説明

耐久性ポリオキシメチレン組成物

【課題】優れたマイクロ摩耗耐久特性を有する耐久性ポリオキシメチレン組成物、および耐久性ポリオキシメチレン組成物で作られるランプを提供する。
【解決手段】3.3重量%の1,3−ジオキソランをコモノマとして含む90.5重量%から92.5重量%のポリオキシメチレン共重合体と、0.5重量%から3.0重量%の無機充填剤と、3.0重量%から10.0重量%の潤滑剤と、1.0重量%から3.0重量%の核形成剤と、0.5重量%から1.0重量%の安定剤と、0.5重量%から2.0重量%の帯電防止剤とを含むポリオキシメチレン組成物。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2010年3月29日に提出された米国仮特許出願第61/318,784からの利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して耐久性ポリオキシメチレン組成物、および耐久性ポリオキシメチレン組成物を含むランプに関する。特に本発明は、高湿高温条件において、あるいは低湿低温条件において、優れたマイクロ摩耗耐久特性を有する耐久性ポリオキシメチレン組成物ならびに耐久性ポリオキシメチレン組成物を含むランプに向けられている。
【背景技術】
【0003】
ポリオキシメチレン樹脂は、そのバランスの取れた機械的特性、顕著な耐化学性およびすべり特性、ならびに良好な摩擦摩耗性能により、エンジニアリング樹脂として広く使用されている。近年、このようなポリオキシメチレン樹脂を、ハードディスクドライブのランプ用材料として使用する試みが成されてきている。例えば、米国特許公報2008/0037175は、ポリオキシメチレン樹脂と顔料とを含んだハードディスクドライブ用のランプを開示している。ランプは、20μg/g以下のガス放出レベルを有する。米国特許番号7,088,555は、2.6GPa以上の表面硬度を有するランプを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0037175号明細書
【特許文献2】米国特許第7,088,555号明細書
【特許文献3】米国特許第7,355,816号明細書
【特許文献4】米国特許第7,256,966号明細書
【0005】
しかしながら前述の従来技術においては、優れたマイクロ摩耗耐久特性を有するポリオキシメチレン樹脂に対する記載はまだ成されておらず、またさらに、ポリオキシメチレン樹脂製ランプからの摩耗粉を低減する試みに対する提案は見出されていない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、マイクロ摩耗耐久特性、高い機械的安定性および高い成形性を持つ。マイクロ摩耗耐性の作用は、ローディング/アンローディングに必要なエネルギー量を減少させることであり、サスペンションアームのリフト機構がランプ表面をこする時に生ずる摩耗粉の量も低減する。
【0007】
本発明の1つの側面は、耐久性ポリオキシメチレン組成物を提供する。本発明の耐久性ポリオキシメチレン組成物は、優れたマイクロ摩耗耐久特性を持つ。本発明の1つの側面におけるポリオキシメチレン組成物は、負荷2.5g、往復600,000回、速度8インチ/秒、低環境湿度および低環境温度の条件下で、摩耗面積10μm以下のマイクロ摩耗減量、あるいは最大摩耗深さ1μmのマイクロ摩耗減量を示す。
【0008】
本発明の他の側面は、耐久性ポリオキシメチレン組成物を提供する。本発明の耐久性ポリオキシメチレン組成物は、優れたマイクロ摩耗耐久特性を持つ。本発明の他の側面におけるポリオキシメチレン組成物は、負荷2.5g、往復600,000回、速度8インチ/秒、高環境湿度および高環境温度の条件下で、摩耗面積10μm以下のマイクロ摩耗減量、あるいは最大摩耗深さ1μmのマイクロ摩耗減量を示す。
【0009】
本発明の他の側面は、耐久性ポリオキシメチレン組成物を含むランプを提供する。本発明のランプは、負荷2.5g、往復600,000回、速度8インチ/秒、低環境湿度および低環境温度の条件下で、摩耗面積10μm以下のマイクロ摩耗減量、あるいは最大摩耗深さ1μmのマイクロ摩耗減量を示してよい。
【0010】
本発明の他の側面は、耐久性ポリオキシメチレン組成物を含むランプを提供する。本発明のランプは、負荷2.5g、往復600,000回、速度8インチ/秒、高環境湿度および高環境温度の条件下で、摩耗面積10μm以下のマイクロ摩耗減量、あるいは最大摩耗深さ1μmのマイクロ摩耗減量を示してよい。
【0011】
