説明

結腸癌関連遺伝子TOM34

【課題】結腸癌を検出及び診断する方法を提供する。
【解決手段】患者由来の細胞集団中に存在する、結腸癌細胞と正常細胞を識別するTOM34(ミトコンドリア外膜の34kDaトランスロカーゼ)遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む、結腸癌細胞又は直腸癌細胞の検出方法であって、前記遺伝子の発現レベルが、TOM34のmRNAの検出、TOM34によりコードされるタンパク質の検出、及びTOM34の生物学的活性の検出より選択される方法により決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、結腸癌を検出及び診断する方法並びに結腸癌を治療及び予防する方法に関する。
【0002】
本出願は、2005年7月27日に出願された米国特許仮出願第60/703,265号の恩典を主張する。当該仮出願の内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
結腸直腸癌は、世界で最も一般的な癌による死因の一つである。結腸直腸癌の診断及び治療は様々な進歩を遂げているが、多くの進行型結腸直腸癌患者の死亡率は高い。彼らの予後を改善するために、早期段階の癌腫の検出及びより効果的かつより無害な治療薬の発見のための高感度かつ特異的な診断バイオマーカーの開発が望まれる。この目的を達成するために、結腸直腸における発癌の分子的機構をさらに理解することが必要である。近年の分子的研究により、結腸直腸における発癌がAPC、p53、β-カテニン、及びK-rasを含む腫瘍抑制遺伝子及び/又は癌遺伝子における遺伝的変更を含む遺伝的変化の蓄積を伴うことが明らかになっている(Nishisho I, et al. Science 253: 665-669, 1991(非特許文献1); Baker SJ, et al., Science 244: 217-221, 1989(非特許文献2); Morin PJ, et al., Science 275: 1787-1790, 1997(非特許文献3); Forrester K, et al., Nature 327: 298-303, 1987(非特許文献4))。これらの種類の変更に加えて、後成的現象、例えばメチル化の変化(Jones PA & Laird PW, Nat Genet 21: 163-167, 1999(非特許文献5))及び刷り込みの消失(Cui H, et al., Nat Med 4: 1276-1280, 1998(非特許文献6))、並びに/又は遺伝的変化若しくはその他の未知の機序による非調節的な転写制御が、結腸直腸腫瘍の発生に関与する。発癌に関与する遺伝子の中でも、癌細胞の増殖及び/又は生存に必須の遺伝子産物の阻害は、それらの成長阻害又は細胞死を引き起こすであろうことが期待できる。従って、腫瘍形成活性を示しかつ癌細胞において特異的に発現される分子は、新規の抗癌薬を開発する上で有望な標的といえる。
【0004】
ヒトTOM34はヒトEST及びcDNAデータベースから発見され、この予測されたタンパク質が62残基モチーフの領域においてミトコンドリア受容体の公知の酵母Tom70ファミリーとの配列相同性を有することから、ミトコンドリアのタンパク質輸入機構の一要素であると予測された(Nuttall SD, et al., DNA Cell Biol 16: 1067-1074, 1997(非特許文献7))。しかし、近年の研究により、組織及び細胞の分画後にTOM34は主に細胞質ゾル画分に含まれ、部分的にミトコンドリア及び膜画分に含まれることが明らかとなった(Chewawiwat N, et al., J Biochem (Tokyo) 125: 721-727, 1999(非特許文献8))。別の研究は、免疫組織化学染色によりHeLa細胞の細胞質にその細胞内局在を示した(Chun-Song Yand Henry Y., Archives of Biochemistry and Biophysics 400: 105-110, 2002(非特許文献9); Abhijit M, et al., Archives of Biochemistry and Biophysics 400: 97-104, 2002(非特許文献10))。酵母ツーハイブリッドスクリーニング系は、TOM34が、AAA(様々な細胞活動に関連するATPase)ファミリーのメンバーであるバロシン含有タンパク質(VCP)(Chun-Song Y, et al., Archives of Biochemistry and Biophysics 400: 105-110, 2002(非特許文献9))又は90kDa熱ショックタンパク質(hsp90)(Young JC, et al., J Biol Chem 273: 18007-18010, 1998(非特許文献11))とインビトロで相互作用することを示した。しかしながら、TOM34の生物学的役割は依然として解明されていない。
【0005】
CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)はMHCクラスI分子上に存在する腫瘍関連抗原(TAA)由来のエピトープペプチドを認識し、この腫瘍細胞を溶解することが実証されている。TAAの最初の例としてMAGEファミリーが発見されたことにより、多くのその他のTAAが免疫学的アプローチを用いて発見され(Boon T., Int J Cancer. 1993;54(2):177-80(非特許文献12)、Boon T & van der Bruggen P, J Exp Med. 1996;183(3):725-9(非特許文献13)、van der Bruggen P, et. al., Science. 1991;254(5038):1643-7(非特許文献14)、Brichard V, et. al., J Exp Med. 1993;178(2):489-95(非特許文献15)、Kawakami Y, et. al., J Exp Med. 1994;180(1):347-52(非特許文献16))、現在そのうちのいくつかが免疫療法の標的として臨床開発の段階にある。現在までに発見されたTAAには、MAGE(van der Bruggen P, et. al., Science. 1991;254(5038):1643-7(非特許文献14))、gp100(Kawakami Y, et. al., J Exp Med. 1994;180(1):347-52(非特許文献16))、SART(Shichijo S, et. al., J Exp Med. 1998;187(3):277-88(非特許文献17))、NY-ESO-1(Chen YT, et. al., Proc Natl Acad Sci USA. 1997;94(5):1914-8(非特許文献18))が含まれる。同時に、腫瘍細胞によってある程度特異的に過剰発現されることがすでに示された遺伝子産物が、細胞性免疫反応の標的として認識されることが示された。これらには、p53(Umano Y, et. al., Br J Cancer. 2001;84(8):1052-7(非特許文献19))、HER2/neu(Tanaka H, et. al., Br J Cancer. 2001;84(1):94-9(非特許文献20))、CEA(Nukaya I, et. al., Int J Cancer. 1999;80(1):92-7(非特許文献21))等が含まれる。
【0006】
これらは基礎的及び臨床的研究においてなされた大いなる前進の一例であるが(Rosenberg SA, et. al., Nat Med. 1998;4(3):321-7(非特許文献22)、Mukherji B, et. al., Proc Natl Acad Sci USA. 1995;92(17):8078-82(非特許文献23)、Hu X, et. al., Cancer Res. 1996;56(11):2479-83(非特許文献24))、一般に結腸癌を含む腺癌の治療のための候補TAAは非常に限られた数しか存在しない。癌細胞においてのみ多量に発現され、正常細胞においては発現されないTAAがあれば、それらは免疫療法の標的として有望な候補になると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nishisho I, et al. Science 253: 665-669, 1991
【非特許文献2】Baker SJ, et al., Science 244: 217-221, 1989
【非特許文献3】Morin PJ, et al., Science 275: 1787-1790, 1997
【非特許文献4】Forrester K, et al., Nature 327: 298-303, 1987
【非特許文献5】Jones PA & Laird PW, Nat Genet 21: 163-167, 1999
【非特許文献6】Cui H, et al., Nat Med 4: 1276-1280, 1998
【非特許文献7】Nuttall SD, et al., DNA Cell Biol 16: 1067-1074, 1997
【非特許文献8】Chewawiwat N, et al., J Biochem (Tokyo) 125: 721-727, 1999
【非特許文献9】Chun-Song Yand Henry Y., Archives of Biochemistry and Biophysics 400: 105-110, 2002
【非特許文献10】Abhijit M, et al., Archives of Biochemistry and Biophysics 400: 97-104, 2002
【非特許文献11】Young JC, et al., J Biol Chem 273: 18007-18010, 1998
【非特許文献12】Boon T., Int J Cancer. 1993;54(2):177-80
【非特許文献13】Boon T & van der Bruggen P, J Exp Med. 1996;183(3):725-9
【非特許文献14】van der Bruggen P, et. al., Science. 1991;254(5038):1643-7
【非特許文献15】Brichard V, et. al., J Exp Med. 1993;178(2):489-95
【非特許文献16】Kawakami Y, et. al., J Exp Med. 1994;180(1):347-52
【非特許文献17】Shichijo S, et. al., J Exp Med. 1998;187(3):277-88
【非特許文献18】Chen YT, et. al., Proc Natl Acad Sci USA. 1997;94(5):1914-8
【非特許文献19】Umano Y, et. al., Br J Cancer. 2001;84(8):1052-7
【非特許文献20】Tanaka H, et. al., Br J Cancer. 2001;84(1):94-9
【非特許文献21】Nukaya I, et. al., Int J Cancer. 1999;80(1):92-7
【非特許文献22】Rosenberg SA, et. al., Nat Med. 1998;4(3):321-7
【非特許文献23】Mukherji B, et. al., Proc Natl Acad Sci USA. 1995;92(17):8078-82
【非特許文献24】Hu X, et. al., Cancer Res. 1996;56(11):2479-83
【発明の概要】
【0008】
結腸直腸における発癌の分子的な役割を確認するため、及び結腸直腸癌腫(CRC)患者の新規の治療標的を見出すため、本発明者らは23040種類の遺伝子からなるcDNAマイクロアレイを用いて発現プロファイルを行った(Lin YM, et al., Oncogene 21: 4120-4128, 2002)。結腸直腸腫瘍において上方制御された発現を示す遺伝子の中で、本発明者らは、その発現レベルが試験した20例のCRC試料のうちの16例において高頻度で増強されていたという理由で、TOM34(ミトコンドリア外膜の34kDaトランスロカーゼ)に注目した。多組織ノーザンブロット分析は、この遺伝子が精巣及び卵巣において多量に発現され、前立腺、脾臓、及び結腸において微弱に発現されるが、試験した11例のその他の正常成体組織のいずれにおいても発現されないことを明らかにした。TOM34の免疫組織化学染色は、それらに対応する非癌性粘膜に比べてCRC組織に有意な蓄積があることを示した。
【0009】
本発明において、ヒトTOM34がCRCにおいて高頻度で上方制御されること並びに精巣及び卵巣において発現されるが試験した15例のその他の正常成体組織においては発現されないことが確認された。このTOM34をsiRNAにより抑制すると結腸癌細胞の成長が顕著に減少することから、その遺伝子産物はヒト腫瘍の将来性のある治療標的及び有用な診断マーカーであり得る。
【0010】
さらに、TOM34は、結腸癌に対する有意な細胞性免疫反応を誘導し得るTAA(腫瘍関連抗原)として機能し得ることが考えられた。この仮説を試験するため、本発明者らは健常なボランティアから得たPBMCをTOM34由来のペプチドで刺激し、その抗原を発現する腫瘍細胞を認識し殺傷するペプチド特異的CTLクローンを得ることに成功した。
【0011】
具体的には、TOM34に特異的な低分子干渉RNA(siRNA)を結腸癌HCT116及びRKO細胞へトランスフェクトしたところ、その発現を効果的に抑制し、その細胞増殖を劇的に阻害した。
【0012】
さらに、本発明者らは、抗原性エピトープペプチドとして作用する能力についてTOM34由来の配列を有するペプチドを試験し、結腸癌に対する有意な細胞性免疫反応を誘導し得る有効な癌免疫療法のための新規のエピトープペプチドを探索した。健常なドナーの末梢血単核球(PBMC)を、TOM34の部分配列を有するペプチドを用いて刺激した。これらのペプチドは、HLA-A*2402に結合すると予測されるものを選択した。本発明者らは、HLA-A24拘束様式で抗原を提示する細胞に対する特異的な細胞傷害性を示す細胞傷害性Tリンパ球(CTL)細胞株を誘導し得る、配列がTOM34に由来する特定の抗原ペプチドを同定するのに成功した。CTLクローンはこれらのCTL細胞株から樹立した。CTLクローンのさらなる分析は、それらがペプチド負荷した標的細胞に対するだけでなく、TOM34を内因的に発現する細胞に対しても強力な細胞傷害活性を有することを示した。さらに、非放射性標的阻害アッセイ(cold target inhibition assay)は、このCTLクローンがMHCクラスI分子の複合体中の抗原ペプチドを特異的に認識することを示した。これらの結果は、このペプチドがTOM34を発現する結腸癌細胞に対する強力かつ特異的な免疫反応を誘導し得るHLA-A24拘束エピトープペプチドであることを強く示唆する。
【0013】
これらの知見は、TOM34が癌細胞の成長に関与すること、並びに新規の抗癌薬及び/又はCRCの診断の開発に寄与し得ることを示唆する。
【0014】
本発明は、TOM34の遺伝子発現パターンの発見に基づく。TOM34のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、それぞれ、SEQ ID NO:60及び61に示す。これらの配列はまた、Genbankアクセッション番号AB085681からも入手できる。
【0015】
従って、本発明は、患者由来の生物学的試料、例えば組織試料におけるTOM34の発現レベルを決定することにより、対象における結腸癌の素因を診断又は決定する方法を提供する。正常細胞は結腸組織から得られた細胞である。遺伝子の発現レベルがその遺伝子の正常対照レベルと比較して変化、例えば増加することは、対象が結腸癌を患っているか又は結腸癌を発症する危険があることを示す。
【0016】
本発明の文脈で使用する場合、「結腸癌の素因」という用語は、結腸癌に罹り易い対象の状態、結腸癌の傾向、有病性、体質、又は感受性を有する対象の状態を包含する。さらに、当該用語は、対象が結腸癌を獲得する危険があることも包含する。
【0017】
本発明の文脈では、「対照レベル」という語句は、対照試料において検出されるタンパク質の発現レベルを意味する。対照レベルは、単一の基準集団由来の単一の発現パターン、又は複数の発現パターン由来の単一の発現パターンであり得る。例えば、対照レベルは、以前に試験された細胞の発現パターンのデータベースであり得る。「正常対照レベル」は、結腸癌を患っていないことが既知の正常の健常な個体又は個体集団において検出される遺伝子発現レベルを意味する。正常な個体とは、結腸癌の臨床的症状を有さない個体である。
【0018】
試験試料において検出されるTOM34の発現レベルが正常対照レベルと比較して増加することは、対象(その試料を採取した)がCRCを患っているか又はCRCを発症する危険があることを示す。
【0019】
本発明によれば、遺伝子の発現レベルは、遺伝子発現が対照レベルと比較して10%、25%、50%増加している場合に「変化した」とされる。あるいは、発現レベルは、遺伝子発現が対照レベルと比較して少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、若しくは少なくとも10倍又はそれ以上増加する場合に「増加した」とされる。発現は、例えば、TOM34プローブと患者由来の組織試料の遺伝子転写物とのハイブリダイゼーションを検出することによって決定される。
【0020】
本発明の文脈では、患者由来の組織試料は試験対象、例えば結腸癌を有することが既知であるか又は結腸癌を有する疑いがある患者から採取した任意の組織である。例えば、組織は上皮細胞を含み得る。より具体的には、組織は結腸直腸癌腫由来の上皮細胞であり得る。
【0021】
本発明はさらに、TOM34を発現する試験細胞と試験化合物を接触させ、TOM34の発現レベル又はその遺伝子産物の活性を決定することによる、TOM34の発現又は活性を阻害する薬剤の同定方法を提供する。試験細胞は上皮細胞、例えば結腸直腸癌腫から採取した上皮細胞であり得る。TOM34の発現レベル又はその遺伝子産物の活性が、その遺伝子又はその遺伝子産物の対照レベル又は活性と比較して減少することは、その試験化合物がTOM34の阻害剤であり、結腸癌の症状を減少させるのに使用され得ることを示す。
【0022】
本発明はまた、TOM34核酸又はポリペプチドに結合する検出試薬を含むキットも提供する。
【0023】
本発明の治療的方法は、例えばアンチセンス組成物又は抗体組成物である、TOM34のアンタゴニスト又は阻害剤を対象に投与する段階を含む、対象における結腸癌を治療又は予防する方法を包含する。アンタゴニスト又は阻害剤は、TOM34の発現又は活性を減少又は阻害するよう核酸レベル又はタンパク質レベルのいずれかに対して作用し得るものである。
【0024】
本発明の文脈では、アンチセンス組成物は特定の標的遺伝子の発現を減少させる。例えば、アンチセンス組成物は、TOM34配列に相補的なヌクレオチドを含み得る。あるいは、本発明の方法は、低分子干渉RNA(siRNA)組成物を対象に投与する段階を含み得る。本発明の文脈では、siRNA組成物は、TOM34の発現を減少させる。さらに別の方法において、対象における結腸癌の治療又は予防は、リボザイム組成物を対象に投与することにより実行され得る。本発明の文脈では、核酸特異的なリボザイム組成物は、TOM34の発現を減少させる。実際に、TOM34に対するsiRNAの阻害効果を確認した。例えば、実施例の項においてTOM34に対するsiRNAが結腸癌細胞の細胞増殖を阻害することがはっきりと示されている。従って、本発明において、TOM34は結腸癌の好ましい治療標的である。
【0025】
本発明はまたワクチン及びワクチン接種方法も包含する。例えば、対象における結腸癌を治療又は予防する方法は、TOM34の核酸によりコードされるポリペプチド又はそのようなポリペプチドの免疫学的に活性な断片を含むワクチンを対象に投与する段階を含み得る。本発明の文脈では、免疫学的に活性な断片は、全長の天然タンパク質よりも長さが短いが、全長タンパク質により誘導される免疫反応と類似する免疫反応を誘導するポリペプチドである。例えば、免疫学的に活性な断片は、少なくとも8残基長であり、T細胞又はB細胞などの免疫細胞を刺激できるはずである。免疫細胞の刺激は、細胞増殖、サイトカイン(例えば、IL-2)生成、又は抗体産生を検出することによって測定され得る。
【0026】
別段に規定されない限り、本明細書中で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術の分野において通常の知識を有する者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。本発明の実施又は試験においては、本明細書中に記載される方法及び材料と類似する又はそれらと等価な方法及び材料が使用され得るが、以下では適切な方法及び材料を記載する。本明細書中で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。本明細書中のいかなる記載も、その開示が先行技術により想到されるために本発明に権利が付与されないことを自認するものと解釈してはならない。
【0027】
相反する場合は、定義も含めて本明細書が優先される。さらに、材料、方法、及び実施例は解説のみを目的とするものであり、限定を意図するものではない。
【0028】
本明細書中に記載される方法の利点の1つは、結腸癌の明白な臨床的症状を検出する前に疾患が同定されることである。本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなると考えられる。
[本発明1001]
患者由来の生物学的試料におけるTOM34の発現レベルを決定する段階を含み、該試料における発現レベルが該遺伝子の正常対照レベルと比較して増加していることが、対象が結腸癌を患っているか又は結腸癌を発症する危険があることを示す、対象において結腸癌又は結腸癌を発症する素因を診断する方法。
[本発明1002]
試料の発現レベルが正常対照レベルよりも少なくとも10%高い、本発明1001の方法。
[本発明1003]
遺伝子の発現レベルが、以下からなる群より選択される方法により決定される、本発明1001の方法:
(a)TOM34のmRNAの検出;
(b)TOM34によりコードされるタンパク質の検出;及び
(c)TOM34の生物学的活性の検出。
[本発明1004]
患者由来の生物学的試料が上皮細胞を含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
