説明

繊維強化材を有する構造体、およびその製造方法

【課題】、熱成形可能で、軽量なシート材からなるスタンパブル成形が可能な繊維強化材を有する構造体を提供すること。
【解決手段】(A)繊維強化材と(B)熱可塑性樹脂からなり、(A)繊維強化材の単糸の長さが1〜50mm、太さが3〜1,000μmであり、(A)繊維強化材/(B)熱可塑性樹脂の重量比(重量%)が20〜95/80〜5、目付が40〜4,000g/mであるエアレイド法よるウエブ層からなる、繊維強化材を有する構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形可能で、軽量なシート材からなるスタンパブル成形が可能な繊維強化材を有する構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やアラミド繊維などの繊維強化材で強化した繊維強化樹脂成形品は、比強度、比剛性、耐久性などに優れることから、航空・宇宙関連を始め、一般産業、スポーツ・レジャー用途にも急速に普及しつつある。
【0003】
従来、これら繊維強化樹脂成形品のマトリックス樹脂として、補強材が連続繊維の場合は熱硬化性樹脂、短繊維の場合は熱可塑性樹脂などが用いられてきた。
最近、繊維強化樹脂成形品のリサイクル性や高速成型性の観点から熱可塑性樹脂をマトリックスとする複合材料が注目されている。すなわち、熱可塑性樹脂を用いた繊維強化複合材料では、スタンパブルシートが可能で、高速成形性が確保される。このように、取り扱い性から、補強材として、短繊維に限らず、連続繊維についてもマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂が用いられる場合が増えている。また、補強材として短繊維を使用するときは、熱可塑性樹脂との接合方法に様々な方策が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2009−113369号公報)には、複数の補強繊維が所定方向に引き揃えられてシート状に形成された補強繊維シート材と、当該補強繊維シート材の片面又は両面に付着した熱可塑性樹脂シート材により構成されている熱可塑性樹脂補強シート材を複数枚積層して構成された熱可塑性樹脂複合材料成形品の製造方法が提案されている。しかしながら、成型前のプレプリグの加工工程が複雑で、時間、工数がかかり実用的でない。
【0005】
また、特許文献2(特開2010−235779号公報)には、強化繊維基材に(熱可塑性)樹脂が含浸されてなるプリプレグであって、該強化繊維基材が繊維長10mmを越える強化繊維が0〜50重量%、繊維長2〜10mmの強化繊維が50〜100重量%、繊維長2mm未満の強化繊維が0〜50重量%から構成され、強化繊維単糸(a)と該強化繊維単糸(a)と交差する強化繊維単糸(b)とで形成される二次元配向角の平均値が10〜80度であり、かつ23℃での厚みh0(mm)が0.03〜1mm、引張強度σが0.01MPa以上であるプリプレグが提案されている。しかしながら、この場合も、工程が複雑で加工に時間がかかり、経済的でない。
【0006】
さらに、特許文献3(特許第4292994号公報)には、加熱して溶融状態とした熱可塑性樹脂を吐出させながら、該熱可塑性樹脂の吐出口近傍から圧力空気を排出させるエアーブローを用いて、連続した強化繊維束(A)に吹き付けるのと同時に、連続した強化繊維束(A)の開繊を行うことにより、連続した強化繊維束(A)と熱可塑性樹脂からなる層(B)を積層する工程を含むプリプレグの製造方法が提案されている。しなしながら、この場合も工程が複雑である。
【0007】
さらに、特許文献4(特開2007−118216号公報)には、12,000本以上の単繊維を集束してなるストランドに熱可塑性樹脂を含浸してなる炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープであって、テープ厚さが130μm以下である炭素繊維強化熱可塑性樹脂テープが提案されている。この場合は、熱可塑性樹脂の混率が少なく、製造工程が複雑である。
【0008】
さらに、特許文献5(特開2011−5867号公報)には、無機フィラーと熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物からなり、最外面に位置させる一対の両側外層と、無機フィラーと熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物からなり、最外面に位置させる一対の両側外層と、前記両側外層の間に位置し、無機フィラーを含まないポリプロピレン樹脂組成物からなる中間層と、を備えた少なくとも3層からなる積層体であり、前記積層体の全体を100質量部とすると前記無機フィラーの含有量が5〜40質量部であり、前記両側外層と中間層には厚さ方向に連通性を有する微小孔が多数存在し、透気度が1〜10,000秒/100mlである多孔積層体が提案されている。この場合は、プロセスの多い工程であり、生産性が良くない。
【0009】
さらに、特許文献6(特開2010−274514号公報)には、繊維がシート面内でランダム配向する繊維シートとバインダー成分を含むシート基材からなる繊維補強複合材料であって、下記a)〜b)を満足する繊維補強複合材料、が提案されている。
a)繊維が、芳香族ポリアミド繊維および炭素繊維を含むこと。
b)繊維補強複合材料の任意方向の曲げ強度が100MPa以上であり、かつ曲げ強度等方性係数が0.8以上であること。