本発明の1つの実施形態においては、高湿度条件は、50%から60%の相対湿度範囲である。
【0012】
本発明の他の実施形態においては、低湿度条件は、13%から17%の相対湿度範囲である。
【0013】
本発明の1つの実施形態においては、高温条件は、22℃から60℃の温度範囲である。
【0014】
本発明の1つの実施形態においては、低温条件は、3℃から10℃の温度範囲である。
【0015】
本発明のポリオキシメチレン組成物は、3.3重量%の1,3−ジオキソランをコモノマとして含む90.5重量%から92.5重量%のポリオキシメチレン共重合体、0.5重量%から3.0重量%の無機充填剤、3.0重量%から10.0重量%の潤滑剤、1.0重量%から3.0重量%の核形成剤、0.5重量%から1.0重量%の安定剤、および0.5重量%から2.0重量%の帯電防止剤を含む。
【0016】
本発明のポリオキシメチレン組成物において、ポリオキシメチレン共重合体は、62Mpa(ISO 527)の引張強度、および27g/10min(ISO 1133)のメルトフローレートを有してよい。
【0017】
本発明のポリオキシメチレン組成物において、潤滑剤は変性ポリオレフィンであってよい。
【0018】
本発明のポリオキシメチレン組成物において、変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンであってよい。
【0019】
本発明のポリオキシメチレン組成物において、無機充填剤は、平均粒子サイズが100nm以下のナノグレード酸化亜鉛微粒子であってよい。
【0020】
本発明のポリオキシメチレン組成物において、核形成剤は、モンタン酸のナトリウム塩および長鎖の直鎖カルボン酸のうちの少なくとも一方であってよい。例えば、核形成剤は、Clariant製Licomont Cav 102であってよい。
【0021】
本発明のポリオキシメチレン組成物において、安定剤は、CIBA製IRGANOX 1010、IRGANOX 259およびIRGANOX 1098、MELAMINE、ステアリン酸カルシウム、およびPALMOWAX(仕様書EBS−SP)の混合物であってよい。
【0022】
本発明のポリオキシメチレン組成物において、帯電防止剤は、グリセロールモノステアレートであってよい。
【0023】
本発明のポリオキシメチレン組成物は、平均粒子サイズ30μmを有する分子量2百万の超高分子量ポリエチレンを、3重量%から4重量%の範囲でさらに含んでもよい。
【0024】
本発明のポリオキシメチレン組成物は、平均粒子サイズ1.5μmを有するチタン酸カリウム粉末を、0.5重量%から2.0重量%の範囲でさらに含んでもよい。
【0025】
本発明のポリオキシメチレン組成物は、体積平均粒子半径1μmの炭酸カルシウムを、0.5重量%から2.0重量%の範囲でさらに含んでもよい。
【0026】
本発明のポリオキシメチレン組成物は、平均粒子サイズ20nmのナノグレード二酸化ケイ素を、0.5重量%から2.0重量%の範囲でさらに含んでもよい。
【0027】
本発明のポリオキシメチレン組成物は、平均粒子サイズ1μmの二酸化チタンを、0.5重量%から2.0重量%の範囲でさらに含んでもよい。
【0028】
本発明のポリオキシメチレン組成物は、CIBA製IRGANOX 1010、IRGANOX 259およびIRGANOX 1098、MELAMINE、ステアリン酸カルシウム、およびPALMOWAX(仕様書EBS−SP)等の安定剤を、0.5重量%から1.0重量%の範囲でさらに含んでもよい。
【0029】
本発明のポリオキシメチレン組成物は、メルトフローレート28g/10minの低密度ポリエチレンをさらに含んでもよい。
【0030】
本発明のポリオキシメチレン組成物は、寸法2mm×3mmのペレット形状であってよい。
【0031】
本発明のポリオキシメチレン組成物は、中空カラム形状であってよい。
【0032】
本発明のこれらおよびその他の目的は、様々な図面中に説明されている好ましい実施形態の以下の詳細な記載を読めば、当業者には明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は概して耐久性ポリオキシメチレン組成物ならびにロード/アンロードランプ構造に関する。ロード/アンロードランプ構造は、磁気ヘッドを回転ディスクから離しておくために使用される。サスペンションアームは、ハードディスクドライブ内で高速回転している情報記録ディスクとの間で情報の読み書きを行うための磁気ヘッドを保持する。近年のハードディスクドライブにおいては、ディスクが非動作モードにある場合に、記録ディスクから間隔を空けてヘッドを保持する磁気ヘッドの退避場所としてランプが備えられている。
