の実施態様においては、ADHは、酵素クラス(E.C.)1.2.1のアルデヒドレダクターゼから選択される。これらの酵素は、ADHの逆反応に触媒作用を及ぼし、条件に依存して順反応及び逆反応の両方での触媒として多くの酵素が働くことができることが知られている。
【0184】
さらなる態様においては、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、キトサンで架橋されたサブチリシン結晶又は凝集物を含む。
【0185】
組成物のさらなる特徴
好ましくは、組成物は、防汚組成物である。
【0186】
さらなる態様においては、組成物は基質をさらに含み、ここで、基質に作用する場合、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、防汚化合物を生成する。好ましい防汚化合物は、過酸化水素である。
【0187】
好ましくは、基質/架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、グルコース/ヘキソースオキシダーゼ、グルコース/グルコースオキシダーゼ、Lアミノ酸/Lアミノ酸オキシダーゼ、ガラクトース/ガラクトースオキシダーゼ、ラクトース/β‐ガラクトシダーゼ/ヘキソースオキシダーゼ、ラクトース/β‐ガラクトシダーゼ/グルコースオキシダーゼ、2デオキシグルコース/グルコースオキシダーゼ、ピラノース/ピラノースオキシダーゼ及びそれらの混合物から選択される基質/酵素組合せを含む。明らかに、これらの基質/酵素組合せからの酵素は、組成物の中で使用される前に架橋されている。
【0188】
さらなる態様においては、組成物が、第1の酵素及び第1の基質をさらに含み、ここで、第1の基質での第1の酵素の作用は、第2の基質を提供し、第2の基質に作用する場合、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は防汚化合物を生成することを特徴とする。
【0189】
第1の酵素
好ましくは、第1の酵素は、オリゴマー又はポリマー基質をモノマーの単位へ分解することができるエキソ‐作用の酵素、例えばβ‐ガラクトシダーゼ、ペプチダーゼ、グルコアミラーゼ、及びそれらの混合物から選択される。
【0190】
好ましくは、第1の酵素はグルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3)である。当業者は、グルコアミラーゼがアミログルコシダーゼとして知られていることを認識するだろう。
【0191】
好ましくは、第1の酵素はトリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)由来のグルコアミラーゼ又はフミコーラ グリセア(Humicola grisea)由来のグルコアミラーゼである。好ましくは、第1の酵素はトリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)由来のグルコアミラーゼである。好ましくは、第1の酵素は、US 2006/0094080で記載されたように調製されるトリコデルマ レーシ(Trichoderma reesei)由来のグルコアミラーゼである。好ましくは、第1の酵素はフミコーラ グリセア(Humicola grisea)由来のグルコアミラーゼである。
【0192】
好ましくは、第1の酵素は多官能性架橋剤と架橋される。
【0193】
第1の基質
第1の基質の供給は有益である。なぜなら第1の基質での第1の酵素の作用により第2の基質の持続された及び/又は延長された放出を提供するからである。
【0194】
好ましくは、第1の基質は、酸化酵素の基質であるオリゴマー及びポリマー、デンプン、ラクトース、セルロース、デキストロース、ペプチド、イヌリン及びそれらの混合物から選択される。
【0195】
好ましくは、第1の基質はデンプンである。天然のデンプンは、第1の基質として好ましい。天然のデンプンは、特に、表面コーティング中でサスペンション/とり込みの容易な稠密にパックされる顆粒を提供する。さらに、天然のデンプンは水に不溶性である。
【0196】
セルロースも、第1の基質として特に好ましい。セルロースは、塗料中の通常の成分であり、第1の基質としてセルロースの使用は、塗料組成物に添加しなければならない追加の成分の数を減らす。
【0197】
架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物
ある態様においては、組成物は、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を含み、第1の酵素及び第1の基質をさらに含む。本態様においては、好ましくは、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、オキシダーゼ酵素を含む。好ましくは、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、グルコースオキシダーゼ、Lアミノ酸オキシダーゼ、Dアミノオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、リンゴ酸オキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アリールアルコールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、ラトステロールオキシダーゼ、アスパラギン酸オキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、D−グルタミン酸オキシダーゼ、エタノールアミンオキシダーゼ、、NADHオキシダーゼ、尿酸オキシダーゼ(ウルカーゼ)、及びそれらの混合物から選択される酵素を含む。好ましくは、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、グルコースオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ及びそれらの混合物から選択される酵素を含む。
【0198】
好ましくは、ある態様においては、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、グルコースオキシダーゼを含む。好ましくは、グルコースオキシダーゼは、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来のグルコースオキシダーゼである。好ましくは、グルコースオキシダーゼは、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)由来のグルコースオキシダーゼであり、US5783414に記載のように調製されてよい。好ましくは、グルコースオキシダーゼは、ジェネンコー インターナショナル インク、(ロチェスター、ニューヨーク、米国)から入手可能なグルコースオキシダーゼGC199である。
【0199】
