説明

線材の巻取り・繰出し装置

【課題】種々の線幅の線材に対して対応が可能であるとともに、コストの上昇を招くことがなく、線材へのダメージを軽減しながら整列状態を以って巻取り・繰出しができる線材の巻取り・繰出し装置を提供する。
【解決手段】サブユニット20は、Y軸方向にスライド自在となっている。ドラム24は、サブフレーム21に対して回転自在に軸支され、回転軸がY軸に平行に設定されている。ドラム24は、連結されたモータ23により回転駆動する。ドラム24における外周面の一部領域に対してはローラ16が外接している。ローラ16は、軸支部材15により軸支されており、軸支部材15は、ベースユニット10における支持フレーム14に対して軸Ax周りに回転自在となっている。そして、軸支部材15の回転角は、0〜90[°]の範囲内の所定の角度であり、調整ねじ17,18により、回転が規制されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材の巻取り・繰出し装置に関し、特に整列状態での線材の巻取りおよび繰出しのための機構に関する。
【背景技術】
【0002】
線材の巻取り・繰出し装置は、生産ラインにおけるワークの昇降やスライド駆動などの用途に広く用いられている。従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置の要部構成について、図7(a)、(b)を用い説明する。
先ず、図7(a)に示すように、従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置では、線材であるワイヤ930をその外周面924aに巻き取るドラム924と、ドラム924に接続されたシャフト925、さらにはワイヤ930をドラム924の外周面924aの適切箇所に案内する案内ローラ941,942を備える。
【0003】
ドラム924は、円柱状をしており、シャフト925は、モータからの回転駆動力をドラム924に伝達する。モータからの回転駆動力により、ドラム924は、中心軸周りに回転する(rot.H)。案内ローラ941,942は、ドラム924の回転量に応じて、矢印I,Jの方向に平行移動するように構成されている。案内ローラ941,942は、巻取りの際のワイヤ930をドラム924の外周面924aで整列させるために設けられている。
【0004】
矢印Gの方向に移動するワイヤ930は、案内ローラ941,942の間を通ることにより、ドラム924の外周面924aの適切な箇所に案内されて巻き取られる。ワイヤ930の繰出しの際は、ドラム924が逆回転し、案内ローラ941,942の移動方向も逆になる。
次に、図7(b)に示すように、別の従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置は、ワイヤ930を外周面974aに巻き取るドラム974と、これにシャフト975を介して接続されたモータと、さらに、ドラム974に対して螺合するねじ976を備える。モータの回転駆動力がシャフト975を介してドラム974に伝達されると、ドラム974は、中心軸周りに回転する(rot.L)。そして、ドラム974の回転量に応じて、ねじ976に対して矢印M,Nの方向にドラム974が平行移動する。これにより、矢印Kの方向に巻取り・繰出しされるワイヤ930は、整列状態でドラム974の外周面974aに対して巻取り・繰出しされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3268153号公報
【特許文献2】特許第4368980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図7(a)に示す従来技術では、用いるワイヤ930の線径ごとに案内ローラ941,942の移動に関しての機構を交換あるいは調整する必要があり、また、案内ローラ941,942の間を通る際にワイヤ930がダメージを受けることも考えられる。一方、図7(b)に示す別の従来技術では、用いるワイヤ930の線径に対応してねじ976のねじピッチを設定する必要があり、コスト上昇の原因となる。
【0007】
本発明は、このような問題の解決を図ろうとなされたものであって、種々の線幅の線材に対して対応が可能であるとともに、コストの上昇を招くことがなく、線材へのダメージを軽減しながら整列状態を以って巻取り・繰出しができる線材の巻取り・繰出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置は、ベースフレームと、ベースフレーム上において、一の方向にスライド自在に設けられたサブフレームと、サブフレームに対して、回転自在に軸支され、回転軸が前記一の方向(サブフレームのスライド方向)に設定されているとともに、外周面の一部が線材の巻取り面であるドラムと、ドラムに対して、回転駆動力を与える駆動源と、ドラムにおける外周面の他の部分に対し、互いの法線同士が合致する状態で外接し、当該外周面の他の部分に対して回転自在のローラと、ベースフレームと前記ローラとの間に介挿されて、ローラを軸支し、且つ、ドラムにおける外周面の法線を軸として回転自在である軸支部材と、ドラムの回転軸とローラの回転軸とがなす角度が、0[°