説明

繊維洗浄装置

【課題】洗浄後の繊維を容器の外部へ円滑に排出させることができる繊維洗浄装置を提供する。
【解決手段】本装置は、孔部7を有する容器2と、容器内で回転可能に設けられ且つ複数枚の洗浄ブレード5a〜5dを有する回転体3と、を備える繊維洗浄装置1であって、洗浄ブレードにより飛散される繊維が衝突する壁部材15と、壁部材に衝突して落下する繊維を容器の外部に排出する排出手段(コンベア17)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維洗浄装置に関し、さらに詳しくは、洗浄後の繊維を容器の外部へ円滑に排出させることができる繊維洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、ケナフ等の靭皮植物から得られる天然繊維は、環境保全の観点でその更なる活用が期待されている。従来、天然繊維の製造方法として、採取した靭皮植物を、例えば、池、湖、川等に浸漬し、水中に含まれる微生物により、繊維を結合するペクチン等の物質を分解させる、所謂レッティングにより繊維を抽出する方法が知られている。そして、レッティングにより抽出された繊維は、通常、洗浄処理される。
【0003】
ここで、上述の繊維を洗浄処理する繊維洗浄装置として、廃棄プラスチックに付着した泥、砂等を洗浄する洗浄装置(例えば、特許文献1参照)を利用することが提案されている。この特許文献1には、メッシュを有するケーシング内に、複数枚の洗浄ブレードを回転可能に設け、回転する洗浄ブレードにより、廃棄プラスチックに付着した泥、砂等を洗浄することが開示されている。ところで、繊維排出性といった観点から、例えば、図8に示すように、ケーシング102の一端側上部に水平方向に伸びる排出口110を設けることが提案されている。
【0004】
しかし、上述の提案技術では、ケーシング102と排出口110との境界部分Sが略直角(ピン角)で交わるため、その境界部分Sに繊維が堆積してしまう。その結果、堆積繊維Cと回転体103との接触により繊維にダメージが加わり繊維強度が低下したり、繊維に縒りが発生したりしてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−216280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、洗浄後の繊維を容器の外部へ円滑に排出させることができる繊維洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、孔部を有する容器と、該容器内で回転可能に設けられ且つ複数枚の洗浄ブレードを有する回転体と、を備える繊維洗浄装置であって、前記洗浄ブレードにより飛散される繊維が衝突する壁部材と、該壁部材に衝突して落下する繊維を前記容器の外部に排出する排出手段と、を備えることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記壁部材は、前記繊維が衝突する際に該繊維の運動エネルギーを吸収するように構成されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載において、前記排出手段は、前記繊維の排出方向に向かって下方に傾斜するように設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維洗浄装置によると、洗浄ブレードにより飛散される繊維が衝突する壁部材と、壁部材に衝突して落下する繊維を前記容器の外部に排出する排出手段と、を備えるので、回転体の回転によって、洗浄ブレードにより容器内の繊維が洗浄されるとともに、洗浄ブレードで飛散された繊維が壁部材に衝突し、壁部材に衝突して落下する繊維が排出手段により容器の外部に排出される。これにより、洗浄後の繊維を容器から円滑に排出させることができる。その結果、容器と排出口との境界部分での繊維の堆積が防止され、堆積繊維と回転体との接触により生じる繊維強度の低下及び繊維の縒り発生が防止される。
また、前記壁部材が、前記繊維が衝突する際に該繊維の運動エネルギーを吸収するように構成されている場合は、繊維の衝突の際の騒音及び飛散を低減させることができる。
さらに、前記排出手段が、前記繊維の排出方向に向かって下方に傾斜するように設けられている場合は、繊維の排出性を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例に係る繊維洗浄装置の正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII矢視図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図2の要部拡大図である。
【図6】その他の形態の繊維洗浄装置を説明するための説明図である。
【図7】更にその他の形態の繊維洗浄装置を説明するための説明図である。
【図8】従来の繊維洗浄装置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
1.繊維洗浄装置
本実施形態1.に係る繊維洗浄装置は、孔部(7)を有する容器(2)と、容器内で回転可能に設けられ且つ複数枚の洗浄ブレード(5a〜5d)を有する回転体(3)と、を備える繊維洗浄装置(1)であって、洗浄ブレードにより飛散される繊維が衝突する壁部材(15)と、壁部材に衝突して落下する繊維を容器の外部に排出する排出手段(17)と、を備えることを特徴とする(例えば、図1及び図2等参照)。
【0012】
