説明

絶縁電線

【課題】ハロゲンフリーで、優れた難燃性と耐傷性を併せ持つ絶縁電線を提供する。
【解決手段】絶縁電線10は、導体11外周に内層12Aおよび外層12Bからなる2層構造の被覆12を備える。内層12Aはポリオレフィンおよび金属水和物を含有する第1の絶縁性組成物から構成される。外層12Bは(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体50〜92質量%、(B)中密度ポリエチレン3〜25質量%および(C)スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体5〜25質量%からなる混合ポリマーを含有し、金属水和物を含有しない第2の絶縁性組成物から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲンフリーで難燃性および耐傷性に優れる絶縁電線に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、環境への負荷を低減するため、屋内配線や機器内配線などの用途に、従来の、焼却時にハロゲン化水素などの有害なガスを発生するポリ塩化ビニル(PVC)やハロゲン系難燃剤を配合した組成物に代えて、ポリエチレンに水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水和物を多量に添加して難燃化したハロゲンフリーの組成物を被覆材料として用いた絶縁電線が使用されるようになってきた。
【0003】
しかしながら、このような環境に配慮した材料を用いた絶縁電線においては、金属水和物の多量配合により、従来のPVCなどを用いたものと比較して耐傷性(耐傷付き性)が不十分で、輸送時の振動や包装作業の際に外表面に簡単に傷が付いてしまうという問題があった。外表面に傷が付くと、外観が損なわれるだけでなく、耐アーク性や絶縁特性などの電気特性も低下する。
【0004】
そこで、このような耐傷性の問題を解決するため、例えば、ポリエチレンより硬く傷付きにくいポリプロピレンをベースポリマーに用いた組成物や、特定の難燃助剤を併用することにより金属水和物の配合量を低減した組成物などが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかしながら、難燃性および耐傷性において未だ十分に満足し得る特性を備えたものはなく、さらなる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−77092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、ハロゲンフリーで、優れた難燃性と耐傷性を併せ持つ絶縁電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様である絶縁電線は、導体外周に内層および外層からなる2層構造の被覆を備え、前記内層がポリオレフィンおよび金属水和物を含有する第1の絶縁性組成物からなり、前記外層が(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体50〜92質量%、(B)中密度ポリエチレン3〜25質量%および(C)スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体5〜25質量%からなる混合ポリマーを含有し、金属水和物を含有しない第2の絶縁性組成物からなるものである。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様の絶縁電線において、前記第2の絶縁性組成物の混合ポリマーが、(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体70〜90質量%、(B)中密度ポリエチレン5〜20質量%および(C)スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体5〜10質量%からなるものである。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様の絶縁電線において、前記外層の厚さが0.03〜0.20mmであるものである。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1の態様または第2の態様の絶縁電線において、前記外層の厚さが0.05〜0.20mmであるものである。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様のいずれかの態様の絶縁電線において、前記第1の絶縁性組成物のポリオレフィンが直鎖状低密度ポリエチレンおよび/またはエチレン・酢酸ビニル共重合体であるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の絶縁電線によれば、ハロゲンフリーの優れた難燃性と優れた耐傷性を併せ持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の絶縁電線の一実施形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、説明は図面に基づいて行うが、それらの図面は単に図解のために提供されるものであって、本発明はそれらの図面により何ら限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線を示す横断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の絶縁電線10は、導体11上に、後述するような第1の絶縁性組成物からなる内層12Aと、後述するような第2の絶縁性組成物からなる外層12Bの2層構造からなる絶縁体12を有している。
【0018】
導体11は、軟銅線などの導電性金属からなる線材の1本または複数本から構成される。具体的には、例えば28AWG(直径約0.381mm)、22AWG(直径約0.780mm)、または20AWG(直径約0.960mm)の軟銅線からなる単線導体または撚線導体などが使用される。軟銅線は、すず、銀、ニッケルなどのめっきが施されていてもよい。
【0019】