]以上90[°]未満の範囲内の所定の角度となる状態で、軸支部材の回転を規制する規制部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置は、ベースフレームと、ベースフレーム上において、一の方向にスライド自在に設けられたサブフレームと、円筒状をし、サブフレームに対して、回転自在に軸支され、回転軸が前記一の方向(サブフレームのスライド方向)に設定されているとともに、外周面の一部が線材の巻取り面であるドラムと、ドラムに対して、回転駆動力を与える駆動源と、ドラムにおける円筒内周面に対し、互いの法線同士が合致する状態で内接し、当該円筒内周面に対して回転自在のローラと、ベースフレームとローラとの間に介挿されて、ローラを軸支し、且つ、ドラムにおける円筒内周面の法線を軸として回転自在である軸支部材と、ドラムの回転軸とローラの回転軸とがなす角度が、0[°]以上90[°]未満の範囲内の所定の角度となる状態で、軸支部材の回転を規制する規制部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
なお、ドラムの外周面とローラとの接触圧は、例えば、2[kgf]〜7[kgf]とすることができる。より具体的には、ねじ(例えば、M5のねじ)により、ドラムの外周面に対して案内ローラを押し付ける構造を採る場合、接触圧が0[kgf]の状態から、ねじを1.5〜2回転(1.5[mm]程度)締め込むことででもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ドラムの外周面あるいは円筒内周面に対して外接するローラを備える。また、ローラは、その回転軸がドラムの回転軸に対して角度が上記範囲で調整できるようになっている。このため、駆動源からの回転駆動力を受けてドラムが回転駆動するとき、ローラとの接触により発生するドラムの回転軸方向への力の成分の作用により、ドラムがその回転軸方向へとスライドする。
【0012】
ドラムに対するローラのなす角度は、0[°]以上90[°]未満の範囲内の所定の角度であり、規制部材により、所定の角度が維持されるようになっている。ここで、上記所定の角度は、用いる線材の線幅とドラムの外径あるいは円筒内径とにより規定され。ドラムは、一回転するときに、線材の線幅分だけスライドすることとすることができる。これより、ドラムに対する線材の巻取り・繰出しに際して、整列状態を維持することができる。なお、上記におおいて、「線径」とはせずに「線幅」としているのは、線材がテンションを受けた場合に楕円あるいは長円の断面形状となることを考慮したものである。
【0013】
以上のように、本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ドラムの回転軸に対するローラの回転軸の角度を線材の線幅毎に設定することができ、一種類の装置で、種々の線幅の線材に対応することができる。
また、本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、図7(a)に示す従来技術のように、案内ローラの間を線材が通ることがないので、線材に撚りなどのダメージを受けることがない。
【0014】
また、本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ローラはドラムの回転に対して従動しているだけであって、ローラを駆動させるための別の駆動源を必要とはせず、装置コストという観点から優れている。
従って、本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、種々の線幅の線材に対して対応が可能であるとともに、コストの上昇を招くことがなく、線材へのダメージを軽減しながら整列状態を以って巻取り・繰出しができる。
【0015】
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ドラムの外周面に対してローラが外接する場合において、ドラムの外周面に巻き取られた状態での線材の幅をW[mm]とし、ドラムの外周の直径をD[mm]とし、上記所定の角度をθ[°]とするとき、次の関係を満たすように規制部材により軸支部材の回転が規制されているという構成を採用することができる。
【0016】
[数1]W≦πD×tanθ
このような構成を採用すれば、テンションが掛けられた状態でドラムの外周面に当接する線材の幅Wを予め測定しておけば、これに基づいて角度θを規定することができ、整列状態を確実に実現することができる。
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ドラムの円筒内周面に対してローラが内接する場合においても、上記と同じ考え方を基にして、上記所定の角度θを規定することができ、これにより線材の整列状態を確実に実現することができる。
【0017】