【0034】
本発明の第1の側面は、耐久性ポリオキシメチレン組成物を提供する。本発明の耐久性ポリオキシメチレン組成物は、優れたマイクロ摩耗耐久特性を持つ。本発明の1つの側面におけるポリオキシメチレン組成物は、負荷2.5g、往復600,000回、速度8インチ/秒、低環境湿度および低環境温度の条件下で、摩耗面積10μm以下あるいは最大摩耗深さ1μmのマイクロ摩耗減量を示す。
【0035】
本発明の他の実施形態においては、低湿度条件は、13%から17%の相対湿度範囲である。本発明の他の実施形態においては、低温度条件は、3℃から10℃の温度範囲である。本発明の1つの好ましい実施形態においては、ポリオキシメチレン組成物はハードドライブに使用するランプを形成する。
【0036】
本発明の他の側面は、他の耐久性ポリオキシメチレン組成物を提供する。本発明の耐久性ポリオキシメチレン組成物はまた、優れたマイクロ摩耗耐久特性を持つ。本発明の他の側面におけるポリオキシメチレン組成物は、負荷2.5g、往復600,000回、速度8インチ/秒、高環境湿度および高環境温度の条件下で、摩耗面積10μm以下あるいは最大摩耗深さ1μmのマイクロ摩耗減量を示す。
【0037】
本発明の1つの実施形態においては、高湿度条件は、50%から60%の相対湿度範囲である。本発明の他の実施形態においては、高温度条件は、22℃から60℃の温度範囲である。本発明の1つの好ましい実施形態においては、ポリオキシメチレン組成物はハードドライブに使用するランプを形成する。
【0038】
本発明のポリオキシメチレン組成物は、ポリオキシメチレン共重合体、無機充填剤、潤滑剤、核形成剤、安定剤、および帯電防止剤等のいくつかの構成成分を含む。ポリオキシメチレン組成物は、3.3重量%の1,3−ジオキソランをコモノマとして含む90.5重量%から92.5重量%のポリオキシメチレン共重合体を含む。例えば、ポリオキシメチレン共重合体は、62Mpaの引張強度(ISO 527)、および27g/10minのメルトフローレート(ISO 1133)を有してよい。
【0039】
ポリオキシメチレン組成物は、3.0重量%から10.0重量%の潤滑剤を含んでよい。例えば、潤滑剤は、無水マレイン酸変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィンであってよい。本発明のポリオキシメチレン組成物は、メルトフローレート28g/10minの低密度ポリエチレンをさらに含んでもよい。加えて、本発明のポリオキシメチレン組成物は、平均粒子サイズ30μm、分子量2百万の超高分子量ポリエチレンを3重量%から4重量%の範囲でさらに含んでもよい。
【0040】
無機充填剤には様々なものがあり得る。例えば、1つの適切な無機充填剤は、100nm以下の平均粒子サイズを有するナノグレード酸化亜鉛微粒子0.5重量%から3.0重量%であってよい。本発明のポリオキシメチレン組成物は、平均粒子サイズ1.5μmのチタン酸カリウム粉末0.5重量%から2.0重量%、体積平均粒子半径1μmの炭酸カルシウム0.5重量%から2.0重量%、平均粒子サイズ20nmのナノグレード二酸化ケイ素0.5重量%から2.0重量%、平均粒子サイズ1μmの二酸化チタン0.5重量%から2.0重量%等、異なる重量%の他の適切な無機充填剤、あるいはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0041】
ポリオキシメチレン組成物は、1.0重量%から3.0重量%の核形成剤を含む。例えば、核形成剤は、モンタン酸のナトリウム塩および長鎖の直鎖カルボン酸のうちの少なくとも一方であってよい。例えば、核形成剤は、Clariant製Licomont Cav 102であってよい。
【0042】
ポリオキシメチレン組成物は、酸化防止剤および酸捕捉剤のうち少なくとも一方等の安定剤を0.5重量%から1.0重量%含む。例えば、安定剤は、CIBA製IRGANOX 1010、IRGANOX 259およびIRGANOX 1098、MELAMINE、ステアリン酸カルシウム、およびPALMOWAX(仕様書EBS−SP)の混合物であってよい。
【0043】
ポリオキシメチレン組成物は、0.5重量%から2.0重量%の帯電防止剤を含む。例えば、帯電防止剤はグリセロールモノステアレートであってよい。
【0044】