好ましくは、ある態様においては、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、ヘキソースオキシダーゼを含む。好ましくは、ヘキソースオキシダーゼは、コンドラス クリプス(Chondrus cripus)から得られうる又は得られる。ある態様においては、ヘキソースオキシダーゼ酵素はEPA−0832245に記載される酵素である。
【0200】
第2の基質
好ましくは、第2の基質は、ペプチド、Lアミノ酸及びヘキソース類、好ましくはグルコース、ガラクトース、ラクトース、2デオキシグルコース、ピラノース、キシラン、セルロース、イヌリン、デンプン、デキストラン、ペクチン及びそれらの混合物を含む炭化水素/糖から選択される。
【0201】
酵素/基質
好ましい実施態様においては、第2の基質/架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、グルコース/ヘキソースオキシダーゼ、グルコース/グルコースオキシダーゼ、Lアミノ酸/Lアミノ酸オキシダーゼ、ガラクトース/ガラクトースオキシダーゼ、ラクトース/β‐ガラクトシダーゼ/ヘキソースオキシダーゼ、ラクトース/β‐ガラクトシダーゼ/グルコースオキシダーゼ、2‐デオキシグルコース/グルコースオキシダーゼ、ピラノース/ピラノースオキシダーゼ及びそれらの混合物から選択される第2の基質/酵素の組合せを含む。明らかに、これらの第2の基質/酵素の組合せ由来の酵素は、組成物中で使用される前に架橋される。
【0202】
好ましくは、第1の基質/第1の酵素/架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の組合せは、デンプン/グルコアミラーゼ/ヘキソースオキシダーゼCLEC又はCLEAである。好ましくは、防汚化合物は、過酸化水素である。
【0203】
1つの好ましい態様においては、第1の酵素は、その活性が多官能性架橋剤酵素で架橋かれる酵素の活性より低いような量で存在する。従って、第1の酵素は、防汚化合物の形成の速度を制限するだろう。従って、1つの好ましい態様においては、第1の酵素:架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の活性比は、1:1より大きく、好ましくは少なくとも1:2、好ましくは少なくとも1:10、好ましくは少なくとも1:20、好ましくは少なくとも1:50、好ましくは少なくとも1:100、好ましくは少なくとも1:1000、好ましくは少なくとも1:10000である。活性は、所定の条件(つまり、海洋適用のための海水)における第1の酵素での基質の放出及び第2の酵素でのその基質の代謝回転として規定される。
【0204】
好ましくは、組成物及び/又はコーティングは、色素をさらに含む。適切な色素は、二酸化チタン、酸化鉄(III)、シリカ、タルク又はチャイナクレーのような無機色素、水性溶媒に、好ましくは海水に不溶性のカーボンブラック又は染料のような有機色素、誘導体及びそれらの混合物から選択されてよい。
【0205】
本発明の組成物及び/又はコーティングは、さらにバインダーを含んでよい。
【0206】
本発明組成物の及び/又はコーティングは、可塑剤、レオロジー特徴改質剤、他の従来の成分及びそれらの混合物を含んでよい。
【0207】
本発明の組成物は、特にコーティングとして調合される時、水生環境に露出される物質を保護するために使用される組成物の中で従来使用される補助薬をさらに含む。適切な補助薬の例は、追加の抗真菌剤、補助の溶剤、消泡剤、固定剤、可塑剤、紫外線安定剤又は安定性促進剤のような加工添加剤、水溶性又は不溶性染料、着色顔料、乾燥剤、腐食防止剤、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のような増粘剤又は抗沈着剤、皮張り防止剤、誘導体及びそれらの混合物を含む。
【0208】
組成物の調製方法
組成物が、油を基材とした塗料の場合、好ましくは、方法は、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を乾燥する工程(b)を含む。架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を乾燥することは、酵素を有機溶媒と混和させる。
【0209】
好ましくは、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、凍結乾燥及びスプレー乾燥である。
【0210】
適切な場合には、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、凍結乾燥される。
【0211】
適切な場合には、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、スプレー乾燥される。
【0212】
好ましくは、その方法は、任意に工程(c)を含む。好ましくは、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の表面の疎水性は、界面活性剤の追加によって増加される。
【0213】
使用
汚損を防止する架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の使用も記載される。好ましくは、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、海洋環境において、汚損することを防止するために使用される。好ましくは、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物は、バイオフィルム形成によって引き起こされる汚損を防止するために使用される。この使用は、本明細書に記載される結晶、凝集物、酵素及び多官能性架橋剤に関連する任意の特徴を含んでよい架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物に関連する。
【0214】
好ましくは、使用される多官能性架橋剤は、アルコール、アルデヒド、イミド、シアネート、イソシアネート及びその混合物から選択される2つ以上の官能基を含む。
【0215】
好ましくは、用いる酵素は、ヒドロラーゼ、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、リアーゼ及びイソメラーゼから選択される。より好ましくは、用いる酵素は、プロテアーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)から選択される。好ましくは、プロテアーゼは、サブチリシンである。
【0216】
さらなる成分/態様
好ましくは、酵素は、組成物で覆われた表面の汚損を縮小する又は予防する有効な量で存在する。
【0217】
本発明の組成物は、コーティング、ラッカー、ステイン、エナメルなど(以下に一般的に「コーティング(複数)」という)として調合してよい。
【0218】
従って、1つの態様においては、本発明は、本明細書に規定する組成物から成るコーティングを提供する。
【0219】
