説明

縮合樹脂及びこれを含有する感放射線性樹脂組成物

【構成】下記式(1)で表されるヒドロキシメチル化合物を下記式(2)を構成単位に含むポリマ−と縮合させることにより得られる縮合樹脂及びこれを含有する感放射線性樹脂組成物。
【化1】


(式(1)中R1 は炭素数1から4のアルキル基を、又式(2)中R2 は水素又はメチル基をそれぞれ示す)
【効果】本発明の縮合樹脂及びこれを含有する感放射線性樹脂組成物は、遠紫外部に高透過率を有し、遠紫外線リソグラフィを利用する半導体集積回路の製造に極めて有用である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は縮合樹脂及びこれを含有する半導体集積回路作製に適する感放射線性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体集積回路の製造においては、シリコンウェハー等の基板の上にレジストを塗布し、マスクを通して放射線を照射し、更に現像することで微細なパタ−ンを形成、次いでパタ−ン部以外の基板部をエッチングすることが行われている。現在ネガ型とポジ型のレジストが用いられているが、ネガ型レジストは有機溶剤を用いた現像による膨潤の影響で解像度に限界があり、微細加工用には専らポジ型レジストが用いられている。
【0003】現在使用されているポジ型レジストはナフトキノンジアジド系感放射線剤とアルカリ可溶性のノボラック樹脂とを主成分とした組成物であり、感放射線剤とししては、ポリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸ハライドとのエステル誘導体が、またノボラック樹脂としては、m/p−クレゾールホルムアルデヒドノボラック樹脂が主に用いられている。
【0004】一方、半導体の高集積化に伴い、露光装置の使用波長は、g線(436nm)i線(365nm)そして遠紫外線(248nm)へと短波長化してきており、これに適した感放射線材料及び特に遠紫外部における吸収が少なく、高透過率を持つ樹脂の製出が望まれている。
【0005】一般にレジストに要求される性能として、「感度」、「解像度」、「残膜率」等が挙げられるが、これらのうちいずれの一つが欠けてもレジストとして充分でなく、これらの全ての点で優れていることが望ましい。しかしながらこれらの性能を同時に満たすものは現在までのところ未だ見いだされていない。
【0006】一方、半導体の高集積化に伴い、露光波長として遠紫外部の波長を利用するエキシマーレーザレジストの開発が、感光剤、バインダー樹脂の両面から進められている。感光剤としては、遠紫外部に吸収を持ち、それが露光後ブリーチングするようなもの、例えばジアゾメルドラム酸(米国特許第4339522号)が開示されているが、そのレジスト特性はまだ充分とはいえない。
【0007】他方、バインダー樹脂としては、遠紫外部に吸収のないものが好ましいが、耐ドライエッチング性、耐熱性等の要求特性を考えた場合、まだ充分なものはない。例えば現在ポジ型レジストに使用されているm/p−クレゾールノボラック樹脂の場合、遠紫外部の吸収が大きくパタ−ンプロファイル、解像度等に支障をきたしている。
【0008】遠紫外部で高透過率のものとして、p−アルキルフェノ−ルノボラック樹脂、ポリビニルフェノ−ル樹脂等があるが、前者は通常の現像溶媒(例えばTMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロキシド)に不溶であり、また後者は耐ドライエッチング性、耐熱性等を兼備し且つ遠紫外部に高透過率を有するポリマ−として知られているが、現在半導体製造用レジストに使用されているナフトキノンジアジド系感光剤との組合せに於て露光部と非露光部との溶解度差(溶解抑制効果)が小さく、その結果残膜率が不良となり、その為ポジレジスト用バインダ−樹脂としては使用されていない。
【0009】
【発明が解決しようとしている課題】現在一般に使用されているアルカリ可溶性ノボラック樹脂は、m/p−クレゾ−ルホルムアルデヒド樹脂であるが、これは遠紫外部におけるノボラック樹脂自身の吸収が大きく、光が充分に内部まで透過しないことにより、パターンの解像度、パターンプロファイル等に支障を来すという問題があるが、本発明はこのような欠点のない樹脂を製出することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は前記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至ったものである。即ち、本発明は式(1)で表されるヒドロキシメチル化合物を
【0011】
【化3】