ランプを形成する処理に加えて、本発明のポリオキシメチレン組成物を処理してぺレットを形成してもよい。例えばペレットは、寸法2mm×3mmの中空カラムであってよい。ペレットは、輸送あるいは貯蔵時の使用において有利である。その後ペレットを処理して、必要に応じてランプを形成してもよい。
【0045】
ここにいくつかの例を挙げて、本発明のマイクロ摩耗耐性ポリオキシメチレン組成物を形成するための段階を示す。
【0046】
(実施例1)
物質(A)ポリオキシメチレン共重合体(90.5重量%)、(B)潤滑剤LDPE(メルトフローレート28g/10min(ISO 1133))(5.0重量%)、無機充填剤(C−1)ナノグレード炭酸カルシウム(1.0重量%)および(C−3)ナノグレード二酸化ケイ素(1.0重量%)、(D)核形成剤Clariant製Licomont Cav 102(2.0重量%)、および(E)安定剤CIBA製IRGANOX 1010、IRGANOX 259およびIRGANOX 1098、MELAMINE、ステアリン酸カルシウム、およびPALMOWAX(0.5重量%)を、高速縦型ミキサ中で2分間よく混合した。混合物(5KG)は、混合後、原料物質タンクに収めた。
【0047】
混合物をフィーダによって2軸スクリュー押出し機(φ=44mm)に供給した。供給は35kg/hrに設定した。押出し機バレルは160−220℃に調整した。真空は10−30cmHgに調整した。溶融組成物を冷却し、3mm×2mmのペレット形状に切断し、次いで熱風乾燥機により130℃で4時間乾燥した。ペレットを注入して、1個あたり0.17g、11.6×6.2×5.2mmのランプを形成した。ランプを超音波洗浄器中で洗浄した(第1段階は1%界面活性剤VALTRON(登録商標) DP97031中、第2から第5段階は脱イオン水中、各段階8分間)。湿ったランプをサイクロン型オーブン中で85℃、8分間乾燥し、次いで乾燥オーブン中で85℃、1時間乾燥した。ランプに様々な試験を行った。結果を表2にまとめる。
【0048】
(実施例2)
以下の点を除き、実施例1の方法と同様な方法を使用した。(A)ポリオキシメチレン共重合体(91.0重量%)、(B−1)潤滑剤無水マレイン酸変性ポリオレフィン(7.0重量%)、(C)無機充填剤チタン酸カリウム粉末(0.5重量%)、(D)核形成剤Clariant製Licomont Cav 102(1.0重量%)、および(E)安定剤CIBA製IRGANOX 1010、IRGANOX 259およびIRGANOX 1098、MELAMINE、ステアリン酸カルシウム、およびPALMOWAX(0.5重量%)。ランプに様々な試験を行った。結果を表2にまとめる。
【0049】
(実施例3)
以下の点を除き、実施例1の方法と同様な方法を使用した。(A)ポリオキシメチレン共重合体(91.0重量%)、(B−2)潤滑剤UHMWPE(分子量2百万(ASTM D4020)、平均粒子サイズ30μm)(7.0重量%)、(C)無機充填剤チタン酸カリウム粉末(0.5重量%)、(D)核形成剤Clariant製Licomont Cav 102(1.0重量%)、および(E)安定剤CIBA製IRGANOX 1010、IRGANOX 259およびIRGANOX 1098、MELAMINE、ステアリン酸カルシウム、およびPALMOWAX(0.5重量%)。ランプに様々な試験を行った。結果を表2にまとめる。
【0050】
(実施例4)
以下の点を除き、実施例1の方法と同様な方法を使用した。(A)ポリオキシメチレン共重合体(92.5重量%)、(B−1)潤滑剤無水マレイン酸変性ポリオレフィン(5.0重量%)、(C−4)無機充填剤二酸化チタン粉末(1.0重量%)、(D)核形成剤Clariant製Licomont Cav 102(1.0重量%)、および(E)安定剤CIBA製IRGANOX 1010、IRGANOX 259およびIRGANOX 1098、MELAMINE、ステアリン酸カルシウム、およびPALMOWAX(0.5重量%)。ランプに様々な試験を行った。結果を表2にまとめる。
【0051】
(実施例5)
以下の点を除き、実施例1の方法と同様な方法を使用した。(A)ポリオキシメチレン共重合体(91.5重量%)、(B−1)潤滑剤無水マレイン酸変性ポリオレフィン(5.0重量%)、(C−2)無機充填剤ナノグレード酸化亜鉛(1.0重量%)、(D)核形成剤Clariant製Licomont Cav 102(1.0重量%)、および(E)安定剤CIBA製IRGANOX 1010、IRGANOX 259およびIRGANOX 1098、MELAMINE、ステアリン酸カルシウム、およびPALMOWAX(1.0重量%)、加えて(F)帯電防止剤1.0重量%のグリセロールモノステアレート。ランプに様々な試験を行った。結果を表2にまとめる。