好ましくは、コーティングは、時々湿気に接触する場合から絶えず水に浸漬する場合にわたって水と接触し、かくて機能が阻害される可能性がある任意の表面の処理のために作られる。より好ましくは、表面は、アウトドア木工品、セントラルヒーティング又は冷却方式の外形面、バスルーム壁、船舶の船殻又は任意の海洋装置の外殻及び食糧生産/パッケージング及び/又は任意の他の工業的プロセスから選択される。
【0220】
コーティングは、組成物を溶解する又は懸濁するために液状ビヒクル(溶剤)を含んでよい。
【0221】
液状ビヒクルは、組成物の任意の必須成分がその中に適切に懸濁し、又は溶解してよい任意の液体から選択してよい。特に、液体ビヒクルは、必須の酵素及び/又は防汚化合物の適切な活性を可能にするのに有用なビヒクルであるべきである。適切な液状ビヒクルは、米国A−5071479に示され、水及び
脂肪族炭化水素、
キシレン、トルエンなど芳香族炭化水素、
100から320℃の間で、好ましくは150と230℃の間で沸点を有する脂肪族及び芳香族炭化水素の混合物、
例えばソルベントナフサ、蒸留タール油及びその混合物のような高芳香族石油蒸留物、
ブタノール、オクタノール及びグリコールのようなアルコール、
野菜及び鉱油、
アセトンのようなケトン、
ミネラルスピリット及び灯油のような石油留分、
塩素化炭化水素、グリコールエステル類、グリコールエステルエーテル、誘導体及びそれらの混合物を含む
有機溶剤を含む。
【0222】
液状ビヒクルは、ホワイトスピリット、一般に呼ばれるミネラルスピリットで見られる芳香族及び脂肪族溶剤の混合物のような油又は油様低揮発性有機溶媒を有する混合物に、水のような少なくとも1つの極性溶媒を含んでよい。
【0223】
液状ビヒクルは、典型的に、希釈剤、乳化剤、湿潤剤、分散剤又は他の界面活性剤の少なくとも1つを含んでよい。適切な乳化剤の例は、米国‐A−5071479に示されノニルフェノール‐エチレンオキシドエーテル、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビトールエステル又は脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、誘導体及びそれらの混合物を含む。
【0224】
ある態様においては、本発明は、本明細書に記載する組成物から成る船舶防汚剤を提供する。
【0225】
好ましくは、組成物又はコーティングは、セルフ‐ポリッシング(self−polishing)である。
【0226】
本発明の組成物は、すぐに使える製品又は濃縮物として提供されうる。すぐに使える製品は、粉体、油液、油分散、乳濁液又はエアゾール製剤の形態でよい。例えば、濃縮物は、コーティングのための添加剤として使用することができる、又は使用に先立って追加の溶剤又は懸濁化剤で希釈することができる。
【0227】
本発明によるエアゾール製剤は、適切な溶剤、例えば、商標「フレオン」にて商業的に入手可能なメタン及びエタンの塩素及びフッ素の誘導体の混合物のような推進剤として使用に適する揮発性液体、又は圧搾空気を含む又はこれに懸濁される本発明の組成物を組込むことにより通常の方法で得られてよい。
【0228】
米国A−5071479で議論されるように、本発明の組成物及び/又はコーティングは、保存剤及び/又はコーティングに役立つと知られる追加成分を含んでよい。そのような成分は、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、パラフィンのような固定剤、エチルグリコールアセテート及びメトキシプロピルアセテートのような補助溶剤、安息香酸エステル及びフタレート(例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート及びジドデシルフタレート)のような可塑剤、誘導体及びそれらの混合物を含む。任意に、染料、着色顔料、腐食防止剤、化学安定剤又はコバルトオクテート及びナフテン酸コバルトのような乾燥剤(ドライヤー)も特定の適用に依存して含まれてよい。
【0229】
本発明の組成物及び/又はコーティングは、ブラッシング、噴霧、ロール塗装、浸漬、及びそれらの組合せを含む分野で知られる任意の技術によって適用することができる。
【0230】
本発明の組成物は、それらが悪影響を及ぼされない温度にて様々な成分を混合することにより簡単に調製することができる。調製条件はさほど厳密を要しない。コーティング及び同様の組成物の製造の中で従来使用される装置と方法を都合よく使用することができる。
【0231】
さらなる態様においては、本発明は、製品を本明細書に記載のような有効な量の組成物と接触させることを含む製品上のバイオフィルム形成を防止する方法に関する。
【0232】
さらなる態様においては、本発明は、本明細書に記載のような有効な量の組成物を用いて製品に適用することを含む製品上のバイオフィルム形成を防止する方法に関する。
【0233】
バイオフィルム形成を防止するこれらの方法は、本明細書に記載の結晶、凝集物、酵素及び多官能性架橋剤に関連する任意の特徴をさらに含む架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を含む方法に関する。
【0234】
さらなる態様においては、本発明は、本明細書に記載の防汚組成物を有する製品に関する。好ましくは、防汚組成物は製品上のコーティングとして提供される。
【0235】
好ましくは、製品は、船舶の船殻、医療機器、コンタクトレンズ、食品加工装置、製紙装置、油回収及びプロセシング装置、沖合施設(例えば油田掘削装置又は採油プラットフォーム)、飲料水分配装置、パイプライン、ケーブル、漁網、橋の柱、セントラルヒーティングシステムの外部表面、港建設又は設備から選択される。
【0236】
本発明は、添付の図を参照しつつ、単なる例示としてさらに詳細に記載される。

図1は、バクテリアのバイオフィルムに含まれる細胞外の高分子物質(EPS)の構造成分化学的性質の概要の概観を示す。
図2は、サブチリシンプロテアーゼの結晶を示す。
図3は、塗料中のプロテアーゼ活性の棒グラフを示す。
図4は、現場の浮き台(raft)の試験からのパネルを示す。
図5は、配列番号1のアミノ酸配列を示す。
図6は、異なる系の中でラッカーゼの触媒性能を示す。
図7は、乾燥塗料の中でラッカーゼの相対的な触媒性能を示す。
図8は、乾燥塗料の中のサブチリシン及びサブチリシン‐キトサン複合体の相対的な触媒性能を示す。
図9は、異なる系の中でプロテアーゼの触媒性能を示す。
図10は、乾燥海中用塗料の中でプロテアーゼの触媒性能を示す。
図11は、乾燥海中用塗料の中でプロテアーゼの相対的な触媒性能を示す。
図12は、ASWの中でインキュベーションの間に触媒活性化の主要なスキームを示す。
図13は、プロテアーゼのSEM顕微鏡写真を示す。
【0237】
本発明は、次の実施例にさらに詳細に記載されるだろう。
【実施例】
【0238】
防汚活性を決定するための分析
