説明

経口投与組成物

【課題】 関節症・関節炎の予防・改善効果を更に向上させる手段を明らかにし、これを応用して、関節症・関節炎の予防・改善に有用な経口投与組成物を提供する。
【解決手段】 1)次に示す植物の抽出物と、2)アルカリ土類金属塩と3)アセチル化されていても良いグルコサミン及び/又はその塩とを、関節炎・関節症の予防又は改善のための経口投与組成物に含有させる。
(植物)サルノコシカケ科カバノアナタケ(Fuscoporia obliqua)、ベンケイソウ科コウケイテン(Rhodiolarosea L.)、ウコギ科エゾウコギ(Eucommia ulmoides)、シソ科ヒキオコシ(Isodon japonicus Hara )、トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)、マメ科セイヨウエビラハギ(Mallotus japonicus (Thunb.) Muell. Arg.)、キク科エキナケア・パリダ(Echinacea pallida)、バラ科サンザシ(Crataegus cuneata)、トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides)、褐藻類、緑藻類、紅藻類

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などに好適な経口投与組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の平均寿命の驚異的な伸びにより、今まではあまり重要視されていなかった疾病が、高年齢者の生活品質を大きく左右する点で注目を浴びるようになってきている。この様な疾病としては、高齢者の行動自由を大きく阻害する、関節炎・関節症などの体骨格関連炎症、骨粗鬆症などの体骨格異常症や、食生活や性生活等の享楽行為に大きな影響を与える、高脂血症、糖尿病などの代謝関連疾患などが例示できる。これらの内で、高齢者の精神衛生に影響を及ぼす外出などの行為を制限する、関節炎・関節症などの体骨格関連炎症、骨粗鬆症などの体骨格異常症は重要な対策課題であり、中でも、対処可能性の高い関節炎・関節症などの体骨格関連炎症は、重要対処課題であると言える。即ち、現代においては、関節炎・関節症を予防或いは改善する手段の開発が、生活品質を高めるために求められていると言える。
【0003】
この様な関節炎・関節症に対して、通常行われる処置は、ジクロフェナクナトリウム、アセクロフェナク、インドメタシン等の抗炎症剤の投与である(例えば、特許文献1を参照)が、経口による抗炎症剤の投与は、関節内における抗炎症剤の濃度を上昇させにくく、徒に胃を痛めるなどの副作用を引き起こすことが少なくなかった。又、抗炎症剤の局所投与は、炎症部位への到達性が低く、種々の到達性の向上検討が為されている(例えば、特許文献2を参照)が、この様な手技によっても充分な量の到達は為されていない。
【0004】
関節炎・関節症について、経年的骨質量の低下により、関節を構成する骨部分の強度が低下し、変形して周囲の神経を刺激することにより、痛みを発っしたり、周囲の組織を圧迫して炎症を起こしたりして、これが一因になっているケースもあると言われている。この為、カルシウムを補給し骨質量を維持することが、骨強度を維持し、変形を抑制し、以て関節炎・関節症の発症、重篤化を予防できることが既に知られている(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5を参照)しかしながら、この効果を詳細に調べると、骨に対する効果の割に関節炎に対する効果が低いことが判明しているが、その原因については詳細が不明である。又、関節炎・関節症に対しては、アセチル化されていても良いグルコサミンの投与により症状の悪化を防いだり、改善を目指す方法もとられている。これは関節炎・関節症の原因の一つに、アセチル化されていても良いグルコサミンの生合成が、分解に追いつかず、不足することが存するためで、不足するアセチル化されていても良いグルコサミンを投与し、補うことにより関節炎・関節症が改善出来ると言われている(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8を参照)。しかしながら、アセチル化されていても良いグルコサミンの投与により、生体内のアセチル化されていても良いグルコサミン量が高まっているにもかかわらず、関節炎・関節症が改善しない場合も存し、その原因の究明も求められていた。
【0005】
一方、関節炎・関節症に関しては、マトリックスメタロプロテアーゼ(以下MMPと称することもある)が関与していることは既に知られている。(例えば、特許文献9、特許文献10を参照)しかしながら、サルノコシカケ科カバノアナタケ、ベンケイソウ科コウケイテン、ウコギ科エゾウコギ、シソ科ヒキオコシ、トウダイグサ科アカメガシワ、マメ科セイヨウエビラハギ、キク科エキナケア・パリダ及びバラ科サンザシ、トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides)、褐藻類、緑藻類、紅藻類から選択される植物の植物体の抽出物にMMP活性阻害作用を有する物質が含まれていることも全く知られていなかった。更に、前記抽出物とカルシウムなどのアルカリ土類金属塩とアセチル化されていても良いグルコサミンとをともに含有させた経口投与組成物が、関節症・関節炎の治療乃至は予防に有用なことも全く知られていない。