患者由来の生物学的試料が結腸癌細胞を含む、本発明1001の方法。
[本発明1006]
患者由来の生物学的試料が結腸癌細胞由来の上皮細胞を含む、本発明1001の方法。
[本発明1007]
以下の段階を含む、結腸癌を治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法:
(a)TOM34のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと試験化合物を接触させる段階;
(b)該ポリペプチドと試験化合物との間の結合活性を検出する段階;及び
(c)該ポリペプチドに結合する試験化合物を選択する段階。
[本発明1008]
以下の段階を含む、結腸癌を治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法:
(a)TOM34を発現する細胞と候補化合物を接触させる段階;及び
(b)TOM34の発現レベルを、試験化合物の非存在下で検出されるTOM34の発現レベルと比較して減少させる候補化合物を選択する段階。
[本発明1009]
該細胞が結腸癌細胞を含む、本発明1008の方法。
[本発明1010]
以下の段階を含む、結腸癌を治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法:
(a)TOM34のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと試験化合物を接触させる段階;
(b)段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階;及び
(c)TOM34のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的活性を、試験化合物の非存在下で検出される該ポリペプチドの生物学的活性と比較して抑制する試験化合物を選択する段階。
[本発明1011]
以下の段階を含む、結腸癌を治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法:
(a)TOM34の転写調節領域及び該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターを導入された細胞と候補化合物を接触させる段階;
(b)レポーター遺伝子の発現又は活性を測定する段階;及び
(c)レポーター遺伝子の発現又は活性を減少させる候補化合物を選択する段階。
[本発明1012]
(a)TOM34又は(b)TOM34によりコードされるポリペプチドに結合する検出試薬を含むキット。
[本発明1013]
TOM34のコード配列に相補的なヌクレオチド配列を含むアンチセンス組成物を対象に投与することを含む、対象における結腸癌を治療又は予防する方法。
[本発明1014]
TOM34の発現を減少させるsiRNA組成物を対象に投与することを含む、対象における結腸癌を治療又は予防する方法。
[本発明1015]
siRNAが、SEQ ID NO: 48又はSEQ ID NO: 52のヌクレオチド配列を含むセンス鎖を含む、本発明1014の方法。
[本発明1016]
siRNAが一般式
5’-[A]-[B]-[A’]-3’
を有し、式中、[A]はSEQ ID NO: 48又はSEQ ID NO: 52の配列に対応するリボヌクレオチド配列であり、[B]は3〜23のヌクレオチドからなるリボヌクレオチドループ配列であり、[A’]は[A]の相補配列からなるリボヌクレオチド配列である、本発明1015の方法。
[本発明1017]
TOM34のタンパク質に結合する薬学的有効量の抗体又は免疫学的に活性なそれらの断片を対象に投与する段階を含む、対象における結腸癌を治療又は予防する方法。
[本発明1018]
(a)TOM34の核酸によりコードされるポリペプチド、(b)該ポリペプチドの免疫学的に活性な断片、又は(c)該ポリペプチド若しくは(b)の免疫学的に活性な断片をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを対象に投与することを含む、対象における結腸癌を治療又は予防する方法。
[本発明1019]
免疫学的に活性な断片が、(i)SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むデカペプチド及び(ii)細胞傷害性T細胞誘導性を有し、1、2、又は数個のアミノ酸が置換又は付加されたSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むペプチドのいずれか又はその両方である、本発明1018の方法。
[本発明1020]
ポリペプチド、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドを含むベクターを抗原提示細胞と接触させる段階を含み、該ポリペプチドがTOM34によりコードされるか又は該ポリペプチドの免疫学的に活性な断片である、抗腫瘍免疫の誘導方法。
[本発明1021]
免疫学的に活性な断片が、(i)SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むデカペプチド及び(ii)細胞傷害性T細胞誘導性を有し、1、2、又は数個のアミノ酸が置換又は付加されたSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むペプチドのいずれか又はその両方である、本発明1020の方法。
[本発明1022]
抗原提示細胞を対象に投与する段階をさらに含む、本発明1020の方法。
[本発明1023]
本発明1007〜1011のいずれかの方法により得られる化合物を投与する段階を含む、対象における結腸癌を治療又は予防する方法。
[本発明1024]
TOM34のポリヌクレオチドに対する薬学的有効量のアンチセンスポリヌクレオチド又はsiRNAを含む、結腸癌を治療又は予防するための組成物。
[本発明1025]
siRNAがSEQ ID NO: 48又はSEQ ID NO: 52のヌクレオチド配列を含むセンス鎖を含む、本発明1024の組成物。
[本発明1026]
siRNAが一般式
5’-[A]-[B]-[A’]-3’
を有し、式中、[A]はSEQ ID NO: 48又はSEQ ID NO: 52の配列に対応するリボヌクレオチド配列であり、[B]は3〜23のヌクレオチドからなるリボヌクレオチドループ配列であり、[A’]は[A]の相補配列からなるリボヌクレオチド配列である、本発明1025の組成物。
[本発明1027]
TOM34によりコードされるタンパク質に結合する薬学的有効量の抗体又はそれらの断片を含む、結腸癌を治療又は予防するための組成物。
[本発明1028]
有効成分として本発明1007〜1011のいずれかの方法により選択される薬学的有効量の化合物、及び薬学的に許容される担体を含む、結腸癌を治療又は予防するための組成物。
[本発明1029]
SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むデカペプチド。
[本発明1030]
1、2、又は数個のアミノ酸が置換又は付加されたSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含む、細胞傷害性T細胞誘導性を有するペプチド。
[本発明1031]
N末端から二番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、又はトリプトファンである、本発明1030のペプチド。
[本発明1032]
C末端アミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、又はメチオニンである、本発明1030のペプチド。
[本発明1033]
有効成分として薬学的有効量の本発明1029又は1030のペプチドを含む、結腸癌の治療又は予防のための薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】様々な組織におけるTOM34遺伝子の発現レベルを示す。(A)結腸癌組織及びそれらに対応する非癌性粘膜における、TOM34の半定量RT-PCR分析。T、腫瘍組織;N、正常組織。GAPDHの発現を内部対照として用いた。(B)TOM34の多組織ノーザンブロット分析。TOM34の転写物はおよそ2.0kbの大きさである。
【図2】様々な組織におけるTOM34遺伝子によりコードされるタンパク質の発現レベルを示す。(A)結腸癌組織及びそれらに対応する非癌性粘膜におけるTOM34のウェスタンブロット分析。T、腫瘍組織;N、正常組織。(B)結腸癌細胞株におけるTOM34の発現。β-アクチンの発現を内部対照として用いた。
【図3】結腸癌組織におけるTOM34の免疫組織化学染色の結果を示す。(A及びB)癌性細胞及び非癌性細胞における代表的な染色画像。倍率:40倍。(C及びD)正常粘膜及び癌性組織の画像(C 正常、D 腫瘍)。倍率:200倍。
【図4】TOM34遺伝子の発現又はCRC細胞株の細胞増殖に対するTOM34 siRNAの抑制効果を示す。(A)HCT116細胞におけるTOM34の発現に対するsiRNAの効果。TOM34の発現はウェスタンブロット分析によって分析した。β-アクチンの発現を内部対照として用いた。EGFP特異的siRNA(siEGFP)を負の対照として調製した。(B)HCT116細胞の成長に対するTOM34-siRNAの効果。EGFP-siRNA又はTOM34-siRNAに対するHCT116細胞の生存率は三回行ったMTTアッセイにより測定した。エラーバー、SD;アスタリスクはシェフェのF検定により決定した有意差(P<0.0001)を示す。
【図5】10マーペプチドTOM34-299により誘導されたCTL株の細胞傷害効果を示す。10マーペプチドTOM34-299により惹起されたCTL株はペプチド特異的な細胞傷害性を示した。これらのCTL株は、TOM34-299を負荷した標的細胞(TISI)に対して高い細胞傷害活性を示したが、ペプチドを負荷しなかった同じ標的細胞(TISI)に対しては有意な細胞傷害活性を示さなかった。このことは、CTL株がペプチド特異的な細胞傷害性を有することを実証する。
【図6】TOM34-299により惹起されたCTL株の強力かつペプチド特異的な細胞傷害性を示す。これらのCTL株は、1.2という低いE/T比で検出可能な強力かつ抗原特異的な細胞傷害性を示した。
【図7】CTLクローンの強力な細胞傷害性を示す。TOM34-299に特異的な、非常に強力な細胞傷害性を有するCTLクローンを樹立することができる。TOM34-299に対してCTL株から樹立されたCTLクローンは多様な殺傷活性を示し、そのいくつかは極めて強力な活性を有していた。
【図8】TOM34-299により惹起されたCTLクローンのHLA特異性を示す。TOM34-299により惹起されたCTLクローンは、HLA拘束様式でTOM34を内因的に発現する腫瘍細胞を認識及び溶解する。TOM34を内因的に発現するDLD-1及びHT29結腸癌細胞株に対する細胞傷害活性は、TOM34-299により惹起された二つのCTLクローンをエフェクター細胞として用いて試験した。TOM34を内因的に発現するがHLA-A24を発現しないSNU-C2A細胞を標的として用いた。これらのCTLクローンは、TOM34及びHLA-A24を発現するDLD-1及びHT29の両細胞に対して高い細胞傷害活性を示した。他方、TOM34を発現するがHLA-A24を発現しないSNU-C2A細胞に対しては有意な細胞傷害活性を示さなかった。
【図9】TOM34-299により惹起されたCTLクローンのHLA特異性を示す。TOM34-299により惹起されたCTLクローンは、HLA-A24拘束様式でTOM34を特異的に認識する。非放射性標的阻害アッセイは、「材料及び方法」に記載される通りに実施した。Na251CrO4で標識したHT29細胞を放射性標的として調製し、TOM34-299ペプチドを負荷した又は負荷しなかったTISI細胞は51Crで標識せずに非放射性標的として用いた。E/T比は20で固定した。HT29細胞に対するCTLクローンの細胞傷害活性は、このペプチドを負荷した場合にのみTISI細胞の添加により阻害した。
【図10】TOM34-299により惹起されたCTLクローンの細胞傷害活性の特異性を示す。TOM34-299により惹起されたCTLクローンの細胞傷害活性は、T細胞表面抗原HLAクラスI又はCD8を認識する抗体により特異的に遮断される。T細胞表面抗原を認識する抗体の存在下でHT29細胞に対するCTLクローンの細胞傷害活性を決定した。CTL活性は、HLAクラスI又はCD8を認識する抗体の添加によりはっきりと遮断され、HLAクラスII又はCD4に対する抗体の添加により僅かに影響を受けたが、アイソタイプが一致する対照抗体の添加によっては全く阻害されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本明細書中で使用する「1つ(a)」、「1つ(an)」、及び「その(the)」という単語は、別段に明確な定めがない限り「少なくとも1つ」を意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、文脈が別段に要求しない限り、「含む、包含する(comprise)」という単語並びに「含む、包含する(comprises)」及び「含む、包含する(comprising)」等の派生語は、規定された整数若しくは段階又は一群の整数若しくは段階を含むことを意味するが、任意の他の整数若しくは段階又は一群の整数若しくは段階を除外することを意味しないことが理解されるであろう。
【0031】
本発明は、CRC患者の結腸組織由来の細胞においてTOM34の発現が上昇するという発見に一部基づく。この遺伝子発現の上昇は、網羅的なcDNAマイクロアレイシステムを用いることで同定した。
【0032】
23,040種類の遺伝子を含むcDNAマイクロアレイを用いて、以前に20名の患者の網羅的な遺伝子発現プロファイルを構築した。TOM34はCRC患者において高レベルで発現される。
【0033】
本明細書において同定されたTOM34は、CRCのマーカーとして診断目的で、及びCRCの症状を治療又は緩和するためにその発現を変化させる遺伝子標的として使用される。
【0034】
細胞試料中のTOM34の発現を測定することによってCRCが診断される。同様に、様々な薬剤に反応したTOM34発現を測定することによって、CRCを治療するための薬剤が同定され得る。
【0035】
本発明は、TOM34の発現の決定(例えば、測定)を包含する。TOM34配列についてのGenBank(商標)データベースのエントリーにより提供される配列情報を用いることで、TOM34は当業者に周知の技術を用いて検出及び測定される。例えば、TOM34に対応する配列データベースのエントリー内の配列は、例えば、ノーザンブロットハイブリダイゼーション分析においてTOM34 RNA配列を検出するためのプローブを作製するのに使用され得る。別の例として、配列は、例えば増幅に基づいた検出法、例えば逆転写に基づいたポリメラーゼ連鎖反応においてTOM34を特異的に増幅するためのプライマーの作製に使用され得る。
【0036】
試験細胞集団、例えば患者由来の組織試料におけるTOM34の発現レベルは次いで、基準集団におけるTOM34の発現レベルと比較される。基準細胞集団は、比較されるパラメータが既知の一つまたは複数の細胞、すなわちCRC細胞又は非CRC細胞を含む。
【0037】
試験細胞集団における遺伝子発現パターンが基準細胞集団と比較した場合にCRC又はその素因を示すか否かは、基準細胞集団の組成に依存する。例えば、基準細胞集団が非CRC細胞で構成される場合、試験細胞集団と基準細胞集団との間の遺伝子発現パターンの類似性は、試験細胞集団が非CRCであることを示す。逆に、基準細胞集団がCRC細胞で構成される場合、試験細胞集団と基準細胞集団との間の遺伝子発現プロファイルの類似性は、試験細胞集団がCRC細胞を含むことを示す。
【0038】
試験細胞集団におけるTOM34の発現レベルは、その発現レベルが基準細胞集団におけるTOM34に対応する発現レベルから1.0倍、1.5倍、2.0倍、5.0倍、10.0倍を上回るか又はそれ以上基準細胞集団と異なる場合に、発現レベルが変化したとされる。
【0039】
試験細胞集団と基準細胞集団との間の示差的な遺伝子発現は、対照核酸、例えば、ハウスキーピング遺伝子に対して標準化される。例えば、対照核酸はその細胞が癌性状態であるか非癌性状態であるかに依存して相違しないことが既知の核酸である。その試験における対照核酸及び基準核酸の発現レベルは、比較される集団におけるシグナルレベルを標準化するために使用され得る。対照遺伝子には、β-アクチン、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ、又はリボソームタンパク質P1が含まれる。
【0040】
試験細胞集団は、複数の基準細胞集団と比較される。複数の基準集団は各々、既知のパラメータが相違し得る。従って、試験細胞集団は、例えばCRC細胞を含むことが既知の第二基準細胞集団、及び例えば非CRC細胞(正常細胞)を含むことが既知の第二基準集団と比較され得る。試験細胞は、CRC細胞を含むことが既知であるか又はその疑いのある対象由来の組織型又は細胞試料中に含まれる。
【0041】
試験細胞は、体組織又は体液、例えば、生物学的液体(例えば、血液又は尿)から得られる。例えば、試験細胞は組織から精製される。好ましくは、試験細胞集団は上皮細胞を含む。上皮細胞は、CRCであることが既知の又はその疑いのある組織由来のものである。
【0042】
基準細胞集団中の細胞は、試験細胞と類似する組織型由来のものであり得る。基準細胞集団は細胞株、例えば、CRC細胞株(正の対照)又は正常な非CRC細胞株(負の対照)であってもよい。あるいは、対照細胞集団は、アッセイパラメータ又は条件が公知の細胞由来の分子情報のデータベース由来のものであり得る。
【0043】
対象は好ましくは哺乳動物である。哺乳動物は、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、又はウシであり得る。
【0044】
本明細書中に開示されるTOM34の発現は、当技術分野で公知の方法を用いてタンパク質レベル又は核酸レベルで決定される。例えば、配列を特異的に認識するプローブを用いたノーザンハイブリダイゼーション分析が、遺伝子発現を決定するのに使用され得る。あるいは、発現は、例えばTOM34に特異的なプライマーを用いる逆転写に基づいたPCRアッセイを用いて測定される。発現はまた、タンパク質レベルで、すなわち、本明細書中に記載される遺伝子産物によりコードされるポリペプチドのレベル、又はその生物学的活性を測定することによって決定される。このような方法は当技術分野で周知であり、例えば、TOM34によりコードされるタンパク質に対する抗体に基づく免疫アッセイが含まれる。この遺伝子によりコードされるタンパク質の生物学的活性もまた周知である。
【0045】
CRCの診断:
本発明の文脈では、CRCは細胞の試験集団(すなわち、患者由来の生物学的試料)由来のTOM34の発現レベルを測定することによって診断される。好ましくは、試験細胞集団は、上皮細胞、例えば結腸組織から得られる細胞を含む。遺伝子発現はまた、血液又はその他の体液、例えば尿から測定され得る。タンパク質レベルを測定するために、その他の生物学的試料が使用され得る。例えば、診断対象由来の血液又は血清中のタンパク質レベルは免疫アッセイ又はその他の従来的な生物学的アッセイによって測定され得る。
【0046】
TOM34の発現は、試験細胞又は生物学的試料において決定され、アッセイされるTOM34と関連する正常対照の発現レベルと比較される。正常対照レベルとは、典型的にはCRCを患っていないことが既知の集団において見出されるTOM34の発現プロファイルである。患者由来の組織試料におけるTOM34の発現レベルの変化(例えば、増加)は、対象がCRCを患っているか又はCRCを発症する危険があることを示す。例えば、試験集団におけるTOM34の発現が正常対照レベルと比較して増加することは、対象がCRCを患っているか又はCRCを発症する危険があることを示す。
【0047】
試験集団においてTOM34が正常対照レベルと比較して変化することは、対象がCRCを患っているか又はCRCを発症する危険があることを示す。
【0048】
生物学的試料におけるTOM34の発現レベルは、TOM34に対応するmRNA又はTOM34によりコードされるタンパク質を定量することによって推定され得る。mRNAの定量法は当業者に公知である。例えば、TOM34 mRNAのレベルは、ノーザンブロット又はRT-PCRによって推定され得る。TOM34のヌクレオチド配列は公知であるため、当業者はTOM34を定量するためのプローブ又はプライマーのヌクレオチド配列を設計することができる。例えば、SEQ ID NO: 43及び44のヌクレオチド配列を含むTOM34特異的プライマーセットが好ましいプライマーである。
【0049】
TOM34の発現レベルはまた、TOM34タンパク質の活性又は量に基づいて分析され得る。TOM34タンパク質の量を決定する方法については後述する。例えば、免疫アッセイ法は、生物学的材料中のタンパク質の決定に有用である。TOM34遺伝子が結腸癌患者の試料中で発現される限り、任意の生物学的材料がタンパク質又はその活性の決定のための生物学的試料として使用され得る。例えば、結腸組織試料がそのような生物学的試料であると言える。しかしながら、血液及び尿等の体液もまた分析され得る。他方、TOM34遺伝子によりコードされるタンパク質の活性の決定に適した方法は、分析対象のタンパク質の活性に従って選択され得る。
【0050】
生物学的試料中のTOM34遺伝子の発現レベルが推定され、正常試料(例えば、疾患を有さない対象由来の試料)における発現レベルと比較される。遺伝子の発現レベルが正常試料における発現レベルよりも高いことがそのような比較から示される場合、対象は結腸癌に罹患していると判断される。正常対象及び診断対象由来の生物学的試料におけるTOM34遺伝子の発現レベルは、同時に決定され得る。あるいは、その発現レベルの正常範囲は、対照群からあらかじめ採取した試料における遺伝子の発現レベルを分析することにより得られた結果に基づく統計的方法により決定され得る。対象の試料を比較することにより得られる結果はその正常範囲と比較され、その結果が正常範囲に含まれない場合、対象は結腸癌に罹患しているか又は結腸癌を発症する危険があると判断される。
【0051】
本発明においては、結腸癌を診断するための診断剤もまた提供される。本発明の診断剤は、TOM34遺伝子のポリヌクレオチド又はポリペプチドに結合する化合物を含む。好ましくは、TOM34遺伝子のポリヌクレオチドにハイブリダイズするオリゴヌクレオチド又はTOM34遺伝子によりコードされるポリペプチドに結合する抗体が、このような化合物として使用され得る。さらに、アプタマー、例えばRNAアプタマー、DNAアプタマー、又はペプチドアプタマーがこのような化合物として使用され得る。好ましくは、診断剤は、蛍光標識、発光標識、又は生物発光標識等の当技術分野で一般的に公知の検出可能な標識を含む。
