説明

経皮吸収剤

【課題】製剤的な安全性の面だけでなく、患者側の使用感という面においても有用な経皮吸収型薬剤の提供。
【解決手段】吸収促進剤と薬剤とを備える経皮吸収型薬剤において、吸収促進剤として、皮膚浸透性機能を有するアルカリイオン水を用いる。吸収促進剤としてアルカリイオン水を用いると、薬剤として、エダラボンはもちろん、エダラボンと比較して水溶性の高い塩酸トラマドール、その他フルルビプロフェンなども、経皮吸収型薬剤中の薬剤として利用することもできる。この経皮吸収型薬剤は、従来より吸収促進剤として用いられていたエイゾンや、アルコールは、皮膚バリア能を低下させてしまう欠点があったが、アルカリイオン水を用いると、このような欠点がないので、製剤的な安全性の面だけでなく、患者側の使用感の面でも有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に浸透させて使用する経皮吸収型薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
経皮吸収型製剤において一般的に用いられている吸収促進剤としては、エイゾン1)、アルコール2)等が報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これらの吸収促進剤による効果は、皮膚バリア能の低下に基づくため、皮膚の正常な構造と生理機能を破壊し、それに対する生体反応としてしばしば皮膚刺激性反応を誘発する。これは、製剤的な安全性の面だけでなく、患者側の使用感という面においても、製剤の有用性を左右する極めて重要な問題点である。
【0004】
そこで本発明では、上述した問題点を解決し、製剤的な安全性の面だけでなく、患者側の使用感という面においても有用な経皮吸収型薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した問題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、吸収促進剤と薬剤とを備える経皮吸収型薬剤において、前記吸収促進剤として、皮膚浸透性機能を有するアルカリイオン水を用いたことを特徴とする。
【0006】
そして、請求項2に記載したように、前記アルカリイオン水は、「脱酸素処理を行って純水の溶存酸素を1ppm以下にする脱酸素工程と、この脱酸素工程により脱酸素処理を行った前記純水を電気分解する電気分解工程と、この電気分解工程により電気分解された前記純水のうち、陰極室側の前記純水を密閉された安定化槽内で4kg/cm2 以上の圧力をかけて安定化させる安定化工程とを経て、前記純水を処理することによって製造されたアルカリイオン水」を用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態の経皮(a)はエダラボン、(b)はトラマドール、(c)はフルルビプロフェンの構造式である。
【図2】本実施形態で用いるフランツセル100の斜視図である。
【図3】エダラボンを用いたEVA膜透過実験の実験結果を示すグラフ(時間−透過量)である。
【図4】エダラボンを用いた人工培養皮膚透過実験の実験結果を示すグラフ(時間−透過量)である。
【図5】エダラボンを用いたラット皮膚透過実験の実験結果を示すグラフ(時間−透過量)である。
【図6】トラマドールを用いたEVA膜透過実験の実験結果を示すグラフ(時間−透過量)である。
【図7】トラマドールを用いた人工培養皮膚透過実験の実験結果を示すグラフ(時間−透過量)である。
【図8】トラマドールを用いたラット皮膚透過実験の実験結果を示すグラフ(時間−透過量)である。
【図9】フルルビプロフェンを用いたEVA膜透過実験の実験結果を示すグラフ(時間−透過量)である。
【図10】本実施形態のマイナスイオン水の製造工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
各種薬物(エダラボン、トラマドールおよびフルルビプロフェン:本発明の薬剤に想到する)の膜透過に対する特殊還元性マイナスイオン水の影響。尚、以下の説明では、エダラボン、トラマドール、フルルビプロフェンについて説明しているが、このほかに、カルモフール、5−フルオロウラシル、ジクロフェナックナトリウムなど、経皮吸収型製剤に用いるものであればどのような薬剤を用いても良いことはもちろんである。
[1 Introduction]
経皮吸収型製剤において一般的に用いられている吸収促進剤としては、エイゾン1)、ア
ルコール2)等が報告されている。しかしこれらの吸収促進剤による効果は、皮膚バリア能の低下に基づくため、皮膚の正常な構造と生理機能を破壊し、それに対する生体反応としてしばしば皮膚刺激性反応を誘発する。これは、製剤的な安全性の面だけでなく、患者側の使用感という面においても、製剤の有用性を左右する極めて重要な問題点である。
【0009】
膜透過実験による吸収促進剤の評価には、これまでにエチレン酢酸ビニル共重合体(以下EVAと略す)の膜、人工培養皮膚、ラット皮膚およびブタの皮膚が用いられるが、これ
らの膜間の比較を行った報告はこれまでになされていない。EVA膜は、リザーバー型経皮
吸収製剤の放出制御膜として、放出制御度を調査する実験で用いられている他3)、その透過性が皮膚に似ているために皮膚透過を近似する目的でも、膜透過の評価が行われている4)。EVA膜は生きた組織でない合成膜であり、安価であるという利点がある。人工培養皮
膚は三次元に構築されたヒト皮膚モデルで、形態的、生化学的にヒト皮膚に近似しており、その透過性が経皮吸収を反映するということが示されている5)。しかし皮膚としてのバリア能は完全なものではなく、実際の皮膚よりも、透過しやすいという見解もある。ラット皮膚は生きた組織であり、ヒト皮膚透過に近い結果を期待できるため、多くの経皮吸収を予測するための膜透過実験に用いられている6)。動物の皮膚は、実際生きた生体組織であり、ヒト皮膚にかなり近い透過性を示すことが期待できるが、動物の犠牲という非常に大きな問題点がある。