内層12Aを構成する第1の絶縁性組成物は、ポリオレフィンおよび金属水和物を含有する組成物である。ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン;ポリプロピレン(PP);ポリイソブチレン;エチレンに、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンを共重合させたエチレン・α−オレフィン共重合体;イソブチレン・イソプレン共重合体などが挙げられる。ポリプロピレンは、プロピレンのホモポリマーのみならず、エチレンとのランダムコポリマーやブロックコポリマー、少量のα−オレフィンとの共重合体なども使用することができる。α−オレフィンとしては、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。プロピレン・αオレフィン共重合体には、非共役ポリエンがさらに共重合されていてもよい。非共役ポリエンとしては、例えばジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネンなどが挙げられる。
【0020】
ポリオレフィンとしては、また、エチレンに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、パーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどのビニルエステルを共重合させたエチレン・ビニルエステル共重合体;エチレンに、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステルを共重合させたエチレン・アクリル酸エステル共重合体;これらのエチレン系共重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したものなども使用される。変性に用いる不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、クロコン酸、イタコン酸、シトラコン酸が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記不飽和カルボン酸のエステル、無水物、金属塩、アミド、イミドなどが挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体の具体例としては、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0021】
これらのポリオレフィンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。ポリオレフィンとしては、電線・ケーブルの被覆材料として一般に使用されており、また加工性が良好である点から、なかでも、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0022】
また、第1の絶縁性組成物に使用される金属水和物は、高温に曝されると水を放出し、その際の気化熱で昇温を抑制して難燃効果を発現するものであり、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウムなどが例示される。これらの金属水和物は、ステアリン酸などの高級脂肪酸やシランカップリング剤によって表面処理が施されたものであってもよい。このような表面処理された金属水酸化物を使用することにより、ベースポリマーと混練する際の分散性を高めることができる。
【0023】
金属水和物の配合量は、前述したポリオレフィン100質量部に対して、通常は100〜250質量部であり、好ましくは150〜240質量部であり、より好ましくは200〜230質量部である。配合量が100質量部未満では十分な難燃性が得られず、逆に250質量部を超えると、機械的特性が低下する。
【0024】
第1の組成物には、以上の各成分のほか、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で、電線の絶縁被覆材料に一般に使用されている可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、銅害防止剤、紫外線吸収剤、熱老化防止剤、充填剤、加工助剤、架橋剤、架橋助剤、滑剤、着色剤、安定剤などの添加剤を配合することができる。
【0025】
例えば、酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤をポリオレフィン100質量部に対し1〜3質量部配合することができる。銅害防止剤として、ヒドラジン誘導体をポリオレフィン100質量部に対し0.1〜5.0質量部配合することができる。滑剤として、脂肪酸誘導体をポリオレフィン100質量部に対し1〜5質量部配合することができる。難燃助剤として、シリコーンパウダーをポリオレフィン100質量部に対し1〜10質量部配合することができる。摺動剤として、シリコーン−アクリル複合ゴムをポリオレフィン100質量部に対し1〜10質量部配合することができる。
【0026】
さらに、上述した金属水和物以外の他のノンハロゲン系難燃剤も、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。そのようなノンハロゲン系難燃剤としては、グアニジン系、メラミン系などの窒素系難燃剤、リン酸アンモニウム、赤燐などのリン系難燃剤、リン−窒素系難燃剤、ホウ酸亜鉛などのホウ酸化合物、炭酸カルシウムなどが例示される。
【0027】
第1の絶縁性組成物は、以上の各成分をバンバリーミキサ、タンブラー、加圧ニーダ、混練押出機、ミキシングローラなどの通常の混練機を用いて均一に混合することにより調製される。
【0028】
外層12Bを構成する第2の絶縁性組成物は、(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体50〜92質量%、(B)中密度ポリエチレン3〜25質量%および(C)スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体5〜25質量%からなる混合ポリマーを含有し、かつ前述したような金属水和物を含有しないものである。
【0029】