【0052】
(比較例1)
原材料ポリオキシメチレン樹脂ペレット(Polyplastics製Duracon M9044)を100℃で4時間乾燥した。ペレットを注入して、1個あたり0.41g、13.5×8.8×8.6mmのランプを形成した。ランプを超音波洗浄器中で洗浄した(第1段階は1%界面活性剤VALTRON(登録商標) DP97031中、第2から第5段階は脱イオン水中、各段階8分間)。湿ったランプをサイクロン型オーブン中で85℃、8分間乾燥し、次いで乾燥オーブン中で85℃、1時間乾燥した。ランプに様々な試験を行った。結果を表3にまとめる。
【0053】
(比較例2)
原材料ポリオキシメチレン樹脂ペレット(DuPont製Derlin 500P)を100℃で4時間乾燥した。ペレットを注入して、1個あたり0.17g、11.6×6.2×5.2mmのランプを形成した。ランプを超音波洗浄器中で洗浄した(第1段階は1%界面活性剤VALTRON(登録商標) DP97031中、第2から第5段階は脱イオン水中、各段階8分間)。湿ったランプをサイクロン型オーブン中で85℃、8分間乾燥し、次いで乾燥オーブン中で85℃、1時間乾燥した。ランプに様々な試験を行った。結果を表3にまとめる。
【表1】

【0054】
注:(1) CIBA製IRGANOX 1010、IRGANOX 259およびIRGANOX 1098、MELAMINE、ステアリン酸カルシウム、およびPALMOWAX(仕様書EBS−SP)の混合物。 (2) 含有物(B)は潤滑剤であり、LDPE、変性PE、あるいはUHMWPEであってよい。含有物(C)は無機充填剤であり、チタン酸カリウム粉末、CaCO、ナノZnO、ナノSiO、あるいはTiO粉末であってよい。
【0055】
以下の試験結果は、次の条件下で600,000回往復させた後得られた。 (1)負荷2.5g (2)速度8インチ/秒 (3)低環境湿度、あるいは高環境湿度、および (4)低環境温度、室温、あるいは高環境温度。
【表2A】

【0056】
注:1.(A)低湿度/低温度、(B)高湿度/高温度、(C)室温。 2.データは、Wyko(MHT−III)機で測定した(異なるブランドの機械は異なる試験結果をもたらすかもしれない)。 3.部品は、サスペンションコンポーネントを有するCETR Micro−Tribometer UMT(ロード/アンロードモデル)により試験した。
【0057】
実施例1は、本発明のポリオキシメチレン組成物の第1の評価を示している。実施例2−4は、実施例1に従って、さらに変更および改良が成されている。実施例5は、比較例と比較して、優れたマイクロ摩耗耐久特性を示している。実施例5は、(A)低湿度/低温度条件、(B)高湿度/高温度条件、および(C)室温のいずれにおいても優れたマイクロ摩耗耐久特性を示している。実施例5はまた、摩耗粉の生成が最も少なく、(A)低湿度/低温度条件、(B)高湿度/高温度条件、および(C)室温において、優れたマイクロ摩耗耐久特性を示している。
【表2B】

【0058】
注:1.(A)低湿度/低温度、(B)高湿度/高温度、(C)室温。 2.データは、Wyko(MHT−III)機で測定した(異なるブランドの機械は異なる試験結果をもたらすかもしれない)。 3.部品は、サスペンションコンポーネントを有するCETR Micro−Tribometer UMT(ロード/アンロードモデル)により試験した。
【表3A】

【表3B】

【0059】
注:1.(A)低湿度/低温度、(B)高湿度/高温度、(C)室温。 2.データは、Wyko(MHT−III)機で測定した(異なるブランドの機械は異なる試験結果をもたらすかもしれない)。 3.部品は、サスペンションコンポーネントを有するCETR Micro−Tribometer UMT(ロード/アンロードモデル)により試験した。
【0060】
当業者は、本発明の教示を保持しながら、装置および方法における多くの変更や修正に容易に気づくであろう。従って、上記の開示は、添付の請求項の範囲によってのみ限定されるものと解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷2.5g、速度8インチ/秒、相対湿度13%から17%の環境湿度、および3℃から10℃の環境温度条件で600,000回往復後の条件において、1μm以下の最大摩耗深さあるいは10μm以下の摩耗面積のうち少なくとも一方のマイクロ摩耗減量を有するポリオキシメチレン組成物であって、