【0052】
本発明の結腸癌診断方法は、対象における結腸癌の治療の有効性を評価するために使用され得る。本方法によれば、試験細胞集団などの生物学的試料は、結腸癌に対する治療を受けている被験者から得られる。本評価方法は結腸癌を診断する従来的方法に従って行われ得る。
【0053】
必要ならば、生物学的試料は、治療前、治療中、又は治療後の様々な時点で対象から採取される。次いで、試験生物学的試料におけるTOM34遺伝子の発現レベルが決定され、例えば、結腸癌の状態が既知の細胞(すなわち癌性細胞又は非癌性細胞)を含む基準細胞集団由来の対照レベルと比較される。対照レベルはこの治療を受けていない生物学的試料において決定される。
【0054】
対照レベルが非癌性細胞を含む生物学的試料由来である場合、対象由来の生物学的試料における発現レベルと対照レベルが類似することは、治療が有効であることを示す。対象由来の生物学的試料におけるTOM34遺伝子の発現レベルと対照レベルが相違することは、臨床転帰又は予後が好ましくないことを示す。
【0055】
TOM34の発現を阻害する薬剤の同定:
TOM34の発現又はその遺伝子産物の活性を阻害する薬剤は、TOM34を発現する試験細胞集団を試験薬剤と接触させ、次いでTOM34の発現レベル又はその遺伝子産物の活性を決定することによって同定され得る。その薬剤の存在下でのTOM34の発現レベル又はその遺伝子産物の活性レベルが、試験薬剤の非存在下での発現レベル又は活性レベルと比較して減少していることは、その薬剤がTOM34の阻害剤であり、CRCを阻害するのに有用であることを示す。
【0056】
試験細胞集団は、TOM34を発現する任意の細胞であり得る。例えば、試験細胞集団は、上皮細胞、例えば、結腸組織由来の細胞を含み得る。さらに、試験細胞は、癌腫細胞又は結腸直腸癌由来の不死化細胞株であり得る。あるいは、試験細胞は、TOM34がトランスフェクトされた細胞、又は、レポーター遺伝子に機能的に連結されたTOM34由来の調節配列(例えば、プロモーター配列)がトランスフェクトされた細胞であり得る。
【0057】
対象におけるCRC治療の有効性の評価:
本明細書において同定された示差的に発現されるTOM34はまた、CRCの治療経過のモニタリングを可能にする。この方法において、試験細胞集団は、CRC治療を受けている対象から提供される。必要ならば、試験細胞集団は治療前、治療中、及び/又は治療後の様々な時点の対象から採取される。次いで、その細胞集団におけるTOM34の発現が決定され、CRCの状態が既知の細胞を含む基準細胞集団と比較される。本発明の文脈では、基準細胞は関心対象の治療を受けてないものである。
【0058】
基準細胞集団がCRC細胞を含まない場合、試験細胞集団及び基準細胞集団におけるTOM34の発現が類似することは、関心対象の治療が有効であることを示す。しかしながら、試験集団及び正常対照の基準細胞集団におけるTOM34の発現が相違することは、臨床転帰又は予後が好ましくないことを示す。同様に、基準細胞集団がCRC細胞を含む場合、試験細胞集団及び基準細胞集団におけるTOM34の発現が相違することは、関心対象の治療が有効であることを示すが、試験集団及び癌対照の基準細胞集団におけるTOM34の発現が類似することは、臨床転帰又は予後が好ましくないことを示す。
【0059】
さらに、治療後に採取した対象由来の生物学的試料において決定されたTOM34の発現レベル(すなわち、治療後レベル)が、治療開始前に採取された対象由来の生物学的試料において決定されたTOM34の発現レベル(すなわち、治療前レベル)と比較され得る。治療後試料においてTOM34の発現レベルが減少していることは、関心対象の治療が有効であることを示すが、治療後試料において発現レベルが増加しているか又は維持されることは、臨床転帰又は予後が好ましくないことを示す。
【0060】
本明細書中で使用する場合、「有効」という用語は、その治療が、対象において病理学的に上方制御される遺伝子の発現を減少させるか、又はCRCの大きさ、有病率、若しくは転移能力を減少させることを示す。関心対象の治療が予防的に適用される場合、「有効」という用語は、その治療が、CRCの形成を遅らせる若しくは妨げるか、又は臨床的なCRCの症状を遅らせる、妨げる、若しくは緩和することを意味する。結腸腫瘍の評価は、標準的な臨床プロトコルを用いて行われ得る。
【0061】
さらに、有効性は、CRCを診断又は治療するための任意の公知の方法と組み合わせて決定され得る。CRCは、例えば、異常な症状、例えば、体重の減少、腹痛、背痛、食欲不振、吐き気、嘔吐、及び全身の倦怠感、衰弱、並びに黄疸を同定することにより診断され得る。
【0062】
特定の個体に適したCRCを治療するための治療剤の選択:
個体間の遺伝的構造の違いは、様々な薬物を代謝する能力の相対的な違いをもたらし得る。薬剤が対象において代謝され抗CRC剤として作用することは、癌性状態に特徴的な遺伝子発現パターンから非癌性状態に特徴的な遺伝子発現パターンへの、対象の細胞における遺伝子発現パターンの変化を誘導することから明らかになり得る。従って、本明細書中に開示される示差的に発現されるTOM34は、その薬剤がその対象におけるCRCに適した阻害剤であるかどうかを決定するために、CRCの治療的又は予防的な推定阻害剤を選択された対象由来の試験細胞集団において試験するのに役立つ。
【0063】
特定の対象に適したCRCの阻害剤を同定するために、対象由来の試験細胞集団が治療剤に曝され、TOM34の発現が決定される。
【0064】
本発明の方法の文脈では、試験細胞集団はTOM34を発現するCRC細胞を含む。好ましくは、試験細胞は上皮細胞である。例えば、試験細胞集団は、候補薬剤の存在下でインキュベートされ得、そして試験細胞集団の遺伝子発現パターンが測定され、一つまたは複数の基準プロファイル、例えば、CRC基準発現プロファイル又は非CRC基準発現プロファイルと比較され得る。
【0065】
試験細胞集団におけるTOM34の発現が、CRCを含む基準細胞集団よりも減少していることは、その薬剤が治療上の潜在能力を有することを示す。
【0066】
本発明の文脈では、試験薬剤は任意の化合物、又は組成物であり得る。試験薬剤の例には、免疫調節剤が含まれるがこれに限定されない。
【0067】
治療剤を同定するためのスクリーニングアッセイ:
TOM34遺伝子、この遺伝子によりコードされるタンパク質又はこの遺伝子の転写調節領域を使用することで、この遺伝子の発現又はこの遺伝子によりコードされるポリペプチドの生物学的活性を変化させる化合物がスクリーニングされ得る。このような化合物は、CRCを治療又は予防するための医薬物として使用され得る。
【0068】
従って、本発明は、TOM34ポリペプチドを用いてCRCを治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法を提供する。このスクリーニング方法の一つの態様は:
(a)TOM34のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと試験化合物を接触させる段階、
(b)該ポリペプチドと試験化合物の間の結合活性を検出する段階、及び
(c)該ポリペプチドに結合する試験化合物を選択する段階
を含む。
【0069】
スクリーニングに使用されるTOM34ポリペプチドは、組換えポリペプチド若しくは天然由来タンパク質又はそれらの部分ペプチドであり得る。試験化合物と接触させるポリペプチドは、例えば、精製ポリペプチド、可溶性ポリペプチド、担体結合形態、又は他のポリペプチドと融合された融合タンパク質であり得る。
【0070】
TOM34ポリペプチドを用いて、例えばTOM34ポリペプチドに結合するタンパク質をスクリーニングする方法として、当業者に周知の多くの方法が使用され得る。このようなスクリーニングは、例えば、免疫沈降法によって、特に以下の様式で行われ得る。TOM34ポリペプチドをコードする遺伝子は、その遺伝子を外来遺伝子発現ベクター、例えば、pSV2neo、pcDNA I、pcDNA3.1、pCAGGS、及びpCD8に挿入することによって宿主(例えば、動物)細胞等において発現させる。発現に使用されるプロモーターは、一般的に使用され得る任意のプロモーターであり得、例えば、SV40初期プロモーター(Rigby in Williamson (ed.), Genetic Engineering, vol. 3. Academic Press, London, 83-141 (1981))EF-αプロモーター(Kim DW, et al., Gene 91: 217-23 (1990))、CAGプロモーター(Niwa et al., Gene 108: 193-9 (1991))、RSV LTR プロモーター(Cullen, Methods in Enzymology 152: 684-704 (1987))、SRαプロモーター(Takebe et al., Mol Cell Biol 8: 466-72 (1988))、CMV最初期プロモーター(Seed and Aruffo, Proc Natl Acad Sci USA 84: 3365-9 (1987))、SV40後期プロモーター(Gheysen and Fiers, J Mol Appl Genet 1: 385-94 (1982))、アデノウイルス後期プロモーター(Kaufman et al., Mol Cell Biol 9: 946-58 (1989))、HSV TK プロモーター等が含まれる。外来遺伝子を発現させるための宿主細胞への遺伝子導入は、任意の方法、例えば、エレクトロポレーション法(Chu et al., Nucleic Acids Res 15: 1311-26 (1987))、リン酸カルシウム法(Chen and Okayama, Mol Cell Biol 7: 2745-52 (1987))、DEAEデキストラン法(Lopata et al., Nucleic Acids Res 12: 5707-17 (1984); Sussman and Milman, Mol Cell Biol 4: 1641-3 (1984))、リポフェクチン法(Derijard, B Cell 76: 1025-37 (1994); Lamb et al., Nature Genetics 5: 22-30 (1993): Rabindran et al., Science 259: 230-4 (1993))等によって実行され得る。TOM34遺伝子によりコードされるポリペプチドは、その特異性が明らかなモノクローナル抗体のエピトープをポリペプチドのN末端又はC末端に導入することにより、モノクローナル抗体の認識部位(エピトープ)を含む融合タンパク質として発現され得る。市販されているエピトープ-抗体系が使用され得る(Experimental Medicine 13: 85-90 (1995))。そのマルチクローニングサイトを使用して、例えば、β-ガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク質、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)等との融合タンパク質を発現し得るベクターが市販されている。
【0071】
TOM34ポリペプチドの特性を融合によって変更させないよう数個から数十個のアミノ酸からなる小型のエピトープのみを導入することによって調製された融合タンパク質もまた報告されている。ポリヒスチジン(Hisタグ)、インフルエンザ凝集素HA、ヒトc-myc、FLAG、水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSV-GP)、T7遺伝子10タンパク質(T7タグ)、ヒト単純疱疹ウイルス糖タンパク質(HSVタグ)、Eタグ(単クローンファージのエピトープ)等のエピトープ、及びそれらを認識するモノクローナル抗体が、TOM34ポリペプチドに結合するタンパク質をスクリーニングするためのエピトープ-抗体系として使用され得る(Experimental Medicine 13: 85-90 (1995))。
【0072】
免疫沈降において、免疫複合体は、適切な界面活性剤を用いて調製された細胞溶解物にこれらの抗体を添加することによって形成される。免疫複合体は、TOM34ポリペプチド、このポリペプチドとの結合能力を有するポリペプチド、及び抗体からなる。免疫沈降はまた、上記エピトープに対する抗体を使用する他に、TOM34ポリペプチドに対する抗体を用いて行うこともでき、そのような抗体は上述に従って調製され得る。
【0073】
抗体がマウスIgG抗体である場合、免疫複合体は、例えばプロテインAセファロース又はプロテインGセファロースによって沈降され得る。TOM34遺伝子によりコードされるポリペプチドがエピトープ、例えばGSTとの融合タンパク質として調製される場合、免疫複合体は、これらのエピトープに特異的に結合する物質、例えば、グルタチオン-セファロース4Bを用いることで、TOM34ポリペプチドに対する抗体を用いる場合と同じ様式で形成され得る。
【0074】
免疫沈降は、以下の通り又は例えば文献の方法(Harlow and Lane, Antibodies, 511-52, Cold Spring Harbor Laboratory publications, New York (1988))に従って実行され得る。
【0075】
SDS-PAGEは免疫沈降させたタンパク質の分析に一般的に使用されており、その結合タンパク質は、適正濃度のゲルを用いることでそのタンパク質の分子量により分析され得る。TOM34ポリペプチドに結合したタンパク質は一般的な染色法、例えば、クマシー染色又は銀染色によって検出するのが困難であるので、このタンパク質の検出感度は、放射性同位元素35S-メチオニン又は35S-システインを含有する培養培地中で細胞を培養して細胞中のタンパク質を標識し、そしてそのタンパク質を検出することによって改善され得る。標的タンパク質は、SDS-ポリアクリルアミドゲルから直接的に精製され得、そのタンパク質の分子量が明らかな場合はその配列が決定され得る。
【0076】
TOM34ポリペプチドに結合するタンパク質をこのポリペプチドを用いてスクリーニングする方法として、例えば、ウェスト-ウェスタンブロッティング分析(Skolnik et al., Cell 65: 83-90 (1991))が使用され得る。具体的には、TOM34ポリペプチドに結合するタンパク質は、ファージベクター(例えば、ZAP)を用いて、TOM34ポリペプチドに結合するタンパク質を発現すると考えられる細胞、組織、器官(例えば、精巣若しくは卵巣等の組織)、又は培養細胞(例えば、CW2、DLD1、HCT116、HCT15、RKO、LS174T)からcDNAライブラリを調製し、LBアガロース上でタンパク質を発現させ、発現したタンパク質をフィルターに固定し、精製及び標識したTOM34ポリペプチドを上記フィルターと反応させ、そしてその標識に従ってTOM34ポリペプチドに結合したタンパク質を発現するプラークを検出することによって得ることができる。本発明のポリペプチドは、ビオチンとアビジンの結合を利用することによって、又はTOM34ポリペプチド、若しくはTOM34ポリペプチドに融合されたペプチド若しくはポリペプチド(例えば、GST)に特異的に結合する抗体を利用することによって標識され得る。放射性同位元素又は蛍光物質等を用いる方法もまた使用され得る。
【0077】
あるいは、本発明のスクリーニング方法の別の態様において、細胞を用いるツーハイブリッドシステムが使用され得る(「MATCHMAKER Two-Hybrid system」、「MATCHMAKER Mammalian Two-Hybrid Assay Kit」、「MATCHMAKER one-Hybrid system」 (Clontech);「HybriZAP Two-Hybrid Vector System」(Stratagene);参考文献「Dalton and Treisman, Cell 68: 597-612 (1992)」、「Fields and Sternglanz, Trends Genet 10: 286-92 (1994)」)。
【0078】
ツーハイブリッドシステムにおいては、本発明のポリペプチドをSRF結合領域又はGAL4結合領域に融合し、酵母細胞において発現させる。cDNAライブラリは、本発明のポリペプチドに結合するタンパク質を発現すると考えられる細胞から調製され、そのライブラリは、発現される際、VP16又はGAL4の転写活性化領域と融合される。次いで、cDNAライブラリを上記酵母細胞中に導入し、このライブラリ由来のcDNAを、(本発明のポリペプチドに結合するタンパク質が酵母細胞中で発現され、これら二つの結合がレポーター遺伝子を活性化し、陽性クローンが検出可能になった場合)検出された陽性クローンから単離する。cDNAによりコードされるタンパク質は、上記の単離されたcDNAを大腸菌に導入し、そのタンパク質を発現させることによって調製され得る。
【0079】
レポーター遺伝子として、HIS3遺伝子に加えて、例えば、Ade2遺伝子、lacZ遺伝子、CAT遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子等が使用され得る。
【0080】
TOM34遺伝子によりコードされるポリペプチドに結合する化合物はまた、アフィニティクロマトグラフィを用いてスクリーニングされ得る。例えば、本発明のポリペプチドをアフィニティカラムの担体に固定し、本発明のポリペプチドに結合できるタンパク質を含む試験化合物をこのカラムに適用し得る。本明細書では、試験化合物は、例えば、細胞抽出物、細胞溶解物等であり得る。試験化合物を充填した後、カラムを洗浄し、本発明のポリペプチドに結合した化合物を調製することができる。
【0081】
試験化合物がタンパク質の場合、得られたタンパク質のアミノ酸配列を分析し、その配列に基づきオリゴDNAを合成し、このオリゴDNAをプローブとして用いてcDNAライブラリをスクリーニングして、このタンパク質をコードするDNAを得る。
【0082】
本発明における結合化合物の検出又は定量の手段として表面プラズモン共鳴現象を使用するバイオセンサが使用され得る。このようなバイオセンサが使用される場合、本発明のポリペプチドと試験化合物の相互作用は、微量のポリペプチドのみを用いることで標識せずとも表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムで観察され得る(例えば、BIAcore、Pharmacia)。従って、バイオセンサ、例えば、BIAcoreを用いることで、本発明のポリペプチドと試験化合物の結合を評価することができる。
【0083】
固定化したTOM34ポリペプチドを合成化学化合物、又は天然物質バンク若しくはランダムファージペプチドディスプレイライブラリに曝した際に結合する分子をスクリーニングする方法、及びTOM34タンパク質に結合するタンパク質だけでなく化学化合物(アゴニスト及びアンタゴニストを含む)も単離するための、コンビナトリアムケミストリーに基づくハイスループット技術(Wrighton et al., Science 273: 458-64 (1996); Verdine, Nature 384: 11-13 (1996); Hogan, Nature 384: 17-9 (1996))を用いるスクリーニング方法は、当業者に周知である。
【0084】
あるいは、本発明は、以下の段階を含む、TOM34遺伝子によりコードされるポリペプチドを用いてCRCを治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法を提供する:
(a)TOM34のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと試験化合物を接触させる段階、
(b)段階(a)のポリペプチドの生物学的活性を検出する段階、及び
(c)TOM34のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの生物学的活性を、試験化合物の非存在下で検出される該ポリペプチドの生物学的活性と比較して抑制する試験化合物を選択する段階。
【0085】
TOM34タンパク質はCRC細胞の細胞増殖を促進する活性を有するので、このタンパク質のこの活性を阻害する化合物は、この活性を指標として用いてスクリーニングすることができる。
【0086】
TOM34タンパク質の生物学的活性を有する限り任意のポリペプチドをスクリーニングに使用することができる。このような生物学的活性には、ヒトTOM34タンパク質の細胞増殖活性が含まれる。例えば、ヒトTOM34タンパク質が使用され得、これらのタンパク質と機能的に等価なポリペプチドもまた使用され得る。このようなポリペプチドは、細胞によって内因的又は外因的に発現され得る。
【0087】
このスクリーニングにより単離された化合物は、TOM34遺伝子によりコードされるポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの候補である。「アゴニスト」という用語は、そのポリペプチドに結合することによりその機能を活性化させる分子を意味する。同様に、「アンタゴニスト」という用語は、ポリペプチドに結合することによりその機能を阻害する分子を意味する。さらに、このスクリーニングにより単離された化合物は、TOM34ポリペプチドと分子(DNA及びタンパク質を含む)のインビボでの相互作用を阻害する化合物の候補である。
【0088】
本発明の方法において検出される生物学的活性が細胞増殖の場合、例えば、TOM34ポリペプチドを発現する細胞を調製し、その細胞を試験化合物の存在下で培養し、次に細胞増殖速度を決定し、細胞周期を測定すること等によって、及び実施例に記載されるようにコロニー形成能を測定することによって検出され得る。
【0089】
さらなる態様において、本発明は、CRCを治療又は予防するための化合物のスクリーニング方法を提供する。既に詳述した通り、TOM34の発現レベルを制御することにより、CRCの発症及び進行を制御することができる。従って、CRCの治療又は予防において使用され得る化合物は、その指標としてTOM34の発現レベルを用いるスクリーニングを通じて同定され得る。本発明の文脈では、このようなスクリーニングは、例えば、以下の段階を含み得る:
(a)TOM34を発現する細胞と候補化合物を接触させる段階、及び
(b)TOM34の発現レベルを候補化合物の非存在下で検出される対照レベルと比較して減少させる候補化合物を選択する段階。
【0090】