この場合は、均一な繊維分散が難しく、かつ高目付品の生産が困難で、生産性がよくないという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献7(国際公開 WO 2007/0209010 A1 パンフレット)には、熱可塑性樹脂と強化繊維とからなるチョップドストランド・プリプレグであって、該プリプレグの繊維体積含有率(Vf)が20〜50%であり、該プリプレグの繊維軸方向の長さが15〜45mmであり、該プリプレグの厚さが0.13mm以下のものが、繊維配向がランダムになるように積層されており、該積層物が加熱・加圧されてシート状に成形されている繊維強化熱可塑性樹脂シートが提案されている。この場合も、工程が煩雑であり、経済的な製造方法ではない。
【0011】
さらに、特許文献8(特表2008−520849号公報)には、湿潤強化繊維束(200)を、少なくとも部分的に開繊するステップ(210)と、前記湿潤強化繊維中に存在する水分の少なくとも一部分を除去して、脱水強化繊維を形成するステップと、第1の熱可塑性ポリマー繊維(240)を、前記脱水強化繊維と混合して、吸音複合層(12)を形成するステップと、第2の熱可塑性ポリマー繊維の第1の断熱層(14)を、前記吸音複合層の第1の主表面に付するステップと、を含み、前記第2の熱可塑性ポリマー繊維は、前記第1の熱可塑性ポリマー繊維と同じ、または異なる、断熱および吸音複合材(10)の形成方法が提案されている。この場合は、用途が断熱吸音複合材料の製法であり、工程が複雑で、経済的に問題がある。
【0012】
しかも、これらの先行技術では、得られる成形品に熱処理(加熱、燃焼)を加えることにより、マトリックス成分を除去して、補強繊維(繊維強化材)からなる構造体を得るという技術思想は示唆されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−113369号公報
【特許文献2】特開2010−235779号公報
【特許文献3】特許第4292994号公報
【特許文献4】特開2007−118216号公報
【特許文献5】特開2011−5867号公報
【特許文献6】特開2010−274514号公報
【特許文献7】国際公開 WO 2007/0209010 A1 パンフレット
【特許文献8】特表2008−520849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、熱成形可能で、軽量なシート材からなり、使用される繊維強化材の種類によっては熱処理によりマトリックス成分を除去して繊維強化材のみからなる構造体を得ることも可能な、スタンパブル成形が可能な繊維強化材を有する構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、(A)繊維強化材と(B)熱可塑性樹脂からなり、(A)繊維強化材の単糸の長さが1〜50mm、太さが3〜1,000μmであり、(A)繊維強化材/(B)熱可塑性樹脂の重量比(重量%)が20〜95/80〜5、目付が40〜4,000g/mであるエアレイド法よるウエブ層からなる、繊維強化材を有する構造体に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の繊維強化材を有する構造体は、(A)繊維強化材が(B)熱可塑性樹脂で固定された構造を有する繊維構造体であり、軽量であり、リサイクルが可能で、熱成形、すなわち、スタンパブル成形が可能で、成形加工時間を短縮することができる。しかも、本発明の構造体は、製造が簡便で経済的に製造することができ、得られる構造体は、経時変化がしにくい。さらに、本発明の構造体は、(A)繊維強化材として、金属繊維、セラミックス繊維などを採用することにより、得られる構造体をさらに熱処理すれば、マトリックス成分である(B)熱可塑性樹脂が除去されて、(A)繊維強化材のみからなる軽量な構造体を得ることも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<繊維強化材を有する構造体>
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の繊維強化材を有する繊維構造体は、エアレイド法で成形された(A)繊維強化材が(B)熱可塑性樹脂により熱固定されて一体化された繊維シート状の構造体である。
【0018】
〔(A)繊維強化材〕
ここで、(A)繊維強化材としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリパラフェニレンビスオキサゾール繊維、ならびにアルミニウム繊維、銅繊維、ステンレス繊維、マグネシウム繊維から選ばれた金属繊維の群から選ばれた少なくとも1種などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(A)繊維強化材は、本発明の構造体において、強度、剛性の付与や耐久性の維持という、主要な役目を果たすものである。
(A)繊維強化材は、単糸の長さが1〜50mm、好ましくは3〜40mm、太さが3〜1,000μm、好ましくは6〜800μmである。繊維が短いと開繊性がよくなり、より均一な不織布となりやすいが、単糸の長さが1mm未満になると粉末状に近づき、繊維間結合による網目構造が作りにくくなるばかりか、繊維構造体としての強力が低くなり、実用性に欠けるので好ましくない。一方、50mmより長くなると繊維構造体の強力は上がるが、繊維構造体製造時の繊維の空気輸送において繊維どうしが絡まりやすくなり、繊維どうしが絡み合って繊維塊状欠点を増大させるので好ましくない。