3.3重量%の1,3−ジオキソランをコモノマとして含む90.5重量%から92.5重量%のポリオキシメチレン共重合体と、
0.5重量%から3.0重量%の無機充填剤と、
3.0重量%から10.0重量%の潤滑剤と、
1.0重量%から3.0重量%の核形成剤と、
0.5重量%から1.0重量%の安定剤と、
0.5重量%から2.0重量%の帯電防止剤と
を含むポリオキシメチレン組成物。
【請求項2】
前記潤滑剤は、変性ポリオレフィンである請求項1に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項3】
前記変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含む請求項2に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項4】
前記無機充填剤は、平均粒子サイズが100nm以下のナノグレード酸化亜鉛微粒子を含む請求項1から3の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項5】
前記核形成剤は、モンタン酸のナトリウム塩および長鎖の直鎖カルボン酸のうちの少なくとも一方を含む請求項1から4の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項6】
前記安定剤は、酸化防止剤および酸捕捉剤のうち少なくとも一方を含む請求項1から5の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項7】
前記帯電防止剤は、グリセロールモノステアレートを含む請求項1から6の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項8】
平均粒子サイズ30μmを有し分子量2百万を有する超高分子量ポリエチレンを3重量%から10重量%の範囲でさらに含む請求項1から7の何れか1から7の何れか1項項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項9】
平均粒子サイズ1.5μmを有するチタン酸カリウム粉末を0.5重量%から1.0重量%の範囲でさらに含む請求項1から8の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項10】
体積平均粒子半径1μmを有する炭酸カルシウムを0.5重量%から2.0重量%の範囲でさらに含む請求項1から9の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項11】
平均粒子サイズ20nmを有するナノグレード二酸化ケイ素を0.5重量%から2重量%の範囲でさらに含む請求項1から10の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項12】
平均粒子サイズ1μmを有する二酸化チタンを0.5重量%から2重量%の範囲でさらに含む請求項1から11の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項13】
メルトフローレート28g/10minを有する5%の低密度ポリエチレンをさらに含む請求項1から12の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項14】
負荷2.5g、速度8インチ/秒、相対湿度13%から17%の環境湿度、および3℃から10℃の環境温度で600,000回往復後の条件において、1μm以下の最大摩耗深さおよび10μm以下の摩耗面積のうち少なくとも一方のマイクロ摩耗減量を有するランプであって、
3.3重量%の1,3−ジオキソランをコモノマとして含む90.5重量%から92.5重量%のポリオキシメチレン共重合体と、
1.0重量%から3.0重量%の無機充填剤と、
3.0重量%から10.0重量%の潤滑剤と、
1.0重量%から3.0重量%の核形成剤と、
0.5重量%から1.0重量%の安定剤と、
0.5重量%から2.0重量%の帯電防止剤とを含むランプ。
【請求項15】
負荷2.5g、速度8インチ/秒、相対湿度50%から60%の環境湿度、および22℃から60℃の環境温度で600,000回往復後の条件において、0.5μm以下の最大摩耗深さおよび5μm以下の摩耗面積のうち少なくとも一方のマイクロ摩耗減量を有するマイクロ摩耗耐性ポリオキシメチレン組成物であって、