TOM34を発現する細胞には、例えば、CRCから樹立した細胞株が含まれ、そのような細胞は、本発明の上記スクリーニングのために使用され得る(例えば、CW2、DLD1、HCT116、RKO、LS174T)。発現レベルは当業者に周知の方法により推定され得る。本スクリーニング方法において、TOM34の発現レベルを減少する化合物は、CRCの治療又は予防において使用される候補薬剤として選択される。
【0091】
あるいは、本発明のスクリーニング方法は、以下の段階を含み得る:
(a)TOM34の転写調節領域及び該転写調節領域の制御下で発現されるレポーター遺伝子を含むベクターを導入された細胞と候補化合物を接触させる段階、
(b)レポーター遺伝子の発現又は活性を測定する段階、及び
(c)レポーター遺伝子の発現又は活性を減少させる候補化合物を選択する段階。
【0092】
適切なレポーター遺伝子及び宿主細胞は当技術分野で周知である。本スクリーニングに必要とされるレポーター構築物は、マーカー遺伝子の転写調節領域を用いて調製され得る。マーカー遺伝子の転写調節領域が当業者に公知の場合、レポーター構築物は、以前の配列情報を用いて調製され得る。マーカー遺伝子の転写調節領域が同定されていない場合、転写調節領域を含むヌクレオチドセグメントはマーカー遺伝子のヌクレオチド配列情報に基づきゲノムライブラリから単離され得る。
【0093】
タンパク質を結合させるのに使用され得る支持体の例には、アガロース、セルロース、及びデキストラン等の不溶性多糖類、並びにポリアクリルアミド、ポリスチレン、及びシリコン等の合成樹脂が含まれ、好ましくは、上記材料から調製された市販のビーズ及びプレート(例えば、マルチウェルプレート、バイオセンサチップ等)が使用され得る。ビーズが使用される場合、それらはカラムに充填され得る。
【0094】
タンパク質の支持体への結合は、日常的方法、例えば化学結合及び物理的吸着によって実行され得る。あるいは、タンパク質は、そのタンパク質を特異的に認識する抗体を通じて支持体に結合され得る。さらに、タンパク質の支持体への結合は、アビジン及びビオチンによっても行われ得る。
【0095】
タンパク質間の結合は、その緩衝液がタンパク質間の結合を阻害しない限り、緩衝液中で、例えば、リン酸緩衝液及びTris緩衝液(ただしこれらに限定されない)中で行われる。
【0096】
本発明において、結合したタンパク質の検出又は定量の手段として表面プラズモン共鳴現象を利用するバイオセンサが使用され得る。このようなバイオセンサが使用される場合、タンパク質間の相互作用は、微量のポリペプチドのみを用いることで標識せずとも表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムで観察され得る(例えば、BIAcore、Pharmacia)。
【0097】
あるいは、TOM34ポリペプチドは標識され、そして結合したタンパク質の標識がその結合タンパク質を検出又は測定するのに使用され得る。具体的には、タンパク質の一方を予備標識した後、その標識したタンパク質を試験化合物の存在下でもう一方のタンパク質と接触させ、次いで洗浄後に結合したタンパク質をその標識に従って検出又は測定し得る。
【0098】
標識物質、例えば、放射性同位元素(例えば、3H、14C、32P、33P、35S、125I、131I)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ)、蛍光物質(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン)、及びビオチン/アビジンは、本発明の方法においてタンパク質を標識するのに使用され得る。タンパク質が放射性同位元素で標識される場合、その検出又は測定は、液体シンチレーションにより行われ得る。あるいは、酵素標識されたタンパク質は、その酵素の基質を添加して基質の酵素的変化を検出することによって、例えば吸光光度計を用いて発色を検出することによって検出又は測定され得る。さらに、標識として蛍光物質が使用される場合、結合タンパク質は蛍光光度計を用いて検出又は測定され得る。
【0099】
本発明のスクリーニング法において抗体を使用する場合、抗体は好ましくは上述の標識物質の一つで標識され、その標識物質に基づいて検出又は測定される。あるいは、TOM34ポリペプチド又はアクチンに対する抗体が一次抗体として使用され得、一次抗体は標識物質で標識された二次抗体で検出され得る。さらに、本発明のスクリーニングにおいてタンパク質に結合した抗体は、プロテインGカラム又はプロテインAカラムを用いて検出又は測定され得る。
【0100】
あるいは、本発明のスクリーニング方法の別の態様において、細胞を用いるツーハイブリッドシステムが使用され得る(「MATCHMAKER Two-Hybrid system」、「MATCHMAKER Mammalian Two-Hybrid Assay Kit」、「MATCHMAKER one-Hybrid system」 (Clontech);「HybriZAP Two-Hybrid Vector System」(Stratagene);参考文献「Dalton and Treisman, Cell 68: 597-612 (1992)」、「Fields and Sternglanz, Trends Genet 10: 286-92 (1994)」)。
【0101】
ツーハイブリッドシステムにおいては、本発明のTOM34ポリペプチドをSRF結合領域又はGAL4結合領域に融合し、酵母細胞において発現させる。
【0102】
レポーター遺伝子として、HIS3遺伝子の他に、例えば、Ade2遺伝子、lacZ遺伝子、CAT遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子等が使用され得る。
【0103】
本発明のスクリーニング方法においては、任意の試験化合物、例えば、細胞抽出物、細胞培養上清、微生物発酵産物、海洋生物由来の抽出物、植物抽出物、精製タンパク質又は粗タンパク質、ペプチド、非ペプチド化合物、合成低分子化合物、及び天然化合物が使用され得る。本発明において、試験化合物はまた、(1)生物学的ライブラリ、(2)アドレス指定できるよう配置された並列固相又は並列液相ライブラリ(spatially addressable parallel solid phase or solution phase libraries)、(3)デコンヴォルーションを用いる合成ライブラリ法、(4)「1ビーズ1化合物(one-bead one-compound)」ライブラリ法、及び(5)アフィニティクロマトグラフィ選別を使用する合成ライブラリ法を含む当技術分野で公知のコンビナトリアムライブラリ法における多くのアプローチのいずれかを使用して得ることができる。アフィニティクロマトグラフィ選別を使用する生物学的ライブラリ法はペプチドライブラリに限定されるが、その他の4つのアプローチはペプチド、非ペプチドオリゴマー、又は低分子化合物ライブラリに適用できる(Lam (1997) Anticancer Drug Des. 12: 145-67)。分子ライブラリの合成方法の例は、当技術分野において見出され得る(DeWitt et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6909-13; Erb et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422-6; Zuckermann et al. (1994) J. Med. Chem. 37: 2678-85; Cho et al. (1993) Science 261: 1303-5; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2059; Carell et al. (1994) Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33: 2061; Gallop et al. (1994) J. Med. Chem. 37: 1233-51)。化合物ライブラリは、溶液中に(Houghten (1992) Bio/Techniques 13: 412-21を参照のこと)、又はビーズ(Lam (1991) Nature 354: 82-4)、チップ(Fodor (1993) Nature 364: 555-6)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,571,698号、同第5,403,484号、及び同第223,409号)、プラスミド(Cull et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 1865-9)、若しくはファージ(Scott and Smith (1990) Science 249: 386-90; Devlin (1990) Science 249: 404-6; Cwirla et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6378-82; Felici (1991) J. Mol. Biol. 222: 301-10; 米国特許出願第2002103360号)上に作製され得る。
【0104】
本発明のスクリーニング方法により単離された化合物は、例えば、CRCなどの細胞増殖性疾患に起因する疾患を治療又は予防するためにTOM34ポリペプチドの活性を阻害する薬物の候補である。本発明のスクリーニング方法により得られた化合物には、本発明のスクリーニング方法により得られた化合物の構造の一部が付加、欠失、及び/又は置換により変換されている化合物が含まれる。
【0105】
CRCを治療又は予防するための薬学的組成物
本発明の方法により単離された化合物を医薬物として、ヒト並びにその他の哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、ヒヒ、及びチンパンジーに投与する場合、単離された化合物は、直接的に投与され得るか、又は公知の薬学的製剤化方法を用いた剤形に処方され得る。例えば、必要に応じて、薬物は糖衣錠、カプセル剤、エリキシル剤、及びマイクロカプセル剤として経口摂取され得、又は水若しくは任意のその他の薬学的に許容される液体を用いる無菌溶液若しくは懸濁物の注射の形態で非経口的に投与され得る。例えば、化合物は、薬学的に許容される担体又は媒体、特に無菌水、生理学的食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、溶媒、保存剤、結合剤等と混合され、一般に承認されている投薬に必要とされる単位投与形態とされ得る。このような製剤に含有される有効成分の量は、表示された範囲内の適切な用量である。
【0106】
錠剤及びカプセル剤に混和され得る添加物の例には、ゼラチン、トウモロコシデンプン、トラガカントゴム、及びアラビアゴム等の結合剤、結晶セルロース等の賦形剤、トウモロコシデンプン、ゼラチン、及びアルギニン酸等の膨張剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、スクロース、ラクトース、又はサッカリン等の甘味剤、並びにペパーミント、アカモノ油(Gaultheria adenothrix oil)、及びチェリー香等の香味剤が含まれるがこれらに限定されない。単位投与形態がカプセル剤の場合、油等の液体担体はさらに、上記成分を含み得る。注射用の無菌混合物は、注射に適した蒸留水等の溶媒を用いて通常の投薬実施に従って調製され得る。
【0107】
生理学的食塩水、グルコース、並びにD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、及び塩化ナトリウム等の補助剤を含むその他の等張液は、注射用水溶液として使用され得る。これらは例えばエタノール等のアルコール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコール等の多価アルコール、並びにポリソルベート80(商標)及びHCO-50等の非イオン性界面活性剤等の適切な溶解剤と組み合わせて使用され得る。
【0108】
ゴマ油又は大豆油は油性液として使用され得、安息香酸ベンジル又はベンジルアルコールと組み合わせて溶解剤として使用され得、かつリン酸緩衝剤及び酢酸ナトリウム緩衝剤等の緩衝剤、塩酸プロカイン等の鎮痛剤、ベンジルアルコール及びフェノール等の安定剤、及び/又は抗酸化剤と共に処方され得る。調製された注射物は適切なアンプルに充填され得る。
【0109】
本発明の薬学的組成物を、例えば、動脈内注射、静脈内注射、若しくは経皮注射として、又は鼻腔内投与、経気管支投与、筋内投与、若しくは経口投与として患者に投与するのに当業者に周知の方法が使用され得る。投与の用量及び方法は患者の体重及び年齢並びに投与方法によって変化するが、当業者は適切な投与方法を日常的に選択し得る。化合物がDNAによりコードされる場合、そのDNAは遺伝子療法のためのベクターに挿入され得、治療を行うためにそのベクターが患者に投与される。投与の用量及び方法は、患者の体重、年齢、及び症状によって変化するが、当業者はそれらを適切に選択し得る。
【0110】
例えば、本発明のタンパク質に結合してその活性を調節する化合物の用量は、その症状に依存するが、通常の成人(体重60kg)に経口投与される場合の用量は一般的に、1日当たり約0.1mg〜約100mg、好ましくは1日当たり約1.0mg〜約50mg、より好ましくは1日当たり約1.0mg〜約20mgである。
【0111】
化合物が通常の成人(体重60kg)に対して注射の形態で非経口的に投与される場合、患者、標的器官、症状、及び投与方法によってある程度の違いはあるものの、1日当たり約0.01mg〜約30mg、好ましくは1日当たり約0.1〜約20mg、より好ましくは1日当たり約0.1〜約10mgの用量が静脈内注射されることがよい。その他の動物の場合、適切な投薬量は、体重60kgに換算することによって日常的に算出され得る。
【0112】
CRCを有する対象の予後の評価:
本発明はまた、試験細胞集団におけるTOM34の発現と患者由来の基準細胞集団におけるTOM34の発現を複数の疾患段階にまたがって比較する段階を含む、CRCを有する対象の予後の評価方法を提供する。試験細胞集団及び基準細胞集団におけるTOM34の遺伝子発現を比較することにより、又は対象由来の試験細胞集団における遺伝子発現パターンを経時的に比較することにより、対象の予後が評価され得る。
【0113】
例えば、TOM34の発現が正常対照と比較して増加していることは、好ましくない予後を示す。逆に、TOM34の発現が正常対照と類似することは、対象にとってより好ましい予後を示す。
【0114】
キット:
本発明はまた、CRC検出試薬、例えば、TOM34核酸に特異的に結合又は同定する核酸、例えばTOM34核酸の一部に相補的なオリゴヌクレオチド配列、又はTOM34核酸によりコードされるタンパク質に結合する抗体、又はアプタマーを包含する。検出試薬は、キット形式でまとめて梱包され得る。例えば、検出試薬、例えば、核酸又は抗体(固体マトリクスに結合されたものか又はそれらをマトリクスに結合させるための試薬と別々に梱包されたもののいずれか)、対照試薬、(正の対照及び/又は負の対照)、及び/又は検出用標識は、別々の容器に梱包され得る。アッセイ法を実施するための説明書(例えば、書面、テープ、VCR、CD-ROM等)もまたキットに含まれ得る。キットのアッセイ形式はノーザンハイブリダイゼーション又はサンドイッチELISAであり得、これらは両方とも当技術分野で公知である。
【0115】
例えば、CRC検出試薬は、少なくとも1つのCRC検出部位を形成するよう固体マトリクス、例えば多孔性細片に固定され得る。多孔性細片の測定領域又は検出領域は、各々が核酸を含む複数の部位を含み得る。試験細片はまた、負の対照及び/又は正の対照のための部位を含み得る。あるいは、対照部位は、試験細片とは別の細片に設けられ得る。異なる検出部位には異なる量の固定化核酸が含まれていてもよく、すなわち、第一検出部位により多量に含まれ、それ以降の部位にはより少ない量が含まれていてもよい。試験試料を添加した際に検出可能なシグナルを表示する部位の数は試料中に存在するCRCの量の定量的な指標を提供する。検出部位は、任意の適切な検出形状をとることができ、典型的には試験細片全体に広がる棒状又は点状である。
【0116】
CRCの阻害方法:
本発明はさらに、TOM34の発現(若しくはその遺伝子産物の活性)を減少させることにより対象におけるCRCの症状を治療又は緩和する方法を提供する。適切な治療化合物は、CRCを患っているか又はCRCを発症する危険がある(CRCを発症し易い)対象に対して予防的又は治療的に投与され得る。このような対象は、標準的な臨床的方法を用いて、又はTOM34の異常な発現レベル若しくはその遺伝子産物の異常な活性を検出することによって同定され得る。本発明の文脈では、適切な治療剤には、例えば、細胞周期調節及び細胞増殖の阻害剤が含まれる。
【0117】
あるいは、本発明の治療方法は、その発現が結腸細胞において異常に増加する(「上方制御」又は「過剰発現」される遺伝子)TOM34の遺伝子産物の発現、機能、又はその両方を減少させる段階を含み得る。発現は当技術分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって阻害され得る。例えば、発現は、過剰発現される遺伝子の発現を阻害する又はこれと拮抗する核酸、例えば、過剰発現される遺伝子の発現を妨害するアンチセンスオリゴヌクレオチド又は低分子干渉RNAを対象に投与することによって阻害され得る。
【0118】
当然ながら、本明細書中に記載される治療方法又は緩和方法の態様は、必要な変更を加えて、対象における結腸癌を治療又は緩和するための薬学的組成物の調製に関して本明細書中に記載されるようにTOM34の発現(又はその遺伝子産物の活性)を減少させる化合物の使用に適用される。このような化合物は、例えば、アンチセンス、siRNA、抗体、アプタマー、又はリボザイム組成物であり得る。
【0119】
アンチセンス核酸及びsiRNA:
上記のように、TOM34のヌクレオチド配列に対応するアンチセンス核酸は、その遺伝子の発現レベルを減少させるために使用され得る。CRCにおいて上方制御されるTOM34に対応するアンチセンス核酸は、CRCの治療に有用である。具体的には、本発明のアンチセンス核酸は、TOM34のヌクレオチド配列又はそれに対応するmRNAに結合し、それによってこの遺伝子の転写又は翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、及び/又はTOM34によりコードされるタンパク質の発現を阻害することによってそのタンパク質の機能を阻害することにより作用し得る。本明細書中で使用する場合、「アンチセンス核酸」という用語は、標的配列にその全体が相補的であるヌクレオチド、及びそのアンチセンス核酸が標的配列に特異的にハイブリダイズすることができる限り、一つまたは複数のヌクレオチドの不一致を有するヌクレオチドの、両方を包含する。例えば、本発明のアンチセンス核酸は、少なくとも15連続ヌクレオチの長さに対して少なくとも70%以上、好ましくは少なくとも80%以上、より好ましくは少なくとも90%以上、さらにより好ましくは少なくとも95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを含む。相同性を決定するには、当技術分野で公知のアルゴリズムが使用され得る。
【0120】
本発明のアンチセンス核酸は、TOM34によりコードされるタンパク質を産生する細胞に対して、そのタンパク質をコードするDNA又はmRNAに結合し、それらの転写又は翻訳を阻害し、mRNAの分解を促進し、そしてそのタンパク質の発現を阻害することによってそのタンパク質の機能を阻害することにより作用する。
【0121】
本発明のアンチセンス核酸は、その核酸に対して不活性の適切な基剤と混和することによりリニメント剤又は湿布等の外用剤として製造され得る。
【0122】
また、必要に応じて、本発明のアンチセンス核酸は、賦形剤、等張剤、溶解剤、安定剤、保存剤、鎮痛剤等を添加することによって、錠剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル剤、注射剤、溶液剤、点鼻剤、及び凍結乾燥剤として処方され得る。これらは以下の公知の方法によって調製され得る。
【0123】
本発明のアンチセンス核酸は、病的部位への直接適用によって、又は血管への注射により病的部位に到達させることによって患者に投与され得る。アンチセンス封入剤もまた、持続性及び膜透過性を向上させるために使用され得る。その例にはリポソーム、ポリ-L-リジン、脂質、コレステロール、リポフェクチン、又はこれらの誘導体が含まれるがこれらに限定されない。
【0124】
本発明のアンチセンス核酸誘導体の用量は、患者の状態に基づいて適切に調整され得、望ましい用量で使用され得る。例えば、0.1〜100mg/kg、好ましくは0.1〜50mg/kgの範囲の用量が投与され得る。
【0125】
本発明のアンチセンス核酸は、本発明のタンパク質の発現を阻害し、従って本発明のタンパク質の生物学的活性を抑制するのに有用である。さらに、本発明のアンチセンス核酸を含む発現阻害剤は、それらが本発明のタンパク質の生物学的活性を阻害できるという点で有用である。
【0126】
siRNAが標的細胞においてTOM34に対応する転写産物に結合することにより、その細胞によるタンパク質産生は減少する。このオリゴヌクレオチドの長さは少なくとも10ヌクレオチドから天然転写物までの長さであり得る。好ましくは、オリゴヌクレオチドは75未満、50未満、25未満のヌクレオチド長である。より好ましくは、オリゴヌクレオチドは19〜25ヌクレオチド長である。
【0127】
本発明のアンチセンス核酸は、修飾型オリゴヌクレオチドを含む。例えば、オリゴヌクレオチドにヌクレアーゼ耐性を付与するためにチオ酸化(thioated)オリゴヌクレオチドが使用され得る。
【0128】
また、TOM34に対するsiRNAは、TOM34の発現レベルを減少させるのに使用され得る。本明細書中、「siRNA」という用語は、標的mRNAの翻訳を妨げる二重鎖RNA分子を意味する。細胞にsiRNAを導入するために、RNAの転写の鋳型としてDNAを用いる技術を含む標準技術が使用され得る。本発明の文脈では、siRNAはセンス核酸配列、及び例えばTOM34などの上方制御されるマーカー遺伝子に対するアンチセンス核酸配列を含む。siRNAは、単一の転写物が標的遺伝子のセンス配列及び相補的アンチセンス配列の両方を有するよう、例えばヘアピンとして構築される。
【0129】
