説明

給液分散装置

【課題】給液アームの反転領域において加減速を的確に制御することで、搬送ベルトの幅方向に原材料を均等に給液することができるようにした給液分散装置を提供する。
【解決手段】この給液分散装置は、真空容器10内に無端の搬送ベルト11が納置され、この搬送ベルト11の上流と真空容器10との間に、揺動軸23が基端部を真空容器10外に突出させて立設され、給液ノズル21を先端部に取り付けた給液アーム22の基端部が揺動軸23に固定され、揺動軸23を中心軸として、給液アーム22及び給液ノズル21を往復揺動させる駆動原30が揺動軸23の基端部23aに備えられている。駆動原30は、一方向に回転するモータ31と、モータ31の回転軸32に固定された原動クランク41と、揺動軸23の基端部23aに固定された従動クランク42と、原動クランク41と従動クランク42とに連結されたタイロッド43とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状、スラリ状、もしくはペースト状に調合された原材料から顆粒状の食品や医薬品など顆粒物を製造するための給液分散装置に関し、詳しくは、両端を封止した筒状の真空容器内に納置された無端の搬送ベルトや、この搬送ベルト上に前記原材料を均一に給液する給液ノズルなどを備えた給液分散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液状、スラリ状、もしくはペースト状に調合された原材料を乾燥させて多孔質の帯板状固形物を生成し、この帯状固形物を適宜寸法の板状固形物に切断し、そして、この板状固形物を粉砕することで顆粒物を生成する給液分散装置が各種提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された給液分散装置は、図5に示すように、水平姿勢の筒体の両端を封止して10torr前後の真空度を維持する真空容器101と、真空容器101内に納置された樹脂製の無端の搬送ベルト102と、搬送ベルト102の上流側に配置され、原材料1を搬送ベルト102上に給液(吐出)するための小孔を形成した吐出管103と、搬送ベルト102上の原材料1を乾燥させて帯状固形物2を生成するための真空乾燥手段104と、帯状固形物2を適宜寸法の板状固形物3に切断するプレクラッシャ105と、真空容器101内を真空に維持したまま板状固形物3を真空容器101外へ排出する排出口106と、排出された板状固形物3を顆粒物に粉砕するメインクラッシャ(図示せず)とを備えている。
【0004】
前記真空乾燥手段104は、搬送ベルト102の上流側から下流側に、第1の恒率乾燥ゾーン104a、第2の恒率乾燥ゾーン104b、減率乾燥ゾーン104c、冷却ゾーン104dを設けたもので、搬送ベルト102上の原材料1を徐々に乾燥させる。
【0005】
すなわち、原材料1が吐出管103から搬送ベルト102上にほぼ全幅に亘って給液され、この原材料1が前記真空乾燥手段104の各ゾーン104a〜104dを進行することで、多孔質の帯状固形物2となる。この帯状固形物2がプレクラッシャ105によって切断されることで、板状固形物3が生成され、この板状固形物3が排出口から真空容器101外へ排出された後、メインクラッシャによって粉砕されることで、顆粒物が生成される。
【0006】
また、給液分散装置には、図示しないが、前記吐出管103に替え、往復揺動する給液アームの先端部に給液ノズルを取り付け、給液ノズルを搬送ベルトの上方で円弧状に揺動させる機種も提供されている。この給液分散装置は、給液ノズルが搬送ベルトの上方で円弧状軌跡を描きつつ往復揺動し、また、搬送ベルトが定速搬送されることで、原材料が搬送ベルト上のほぼ全幅にわたって給液される。
【0007】
このように円弧状軌跡を描きつつ往復揺動する給液ノズルが、搬送ベルトの幅方向に一定速度で円弧状に移動し、搬送ベルトの各端部で減速し、一旦停留した後、折り返すように往復動すると、原材料は搬送ベルトの両側において中央部よりも多く塗布される。そうすると、搬送ベルト上の原材料は、搬送ベルトの幅方向に均等に乾燥しないことから、均質な帯状固形物、ひいては均質な顆粒物を生成することができない。
【0008】
そこで、原材料を搬送ベルト上に均一に分散供給することができるようにした給液分散装置及び方法が特許文献2に記載されている。この給液分散装置は、給液アームの基端部が真空容器内に鉛直姿勢で立設された揺動軸に取り付けられ、この揺動軸の下端部が真空容器の外底部に突出し、この突出している揺動軸の下端部に往復駆動機構を連結した構成とされている。往復駆動機構は、揺動軸の下端部に一体に固定されたウォーム歯車、このウォーム歯車と噛合したウォーム軸、このウォーム軸に同軸に連結したモータなどを組み合わせた構成とされている。
【0009】