(A)のエチレン・酢酸ビニル共重合体は、特に限定されるものではないが、酢酸ビニル含有量が16〜18質量%、MFR(JIS K 7210;230℃、2.16kg荷重)0.7〜0.9g/10分、密度(JIS K 7112)が0.930〜0.950g/cmのものが好ましい。このような物性を有する市販品を具体的に例示すると、例えば、エバフレックスV5274(三井・デュポンポリケミカル(株)製 商品名)などが挙げられる。
【0030】
(B)の中密度ポリエチレンは、密度(JIS K 6748)が0.930〜0.942g/cmの範囲のものである。市販品を例示すると、例えば、ミペロンXM−221U(三井化学(株)製 商品名)などが挙げられる。
【0031】
(C)のスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体は、ポリブタジエンをソフトセグメントとするスチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)のポリブタジエンブロックを完全水素添加して得られる水添型共重合体である。本発明においては、特に、密度(JIS K 7210)が0.850〜0.950g/cm、スチレン/エチレン・ブチレン比(質量比)が10/90〜22/78、MFR(JIS K 7210;230℃、2.16kg荷重)が4.0〜14.0g/10分であるものを使用することが好ましい。このような物性を有する市販品を例示すると、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製のHシリーズ:H1221(密度(JIS K 7210)0.890g/cm、スチレン/エチレン・ブチレン比(質量比)12/88、MFR(JIS K 7210;230℃、2.16kg荷重)4.5g/10分)、H1052(密度(JIS K 7210)0.890g/cm、スチレン/エチレン・ブチレン比(質量比)20/80、MFR(JIS K 7210;230℃、2.16kg荷重)13.0g/10分)(以上、商品名)などが挙げられる。
【0032】
上記(A)成分、(B)成分および(C)成分は、それぞれ1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、第2の絶縁性組成物の混合ポリマーにおける上記(A)成分、(B)成分および(C)成分の混合割合は、(A)成分のエチレン・酢酸ビニル共重合体が50〜92質量%、好ましくは70〜90質量%、(B)成分の中密度ポリエチレンが3〜25質量%、好ましくは5〜20質量%、(C)成分のスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体が5〜25質量%、好ましくは5〜10質量%である。(A)成分のエチレン・酢酸ビニル共重合体の割合が50質量%未満では、加工性が低下し、92質量%を超えると、機械的特性が低下する。また、(B)成分の中密度ポリエチレンの割合が3質量%未満では、機械的特性が低下し、25質量%を超えると、加工性が低下する。さらに、(C)成分のスチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の割合が5質量%未満では、耐傷性が低下し、25質量%を超えると、本成分が表面にブリードしてくるおそれがある。
【0033】
この第2の絶縁性組成物には、金属水和物を非配合とする以外は、第1の絶縁性組成物に配合したものと同様の各種添加剤、すなわち、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、銅害防止剤、紫外線吸収剤、熱老化防止剤、充填剤、加工助剤、架橋剤、架橋助剤、滑剤、着色剤、安定剤などを、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。
【0034】
具体的には、例えば、酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤を混合ポリマー100質量部に対し1〜3質量部配合することができる。銅害防止剤として、ヒドラジン誘導体を混合ポリマー100質量部に対し0.1〜5.0質量部配合することができる。滑剤として、脂肪酸誘導体を混合ポリマー100質量部に対し1〜5質量部配合することができる。難燃助剤として、シリコーンパウダーを混合ポリマー100質量部に対し1〜10質量部配合することができる。摺動剤として、シリコーン−アクリル複合ゴムを混合ポリマー100質量部に対し1〜10質量部配合することができる。
【0035】
さらに、グアニジン系、メラミン系などの窒素系難燃剤、リン酸アンモニウム、赤燐などのリン系難燃剤、リン−窒素系難燃剤、ホウ酸亜鉛などのホウ酸化合物、炭酸カルシウムなどの金属水和物以外のノンハロゲン系難燃剤も、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。
【0036】
第2の絶縁性組成物も、以上の各成分をバンバリーミキサ、タンブラー、加圧ニーダ、混練押出機、ミキシングローラなどの通常の混練機を用いて均一に混合することにより調製される。
【0037】
内層12Aおよび外層12Bは、上記のように調製した第1および第2の絶縁性組成物を導体11上に同時に押出被覆することにより、あるいは、まず第1の絶縁性組成物を導体11上に押出被覆し、次いで、その上に第2の絶縁性組成物を押出被覆することにより形成される。内層12Aと外層12Bとの密着性、生産効率、低コスト化などの観点からは、2層同時押出により形成することが好ましい。外層12Bの厚さは、通常は0.03〜0.20mmであり、好ましくは0.05〜0.20mmの範囲である。外層12Bの厚さが0.03mm未満では、均一な厚さの層形成が困難になるうえ、十分な耐傷性が得られないおそれがあり、外層12Bの厚さが0.20mmを超えると、機械的特性が低下する。
【0038】