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、上記構成において、ドラムおよびローラが金属材料から構成されており、ドラムとローラの互いの当接面が滑面を以って構成されているとすることができる。このように実質的に変形することがない金属材料からなるドラムおよびローラを採用し、且つ、互いの当接面を滑面とすることにより、ドラムとローラとの間での滑りを抑制することができ、正確に線材の整列を実現することができる。例えば、ドラムおよびローラの当接面を、次のような表面粗さの滑面とすることで相互の間での滑りのない当接状態を実現することができる。
【0018】
中心線平均粗さRa≦3.2a(3.2[μm])
十点平均高さRz≦6.3z(6.3[μm])
最大高さRmax≦6.3s(6.3[μm])
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1の外観構成を示す模式斜視図である。
【図2】線材巻取り・繰出し装置1の一部構成を示す模式側面図である。
【図3】ドラム24とローラ16との相互配置を示す模式上面図である。
【図4】(a)は、巻取り前のワイヤ30の断面形状を示す模式断面図であり、(b)は、ドラム24への巻取り時におけるワイヤ30の断面形状を示す模式断面図である。
【図5】変形例1に係る線材の巻取り・繰出し装置のドラム124とローラ116,216,316とを示す模式正面図である。
【図6】(a)は、変形例2に係る線材の巻取り・繰出し装置のドラム224とローラ416との相互配置を示す模式正面図であり、(b)は、模式上面図である。
【図7】(a)は、従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置の一部構成を示す模式側面図であり、(b)は、別の従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置の一部構成を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明を実施するための一例の形態について、図面を参酌しながら説明する。
なお、以下の説明に係る実施の形態は、本発明の構成上の特徴および当該特徴的構成から奏される作用効果を分かりやすく説明するための例として用いるものである。よって、本発明は、その本質的な特徴部分を除き、以下の形態に何ら限定を受けるものではない。
【0021】
[実施の形態]
1.全体構成
本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1の全体構成について、図1を用い説明する。
図1に示すように、線材の巻取り・繰出し装置1は、ベースユニット10をベースとして構成されている。ベースユニット10に対しては、Y軸方向の矢印E,Fのようにスライド自在の状態で、サブユニット20が取り付けられている。
【0022】
ベースユニット10は、台状をしたベースフレーム部分と、そのY軸方向に端部からZ軸方向に立設された支持フレーム14を備える。ベースユニット10には、この他に、X軸方向の中央部においてY軸方向に延伸するリニアレール11を備える。
また、ベースユニット10には、2つの開口10a,・・(図示の都合上、開口10aのみを図示。)が設けられ、ワイヤ30が通過できるようになっている。そして、開口10a,・・の下方には、各2つのプーリ12,13,・・が軸支されている。ワイヤ30は、これらプーリ12,13,・・に掛けられている。
【0023】
サブユニット20は、サブフレーム21を備え、サブフレーム21のZ軸方向裏面側に接合されたリニアブロック22によりベースユニット10のリニアレール11にスライド自在に取り付けがなされている。サブフレーム21には、Y軸方向左側から、モータ23と、ギアボックス25とワイヤ30をその外周面に巻取るドラム24とを備える。
ドラム24は、ギアボックス25を介してモータ23の回転駆動力の伝達を受けて、回転する(rot.A)。なお、ドラム24に巻き取られるワイヤ30は、一方端が巻き取られ、他方端が繰出されるようになっている。これにより、矢印C,Dに示すように、ワイヤ30は、一方がX軸方向右上側に移動するとき、他方はX軸方向左下側に移動することになる。
【0024】
ここで、ベースユニット10における支持フレーム14には、Z軸方向下方に向けて設けられた軸支部材15が、その軸Ax周りに、少なくとも0[°]〜90[°]の範囲で回転自在の状態で取り付けられている(rot.B)。軸支部材15の先端部分には、ローラ16が軸支されており、サブユニット20におけるドラム24の外周面に対して、互いの法線同士が合致する状態で外接されている。なお、軸支部材15における回転(rot.B)は、調整ねじ17,18により規制されている。即ち、軸支部材15は、調整ねじ17,18により、その角度調整が行われ、その後は、回転(rot.B)が規制されるようになっている。
【0025】
2.ドラム24とローラ16との関係
図2に示すように、軸支部材15により軸支されたローラ16は、ドラム24の外周面24aの内、ワイヤ30の巻取り領域から離れた領域に対して外接している。そして、ローラ16は、接触圧は、例えば、2[kgf]〜7[kgf]とすることができる。より具体的には、支持フレーム14および軸支部材15に対して螺合するねじ(例えば、M5のねじ)により、ドラム24の外周面24aに対してローラ16を押し付ける構造を採る場合、接触圧が0[kgf]の状態から、ねじを1.5〜2回転(1.5[mm]程度)締め込む程度でよい。
