説明

継手付き多層管

【課題】可撓性を有する多数本の内管の端部を外管内の所定位置に容易に配置できるようにする。
【解決手段】外管3の内部に可撓性を有する内管4を配設し、外管3と内管4の間に第1通気路5を形成し、内管4の内部を第2通気路6として、多層管1を構成し、多層管1の端部に継手2を取り付けた継手付き多層管において、前記継手2の一端の接続口2aに外管3の端部を接続すると共に、内管4を挿通し、エンドキャップ7に、内管4の端部をその開口部7cに対応させて所定の配置で取り付け、継手2の他端の接続口2bにエンドキャップ7を嵌め込んで、内管4の端部を支持し、分岐した接続口2cでは第1通気路5が開口し、他端の接続口2bでは第2通気路6がエンドキャップ7の開口部7cで開口するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換ダクト等に用いる多層管の端部に継手を取り付けたものに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱交換ダクト等に用いる多層管は、外管の内部に内管が配設され、外管と内管の間に形成される通気路と、内管の内部の通気路とが合流しない構成とされている。その端部構造の一例として、下記特許文献1には、外管の内部に1本の内管を配設した二層管のベント構造において、内管及び外管の一端がそれぞれ接続される内筒及び外筒を有する接続筒にベントキャップを嵌着し、内筒の一側面を押し潰して、内筒と外筒とを溶接することにより、内管の端部を外管内の所定位置に配置するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−141296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、可撓性を有する多数本の内管を外管に挿通した熱交換ダクトの多層管では、上記のような接続筒の構造により、内管の端部を所定位置に配置しようとすると、接続筒が複雑となり、その設計や製作に手間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、可撓性を有する多数本の内管を外管内の所定位置に容易に配置できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明は、外管の内部に可撓性を有する内管を配設し、外管と内管の間に第1通気路を形成し、内管の内部を第2通気路として、多層管を構成し、多層管の端部に継手を取り付けた継手付き多層管において、前記継手は、両端の接続口と分岐した接続口を有するものとし、継手の一端の接続口に外管の端部を接続すると共に、内管を挿通し、継手の他端の接続口に対応するエンドキャップに、内管の端部をその開口部に対応させて所定の配置で取り付け、継手の他端の接続口にエンドキャップを嵌め込んで、内管の端部を支持し、分岐した接続口では第1通気路が開口し、他端の接続口では第2通気路がエンドキャップの開口部で開口するようにしたのである。
【0007】
また、前記内管を外管の内部に複数本配設し、エンドキャップに内管の本数と同数の開口部を形成し、これらの開口部に対応させて各内管の端部をエンドキャップに取り付けたのである。
【0008】
さらに、前記内管を螺旋状の軸スペーサの周りに撚り合わせたのである。
【0009】
また、前記外管と内管の間に、球状の周スペーサを介在させたのである。
【0010】
そして、このような多層管の内管として、ガスバリア性及び透湿性を有するものを使用することにより、多層管を全熱交換ダクトとしたのである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る継手付き多層管では、内管の端部がエンドキャップにより支持されるので、エンドキャップの開口部の配置を内管の配置に対応させるだけで、多数本の内管を外管内の所定位置に容易に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態に係る継手付き多層管の(a)概略縦断平面図、(b)拡大左側面図
【図2】同上の継手及びエンドキャップを示す斜視図
【図3】同上の組立過程において内管にカラーを取り付ける工程を示す斜視図
【図4】同上の一端の継手に内管の一端側を挿通する工程を示す斜視図
【図5】同上の最初の内管のカラーをエンドキャップに取り付ける工程を示す斜視図