防汚活性を有する酵素は、本発明に特に関係がある。この活性は、広範囲の汚れに対する一般的な特徴から単一な種に対する特定の防汚活性までの範囲にわたってよい。好ましくは、活性酵素の重量による濃度で、好ましくは20%未満の酵素、より好ましくは、10%未満の酵素、より好ましくは、5%未満の酵素、及びより好ましくは、1%未満の酵素において、任意の形態(可溶、固定された、架橋された、化学的に修正された)で酵素を含むコーティングは、海上試験の物理的位置の如何に限定されず、実施例4に記載の検査の少なくとも一つで活性酵素のない対照コーティングより、ASTM 標準 D 6990 − 05:「Standard Practice for Evaluating Biofouling Resistance and Physical Performance of Marine Coating Systems」によって高い防汚を示すだろう。あるいは、活性酵素の重量による濃度が、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは、1%未満であるとき、防汚活性をバクテリア汚損に関するWO2008/013747により、又は付着及び/又は定着及び/又は生物体の運動性及び/又は除去における顕著な変化が検出されることを特徴とするフジツボと藻類の汚損に関する Pettitt他(Biofouling, 2004, 20 (6), pp 299 ‐ 311)によるいずれかのアッセイを用いて検出できる。これは、WO2008/013747又はPettitt他によって記載された生物体の特定の菌株に制限されない。
【0239】
実施例
架橋プロテアーゼ結晶を含む防汚組成物の防汚効果は、次の実施例によってテストされる。これらの実施例は、汚損を防ぐことで本発明の組成物の有効性を示す。
【0240】
実施例1:プロテアーゼ結晶の調製
配列番号1に示す配列を有するサブチリシンプロテアーゼの結晶を調製した。サブチリシンは、バシルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)に由来し、US5,441,882に記載されるように、調製してよい。
【0241】
方法のための出発物質として働く水溶液は、適切な微生物の発酵によって生産された培養液に由来する。細胞を培養するための及びタンパク質の生産ための発酵方法は、当分野において知られている。
【0242】
細胞の無い培養液の限外濾過を螺旋状の限外濾過ユニットにおいて、10kDa分子量カットオフを有するポリスルホン膜で実施し、限外濾液濃縮物(UFC)を得た。得られたプロテアーゼ溶液は、約100g/Lの活性酵素の濃度であった。プロテアーゼ濃度は、Estell et al. (1985) J. Biol. Chem. 260:6518−6521に述べられた方法によって決定することができる。
【0243】
UFCを含むプロテアーゼを3段階でギ酸ナトリウムと混合し、5%の最終蟻酸塩の濃度とした。各工程は、20分続き、温度は工程を通して5℃にて維持した。pHを20%のNaOH又は20%のギ酸のいずれかを使用して、5.5に調整し、0.1%の種結晶を加えた。結晶化を、4日間進行させた。得られた結晶の写真を図2に示す。スラリーを1:0.75の比率の5%蟻酸塩0.01%CaCl溶液で希釈し、結晶を遠心分離によって回収した。得られたペレットをさらなる使用まで−20℃で保管した。
【0244】
実施例2:CLEC(架橋酵素結晶(cross−linked enzyme crystals))の調製
プロテアーゼ結晶をグルタルアルデヒドで架橋し、水溶液系において不溶性である固形粒子を提供した。グルタルアルデヒドを実施例1において得られたプロテアーゼ結晶に加え、最終濃度1%(vol)のペーストとし、4℃で3時間穏やかに攪拌した。この後、溶液を凍結乾燥し、得られた物質を乳鉢の中で砕き、塗料に適している微粒子サイズを有する乾燥粉末を得た。
【0245】
実施例3:CLECの塗料中の活性
プロテアーゼ結晶を架橋及び非架橋の形態両方において4%(w/v)商品である防汚塗料(ヘンペルA/S製Mille Light)に加えた。6穴ポリスチレン組織培養プレートにて、得られる塗料を3点(ウェル)に塗布し、各レプリカに二層にして塗布した。その後、塗料は、室温で3日間乾燥させた。さらに、塗料を含む商品プロテアーゼ、コートザイム(Coatzyme)(BioLocus A/S製、デンマーク)をベンチマーキングのためにアッセイに含んだ。プレートを過剰の人工海水(ASW)(NaCl: 24.0g/l、MgCl 5.1g/l、NaSO 4.0g/l、CaCl 1.1g/l、KCl 0.67g/l、KBr 0.098g/l、HBO 0.027g/l、SrCl 0.024g/l、NaF 0.003g/l、NaHCO 0.196g/l)に浸した。
等間隔で、プレートをASWから取り出し、プロテアーゼ活性をアッセイし(図3)、プレートをASWの新鮮なバッチに浸した。プロテアーゼアッセイは、プロテアーゼが合成ペプチド、スクシニル−ala−ala−ala−p−ニトロアニリド(suc−AAApNA)(シグマS4760)からp−ニトロアニリドを分解する能力に基づき、405nmの吸収度の増加において測定した。アッセイについては、作業用基質溶液を基質保存溶液(DMSO中30mg/mLのsuc−AAApNA)の400μLを19.6のmL緩衝液(0.1Mトリス; 0.01M CaCl; 0.005%のトリトンX−100; pH 8.6)と混合することにより調製した。3ミリリットルの作業用基質溶液を、塗料で覆われた各ウェルに加え、405nmの吸収度の増加を酵素活性の尺度として用いた。ASW中塗料を2時間加水反応した後に測定した活性を100%(0日、図3)にセットした。3つのコーティングでのプロテアーゼ活性を示した日で測定した。架橋結晶が、塗料中の酵素活性の維持において、非架橋結晶及びCoatzyme塗料両方より優れていることが結論付けられる。
【0246】
実施例4:CLECを含む塗料の防汚特性
プロテアーゼ結晶を含む塗料を2%(w/v)架橋プロテアーゼ結晶をミルライト(Mille Light)塗料に加えたことだけを除いて実施例3において記載されるように調製した。得られるCLEC塗料を重複試験で15×7.5cmの回転子パネルに塗布し、北海に浸した浮き台に取り付けた。浮き台試験を、試用期間を通じて17℃と報告された平均海水温度で、2008年7月に開始し、2008年11月の始めで終了した。浮き台を、視覚的にバイオ汚損の性質及び密度について定期的に検査し、画像を書類(図4)用に撮った。図4の中の画像は、パネルの左側に示した日数の浸漬の後に撮った。左及び右フレームは重複試験の写真である。
【0247】
パネル上の汚損を定量し、表1において、14−84日について2つの重複試験の平均を及び97日での各パネルについて示した。
【0248】
【表2】

【0249】
42日間の浸漬後の重要な観察は、酵素のない塗料上の緑藻類発生を含むが、CLEC塗料上で観察されない。酵素のないMille Light塗料は、67日後CLEC塗料より多くのフジツボ発生を示し、及び97日後に酵素のない両方の対照塗料よりCLEC塗料上で著しく少ない珪藻汚損が観察される。
【0250】
97日目での塗料の全体的性能は、ASTM標準D6990に由来した方法を使用して計測された。ASTM標準D6990においては、パネルの汚れ抵抗(Fouling Resistance(FR))は各パネル上の生物体のパーセンテージで表した被覆量か、生物体の実際の数のいずれかを、100の値から引く(粘着性物質を例外として1の値を引く)ことにより計測される(表2)。0(防汚活性がまったくない)と100(完全に清潔な塗装表面)の間の値は、試験を通じて個々のパネルの保護の程度を示す。FRレートが高いほど、防汚性能はよい。