このモータが正逆回転することで、揺動軸が所定角度で周方向に正逆自転(首振り運動)する。そして、モータの正逆回転によって、揺動軸に接続された給液アームは、往路始点から高速、低速、高速、減速するように往動し、往路終点で反転し、そして、高速、低速、高速、減速するように復動し、復路終点で反転する。
【0010】
このようなモータの正逆転に合わせて、給液アーム及び給液ノズルも往復動する。そうすると、給液アームの先端に取り付けられたノズルから給液される原材料は、往復路始点終点付近で必要な塗布量を確保できる程度に少なく搬送ベルト上に塗布され、かつ、搬送ベルトの中央部付近での塗布量がほぼ倍増して給液されることで、搬送ベルトの幅方向に均一な厚さに塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録第2558539号公報
【特許文献2】特開平11−98975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に記載された給液分散装置は、モータを正逆回転させることで揺動軸を所定角度で首振り運動させている。しかも、揺動軸には、給液アームが取り付けられているため、大きなモーメントが加えられる。
【0013】
そうすると、給液アームが反転動作する領域において、モータは、加速度及びトルクが非常に大きくなり、インバータ制御をしたとしても、加減速を安定して制御することが困難となり、給液ノズルから搬送ベルト上に給液される原材料は、搬送ベルトの両端部で厚く、中間部で薄くなる、すなわち、均等な厚さの板状固形物を生成することができないことがある。この結果、品質が均一でない顆粒物が生成される。
【0014】
また、特許文献1に記載された給液分散装置は、原材料の粘度や乾燥時の膨張率などの液種によって加減速制御を個別に設定することも困難となっている。
【0015】
そこで、本発明は、給液アームの反転領域において加減速を的確に制御することで、搬送ベルトの幅方向に原材料を均等に給液することができるようにし、また、原材料の特性に合わせて加減速の制御を個別に設定可能とした給液分散装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る給液分散装置は、真空容器内に無端の搬送ベルトが納置され、搬送ベルトの上流端と真空容器との間に、基端部を真空容器外に突出させた揺動軸が立設され、給液ノズルを先端部に取り付けた給液アームの基端部が揺動軸に固定され、前記揺動軸を中心軸として給液アーム及び給液ノズルを往復揺動させる駆動原が揺動軸の基端部に備えられた給液分散装置であって、前記駆動原は、一方向に回転するモータと、該モータの回転軸に固定された原動クランクと、前記揺動軸の基端部に固定された従動クランクと、前記原動クランクの先端部と従動クランクの先端部とにそれぞれ基端部と先端部とが連結されたタイロッドとを備えていることを特徴としている。
【0017】
この給液分散装置によれば、モータの回転軸が一方向に回転することによって、原動クランク及びタイロッドの基端部が一方向に回転するが、タイロッドの先端部が従動クランクに連結されているため、タイロッドの先端部及び従動クランクは往復揺動する。したがって、従動クランクの基端部を固定した揺動軸が周方向に正逆自転(首振り運動)し、揺動軸に固定された給液アーム及び給液ノズルが往復揺動する。
【0018】
要するに、給液アーム及び給液ノズルは、モータが一方向に回転することによって、加減速が安定して制御されながら往復揺動する。さらに、モータの加減速制御は、原材料の粘度や乾燥時の膨張率などの液種によって個別に設定することができる。なお、原動クランクの基端部が固定されるモータの回転軸は、実際の回転軸だけでなく、実際の回転軸にギアを固定し、このギアに噛み合うギアを固定した回転軸であってもよい。
【0019】
また、前記本発明に係る給液分散装置において、前記モータは、給液ノズルの反転動作領域で給液アームを加速させるように回転速度を制御することができるサーボモータであることが好ましい。
【0020】
この給液分散装置によれば、モータとしてサーボモータを使用することにより、給液アームの反転動作領域でモータを加速させることができる。したがって、給液ノズルから搬送ベルト上に給液される原材料は、反転動作領域において、給液ノズルが高速で移動することで、その塗布量を少なくし、そして、重複して塗布されることで、その塗布量を搬送ベルトの全幅に亘って均等にすることができる。
【0021】
また、前記本発明に係る給液分散装置において、前記給液アームが給液ノズルの反転動作領域で安定して徐々に減速させて反転した後、徐々に加速させるための負荷手段が従動クランクに取り付けらていることが好ましい。
【0022】