3.3重量%の1,3−ジオキソランをコモノマとして含む90.5重量%から92.5重量%のポリオキシメチレン共重合体と、
0.5重量%から3.0重量%の無機充填剤と、
3.0重量%から10.0重量%の潤滑剤と、
1.0重量%から3.0重量%の核形成剤と、
0.5重量%から1.0重量%の安定剤と、
0.5重量%から2.0重量%の帯電防止剤とを含むマイクロ摩耗耐性ポリオキシメチレン組成物。
【請求項16】
前記潤滑剤は、変性ポリオレフィンである請求項15に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項17】
前記変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含む請求項16に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項18】
前記無機充填剤は、平均粒子サイズが100nm以下のナノグレード酸化亜鉛微粒子である請求項15から17の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項19】
前記核形成剤は、モンタン酸のナトリウム塩および長鎖の直鎖カルボン酸のうちの少なくとも一方を含む請求項15から18の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項20】
前記安定剤は、酸化防止剤および酸捕捉剤のうち少なくとも一方を含む請求項15から19の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項21】
前記帯電防止剤は、グリセロールモノステアレートを含む請求項15から20の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項22】
平均粒子サイズ30μmを有し分子量2百万の超高分子量ポリエチレンを3重量%から4重量%の範囲でさらに含む請求項15から21の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項23】
平均粒子サイズ1.5μmを有するチタン酸カリウム粉末を0.5重量%から1.0重量%の範囲でさらに含む請求項15から21の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項24】
体積平均粒子半径1μmを有する炭酸カルシウムを0.5重量%から2.0重量%の範囲でさらに含む請求項15から21の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項25】
平均粒子サイズ20nmを有するナノグレード二酸化ケイ素を0.5重量%から2重量%の範囲でさらに含む請求項15から21の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項26】
平均粒子サイズ1μmを有する二酸化チタンを0.5重量%から2.0重量%の範囲でさらに含む請求項15から21の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項27】
メルトフローレート28g/10minを有する低密度ポリエチレンをさらに含む請求項15から26の何れか1項に記載のポリオキシメチレン組成物。
【請求項28】
負荷2.5g、速度8インチ/秒、相対湿度50%から60%の環境湿度、および22℃から60℃の環境温度で600,000回往復後の条件において、0.5μm以下の最大摩耗深さおよび5μm以下の摩耗面積のうち少なくとも一方のマイクロ摩耗減量を有するランプであって、
3.3重量%の1,3−ジオキソランをコモノマとして含む90.5重量%から92.5重量%のポリオキシメチレン共重合体と、
0.5重量%から3.0重量%の無機充填剤と、
3.0重量%から10.0重量%の潤滑剤と、
1.0重量%から3.0重量%の核形成剤と、
0.5重量%から1.0重量%の安定剤と、
0.5重量%から2.0重量%の帯電防止剤とを含むランプ。

【公開番号】特開2011−208114(P2011−208114A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160879(P2010−160879)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(510195571)銘異科技股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】