【0251】
【表3】

【0252】
酵素を含む塗料は、対照塗料両方よりよい汚れ抵抗を示す。
【0253】
実施例5:CLEC塗料の海水中のプロテアーゼ活性
CLEC塗料のプロテアーゼ活性をパネル4において記載のように処理したパネル上で半定量的アッセイを用いて重複試験でアッセイした。しかしもっぱら酵素アッセイに関して使用した。汚損は、アッセイに先立ってパネルから優しく掃除された。アッセイを滴下試験として実施した。940μL緩衝液1(100mMトリス、0.005%のトウィーン80、pH 8.6)及び50μL緩衝液2(300μLジメチルスルホキシド(シグマ−Fluka 41650)に溶解された30mgN−スクシニル−ala−ala−pro−phe−p−ニトロ−アニリド)を表面に塗布した。明るい色を発現させるためにかかる時間を対照標準として脱イオン化水から成る滴を使用して、目視検査に基づいて決定した。長いインキュベーション時間にわたって色が自然に発現するので、アッセイを、ネガティブコントロールとしてMille Light塗料(つまり、酵素が存在しない)上で行なわれた。
【0254】
結果を表3に示す。明るい色の発現が時々Mille Light塗料で観察されたが、CLEC塗料中の観察された活性は、海での97日間の浸漬の後にさえ顕著であり検出可能であった。
【0255】
【表4】

【0256】
実施例6:ラッカーゼを基材とした触媒の触媒能力
材料と方法
トレメテス ベルシカラー(Tremetes versicolor)由来ラッカーゼの(CLEA)、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホニック酸)、ABTS及び緩衝塩をシグマ‐アルドリッチから得た。トレメテス種(Tremetes sp.)由来天然のラッカーゼをCLEAs Technologies B.V.から得た。Hempel A/S製ミルライトをブランク塗料として用いた。使用される人工海水(ASW)は547.6mM NaCl、56.8mM MgSOx7HO及び2.4mM NaHCO、pH 8.2(Yebra, D. M., Kiil, S., Weinell, C. E., & Dam−Johansen, K. (2006). Parametric study of tin−free antifouling model paint behavior using rotary experiments. Industrial & Engineering Chemistry Research 45, 1636−1649, Activity assay)を含んだ。水溶液をすべて脱イオン水で調製した。
【0257】
触媒の触媒活性は、ELISAリーダ(モレキュラー ディバイス(Molecular Devices))によって405nmで吸収度の増加をモニターすることにより、ABTSを酸化する能力によって決定した。吸収度のシグナルはキュベットの長さ1cm及び吸光係数35mM−1cm−1(J.D Crowe and S. Olsson App. Environ. Microbiol. 67 (2001) 2088−2094)で分光光度計測定値に対して修正した。
【0258】
接触反応をモニターするために、酵素粉末は、100mM酢酸ナトリウム、1%のBSA、pH5.0の10μl中に分散した。その後、6.2mMABTSを含む緩衝液の160μlをその系に加えた。サンプルの触媒活性は、1mg酵素によって1分間nmolでの生成物の生産として決定された。
【0259】
塗料中のラッカーゼの触媒活性を決定するために、200mgの触媒を400μlのキシレン中に分散した。その後、混合物を5mlの塗料へ加えた。その後、塗料/触媒混合物をブラシによって「書き込み用透明フィルム」に塗布した。塗膜を24時間乾燥した。
【0260】
結果と議論
触媒の初期活性を同定するために、緩衝液中のそれらの性能のスクリーニングを行った(表4を参照していただきたい)。表からわかるように、非修飾ラッカーゼが最も高い活性を有する。しかしながら、ASWにおいては、天然ラッカーゼの触媒活性は全く検知されなかった。
【0261】
【表5】

【0262】
これらの結果は、ASWのpHが、触媒性能の重大な要因であることを示す。pH8.2で、天然ラッカーゼは活性がないが、ラッカーゼCLEAはまだ活性を示す。しかしながら、pH5.0の緩衝系へ触媒を浸漬した後、触媒活性は、完全に回復した。
【0263】
これらの酵素のキシレン耐性も試験した。キシレンは、塗料を生産するために用いる有機溶媒の例として選択された。触媒を24時間工業用グレードのキシレン中でインキュベーションした。キシレンを完全に乾燥した後、触媒を緩衝液pH5.0に分散し、触媒活性を測定した。キシレンがこれらのラッカーゼの触媒性能に影響しないことがわかった。天然の酵素及び酵素凝集物の両方は、増加した触媒性能を示した。この考えられる理由は、キシレンが、触媒生産の間タンパク質表面上に吸収され得て酵素性能を部分的に阻害できる小さな有機不純物を溶かしえるということである。
【0264】
従って、結果は、ラッカーゼがCLEAの形態でのみASW中で残存活性を維持できることを示す。海中用のものとは異なる塗料適用について、関連するラッカーゼを基材とした触媒を同定するために、ラッカーゼを含む乾燥塗料に関する試験を100mM酢酸ナトリウム、1%のBSA、pH5.0で行なった。
【0265】
結果を図7に示す。図から見ることができるように、非修飾ラッカーゼは、急速に緩衝液に浸漬された乾燥塗料の中で触媒活性を失った。8日後に、ラッカーゼは、約13%の活性だけ維持する。対照的に、試験期間中、ラッカーゼのCLEAの触媒活性は増加した。既に、3日目に、CLEASは、初期活性に比して約1200%の活性を有し、それは、非修飾ラッカーゼと比較して4倍高い生成物生成の触媒速度に匹敵する。8日後に、CLEAは天然ラッカーゼより10倍活性がある。
【0266】
結論
従って、試験したラッカーゼ触媒は、キシレンの存在に耐性がある。しかしながら、CLEAでのラッカーゼだけが、ASW中でいくらか活性を維持する。塗料でのラッカーゼに関する試験は、非修飾ラッカーゼが、8日後に活性の約90%を消失するが、その一方でCLEAのラッカーゼは活性の約1200%を得る。
【0267】
実施例7:防汚海中用塗料適用のためのキトサンとサブチリシンの架橋に基づいた触媒の開発
材料
サブチリシン、スクシニル−アラニン−アラニン−アラニン−p−ニトロアニリド、緩衝塩をシグマ‐アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から得た。
ヘンペル エー/エス(Hempel A/S)からのミルライト(Mille Light)塗料をブランク塗料として用いた。
人工海水、ASWは、547.6mM NaCl、56.8mM MgSOx7HO及び2.4mM NaHCOを含む。水溶液をすべて脱イオン水で調製した。