この給液分散装置によれば、負荷手段が従動クランクに取り付けられていることにより、タイロッド及び原動クランクを介して、モータの回転に常に負荷が掛けられ、従動クランクの反転位置において、負荷手段の負荷の状態が反転する。
【0023】
そして、負荷手段は、従動クランクが一方の反転位置から他方の位置まで回転する間、徐々に伸ばされ、その他方の反転位置を過ぎた後、縮むように伸縮するが、この伸縮によって、モータの回転軸のギアのバックラッシを防止し、従動クランクが反転位置の前後で徐々に減速し、加速する。こうすることで、給液ノズルが一瞬に反転するのでなく、序々に反転するようにすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、モータの回転軸に固定された原動クランクと揺動軸に固定された従動クランクとをタイロッドによって連結した駆動原を備えた給液分散装置が提供されることにより、均等な厚さの帯状固形物を生成し、品質が均一な食品や医薬品など顆粒物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る給液分散装置の一実施形態を示し、(a)は要部断面正面図、(b)は要部拡大断面側面図である。
【図2】本発明に係る給液分散装置の一実施形態を示す要部拡大平面図である。
【図3】本発明に係る給液分散装置に備えられた駆動原の一実施形態を示し、(a)(b)(c)はそれぞれ異なる状態の概略説明図である。
【図4】本発明に係る給液分散装置の一実施形態を示し、(a)は原動クランクの各角度におけるモータ軸の回転速度を示す説明図、(b)(c)は原動クランクの角度とモータ軸回転角度との対応を示す説明図である。
【図5】従来の給液分散装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る給液分散装置の一実施形態について図1ないし図4を参照しながら説明する。この給液分散装置は、筒体の両端を封止して10torr前後の真空度を維持する真空容器10内で液状、スラリ状もしくはペースト状に調合された原材料を乾燥させて多孔質の帯状固形物(図5参照)を生成するための装置である。
【0027】
真空容器10内には、無端の搬送ベルト11が水平姿勢で納置され、この搬送ベルト11の上流側において、給液ノズル21から給液された原材料が塗布される。給液ノズル21は、往復揺動する給液アーム22の先端部に取り付けられている。給液アーム22は、原材料が流れるパイプ部が長さ方向に設けられ、このパイプ部の先端部が給液ノズル21に連通している。
【0028】
給液アーム22の基端部は、搬送ベルト11の上流端と真空容器10の一方の端部との間に鉛直姿勢で立設された揺動軸23に固定されている。揺動軸23が中心軸を回転軸として周方向に揺動(首振り運動)することで、給液アーム22が揺動し、給液アーム22の先端部に取り付けられた給液ノズル21が搬送ベルト11の上流端部の上側で往復揺動する。また、揺動軸23も、原材料が流通可能なように、パイプ部が長さ方向に設けられ、原材料が揺動軸23内のパイプ部から給液アーム22のパイプ部内に送られる。
【0029】
なお、この実施形態では、搬送ベルト11が鉛直方向に6段並列され、各搬送ベルト11の上流端部の上側に、給液ノズル21を取り付けた給液アーム22が往復揺動するようにされている。したがって、最上段の給液ノズル21を除いた5本の給液アーム22は、間隔を空けて搬送ベルト11の間に挟まれている。
【0030】
そして、揺動軸23と真空容器10の一方の端部との間には、支柱24が揺動軸23と平行に立設されている。そして、揺動軸23は、首振り運動可能に、ホルダ25によって支柱24に複数個所で支持されている。支柱24の上下両端部は、真空容器10の上下両側から突出しているが、揺動軸23は、下側の基端部23aのみ真空容器10の下側から突出している。
【0031】
そして、真空容器10の下側から突出している揺動軸23の基端部23aに駆動原30が備えられている。この駆動原30は、一方向に回転するモータ31と、このモータ31の回転軸に固定したギア(図示せず)と、モータ31の回転速度を落とすギア(図示せず)を固定した回転軸32と、リンク機構40とが組み合わされる。なお、ここでは、モータ31の回転速度を落とすギアを固定した回転軸32もモータ31の回転軸32という。
【0032】
そして、モータ31には、給液ノズル21の反転動作領域で給液アーム22を加速させるように回転速度を制御することが可能なサーボモータが使用される。具体的には、図4(a)に示すような回転速度で回転する。
【0033】
すなわち、図4(a)に示すように、このモータ31は、給液ノズル21が搬送ベルト11の中間部を移動している間、すなわち、モータ31の回転軸32が約30°〜160°の間はほぼ等速で回転し、反転領域、すなわちモータ31の回転軸32が0°〜約30°の間及び約170°〜約220°の間、及び約350°〜0°の間で等加速運動ないし等加速度運動に近づいて回転する。なお、モータ31は、ベース33上に設置位置を微調整できるように固定されている。
