説明

耐光性に優れた被膜を有するマイクロカプセル農薬組成物

【課題】従来のマイクロカプセル化技術は、被膜物質が太陽光による光分解を受けて被膜の透過性に変化が起きると、効果持続期間の短縮や薬害発生などの好ましくない問題が発生する。例えば、成分が必要以上に速く放出し残効不足となったり、薬害発生につながる危険性がある。
本発明の目的は、太陽光によるマイクロカプセル被膜の分解が小さいことにより、自然環境下での使用において耐光性の優れたマイクロカプセル農薬組成物を提供することにある。
【解決手段】界面重合法を用いたポリウレア樹脂被膜マイクロカプセル農薬組成物において、ポリアミン類として1種又は2種以上のポリオキシアルキレンアミン類を原料として使用する。
【効果】耐光性の優れたマイクロカプセル農薬組成物を得ることができ、自然環境下においてマイクロカプセル中の活性成分の溶出を制御し優れた効果持続性を発揮させることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬活性成分がカプセル化されたマイクロカプセル農薬組成物に関するものであり、詳しくは、1種又は2種以上のポリオキシアルキレンアミン類をポリアミン類として用いるポリウレア樹脂を被膜構成成分とすることにより被膜の耐光性が優れ、活性成分の放出が安定し、効果持続性に優れたマイクロカプセル農薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農薬分野において、効力持続や毒性軽減、安定性付与等を目的として農薬活性成分のマイクロカプセル化技術の応用が数多く試みられている。すなわち、カプセル化することによって、農薬活性成分が徐放化される効果や、光などの環境因子が活性成分に直接作用することを回避する効果を応用した種々の技術が開発されている。特許庁資料室標準技術資料集には、既存技術として、マイクロカプセルの機能として揮発性物質の保護、湿気・光・酸素などからの保護、溶出・溶解性の改変、臭気などの密閉、貯蔵などであることが述べられており、これらの機能を応用して国内で開発されている農薬マイクロカプセル製剤の具体例が挙げられている(例えば、非特許文献1参照。)。
農薬活性成分の溶出制御を図る技術としては、カプセルの粒径/膜厚の比率範囲を規定して所望の残効性を得る技術(例えば、特許文献1参照。)、膜厚の異なるマイクロカプセルを配合して速効性と残効性の両性能を発揮させる技術(例えば、特許文献2参照。)、異種のポリイソシアネートを適宜混合して使用することにより所望の放出制御能を発現させる技術(例えば、特許文献3参照。)などが知られている。
更には、農薬活性成分の耐光性を向上させる目的でのマイクロカプセル化技術として、ヒンダートアミン類等の紫外線/可視光線吸収性化合物を芯物質に添加して活性成分の光分解を抑制する技術(例えば、特許文献4参照。)、酸化チタン微粒子を芯液に分散させて活性成分の光分解を抑える技術(例えば、特許文献5参照。)などが知られている。
【0003】
しかしながら、従来の技術は自然環境下に施用された農薬活性成分の挙動の改良に限られており、自然環境下で活性成分と同様に種々の影響を受ける被膜の性状に関する問題点には触れられていない。すなわち、被膜物質が太陽光による光分解を受けて被膜の透過性に変化が起きると、好ましくない問題が発生する可能性がある。例えば、被膜が光照射で劣化して脆くなり活性成分が必要以上に速く放出する事態が起きれば、残効不足となったり薬害発生につながる危険性がある。そこで、これらの問題を解決する新たな技術の開発が強く望まれていた。
【0004】
【非特許文献1】特許庁資料室、標準技術資料集、農薬製剤技術B−3−(1)マイクロカプセル化(物理化学的方法および化学的方法)及びB−3−(2)マイクロカプセル化(物理的・機械的方法)http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/nouyaku/tt1302-061_nouyaku.htm
【特許文献1】特開平6−247811号公報(住友化学工業株式会社)
【特許文献2】特開平10−59812号公報(三井東圧化学株式会社)
【特許文献3】特開平6−247811号公報(住友化学工業株式会社)
【特許文献4】特表平9−509945号公報(ベン・ガリオン・ユニバーシテイ・オブ・ザ・ネゲブ・リサーチ・アンド・デイベロツプメント・オーソリテイ)
【特許文献5】特表平11−504030号公報(ゼネカ リミテッド)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記した従来法における被膜が光照射で劣化して脆くなり活性成分が必要以上に速く放出する問題点を解決し、太陽光によるマイクロカプセル被膜の分解が小さいことにより、自然環境下での使用において耐光性の優れたマイクロカプセル農薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、界面重合法によるポリウレア樹脂被膜形成によるマイクロカプセル化において、ポリウレア樹脂の原料として1種又は2種以上のポリオキシアルキレンアミン類を使用することにより、太陽光によるポリウレア樹脂被膜の分解が抑制される事を見出し、耐光性の優れたマイクロカプセル農薬組成物として、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、農薬活性成分をマイクロカプセル化させ水中に懸濁させてなる農薬組成物であって、該マイクロカプセルの被膜樹脂がポリアミン類とポリイソシアネート類から調製されるポリウレア樹脂であって、ポリアミン類が1種又は2種以上のポリオキシアルキレンアミン類であることを特徴とし、耐光性に優れる被膜で構成されたマイクロカプセル農薬組成物である。
より詳しくは、一般式(I)
H2N-CH(CH3)CH2-[O-CH2CH(CH3)]a-NH2 (I)
(式中、aは0〜40の整数を示す。)、
一般式(II)
H2N-CH(CH3)CH2-[O-CH2CH(CH3)]b-[O-CH2CH2]c-[O-CH2CH(CH3)]d-NH2 (II)
(式中、b、c及びdは0〜40の整数を示す。)
又は一般式(III)
【0008】
【化1】