【0010】
特殊還元マイナスイオン水(以下アルカリイオン水と略す:本発明のアルカリイオン水に相等する。)は自然水を電気分解で処理し、特殊な隔膜装置に通電、加圧させて得られた物理的に電子過剰な水であり、剥離作用による洗浄、消臭、除菌および防塵効果、また、酸化防止作用による防錆、防腐効果を表す。これらの特性を利用して、現在は洗浄液として用いられているが、このアルカリ性とマイナスイオンは、生体に害を与えないことが証明されている7)。最近では、乳化作用を持つことも報告されており8)、界面活性剤を利用せずに乳化できるアルカリイオン水を用いることにより医療用エマルションが調製可能となっている。乳化作用と高い皮膚浸透性を持つことから、アルカリイオン水に経皮吸収促進効果があることが予測されるが、アルカリイオン水の経皮吸収へ及ぼす影響を示した報告はこれまでになされていない。
【0011】
モデル薬物としては、エダラボン、塩酸トラマドール(以下トラマドールと略す)およびフルルビプロフェンの3種を主として研究材料とした。すなわち、エダラボンはラジカルスカベンジャーであり、脳梗塞時の脳組織の破壊を阻止することを目的とした注射剤として用いられている9)。肝代謝型薬物であるため、肝初回通過効果を回避できる経皮適用への期待は大きく、脂溶性で分子量も比較的小さいため、経皮からの吸収は良好であると予想される。エダラボンと比較して水溶性が高く経皮から吸収されにくいと予想される薬物も同時に評価するため、トラマドールを選択した。トラマドールは非麻薬性の鎮痛薬で、現在は注射剤として癌性疼痛に用いられている。フェンタニルの経皮吸収製剤であるデ
ュロパッチに続く、より最適な癌性疼痛のコントロールが可能な経皮吸収製剤が期待される。また、エダラボンの対照として分配係数が大きいフルルビプロフェンを用いた。フルルビプロフェンは疼痛、急性炎症・慢性炎症に対し、優れた鎮痛・抗炎症作用を示す薬物であり、経皮吸収製剤としての有用性も望まれている。
【0012】
そこで本実験では、アルカリイオン水を用いて、経皮吸収を想定した薬物膜透過実験を行い、その膜透過に及ぼす効果を調べた。また、薬物透過に対する膜の影響も含めて評価するため、複数の膜を用いて比較検討することにした。さらに得られた結果を基に、経皮吸収製剤への適用を検討した。
[2 Materials and methods]
[2-1 Materials]
膜透過実験に用いた膜は、エチレン酢酸ビニル(EVA)膜(50.8μm 9%VAフィルム スリーエムヘルスケア株式会社)、人工培養皮膚(TESTSKIN LSE-high 1週間および2週間培養モデル 東洋紡績株式会社)、ラット皮膚(ヘアレスラットHWY/Slc 日本エルエスシー株式会社)を使用した。
【0013】
ドナー中の溶媒として、特殊還元アルカリイオン水 (S-100 エー.・アイ・システムプロダクト)およびリン酸緩衝液(pH7.4,KH2PO4-Na2HPO4)を使用した。
モデル薬物としてのエダラボンは、西ら10)方法に従い合成したものを用いた。フルル
ビプロフェンは市販品(和光純薬工業株式会社)をそのまま使用した。塩酸トラマドール(以下トラマドールと略す)は、グルネンタール社(ドイツ)製を用いた。
【0014】
膜透過実験に用いたセルは、内径2cm、3.14cm2の透過面積をもち容量13mlのフランツセル(Crown Grass Company Inc)を用いた。尚、図1(a)はエダラボン、(b)はトラ
マドール、(c)はフルルビプロフェンの構造式である。
[2-2 Methods]
透過実験に用いる溶媒は、アルカリイオン水を10%含有させたリン酸緩衝液(以下、10%アルカリイオン水と略す)、アルカリイオン水を50%含有させたリン酸緩衝液(以下、50%アルカリイオン水と略す)、アルカリイオン水原液、および対照としてリン酸緩衝液を調製した。
【0015】
エダラボンは、10%アルカリイオン水、50%アルカリイオン水、アルカリイオン水原液およびリン酸緩衝液それぞれに3000μg/mlの濃度となるように溶解し、トラマドールはア
ルカリイオン水原液には難溶解性であるため、10%アルカリイオン水、50%アルカリイオン水、およびリン酸緩衝液それぞれに30000μg/mlの濃度となるように溶解し、各薬物溶液とした。
【0016】
図2に示すように、フランツセル100のレシーバー102側をリン酸緩衝液(pH7.4
)で満たした後、ドナー103側とレシーバー102側の間に膜をはさみ、試料液104を1ml正確に量り取り、ドナー103側に入れ密閉した。またレシーバー102側は37℃に保った。試験開始後経時的にレシーバー102中の溶液を10μl採取し、HPLCによる
薬物濃度測定を行った。
【0017】
試料中の薬物の測定は、高速液体クロマトグラフイー(HPLCポンプ:JascoPU-980、UV
検出器:JascoUV-975 各日本分光株式会社、カラム:LichosorbRP-18(7μm)(Cica-MERCK))を用いた。エダラボンの測定条件は、カラム温度40℃、測定波長240nm、流量1ml/minとし、移動相には、メタノール:超純水:酢酸=500:500:1の混液を用いた。トラ
マドールの測定条件は、カラム温度40℃、測定波長275nm、流量1ml/minとし、移動相には、アセトニトリル:リン酸緩衝液(pH3)=1:3の混液を用いた。
[3 Results and discussions]