【0034】
そして、リンク機構40は、図3に示すように、回転軸32に固定された原動クランク41と、揺動軸23に固定された従動クランク42と、両クランク41,42先端部に連結されたタイロッド43とを備えている。すなわち、タイロッド43の基端部が原動クランク41の先端部に連結され、タイロッド43の先端部が従動クランク42の先端部に連結されている。
【0035】
なお、図3においては、リンク機構40を上から見た図でなく、わかりやすくするため、原動クランク41がモータ31の上側に見えるように描いてある。
【0036】
原動クランク41の先端部がモータ31の回転によって一方向に回転するため、タイロッド43の基端部も一方向に回転する。ただし、タイロッド43の先端部は、従動クランク42の先端部に連結されているため、また、従動クランク42の基端部が揺動軸23に固定されているため、タイロッド43の先端部と従動クランク42の先端部は、揺動軸23を支点に一定の角度で往復揺動する。したがって、揺動軸23も一定の角度で往復揺動(首振り運動)し、給液アーム22も一定の角度(図2において、時計の文字盤でほぼ11時と7時の間の70°)で往復揺動する。
【0037】
従動クランク42の先端が図4(b)に示すような各角度においてモータ軸回転角度が図4(c)に示すように設定されたとする。この図では、例えば、従動クランク42が35°往動すると、モータ軸回転角度は約86°、従動クランク42が70°往動すると、モータ軸回転角度は180に設定されている。このようなモータ軸回転角度において、モータ31は、図4(a)に示すような速度で回転する。
【0038】
すなわち、従動クランク42が反転する領域である0°前後と70°前後において、換言すれば、モータ軸回転角度が0°から約10°、約170°から約200°において、モータ31は他の角度よりも速く回転する。さらに、モータ31は、従動クランク42が往動から復動に反転する領域のほうが復動から往動に反転する領域よりも僅かに速く回転するように制御されている。
【0039】
そして、従動クランク42には、給液ノズル21の反転領域で、給液アーム22が徐々に減速して反転した後に、徐々に加速するようにするための負荷手段44が取り付けられている。負荷手段44としては、例えば、従動クランク42の中間部とモータ31を固定したベース33その他の引掛ける部分との間に架け渡される引張バネ44によって構成される。
【0040】
この引張バネ44は、図3(a)に示すように、原動クランク41が時計の文字盤で12時の方向を向いている一方の反転位置(以下、「上死点」という。)Aで最も伸張し、図3(c)に示すように、原動クランク41が時計の文字盤で6時の方向を向いている他方の反転位置(以下、「下死点」という。)Bで最も収縮する。ただし、引張バネ44は、下死点Bにおいて、最も収縮しても、まだ、収縮することができる伸縮力を有している。このような引張バネ44によって、モータ31の回転軸32に固定されたギアのバックラッシを防止し、従動クランク42が上死点Aと下死点Bの前後で徐々に減速し、加速する。
【0041】
なお、真空容器10内には、搬送ベルト11上に塗布された原材料を帯状固形物に生成するため、搬送ベルト11の上流側(図1(a)において右側)から下流側に、恒率乾燥ゾーン、減率乾燥ゾーン、冷却ゾーンが順次配設されている(図5参照)。さらに、搬送ベルト11の下流端部には、帯状固形物を所定の長さごとに切断して板状固形物を生成するためのプレクラッシャ(図示せず)が配設され、このプレクラッシャの下方の真空容器10に、切断された板状固形物を顆粒物に粉砕するメインクラッシャ(図示せず)が配設されている。
【0042】
この給液分散装置は、以上のように構成され、次に、原材料から顆粒物を製造する工程について説明する。
【0043】
この給液分散装置は、給液アーム22の先端に取り付けられた給液ノズル21から原材料が搬送ベルト11上に給液される。搬送ベルト11が低速度で進行し、給液ノズル21が往復揺動することで、原材料は、搬送ベルト11上に搬送ベルト11の幅よりもわずかに狭い幅で円弧形ジグザグ状に塗布される。
【0044】
すなわち、図3(a)(b)(c)に示すように、原動クランク41が反時計方向に回転し、上死点から下死点まで往動している間にタイロッド43によって従動クランク42の先端側が円弧状に引っ張られ、下死点から上死点まで復動している間にタイロッド43によって従動クランク42の先端側が円弧状に押される。
【0045】