また、(A)繊維強化材の単糸の太さが3μm未満では、短繊維の総本数が多くなり、マトリックスである熱可塑性樹脂中への均一分散が困難となる。一方、1,000μmを超えると、繊維強化材の総本数が少なく、マトリックス中で繊維が不均一になりやすく、強度等の物性にばらつきが出やすくなる。
なお、(A)繊維強化材は、繊維状であれば特に制限はなく、パルプ状であってもよく、例えばこの場合、アラミドパルプ、綿花、麻のパルプ状物などが挙げられる。
【0019】
〔(B)熱可塑性樹脂〕
次に、(B)熱可塑性樹脂は、本発明の繊維強化材を有する繊維構造体において、(A)繊維強化材どうしのバインダーとして、また得られる構造体に熱成形性、すなわちスタンパブル成形性を与えるとともに、構造体の強度を補強する効果や得られる構造体におけるマトリックス成分としての役目を果たすものである。
(B)熱可塑性樹脂の素材としては、熱可塑性合成樹脂であれば特に制限はなく、例えばポリエチレン,ポリプロピレンから選ばれたポリオレフィン、ポリスチレン、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン12から選ばれたポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ゴム強化スチレン系樹脂(ABS)、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートから選ばれたポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、あるいはこれらのポリマーアロイの群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0020】
また、(B)熱可塑性樹脂の形態としては、繊維、粉体、顆粒状、ペレットあるいは、サスペンションおよび/またはエマルジョンが挙げられる。
このうち、繊維としては、繊維形成性の熱可塑性合成樹脂からなる繊維であれば、特に制限はなく、単一組成からなる合成繊維でもよい。特に、熱接着性合成繊維を主成分とするものが好ましい。
ここで、「主成分とする」とは、熱接着性合成繊維が70重量%以上、好ましくは85重量%以上であることを指称し、30重量%以下程度、後記する他の繊維やパルプが含まれていてもよい。
すなわち、(B)熱可塑性樹脂が繊維の場合、例えば熱接着性合成繊維を主成分とするものであり、該熱接着性合成繊維100重量%使いのもののほか、例えば熱接着性合成繊維+パルプ繊維、あるいは、熱接着性合成繊維+パルプ繊維+ケミカルバインダーなどからなる一層以上のエアレイド不織布から構成されていてもよい。
ここで、本発明における熱接着性合成繊維としては、熱で溶融し相互に結合するものであればどのようなものでもよく、この繊維間結合による網目状構造で不織布自体が固定される。このような熱接着性合成繊維としては、例えばポリオレフィン類、不飽和カルボン酸類でグラフト化されたポリオレフィン類や、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0021】
このうち、熱接着性合成繊維としては、芯鞘型や偏芯サイドバイサイド型や貼り合わせタイプのサイドバイサイド型の複合繊維が好適である。鞘あるいは繊維外周部を構成する例としては、ポリオレフィン類では、ポリエチレンやポリプロピレンが挙げられる。芯成分あるいは繊維内層部を構成するポリマーとしては、鞘より高融点であり、加熱接着処理温度で変化しないポリマーが好ましい。このような組み合わせとして、例えば、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリエステル、ポリプロピレン/ポリエステル、変性ポリエステル/ポリエステル、変性ポリアミド/ポリアミドなどが挙げられる。これらのポリマーは、本発明の作用・効果を阻害しない範囲で変性されていても差し支えがない。さらに、フィブリル状繊維であっても良い。例えば、三井化学株式会社のSWPなどが挙げられる。
【0022】
なお、熱接着性合成繊維などの熱可塑性合成繊維の長さは、1〜50mmが好ましい。繊維が短いと開繊性がよくなり、より均一な不織布となりやすいが、1mm未満になると粉末状に近づき、繊維間結合による網目構造が作りにくくなるばかりか、不織布としての強力が低くなり、実用性に欠けるので好ましくない。一方、50mmより長くなると不織布の強力は上がるが、不織布製造時の繊維の空気輸送において繊維どうしが絡まりやすくなり、繊維どうしが絡み合って繊維塊状欠点を増大させるので好ましくない。特に、好ましいのは、3〜25mmである。
【0023】
また、熱接着性合成繊維などの熱可塑性合成繊維は、細いと構成繊維の本数が多くなるので、脱落繊維が少なくなるが、バインダーとしての役目に乏しくなり、また熱可塑性繊維間の絡みが発生し、分散が悪くなる。一方、太い場合は、繊維間の空隙が大きくなり、嵩高い不織布となるが、繊維の交絡点が減少するため、繊維脱落という問題点があり、また繊維強化材への接触が減少し、強力が低下する。したがって、本発明に用いられる熱可塑性合成繊維の太さ(単糸繊度)は用途に応じて選択すればよいが、本発明では、1〜50dtx、好ましくは2.0〜25dtxである。1dtex未満では、繊維間の絡みが起こりやすく。一方、50dtxを超えると、繊維の脱落が発生しやすい。
【0024】
本発明の(B)熱可塑性樹脂が繊維の場合、上記の熱可塑性合成繊維のほかに、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、パルプ、コットン、麻などの天然繊維などの他の繊維を含んでいてもよい。この場合、不織布シートにおける熱可塑性合成繊維の割合は70〜100重量%が好ましく、さらに好ましくは85〜100重量%である。70重量%未満の場合は上記の他の繊維の脱落が生じる可能性が多くなるうえ、構造体としての強力も低くなる場合があり、実用上の問題を生じる。