肝代謝型薬物であるエダラボンは、肝初回通過効果経皮適用への期待が大きい。したがってエダラボンの膜透過特性とそれに対するアルカリイオン水の効果を検討し、エダラボン経皮適用製剤への可能性を検討した。
【0018】
EVA膜は、エチレン酢酸ビニル共重合体の膜であり、経皮適用製剤において放出制御膜
として用いられている。放出制御のメカニズムは、薬物が初め薬物溶液から膜へ分配し、次に膜から皮膚へと分配するという2段階の分配により説明できる。この膜が制御膜とし
て有用である理由としては、重合度や膜厚の調節が可能であるために、薬物の膜からの放出と皮膚への吸収の速度差をコントロールできるという利点がある。したがって薬物の皮膚への分配と似た特性を示すEVA膜を選び、その透過性を観測すれば、皮膚への分配、つ
まり経皮吸収を予測できるものと考えられる。そこでエダラボンを用いてEVA膜透過実験
行ったその結果を図3に示す。このグラフでは、膜を透過したエダラボンのレセプター中濃度が、時間に対して変化する様子をプロットした。実験開始後24時間までの各時間における透過量は、緩衝液、10%アルカリイオン水、50%アルカリイオン水の順となり、100%アルカリイオン水では全く透過しなかった。アルカリイオン水の濃度が濃いほどエダラボンの透過が抑制されており、その効果が濃度に比例していることからも、この透過抑制効果はアルカリイオン水の効果によるものと考えられた。50%アルカリイオン水の場合、透過
が抑制された上、長時間にわたって一定に近い速度で薬物を透過させている。これは徐放化の目的で利用するには最適の性質であると考えられた。
【0019】
次に用いた人工培養皮膚は、三次元構築ヒト皮膚モデルであり、形態的、生化学的にヒト皮膚に近似していることが実証され、現在注目を集めている。このモデルは2層で構築され、上層は多層分化したヒト皮膚角化細胞、下層はヒト皮膚繊維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル層より成り、ヒトの皮膚構造に似せて作られている。この膜は、生体に近い皮膚透過性を示すことが多くの実験で示されており、薬物透過試験・経皮吸収促進剤試験などの経皮吸収試験に利用されている。しかしながら皮膚としてのバリア能は完全なものではなく、実際の皮膚の吸収よりも、透過しやすいという見解もある。細胞の培養に時間がかかること、金銭的に高価であるという欠点も有しているもののヒトの経皮吸収を予測するには適していると考えられる。そこでエダラボンの人工培養皮膚を用いた透過実験を行った。その結果を図4に示す。実験開始後24時間までの各時間における透過量は、緩衝液、10%アルカリイオン水、50%アルカリイオン水、100%アルカリイオン水の順となり、人工培養皮膚の膜の場合もアルカリイオン水の濃度が高いほど透過を抑制するという結果であった。EVA膜の結果(図3)と比べると、人工培養皮膚では透過速度は速く、飽和に達するまでの時間が短いことから、EVA膜よりも薬物の透過性が高いと考えられる。しかしなが
ら溶媒の種類を変えた場合の透過しやすさの順番という点においては、EVA膜での結果と
同じ順番であった。また、100%アルカリイオン水を用いた結果では、一定速度での透過が、他の濃度が飽和に達した後も続いており、これは生体において薬物経皮吸収が一定速度で起こることを示し、薬物血中濃度の治療域での維持を可能にすると予測されるため、徐放化の目的で利用できると考えられた。
【0020】
薬物の皮膚透過性を調べる目的でラット皮膚が頻用されてきた6)。しかしながら生きた動物の皮膚を使用することで、動物保護の観点から動物の犠牲の問題などが提起されてきた。そこでラットの皮膚については、動物の犠牲を最小限にして傾向を把握するために、緩衝液と、50%のアルカリイオン水でのみ実験を行なった。この結果を図5に示す。これ
らの結果から、薬物がラット皮膚を通過してレセプター中への拡散が始まるまでに約10時間程度の時間を要することがわかった。これは生体組織であるラット皮膚の強固なバリア能によるものと考えられた。この結果と比べると、図4の結果に示される人工培養皮膚は、実際の生きた組織と比べるとバリア能が不十分であると考えられた。また、約30時間後から急激に透過性が増大したのは、ラットの皮膚組織がそのバリア能を失い、組織どうしの結合などが機能しなくなったためだと考えられた。以上のように透過性に関する膜固有
の特性を示すことができた。しかしラットの皮膚においてもアルカリイオン水がエダラボンの透過を抑制するという結果は、EVA膜および人工培養皮膚膜を用いた場合の透過性の
順番と同様であった。
【0021】
経皮吸収性を決定する薬物側の物理化学的要因は大きく2つあり、分子量と分配係数である。溶媒の経皮吸収性を評価する場合、この効果に分配係数が影響することが予測される。そのため、比較的脂溶性が高く、経皮吸収性も良いと予測されるエダラボンにおけるこれまでの結果に対して、水溶性の高い薬物についても同様の結果が得られるかどうか確かめることにした。
【0022】
ここで水溶性薬物として、エダラボンと近い分子量を持つトラマドールを選択し、これについてもエダラボンと同様に膜透過実験を行った。
トラマドールのEVA膜透過実験の結果を図6に示す。ある一定時間における透過量は、50%アルカリイオン水、10%アルカリイオン水、緩衝液の順に小さくなり、エダラボンでの
結果とは全く逆となった。アルカリイオン水の濃度が濃いほどトラマドール透過は促進されており、その効果がアルカリイオン水濃度に比例していることからも、この透過促進効果はアルカリイオン水の効果によるものと考えられた。
【0023】
トラマドールの人工培養皮膚透過実験での結果を図7に示す。ある一定時間における透過量は、50%アルカリイオン水、緩衝液の順となり、この場合もアルカリイオン水がトラ