【0012】(式中R1 は炭素数1から4のアルキル基を示す)
【0013】式(2)を構成単位に含むポリマ−
【0014】
【化4】


【0015】(式中R2 は水素あるいはメチル基を示す)と縮合させることにより得られる縮合樹脂及びこれを含有する感放射線性樹脂組成物を提供する。
【0016】本発明を詳細に説明する。本発明の縮合樹脂に使用される式(1)の化合物の具体例としては、2−ヒドロキシメチルp−クレゾ−ル、2−ヒドロキシメチルp−エチルフェノ−ル、2−ヒドロキシメチルp−ノルマルプロピルフェノ−ル、2−ヒドロキシメチルp−イソプロピルフェノ−ル、2−ヒドロキシメチルp−ノルマルブチルフェノール、2−ヒドロキシメチルp−t−ブチルフェノール等があるが、これらの化合物は相当するp−アルキルフェノールをアルカリ性下で、等モル以上フォルマリンと反応させることにより得られる。
【0017】また式(2)を構成単位に含むポリマーの具体例としてはポリビニルフェノール、ポリプロペニルフェノ−ル、ポリビニルフェノールの部分核水添化物(特開平2−29751)、ビニルフェノールと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合物、ビニルフェノールとスチレンとの共重合物等があるがこれらに限定されるものでなく、ビニルフェノール、あるいはプロペニルフェノ−ルと共重合可能のモノマ−であればよい。
【0018】式(1)及び(2)を組成成分とする本発明の縮合樹脂の製造方法としてはフェノールフォルムアルデヒドノボラック樹脂の製造方法が応用でき、ノボラック製造の際のフォルムアルデヒドの代わりに一般式(1)で示されるヒドロキシメチル化合物を使用するものである。
【0019】本発明の縮合樹脂を製造するに当たっては酸触媒が用いられるが、酸触媒としては、シュウ酸、酢酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等が使用できる。また組成比としては、(1)/(2)=5/100〜100/100、好ましくは、10/100〜60/100である。反応温度は90〜150℃、好ましくは100〜120℃である。反応時間は、反応温度により変わるが通常2〜12時間、好ましくは4〜10時間である。
【0020】反応に使用する溶媒としてはメチル(あるいはエチル)セロソルブ等の有機溶媒あるいは酢酸のような有機酸を使用することができる。本発明の縮合樹脂に感光剤を加え、溶媒(例、エチルラクテ−ト)に溶解して本発明の感放射線線樹脂組成物を得る。本発明において感光剤としては例えばナフトキノンジアジドスルホン酸やベンゾキノンジアジドスルホン酸のエステル化合物やアミド化合物、ジアゾメルドラム酸化合物、オルソニトロベンジルエステル化合物あるいは芳香族アジド化合物等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0021】本発明の感放射線性樹脂組成物は常法により、i線、遠紫外線等の放射線によりパタ−ン形成ができる。本発明の縮合樹脂はその塗膜の透過率が極めて高いという特徴がある。
【0022】実施例実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】合成例(2−ヒドロキシメチルp−t−ブチルフェノ−ルの合成)p−t−ブチルフェノ−ル180g(1.2モル)をエタノ−ル280mlに溶解させ、その後37%フォルマリン97.4g(1.2モル)を室温で加え、その後30%水酸化ナトリウム160g(1.2モル)を水冷下で添加し暫く撹はん後4日間放置した。
【0024】放置後の析出物を濾過後純水に溶解し、水冷下で4規定塩酸で酸析をした。析出物を濾過、水洗後乾燥し、淡黄色の粗生物120gを得た。この粗生物をシクロヘキサン830gに加熱溶解し、熱濾過後濾液を室温放置することにより結晶を析出させ、濾過乾燥後、白色結晶80gを得た。融点90〜91℃。