【図6】同上の全ての内管のカラーをエンドキャップに取り付けた状態を示す斜視図
【図7】同上の内管を揃える工程を示す斜視図
【図8】同上の揃えた内管を外管に挿通する工程を示す斜視図
【図9】同上の他端の継手に内管の他端側を挿通する工程を示す斜視図
【図10】同上の外管から引き出した内管の他端をエンドキャップに取り付ける工程を示す斜視図
【図11】同上の継手の接続口にエンドキャップを嵌め込んだ完成状態を示す斜視図
【図12】同上の継手にレデューサを取り付けた状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示す多層管1は、熱交換ダクトとして使用されるものであり、両端部に継手2が取り付けられている。
【0015】
多層管1は、外管3の内部に多数本(この実施形態では8本)の内管4を螺旋状に配置し、外管3と内管4の間に形成される第1通気路5と、内管4の内部の第2通気路6との間で全熱交換を行うものである。
【0016】
継手2は、両端の接続口2a,2bと分岐した接続口2cを有するT字管であり、接続口2aには、外管3が接続されると共に、内管4が挿通され、接続口2bには、エンドキャップ7が嵌め込まれて、内管4がエンドキャップ7に所定の配置で取り付けられる。そして、接続口2cでは第1通気路5が開口し、接続口2bでは第2通気路6が開口する。
【0017】
外管3は、螺旋状の線材により、防湿性を有する内装フィルム、グラスウール等の保温材及び耐熱性を有する外装フィルムを内側から順次保持した構成とされ、可撓性及び伸縮性を有するものとされている。
【0018】
内管4は、螺旋状の線材により、ガスバリア性及び透湿性を有する膜状部材を保持した構成とされ、可撓性及び伸縮性を有するものとされている。膜状部材としては、紙又は不織布にセルロース膜を形成したものが適している。
【0019】
エンドキャップ7は、亜鉛鋼板等の金属を材料とし、図2に示すように、円板部7aの外周に周壁部7bを設けたものとされ、円板部7aには、各内管4に対応して、円形の開口部7cが8個周方向に形成されている。各開口部7cの周囲には、複数個のビス穴7dが設けられている。
【0020】
また、継手2は、亜鉛鋼板等の金属筒の外周に保温材を巻き付け、外装フィルムで覆ったものとされ、継手2の接続口2bは、周壁部7bの厚さ等を考慮して、反対側の接続口2aよりも大径とされている。
【0021】
この熱交換ダクトの組み立てに際しては、まず、図3に示すように、各内管4の端部にカラー4aを取り付け、図4に示すように、一端の継手2の接続口2aから接続口2bにかけて、内管4の一端側を挿通する。
【0022】
次に、図5に示すように、カラー4aを、エンドキャップ7の開口部7cの周囲に当接させて、ビス穴7dを介しビス8をカラー4aのねじ穴にねじ込むことにより、内管4の一端部をエンドキャップ7に取り付け、この作業を、図6に示すように、全ての内管4について行ない、エンドキャップ7を接続口2bの内側に嵌め込む。
【0023】
続いて、図7に示すように、全ての内管4を、一端から他端へかけて螺旋状の軸スペーサ9の周りに撚り合わせる。この軸スペーサ9には、亜鉛メッキ鋼板や金属線材を螺旋状に巻いたものを使用する。また、発泡スチロール等から成る球状の周スペーサ10を輪状の結束材11に挿通して、結束材11で撚り合わせた内管4を結束し、周スペーサ10を内管4の束の周りに配置する。
【0024】
その後、図8に示すように、束ねた内管4に外管3を被せ、一端の継手2の接続口2aに外管3の一端部を接続して、多層管1を形成する。
【0025】
そして、図9に示すように、他端の継手2の接続口2aから接続口2bにかけて、内管4の他端側を挿通し、図10に示すように、他端の継手2の接続口2aに外管3の他端部を接続し、外管3を縮めて、この継手2の接続口2bから内管4を引き出した状態で、上記と同様にして、内管4の他端部をエンドキャップ7に取り付け、図11に示すように、外管3を復元させ、エンドキャップ7を接続口2bの内側に嵌め込む。
【0026】
このとき、外管3の伸縮に伴い、外管3と内管4とが長さ方向に相対移動するが、周スペーサ10が球状であれば、外管3に対して周スペーサ10が滑らかに移動し、内管4に対する周スペーサ10の位置ずれが防止される。また、軸スペーサ9が伸縮自在であるため、外管3の伸縮に伴い内管4に軸方向の伸縮力が作用しても、内管4と軸スペーサ9が軸方向に揃った状態が維持され、内管4同士の位置関係が保持される。