マドールの膜透過を促進する結果となった。EVA膜での結果を示した図6と比べたとき、
薬物の透過性は全体的に大きくなっており、人工培養皮膚の透過性の高さは水溶性のトラマドールでも観測された。
【0024】
ラットの皮膚を用いたトラマドール膜透過実験の結果を図8に示す。図8の結果より、皮膚のバリア能によるものと考えられる放出開始時間の遅延は、トラマドールにおいても観測された。また、ラットの皮膚においてもアルカリイオン水がトラマドールの透過を促進するという結果は、EVA膜、人工培養皮膚での結果と同様であった。
【0025】
以上の結果より、アルカリイオン水の効果として、脂溶性薬物であるエダラボンの膜透過を抑制する効果および水溶性薬物である塩酸トラマドールの膜透過を促進する効果は、すべての膜で同様であることが判明した。したがってこのような膜透過実験を行う場合、すなわち溶媒や経皮吸収抑制あるいは促進効果などの予測を行う場合は、すべての膜を用いる必要は無く、1種類の膜で十分その効果を検証することが可能であると考えられた。
【0026】
表1に3種類の膜のそれぞれの利点と欠点をまとめて示した。人工培養皮膚は培養に2週間もかかるということと、またかなり高価であるという欠点があり、ラット皮膚には、動物の犠牲という大きな問題がある。それに対して、EVA膜は入手容易で安価であるという
利点を持ち、生体皮膚とは異質の素材でありながら、皮膚透過を近似できる膜透過性を示し、最適な素材であると考えられた。以降、薬物透過に対するアルカリイオン水の効果を調べる実験では、EVA膜を用いて評価し、経皮吸収性の予測を行うこととした。
【0027】
【表1】

【0028】
次に、アルカリイオン水の溶媒として薬物膜透過に及ぼす効果について考察する。本実験で得られた結果より、アルカリイオン水は脂溶性薬物であるエダラボンの膜透過を抑制し、水溶性薬物である塩酸トラマドールの膜透過を促進した。この理由を考えるにあたり、各溶媒への薬物の溶解性に注目した。エダラボンは脂溶性であるため緩衝液には難溶性を示したが、アルカリイオン水には易溶性を示した。つまり、エダラボンはアルカリイオン水に対して親和性を示した。逆に、トラマドールは水溶性であるため、緩衝液には易溶性を示したが、アルカリイオン水には難溶性を示した。
【0029】
薬物が膜を透過する第一ステップとしては薬物溶液からの膜への分配が不可欠となる。その次の段階として膜からレセプター側に分配して透過する。第一ステップにおいて、ドナー側の溶媒と膜との間での薬物の分配平衡は、当然ドナー側の溶媒を変えることにより変化する。このとき、溶媒にアルカリイオン水を用いた場合では、エダラボンは溶媒側に親和性を示すため、分配の平衡は溶媒側に傾いた形となり、すなわちドナー側の溶媒中に高濃度に存在し、透過が抑制されたと考えられた。逆に、塩酸トラマドールは溶媒側に親和しないため、分配の平衡は膜側に傾いた形となり、すなわち膜中に高濃度に存在し、さらにレシーバー側へ分配されることにより透過が促進されたと考えた。
【0030】
これらの結果においては、アルカリイオン水を含む溶媒のpHが薬物膜透過に影響を与
えている可能性も考えられたため、調製した各濃度のアルカリイオン水を含んだエダラボン溶液のpHを測定したところ、緩衝液では6.8、10%アルカリイオン水では6.9、50%アル
カリイオン水では7.4であった。したがって溶媒のpHは透過にほとんど影響を及ぼしていないと考えられた。
【0031】
このアルカリイオン水の効果が、これらの薬物に特異的でないことを確かめるために、追加実験としてNSAIDであるフルルビプロフェンのEVA膜透過に対するアルカリイオン水の効果を調べた。EVA膜を用いてフルルビプロフェンの透過実験を行った結果を図9に示す
。ある一定時間における透過量は、緩衝液、 10%アルカリイオン水の順となり、 50%アルカリイオン水では全く透過しなかった。アルカリイオン水の濃度が高いほど、透過を抑制しており、エダラボンと同じ結果となった。つまり脂溶性の高いフルルビプロフェンは分配率の高いエダラボンと同様に、アルカリイオン水により膜透過が抑制された。
[4 Conclusions]
本実験の結果をまとめて、以下に示す。
【0032】
すなわち、まず第一に、溶媒が与える膜透過への影響については、その絶対値は異なるものの3種類の膜いずれにおいても同様の傾向が観測された。膜透過性に対する溶媒の効果を評価する場合は、すべての膜で実験を行う必要は無く、1種類の膜で十分スクリーニングとしての予測が可能であると考えられた。その膜としては、動物の犠牲がなく、安価であるという利点から、EVA膜が適当であると考えられた。
【0033】
第二に、アルカリイオン水を用いた場合では、脂溶性薬物であるエダラボンおよびフルルビプロフェンの膜透過は抑制され、水溶性薬物である塩酸トラマドールの膜透過は促進された。これはアルカリイオン水の性質が薬物のドナーと膜との間の分配に関与するためであると考えられた。
【0034】
最後に、今回の結果により明らかとなったアルカリイオン水の膜透過に及ぼす効果にもとづいて、リザーバー型経皮適用製剤への応用の可能性について述べる。脂溶性薬物に対する膜透過抑制効果により、リザーバー型経皮適用製剤において、今まではEVA膜の厚さ
あるいは重合度を変えることで行っていた放出制御を、溶媒による放出制御と組み合わせることで、より目的に合わせた、理想的な放出のコントロールが期待できるものと思われる。一方、水溶性薬物に対する膜透過促進効果は従来の吸収促進剤の考え方を根底から変える革命的な発見であると考えられる。水溶性薬物は皮膚からの吸収性が低く、吸収促進剤の補助無しには臨床的に経皮適用することは困難である。皮膚バリア能を低下させ、皮膚刺激性反応を誘発してしまう既存の吸収促進剤に代わり、生体皮膚に対して無害であるアルカリイオン水は、皮膚バリア能に影響を与えない安全で強力な吸収促進剤としての利用が期待される。