上記排出手段としては、例えば、コンベア、シュート、ダクト等を挙げることができる。これらのうち、繊維をより確実に強制排出できるといった観点からコンベアであることが好ましい(例えば、図2等参照)。一方、簡易且つ安価に構成できるといった観点からシュート又はダクトであることが好ましい(例えば、図7等参照)。なお、上記繊維としては、例えば、ケナフ、マニラ麻、サイザル麻、ジュート麻、綿花、雁皮、三椏、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹及び各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)等の靭皮植物から得られる天然繊維を挙げることができる。
【0013】
本実施形態1.に係る繊維洗浄装置としては、例えば、上記壁部材は、繊維が衝突する際に繊維の運動エネルギーを吸収するように構成されている形態を挙げることができる。この場合、例えば、上記壁部材は、ゴム又はエラストマからなる弾性層を有することができる。これにより、繊維の衝突の際の騒音及び飛散を更に低減させることができる。特に、上記壁部材は、一対の弾性層(15a,15b)と、これら一対の弾性層の間に挟持される繊維層又は樹脂層(15c)と、を有することが好ましい(例えば、図5等参照)。また、上記壁部材には、端縁から延びるスリット(16)が形成されていることが好ましい(例えば、図1等参照)。
【0014】
本実施形態1.に係る繊維洗浄装置としては、例えば、上記排出手段は、繊維の排出方向に向かって下方に傾斜するように設けられている形態(例えば、図6及び図7等参照)を挙げることができる。上記排出手段の水平方向に対する傾斜角度(θ)は、例えば、00〜45度(好ましくは0〜30度、特に10〜20度)であることができる。これにより、繊維の排出性を高め得るとともに、上下方向のコンパクト化を図ることができる。
【0015】
本実施形態1.に係る繊維洗浄装置としては、例えば、上記容器には、回転体の回転軸方向(B)の一端側に投入口(9)が設けられ、回転体の回転軸方向(B)の他端側に排出口(10)が設けられ、上記排出口は、回転体の接線方向に延び且つ排出端側及び下側を開口して形成され、排出口の排出端側の開口を塞ぐように上記壁部材(15)が配設され、排出口の下側の開口に対向するように上記排出手段(17)が配設されている形態(例えば、図2等参照)を挙げることができる。これにより、繊維の排出性を更に高め得るとともに、簡易且つ小型な構造とすることができる。
【0016】
本実施形態1.に係る繊維洗浄装置としては、例えば、上記容器には、回転体の回転軸方向の一端側に投入口(9)が設けられ、回転体の回転軸方向の他端側に排出口(10)が設けられ、回転体の回転に伴って繊維を投入口側から排出口側に向かって移動させるガイドプレート(11)が設けられている形態(例えば、図4等参照)を挙げることができる。これにより、繊維の排出性を更に高めることができる。
【実施例】
【0017】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0018】
(1)繊維洗浄装置の構成
本実施例に係る繊維洗浄装置1は、図1〜図4に示すように、円筒状の容器2と、この容器2内で回転可能に設けられる回転体3と、を備えている。この回転体3は、容器2の両端側に軸支され且つ駆動モータ(図示省略)により回転駆動される回転軸4と、この回転軸4に固定され遠心方向に延びる板状の複数枚(図2中で4枚)の洗浄ブレード5a〜5dと、を有している。これら各洗浄ブレード5a〜5dの先端側(回転軸4を中心とした遠心端側)は、回転体4の回転方向Aと反対側に曲折されている。
【0019】
上記容器2の下部には、洗浄される繊維に含まれる水分や発酵物等の異物を排出するパンチングメタル8が設けられている。このパンチングメタル8は、所定の角度範囲(例えば、回転軸4を中心として略120度の範囲)で設けられ、複数の孔部7を有している。また、容器2の回転軸方向Bの一端側上部には繊維の投入口9が設けられ、容器2の回転軸方向Bの他端側下部には繊維の排出口10が設けられている。
【0020】
上記排出口10は、回転体3の接線方向に延び且つ排出端側及び下側を開口して形成されている。この排出口10の排出端側の開口を塞ぐように、洗浄ブレード5a〜5dにより飛散される繊維が衝突する壁部材15が配設されている。また、排出口10の下側の開口に対向するように、壁部材15に衝突して落下する繊維を容器2の外部に排出するコンベア17(本発明に係る「排出手段」として例示する。)が配設されている。
【0021】
上記壁部材15は、図5に示すように、ゴム製の一対の弾性層15a,15bと、これら一対の弾性層15a,15bの間に挟持される繊維製の樹脂層15cと、を有している。また、壁部材15には、端縁から延びる複数のスリット16(図1参照)が形成されている。よって、壁部材15は、繊維が衝突する際に繊維の運動エネルギーを吸収するように構成されている。
【0022】
また、上記容器2には、図4に示すように、回転体3の回転に伴って繊維を投入口9側から排出口10側に向かって移動させる複数枚(図4中で4枚)のガイドプレート11が設けられている。さらに、容器2には、容器2内の繊維に散水するための複数(図4中で4つ)の散水ノズル12が設けられている。
【0023】
(2)繊維洗浄装置の作用
次に、上記構成の繊維洗浄装置1の作用について説明する。回転軸4を回転駆動させると、回転体3の回転とともに各洗浄ブレード5a〜5dが回転する。そして、これら各洗浄ブレード5a〜5dにより投入口9から容器2内に投入された繊維が洗浄される。また、容器2内で洗浄中の繊維は、散水ノズル12により散水されるとともに、ガイドプレート11により容器2の投入口9側から排出口10側に向かって移動される。そして、容器2内の排出口10の近傍において、洗浄ブレード5a〜5dで飛散された繊維は壁部材15に衝突し、その壁部材15に衝突して落下する繊維がコンベア17により容器2の外部に排出され、回収ケース18(図2参照)内に回収される。
【0024】
(3)実施例の効果