【0026】
ここで、ドラム24およびローラ16については、例えば、金属材料を用い構成することができ、少なくともドラム24とローラ16の互いの当接面同士が滑面を以って構成されている。ドラム24およびローラ16の当接面については、一例として、次のような表面粗さの滑面とすることで相互の間での滑りのない当接状態を実現することができる。
中心線平均粗さRa≦3.2a(3.2[μm])
十点平均高さRz≦6.3z(6.3[μm])
最大高さRmax≦6.3s(6.3[μm])
3.ローラ16の角度設定とドラム24のスライド駆動
ローラ16の角度設定とドラム24のY軸方向へのスライド駆動(矢印E,F)との関係について、図3を用い説明する。
【0027】
図3に示すように、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1を駆動する場合には、ドラム24の回転軸Axに対して、ローラ16の回転軸Axが回転角θとなるように設定されている。ドラム24の外径をD[mm]とし、ドラム24に巻き取られた状態でのワイヤ30の幅をW[mm]とするとき、角度θ[°]は、次のように設定される。
【0028】
[数2]W≦πD×tanθ
このような構成を採用すれば、テンションが掛けられた状態でドラム24の外周面24aに当接するワイヤ30の幅Wを予め測定しておけば、これに基づいて角度θを規定することができ、ドラム24の外周面24a上での整列状態を確実に実現することができる。
【0029】
なお、図1および図2に示すように、支持フレーム14に設けられたねじ孔14aに対して螺合された調整ねじ17,18により、上記角度θがドラム24の回転駆動によってもズレを生じないように維持される。
以上の構成により、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1では、ドラム24の回転に従動するローラ16からのY軸方向への力成分の作用を受けて、ドラム24の一回転に対してワイヤ30の幅W分だけサブユニット20がY軸方向へとスライド駆動する(矢印E,F)。
【0030】
4.テンションによるワイヤ30の幅Wの変化
テンションによるワイヤ30の幅Wの変化について、図4を用い補足説明する。
図4(a)に示すように、ワイヤ30の外周30f1は、テンションが掛けられていない状態では、略真円であるとする場合、その幅Wは、外径に等しい値となる。
一方、図4(b)に示すように、ワイヤ30がドラム24に巻き取られ、ドラム24aからの反力などによりテンションが掛けられた状態では、真円であったワイヤ30の外周30f(図4(b)の破線で示す外周)は、Y軸方向に長径である楕円あるいは長円形の断面形状となる。このため、ドラム24に巻き取られた状態でのワイヤ30の外周30fは、図4(a)に示すテンションがかかっていない状態での外周30fよりもX軸方向に広い幅Wを有することとなる。
【0031】
このように、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1では、軸支部材15の角度調整により、ドラム24のX軸方向へのスライド量を調整することができるので、図4(b)に示すようなワイヤ30の変形にも対応することができる。よって、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1は、種々のワイヤや他の線材にも対応することができ、汎用性が高い。
【0032】
5.優位性
本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1では、ドラム24の外周面24aに対して外接するローラ16を備える。ローラ16は、その回転軸Axがドラム24の回転軸Axに対して角度が0[°]〜90[°]の範囲で調整できるようになっている(図1〜図3を参照)。このため、モータ23からの回転駆動力を受けてドラム24が回転駆動するとき、ローラ16との接触により発生するドラム24の回転軸方向(Y軸方向)への力の成分の作用により、ドラムがその回転軸方向へとスライドする。
【0033】
ドラム24に対するローラ16のなす角度は、0[°]以上90[°]未満の範囲内の所定の角度であり、規制部材としての調整ねじ17,18により、角度が維持されるようになっている。ドラム24は、一回転するときに、ワイヤ30の幅W分だけY軸方向にスライドする。これより、ドラム24に対するワイヤ30の巻取り・繰出しに際して、整列状態を維持することができる。
【0034】
以上のように、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1では、ドラム24の回転軸Axに対するローラ16の回転軸Axの角度をワイヤ30の線幅W毎に設定することができ、種々の線幅のワイヤなどの線材に対応することができる。
また、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1では、図7(a)に示す従来技術のように、ローラの間を線材が通ることがないので、巻取り・繰出しの際にワイヤ30に対して撚りなどのダメージを与えることがない。
【0035】