[References]
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西廣吉、渡辺俊明、幸敏志、盛中秦洋、伊関克彦、特許 平 5-31523 (1993)
次に、アルカリイオン水について説明する。
【0035】
このアルカリイオン水は、「脱酸素処理を行って純水の溶存酸素を1ppm以下にする脱酸素工程と、
この脱酸素工程により脱酸素処理を行った前記純水を電気分解する電気分解工程と、
この電気分解工程により電気分解された前記純水のうち、陰極室側の前記純水を密閉された安定化槽内で4kg/cm2 以上の圧力をかける安定化工程と
を経て、前記純水を処理することによって製造されたマイナスイオン水」である。
【0036】
次に、本発明が適用された実施形態について説明する。
ここで、図10は、本実施形態のマイナスイオン水の製造工程を説明するための模式図である。
【0037】
図10に示すように、本実施形態のマイナスイオン水の製造方法では、3つの工程を経て、純水からマイナスイオン水を製造する。
第1の工程である脱酸素工程1では、イオン交換膜を用いて、純水中の溶存酸素の濃度を1ppm以下に落とす脱酸素処理を行う。
【0038】
第2の工程である電気分解工程2では、脱酸素処理を行った純水中に電極を配して純水を電気分解し、マイナスの電極が配された陰極室側の純水を取り出す電気分解処理を行う。
【0039】
第3の工程である安定化工程3では、電気分解工程により電気分解された前記純水のうち、陰極室側の純水を密閉された安定化槽内で4kg/cm2 の圧力をかけた状態で2〜3日寝かせる安定化処理を実行する。尚、安定化処理で純水にかける圧力は少なくとも4kg/cm2 以上あるとよく、より好ましくは12kg/cm2であるとよい。
【0040】
そして、この3つの製造工程を経て得られたマイナスイオン水について以下のような実験を行った。
<実験例1(本実施形態のマイナスイオン水の経時安定性)>
試験液1は、本実施形態のマイナスイオン水であり、試験液2は、レドックス株式会社製、商品名:レドックスウォータータイプIS‘生成機)というマイナスイオン水で、試験液3は、アマノ株式会社製、商品名:電解洗浄水精製装置Σ3000というマイナスイオン水である。そして、本実験では、これらの試験液を100mlの透明ガラス瓶に注いで満水の状態とした。そして、これらの試験液を室温にて開放放置し、そのpH変化、酸化還元電位(ORP)の変化、及び、外観変化を所定時間毎に測定した。また密閉した状態でも同様の測定を行った。
【0041】
【表2】

【0042】
外観観察では、3者間に有意の差は認められなかったが、pH変化および酸化還元電位(ORP)変化は表1に示されている通り、本実施形態のマイナスイオン水のpHが開放して放置したものについては72時間放置しても10に保たれていた一方で、他社品のpHは10を下回っている。また、密閉したものについては、本実施形態のマイナスイオン水は72時間放置してもpHが12.2に維持されていた一方で、他社品のpHは10を下回った。
【0043】
このことから、本実施形態のマイナスイオン水は、イオン化によって物理的に電子が過剰な状態が長期間安定的に維持されることが実証された。微生物である菌類(グラム陰性菌、グラム陽性菌、黴等)は高アルカリ性域では繁殖できないことが知られている。そのため、本実施形態のマイナスイオン水は殺菌効果があることが予想される。そこで、次に本実施形態のマイナスイオン水の制菌作用について実験を行った。
<試験例2(本実施形態のマイナスイオン水の制菌作用)>
試験液1は、本実施形態のマイナスイオン水であり、試験液2は、レドックス株式会社製、商品名:レドックスウォータータイプIS‘生成機という減菌精製水である。試験方法としては、一般的に使用されている"平板培養法"を使用し、保存温度は25℃に設定し、培養に用いるシャーレの中に、試験液1及び2及び各種菌を注入し、所定時間毎に生菌数を計数した。下記表2はその試験結果を示している。用いた菌は、大腸菌、緑膿菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、MRSA(メチシリン・レジスタント・スタヒロコッカス・アウレウスの略語で、メチシリン(抗生物質の名称)に耐性を獲得した黄色ブドウ球菌を意味する)、腸炎ビブリオである。
【0044】
【表3】

【0045】
試験液2では、24時間経過しても菌が生きており、MRSAに至っては、4倍に増加しているが、本実施形態のマイナスイオン水である試験液1が注入されたシャーレでは、何れの菌に対しても、6時間を経過した時点で生菌数が0となった。
【0046】
このことから、本実施形態のマイナスイオン水は、微生物やカビ等の発生が長期間安定的に抑制されるが実証された。
<試験例3(急性毒性試験)>
本実施形態のマイナスイオン水の急性毒性試験としてヒメダカに対する魚毒性試験を実施した。試験条件は以下の通りである。
試 験 魚 :ヒメダカ(平均体長3.0cm、平均体重0.24g)
順化条件 :試験前14日間、(自然放置により残留塩素を除去した水道水(pH7.9
)、水温 :23±1℃ 照明 :14時間/日で飼育して順化させた。尚、順化期間中の試験魚の死亡率は5%以下であった)
群魚数 :10尾、水温 :23±1℃、照明 :14時間/日
試験容器 :丸形ガラス製水槽
希 釈 水 :自然放置により残留塩素を除去した水道水(pH7.9)
試験水の調製 :本実施形態のマイナスイオン水を希釈水に添加して、1,000−10
0,000ppmの試験水を調製した。