【0025】実施例1ポリビニルフェノ−ル(商品名LYNCUR PHM−C丸善石油化学(株)製)18.0g及び合成例で得た2−ヒドロキシメチルp−t−ブチルフェノ−ル9.45gを酢酸100mlに溶解し室温で暫く撹はん後、100℃まで加熱し100〜110℃で6時間撹はんした。冷却後、反応液を炭酸水素アンモニウム138gを水2000ml中に溶解した液中へ添加し、暫く撹はん後析出物を濾過水洗後減圧乾燥し、本発明の縮合樹脂25.8gを得た。
【0026】この得られた樹脂をエチルラクテ−トに溶解し、その溶液を石英板に回転塗布し乾燥後1μmの塗膜を得た。この塗膜の248nmに於ける透過率は58.9%、また2.0%TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド)中に於ける溶解速度は0.25μm/minであった。使用ポリビニルフェノ−ルの測定値は各々、66%、7.75μm/minであった。
【0027】実施例2実施例1において2−ヒドロキシメチルp−t−ブチルフェノ−ルの使用量を6.19gに変えた以外は実施例1と同様に合成した。得量22.3g。1μmあたりの248nmにおける透過率は64.8%、また2.0%TMAH中での溶解速度は0.53μm/minであった。
【0028】実施例3実施例1において2−ヒドロキシメチルp−t−ブチルフェノ−ルの使用量を15.76gに変えた以外は実施例1と同様に処理した。得量31.5g.1μmあたりの248nmにおける透過率は56.1%、また2.0%TMAH中での溶解速度は0.0μm/minであった。
【0029】実施例4実施例1において2−ヒドロキシメチルp−t−ブチルフェノ−ル9.45gを2−ヒドロキシメチルp−クレゾ−ル7.2gに変えた以外は実施例1と同様に処理した。得量23.0g1μmあたりの248nmに於ける透過率は55.0%、また2.0%TMAH中での溶解速度は0.3μm/minであった。
【0030】実施例5実施例1で得られた樹脂を1.0g、感光剤としてビスフェノ−ルAの1、2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル0.25gをエチルラクテ−ト4.5gに溶解させ孔径0.2μmのテフロン製フィルタで濾過し本発明の感放射線性樹脂組成物を得た。
【0031】この樹脂組生物をシリコンウェハに膜厚が1.0μmになるように回転塗布を行い、その後100℃のホットプレ−ト上にて3分間乾燥を行った。ついで、これを微細パタ−ンの描かれたマスクを介して、500Wキセノン−水銀ランプをKL−25フィルタ(東芝硝子(株)製)を通して254nmの波長(光強度0.2mW/cm2 )を400秒照射後2.0%TMAHで23℃、70秒間現像した。得られたパタ−ンは、m/p−クレゾ−ルノボラック樹脂を使用した場合に比べてより矩形なパタ−ンが得られ、本発明樹脂の高透過率の効果が認められた。
【0032】
【発明の効果】本発明の縮合樹脂及びこれを含有する感放射線性樹脂組成物は、遠紫外部に高透過率を有し、遠紫外線リソグラフィを利用する半導体集積回路の製造に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】式(1)で表されるヒドロキシメチル化合物を
【化1】


(式中R1 は炭素数1から4のアルキル基を示す)
式(2)を構成単位に含むポリマーと縮合させることにより得られる縮合樹脂。
【化2】


(式中R2 は水素あるいはメチル基を示す)
【請求項2】請求項1に記載の縮合樹脂を含有する感放射線性樹脂組成物。

【公開番号】特開平5−43641
【公開日】平成5年(1993)2月23日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−225294
【出願日】平成3年(1991)8月12日
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)