TOM34のsiRNAは標的mRNAとハイブリダイズし、これにより、通常は単鎖のmRNA転写物に結合して翻訳を妨害することによって、従ってそのタンパク質の発現を妨害することによって、TOM34によりコードされるポリペプチドの産生を減少又は阻害する。従って、本発明のsiRNA分子は、ストリンジェント条件下でTOM34のmRNAに特異的にハイブリダイズするそれらの能力によって規定することができる。本発明の目的上、「ハイブリダイズする」又は「特異的にハイブリダイズする」という用語は、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」下でハイブリダイズする2つの核酸分子の能力を称するのに使用され得る。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、典型的には核酸の複合混合物中で核酸分子がその標的配列にハイブリダイズするが、他の配列には検出可能な程度ハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェント条件は配列依存的であり、環境が異なればそれらも異なる。より長い配列はより高温で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する詳細な手引きは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes, 「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」 (1993)に見られる。一般論として、ストリンジェント条件は、規定のイオン強度pHで特定の配列の融点(Tm)よりも約5〜10℃低い温度となるよう選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする、(規定のイオン強度、pH、及び核酸濃度下の)温度である(標的配列が過剰に存在する場合、Tmでは、平衡状態でプローブの50%が消費される)。ストリンジェント条件はまた、脱安定剤、例えばホルムアミドの添加により達成され得る。選択的又は特異的なハイブリダイゼーションでは、正のシグナルは、バックグラウンドのハイブリダイゼーションの少なくとも2倍、好ましくは10倍である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は次の通りであり得る:0.2×SSC及び0.1% SDS、50℃での洗浄を行う、50%ホルムアミド、5×SSC、及び1% SDS、42℃にてインキュベート、又は5×SSC、1% SDS、65℃にてインキュベート。
【0130】
本発明の文脈では、siRNAは、好ましくは500、200、100、50、又は25ヌクレオチド長未満である。より好ましくは、siRNAは19〜25ヌクレオチド長である。TOM34 siRNAの製造のための核酸配列の例には、標的配列としてのSEQ ID NO: 48又は52のヌクレオチドの配列が含まれる。RNA又はその誘導体では、塩基「t」はそのヌクレオチド配列において「u」で置換される。従って、例えば、本発明は、ヌクレオチド配列5'-gaaaguguucucuacucca-3’ (SEQ ID NO: 48)又は5'-ggauggaaacugcagagac-3’ (SEQ ID NO: 52)を含む二重鎖RNA分子を提供する。siRNAの阻害活性を増強するために、標的配列のアンチセンス鎖の3’末端にヌクレオチド「u」が付加され得る。付加される「u」の数は少なくとも2個、一般的には2〜10個、好ましくは2〜5個である。付加された「u」は、siRNAのアンチセンス鎖の3’末端で単鎖を形成する。
【0131】
TOM34のsiRNAは、mRNA転写物に結合することのできる形態で細胞に直接的に導入され得る。これらの態様において、本発明のsiRNA分子は、典型的にはアンチセンス分子について上述したように修飾される。その他の修飾も可能であり、例えば、コレステロール結合siRNAは、改善された薬理学的特性を示した(Song, et al., Nature Med. 9:347-51 (2003))。あるいは、siRNAをコードするDNAがベクターにより送達され得る。
【0132】
ベクターは、例えば、TOM34標的配列を、その配列に隣接して機能的に連結された調節配列を有する発現ベクターに、両方の鎖の(DNA分子の転写による)発現が可能な様式でクローニングすることによって作製され得る(Lee, N.S. et al., (2002) Nature Biotechnology 20 : 500-505)。TOM34のmRNAに対してアンチセンスなRNA分子は第一プロモーター(例えば、クローニングされたDNAの3’側のプロモーター配列)によって転写され、TOM34のmRNAに対してセンス鎖であるRNA分子は、第二プロモーター(例えば、クローニングされたDNAの5’側のプロモーター配列)によって転写される。センス鎖及びアンチセンス鎖はインビボでハイブリダイズしてTOM34のサイレンシングのためのsiRNA構築物を生成する。あるいは、siRNA構築物のセンス鎖及びアンチセンス鎖を生成させるために、2つの構築物が使用され得る。クローニングされたTOM34は、単一の転写物が標的配列由来のセンス配列及び相補的なアンチセンス鎖の両方を有する二次構造、例えばヘアピンを有する構築物をコードし得る。
【0133】
任意のヌクレオチド配列からなるループ配列が、ヘアピンループ構造を形成するためにセンス配列とアンチセンス配列の間に配置され得る。従って、本発明はまた、一般式
5’-[A]-[B]-[A’]-3’
を有するsiRNAを提供する。式中、[A]はTOM34のmRNA又はcDNAに特異的にハイブリダイズする配列に対応するリボヌクレオチド配列である。好ましい態様において、[A]はTOM34の配列に対応するリボヌクレオチド配列であり、[B]は3〜23ヌクレオチドからなるリボヌクレオチド配列であり、[A’]は[A]の相補配列からなるリボヌクレオチド配列である。領域[A]は[A’]とハイブリダイズし、次いで、領域[B]からなるループが形成される。ループ配列は好ましくは3〜23ヌクレオチド長であり得る。ループ配列は、例えば、以下の配列からなる群より選択され得る(http://www.ambion.com/techlib/tb/tb_506.html)。さらに、23ヌクレオチドからなるループ配列もまた活性なsiRNAを提供する(Jacque, J.M. et al., (2002) Nature 418 : 435-438)。
CCC, CCACC、又は CCACACC:Jacque, J. M. et al., (2002) Nature, Vol. 418: 435-438。
UUCG: Lee, N.S. et al., (2002) Nature Biotechnology 20 : 500-505; Fruscoloni, P. et al., (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(4): 1639-44。
UUCAAGAGA: Dykxhoorn, D. M. et al., (2002) Nature Reviews Molecular Cell Biology 4: 457-467。
【0134】
従って、ループ配列は、CCC、UUCG、CCACC、CCACACC、及びUUCAAGAGAからなる群より選択され得る。好ましいループ配列はUUCAAGAGA(DNA上は「ttcaagaga」)である。本発明の文脈上の使用に適したヘアピンsiRNAの例には以下が含まれる:
TOM34-siRNA-D(siD、SEQ ID NO: 48の標的配列用)については
5'-gaaaguguucucuacucca-[B]-uggaguagagaacacuuuc-3' (SEQ ID NO: 49)、及び
TOM34-siRNA-E(siE、SEQ ID NO: 52の標的配列用)については
5'-ggauggaaacugcagagac-[B]-gucucugcaguuuccaucc-3' (SEQ ID NO: 53)。
【0135】
適切なsiRNAのヌクレオチド配列は、Ambion社のウェブサイト(http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_finder.html)から入手可能なsiRNA設計用コンピュータプログラムを用いて設計され得る。このコンピュータプログラムは、以下のプロトコルに基づいてsiRNA合成用ヌクレオチド配列を選択する。
【0136】
siRNAの標的部位の選択:
1.目的の転写物のAUG開始コドンを出発点として、その下流をAAジヌクレオチド配列についてスキャンする。潜在的なsiRNA標的部位として、各AAの出現及び3’側に隣接する19ヌクレオチドを記録する。Tuschlらは、5’側及び3’側の非翻訳領域(UTR)並びに開始コドン付近の領域(75塩基内)に対するsiRNAを設計するのは、これらが調節タンパク質結合部位に多量に存在し得るという理由で推奨しない。UTR結合タンパク質及び/又は翻訳開始複合体は、siRNAエンドヌクレアーゼ複合体の結合と干渉し得る。
【0137】
2.潜在的な標的部位とヒトゲノムデータベースを比較し、他のコード配列と有意な相同性を有するあらゆる標的配列を検討から除外する。相同性調査は、NCBIサーバ、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/において見出され得るBLASTを用いて実行され得る。
【0138】
3.合成に適した標的配列を選択する。Ambionでは、好ましくは数個の標的配列が評価する遺伝子に沿って選択され得る。
【0139】
TOM34遺伝子配列に隣接する調節配列は、それらの発現が個別に調節され得るように又は時間的若しくは空間的様式で調節され得るように、同一であっても異なってもよい。siRNAは、TOM34の鋳型をそれぞれ、例えば、核内低分子RNA(snRNA)U6由来のRNAポリメラーゼIII転写単位、又はヒトH1 RNAプロモーターを含むベクターにクローニングすることによって細胞内で転写される。このベクターを細胞に導入するために、トランスフェクション促進剤が使用され得る。FuGENE(Roche diagnostics)、Lipofectamine 2000(Invitrogen)、Oligofectamine(Invitrogen)、及びNucleofector(Wako pure Chemical)がトランスフェクション促進剤として有用である。
【0140】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNAは、本発明のポリペプチドの発現を阻害し、従って本発明のポリペプチドの生物学的活性を抑制するのに有用である。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNAを含む発現阻害剤は、それらが本発明のポリペプチドの生物学的活性を阻害できるという点で有用である。従って、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド又はsiRNAを含む組成物は、CRCの治療に有用である。
【0141】
抗体:
あるいは、CRCにおいて過剰発現されるTOM34の遺伝子産物の機能は、この遺伝子産物に結合するかそうでなければその機能を阻害する化合物を投与することによって阻害され得る。例えば、この化合物は、TOM34の遺伝子産物に結合する抗体である。
【0142】
本発明は、抗体、特にTOM34によりコードされるタンパク質に対する抗体、又はそのような抗体の断片の使用に言及する。本明細書中で使用する場合、「抗体」という用語は、その抗体を合成するのに使用された抗原(すなわち、上方制御されたマーカーの遺伝子産物)又はそれと関係の近い抗原とのみと相互作用(すなわち、結合)する特異的な構造を有する免疫グロブリン分子を意味する。さらに、抗体は、TOM34によりコードされるタンパク質に結合する限り、抗体の断片又は修飾された抗体であり得る。例として、抗体断片は、Fab、F(ab’)2、Fv、又はH鎖及びL鎖由来のFv断片が適切なリンカーで連結された単鎖Fv(scFv)であり得る(Huston J. S. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5879-5883 (1988))。より具体的には、抗体断片は、パパイン又はペプシン等の酵素で抗体を処理することによって作製され得る。あるいは、抗体断片をコードする遺伝子が構築され、発現ベクターに挿入され、そして適切な宿主細胞中で発現され得る(例えば、Co M. S. et al. J. Immunol. 152:2968-2976 (1994); Better M. and Horwitz A. H. Methods Enzymol. 178:476-496 (1989); Pluckthun A. and Skerra A. Methods Enzymol. 178:497-515 (1989); Lamoyi E. Methods Enzymol. 121:652-663 (1986); Rousseaux J. et al. Methods Enzymol. 121:663-669 (1986); Bird R. E. and Walker B. W. Trends Biotechnol. 9:132-137 (1991)を参照のこと)。
【0143】
抗体は、様々な分子、例えばポリエチレングリコール(PEG)との結合により修飾され得る。本発明はこのような修飾された抗体を提供する。修飾抗体は、抗体を化学的に修飾することによって得ることができる。このような修飾方法は当技術分野の従来法である。
【0144】
あるいは、抗体は、非ヒト抗体由来の可変領域及びヒト抗体由来の定常領域を有するキメラ抗体、又は非ヒト抗体由来の相補性決定領域(CDR)、ヒト抗体由来のフレームワーク領域(FR)、及び定常領域を含むヒト化抗体を含み得る。このような抗体は、公知技術を使用して調製され得る。ヒト化は、齧歯類CDR又はCDR配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって実行され得る(例えば、Verhoeyen et al., Science 239:1534-1536 (1988)を参照のこと)。従って、このようなヒト化抗体は、実質的にヒト可変ドメインそのものより短いドメインが非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体である。
【0145】
ヒトフレームワーク領域及びヒト定常領域に加えてヒト可変領域を含む完全ヒト抗体もまた使用され得る。このような抗体は、当技術分野で公知の様々な技術を用いて製造され得る。例えば、インビトロ法は、バクテリオファージに表面に提示されたヒト抗体断片の組換えライブラリの使用を含む(例えば、Hoogenboom & Winter, J. Mol. Biol. 227:381-8 (1991))。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリンの遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば、内因的免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することによって作製され得る。このアプローチについては、例えば、米国特許第6,150,584号、同第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号に記載される。
【0146】
癌細胞において生じた特定の分子的変化を標的とする癌療法は、抗癌薬、例えば、進行型乳癌の治療のためのトラスツズマブ(Herceptin)、慢性骨髄性白血病のためのイマチニブメシレート(Gleevec)、非小細胞肺癌(NSCLC)のためのゲフィチニブ(Iressa)、並びにB細胞リンパ腫及びマントル細胞リンパ腫のためのリタキシマブ(抗CD20 mAb)の臨床的開発及び承認申請を通じて実証されている(Ciardiello F. et al., Clin Cancer Res. 2001 Oct;7(10):2958-70、Slamon DJ. et al., N Engl J Med. 2001 Mar 15;344(11):783-92; Rehwald U.et al., Blood. 2003 Jan 15;101(2):420-424; Fang G.et al., (2000). Blood, 96, 2246-2253)。これらの薬物は、形質転換した細胞のみを標的とするため、従来の抗癌剤よりも臨床的に効果的であり耐容性が良い。従って、このような薬物は癌患者の生存率及び生活水準を改善するだけでなく、分子標的化癌療法の概念をも実証する。さらに、標的化薬物は、標準的な化学療法と併用された場合にその効果を増強し得る(Gianni L. (2002) Oncology, 63 Suppl 1, 47-56; Klejman A, et al. (2002) Oncogene, 21, 5868-76)。従って、将来的に癌治療は、従来の薬物と、腫瘍細胞の異なる特徴、例えば、血管新生及び侵襲性を対象とする標的特異的薬剤との組み合わせにより行われると考えられる。
【0147】
これらの調節方法は、エクスビボ若しくはインビトロで(例えば、細胞を薬剤と共に培養することによって)、あるいはインビボで(例えば、対象に薬剤を投与することによって)行われ得る。本法は、示差的に発現される遺伝子の異常な発現又はそれらの遺伝子産物の異常な活性を相殺するための療法として、タンパク質若しくはタンパク質の組み合わせ、又は核酸分子若しくは核酸分子の組み合わせの投与を含む。
【0148】
遺伝子及び遺伝子産物の、それぞれの発現レベル又は生物学的活性が(疾患又は障害を患っていない対象と比較して)増加したことにより特徴付けられる疾患及び障害は、過剰発現される遺伝子又は遺伝子群の活性と拮抗する(すなわち、減少させる又は阻害する)治療剤で治療され得る。活性と拮抗する治療剤は、治療的又は予防的に投与され得る。
【0149】
従って、本発明の文脈で使用され得る治療剤は、例えば、(i)過剰発現される遺伝子のポリペプチド、又はそれらのアナログ、誘導体、断片、若しくはホモログ、(ii)過剰発現される遺伝子若しくは遺伝子産物に対する抗体、(iii)過剰発現される遺伝子をコードする核酸、(iv)「機能障害性」の(すなわち、過剰発現される遺伝子の核酸への異種的挿入に起因して機能障害性である)アンチセンス核酸若しくは核酸、(v)低分子干渉RNA(siRNA)、又は(vi)調節因子(すなわち、過剰発現されるポリペプチドとその結合相手との間の相互作用を変化させる阻害剤、アンタゴニスト)を含む。機能障害性アンチセンス分子は、相同組換えによってポリペプチドの内因的機能を「ノックアウト」するために使用される(例えば、Capecchi, Science 244: 1288-1292 1989を参照のこと)。
【0150】
増加したレベルは、患者の組織試料を(例えば、生検組織から)得、インビトロでRNA若しくはペプチドのレベル、発現されたペプチド(若しくは発現が変化した遺伝子のmRNA)の構造及び/又は活性についてこれをアッセイすることにより、ペプチド及び/又はRNAを定量することによって容易に検出され得る。当技術分野で周知の方法には、免疫アッセイ(例えば、ウェスタンブロット分析、免疫沈降及びその後のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細胞学的方法等によるアッセイ)及び/又はmRNAの発現を検出するためのハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンアッセイ、ドットブロット、インサイチューハイブリダイゼーション等)が含まれるがこれらに限定されない。
【0151】
予防的投与は、疾患の臨床的症状がはっきりと顕れる前に、疾患又は障害が抑止されるかあるいはその進行が遅延するよう行われる。
【0152】
本発明の治療的方法は、示差的に発現される遺伝子の遺伝子産物の活性の一つまたは複数を調節する薬剤と細胞を接触させる段階を含み得る。タンパク質の活性を調節する薬剤の例には、核酸、タンパク質、そのようなタンパク質の天然同族リガンド、ペプチド、ペプチド模倣物、及びその他の低分子が含まれるがこれらに限定されない。
【0153】
CRCに対するワクチン接種:
本発明において、TOM34由来のペプチドは、日本人及び白人の集団で一般的なHLA対立遺伝子であるHLA-A24により拘束されるTAAエピトープであることが示された。TOM34由来のHLA-A24結合ペプチド候補は、それらのHLA-A24に対する結合親和性に関する情報を用いて同定した。これらのペプチドを負荷した樹状細胞(DC)によるT細胞のインビトロ刺激後、TOM34-299(KLRQEVKQNL(SEQ ID No.7))を用いてCTLを樹立することに成功した。このCTLは、結腸直腸癌腫細胞に対して強力な細胞傷害活性を示した。さらに、これらの細胞由来のCTLクローン及びCTL株はまた、TOM34を内因的に過剰発現するHLA-A24陽性結腸直腸癌腫細胞株に対して特異的な細胞傷害性を示した。これらのCTLクローン及びCTL株の細胞傷害活性は、HLA-A24又は標的TAAのいずれかの発現を欠く細胞株に対しては示されなかった。これらのCTLクローン及びCTL株の特異的な細胞傷害活性は、非放射性標識(cold target)によって有意に阻害された。これらの結果は、TOM34がCRCのTAAとして有用であること、及びTOM34がHLA-A24により拘束されるTAAのエピトープペプチドであることを実証する。TOM34抗原は大部分のCRCにおいて過剰発現され腫瘍細胞の増殖と関連するので、これらはCRCに対する免疫療法で使用される格好の標的である。
【0154】
従って、本発明はさらに、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含む約40アミノ酸未満の、多くの場合約20アミノ酸未満の、通常約15アミノ酸未満の免疫原性ペプチドを投与する段階を含む、CRCを治療又は予防する方法を提供する。あるいは、免疫原性ペプチドは、1、2、3、又は数個のアミノ酸が修飾、置換、又は付加されたSEQ ID NO: 7の配列の誘導体を含み得る。好ましい態様において、免疫原性ペプチドはノナペプチド又はデカペプチドである。あるいは、本発明は、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含む本発明の免疫原性ペプチド又は上記のようなそれらの誘導体を投与する段階を含む、CRCに対する抗腫瘍免疫の誘導方法を提供する。本発明において、ペプチド又はそれらの誘導体はインビボ又はエクスビボで対象に投与され得る。さらに、本発明はまた、CRCを治療又は予防するための免疫原性組成物を製造するためのSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列又はそれらの誘導体を含むデカペプチドの使用を提供する。