測 定 :各試験水における試験魚の挙動を観察し、24、48、72及び96時間後
の死亡数を記録した。
結 果 :いずれの試験水でも死亡例は0であった。従って、0%死亡率は100,0
00mg/l以上であり、体重当りでは、218,341g/l以上となるので、本実施形態のマイナスイオン水は実質的には毒性を呈さないことが立証された。
<試験例4(洗浄力試験)>
試験水1は、本実施形態のマイナスイオン水、試験液2は、レドックス株式会社製、商品名:レドックスウォータータイプIS‘生成機というマイナスイオン水で、試験液3は、アマノ株式会社製、商品名:電解洗浄水精製装置Σ3000というマイナスイオン水である。また、界面活性剤を主体とする市販の台所用洗剤を標準品として、これらの試験液の洗浄力をJIS K3362(合成洗剤試験方法)の7.2(台所用合成洗剤)の洗浄
力評価法に準じて比較評価した。具体的には、標準汚れ(牛脂・大豆油・モノオレイン及びオイルレッドの混合物)を付着させたガラス片を装着した洗浄力試験器(回転数250±10rpm)を使用して3分間洗浄した後、1分間濯ぎを行い、次いで室温で1昼夜風乾した。ガラス片をクロロホルム溶液に浸し、クロロホルム溶液の赤色の程度(汚れ落ちの程度)を標準品により処理した場合と目視で比較することにより評価を行った。
【0047】
【表4】

【0048】
表3に示すように、試験液2及び3は、クロロホルム溶液の色が標準液より濃く、洗浄力が劣ることが判明したが、本実施形態のマイナスイオン水である試験液1は標準液と殆ど差がない洗浄力を有することが判明した。
<試験例5(帯電防止効果)>
JIS L0217に規定する洗い方番号103に準じて、洗い−濯ぎ−脱水−自然乾
燥を行った試料(ポリエステル100%)に、試料水(試験液1は本実施形態のマイナスイオン水、試験液2は、レドックス株式会社製、商品名:レドックスウォータータイプIS‘生成機というマイナスイオン水で、試験液3は、アマノ株式会社製、商品名:電解洗浄水精製装置Σ3000というマイナスイオン水、試験液4は純水である。)を20ml/m2吹きつけて、1時間熱風(70℃)乾燥した。その後24時間調湿し(温度20±
5℃、相対湿度40%以下)、ポリエチレン袋に封入し試料の調製を行った。試料を回転式摩擦装置に入れ、60±10℃のドラムで15分間運転した。絶縁性手袋でドラムより試料を取り出し、帯電電荷量測定装置のファラデーゲージに投入し、電位差計の数値V(v)を読み、帯電電荷量Q(C)を求めた。なお、試料に帯電している静電気は、1回ごとに自己放電式除電器を用いて除電した。
【0049】
【表5】

【0050】
この表4に示されている通り、本実施形態のマイナスイオン水は、他の試験液に比べて、帯電防止効果において優れていることが判明した。
<試験例6(消臭効果)>
試料水(試験液1は本実施形態のマイナスイオン水、試験液2は、レドックス株式会社製、商品名:レドックスウォータータイプIS‘生成機というマイナスイオン水で、試験液3は、アマノ株式会社製、商品名:電解洗浄水精製装置Σ3000というマイナスイオン水)1gを容器に秤取し、密栓して、メチルメルカプタン50μlをガスタイトシリンジを用いて密栓した容器に注入し、振盪しながら室温で放置した。経時的に容器内のガスをガスクロマトグラムへ注入した。同様の方法でブランクテストを行い、得られたガスクロマトグラム上のピーク高さを測定し、ブランクを本実施形態のマイナスイオン水として試料の各測定時刻における残存率を測定した。
【0051】
【表6】

【0052】
この表5に示されている通り、本実施形態のマイナスイオン水は、他の試験液に比べて消臭効果において極めて優れていることが判明した。
<試験例7(安全性)>
この実験では、マイナスイオン水を直接肌に触れさせる実験を行った。
【0053】
その結果、マイナスイオン水は、人間の肌に触れる前のpHが12であったが、肌に触れた瞬間に、人体に触れても安全なレベルである5.6にpHが下がった。
以上説明した本実施携帯の製造方法で製造したマイナスイオン水を用いると以下のような効果がある。
【0054】
この製造方法により製造されたマイナスイオン水は、実験1及び実験2により、長期間安定的に高いアルカリ性が維持されるため殺菌能力が継続的に維持されることが分かった。また、このマイナスイオン水は、実験7により、人体に触れると高いアルカリ性を維持する性能が失われ、人体に安全な状態になることが分かった。
【0055】
従って、本実施形態の製造方法(図1参照)により製造されたマイナスイオン水を用いれば、このマイナスイオン水が微生物やカビの発生を防止するので、長期間保存可能な製
剤組成物を調製することができる。また、本実施形態の製造方法により製造されたマイナスイオン水を用いれば、このマイナスイオン水は人体に触れると、人体にとって安全な状態になるので、使用者にとって安全な製剤組成物を調製することができる。
【0056】
その他、本発明の製造方法により製造されたマイナスイオン水は、実験4、実験5、実験6により、他のマイナスイオン水等に比べ、洗浄力や帯電防止効果、消臭効果に優れた特性を有する。
【0057】
尚、本実施形態のマイナスイオン水は、実験7より、肌に触れた瞬間に、pHが12か
ら5.6に変化することが分かった。これは、人体の汗等の体液と反応することで、マイナスイオン水が体液を中和するためであると考えられる。このように体液が中和されると、体内にあるアスコルビン酸(ビタミンC)が、この中和反応に引き寄せられて皮膚へと誘導すると考えられる。またビタミンCは美白効果があることが知られている。そのため、本実施形態のマイナスイオン水を肌につけると、美白効果があるとも考えられる。
【0058】