このように構成される絶縁電線においては、絶縁体12がポリオレフィンおよび金属水和物を含有する絶縁性組成物からなる内層12Aと、(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体、(B)中密度ポリエチレンおよび(C)スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体を特定の割合で混合したポリマーを含有し、金属水和物は含有しない絶縁性組成物からなる外層12Bにより構成されているので、金属水和物の使用量を低減しながら、ハロゲンフリーの優れた難燃性を有することができるうえに、優れた耐傷性を備えることができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例および比較例で用いた成分は以下の通りである。
【0040】
LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン):
(株)プライムポリマー製 商品名 モアテック0138N
MDPE(中密度ポリエチレン):
三井化学(株)製 商品名 ミペロンXM−221U
EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体):
三井・デュポンポリケミカル(株)製 商品名 エバフレックスV5274
SEBS(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体):
旭化成ケミカルズ社製 商品名 タフテックH1221
水酸化マグネシウム:
神島化学工業(株)製 商品名 マグシーズS−4
【0041】
実施例1
LLDPE100質量部および水酸化マグネシウム120質量部を加圧ニーダを用いて均一に混練して内層用組成物を調製した。また、EVA52質量部、MDPE24質量部およびSEBS24質量部を加圧ニーダを用いて均一に混練して外層用組成物を調製した。
【0042】
次いで、断面積2mmの銅撚線導体上に上記内層用組成物および外層用組成物を難燃性組成物をこの順で2層同時押出により被覆して、厚さ0.78mmの内層および厚さ0.02mmの外層からなる絶縁体を形成し、外径約3.4mmの絶縁電線を製造した。
【0043】
実施例2〜7、比較例1〜8
内層用組成物および/または外層用組成物の組成と、内層および外層の層厚を、表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、内層用組成物および外層用組成物を調製し、また、これらの組成物を用いて絶縁電線を製造した。
【0044】
上記各実施例および各比較例で得られた絶縁電線について、下記に示す方法で各種特性を評価した。
[引張強さおよび引張伸び]
JIS C 3005に基づく引張試験(引張速度200mm/分)を行い、測定した。
[難燃性]
JIS C 3005に規定する60°傾斜燃焼試験を行い、60秒以内に自然消火した場合を「合格(○)」、60秒を超えた場合を「不合格(×)」とした。
[耐傷性]
スクレープ摩耗試験機(東洋精機製作所製)を用い、導体が露出するまでの回数を測定した。
【0045】
[押出加工性]
外層用組成物を押出被覆した際の円滑性などにより、次の基準で評価した。
◎:円滑に押出被覆が可能
○:円滑性にやや欠けるものの押出被覆が可能(実用上問題なし)
×:押出被覆が困難
【0046】
これらの結果を、被覆(絶縁体)の構成とともに表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1から明らかなように、実施例1〜7はいずれも引張強さ、引張伸び、難燃性、耐摩耗性および押出加工性において良好な結果が得られた。また、外層のエチレン・酢酸ビニル共重合体の含有量を70〜90質量%、中密度ポリエチレンの含有量を5〜20質量%、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体の含有量を5〜10質量%とすることで、押出加工性においてより良好な結果得られた(実施例5、6)。さらに、外層の厚さを0.05〜0.20mmとすることで、耐傷性においてより良好な結果が得られた(実施例5)。
【符号の説明】
【0049】
10…絶縁電線、11…導体、12…絶縁体、12A…(絶縁体の)内層、12B…(絶縁体の)外層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体外周に内層および外層からなる2層構造の被覆を備え、前記内層がポリオレフィンおよび金属水和物を含有する第1の絶縁性組成物からなり、前記外層が(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体50〜92質量%、(B)中密度ポリエチレン3〜25質量%および(C)スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体5〜25質量%からなる混合ポリマーを含有し、金属水和物を含有しない第2の絶縁性組成物からなることを特徴とする絶縁電線。
【請求項2】
前記第2の絶縁性組成物の混合ポリマーは、(A)エチレン・酢酸ビニル共重合体70〜90質量%、(B)中密度ポリエチレン5〜20質量%および(C)スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体5〜10質量%からなることを特徴とする請求項1記載の絶縁電線。
【請求項3】
前記外層の厚さが0.03〜0.20mmであることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁電線。
【請求項4】
前記外層の厚さが0.05〜0.20mmであることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁電線。
【請求項5】
前記第1の絶縁性組成物のポリオレフィンは、直鎖状低密度ポリエチレンおよび/またはエチレン・酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の絶縁電線。

【図1】
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【公開番号】特開2012−99442(P2012−99442A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248610(P2010−248610)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】