また、線材の巻取り・繰出し装置1では、ローラ16はドラム24の回転に対して従動しているだけであって、ローラ16を駆動させるための別の駆動源を必要とはせず、装置コストという観点から優れている。
従って、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1では、種々の線幅Wのワイヤ30に対して対応が可能であるとともに、コストの上昇を招くことがなく、ワイヤ30へのダメージを軽減しながら整列状態を以って巻取り・繰出しができる。
【0036】
なお、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1では、一例として示したワイヤ30以外にも、ロープやひもなどの線材を巻取り・繰出しすることができる。
[変形例1]
変形例1に係る線材の巻取り・繰出し装置の構成について、要部となるドラム124とローラ116,216,316との関係について、図5を用い説明する。
【0037】
図5に示すように、本変形例1に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ドラム124の外周面124aに対して、3つのローラ116,216,316が外接された構成となっている。ローラ116,216,316は、互いにθ,θ,θの角度を以って展開された状態となっている。角度θ,θ,θは、例えば、120[°]とすることができる。ローラ116,216,316は、ドラム124に対して外接された状態を維持しながら回転自在となっており、また、上記実施の形態と同様に、所定の角度で回転が規制されるようになっている。
【0038】
図5の二点鎖線で囲む部分に示すように、本変形例1に係る線材の巻取り・繰出し装置においても、ドラム124の回転軸Axとローラ116の回転軸Axとがなす角度θは、上記[数2]と同様の関係を以って設定される。また、ローラ216,316の各回転軸についても、角度θに設定される。
本変形例に係る線材の巻取り・繰出し装置は、ドラム124の外周124aに対して3つのローラ116,216,316が外接する構成となっている点を除き、上記実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1と同様の構成を有する。
【0039】
本変形例に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ドラム124の外周面124aに対し、3つのローラ116,216,316を外接させる構成とすることにより、上記実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置のように、1つのローラ16を外接させる形態に比べて、ドラム124の外周面とローラ116,216,316との滑りなどを考慮するとき、ドラム124のY軸方向へのスライド量の制御という観点からより望ましい。
【0040】
但し、本変形例1に係る線材の巻取り・繰出し装置では、3つのローラ116,216,316の回転軸Axの角度調整が煩雑となる。
[変形例2]
変形例2に係る線材の巻取り・繰出し装置の構成について、その要部となる部分について、図6を用い説明する。
【0041】
図6(a)、(b)に示すように、本変形例2に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ドラム224が円筒状となっており、その外周面224aに線材の巻取りができるようになっている。そして、図6(a)に示すように、本変形例2に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ドラム224の円筒内周面224bに対して、互いの法線同士が合致するようにローラ416が内接している。
【0042】
図6(b)に示すように、本変形例2に係る線材の巻取り・繰出し装置においても、ドラム224の回転軸Axに対してローラ416の回転軸Axが角度θをなすように角度設定されている。ローラ416が内接するドラム224の内径をdとし、ワイヤなどの線材の線幅をWとするとき、次の関係を以って角度θ設定がなされている。
[数3]W≦πd×tanθ
なお、ローラ416がドラム224の内周面224bに内接する点を除き、上記実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置と同様の構成を有する。
【0043】
以上のような構成を採用する本変形例2に係る線材の巻取り・繰出し装置では、上記実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1と同様に、種々の線幅の線材に対して対応が可能であるとともに、コストの上昇を招くことがなく、線材へのダメージを軽減しながら整列状態を以って巻取り・繰出しができるという効果を奏する。
さらに、本変形例2に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ローラ416をドラム224の内周面224aに内接させることとしているので、ドラム224の軸方向(Y軸方向)長さを、上記実施の形態および変形例1に係るドラム24,124よりも短くすることができ、小型化を図ることができるとともにコストの低減を図ることができる。