また、通常、水は表面張力が71dyne/cm〜73dyne/cmであり、皮脂によって殆ど皮膚への浸透力はないとされている。塩化ナトリウム(NaCl)を電解質としたpH12.38の
同じ電解水に於いても、71.1dyne/cmである。しかし、本実施形態のマイナスイオン
水の中和反応は、表面張力を低くし(29.2dyne/cm)、浸透力を増している。また、
一般に、皮膚の細胞内に水を浸透させることにより細胞の核から作られた老廃物を細胞外へ排出するとされているが、メラニン色素も皮膚細胞の核が必要と判断したもので老廃物の一種である。これは過剰な光線の吸収に役立つものではあるが、紫外線照射によって黒化の原因となる。細胞膜は、表面は親水性、内側は疎水性の性質を示し、膜として安定していられるのは、水の力によるところが大きい。水がリン脂質分子のサンドイッチを離れないように押しつけているのである。細胞膜以外にも、小胞体の膜、ミトコンドリアの内膜、外膜、ゴルジ体の膜など、細胞内に見られる膜は、基本的にはこのような構造をしていると考えられており、また細胞膜にはリン脂質以外にも多くの分子が存在する。細胞膜に埋め込まれたタンパク質を、膜タンパク質(membrane protein)と呼ぶが、脂質の二重膜は、膜タンパク質を浮かべる担体のはたらきをしているだけで、極言すれば細胞膜の性質は、膜タンパク質の性質に依存していると言える。膜タンパク質の中には、膜を貫通しているものがあるが、多くの膜貫通タンパク質は、ちょうど弁の付いた管のようになっていて、特定のイオンや物質を選択的に通すことができる。このタンパク質のおかげで、細胞膜は特定のイオンやブドウ糖などの必要な物質を通すことができる。本実施形態のマイナスイオン水の浸透圧は107mOsmと精製水1mOsmの107倍あり、細胞内液の浸透圧285±5mOsm/Lに近く、電離したイオンにより適度な浸透圧が行なわれ、細胞内に必要分の水を入れ炎症改善や老廃物の細胞外への誘導ができると考えられる。これらのことから、肌に張りを与え、シワの改善や、細胞内のくすみの原因である老廃物を外に出して、透き通った肌に修復していくことができると考えられる。
【0059】
以下、本実施形態のマイナスイオン水を用いて製造した化粧品等の例である。
尚、《カッコ内》の数値は、重量%である。
<例1(化粧水)>
本実施形態のマイナスイオン水《77.0》、 1,3−ブチレングリコール《10.
0》、 ポリオキシエチレン10ヒマワリ油《2.0》 《商品名:FLORASUN PEG-10, FLORATECH》、ポリオキシエチレン20オレイルエーテル《1.0》、 エタノール《10.0》、香料適量
調製法:エタノール及び本実施形態のマイナスイオン水以外の成分を混合し、攪拌しながら加熱し均一にする。これにエタノールを添加し充分に加えて良く混合した後に本実施形態のマイナスイオン水を更に添加して混合することにより均一な溶液となす。
<例2(栄養クリーム)>
POE(8)ミツロウ(商品名:APIFIL, GATTEFOSSE)《8.0》、ミリスチン酸オクチルドデシル 《10.0》、 イソステアリン酸イソステアリル《10.0》、本実施形態のマイナスイオン水《64.4》、 カルボキシビニルポリマー (商品名:カーボポール
934, B.F Goodrich)《0.2》、 水酸化ナトリウム(10%水溶液)《0.4》、ブナの芽抽出物(商品名:GATULINE RC, GATTEFOSSE)《2.0》、 ジエチレングリコールモノエチルエーテル 《5.0》
調製法:カーボポールを水に分散させる。攪拌しながら、75℃に加熱したカーボポール水溶液を75℃に加熱した APIFIL とエステルとの混合物に添加する。次に、水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを約7に調製する。攪拌しながら冷却し、30℃で他の成分を加えて完全に冷却する。
<例3(保湿用乳液)>
POE(6)ステアレートと、POE(20)セチルエーテル《6.0》、POE(20)ステアリルエーテルとの混合物 (商品名:TEFOSE 2000, GATTEFOSSE) ステアリン酸 《1.0》、ステアリン酸グリセリル《1.0》、イソステアリン酸イソステアリル《6.0》、ヒマワリ油(商品名:FLORASUN 90, FLORATECH)《4.0》、 ジメチルポリシロ
キサン(100CS)《2.0》、 本実施形態のマイナスイオン水《76.8》、 ヒドロキシエチルセルロース《0.2》、コラーゲン(商品名:PANCOGENE MARIN, GATTEFOSSE)《3.0》
調製法:ヒドロキシエチルセルロースを水に分散させ、静置する。攪拌しながら、75℃に加熱したヒドロキシエチルセルロース水溶液を75℃に加熱した乳化剤と油相に加える。75℃に2〜3分保持し、攪拌しながら冷却し、30℃で他の成分を加え完全に冷却する。
<例4(液体ファンデーション)>
(A相) 本実施形態のマイナスイオン水《60.0》、カルボキシメチルセルロース《0.3》、ケイ酸マグネシウムアルミニウム《0.8》、1,3−ブチレングリコール《10.0》
(B相) タルク《3.0》、酸化チタン《5.0》、ベンガラ《0.5》、黄酸化鉄《1.5》、黒酸化鉄《0.1》
(C相) ホホバエステル(商品名:FLORAESTERS 30, FLORATECH)《5.0》、パルミ
チン酸イソプロピル《7.0》、酢酸トコフェロール《0.2》、セタノール《0.5》
、ステアリン酸《2.5》、モノオレイン酸デカグリセリン《1.2》、デカオレイン
酸デカグリセリン《2.0》
(D相)トリエタノールアミン《0.4》