【0155】
TOM34の相同性分析は、それらがあらゆる公知のヒト遺伝子産物由来のペプチドに対して有意な相同性を有さないことを示した。このことは、これらの分子に対する免疫療法により、未知の、又は望ましくない免疫反応が生じる可能性を低下させる。
【0156】
HLA抗原に関して、日本人の間で高度に発現されるA-24型の使用は、有効な結果を得るのに都合よく、そのサブタイプ、例えばA-2402の使用はさらに好都合である。典型的には、臨床においては、治療が必要な患者のHLA抗原型を前もって検査することで、この抗原に対する高レベルの結合親和性を有するか、又は抗原提示による細胞傷害性T細胞(CTL)誘導性を有するペプチドを適切に選択することができる。さらに、高い結合親和性及びCTL誘導性を示すペプチドを得るために、天然のTOM34部分ペプチドのアミノ酸配列に基づき1、2、3、4、又は数個のアミノ酸の置換又は付加が行われ得る。本明細書中、「数個」という用語は、5個またはそれ以下、好ましくは3個またはそれ以下を意味する。さらに、本来提示されるペプチドに加えて、HLA抗原への結合により提示されるペプチドの配列の規則性もすでに公知であるため(Kubo, et al., J. Immunol., 152, 3913, 1994; Rammensee, et al., Immunogenetics. 41:178-228, 1995; Kondo, et al., J. Immunol. 155:4307-12, 1995)、本発明の免疫原性ペプチドに対してそのような規則に基づく修飾が行われ得る。例えば、高いHLA-24結合親和性を示すペプチドは、それらのN末端から二番目のアミノ酸がフェニルアラニン、チロシン、メチオニン、又はトリプトファンで置換されており、C末端のアミノ酸がフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、又はメチオニンで置換されたペプチドもまた好都合に使用され得る。
【0157】
しかしながら、ペプチド配列が、異なる機能を有する内因的又は外因的なタンパク質のアミノ酸配列の一部と同一の場合、副作用、例えば特定物質に対する自己免疫障害又はアレルギー症状が誘導され得、従って、その配列が別のタンパク質のアミノ酸配列と一致する状況は、利用可能なデータベースを用いて相同性調査を行うことによって回避されることが好ましい。さらに、1又は2個のアミノ酸が異なる非同一のペプチドが存在することが相同性調査から明らになった場合、HLA抗原に対する結合親和性を増加させるため及び/又はCTL誘導性を増加させるための上記アミノ酸配列の修飾がそのような問題を引き起こす危険がなくなる。
【0158】
上記のようなHLA抗原に対する高い結合親和性を有するペプチドは癌ワクチンとしての有効性が高いと考えられるが、指標としての高い結合親和性の存在に従って選択される候補ペプチドは、実際のCTL誘導性の存在について試験されなければならない。CTL誘導性の確認は、ヒトMHC抗原を有する抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、マクロファージ、及び樹状細胞)又はより具体的にはヒト末梢血単核白血球由来の樹状細胞を誘導し、ペプチド刺激後にCD8陽性細胞と混合し、次いで標的細胞に対する細胞傷害活性を測定することによって行われる。反応系として、ヒトHLA抗原を発現するように作られたトランスジェニック動物(例えば、BenMohamed L., et al., Hum. Immunol. 2000 Aug.; 61(8):764-79に記載されるトランスジェニック動物)が使用され得る。例えば、標的細胞は、51Cr等で放射能標識され得、細胞傷害活性は標的細胞から放出された放射能により算出され得る。あるいは、固定化されたペプチドを保持する抗原提示細胞の存在下でCTLにより産生及び放出されるIFN-γを測定すること、及び抗IFN-γモノクローナル抗体を用いて培地上の阻害領域を可視化することによって試験され得る。
【0159】
上記のようにペプチドのCTL誘導性を試験した結果、HLA抗原に対する高い結合親和性を有するペプチドが必ずしも高い誘導性を有するとは限らなかった。さらに、KLRQEVKQNL(SEQ ID No.7)により示されるアミノ酸配列を含むデカペプチドは、特に高いCTL誘導性を示した。
【0160】
上述のように、本発明は細胞傷害性T細胞誘導性を有し、1、2、3、4、又は数個のアミノ酸が置換又は付加されたSEQ ID No.7のアミノ酸配列を含むペプチドを提供する。1、2、3、4、又は数個のアミノ酸が置換又は付加された、SEQ ID No.7に示される9又は10個のアミノ酸を含むアミノ酸配列は、好ましくは、他のタンパク質のアミノ酸配列と一致しないものである。特に、N末端から二番目のアミノ酸の、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、メチオニン(M)、若しくはトリプトファン(W)へのアミノ酸置換、又はC末端アミノ酸の、フェニルアラニン(F)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、トリプトファン(W)、若しくはメチオニン(M)へのアミノ酸置換、並びにN末端及び/若しくはC末端への1〜2個のアミノ酸のアミノ酸付加が好ましい例である。具体的には、本発明は、アミノ酸配列KLRQEVKQNL(SEQ ID NO: 7)又はK-[L、F、Y、M、又はW]-RQEVKQN-[L、F、L、I、W、又はM]を含むデカペプチドを提供する。
【0161】
本発明のペプチドは周知技術を用いて調製され得る。例えば、ペプチドは組換えDNA技術又は化学合成により合成的に調製され得る。本発明のペプチドは、個別に又は二つまたはそれ以上のペプチドを含む、より長いポリペプチドとして合成され得る。ペプチドは好ましくは単離され、すなわち、天然宿主細胞の他のタンパク質及びそれらの断片を実質的に含まない。
【0162】
ペプチドは、その修飾によって本明細書中に記載されるペプチドの生物学的活性が破壊されない限り、グリコシル化、側鎖の酸化、又はリン酸化等の修飾を含み得る。その他の修飾には、例えば、ペプチドの血清半減期を増加させるのに使用され得るD-アミノ酸又はその他のアミノ酸模倣物の組込みが含まれる。
【0163】
インビボでCTLを誘導し得る癌ワクチンとして使用するために、本発明のペプチドは二つまたはそれ以上の該ペプチドを含む組み合わせとして調製され得る。ペプチドはカクテルであっても標準的技術を用いて相互に結合されていてもよい。例えば、ペプチドは単一のポリペプチド配列として発現され得る。その組み合わせにおけるペプチドは同一のものであっても相違するものであってもよい。本発明のペプチドを投与することにより、ペプチドは抗原提示細胞のHLA抗原に高密度で提示され、次いで提示ペプチドとHLA抗原との間で形成された複合体に対して特異的に反応するCTLが誘導される。あるいは、本発明のペプチドをそれらの細胞表面上に固定した抗原提示細胞を、対象から樹状細胞を採取することによって得、これらを本発明のペプチドで刺激し、これらの細胞を対象に再投与することによって対象においてCTLを誘導し、その結果、標的細胞に対する攻撃性が増大され得る。
【0164】
より具体的には、本発明は、本発明のペプチドを一つまたは複数含む、腫瘍を治療するため、又は腫瘍の増殖、転移等を妨げるための薬物を提供する。本発明のペプチドはCRCを治療するために使用され得る。
【0165】
本発明のペプチドは、従来的な処方法により処方された薬学的組成物として直接的に投与され得る。このような場合、本発明のペプチドに加えて、薬物に通常使用される担体、賦形剤等が、特に限定されることなく適切に含まれ得る。本発明の免疫原性組成物は、CRCの治療及び予防のために使用され得る。
【0166】
有効成分として本発明のペプチドを含む、CRCを治療及び/又は予防するための免疫原性組成物は、効果的に細胞性免疫が確立されるようアジュバントを含み得るか、又はそれらは抗腫瘍剤等のその他の有効成分と共に投与され得、かつ顆粒剤として処方することにより投与され得る。適用され得るアジュバントには、文献(Johnson, C1in. Microbio1. Rev., 7: 277-289, 1994)に記載されるものが含まれる。アジュバントの例には、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、又はミョウバンが含まれる。さらに、リポソーム処方物、薬物が数μm径のビーズに結合された顆粒処方物、及びペプチドに脂質が結合された処方物が好都合に使用され得る。投与方法は、経口、皮内、皮下、静脈内注射等であり得、全身投与又は標的腫瘍の近辺への局所投与が可能である。本発明のペプチドの用量は、治療対象の疾患、患者の年齢、体重、投与方法等に従って適切に調節され得、通常は0.001mg〜1000mg、好ましくは0.01mg〜100mg、より好ましくは0.1mg〜10mgであり、好ましくは数日〜数ヶ月に一度投与される。当業者は適切な用量を適切に選択することができる。
【0167】
あるいは、本発明は、本発明のペプチドとHLA抗原との間で形成された複合体をそれらの表面上に提示する、エキソソームと呼ばれる細胞内小胞を提供する。エキソソームは、例えば、特表平11-510507号公報及び特表2000-512161号公報に詳細に記載される方法を用いることで調製され得、好ましくは治療及び/又は予防の標的たる対象から得られた抗原提示細胞を用いて調製される。本発明のエキソソームは、本発明のペプチドと同様、癌ワクチンとして接種され得る。
【0168】
使用されるHLA抗原型は、治療及び/予防が必要な対象のHLA抗原型と一致しなければならない。例えば、日本人に対しては、HLA-A24、特にHLA-A2402が適する場合が多い。
【0169】
いくつかの態様において、本発明のワクチン組成物は、細胞傷害性Tリンパ球を刺激する要素を含む。脂質は、ウイルス抗原に対してインビボでCTLを刺激することができる薬剤であることが同定されている。例えば、パルミチン酸残基がリジン残基のε-アミノ基及びα-アミノ基に付加され、次いで本発明の免疫原性ペプチドに連結され得る。次いで脂質付加ペプチドは、リポソームに組み込んで投与するか、又はアジュバントで乳化させて、ミセル状若しくは粒子状のいずれかで直接的に投与され得る。CTL反応の脂質刺激の別の例として、大腸菌リポタンパク質、例えば、トリパルミトイル-S-グリセリルシステインリセリル-セリン(tripalmitoyl-S-glycerylcysteinlyseryl-serine)(P3CSS)が、適切なペプチドに共有結合された場合にCTLを刺激するために使用され得る(例えば、Deres, et al., Nature 342:561-4, 1989を参照のこと)。
【0170】
本発明の免疫原性組成物はまた、本明細書中に開示される免疫原性ペプチドをコードする核酸を含み得る。例えば、Wolff et. al. (1990) Science 247:1465-1468;米国特許第5,580,859号;同第5,589,466号;同第5,804,566号;同第5,739,118号;同第5,736,524号;同第5,679,647号;及びWO 98/04720を参照のこと。DNAに基づく送達技術の例には、「裸のDNA」、促進性(ブピビカイン(bupivicaine)、ポリマー、ペプチド媒介)送達、陽イオン脂質複合体、及び粒子媒介(「遺伝子銃」)又は圧力媒介送達が含まれる(例えば、米国特許第5,922,687号を参照のこと)。
【0171】
本発明の免疫原性ペプチドはまた、ウイルスベクター又は細菌ベクターにより発現され得る。発現ベクターの例には、弱毒化ウイルス宿主、例えばワクシニア又は鶏痘が含まれる。このアプローチは、ワクシニアウイルスの使用、例えば、本ペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現するためのベクターとしての使用を包含する。組換えワクシニアウイルスは、宿主に導入されると免疫原性ペプチドを発現し、それによって免疫反応を惹起する。免疫プロトコルにおいて有用なワクシニアベクター及び方法は、例えば、米国特許第4,722,848号に記載される。別のベクターは、BCG(カルメット-ゲラン杆菌(Bacille Calmette Guerin))である。BCGベクターは、Stover, et al. (1991) Nature 351:456-460に記載される。治療的投与又は免疫に有用なその他の幅広いベクター、例えば、アデノウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、チフス菌ベクター(Salmonella typhi)、無毒化炭疽毒素ベクター等は、明らかである。例えば、Shata, et al. (2000) Mol. Med. Today 6:66-71; Shedlock, et al. (2000) J. Leukoc. Biol. 68:793-806; およびHipp, et al. (2000) In Vivo 14: 571-85を参照のこと。
【0172】
本発明はまた、本発明のペプチドを用いる抗原提示細胞の誘導方法を提供する。抗原提示細胞は、末梢血単核球から樹状細胞を誘導し、次いでそれらをインビトロ、エクスビボ、又はインビボで本発明のペプチドと接触させる(刺激する)ことによって誘導され得る。本発明のペプチドが対象に投与されると、本発明のペプチドを固定保持する抗原提示細胞が対象の体内で誘導される。あるいは、本発明のペプチドを抗原提示細胞に固定した後、その細胞がワクチンとして対象に投与され得る。例えば、エクスビボ投与は以下の段階を含み得る:
a:対象から抗原提示細胞を回収する段階;及び
b:段階aの抗原提示細胞をペプチドと接触させる段階。
【0173】
段階bにより得られる抗原提示細胞はワクチンとして対象に投与され得る。
【0174】
本発明はまた、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子をインビトロで抗原提示細胞に移入する段階を含む、高レベルの細胞傷害性T細胞誘導性を有する抗原提示細胞の誘導方法を提供する。導入される遺伝子は、DNA又はRNAの形態であり得る。導入方法としては、特に限定することなく、当技術分野において従来から実施されている様々な方法、例えば、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、及びリン酸カルシウム法が使用され得る。より具体的には、これはReeves, et al., Cancer Res., 56:5672, 1996; Butterfield, et al., J. Immunol., 161:5607, 1998;Boczkowski, et al., J. Exp. Med., 184:465, 1996;特表2000-509281号公報に記載されるように実施され得る。抗原提示細胞に遺伝子を移入することによって、細胞内でその遺伝子の転写、翻訳等が起こり、次いで得られたタンパク質がMHCクラスI又はクラスIIによるプロセシングを受け、提示経路を通じて部分ペプチドの提示が進行する。
【0175】
さらに、本発明は、本発明のペプチドを用いるCTLの誘導方法を提供する。本発明のペプチドが対象に投与されると、CTLが対象の体内で誘導され、腫瘍組織中のCRC細胞を標的とする免疫系の威力が増強される。あるいは、それらは、対象由来の抗原提示細胞及びCD8陽性細胞又は末梢血単核白血球をインビトロで本発明のペプチドと接触させ(刺激し)、CTL誘導後にその細胞を対象に戻すエクスビボ治療法に使用され得る。例えば、この方法は以下の段階を含み得る:
a:対象から抗原提示細胞を回収する段階;
b:段階aの抗原提示細胞をペプチドと接触させる段階;
c:段階bの抗原提示細胞とCD8+ T細胞を混合し、細胞傷害性T細胞を誘導するために共培養する段階;及び
d:段階cの共培養物からCD8+ T細胞を回収する段階。
【0176】
段階dより得られる細胞傷害活性を有するCD8+ T細胞は、ワクチンとして対象に投与され得る。従って、本発明は、MHC分子、例えばHLA-24により提示される、本明細書中に記載のペプチドを認識することのできるCD8+細胞に関する。さらに、本発明はまた、本明細書中に記載のペプチドを提示するMHCクラスI型HLA-24分子を含む細胞、例えばAPCに関する。
【0177】
さらに、本発明は、本発明のペプチドを用いて誘導された単離細胞傷害性T細胞を提供する。本発明のペプチドを提示する抗原提示細胞からの刺激により誘導された細胞傷害性T細胞は、好ましくは、治療及び/予防の標的たる対象から得られるものであり、かつ単独で又は抗腫瘍効果のために本発明のペプチド若しくはエキソソームを含む他の薬物と組み合わせて投与され得る。得られる細胞傷害性T細胞は、本発明のペプチド又は好ましくは誘導に使用したのと同じペプチドを提示する標的細胞に対して特異的に作用する。標的細胞は、TOM34を内因的に発現する細胞又はTOM34遺伝子をトランスフェクトされた細胞であり得、かつ本発明のペプチドによる刺激によりこれらのペプチドをその細胞表面上に提示する細胞もまた、攻撃の標的となり得る。
【0178】
本発明はまた、HLA抗原と本発明のペプチドとの間で形成された複合体を提示する抗原提示細胞を提供する。本発明のペプチド又は本発明のペプチドをコードするヌクレオチドを接触させることにより得られる抗原提示細胞は、好ましくは、治療及び/又は予防の標的たる対象から得られるものであり、かつ単独で又は本発明のペプチド、エキソソーム、若しくは細胞傷害性T細胞を含む他の薬物と組み合わせてワクチンとして投与され得る。
【0179】
本発明において、「ワクチン」(免疫原性組成物とも称される)という語句は、動物に接種した際に抗腫瘍免疫又はCRCを抑制する免疫を誘導する機能を有する物質を意味する。本発明により、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むポリペプチドが、TOM34を発現するCRC細胞に対して強力かつ特異的な免疫反応を誘導し得るHLA-A24拘束エピトープペプチドであることが示唆された。従って、本発明はまた、SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むポリペプチドを用いる抗腫瘍免疫の誘導方法を包含する。一般的に、抗腫瘍免疫には、以下のような免疫反応が含まれる:
- TOM34を発現する細胞を含む腫瘍に対する細胞傷害性リンパ球の誘導、
- TOM34を発現する細胞を含む腫瘍を認識する抗体の誘導、及び
- 抗腫瘍性サイトカイン産生の誘導。
【0180】
従って、あるタンパク質が動物に接種された際にこれらの免疫反応のいずれか一つを誘導する場合、そのタンパク質は抗腫瘍免疫誘導効果を有すると判定される。タンパク質による抗腫瘍免疫の誘導は、インビボ又はインビトロでそのタンパク質に対する宿主免疫系の反応を観察することによって検出され得る。
【0181】
例えば、細胞傷害性Tリンパ球誘導の検出方法は周知である。生体に侵入する外来物質は抗原提示細胞(APC)の作用によりT細胞及びB細胞に提示される。抗原特異的様式でAPCによって提示された抗原に反応したT細胞は、その抗原による刺激により細胞傷害性T細胞(又は細胞傷害性Tリンパ球;CTL)へと分化し、次いで増殖する(これはT細胞の活性化と呼ばれる)。従って、あるペプチドによるCTLの誘導は、そのペプチドをAPCによってT細胞に提示し、CTLの誘導を検出することによって評価され得る。さらに、APCは、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、マクロファージ、好酸球、及びNK細胞を活性化する効果を有する。CD4+ T細胞もまた、抗腫瘍免疫に重要であるので、そのペプチドの抗腫瘍免疫誘導作用は、これらの細胞の活性化効果を指標として用いて評価され得る。
【0182】
APCとして樹状細胞(DC)を用いるCTLの誘導作用の評価方法が当技術分野で周知である。DCは、APCの中でも最も強力なCTL誘導作用を有する代表的なAPCである。この方法において、試験ポリペプチドはまずDCと接触させ、次いでこのDCをT細胞と接触させる。DCとの接触後に関心対象の細胞に対する細胞傷害効果を有するT細胞が検出されることは、試験ポリペプチドが細胞傷害性T細胞を誘導する活性を有することを示す。腫瘍に対するCTLの活性は、例えば、51Cr標識腫瘍細胞の溶解物を指標として用いて検出され得る。あるいは、3H-チミジン取込み活性又はLDH(ラクトースデヒドロゲナーゼ)放出を指標として用いて腫瘍細胞の損傷の程度を評価する方法もまた周知である。
【0183】
DC以外に、末梢血単核球(PBMC)もまたAPCとして使用され得る。GM-CSF及びIL-4の存在下でPBMCを培養することによってCTLの誘導が増強されることが報告されている。同様に、CTLはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びIL-7の存在下でPBMCを培養することによって誘導されることが示されている。
【0184】
これらの方法によってCTL誘導活性を有することが確認された試験ポリペプチドは、DC活性化効果及びそれに続くCTL誘導活性を有するポリペプチドである。従って、腫瘍細胞に対してCTLを誘導するポリペプチドは、CRCに対するワクチンとして有用である。さらに、本ポリペプチドとの接触によりCRCに対するCTLを誘導する能力を獲得したAPCがCRCに対するワクチンとして有用である。さらに、APCによる本ポリペプチド抗原の提示によって細胞傷害性を獲得したCTLもCRCに対するワクチンとして使用され得る。APC及びCTLによる抗腫瘍免疫を用いるこのようなCRCの治療的方法は、細胞免疫療法と称される。
【0185】
一般的に、細胞免疫療法にポリペプチドを用いる場合、そのCTL誘導の効果は、異なる構造を有する複数のポリペプチドを組み合わせてそれらをDCと接触させることによって向上することが公知である。従って、タンパク質断片でDCを刺激する場合、複数の型の断片の混合物を使用することが有利である。
【0186】
あるいは、ポリペプチドによる抗腫瘍免疫の誘導は、腫瘍に対する抗体産生の誘導を観察することによって確認され得る。例えば、ポリペプチドに対する抗体がそのポリペプチドで免役した実験動物において誘導される場合、及び腫瘍細胞の成長、増殖、又は転移がこれらの抗体によって抑制される場合、そのポリペプチドは抗腫瘍免疫を誘導する能力を有することが決定される。
【0187】