【0006】
【特許文献1】特開2002−363104号公報
【特許文献2】特表2002−511057号公報
【特許文献3】特開2001−158736号公報
【特許文献4】特開2000−281587号公報
【特許文献5】特開2005−68060号公報
【特許文献6】特開2002−193811号公報
【特許文献7】特表2005−501043号公報
【特許文献8】特開2006−83151号公報
【特許文献9】特表平10−513168号公報
【特許文献10】特表2005−501091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、関節症・関節炎の予防・改善効果を更に向上させる手段を明らかにし、これを応用して、関節症・関節炎の予防・改善に有用な経口投与組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、関節炎・関節症の予防と改善に有用な手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、サルノコシカケ科カバノアナタケ、ベンケイソウ科コウケイテン、ウコギ科エゾウコギ、シソ科ヒキオコシ、トウダイグサ科アカメガシワ、マメ科セイヨウエビラハギ、キク科エキナケア・パリダ及びバラ科サンザシ、トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides)、褐藻類、緑藻類、紅藻類から選択される植物の植物体の抽出物を共存させることにより、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩やアセチル化されていても良いグルコサミンの関節炎に対する作用が向上し、且つ、MMP−13抑制作用による、関節炎・関節症の治療・予防効果も発現し、関節炎・関節症に顕著な作用を示すことを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示すとおりである。
【0009】
(1)1)次に示す植物の抽出物と、2)アルカリ土類金属塩と3)アセチル化されていても良いグルコサミン及び/又はその塩とを含有する、関節炎・関節症の予防又は改善のための経口投与組成物。
(植物)サルノコシカケ科カバノアナタケ(Fuscoporia obliqua)、ベンケイソウ科コウケイテン(Rhodiolarosea L.)、ウコギ科エゾウコギ(Eucommia ulmoides)、シソ科ヒキオコシ(Isodon japonicus Hara )、トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)、マメ科セイヨウエビラハギ(Mallotus japonicus (Thunb.) Muell. Arg.)、キク科エキナケア・パリダ(Echinacea pallida)、バラ科サンザシ(Crataegus cuneata)、トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides)、褐藻類、緑藻類、紅藻類
(2)前記植物の抽出物は、0.1%溶液において、40%以上のマトリックスメタロプロテアーゼ13阻害作用を有するものであることを特徴とする、(1)に記載の経口投与組成物。
(3)前記アルカリ土類金属は、カルシウムであることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の経口投与組成物。
(4)前記アルカリ土類金属塩は、抽出物と複合体化した後、含有させることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の経口投与組成物。
(5)食品であることを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の経口投与組成物。
(6)次の工程を経て製造されるものであることを特徴とする、(1)〜(5)何れか1項に記載の経口投与組成物。
(工程1)サルノコシカケ科カバノアナタケ、ベンケイソウ科コウケイテン、ウコギ科エゾウコギ、シソ科ヒキオコシ、トウダイグサ科アカメガシワ、マメ科セイヨウエビラハギ、キク科エキナケア・パリダ及びバラ科サンザシ、トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides)、褐藻類、緑藻類、紅藻類から選択される植物の植物体に抽出溶媒を加え、抽出物を作製する。