【0268】
キトサンの酢酸修飾
キトサン粉末を2%(w/w)酢酸と混合し、終夜撹拌し、アセテート‐修飾ポリマーの1%(w/w)溶液を得た。この溶液を、7−10倍体積の過剰なアセトンと混合し、キトサンアセテートを沈殿した。生成物を膜を通してろ過し、乾燥した。液体窒素を乾燥物を冷却するために使用し、これを粉砕し、粉体を得た。
【0269】
サブチリシン‐キトサンフィルムの調製
キトサンアセテートを0.1M酢酸緩衝液、pH5.5と混合し、終夜撹拌し、1%の溶液を得た。また、15mM CaClを含む0.1M酢酸緩衝液、pH5.5中75mg/mlサブチリシン溶液を調製した。キトサンアセテート溶液を比(4:1)でサブチリシン溶液と混合し、2時間撹拌した。得られる混合物を終夜Nガスを泡立たせることにより乾燥した。得られる沈殿を各回1時間、水中2%グルタルアルデヒド溶液で2回撹拌した。得られる触媒を各回2時間、5mMCaClを含む0.05Mトリス‐HCl緩衝液、pH8.2を使用して、3回洗浄した。固形物は、その後、大気中で乾燥させるために放置し、粉体としての触媒を得た。
【0270】
サブチリシン‐キトサン塗料の調製
2つの異なる塗料混合物を調製した、ひとつめは架橋サブチリシン‐キトサンを有し、ふたつめは非共有結合キトサン−サブチリシン複合体(グルタルアルデヒドによる処理なしで上述のように調製)を有する。両方の塗料混合物を以下のように作成した。最初に、250μg乾燥触媒をキシレン(>1mL)の最小体積の中で懸濁し、その後、10gのミルライト塗料と激しく混合した。その後、塗料/触媒混合物を、ベーカーフィルムアプリケーター(Baker Film Applicator)を使用して、300μmの塗料厚さ及び〜5cmの幅で「書き込み透明フィルム」に塗布した。塗料フィルムを乾燥するために夜通し放置した。
【0271】
乾燥後、塗料を含むフィルムの小さな円を切り取り(2.5cmの直径)、円をそれぞれマルチディッシュ中のウェルに固着させ、1時間ASWの中に放置した。その後、各ウェルを脱イオン水でよくすすぎ、フィルムを活性測定に使用した。
【0272】
活性アッセイ
各触媒の触媒活性を、405nm[p−ニトロアニリド吸収度、プレートリーダー(体積250μl)用の決定した吸光係数は、11800M−1cm−1である、分光光度計用は、18300M−1cm−1である]で吸収度の増加をモニターすることにより、合成ペプチド、スクシニル−アラニン−アラニン−アラニン−p−ニトロアニリド(suc−AAApNa)からのp−ニトロアニリドを分解するその能力によって決定した。接触反応をモニターするために、酵素粉体を0.01MCaCl、0.005%トリトンX−100、を含む0.1Mトリス‐HCl緩衝液、pH8.6に溶解した。この酵素溶液の100μlを緩衝液中0.2%suc−AAApNAを含む、1mlの基質溶液と混合した。サンプルの触媒活性を1分間1mg酵素による生成物の1μmolの生成として決定した。
【0273】
塗料中のサブチリシン‐キトサンの触媒活性の測定
まず、緩衝液(0.01MCaCl及び0.005%トリトンX−100を含む0.1MトリスHCl緩衝液、pH8.6)中の基質(DMSO中30mg/mL suc−AAApNa)の2%(v/v)溶液を調製した。それから、この基質溶液の3mLを個々のフィルム含むウェル及び対照用に空のウェルに加えた。その後、405nmの吸収度測定を1時間及び24時間後に行った。
【0274】
結果とディスカッション
有機溶媒を基材とした塗料での使用に適する酵素は、いくつかの基準を満たす必要がある。これらの基準は、塗料と混合する間及び表面上に塗料層が乾燥する間に分解されないくらい硬いことを含む。更に、酵素の修飾は、触媒の分解を避けるような穏やかな条件の下で起こるべきである。1つのアプローチは、水素結合し、その後、沈殿と架橋より維持されるポリサッカライドネットワーク中への酵素の取り込みである。サブチリシンがプラスに帯電した分子なので、キトサンアミノ基を酵素とキトサン間の電荷相互作用を提供するように酵素を加える前にアセテートによって修正した。
【0275】
高分子電解質複合体の形成の後、触媒を泡立つNガスを使用して乾燥することにより溶液から沈殿した。その後、得られた触媒を安定化するために、沈殿物をグルタルアルデヒドを用いて架橋した。この手順は、フィルムの形成により共に混合したキトサン‐キトサン、酵素‐酵素及びキトサン‐酵素の複合体の形成を許容した。
【0276】
得られた触媒の酵素学的分析は、系(system)の最終充填が、1gの触媒当たり約146mgであることを示し、これは以前に報告された(Macquarrie, D. J. & Bacheva, A. (2008) Green Chemistry 10, 692−695)ものよりほとんど2倍高い。
【0277】
サブチリシン‐キトサン複合体及び非修飾サブチリシンの触媒活性に関する試験を乾燥塗料において行なった。非共有結合で修飾されるサブチリシン‐キトサン複合体の触媒活性は、検出されなかった。共有結合で修飾されるサブチリシン‐キトサン複合体及び非修飾サブチリシンの触媒性能の結果を図8に示す。図からわかるように、非修飾サブチリシンは14日後に活性の約80%を失った。一方、サブチリン‐キトサン触媒は、同じ期間塗料中活性の約300%を得た。
【0278】
実施例8 プロテアーゼの架橋酵素凝集物防汚海中用塗料適用の実施
材料
サブチリシン、スクシニル−アラニン−アラニン−アラニン−p−ニトロアニリド、及び、緩衝塩をシグマ‐アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から得た。
キシレンをメルク(Merck)から購入した。
バシルス スブチリス(B. subtilis)、バシルス レンツス(B.lentus)(esperase)、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)(alcalase)及びバシルス クラウシ(B.clausii)(savinase)由来のプロテアーゼのCLEAをCLEAs Technologies B.V.から得た。
Hempel製ミルライト(Mille Light)塗料をブランク塗料として使用した。
水溶液をすべて脱イオン化水で調製した。
ASWは547.6mM NaCl、56.8mM MgSOx7HO及び2.4mM NaHCOを含む。
【0279】
活性アッセイ
各触媒の触媒活性をELISAリーダー(Molecular Devices)により405nmにて吸収度の増加をモニタリングすることによって、合成ペプチド、suc−AAApNa、からp−ニトロアニリドを分解するその能力によって決定した。触媒反応をモニターするために、酵素粉体を0.01MCaCl及び0.005%Tritonx−100を含む0.1Mトリス‐HCl緩衝液pH8.2中で分散した。各酵素溶液の20μlを緩衝液中0.2%suc−AAApNAを含む200μlの基質溶液と混合した。サンプルの触媒活性を1分間で1mgの酵素による生成物の1μmolの生成として決定した。
【0280】
結果とディスカッション