以上より、本実施例の繊維洗浄装置1によると、洗浄ブレード5a〜5dにより飛散される繊維が衝突する壁部材15と、壁部材15に衝突して落下する繊維を容器2の外部に排出するコンベア17と、を備えるので、回転体3の回転によって、洗浄ブレード5a〜5dにより容器2内の繊維が洗浄されるとともに、洗浄ブレード5a〜5dで飛散された繊維が壁部材15に衝突し、壁部材15に衝突して落下する繊維がコンベア17により容器2の外部に排出される。これにより、洗浄後の繊維を容器2から円滑に排出させることができる。その結果、容器2と排出口10との境界部分での繊維の堆積が防止され、堆積繊維と回転体3との接触により生じる繊維強度の低下及び繊維の縒り発生が防止される。
【0025】
また、本実施例では、壁部材15を、繊維が衝突する際に繊維の運動エネルギーを吸収するように構成したので、繊維の衝突の際の騒音及び飛散を低減させることができる。特に、本実施例では、壁部材15は、一対の弾性層15a,15bと、これら一対の弾性層15a,15bの間に挟持される樹脂層15cと、を有して構成したので、繊維の運動エネルギーを壁部材15に衝突した際に弾性層15a,15bのクッション作用、樹脂層15cのしなりにより減衰できるため、騒音及び繊維の飛散を更に低減させることができる。さらに、本実施例では、壁部材15に、端縁から延びるスリット16を形成したので、繊維の運動エネルギーを複数に分割した壁部材15に分散することで更に減衰でき、衝突の際の騒音及び繊維の飛散を更に低減させることができる。
【0026】
また、本実施例では、容器2には、回転体3の回転軸方向Bの一端側に投入口9を設け、回転体3の回転軸方向Bの他端側に排出口10を設け、排出口10を、回転体3の接線方向に延び且つ排出端側及び下側を開口して形成し、排出口10の排出端側の開口を塞ぐように壁部材15を配設し、排出口10の下側の開口に対向するようにコンベア17を配設したので、繊維の排出性を更に高め得るとともに、簡易且つ小型な構造とすることができる。
【0027】
また、本実施例では、洗浄ブレード5a〜5dの先端側を回転体3の回転方向Aと反対側に曲折したので、洗浄ブレード5a〜5dの強度を高めることができる。
【0028】
さらに、本実施例では、容器2の一端側に投入口9を設け、他端側に排出口10を設けるとともに、容器2の内周側にガイドプレート11を設けたので、ガイドプレート11により回転体3の回転に伴って繊維は投入口9側から排出口10側に向かって円滑に移動される。よって、洗浄繊維の生産性を更に高めることができる。
【0029】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例では、排出手段として、水平方向に延びるコンベア17を例示したが、これに限定されず、例えば、図6に示すように、排出方向に向かって下方に傾斜するコンベア20を採用してもよい。また、例えば、図7に示すように、排出方向に向かって下方に傾斜するシュート21又はダクトを採用してもよい。このように排出方向に向かって下方に傾斜する排出手段を採用することによって、繊維の排出性を更に向上させることができる。
【0030】
また、上記実施例では、回転体3の接線方向に繊維を排出するコンベア17を例示したが、これに限定されず、例えば、平面視で回転体3の接線方向に交差する方向に繊維を排出する排出手段を採用してもよい。
【0031】
また、上記実施例では、複数層の壁部材15により衝突繊維の運動エネルギーを吸収するようにしたが、これに限定されず、例えば、単一層の壁部材により衝突繊維の運動エネルギーを吸収するようにしてもよい。
【0032】
さらに、上記実施例では、複数の孔部7を有するパンチングメタル8を例示したが、これに限定されず、例えば、複数の孔部を有するエキスパンドメタルを採用したり、容器2に直接的に孔部7を形成したりしてもよい。さらに、上記孔部7としてスリットを採用してもよい。
【0033】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0034】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
繊維を洗浄する技術として広く利用される。特に、靭皮植物から得られる天然繊維を洗浄する技術として好適に利用される。
【符号の説明】
【0036】
1;繊維洗浄装置、2;容器、3;回転体、5a〜5d;洗浄ブレード、7;孔部、15;壁部材、17,20;コンベア、21;シュート、A;回転方向、B;回転軸方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔部を有する容器と、該容器内で回転可能に設けられ且つ複数枚の洗浄ブレードを有する回転体と、を備える繊維洗浄装置であって、
前記洗浄ブレードにより飛散される繊維が衝突する壁部材と、該壁部材に衝突して落下する繊維を前記容器の外部に排出する排出手段と、を備えることを特徴とする繊維洗浄装置。
【請求項2】
前記壁部材は、前記繊維が衝突する際に該繊維の運動エネルギーを吸収するように構成されている請求項1記載の繊維洗浄装置。
【請求項3】
前記排出手段は、前記繊維の排出方向に向かって下方に傾斜するように設けられている請求項1又は2に記載の繊維洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−180623(P2012−180623A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45626(P2011−45626)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(399042063)共立工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】