【0025】
また、(B)熱可塑性樹脂としては、以上のような繊維のほかに、粉体、顆粒状、ペレット、あるいはサスペンジョンおよび/またはエマルジョンであってもよい。ここで、粉体の場合は熱可塑性樹脂パウダー、熱可塑性樹脂の微粒子などが用いられ、その平均粒径(JIS R 5002に準拠して測定された値)が10〜1,000μm、好ましくは20〜800μmである。
また、ペレットや顆粒状物の場合は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂やポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、PPS樹脂などが用いられ、その一辺は0.2〜5mm、好ましくは0.5〜4.5mmである。
さらに、サスペンジョンやエマルジョンの場合、熱可塑性バインダー樹脂の成分としては、ポリオレフィン系、ポリ酢酸ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、PPS系などを挙げることができる。
【0026】
〔(A)繊維強化材と(B)熱可塑性樹脂との配合割合〕
本発明の(A)繊維強化材を有する繊維構造体は、(A)繊維強化材が(B)熱可塑性樹脂により熱接着されており、この繊維間結合による網目状構造で該繊維構造体である不織布シートで固定される。
ここで、(A)繊維強化材と(B)熱可塑性樹脂の重量比(重量%)は、20〜95/80〜5、好ましくは25〜80/75〜20である。(A)繊維強化材の割合が20重量%未満では、得られる構造体の強度が不足し、また分散不良によって表面状態も悪化する。一方、95重量%を超えると、(B)熱可塑性樹脂の割合が少なすぎて構造体としての形態安定性が不足となり、またシートの強力が低下し、ハンドリング性にも問題が発生する。
【0027】
〔構造体の総目付け〕
また、本発明の不織布シートよりなる構造体は、総目付が40〜4,000g/m、好ましくは50〜3,500g/mである。40g/m未満では、成型時シートのシート損傷が発生しやすく、ハンドリング性にも劣り、またシート強力不足という不都合がある。一方、4,000g/mを超えると、嵩高な構造体となり、加熱処理時に構造体の中央部にある熱可塑性樹脂が溶融するのに時間がかかりすぎ、生産性が悪くなる。また、シートが硬くなり、取り扱いでシートの重量が重いという不都合を生じ、また熱成型時に、高圧のプレス機が必要になり、さらに厚さが大きいため、成形品の深絞りが困難になるため、実用的でない。
【0028】
なお、本発明の構造体には、消臭剤、抗菌剤、芳香剤、保湿剤、着色剤、親水剤、撥水剤、カップリング剤、界面活性剤などの機能加工を付与することもできる。加工法としては、あらかじめそれらの機能を付与した繊維を混合したり、粉体状の剤を混合したり、液体状の剤をスプレーや含浸したりする方法が挙げられる。特に、カップリング剤は重要であり、構造体全体としての強度・耐久性等の物性に影響を与える。シラン(ケイ素)系、チタネート(チタン)系、ジルコネート(ジルコニア)系、アルミネート(アルミニウム)系から少なくとも1種類選ばれたカップリング剤を添加することが好ましい。この添加により、繊維強化材とマトリックス樹脂の親和性を高めるのに有効である。これらカップリング剤は、繊維強化材の種類によって適宜使い分けることができる。カップリング剤の添加量は、繊維強化材に対して、0.01〜5.00重量%が好ましい。
【0029】
〔繊維強化材を有する構造体の製造方法〕
本発明のこのような繊維強化材を有する構造体は、エアレイド法によって製造される。エアレイド法で製造された不織布は、不織布を形成している繊維が、不織布の長手方向、幅方向および厚み方向にランダムに3次元配向されているので好ましい。
【0030】
ここで、本発明に係るエアレイド法による不織布は、以下のようにして得ることができる。
すなわち、(1)所定量の解繊された(A)繊維強化材および(B)熱可塑性樹脂が繊維である場合には当該繊維を主成分とする繊維を空気流に均一分散させながら搬送し、吐出部に設けた細孔から吹き出した該繊維を、下部に設置された金属製またはプラスチック製の繊維捕集用ネット上に落とし、該ネット下部で空気をサクションしながら、上記繊維を該ネット上にウエブとして堆積させ、必要に応じて、この操作を複数回繰り返す。
例えば、第2回以降のウエブの堆積は、同様にして、上記堆積シートの上に堆積させる。
あるいは、(2)(B)熱可塑性樹脂が繊維でない場合には、所定量の解繊された(A)繊維強化材を主成分とする繊維を空気流に均一分散させながら搬送し、吐出部に設けた細孔から吹き出した該繊維を、下部に設置された金属製またはプラスチック製の繊維捕集用ネット上に落とし、該ネット下部で空気をサクションしながら、上記繊維を該ネット上にウエブとして堆積させ、必要に応じて、この操作を複数回繰り返すとともに、(B)熱可塑性樹脂が粉体、顆粒状、ペレットあるいはサスペンジョンもしくはエマルジョンである場合には、これらの粉体、顆粒状、ペレットあるいはサスペンジョンもしくはエマルジョンを、該ウエブの層間および/またはウエブの表面に散布する。
この場合も、第2回以降のウエブの堆積は、同様にして、上記堆積シートの上に堆積させる。
なお、(B)熱可塑性樹脂として、粉体、顆粒状、ペレット、サスペンジョン・エマルジョンを用いる場合には、堆積されたウエブ上に、各ウエブ形成ごとに、これらを散布、もしくは塗布すればよい。