(工程2)前記抽出物の0.1%溶液におけるマトリックスメタロプロテアーゼ13活性阻害作用を測定し、該マトリックスメタロプロテアーゼ13活性阻害が50%以上存したものを原料として選択する。
(工程3)工程2で原料として選択された抽出物の水溶液と、アルカリ土類金属塩とを混練りし、アセチル化されていても良いグルコサミン及び/又はその塩と揮発分を除去した後、粉砕して製造中間体を作製する。
(工程4)工程3で作製した製造中間体と、アセチル化されていても良いグルコサミン及び/又はその塩と、製剤化の為の任意成分とを用いて製剤を作製する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、関節症・関節炎の予防・改善効果を更に向上させる手段を明らかにし、これを応用して、関節症・関節炎の予防・改善に有用な経口投与組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)本発明の経口投与組成物の必須成分である抽出物
本発明の経口投与組成物は、次に示す植物の抽出物を必須成分として含有することを特徴とする。
(植物)サルノコシカケ科カバノアナタケ(Fuscoporia obliqua)、ベンケイソウ科コウケイテン(Rhodiolarosea L.)、ウコギ科エゾウコギ(Eucommia ulmoides)、シソ科ヒキオコシ(Isodon japonicus Hara )、トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)、マメ科セイヨウエビラハギ(Mallotus japonicus (Thunb.) Muell. Arg.)、キク科エキナケア・パリダ(Echinacea pallida)、バラ科サンザシ(Crataegus cuneata)、トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides)、褐藻類、緑藻類、紅藻類
【0012】
抽出物の作製は、常法に従って行えば良く、植物体1質量部に対して、溶媒1〜100質量部を加え、常温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、所望により濾過などで不溶物を取り除き、所望により減圧溜去、凍結乾燥等で溶媒を除去することも出来る。更に、これらの抽出物をカラムクロマトグラフィーや液液抽出などで分画精製することも出来る。カラムクロマトグラフィーとしては、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、「ダイアイオンHP−20」のようなイオン交換樹脂、ODS等が好適に例示できる。勿論、植物体の一部又は全部を粉砕など加工しただけのものも本発明の抽出物に含まれる。
【0013】
サルノコシカケ科カバノアナタケは、菌体の部分何れもが使用可能であり、特に好ましくは子実体である。抽出物の作製に用いる溶媒としては、水性の極性溶媒が好ましく、具体的には、エタノールなどのアルコール及び/又は水が好ましい。中でも熱水抽出が特に好ましい。
【0014】
ベンケイソウ科コウケイテンは、全草の何れの部分も使用可能であり、特に好ましくは全草である。抽出物の作製に用いる溶媒としては、水性の極性溶媒が好ましく、具体的には、エタノールなどのアルコール及び/又は水が好ましい。中でも熱水抽出が特に好ましい。
【0015】
ウコギ科エゾウコギは、全草の何れの部分も使用可能であり、特に好ましくは根である。抽出物の作製に用いる溶媒としては、水性の極性溶媒が好ましく、具体的には、エタノールなどのアルコール及び/又は水が好ましい。中でも熱水抽出が特に好ましい。
【0016】
シソ科ヒキオコシは、全草の何れの部分も使用可能であり、特に好ましくは全草である。抽出物の作製に用いる溶媒としては、水性の極性溶媒が好ましく、具体的には、エタノールなどのアルコール及び/又は水が好ましい。中でも熱水抽出が特に好ましい。
【0017】
トウダイグサ科アカメガシワは、植物体の何れの部分も使用可能であり、特に好ましくは樹皮である。抽出物の作製に用いる溶媒としては、水性の極性溶媒が好ましく、具体的には、エタノールなどのアルコール及び/又は水が好ましい。中でも熱水抽出が特に好ましい。
【0018】
マメ科セイヨウエビラハギは、全草の何れの部分も使用可能であり、特に好ましくは、地上部である。抽出物の作製に用いる溶媒としては、水性の極性溶媒が好ましく、具体的には、エタノールなどのアルコール及び/又は水が好ましい。中でも熱含水エタノール抽出が特に好ましい。含水エタノールとしては、容量百分率で50〜80%含水したものが好ましい。
【0019】
キク科エキナケア・パリダは全草の何れの部分も使用可能であり、特に好ましくは根である。抽出物の作製に用いる溶媒としては、水性の極性溶媒が好ましく、具体的には、エタノールなどのアルコール及び/又は水が好ましい。中でも熱含水エタノール抽出が特に好ましい。含水エタノールとしては、容量百分率で20〜60%含水したものが好ましい。
【0020】