抗腫瘍免疫は、本発明のワクチンを投与することによって誘導され、抗腫瘍免疫の誘導によりCRCの治療又は予防が可能になる。CRCに対する治療又はCRCの発現の予防は、CRC細胞の成長の阻害、CRC細胞の退行、及びCRC細胞の発生の抑制等の任意の段階を含む。CRCを有する個体の死亡率の減少、血液中のCRCマーカーの減少、CRCに付随する検出可能な症状の軽減等もまた、CRCの治療又は予防に含まれる。このような治療的効果及び予防的効果は、統計的に有意であることが好ましい。例えば、CRCに対するワクチンの治療的効果又は予防的効果を、ワクチンを投与しない対照と比較する場合、観察における有意水準は5%以下である。例えば、スチューデントt検定、マン-ホイットニーのU検定、又はANOVAが統計分析に使用され得る。
【0188】
免疫学的活性を有する上記タンパク質又はそのタンパク質をコードするポリヌクレオチド若しくはベクターは、アジュバントと組み合わされ得る。アジュバントは、免疫学的活性を有するタンパク質と一緒に(又は連続して)投与された場合にそのタンパク質に対する免疫反応を増強する化合物を意味する。アジュバントの例には、コレラ毒素、サルモネラ毒素、ミョウバン等が含まれるがこれらに限定されない。さらに、本発明のワクチンは薬学的に許容される担体と適切に組み合わされ得る。このような担体の例には、無菌水、生理学的食塩水、リン酸緩衝液、培養液等が含まれる。さらに、ワクチンは、安定剤、懸濁剤、保存剤、界面活性剤等を必要に応じて含み得る。ワクチンは全身投与又は局所投与される。ワクチン投与は、一回の投与によって行われ得るし、複数回の投与により追加刺激がなされ得る。
【0189】
本発明のワクチンとしてAPC又はCTLを用いる場合、CRCは、例えば、エクスビボ方法によって治療又は予防され得る。より具体的には、治療又は予防を受ける対象のPBMCを採取し、その細胞をエクスビボでポリペプチドと接触させ、APC又はCTLの誘導後にその細胞を対象に投与してもよい。APCはまた、そのポリペプチドをコードするベクターをエクスビボでPBMCに導入することによって誘導され得る。インビトロで誘導されたAPC又はCTLは投与前にクローニングされ得る。高い標的細胞損傷活性を有する細胞をクローニングし成長させることによって、細胞免疫療法はより効果的に実施され得る。さらに、この様式で単離されたAPC及びCTLは、その細胞を採取した個体に対する細胞免疫療法だけでなく、他の個体の類似型の疾患に対する細胞免疫療法にも使用され得る。
【0190】
CRCを阻害するための薬学的組成物:
本発明の文脈では、適切な薬学的処方には、経口投与、直腸投与、経鼻投与、局所投与(口腔投与及び舌下投与を含む)、膣投与、若しくは非経口投与(筋内投与、皮下投与、及び静脈内投与を含む)に適した処方、又は吸入若しくは通気による投与に適した処方が含まれる。好ましくは、投与は静脈内投与である。処方物は、別個の投与単位として梱包されていてもよい。
【0191】
経口投与に適した薬学的処方物には、各々所定の量の有効成分を含む、カプセル剤、カシェ剤、又は錠剤が含まれる。適切な処方物には、粉末剤、顆粒剤、溶液剤、懸濁剤、及び乳化剤も含まれる。有効成分は、ボーラス状の舐剤又はペースト剤として投与されてもよい。経口投与用の錠剤及びカプセル剤は、結合剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤、及び/又は湿潤剤等を含む従来的な賦形剤を含み得る。錠剤は、任意で一つまたは複数の処方成分と合わせて圧縮又は成型することによって製造され得る。圧縮錠は、任意で結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、潤滑剤、界面活性剤、及び/又は分散剤と混合された、粉末状又は顆粒状を含む自由流動形態の有効成分を適切な機械で圧縮することにより調製され得る。湿製錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適切な機械で成型することにより製造され得る。錠剤は、当技術分野で周知の方法に従ってコーティングされ得る。経口用液体製剤は、例えば、水性又は油性の懸濁物、溶液、乳濁液、シロップ、またエリキシルの形態であり得、使用前に水又はその他の適切な溶媒で構成するための乾燥製品として製造され得る。このような液体製剤は、懸濁剤、乳化剤、非水性溶媒(食用油を含み得る)、及び/又は保存剤等の従来的な添加物を含み得る。錠剤は、それに含まれる有効成分の遅延放出又は徐放放出を提供するよう処方されていてもよい。錠剤の梱包品は、月に一度ずつ服用される錠剤を含み得る。
【0192】
非経口投与に適した処方物には、任意で抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び対象の受容者の血液との等張性をその処方物に与える溶質を含む、水性及び非水性の無菌注射溶液、並びに懸濁剤及び/又は増粘剤を含む水性及び非水性の無菌懸濁物が含まれる。処方物は、単位用量又は複数回用量の容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルとして製造され得、かつフリーズドライ(凍結乾燥)条件下で保存され得、使用直前に無菌液体担体、例えば、生理学的食塩水、注射用水の添加のみを必要とする。あるいは、処方物は、連続注入用に製造され得る。即席注射溶液及び懸濁物は、上記の種類の無菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製され得る。
【0193】
直腸投与に適した処方には、カカオ脂又はポリエチレングリコール等の標準的な担体を含む坐剤が含まれる。口内、例えば、口腔内又は舌下への局所投与に適した処方物には、スクロース及びアカシア又はトラガカント等を含む香味基剤中に有効成分を含むトローチ剤、並びにゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア等の基剤中に有効成分を含む香錠が含まれる。鼻腔内投与のために、本発明の化合物は、液体噴霧剤、分散性粉末剤として、又は液滴の形態で使用され得る。液滴は、一つまたは複数の分散剤、溶解剤、及び/又は懸濁剤も含む水性又は非水性の基剤と共に処方され得る。
【0194】
吸入による投与のために、化合物は、注入器、噴霧器、圧縮パック(pressurized packs)、又はその他のエアゾール噴霧を送達する都合の良い手段を通じて好都合に送達される。圧縮パックは、適切な噴霧剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又はその他の適切な気体を含み得る。圧縮エアゾール剤の場合、投与単位は、計量した量を送達する弁を提供することにより決定され得る。
【0195】
あるいは、吸入又は注入による投与のために、化合物は、乾燥粉末組成物の形態、例えば、本化合物と適切な粉末基剤、例えばラクトース又はデンプンの粉末混合物の形態をとり得る。粉末組成物は、その粉末が吸入器又は注入器を用いて投与され得る単位投与形態、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチンパック、又はブリスターパックとして製造され得る。
【0196】
その他の処方物には、治療剤を放出する移植デバイス及び接着パッチが含まれる。
【0197】
必要に応じて、有効成分を徐放するよう適合された上記処方物が使用され得る。薬学的処方物はまた、抗菌剤、免疫抑制剤、及び/又は保存剤等のその他の有効成分を含み得る。
【0198】
本発明の処方物は、具体的に上述した成分に加えて、その処方の種類に関して当技術分野で従来的な他の薬剤も含み得ることが理解されるべきである。例えば、経口投与に適した処方物は、香味剤を含み得る。
【0199】
好ましい単位投与処方物は、後述する有効成分の有効用量又はその適切な画分を含有する。
【0200】
上述の条件の各々について、組成物、例えば、ポリペプチド及び有機化合物は、一日当たり約0.1〜約250mg/kgの用量範囲で経口投与又は注射によって投与され得る。成人の用量範囲は一般的に、約5mg〜約17.5g/日、好ましくは約5mg〜約10g/日、最も好ましくは約100mg〜約3g/日である。錠剤又は別個の単位で提供されるその他の単位投与形態は、適宜、その用量で効果がある量か、又は例えば、約5mg〜約500mg、通常約100mg〜約500mgを含む同じ単位が複数あることで効果がある量を含み得る。
【0201】
使用される用量は、対象の年齢及び性別、治療される正確な障害、並びにその重篤度を含む多くの要因に依存する。投与経路もまた、その状態及び重篤度に依存して変化し得る。いずれにしても、適切かつ最適な用量は、当業者によって、上述の要因を考慮した上で日常的に算出され得る。
【0202】
以下の実施例には本発明の局面が記載されるが、これらの実施例は特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定することを意図していない。以下の実施例はCRC細胞において示差的に発現される遺伝子の同定及び特徴付けについて解説する。
【実施例】
【0203】
細胞株及び臨床材料
ヒト結腸癌細胞株HCT116及びRKOは、American Type Culture Collection(Rockville, MD)から入手した。これらの細胞株は全て、適切な培地、10%ウシ胎児血清(Cansera International Inc., Ontario, Canada)及び1%抗生物質/抗真菌物質溶液(Sigma-Rich)を補充した、HCT116についてはMcCoys 5A(Invitrogen, Carlsbad, CA)及びRKOについてはRPMI 1640 (Sigma-Aldrich Corporation, St. Louis, MO)で単層培養した。細胞は、5% CO2を含む加湿雰囲気下、37℃で維持した。癌性組織及び対応する非癌性粘膜は、12名の患者からインフォームドコンセントを得た後に手術中に切り取った。
【0204】
ヒトBリンパ芽球状細胞株であるTISI細胞(HLA-A24/24)及びEHM(HLA-A3/3)は、Takara Shuzo Co, Ltd. (Otsu, Japan)から譲り受けた。TISI細胞は、ペプチド媒介細胞傷害性アッセイに使用した。結腸直腸癌腫細胞株DLD-1(HLA-A24/02)、HT29(HLA-A24/01)、及びSNU-C2A(HLA-A31/26)は、ATCCから購入した。慢性骨髄性白血病細胞株K562はATCCから購入した。
【0205】
半定量RT-PCR
総RNAは、TRIZOL試薬(Invitrogen)を用いて培養細胞又は臨床組織から製造元のプロトコルに従い抽出した。抽出したRNAをDNAaseI(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)で処理し、オリゴ(dT)12-18プライマー及びSuperscript IIリバーストランスクリプターゼ(Invitrogen)を用いて単鎖cDNAに逆転写した。本発明者らは、定量対照としてGAPDH遺伝子をモニタリングすることによりその後のPCR増幅のための各単鎖cDNAの適切な希釈物を調製した。使用したプライマー配列は、GAPDHについては
5’-ACAACAGCCTCAAGATCATCAG-3’ (SEQ ID NO; 41)及び
5’-GGTCCACCACTGACACGTTG-3’ (SEQ ID NO; 42);
TOM34については
5’-TGGTATAAACCTAAGGCCCTGAT-3’ (SEQ ID NO; 43)及び
5’-TAAACAGCTTAGGTGCCTCTCTG-3’ (SEQ ID NO; 44)
である。GeneAmp PCRシステム9700(PE Applied Biosystems, Foster, CA)において、全ての増幅反応の前に94℃で2分間の初期変性を行い、その後に94℃で30秒間、60℃で30秒間、及び72℃で30秒間の増幅を18サイクル(GAPDHの場合)又は29サイクル(TOM34の場合)行った。
【0206】
ノーザンブロッティング
ヒト多組織ブロット(BD Bioscience, Palo Alto, CA)を32P標識したTOM34のPCR産物とハイブリダイズさせた。プローブは、プライマーセット
5’-GAACGTGAAGGCATTCTACAGA-3’ (SEQ ID NO; 45)及び
5’-TAAACAGCTTAGGTGCCTCTCTG-3’ (SEQ ID NO; 44)
を用いたRT-PCR及びその後のMega Labelキット(Amersham Biosciences, Buckinghamshire, United Kingdom)を用いた32P-dCTPによるランダムオリゴヌクレオチド標識により調製した。プレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、及び洗浄は、販売元の推奨に従って行った。このブロットを、-80℃で10日間、増感スクリーンを用いるオートラジオグラフに供した。
【0207】
TOM34に対するポリクローナル抗体の調製
TOM34の全コード領域は、プライマーセット
5’-CATAAGCTTGCATGGCCCCCAAATTCCCA-3’ (SEQ ID NO; 58)及び
5’-GTTAAGCTTTTAGTGTAGGTTCT-3’, (SEQ ID NO; 59)
を用いて増幅した後、pET28ベクター(Novagen, Madison, WI)の適切なクローニングサイトにクローニングしてHisタグを付加したTOM34タンパク質を発現するプラスミドを生成した。この組換えタンパク質を大腸菌(Escherichia coli)BL21-CodonPlus(DE3)-RIL株(Stratagene, LaJolla, CA)中で発現させ、TALON Superflow Metal Affinity Resin (BD Bioscience)を用いて製造元のプロトコルに従い精製した。このタンパク質をウサギに接種し、その免疫血清を標準的方法に従いアフィニティカラムで精製した。ウェスタンブロット分析は、50 mM Tris-HCl(pH7.5)、250 mM NaCl、0.1% SDS、及び0.5% NP40をProtease Inhibitor Cocktail Set III(CALBIOCHEM, La Jolla, CA)と共に含有する0.1% RIPA様緩衝液を用いて細胞から抽出したタンパク質を用いて行った。
【0208】
免疫組織化学
免疫組織化学染色は、ヒトTOM34に対する、アフィニティ精製したポリクローナル抗体を用いて行った。スライドをオートクレーブを用いて108℃で10分間、0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)中で予備処理することによって脱パラフィン及び再水和させた組織から抗原を回収した後、パラフィン包埋した組織切片をSAB-POペルオキシダーゼ免疫染色系(Nichirei, Tokyo, Japan)に供した。
【0209】
TOM34に対するsiRNAを発現するpsiU6BXの構築
siRNAを発現するプラスミドは、以前に記載されたように二重鎖オリゴヌクレオチドをpisU6BXベクターのBbsI部位にクローニングすることによって調製した(WO2004/076623)。オリゴヌクレオチド対の配列は、siDについては、
5’-CACCGAAAGTGTTCTCTACTCCATTCAAGAGATGGAGTAGAGAACACTTTC-3’ (SEQ ID NO; 46)及び
5’-AAAAGAAAGTGTTCTCTACTCCATCTCTTGAATGGAGTAGAGAACACTTTC-3’ (SEQ ID NO; 47)、
siEについては、
5’-CACCGGATGGAAACTGCAGAGACTTCAAGAGAGTCTCTGCAGTTTCCATCC-3’ (SEQ ID NO; 50)及び
5’-AAAAGGATGGAAACTGCAGAGACTCTCTTGAAGTCTCTGCAGTTTCCATCC-3’ (SEQ ID NO; 51)
である。
【0210】
T4ポリヌクレオチドキナーゼによりリン酸化した後、オリゴヌクレオチド対を5分間煮沸し、その後ゆっくり冷却することによってアニールさせて二重鎖オリゴヌクレオチドを生成した。対照プラスミドpsiU6BX-EGFPは、以下の配列からなるオリゴヌクレオチドを用いて調製した。各ヌクレオチド配列、siRNAの標的配列、及びSEQ ID NOは表1に示す。
5’-CACCGAAGCAGCACGACTTCTTCTTCAAGAGAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3’ (SEQ ID NO; 54)及び
5’-AAAAGAAGCAGCACGACTTCTTCTCTCTTGAAGAAGAAGTCGTGCTGCTTC-3’ (SEQ ID NO; 55)
【0211】
TOM34-siRNAの効果を試験するために、プラスミドをトランスフェクトした5日後に抗TOM34抗体を用いてウェスタンブロット分析を行った。
【0212】
(表1)siRNA発現ベクターに挿入した特定の二重鎖オリゴヌクレオチド、及び各siRNAの標的配列の配列

【0213】
コロニー形成アッセイ
10cmディッシュに蒔いたHCT116細胞(4×105細胞/ディッシュ)に、FuGENE6試薬(Roche Diagnostics)を用いてTOM34-siRNAを発現するプラスミドを一過的にトランスフェクトし、10%ウシ胎児血清を800μg/mlのジェネティシンと共に含有する培地中で二週間維持した。生存細胞を100%メタノールを用いて固定し、ギムザ溶液で染色した。別の実験において、生存能力のある細胞をセルカウンティングキット(DOJINDO, kumamoto, Japan)を用いて測定した。
【0214】
統計的分析
統計的な有意性は、市販のソフトウェア(Statview; SAS Institute, Cary, NC)を用いたシェフェのF検定によるANOVAによって分析した。
【0215】
TOM34由来のペプチド
HLA-A24分子に結合し得るTOM34ペプチド配列由来のノナマー及び10マーのペプチドは、結合予測ソフトウェア(http://bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken_parker_comboform)によって予測した(Parker KC, et. al., J Immunol. 1994;152(1):163-75)。これらのペプチドは、標準的な固相合成法に従いMimotopes, San Diego, CAによって合成し、逆相HPLCによって精製した。ペプチドの純度(>90%)及び同一性は、それぞれ、分析用HPLC及び質量スペクトル分析によって決定した。ペプチドは、20mg/mlでジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、-80℃で保存した。
【0216】
インビトロCTL誘導
単球由来の樹状細胞(DC)を、HLAに提示されたペプチドに対するCTLを誘導するための抗原提示細胞(APC)として使用した。DCは、他文献(Nukaya I, et al., Int J Cancer. 1999;80(1):92-7; Tsai V, et al., J Immunol. 1997;158(4):1796-802)に記載されるようにインビトロで生成した。簡潔には、末梢血単核球(PBMC)を正常ボランティア(HLA-A24)からFicoll-Paque(Pharmacia)溶液により単離し、それらを単球画分として濃縮するためにプラスチック組織培養フラスコ(Becton Dickinson)への付着により分離した。単球濃縮集団は、2%熱不活性化自己血清(AS)を含有するAIM-V(Invitrogen)中、1,000U/mlのGM-CSF(Kirin Brewery Companyから譲受)及び1,000U/mlのIL-4(Genzyme)の存在下で培養した。培養7日後、サイトカイン産生性DCを、AIM-V中20℃で4時間、3μg/mlのβ2-ミクロブロブリンの存在下で20μg/mlのHLA-A24結合ペプチドを用いて負荷した。次いでこれらのペプチド負荷したDCを照射し(5,500rad)、Dynabeads M-450 CD8(Dynal)及びDetachabead(Dynal)を用いた陽性選択により得た自己CD8+T細胞と1:20の比で混合した。この混合物を分割し、アリコートを48ウェルプレート(Corning)中でインキュベートした;各ウェルは、10ng/mlのIL-7(Genzyme)を含有する0.5mlのAIM-V/2% AS中に1.5×104のペプチド負荷DC及び3×105のCD8+ T細胞を含んでいた。三日後、これらの培養物にIL-2(CHIRON)を補充し、終濃度を20IU/mlとした。7日目及び14日目に、T細胞を自己ペプチド負荷DCでさらに再刺激した。DCは、上記と同じ方法で毎回調製した。21日目の三回目のペプチド刺激後にペプチド負荷TISI細胞に対する細胞傷害性を試験した。
【0217】
CTLの拡大培養手順
CTLは、Riddellら(Walter et al, N Engl J Med 333 :1038-1044,(1995), Riddel et al, Nature Med. 2 :216-223,(1996))に記載されるのと同様の方法を用いて培養物中で拡大培養した。計5×104のCTLを、40ng/mlの抗CD3モノクローナル抗体(Pharmingen)の存在下、25×106の照射(3,300rad)PBMC及び5×106の照射(8,800rad)EHM細胞を含む25mlのAIM-V/5% ASに再懸濁した。培養開始の一日後、120 IU/mlのIL-2を培養物に添加した。5日目、8日目、及び11日目に、30 IU/mlのIL-2を含有する新鮮なAIM-V/5% ASをこの培養物に加えた。
【0218】
CTLクローンの樹立
拡大培養したCTL培養物を希釈し、細胞を96ウェル丸底マイクロタイタープレート(Nalge Nunc International)のウェルに分配し、細胞数が0.3、1、及び、3 CTL/ウェルとなるよう調節した。次いでCTLを、5% ASを含有する計150μl/ウェルのAIM-V中で、7×104細胞/ウェルの同種異系PBMC、1×104細胞/ウェルのEHM、30ng/mlの抗CD3抗体、及び125 U/mlのIL-2と共に培養した。10日後に50μl/ウェルのIL-2を、終濃度が125 U/mlとなるように培地に添加した。CTLの細胞傷害活性を14日目に試験し、CTLクローンを上記と同じ方法を用いて拡大培養した。
【0219】
細胞傷害性アッセイ