調製法:A相の本実施形態のマイナスイオン水を75℃に加熱する。CMCとケイ酸マグネシウムアルミニウムを予め混合しておき、急速攪拌しながら加熱し、本実施形態のマイナスイオン水に添加する。A相の残余の成分を予め混合しておき、緩く攪拌しながら、CMCとケイ酸マグネシウムアルミニウムとを含有する本実施形態のマイナスイオン水溶液に添加し、75℃で20分間混合する。高速ホモミキサーで攪拌しながら、75℃でB相成分をA相に加え、30分間攪拌する。攪拌しながらC相成分を80℃に加熱し、緩く攪拌しながら80℃でA+B相に徐々に添加する。20分間攪拌した後に、攪拌しながら75℃まで冷却させ、次いでD相成分を添加してpHを約7に調製し、室温まで冷却する。
<例5(W/O型ファンデーション)>
(A相) ジイソステアリン酸トリグリセリン《2.0》、硬化ヒマシ油《1.0》、流動パラフィン《14.0》、ジメチルポリシロキサン《2.0》
(B相) 親油処理酸化チタン《6.4》、黄酸化鉄《1.0》、ベンガラ《1.0》、ジイソステアリン酸トリグリセリル《3.0》流動パラフィン
(C相) 本実施形態のマイナスイオン水《68.6》、炭酸ナトリウム《0.5》、硫酸マグネシウム《0.5》
調製法:3本ロールを使用してB相成分を混練して均一にする(混練回数:3回)。B相
成分をA相に添加する。急速攪拌しながら、85℃に加熱したC相成分を85℃に加熱した(A+B)相に添加し、攪拌しながら冷却する。
<例6(台所用液体洗剤)>
本実施形態のマイナスイオン水《87.5》、アルキルエーテル硫酸塩《5.0》、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド《2.0》、EDTA−2Na《0.5》、プロピレングリコール《5.0》、香料 適量
調製法:全成分を混合し、均一になるまで攪拌する。
<例7(風呂場用殺菌洗浄剤)>
本実施形態のマイナスイオン水《94.0》、塩化ベンザルコニウム液《1.0》、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(商品名:ソフタノール90、 日本触媒)《2.0》
、メタケイ酸ナトリウム《3.0》
調製法:全成分を混合し、均一になるまで攪拌する。
<例8(石鹸タイプのボディー洗浄剤)>
ラウリン酸《3.0》、ミリスチン酸《7.0》、パルミチン酸《2.0》、オレイン酸《3.0》、ラウロイルジエタノールアミド《5.0》、グリセリン《20.0》、水酸化カリウム 《3.5》、本実施形態のマイナスイオン水《56.5》、香料 適量 キ
レート剤 適量
調製法:水酸化カリウム及び本実施形態のマイナスイオン水以外の成分を混合し、加熱しながら攪拌し、次いで水酸化カリウムの水溶液を添加する。均一になるまで攪拌し冷却する。
<例9(液体ボディーソープ)>
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム《30.0》、ラウリルエーテル硫酸アンモニウム《15.0》、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド《4.0》、塩化ナトリウム《2.0》、 植物抽出物《3.0》、キレート剤 適量、本実施形態のマイナスイオン水《46.0》
調製法:植物抽出物以外の成分を混合し、加熱しながら混合し均一にする。次いで、攪拌しながら冷却し、室温に至った時点で植物抽出物を添加して混合する。
<例10(液状浴用剤)>
ポリオキシエチレン(30)ポリオキシプロピレン(6)《20.0》、デシルテトラデシルエーテル グリセリン《25.0》、ヒマワリ油《25.0》、香料 適量、本実施形態のマイナスイオン水《30.0》
調製法:本実施形態のマイナスイオン水以外の成分を混合し、攪拌しながら均一にする。この混合物を攪拌しながら本実施形態のマイナスイオン水を添加して混合する。
【0060】
以上本発明の一実施形態ついて説明したが、本発明はこの実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
1…脱酸素工程、2…電気分解工程、3…安定化工程
100…フランツセル、102…レシーバー側、103…ドナー側、104…試料液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収促進剤と薬剤とを備える経皮吸収型薬剤において、
前記吸収促進剤として、皮膚浸透性能を有するアルカリイオン水を用いたことを特徴とする経皮吸収型薬剤。
【請求項2】
請求項1記載の経皮吸収型薬剤において、
前記アルカリイオン水は、
脱酸素処理を行って純水の溶存酸素を1ppm以下にする脱酸素工程と、
この脱酸素工程により脱酸素処理を行った前記純水を電気分解する電気分解工程と、
この電気分解工程により電気分解された前記水のうち、陰極室側の前記水を密閉された安定化槽内で4kg/cm2 以上の圧力をかけて安定化させる安定化工程と
を経て、前記水を処理することによって製造されることを特徴とする経皮吸収型薬剤。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図2】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−153689(P2012−153689A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25401(P2012−25401)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【分割の表示】特願2006−16666(P2006−16666)の分割
【原出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(598086316)株式会社エー・アイ・システムプロダクト (11)
【出願人】(503410764)
【Fターム(参考)】