バラ科サンザシは植物体の何れの部分も使用可能であるが、特に好ましくは可食部である果実である。抽出物の作製に用いる溶媒としては、水性の極性溶媒が好ましく、具体的には、エタノールなどのアルコール及び/又は水が好ましい。中でも熱水抽出が特に好ましい。
【0021】
トチュウの植物体は、葉、花、蕾、樹皮、木幹、根何れも使用可能であるが、葉を用いることが好ましい。これは、葉が充分な効果量の有効成分を含むことと、再生産性に優れるためである。抽出物の作製に用いる溶媒としては、水性の極性溶媒が好ましく、具体的には、エタノールなどのアルコール及び/又は水が好ましい。中でも熱水抽出が特に好ましい。
【0022】
褐藻類としては、ホンダワラ科のホンダワラ(Sargassum fuluvellum)、ヒジキ(Hizikia fusiforme)、およびアカモク (Sargassum horneri)が好適に例示でき、緑藻類としては、ウズバアオノリ (E.linza J.Agardh)、スジアオノリ (E.prolifera J.Ag.)、ヒラアオノリ (E.compressa Greville)、ボウアオノリ (E.intestinalis Link)、ホソエダアオノリ (E.crinita J.Ag.)などのアオサ科のアオノリが好適に例示でき、紅藻類としては、ミリン科(Solieriaceae)、トサカノリ (Meristotheca)或いはミリンが好適に例示できる。これらの植物の内、特に好ましいものは、ホンダワラ科のアカモクである。尚、アカモクの近縁植物としては、エンドウモク(Sargassum yendoi),マメタワラ(Sargassum piluriferum),ヤツマタモク(Sargassum patens),ノコギリモク(Sargassum serratifolium),オオバノコギリモク(Sargassum giganteifolium),ヨレモク(Sargassum tortile),ヤナギモク(オオバモク:Sargassum ringgoldianum),ネジモク(Sargassum sagamianum),ハハキモク(Sargassum kjellmanianum),ウミトラノオ(Sargassum thunbergii),フシスジモク(Sargassum confusum),イソモク(Sargassum hemiphyllum),ナラサモ(Sargassum nigrifolium),トゲモク(Sargassum micracanthum),タマナシモク(Sargassum nipponicum),ジンメソウ(Sargassum vulgare),フタエモク(ヒイラギモク:Sargassum duplicatum),エゾノネジモク(Sargassum yezoense)等が存し、これらの植物もアカモクに次いで好ましい。
【0023】
以下に、植物の抽出物の製造例を示す。
【0024】
<製造例1>
サルノコシカケ科カバノアナタケの子実体500gに水2Lを加え、3時間沸騰させて抽出を行い、室温まで冷却した後、濾過により不溶物を除き、凍結乾燥して、97gのアモルファスとして抽出物1を得た。
【0025】
<製造例2>
製造例1と同様の手技で、ベンケイソウ科コウケイテンの全草500gを処理し、123gのアモルファスとして抽出物2を得た。
【0026】
<製造例3>
製造例1と同様の手技で、ウコギ科エゾウコギの根500gを処理し、22gのアモルファスとして抽出物3を得た。
【0027】
<製造例4>
シソ科ヒキオコシの全草を充分に乾燥させた後、ミキサーで粉砕し、更にジェットミルで微細に粉砕し粉末として抽出物4を得た。
【0028】
<製造例5>
製造例1と同様にトウダイグサ科アカメガシワの樹皮500gを処理し、68gの粉末として抽出物5を得た。
【0029】
<製造例6>
製造例1と同様に、マメ科セイヨウエビラハギの地上部500gと、30%エタノール水溶液2Lを用いて処理し、47gのアモルファスとして抽出物6を得た。
【0030】
<製造例7>
製造例1と同様に、キク科エキナケア・パリダの根500gと、60%エタノール水溶液2Lを用いて処理し、78gのアモルファスとして抽出物7を得た。
【0031】
<製造例8>
製造例1と同様に、バラ科サンザシの果実の乾燥物500gを処理し、68gのアモルファスとして抽出物8を得た。
【0032】
<製造例9>
トチュウ科トチュウの葉1Kgに水5lを加え、加熱して2時間煮沸し、室温まで冷却した後、濾過して不溶物を取り除いた後、凍結乾燥し、抽出物9を淡黄色のアモルファスとして314g得た。
【0033】
<製造例10>
ミリン科のシロミリンノリの乾燥物100gに5000mlの水を加え、85℃で10分間超音波処理を加え、2時間30分浸漬を行い、室温まで戻し、不溶物を遠心分離(10000g×10分)して除去した後、凍結乾燥し、抽出物10を淡黄色のアモルファスとして、22.5g得た。
【0034】
<製造例11>
シロミリンノリをアカトサカノリに換えて、同様に処理し、抽出物11を淡黄色のアモルファスとして、15.5g得た。
【0035】