標的細胞を、CO2インキュベーターにおいて37℃で1時間、100μCiのNa251CrO4 (Perkin Elmer Life Sciences)により標識した。ペプチド負荷した標的細胞は、標識前に37℃で16時間、この細胞を20μg/mlのペプチドと共にインキュベートすることによって調製した。標識した標的細胞をすすぎ、丸底マイクロタイタープレート中で終量が0.2mlとなるようエフェクター細胞と混合した。このプレートを遠心分離(800×gで4分間)して細胞間接触を増加させ、37℃のCO2インキュベーター中に置いた。4時間のインキュベーション後、各ウェルから0.1mlの上清を回収し、ガンマカウンターを用いてその放射能を決定した。TOM34を内因的に発現する標的細胞に対する細胞傷害性を評価する場合、NK様エフェクターに起因するいかなる非特異的溶解も除外するために、その細胞傷害活性を30倍過剰の非標識K562細胞の存在下で試験した。抗原特異性は、抗原ペプチドで負荷した(20μg/ml、16時間、37℃)非標識TISI細胞を用いて51Cr標識HT29腫瘍細胞の認識と競合させる非放射性標的阻害アッセイによって確認した。
【0220】
特異的な細胞傷害性の割合は、次式により特異的な51Cr放出の割合を算出することによて決定した:{(試験試料が放出したcpm - 自然放出のcpm)/(最大放出のcpm - 自然放出のcpm)}×100。自然放出は、エフェクター細胞の非存在下で標的細胞のみをインキュベートすることによって決定し、最大放出は、標的を1N HClと共にインキュベートすることによって得た。全ての実験は二回行い、その平均の標準誤差は一貫して平均値の10%未満であった。
【0221】
結果
CRCにおけるTOM34の発現の上昇
本発明者らの以前の研究において、本発明者らは、23040種類の遺伝子からなるcDNAマイクロアレイを用いた11例のCRC及び9例の結腸腺腫のゲノム全域にわたる発現プロファイル分析によって、結腸腫瘍においてその発現レベルが高頻度で変化する多くの遺伝子を同定した。その発現レベルが11例の癌腫において高頻度で上方制御される遺伝子の中でも、本発明者らは本発明において、内部識別番号D3124を与えた、TOM34に対応する遺伝子(GeneBanckアクセッション番号AB085681、SEQ ID NO; 60、61)(ミトコンドリア外膜の34kDaトランスロカーゼ)に着目した。その後に行った半定量RT-PCR分析は、試験した20例のCRC臨床試料のうち16例においてその発現が増強されることを明らかにした(図1A)。さらに、TOM34はまた、本発明者らのcDNAマイクロアレイデータにおいて8例の肝細胞癌全て、19例の肺癌のうちの5例、9例の膀胱癌のうちの3例、27例の急性骨髄性白血病のうちの7例、及び49例の軟組織肉腫のうちの9例において有意に上方制御されていた。ヒト正常組織におけるその発現を調査するため、本発明者らはTOM34 cDNAをプローブとして用いる多組織ノーザンブロット分析を行った。その結果、この分析は、およそ2.0kbサイズの転写物が精巣及び卵巣において多量に発現され、前立腺、脾臓、及び結腸において微弱に発現されるが、試験した11例のその他の組織のいずれにおいても発現されないことを明らかにした(図1B)。
【0222】
結腸直腸癌細胞株及びCRC組織において蓄積されるTOM34タンパク質
本発明者らは抗TOM34ポリクローナル抗体を調製し、免疫組織化学染色によって8例のCRC細胞株及び12例のCRC組織におけるTOM34タンパク質の発現を試験した。免疫ブロット分析は、試験した全てのCRC細胞株において多量に発現された34kDaのTOM34バンドを検出した。他方、NIH3T3及びCOS7という2つの非癌性細胞株においては低レベルの発現が示された(図2B)。16例のCRC及び対応する非癌性粘膜組織を用いたウェスタンブロット分析は、正常粘膜と比較して16例の腫瘍のうちの15例においてその発現が増強されることを実証した(図2A)。TOM34の細胞内局在性を試験するため、本発明者らはHCT116細胞及びRKO細胞を用いた抗TOM34抗体による免疫細胞化学染色を行ったところ、このタンパク質が細胞質に局在することが示された。さらに、本発明者らは12例のパラフィン包埋した結腸癌組織を用いた免疫組織化学染色を行った。12例の腫瘍のうちの11例において、TOM34は癌細胞の細胞質において強く染色されたが、非癌性粘膜においてはほとんど染色されなかった(図3)。
【0223】
結腸癌細胞の成長に対するTOM34-siRNAの効果
癌細胞におけるTOM34の役割を解明するため、本発明者らはTOM34に対する、siRNAを発現するプラスミドを調製し、それらの、癌細胞の成長に対する効果を試験した。本発明者らはTOM34を抑制するよう設計した二つの形態のsiRNA発現プラスミド(psiU6BX-TOM34-siD、及び-siE)並びに対照プラスミド(psiU6BX-siEGFP)を調製した。本発明者らはHCT116細胞にpsiU6BX-TOM34-siD、psiU6BX-TOM34-siE、又はpsiU6BX-siEGFPをトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞の抽出物のウェスタンブロット分析は、psiU6BX-TOM34-siD及びsiU6BX-TOM34-siEがpsiU6BX-siEGFPと比較して、トランスフェクト細胞におけるTOM34の発現を有意に抑制することを明らかにした(図4A)。本発明者らはネオマイシン耐性遺伝子を同時に発現するプラスミドをHCT116細胞にトランスフェクトし、これらを適正濃度のジェネティシンと共に13日間培養した。TOM34の発現の減少に従って、psiU6BX-TOM34-siD及びpsiU6BX-TOM34-siEは両方とも、psiU6BX-siEGFPと比較してトランスフェクト細胞の成長を顕著に遅らせた(図4B)。これらのデータは、TOM34の発現が癌細胞の成長に関与することを示した。
【0224】
TOM34由来のHLA-A24結合ペプチドの予測
表2及び3は、抗原と予測したペプチドを結合親和性の高い順に示す。20個の10マーペプチド(表2)及び20個の9マーペプチド(表3)を抗原として選択し、後述のように試験した。
【0225】
(表2)HLA-クラスIエピトープ候補の予測(HLA-A24:10マー)

【0226】
(表3)HLA-クラスIエピトープ候補の予測(HLA-A24:9マー)

【0227】
予測したペプチドを用いたT細胞の刺激
TOM34由来のペプチドを認識する細胞傷害性T細胞は、「材料及び方法」に記載された方法で作製した。検出可能な細胞傷害活性を有する得られたCTLを拡大培養し、ペプチドパルスを行わなかった標的と比較してペプチド負荷した標的に対してより高い細胞傷害活性を示すCTL株を樹立した。
【0228】
10マーペプチドTOM34-299(KLRQEVKQNL(SEQ ID NO; 7))で刺激したCTL株は、ペプチド負荷した標的に対して強力な細胞傷害活性を示したが、ペプチド負荷しなかった標的に対しては有意ないかなる細胞傷害活性も示さなかった(図5)。これらのCTL株は、1.2という低いE/T比で検出可能な強力かつ抗原特異的な細胞傷害性を示した(図6)。
【0229】
CTLクローンの樹立
CTLのクローンは、「材料及び方法」に記載されるようにCTL株の培養物の限界希釈及びその後の拡大培養により樹立した。このようにして得たTOM34-299に特異的なCTLクローンは、非常に高い細胞溶解活性を有するクローンを含み、そのクローン全体の活性はE/T比1.2で20%〜70%の溶解、及びE/T比10で40%〜90%を上回る範囲であった(図7)。
【0230】
TOM34を内因的に発現する結腸癌細胞株を標的とする細胞傷害活性
TOM34-299ペプチドに対して惹起されたCTLクローンを、TOM34を内因的に発現する腫瘍細胞を認識し死滅させるそれらの能力について試験した。図8は、TOM34-299に対して惹起された二つのCTLクローンを用いた結果を示す。二つのCTLクローンは両方とも、TOM34及びHLA-A24を発現する結腸癌細胞株DLD-1及びHT29に対して強力な細胞傷害活性を示した。他方、二つのCTLクローンはいずれも、TOM34を発現するがHLA-A24を発現しないSNU-C2A結腸癌細胞株に対しては相当する細胞傷害活性を示さなかった(図8)。
【0231】
非放射性標的阻害アッセイ
非放射性標的阻害アッセイを、CTL株の特異性を確認するために行った。51Crで標識したHT29細胞を放射性標識(hot target)として使用し、ペプチドを負荷した又は負荷しなかったTISI細胞を51Cr標識せずに非放射性標的(cold target)として使用した。標的HT29細胞に対する特異的な細胞溶解は、様々な割合でペプチド負荷した非放射性標的細胞をアッセイに加えた場合に有意に阻害されたが、ペプチド負荷しなかった非放射性標的細胞を加えた場合には阻害されなかった。この結果を、エフェクター/放射性標的比20における特異的溶解の割合として示す(図9)。
【0232】
抗原ペプチドの相同性分析
TOM34-299に対して樹立されたCTLクローンは非常に強力な細胞傷害活性を示した。このことは、このペプチドの配列がヒト免疫系を感作することが公知の他の分子由来のペプチドとの相同性を有することを意味すると考えられる。この可能性を排除するため、BLASTアルゴリズム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)を用い、クエリーとして本ペプチド配列を用いて相同性分析を行い(Altschul SF, et al., Nucleic Acids Res. 1997;25(17):3389-402; Altschul SF, et al., J Mol Biol. 1990;215(3):403-10)、有意な相同性を有する配列が存在しないことを明らかにした。
【0233】
このことは、TOM34-299の配列が特有のものであり、本発明者らの知る限り、任意の無関係の分子に対する意図しない免疫反応を惹起する可能性がほとんどないことを示す。
【0234】
T細胞表面抗原に結合する抗体によるCTL活性の遮断
観察された殺傷活性が細胞傷害性T細胞を介するものかどうかを確認するため、CTL活性に関連するT細胞表面抗原の機能を中和する抗体を用いて、その殺傷活性に対する抗体の効果を調査した。図10に示されるように、CTL活性は、HLAクラスI又はCD8を認識する抗体の添加によってはっきりと遮断され、HLAクラスII又はCD4に対する抗体によってそれよりも低度に遮断された。この結果は、HT29結腸直腸癌腫細胞に対して観察されたT細胞クローンの細胞傷害活性がCD8陽性Tリンパ球のHLA拘束性殺傷活性であることを示す。
【0235】
考察
本発明において、本発明者らはTOM34がCRCにおいて高頻度で上方制御されること、及びTOM34が正常な精巣及び卵巣において多量に発現され、前立腺、脾臓、及び結腸において微弱に発現されるが、試験したその他の正常な成体組織ではほとんど検出されないことを実証した。
【0236】
有望な治療アプローチの一つは、T細胞媒介性抗腫瘍ワクチン接種を含む癌免疫療法である。主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の分子により提示されるペプチド抗原を認識することで、CD8細胞傷害性T細胞は、抗原提示細胞を標的とする。腫瘍細胞は非癌性の自己細胞から派生するので、腫瘍細胞の大部分は免疫監視から逃れる。癌免疫療法を適用するために、癌細胞において特異的に発現される抗原を同定することは非常に重要である。抗原は、MHCクラスI分子を欠くため精巣においては発現されない(Jassim A, et al., Eur J Immunol 19: 1215-1220, 1989)。従って、癌及び精巣において特異的に発現される遺伝子は、免疫療法の標的となるはずである。TOM34は精巣及び卵巣を除く正常器官においては多量には発現されず、結腸癌の大部分において上方制御されるので、TOM34は新規の癌精巣抗原としてCRCの治療標的となり得る。
【0237】
TOM34は当初、このタンパク質が酵母Tomタンパク質との配列相同性を示したことから、ミトコンドリアへのタンパク質移入のためのトランスロカーゼの一要素として機能すると考えられていた(Nuttall SD, et al., DNA Cell Biol 16: 1067-1074, 1997)。Tom34はミトコンドリア外膜に局在すると予想されていたが、近年の研究は、それがHela細胞の細胞質ゾルに含まれることを明らかにした(Chun-Song Y & Henry W, Archives of Biochemistry and Biophysics 400: 105-110, 2002; Abhijit M, et al., Archives of Biochemistry and Biophysics 400: 97-104, 2002)。本発明者らは、TOM34の細胞内局在がCRC細胞においては細胞質であることを抗Tom34ポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色によって明らかにしたが、それはこのデータと整合する。別の報告において、酵母ツーハイブリッドシステムを用いるスクリーニングによりTOM34相互作用タンパク質としてバロシン含有タンパク質(VCP)及びhsp90が同定された。AAA(様々な細胞活動に関連するATPase)ファミリーメンバーであるVCPはp97としても公知であり、ユビキチン化IκBα及び26Sプロテオソームのサブユニットと複合体を形成する。このことは、VCPがIκBαを分解することによって転写因子NFκBの核への転位に関与し得ることを示唆する(Dai RM, et al., J Biol Chem 273: 3562-3573, 1998)。HSP90は、その相互作用が多数の分子の安定性及び機能に必要とされる分子シャペロンである。従って、TOM34はHSP90との結合によって安定化され得る。HSP90は、腫瘍形成性分子、例えばRaf1、AKT、及びSMYD3と結合するので、ヒト癌の治療のために多くのHSP90阻害剤が開発されている。HSP90は正常組織の大部分において普遍的に発現されるので、これらの阻害剤は正常に機能するHSP90を妨害することによって重篤な有害作用を引き起こすことが想定される。
【0238】
結論としては、TOM34はCRCにおいて上方制御されるが、精巣及び卵巣を除く正常器官においてはほとんど発現されなかった。従って、TOM34の阻害が正常細胞に対して重篤な有害作用を示さない可能性が高い。さらに、TOM34の抑制により癌細胞の細胞増殖が阻害されたが、このことはTOM34がそれらの成長に必須の役割を果たしていることを示唆する。これらのデータは、TOM34がヒト結腸直腸癌に対する免疫療法及び抗癌薬の開発にとって有望な標的であることを暗示している。
【0239】
さらに、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫反応を誘導する新規のTAAの同定は、様々な癌型におけるペプチドワクチン接種ストラテジーの臨床適用のさらなる発展を保証する(Boon T & van der Bruggen P, J Exp Med. 1996;183(3):725-9, van der Bruggen P, et al., Science. 1991;254(5038):1643-7, Brichard V, et al., J Exp Med. 1993; 178(2):489-95, Kawakami Y, et al., J Exp Med. 1994;180(1):347-52, Shichijo S, et al., J Exp Med. 1998;187(3):277-88, Chen YT, et al., Proc Natl Acad Sci USA. 1997;94(5):1914-8, Harris CC., J Natl Cancer Inst. 1996 ;88(20):1442-55, Butterfield LH, et al., Cancer Res. 1999;59(13):3134-42, Vissers JL, et al., Cancer Res. 1999;59(21):5554-9, van der Burg SH, et al., J Immunol. 1996;156(9):3308-14, Tanaka F, et al., Cancer Res. 1997;57(20):4465-8, Fujie T, et al., Int J Cancer. 1999;80(2):169-72, Kikuchi M, et al., Int J Cancer. 1999;81(3):459-66, Oiso M, et al., Int J Cancer. 1999;81(3):387-94)。
【0240】
本発明者らは、多くの日本人及び白人の集団に見られるHLA対立遺伝子の一つであるHLA-A24により拘束されるTAAエピトープとしてのTOM34由来のペプチドを分析した(Date Y, et al., Tissue Antigens, 1996; 47: 93-101, Kondo A, et al., J Immunol, 1995 ;155: 4307-12, Kubo RT, et al., J Immunol, 1994;152: 3913-24)。本発明において、本発明者らは、TOM34由来のHLA-A24拘束エピトープペプチドの候補を、それらのHLA-A24との結合親和性の予測に関する情報を用いて選択した。これらの候補ペプチドで負荷したDCによるT細胞のインビトロ刺激の後、ペプチドTOM34-299(KLRQEVKQNL)(SEQ ID NO; 7)を用いて、ペプチド負荷したTISI細胞に対して強力な細胞傷害活性を示すCTLを樹立するのに成功した。さらに、これらのCTL由来のCTLクローンは、TOM34を内因的に発現し、HLA-A24陽性の結腸直腸癌腫細胞株に対しても特異的な細胞傷害性を示した。CTLクローンの細胞傷害活性は、HLA-A24又は標的TAAのいずれかの発現を欠く細胞株に対しては示されず、その非放射性標的によって有意に阻害された。これらの結果は、TOM34が結腸癌の新規のTAAであること、及びTOM34-299がHLA-A24により拘束されるこのTAAの特定のエピトープペプチドであることを強く示唆する。この抗原が結腸癌の大部分の症例において過剰発現され、腫瘍細胞の増殖と関連するので、結腸癌に対する免疫療法で使用される非常に優れた標的になり得る。
【0241】
TOM34-299の相同性分析は、TOM34-299があらゆる公知のヒト遺伝子産物由来のペプチドとも有意な相同性を有さないことを示した。
【0242】
産業上の利用可能性
レーザーキャプチャーダイセクション(laser-capture dissection)及びゲノム全域にわたるcDNAマイクロアレイの組み合わせを通じて得られた、本明細書中に記載される結腸癌の遺伝子発現分析により、癌の予防及び治療の標的として特定の遺伝子が同定された。これらの示差的に発現される遺伝子の部分集団の発現に基づき、本発明は、CRCを同定及び検出するための分子診断マーカーを提供する。
【0243】
本明細書中に記載される方法はまた、CRCの予防、診断、及び治療のためのさらなる分子標的を同定するのにも有用である。本明細書中で報告されたデータは、CRCの包括的な知識を与え、新規の診断ストラテジーの構築を容易にし、そして治療薬及び予防剤のための分子標的の同定の糸口を提供する。このような情報は、結腸の腫瘍化に関する知識をより深めるのに貢献し、CRCの診断、治療、及び究極的には予防のための新規のストラテジーを構築するための指標を提供する。
【0244】
例えば、TOM34の発現を遮断するか又はその活性を妨げる薬剤は、抗癌剤、特にCRC治療のための抗癌剤としての治療用途が見出される。このような薬剤の例には、TOM34遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA、及びリボザイム、並びにTOM34を認識する抗体が含まれる。あるいは、強力かつ特異的な抗腫瘍免疫反応を誘導する新規のTAAの同定は、CRCにおけるペプチドワクチンストラテジーの臨床適用のさらなる発展を保証する。
【0245】
さらに、本発明は詳細にかつその特定の態様を参照して記載されたが、上記の記載は本来例示及び説明を目的とするものであり、本発明及びその好ましい態様を解説することを意図するものと理解されなければならない。当業者は、日常的な実験を通じて、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明において様々な変更及び修正がなされ得ることを容易に認識するであろう。従って、本発明は、上記の説明ではなく、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって規定されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者由来の細胞集団中のTOM34遺伝子の発現レベルを決定する段階を含む、結腸癌細胞または直腸癌細胞の検出方法。
【請求項2】
細胞集団の遺伝子発現レベルが正常対照レベルよりも少なくとも10%高い、請求項1記載の方法。
【請求項3】
遺伝子の発現レベルが、以下からなる群より選択される方法により決定される、請求項1記載の方法:
(a)TOM34のmRNAの検出;
(b)TOM34によりコードされるタンパク質の検出;及び
(c)TOM34の生物学的活性の検出。
【請求項4】
患者由来の細胞集団が上皮細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
患者由来の細胞集団が結腸癌細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
患者由来の細胞集団が結腸癌細胞由来の上皮細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
TOM34遺伝子に特異的に結合するオリゴヌクレオチド、又はTOM34遺伝子によりコードされるタンパク質に結合する抗体、又はアプタマーを含む、結腸癌または直腸癌を検出するための試薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−125248(P2012−125248A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15094(P2012−15094)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2008−502763(P2008−502763)の分割
【原出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(502240113)オンコセラピー・サイエンス株式会社 (142)
【Fターム(参考)】