【0031】
次に、以上の(1)、(2)のいずれの場合も、(B)熱可塑性樹脂(繊維、粉体、顆粒状、ペレット、サスペンジョン・エマルジョン)が充分その接着効果を発揮する温度に全体を加熱処理して、本発明の不織布からなる繊維構造体を得ることができる。接着効果を十分発揮させるには、熱接着性合成繊維などの(B)熱可塑性樹脂の融点より20〜60℃高い温度での加熱処理が必要である。
【0032】
この加熱処理としては、熱風処理、および熱風処理後の低圧による熱圧処理が挙げられる。
このうち、繊維間結合を形成するための熱風処理としては、(B)熱可塑性樹脂としてホモタイプの熱可塑性合成繊維を用いる場合、該繊維の融点以上の温度が必要である。熱風処理温度は、通常、熱可塑性合成繊維の融点より20〜60℃高い温度である。
【0033】
また、(B)熱可塑性樹脂として熱接着性複合繊維を用いる場合、該複合繊維の低融点成分の融点以上の温度が必要である。しかしながら、低融点成分の融点よりも30℃以上高い場合、あるいは高融点成分(芯鞘型複合繊維の芯成分、あるいはサイドバイサイド型複合繊維の高融点成分)の融点以上の場合は、繊維の熱収縮が大きくなり易く、地合いの悪化を招いたり、はなはだしい場合は繊維の劣化を生じるので好ましくない。熱風処理温度は、上記のように、熱接着性複合繊維のうち、(B)熱接着性樹脂のうちの低融点である樹脂の融点より15〜40℃高い温度である。
【0034】
また、熱風処理したのち低圧下での熱圧処理、具体的には低圧の熱圧カレンダー処理を加えても良い。カレンダー処理に用いるローラーとしては、全体に均一な熱圧を加えるため、平滑表面の一対の金属ローラー、または金属ローラーと弾性ローラーの組み合わせを用いることが好ましいが、多段ローラーであっても良い。また、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、凸凹表面のエンボスローラーであっても良い。
【0035】
カレンダー処理の場合、単に厚さ調整のためであれば常温(非加熱)〜高温度の任意の温度で加圧すれば良い。圧力は希望する厚さになるよう適宜選択することができる。熱圧カレンダーにより繊維間の熱結合を補強し、強度、表面耐摩耗性、層間剥離防止などを向上するためであれば、ローラー表面の温度は、(B)熱可塑性樹脂の融点(例えば、熱接着性複合繊維の低融点成分の融点)以上の温度が必要である。しかしながら、低融点成分の融点よりも30℃以上高い場合、あるいは高融点成分(芯鞘型複合繊維の芯成分、あるいはサイドバイサイド型複合繊維の高融点成分)の融点以上の場合は、繊維の熱収縮が大きくなり易いばかりか、ローラー表面への粘着が発生し、工程性に欠ける。融点未満の場合は、当然のことながら繊維間結合の補強が充分でなくなる。
【0036】
また、カレンダー処理の線圧は、幅方向で均一な接圧になるよう設定すれば、任意の圧力を選択することができる。高圧の場合は密度・不織布強力・層間強力がアップし、厚さがダウンする。低圧の場合は勿論これに反する影響が出る。不織布強力を重視するのであれば極力高圧のほうが好ましい。柔軟性を重視するのであれば低圧の方が好ましい。カレンダー処理の線圧は、通常、5〜50kgf/cmの範囲で任意に選択できる。また、一対のローラー間に任意の隙間を設けても良い。表面層に接するローラーの温度が高い場合、または、ローラー間の圧力が高圧の場合は、繊維構造体のシート表面のみが高密度化し、また成型時に更なる高圧の圧力の付与が必要になるため好ましくない。
【0037】
なお、得られる本発明の構造体の厚さは、通常、1.0〜20mm、好ましくは1.5〜15mmであるが、構造体の目付け(40〜4,000g/m)に応じ、かつ用途に応じて設定することができる。
【0038】
〔(A)繊維強化材を主体とする構造体(A)の製造〕
また、本発明の繊維強化材を有する構造体から、マトリックスとなる熱可塑性樹脂を除去することにより、(A)繊維強化材が主体となる構造体(A)を製造することができる。ここで、主体とは、マトリックス樹脂が、製造前から80%以上除去されたことを意味する。マトリックスを除去する方法は、マトリックスを構成する熱可塑性樹脂の融点より、50℃以上高い温度の雰囲気で処理すればよい。処理温度と処理時間はマトリックスである熱可塑性樹脂の溶融粘度で適宜設定される。また、マトリックスの除去を促進するために、熱風を吹き付けたり、遠心力で振り落とすこともできる。また、繊維強化材の種類がセラミックス繊維、金属繊維などの不燃性のものである場合、マトリックス樹脂が可燃性であることから、燃焼させることにより、(A)繊維強化材が主体となる構造体(A)を製造することもできる。
【0039】
〔構造体のその他の構成〕
なお、本発明の繊維強化材を有する構造体には、その表層および/または裏層、および/または当該構造体の2枚以上からなる層間に、さらに好ましくは目付けが10〜50g/mの、フィルム、不織布、織物、および編物から選ばれたシート状物を積層し、一体化したものであってもよい。このシート状物としては、熱可塑性樹脂製フィルム、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、湿式不織布、織編物、ガーゼ、寒冷紗などが挙げられる。
本発明の構造体に上記のようなシート状物を積層、一体化することにより、構造体の表面保護や強度補強になり、また構造体の耐衝撃性の向上という効果を奏する。
【0040】
ここで、熱可塑性樹脂製フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。