<製造例12>
シロミリンノリをアオトサカノリに換えて、同様に処理し、抽出物12を淡黄色のアモルファスとして、9.6g得た。
【0036】
<製造例13>
シロミリンノリを緑藻類のアオノリに換えて、同様に処理し、抽出物13を淡黄色のアモルファスとして、32g得た。
【0037】
<製造例14>
シロミリンノリをアカノリに換えて、同様に処理し、抽出物14を淡黄色のアモルファスとして、21.1g得た。
【0038】
<製造例15>
シロミリンノリをアカヤナギノリに換えて、同様に処理し、抽出物15を淡黄色のアモルファスとして、19g得た。
【0039】
<製造例16>
シロミリンノリをアオヤナギノリに換えて、同様に処理し、抽出物16を淡黄色のアモルファスとして、13.1g得た。
【0040】
<製造例17>
シロミリンノリをアカカエデノリに換えて、同様に処理し、抽出物17を淡黄色のアモルファスとして、21g得た。
【0041】
<製造例18>
シロミリンノリをアオカエデノリに換えて、同様に処理し、抽出物18を淡黄色のアモルファスとして、22.1g得た。
【0042】
<製造例19>
アカモク200gに水10000mlを加え、室温で1時間浸漬し、5000mlを取り出し、遠心分離(10000g×10分)して、この2500mlを凍結乾燥し、粗抽出物画分の抽出物19−1とした。(収量22.7g)残る2500mlを分画分子量5万の限外濾過膜を用いて限外濾過を行い分子量50000以上の分画と50000未満の分画に分け、50000以上の分画を凍結乾燥し抽出物19−2とした。50000未満の分画は、分画分子量3000の限外濾過膜を用いて限外濾過を行い、透過画分と残存画分とをそれぞれ凍結乾燥し、分子量3000〜50000の抽出物19−3と分子量3000未満の抽出物19−4とした。残る5000mlは温度85℃で更に2時間30分浸漬し、水抽出物と同様に処理して、粗抽出画分の抽出物19−5、分子量50000以上の抽出物19−6、分子量3000〜50000の抽出物19−7、分子量3000未満の抽出物19−8を得た。
【0043】
<製造例20>
製造例10のシロミリンノリをアラメに換えて、同様に処理し、抽出物20を淡黄色のアモルファスとして、44.1g得た。
【0044】
<製造例21>
製造例10のシロミリンノリをオオバキントキに換えて、同様に処理し、抽出物21を淡黄色のアモルファスとして、6.6g得た。
【0045】
斯くして得られた抽出物は、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害活性、特に、マトリックスメタロプロテアーゼ13(MMP13)阻害作用に優れ、これにより、関節炎・関節症を緩和したり、関節炎・関節症が悪化するのを防ぐ作用を有する。加えて、カルシウムなどの吸収を高め、関節などにおける、骨吸収等による関節の骨損失を抑え、関節変形からの炎症発現を抑制し、これらの相乗作用により、関節炎・関節症の発症予防、悪化予防、症状改善効果を奏する。この様な作用を発揮するためには、これらの抽出物は、一日あたり10〜10000mgを1回乃至は数回に分けて、経口経路で投与されることが好ましい。この時留意すべきことは、MMP13阻害活性が、抽出物の0.1%溶液において、40%以上存することを確認することである。阻害活性は既存のMMP13阻害活性測定用のキット、例えば、フナコシ薬品株式会社から販売されている、「MMP−13 Colorimetric Assay Kit (AK-412)」等を用い、測定することが出来る。阻害活性は、(1−検体存在下のプロテアーゼの反応速度/検体非存在下でのプロテアーゼの反応速度)×100の式で算出される。前記のMMP13の阻害活性が40%を下回るときには、前記作用を発現しない場合が存する。
【0046】
(2)本発明の経口投与組成物の必須成分であるアルカリ土類金属塩
本発明の経口投与組成物は、アルカリ土類金属塩を必須成分として含有することを特徴とする。前記アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、例えば、カルシウムやマグネシウムなどが好適に例示でき、カルシウムが特に好ましい。又、これらの塩としては水溶性であっても、水難溶性であっても、水不溶性であっても良く、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩やクエン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩等の有機酸塩等が好適に例示できる。特に好ましいものは、リン酸塩乃至は炭酸塩である。かかる成分は、経年的に減少した骨カルシウムを補填し、骨変形による、骨周囲組織における炎症の発生や、痛感の発生を抑制する作用を有する。この様な効果を奏するためには、前記アルカリ土類金属塩は一日あたり10〜10000mgを1回乃至は数回に分けて、経口経路で投与されることが好ましい。この量が摂取できる用量で製剤化されることが好ましい。又、かかる摂取量は前記の必須成分である抽出物の質量に対して0.1〜1000倍であることが好ましく、より好ましくは1〜500倍である。この様な量比を取ることにより、MMP13活性の亢進を、前記抽出物のMMP13阻害作用により抑えることが出来る。