触媒の初期活性を同定するために、アルカリ性の緩衝液においてそれらの性能のスクリーニングを行なった(表5を参照)。表からわかるように、非修飾サブチリシンが、最も高い活性を有する。ほとんどのCLEAは、緩衝液に同様の活性を有する。ただ一つの例外はCLEA バシルス レンツス(B. lentus)の性能である。
【0281】
その後、海洋環境に対するこれらの酵素の耐性をテストした。従って、これらの酵素の触媒活性を緩衝液としてASW中でテストした。これらの結果は、ほとんどのプロテアーゼ酵素(表5及び図9)での活性の顕著な減少を示す。
【0282】
【表6】

【0283】
Caイオンの非存在は、それらの触媒性能に影響するタンパク質構造を不安定にすると考えられる。
【0284】
触媒は、ASW中で、異なる感度を示し、特に、バシルス スブチリス(B. subtilis)及びバシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)のCLEAは、緩衝液(図9)中のそれらの活性と比較してASW中のそれらの活性を保存する点において他のCLEAより有効であると証明された。
【0285】
CLEAは、主な塗料成分であるキシレンに対するそれらの耐性についても分析された。触媒を24時間工業グレードのキシレン中でインキュベーションした。キシレンの完全乾燥の後、触媒をASW中で分散し、触媒活性を測定した。キシレンがほとんどの触媒の触媒性能に影響しなかったことが分かった。CLEAバシルス レンツス(B. lentus)だけが低減された活性(およそ5%)を示した。しかしながら、CLEAバシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)については、触媒性能の増加が観察された。この考えられる理由は、キシレンが、触媒生産の間タンパク質表面上に吸収され、酵素性能を部分的に阻害できる小さな有機不純物を溶かしえるということである。
【0286】
従って、ほとんどのプロテアーゼは、キシレンの存在に耐性で、ある活性を維持する。しかしながら、ほとんどのプロテアーゼCLEAは、キシレン中よりASW中でよい安定性を有するが、触媒活性の最小の消失は、CLEAバシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)で観察された。触媒活性の絶対値は、非修飾サブチリシンが最も高かった。しかしながら、塗料中の非修飾酵素の使用は問題になりうる。触媒のサイズが小さいことは塗面から酵素を速く浸出することを可能にし、従って、時間とともに塗料の防汚特性の速い減少をもたらすだろう。
【0287】
これを試験するために、すべて触媒を海中用塗料の中で分散した。塗料をフィルム上に塗布し乾燥した。乾燥の後、フィルムをASWに浸漬し、室温で保管された。触媒アッセイを緩衝液中で行った。触媒による残存酵素活性の結果を図10及び11に示す。図10からわかるように、ほとんどのCLEASは高いレベルの初期の触媒活性を維持する。それは表5に示す触媒活性のレベルに類似する。しかしながら、サブチリシンは、急速に表5に報告した触媒活性の50%より多くを消失した。
【0288】
サブチリシンについての触媒安定性のプロフィルは、この酵素が、試験の間にその触媒活性のほとんど90%を消失したことを示す。対照的に、CLEAについての触媒プロフィルは普通でない。CLEA全部の触媒活性が、試験の間に増加するのが見られた。特に、これは、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)酵素の場合であり、試験の間にその触媒活性を900%より多くの増加が観察された。
【0289】
ASWの中の保存の間に、乾燥塗料表面がより水和されるようになり、表面への酵素のアクセスの増加をもたらし、従って全体の触媒活性の増加にいたる。本発明の方法の主要な図を図12に示す。図からわかるように、tで、触媒の1/3だけが触媒反応にアクセスでき、tで、水和反応レベルが増加する場合、触媒の2/3がアクセスできる。最後に、tでは、すべての触媒が、塗料の中にまだあり、そのすべては表面にアクセスする。図からわかるように、この方法を可能にするために、触媒は水和されている層の厚さより大きなサイズを有するべきであり、さもなければ、触媒は、表面から離れて浸出されるだろう。この仮説は、CLEAの場合、水和反応層の効果が陽性であり、その一方で単一サブチリシン分子については、それが陰性のものであることを説明する。試験したCLEAのうち、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)CLEAが最も大きいサイズであり、バシルス レンツス(B. lentus)とバチルス クラウシ(B. clausii)は、似たサイズであり、CLEA バシルス スブチリス(B subtilis)は最も小さいサイズのように見える。
【0290】
このコンセプトを証明するために、CLEAのSEM顕微鏡写真を作成した。画像を図13示す(バシルス スブチリス(B subtilis)(a)、バシルス レンツス(B. lentus)(b)、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)(c)及びバチルス クラウシ(B. clausii)(d))。図からわかるように、粒子のサイズは次のように評価できる:バシルス スブチリス(B. subtilis)−125×50nm、バシルス レンツス(B. lentus)−125×125nm、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)−250×250nm及びバチルス クラウシ(B. clausii)−250×125nm。従って、バシルス リチェニフォルミス(B. licheniformis)CLEAが最大のサイズを有し、バシルス スブチリス(B. subtilis)が、最も小さいサイズを有する。それは乾燥塗料中での触媒性能データと非常によく相関する。
【0291】
上記の明細書の中で言及された出版物はすべて、参照によって本明細書に組込まれる。本発明の記載された方法及び本発明のシステムの様々な改良及びバリエーションは、特許請求の範囲及び精神を逸脱しないことは、当業者に明白であろう。本発明は具体的な好ましい実施態様に関して記載されたが、特許請求の範囲に記載の発明がそのような具体的な実施態様に過度に制限されるべきでないことが理解されるべきである。確かに、化学分野及び関連分野での当業者にとって明白である本発明を行なうために記載された態様の様々な変更は、下記の特許請求の範囲の範囲内に属するものである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13a】

【図13b】

【図13c】

【図13d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
(i) 表面コーティング物質、及び
(ii)架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物であって、酵素が多官能性架橋剤と架橋し、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物が防汚活性を有する又は防汚化合物を生成することを特徴とする架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物