また、シート状物が繊維の形態の場合は、その素材としては、合成繊維、再生繊維、天然繊維のいずれであってもよく、また、これらの混合繊維であってもよい。このうち、合成繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、PPS繊維などが挙げられる。また、再生繊維としては、レーヨン、テンセルなどが挙げられる。さらに、天然繊維としては、コットン、パルプなどが挙げられる。
本発明の繊維構造体におけるシート状物の積層・一体化は、例えば通気性のシート状物の場合、エアレイド法におけるインライン、あるいはアウトラインにおいて、適宜、積層、一体化すればよく、特に限定されるものではない。
【0041】
〔構造体からプリフォームの作成〕
本発明の繊維強化材を有する構造体は、上記のようにしてエアレイド法により得られる構造体を、1枚単独、あるいは2枚以上を積層し、加熱加圧処理により、密度が0.01〜0.3、好ましくは0.03〜0.25に予備圧縮されたプリフォームとすることができる。
この場合、加熱・加圧における加工条件は、熱可塑性樹脂の融点よりプレス温度が10〜60℃、好ましくは20〜50℃高く、プレス圧力が0.4〜50kg/cm、好ましくは0.5〜40kg/mであり、プレス時間が0.5〜15分、好ましくは1.0〜10分である。
熱可塑性樹脂の融点よりプレス温度が10℃未満ではプレスが高圧になり、構造体の破損が発生し、一方プレス温度が熱可塑性樹脂の融点よりも50℃を超えると、金型から剥離しにくいという問題が出てくる。また、プレス圧力が0.4kg/m未満では構造体の密度が上がらず、一方50kg/mを超えると密度が上がりすぎ、プリフォームの意味がなくなる。さらに、プレス時間が0.5分未満では金型の温度が十分伝達できず、所定の形状にならない。一方15分を超えると、生産効率が悪くなり、スタンパブルシートの効果が低下することとなる。
【0042】
以上の加工条件を満たすことにより、密度が0.01〜0.3、好ましくは0.03〜0.25のプリフォーム、すなわちスタンパブルシートが得られる。
このようにして得られるプリフォームの厚みは、構造体の目付けにもよるが、通常、0.2〜15mm、好ましくは0.5〜10mm程度である。この厚さの制御は、上下の金型の圧力設定でも可能であるが、上下の金型間に任意の厚さを持つスペーサーを挿入することによって調整することができる。
【0043】
以上の本発明の構造体、さらにこの構造体から得られる本発明のプリフォームは、スタンパブルシートとして用いられる。すなわち、これらの構造体、あるいはこれを予備圧縮して得られるプリフォームは、これを適当な形状に切り抜いてブランク材とし、最後にブランク材を所定の型枠に入れて、プレス成形により各種形状に賦形して複合成形品を製造することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中、繊維強化材を有する構造体、プリフォームの評価は以下のようにして測定した。
【0045】
<構造体・プリフォームの物性>
目付(g/m
JIS L 1913の6.2法に準拠して求めた。
厚さ(mm)
JIS L 1913の6.1。2A法に準拠して求めた。(荷重20g/cm
【0046】
<繊維構造体の特性>
剛軟度
剛軟度は、JIS L 1913(41.5度 カンチレバー法)に準拠して測定された値であり、シートのタテ方向とヨコ方向のそれぞれのシートのサンプルを測定し、その平均値を求め、シートの剛軟性を評価した。150mm超える範囲にあるものを◎、100〜150mmの範囲にあるものを○、50mm以上〜100mm未満までの範囲にあるものを△、50mm未満までの範囲にあるものを×、とそれぞれ判定した。
含浸性:
構造体の場合はタテ、ヨコとも100mmに切出した構造体のサンプルを20cm角のパレットにビスフェノールA型エポキシ樹脂(A)(商品名:エピコート828、油化シェルエポキシ(株)製)50重量部、テトラグリシジルアミン型エポキシ樹脂(B)(商品名:エポトートYH−434L(東都化成(株)製)50重量部を添加し、25℃で充分撹拌混合したエポキシ樹脂組成物を500m入れ、それに構造体のサンプルを含浸し、その含浸具合から判定した。このエポキシ樹脂組成物の60℃における粘度は0.2Pa・sであった。
◎:含浸性極めて良好(サンプル片が15秒以内に浸漬した。)
○:含浸性良好(サンプル片が15秒を超え30秒以内に浸漬した。)
△:含浸性普通(サンプル片が30秒を超え60秒以内に浸漬した。)
×:含浸性不良(サンプル片が60秒以内に浸漬しない。)
【0047】
取り扱い性:
構造体・プリフォームともに、(1)形状の安定性、(2)シートの表面状態、(3)ハンドリング性で判定した。
◎:まったく問題なし。
○:問題なし。
△:使用に耐えうる。
×:使用できない。
プリフォームの密度:
100mm角のシートを切出し、重量Wを測定し、次式より密度を算術した。
密度=W/〔10×10×シート厚さ(cm)〕
【0048】
実施例1
(A)繊維強化材として、東邦テクノプロダクツ社製の炭素繊維(太さ7μm×長さ3mmのチョップドファイバー)を50重量%と、(B)熱可塑性樹脂として、ESファイバービジョン社製の熱接着性複合繊維(インタックS513、PE/PPの芯鞘型複合繊維、1.7dtx×3mm)を50重量%とを混合し、ウエブ層をエアレイド法で捕集ネットの上に形成し、このウエブを140℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化し、目付けが49.9g/m、厚さが1.7mmの構造体を得た。