【0044】
なお、本変形例2の構成に対し、上記変形例1に係る構成を組み合わせることもできる。
[その他の事項]
上記実施の形態および変形例1,2では、線材の一例としてのワイヤ30の巻取り・繰出しのための装置構成を採用したが、線材の種類については、これに限られるものではない。ロープや紐に適用することもでき、また、ワイヤについても単線のものや撚り線のものに適用することもできる。
【0045】
また、上記実施の形態および変形例1,2では、ワイヤの一方端側を巻取りながら、他方端側を繰出すという駆動形態を採用したが、例えば、ウィンチのように、ワイヤの一端をドラムに固定しておき、他端を巻取り・繰出すという構成とすることもできる。
また、上記実施の形態および変形例1,2では、ドラム24,124,224およびローラ16,116,216,316,416を金属材料を用い構成することとしたが、使用材料はこれに限定されるものではない。例えば、ローラの外周面をゴムや樹脂などで構成することもできるし、ドラムおよびローラをともに樹脂材料を用い構成することもできる。
【0046】
なお、ローラなどの材料としてゴムなどを用いる際には、ドラムとローラとのスリップ角を考慮することが必要となる場合も考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、種々の線幅および線種の線材の巻取り・繰出し装置を実現するのに有用である。
【符号の説明】
【0048】
1.線材の巻取り・繰出し装置
10.ベースユニット
11.リニアレール
12,13.プーリ
14.支持フレーム
15.軸支部材
16,116,216,316,416.ローラ
17,18.調整ねじ
20.サブユニット
21.サブフレーム
22.リニアブロック
23.モータ
24,124,224.ドラム
25.ギアボックス
30.ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームと、
前記ベースフレーム上において、一の方向にスライド自在に設けられたサブフレームと、
前記サブフレームに対して、回転自在に軸支され、回転軸が前記一の方向に設定されているとともに、外周面の一部が線材の巻取り面であるドラムと、
前記ドラムに対して、回転駆動力を与える駆動源と、
前記ドラムにおける前記外周面の他の部分に対し、互いの法線同士が合致する状態で外接し、当該外周面の他の部分に対して回転自在のローラと、
前記ベースフレームと前記ローラとの間に介挿されて、前記ローラを軸支し、且つ、前記ドラムにおける前記外周面の法線を軸として回転自在である軸支部材と、
前記ドラムの回転軸と前記ローラの回転軸とがなす角度が、0°以上90°未満の範囲内の所定の角度となる状態で、前記軸支部材の回転を規制する規制部材と
を備える
ことを特徴とする線材の巻取り・繰出し装置。
【請求項2】
前記ドラムの外周面に巻き取られた状態での前記線材の幅をWとし、
前記ドラムの外周の直径をDとし、
前記所定の角度をθとするとき、
W≦πD×tanθ
の関係を満たすように、前記規制部材により前記軸支部材の回転が規制されている
ことを特徴とする請求項1に記載の線材の巻取り・繰出し装置。
【請求項3】
前記ローラは、前記ドラムにおける前記外周面の他の部分に対して、押厚された状態で外接されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の線材の巻取り・繰出し装置。
【請求項4】
ベースフレームと、
前記ベースフレーム上において、一の方向にスライド自在に設けられたサブフレームと、
円筒状をし、前記サブフレームに対して、回転自在に軸支され、回転軸が前記一の方向に設定されているとともに、外周面の一部が線材の巻取り面であるドラムと、
前記ドラムに対して、回転駆動力を与える駆動源と、
前記ドラムにおける円筒内周面に対し、互いの法線同士が合致する状態で内接し、当該円筒内周面に対して回転自在のローラと、
前記ベースフレームと前記ローラとの間に介挿されて、前記ローラを軸支し、且つ、前記ドラムにおける前記円筒内周面の法線を軸として回転自在である軸支部材と、
前記ドラムの回転軸と前記ローラの回転軸とがなす角度が、0°以上90°未満の範囲内の所定の角度となる状態で、前記軸支部材の回転を規制する規制部材と
を備える
ことを特徴とする線材の巻取り・繰出し装置。
【請求項5】
前記ドラムおよび前記ローラは、金属材料から構成されており、
前記ドラムと前記ローラとは、互いの当接面が滑面を以って構成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の線材の巻取り・繰出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−71952(P2012−71952A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218766(P2010−218766)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(592127965)NKE株式会社 (28)
【Fターム(参考)】