を含む組成物。
【請求項2】
架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物が、組成物でコーティングされた表面の汚損を低減する又は防止するために有効な量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
多官能性架橋剤が、アルコール、アルデヒド、イミド、シアネート、イソシアネート及びそれらの混合物から選択される官能基の2つ以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
酵素が、ヒドロラーゼ、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、リアーゼ及びイソメラーゼから選択されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
酵素が、プロテアーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
プロテアーゼがサブチリシンであることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
組成物が油を基材とした塗料であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項8】
油を基材とした塗料に添加する前に、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を乾燥することを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
さらに、組成物は基質を含み、ここで、基質に作用する時、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物が防汚化合物を生成すること特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項10】
さらに、組成物は第1の酵素及び第1の基質を含み、ここで、第1の基質への第1の酵素の作用は、第2の基質を提供し、第2の基質に作用する時、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物が防汚化合物を生成することを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項11】
表面コーティング物質が、溶剤を基材とした系におけるポリ塩化ビニル樹脂、溶剤を基材とした系における塩化ゴム、溶剤を基材とした系又は水性系におけるアクリル樹脂及びメタクリル樹脂、水性の分散系又は溶剤を基材とした系として塩化ビニル‐酢酸ビニルコポリマー系、ポリビニルメチルエーテル、ブタジエン‐スチレンゴム、ブタジエン‐アクリロニトリルゴム及びブタジエン‐スチレン‐アクリロニトリルゴムのようなブタジエンコポリマー、アマニ油のような乾性油、アルキド樹脂、アスファルト、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、天然ロジン、ロジン誘導体、不均化ロジン、部分的重合化ロジン、水素化ロジン、ガムロジン、不均化ガムロジン、非水分散型バインダー系、シリル化アクリレートバインダー系、金属アクリレートバインダー系、誘導体及びそれらの混合物から選択される成分を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項12】
防汚組成物の調製方法であって、
(a)酵素結晶又は酵素凝集物を調製し、酵素結晶又は酵素凝集物を多官能性架橋剤と反応させ、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を生成する工程、
(b)任意に、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を乾燥する工程、
(c)任意に、架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の表面の疎水性を増加させる工程、及び
(d)表面コーティング物質に架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物を添加し、請求項1から11のうちのいずれか1つに記載の組成物を生成する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
汚損を防止するための架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の使用。
【請求項14】
バイオフィルム形成によって引き起こされる汚損を防止するための請求項13に記載の架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の使用。
【請求項15】
酵素がヒドロラーゼ、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、リアーゼ及びイソメラーゼから選択されることを特徴とする請求項13又は14に記載の架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の使用。
【請求項16】
酵素が、プロテアーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ及びアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)から選択されることを特徴とする請求項13から15のいずれか1つに記載の架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物の使用。
【請求項17】
プロテアーゼがサブチリシンであることを特徴とする請求項16に記載の架橋酵素結晶又は架橋酵素凝集物。
【請求項18】
製品を請求項1から11のいずれか1つに記載の組成物の有効な量で接触させることを含む製品上のバイオフィルム形成を防止する方法。
【請求項19】
製品に請求項1から11のいずれか1つに記載の組成物の有効な量を適用することを含む製品上のバイオフィルム形成を防止する方法。
【請求項20】
請求項1から11のいずれか1つに記載の組成物を有する製品。

【公表番号】特表2012−516926(P2012−516926A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548783(P2011−548783)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050177
【国際公開番号】WO2010/089598
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(509093978)
【Fターム(参考)】