次に、剛軟度の測定には、2.5cm×20cmの試験片をタテ方向及びヨコ方向にそれぞれの剛軟度を測定し、その平均値を求めた。含浸性、取り扱い性の測定には、構造体を、タテ100mm、ヨコ100mmに切り出して評価した。結果を表1に示す。
【0049】
実施例2
(A)繊維強化材として、東邦テクノプロダクツ社製の炭素繊維(太さ7μm×長さ6mmのチョップドファイバー)を用いる以外は、実施例1と同様にして構造体を得た。結果を表1に示す。
【0050】
実施例3
(A)繊維強化材として、日東紡社製のガラス繊維(ホーライ)(太さ8μm×長さ10mm)を90重量%と、(B)熱可塑性樹脂として、帝人ファイバー社製の熱接着性複合繊維(TJ04V4、PET/PEの芯鞘型複合繊維、1.7dtx×3mm)を10重量%とを混合し、ウエブ層をエアレイド法で捕集ネットの上に形成し、このウエブを145℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化し、目付けが200g/m、厚さが3.0mmの構造体を得た。
次に、剛軟度の測定には、2.5cm×20cmの試験片をタテ方向及びヨコ方向にそれぞれの剛軟度を測定し、その平均値を求めた。含浸性、取り扱い性の測定には、構造体を、タテ100mm、ヨコ100mmに切り出して評価した。結果を表1に示す。
【0051】
実施例4
得られる構造体の目付け、厚みを変える以外、実施例3と同様して、構造体を得た。結果を表1に示す。
【0052】
実施例5
(A)繊維強化材とし帝人テクノプロダクツ社製のアラミド繊維(商品名「テクノーラ」、6.6dtx×6mm)を40重量%と、(B)熱可塑性樹脂として、帝人ファイバー社製の熱接着性複合繊維(TJ04B5 PET/共重合PETの芯鞘型複合繊維、2.2dtx×5mm)を60重量%とを混合し、ウエブ層をエアレイド法で捕集ネットの上に形成し、このウエブを160℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化し、目付けが85g/m、厚さが2.1mmの構造体を得た。
次に、剛軟度の測定には、2.5cm×20cmの試験片をタテ方向及びヨコ方向にそれぞれの剛軟度を測定し、その平均値を求めた。含浸性、取り扱い性の測定には、構造体を、タテ100mm、ヨコ100mmに切り出して評価した。結果を表1に示す。
【0053】
実施例6
総目付けを250g/mとする以外は、実施例5と同様にして、厚さが5mmの構造体を得た。次に、剛軟度、含浸性、取り扱い性の測定を、実施例と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例7
実施例1で得られた構造体をタテ25センチ、ヨコ20センチに切り出して、加熱プレスした。加工条件は、プレス温度180℃、プレス圧力500g/cm、プレス時間2分であった。
得られたプリフォームの密度は0.041、目付けは51g/m、厚さは1.25mm、取り扱い性は◎であった。結果を表2に示す。
【0056】
実施例8
実施例2で得られた構造体を、実施例7に準じて、表2の条件で加熱・加圧し、プリフォームを作成して評価した。結果を表2に示す。
【0057】
実施例9
実施例2で得られた構造体を2枚積層し、これを実施例7と同様の加工条件を適用してプリフォームを作成し、評価した。結果を表2に示す。
【0058】
実施例10
実施例2で得られた構造体を4枚積層し、これを実施例7と同様の加工条件を適用してプリフォームを作成し、評価した。結果を表2に示す。
【0059】
実施例11
実施例2で得られた構造体を10枚積層し、これを実施例7と同様の加工条件を適用してプリフォームを作成し、評価した。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
実施例12
(A)繊維強化材として、東邦テクノプロダクツ社製の炭素繊維(太さ7μm×長さ3mmのチョップドファイバー)を100重量%のウエブ層をエアレイド法で捕集ネットの上に形成し、このウエブ上に、住友精化製のポリエチレンパウダー(商品名:「スミカセン」)を散布し、130℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化し、目付けが41.1g/m、厚さが0.8mmの構造体を得た。なお、この場合のウエブとポリエチレンパウダーとの重量割合は、(A)/(B)(重量比)=60/40であった。
次に、含浸性、取り扱い性の測定には、この構造体をタテ100mm、ヨコ100mmに切り出して評価した。結果を表3に示す。
【0062】
実施例13
(A)繊維強化材として、東邦テクノプロダクツ社製の炭素繊維(太さ7μm×長さ6mmのチョップドファイバー)を100重量%のウエブ層をエアレイド法で捕集ネットの上に形成し、このウエブ上に、住友精化製のポリエチレンパウダー(商品名:「スミカセン」)を散布し、130℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化し、目付けが35.5g/m、厚さが0.6mmの構造体を得た。なお、この場合のウエブとポリエチレンパウダーとの重量割合は、(A)/(B)(重量比)=70/30であった。
次に、含浸性、取り扱い性の測定には、この構造体をタテ100mm、ヨコ100mmに切り出して評価した。結果を表3に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
実施例14
実施例13で得られた構造体をタテ25センチ、ヨコ20センチに切り出して、2枚積層し加熱プレスした。加工条件は、プレス温度160℃、プレス圧力500g/cm、プレス時間2分であった。