【0047】
(3)本発明の経口投与組成物の必須成分であるアセチル化されていてもよいグルコサミン
本発明の経口投与組成物は、アセチル化されていても良いグルコサミンを必須成分として含有することを特徴とする。グルコサミンは既に試薬品としても、或いは、食品用の原料としても市販されているものが存し、この様なグルコサミンを購入し使用することが出来る。グルコサミンの基源としては、例えば、エビ、カニなどの甲殻類が好ましく例示できる。グルコサミンをアセチル化する方法は、常法に従えば良く、例えば、トリエチルアミンやピリジンなどを溶媒に用い、アセチルクロライドを等量乃至若干過剰に反応させればよい。アセチル化グルコサミンはこの様に調整して使用することも出来るし、既に市販されている試薬や食品用の原料を購入して利用することも出来る。この様な市販品としては、例えば、グルコサミンである商品名『ナチュラルグルコサミン 』やN−アセチルグルコサミン である商品名『マリンスウィート』(いずれも焼津水産化学工業株式会社販売)などが好適に例示できる。
【0048】
かかる成分は、関節炎・関節症などによって分解が亢進し、不足している生体内のグルコサミンを補い関節炎・関節症の症状を緩和したり、更なる悪化をを防ぐ作用を有する。この様な作用を発現するためには、グルコサミン乃至はアセチルグルコサミンを一日あたり10〜10000mgを1回乃至は数回に分けて、経口経路で投与されることが好ましい。又、かかる摂取量は前記の必須成分である抽出物の質量に対して0.1〜1000倍であることが好ましく、より好ましくは1〜500倍であることである。この様な量比を取ることにより、MMP13活性の亢進を、前記抽出物のMMP13阻害作用により抑えることが出来る。
【0049】
(3)本発明の経口投与組成物
本発明の経口投与組成物は、前記必須成分を含有し、関節炎・関節症様のものであることを特徴とする。本発明の経口投与組成物としては、経口投与される特徴を備えていれば特段の限定無く、例えば、経口投与医薬組成物、食品、飲み物などが好適に例示できる。この中では、食品が特に好ましく、中でも特定の機能を期待される特定保健用食品などの食品が特に好ましい。本発明の経口投与組成物には、前記の必須成分以外に、通常食品組成物で使用される任意成分を含有することが出来る。前記製剤化のための任意成分としては、例えば、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンなどの賦形剤、デンプン、セルロースなどの崩壊剤、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアガムなどの結合剤、ペクチン、レシチンなどの乳化・分散剤、白糖、蜂蜜、麦芽糖などの矯味剤、シェラック、ゼラチンなどの被覆剤などが好適に例示できる。かかる必須成分と任意成分とを常法に従って、錠剤、散剤、顆粒剤、菓子等に加工することにより、本発明の経口投与組成物は製造できる。
【0050】
以下に、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【0051】
<参考例>
製造例で作製した抽出物1〜21について、MMP−13阻害作用を指標に本発明の必須成分として使用可能か否かを検討した。各サンプルの0.1質量%水溶液(抽出物1のみ0.01質量%)を用い、MMP13阻害活性は「MMP−13 Colorimetric Assay Kit (AK-412)」を用いて測定した。結果を阻害率(%)として表1に示す。これより、抽出物19の分画物の一部を除いては、何れの抽出物も0.1質量%でMMP阻害活性が40%以上であることがわかる。従って、19−1、19−3、19−4、19−8以外は、何れの抽出物も本発明の経口投与組成物として好適であることが判明した。
【0052】
【表1】

【実施例1】
【0053】
前記の参考例でMMP−13活性阻害を測定した抽出物を用いて、下記の処方に従って、本発明の経口投与組成物である、食品(錠剤)を作製した。即ち、イの成分40質量部に50質量部の水を加え、擂壊機で10分間混ねりし、これを凍結乾燥し、再び擂壊機に戻し、粉砕し、これを他の成分とともに「ニューマルメライザー」(不二パウダル株式会社製)に仕込み、送風攪拌下、水100mlを噴霧し、造粒し、40℃の温風を3時間送風して、乾燥させ、これを打錠して、錠剤1(100mg)を得た。同様に、抽出物19−2を0.1%のMMP13阻害活性が30%である抽出物19−3に置換した比較例1、抽出物19−2をデキストリンに置換したプラシーボ1、リン酸カルシウムをデキストリンに置換したプラシーボ2、「ナチュラルグルコサミン」をデキストリンに置換したプラシーボ3も同様に作製した。
【0054】
【表2】

【0055】