そして、原動クランク41と従動クランク42とを結ぶ方向(以下、「Y方向」という。)の原動クランク41の先端部の移動速度は、仮に原動クランク41が等速円運動すると、上死点と下死点の位置辺りにおいて、他の位置よりもY方向の速度が低下し、給液アーム22は、反転領域で減速する。
【0046】
しかし、この給液分散装置では、モータ31としてサーボモータが使用され、反転領域における給液アーム22は、中間領域の1/10の角度でありながら、中間領域の1/10の時間で高速に回転することで迅速に反転する。したがって、原動クランク41及び従動クランク42は、Y方向に等速に移動する。
【0047】
さらに、給液アーム22が反転するに際して、引張バネ44によってモータ31の回転軸32の負荷の状態が転換する。すなわち、従動クランク42が上死点Aにおいてタイロッド43に押されて戻されるときは、引張バネ44が引っ張られて縮む状態となるため、従動クランク42が強制的に戻され、逆に、従動クランク42が下死点Bにおいてタイロッド43に引かれてから戻されるときは、引張バネ44が縮んだ後、伸びる状態となるため、従動クランク42は、往復動が一瞬にして反転するのでなく、徐々に反転する。
【0048】
このようにして、給液ノズル21から流下する原材料は、反転領域における無端ベルト上で過給液されない。したがって、原材料は、搬送ベルト11上に、中心線側も反転領域も均等な厚さに塗布される。
【0049】
そして、この原材料は、恒率乾燥ゾーン、減率乾燥ゾーン、冷却ゾーンと進行することで、幅方向にも均等な厚さの帯状固形物に成形される。この帯状固形物は、プレクラッシャで所定の長さに切断され、板状固形部に生成された後、メインクラッシャで粉砕され、顆粒物が製造される。この顆粒物は、帯状固形物が均等な厚さに成形されていることから、均一な品質のものが製造される。
【0050】
また、給液アーム22が反転するに際して、引張バネ44によってモータ31の回転軸32の負荷の状態が転換することにより、モータ31の回転軸32に固定されたギアのバックラッシを防止することができる。また、給液アーム22は、リンク機構40によって往復揺動し、モータ31は、一定方向に回転するため、反転動作領域において、加速度及びトルクが大きくならない。さらに、モータ31は、原材料の粘度や乾燥時の膨張率などの特性に合わせて、加減速制御を個別に行うことができる。
【0051】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定することなく種々変更することができる。例えば、本発明に係る給液分散装置は、搬送ベルト11を1段とし、1本の給液アーム22の先端部に1個の給液ノズル21を取り付けたものとしてもよい。また、負荷手段44は、引張バネ44に限定されない。
【符号の説明】
【0052】
1………原材料
2………帯状固形物
3………板状固形物
10……真空容器
11……搬送ベルト
21……給液ノズル
22……給液アーム
23……揺動軸
23a…基端部
30……駆動原
31……モータ
32……回転軸
41……原動クランク
42……従動クランク
43……タイロッド
44……負荷手段としてのバネ(引張バネ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内に無端の搬送ベルトが納置され、搬送ベルトの上流端と真空容器との間に、基端部を真空容器外に突出させた揺動軸が立設され、給液ノズルを先端部に取り付けた給液アームの基端部が揺動軸に固定され、前記揺動軸を中心軸として給液アーム及び給液ノズルを往復揺動させる駆動原が揺動軸の基端部に備えられた給液分散装置であって、
前記駆動原は、一方向に回転するモータと、該モータの回転軸に固定された原動クランクと、前記揺動軸の基端部に固定された従動クランクと、前記原動クランクの先端部と従動クランクの先端部とにそれぞれ基端部と先端部とが連結されたタイロッドとを備えていることを特徴とする給液分散装置。
【請求項2】
前記モータは、給液ノズルの反転動作領域で給液アームを加速させるように回転速度を制御することができるサーボモータであることを特徴とする請求項1に記載の給液分散装置。
【請求項3】
前記給液アームが給液ノズルの反転動作領域で安定して徐々に減速させて反転した後、徐々に加速させるための負荷手段が従動クランクに取り付けらていることを特徴とする請求項1又は2に記載の給液分散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−70677(P2013−70677A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212933(P2011−212933)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000152480)株式会社日阪製作所 (60)
【Fターム(参考)】