【0027】
その後、継手2の接続口2bの周縁とエンドキャップ7の周壁部7bとの間に、コーキング材による処理を施して、この部分からの漏れ止めを行なう。
【0028】
最後に、図12に示すように、レデューサ12を継手2に接続し、その接続部分に保温材13を巻き付けると、熱交換ダクトが完成する。
【0029】
上記のような継手構造を備えた熱交換ダクトでは、内管4の端部がエンドキャップ7により支持されるので、エンドキャップ7の開口部7cの配置を内管4の配置に対応させるだけで、多数本の内管4を外管3内の所定位置に容易に配置することができる。
【0030】
なお、上記実施形態では、内管4が8本のものを例示したが、内管4の本数は、特に限定されるものではない。また、熱交換効率向上のため、内管4が撚り合わされたものを例示したが、必ずしも、このように内管4を撚り合わせなくてもよい。
【0031】
また、外管3として、可撓性を有するものを例示したが、外管3は、亜鉛鋼板製のスパイラルダクトや角ダクト等、可撓性のないものであってもよい。
【0032】
また、継手2として、接続口を直線流路の両端と、一方へ分岐した流路とに設けたT字管を例示したが、継手2は、接続口を直線流路の両端と、両方へ分岐した流路とに設けたクロス管としてもよい。
【0033】
また、軸スペーサ9及び周スペーサ10を設けたものを例示したが、多層管1の長さや内管4の本数等によっては、これらを省略してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 多層管
2 継手
2a,2b,2c 接続口
3 外管
4 内管
4a カラー
5 第1通気路
6 第2通気路
7 エンドキャップ
7a 円板部
7b 周壁部
7c 開口部
7d ビス穴
8 ビス
9 軸スペーサ
10 周スペーサ
11 結束材
12 レデューサ
13 保温材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管(3)の内部に可撓性を有する内管(4)を配設し、外管(3)と内管(4)の間に第1通気路(5)を形成し、内管(4)の内部を第2通気路(6)として、多層管(1)を構成し、多層管(1)の端部に継手(2)を取り付けた継手付き多層管において、前記継手(2)は、両端の接続口(2a,2b)と分岐した接続口(2c)を有するものとし、継手(2)の一端の接続口(2a)に外管(3)の端部を接続すると共に、内管(4)を挿通し、継手(2)の他端の接続口(2b)に対応するエンドキャップ(7)に、内管(4)の端部をその開口部(7c)に対応させて所定の配置で取り付け、継手(2)の他端の接続口(2b)にエンドキャップ(7)を嵌め込んで、内管(4)の端部を支持し、分岐した接続口(2c)では第1通気路(5)が開口し、他端の接続口(2b)では第2通気路(6)がエンドキャップ(7)の開口部(7c)で開口するようにしたことを特徴とする継手付き多層管。
【請求項2】
前記内管(4)を外管(3)の内部に複数本配設し、エンドキャップ(7)に内管(4)の本数と同数の開口部(7c)を形成し、これらの開口部(7c)に対応させて各内管(4)の端部をエンドキャップ(7)に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の継手付き多層管。
【請求項3】
前記内管(4)を螺旋状の軸スペーサ(9)の周りに撚り合わせたことを特徴とする請求項2に記載の継手付き多層管。
【請求項4】
前記外管(3)と内管(4)の間に、球状の周スペーサ(10)を介在させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の継手付き多層管。
【請求項5】
前記内管(4)として、ガスバリア性及び透湿性を有するものを使用することにより、多層管(1)を全熱交換ダクトとしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の継手付き多層管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−159246(P2012−159246A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19785(P2011−19785)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】