<試験例1>
関節炎・関節症に悩む人25人を選抜して、5人ずつ5群に分け、1群には錠剤1を、1群には比較例1を、1群にはプラシーボ1を、1群にはプラシーボ2を、残る1群にはプラシーボ3を渡し、60日間朝晩2錠ずつ摂取してもらい、その後に関節炎・関節症の改善度を、著しく改善した、明らかに改善した、わずかに改善した、殆ど改善しない、変わらない、悪化したのカテゴリーに分けてどれであったかをアンケートにて答えてもらった結果を表3に示す。これより、本発明の経口投与組成物は関節炎・関節症の改善効果に優れることがわかる。
【0056】
【表3】

【実施例2】
【0057】
錠剤1と同様に下記の処方に従って、本発明の経口投与組成物である錠剤2(食品)を製造した。このものを関節炎・関節症に悩む人に30日間朝晩2錠ずつ摂取してもらったところ、関節炎・関節症は快方に向かった。
【0058】
【表4】

【実施例3】
【0059】
錠剤1と同様に下記の処方に従って、本発明の経口投与組成物である錠剤3(食品)を製造した。このものを関節炎・関節症に悩む人に30日間朝晩2錠ずつ摂取してもらったところ、関節炎・関節症は快方に向かった。
【0060】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、健康食品など関節炎・関節症を改善、予防するための食品に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)次に示す植物の抽出物と、2)アルカリ土類金属塩と3)アセチル化されていても良いグルコサミン及び/又はその塩とを含有する、関節炎・関節症の予防又は改善のための経口投与組成物。
(植物)サルノコシカケ科カバノアナタケ(Fuscoporia obliqua)、ベンケイソウ科コウケイテン(Rhodiolarosea L.)、ウコギ科エゾウコギ(Eucommia ulmoides)、シソ科ヒキオコシ(Isodon japonicus Hara )、トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)、マメ科セイヨウエビラハギ(Mallotus japonicus (Thunb.) Muell. Arg.)、キク科エキナケア・パリダ(Echinacea pallida)、バラ科サンザシ(Crataegus cuneata)、トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides)、褐藻類、緑藻類、紅藻類
【請求項2】
前記植物の抽出物は、0.1%溶液において、40%以上のマトリックスメタロプロテアーゼ13阻害作用を有するものであることを特徴とする、請求項1に記載の経口投与組成物。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属は、カルシウムであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の経口投与組成物。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属塩は、抽出物と複合体化した後、含有させることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の経口投与組成物。
【請求項5】
食品であることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の経口投与組成物。
【請求項6】
次の工程を経て製造されるものであることを特徴とする、請求項1〜5何れか1項に記載の経口投与組成物。
(工程1)サルノコシカケ科カバノアナタケ、ベンケイソウ科コウケイテン、ウコギ科エゾウコギ、シソ科ヒキオコシ、トウダイグサ科アカメガシワ、マメ科セイヨウエビラハギ、キク科エキナケア・パリダ及びバラ科サンザシ、トチュウ科トチュウ(Eucommia ulmoides)、褐藻類、緑藻類、紅藻類から選択される植物の植物体に抽出溶媒を加え、抽出物を作製する。
(工程2)前記抽出物の0.1%溶液におけるマトリックスメタロプロテアーゼ13活性阻害作用を測定し、該マトリックスメタロプロテアーゼ13活性阻害が50%以上存したものを原料として選択する。
(工程3)工程2で原料として選択された抽出物の水溶液と、アルカリ土類金属塩とを混練りし、アセチル化されていても良いグルコサミン及び/又はその塩と揮発分を除去した後、粉砕して製造中間体を作製する。
(工程4)工程3で作製した製造中間体と、アセチル化されていても良いグルコサミン及び/又はその塩と、製剤化の為の任意成分とを用いて製剤を作製する。

【公開番号】特開2008−156256(P2008−156256A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345108(P2006−345108)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】