得られたプリフォームの密度は0.082、目付けは70g/m、厚さは0.85mm、取り扱い性は◎であった。結果を表4に示す。
【0065】
実施例15
実施例13で得られた構造体を6枚積層し、これを実施例14と同様の加工条件を適用してプリフォームを作成し、評価した。結果を表4に示す。
【0066】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の繊維強化材を有する構造体は、強化材が、炭素繊維の場合には、車、飛行機の構造体野ブリプレグやプリフォームや電極に、ガラス繊維の場合には、建材、吸音材、断熱材、バッキン、フィルターなどに、アラミド繊維の場合には、フィルター、補強材として、さらにアルミニウム繊維やマグネシウム繊維などの金属繊維の場合には、フィルター、吸音材、電波遮蔽材、電極に、セラミックス繊維の場合はブレーキパッドや耐熱性フィルターや耐食性フィルターなどとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)繊維強化材と(B)熱可塑性樹脂からなり、(A)繊維強化材の単糸の長さが1〜50mm、太さが3〜1,000μmであり、(A)繊維強化材/(B)熱可塑性樹脂の重量比(重量%)が20〜95/80〜5、目付が40〜4,000g/mであるエアレイド法よるウエブ層からなる、繊維強化材を有する構造体。
【請求項2】
(A)繊維強化材が炭素繊維、ガラス繊維、セラミックス繊維、アラミド繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリパラフェニレンビスオキサゾール繊維、ならびにアルミニウム繊維、銅繊維、ステンレス繊維、マグネシウム繊維から選ばれた金属繊維の群から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の繊維強化材を有する構造体。
【請求項3】
(B)熱可塑性樹脂の素材が、ポリエチレン,ポリプロピレンから選ばれたポリオレフィン、ポリスチレン、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン12から選ばれたポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ゴム強化スチレン系樹脂(ABS)、ポリエチレンテレフタレート,ポリプロピレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートから選ばれたポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、あるいはこれらのポリマーアロイの群から選ばれた少なくとも1種である請求項1または2記載の繊維強化材を有する構造体。
【請求項4】
(B)熱可塑性樹脂の形態が、繊維、粉体、顆粒状、ペレットあるいは、サスペンションおよび/またはエマルジョンである請求項1〜3いずれかに記載の繊維強化材を有する構造体。
【請求項5】
(B)熱可塑性樹脂が、繊維の場合は繊維長が1〜50mm、単糸繊度が1dtx〜30dtx、粉体の場合は平均粒径が10〜1,000μm、顆粒状もしくはペレットの場合は、一辺が0.2〜5mmである、請求項1〜4いずれかに記載の繊維強化材を有する構造体。
【請求項6】
繊維強化材を有する構造体の、表層および/または裏層、および/または当該構造体の2枚以上からなる層間に、さらにフィルム、不織布、織物、および編物から選ばれたシート状物が積層され、かつ一体化されている、請求項1〜5いずれかに記載の繊維強化材を有する構造体。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の繊維強化材を有する構造体を1枚以上積層し、加熱加圧により、密度0.01〜0.30に予備圧縮したプリフォーム。
【請求項8】
(1)所定量の解繊された(A)繊維強化材および(B)熱可塑性樹脂が繊維である場合には当該繊維を主成分とする繊維を空気流に均一分散させながら搬送し、吐出部に設けた細孔から吹き出した該繊維を、下部に設置された金属またはプラスチックの繊維捕集用ネット上に落とし、該ネット下部で空気をサクションしながら、上記繊維を該ネット上にウエブとして堆積させ、必要に応じて、この操作を複数回繰り返すか、あるいは、(2)(B)熱可塑性樹脂が繊維でない場合には、所定量の解繊された(A)繊維強化材を主成分とする繊維を空気流に均一分散させながら搬送し、吐出部に設けた細孔から吹き出した該繊維を、下部に設置された金属またはプラスチックの繊維捕集用ネット上に落とし、該ネット下部で空気をサクションしながら、上記繊維を該ネット上にウエブとして堆積させ、必要に応じて、この操作を複数回繰り返すとともに、(B)熱可塑性樹脂が粉体、顆粒状、ペレットあるいはサスペンジョンもしくはエマルジョンである場合には、これらの粉体、顆粒状、ペレットあるいはサスペンジョンもしくはエマルジョンを、該ウエブの層間および/またはウエブの表面に散布する、請求項1〜6いずれかに記載の繊維強化材を有する構造体の製造方法。
【請求項9】
請求項8で得られた繊維強化材を有する構造体を1枚以上積層し、密度を0.01〜0.30に予備圧縮するプリフォームの製造方法。

【公開番号】特開2012−255065(P2012−255065A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128188(P2011−128188)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(591196315)金星製紙株式会社 (36)
【Fターム(参考)】