(式中、e、f、g及びhは0〜40の整数を示す。Rは水素原子又は (C1-C6) アルキル基を示す。)
【0009】
で表される化合物から選択される1種又は2種以上のポリオキシエチレンアミン及びヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートから選択される1種又は2種以上のポリイソシアネートから作られるポリウレア樹脂を被膜とする、耐光性に優れたマイクロカプセル農薬組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
界面重合法を用いたポリウレア樹脂被膜マイクロカプセル農薬組成物において、ポリアミン類として1種又は2種以上のポリオキシアルキレンアミン類を原料として使用することにより、耐光性の優れたマイクロカプセル組成物を得ることができ、自然環境下においてマイクロカプセル中の活性成分の溶出を制御し優れた効果持続性を発揮させることが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を以下に詳細に説明する。本発明のマイクロカプセル農薬組成物は、例えば、農薬活性成分を含む芯物質がポリウレア樹脂により被覆された構造である。芯物質としては、農薬活性成分のみだけでなく、農薬活性成分を溶剤中に溶解させた溶液を選択することができる。これら芯物質にポリウレア樹脂原料であるポリイソシアネート類を溶解させた溶液を、分散剤を溶解させた水溶液中に分散させ、撹拌しながらポリウレア樹脂原料であるポリアミン類を添加し、分散粒子表面にポリウレア樹脂を形成させてマイクロカプセル農薬組成物を得ることが出来る。
【0012】
上記ポリウレア樹脂を形成させるために用いられるポリアミン類は、一般式(I)
H2N-CH(CH3)CH2-[O-CH2CH(CH3)]a-NH2 (I)
(式中、aは0〜40の整数を示す。)、
一般式(II)
H2N-CH(CH3)CH2-[O-CH2CH(CH3)]b-[O-CH2CH2]c-[O-CH2CH(CH3)]d-NH2 (II)
(式中、b、c及びdは0〜40の整数を示す。)
又は一般式(III)
【0013】
【化2】

(式中、e、f、g及びhは0〜40の整数を示す。Rは水素原子又は (C1-C6) アルキル基を示す。)で表されるポリオキシアルキレンアミン類である。
【0014】
本発明の目的に適しており、市販されている具体的なポリオキシアルキレンアミン類としては、例えば、ポリオキシプロピレンジアミン類であるJEFFAMINE D−230[CAS 9046−10−0]又はJEFFAMINE D−400[CAS 9046−10−0]、トリエチレングリコールジアミン類であるJEFFAMINE EDR−148[CAS 929−59−9]又はJEFFAMINE T−403[CAS 39423−51−3](以上、ハンツマン製)等が挙げられる。尚、「JEFFAMINE」はHuntsman Petrochemical Corporationの登録商標である。
同様にPolyetheramine D230[CAS 9046−10−0]、Polyetheramine D400[CAS 9046−10−0]、Polyetheramine D2000[CAS 9046−10−0]、Polyetheramine T403[CAS 39423−51−3](以上、BASF製)等があげられ、これらは単独で、又は2種以上併せて用いられる。ポリオキシアルキレンアミン類の使用量はとくに制限されないが、農薬活性成分重量に対して0.05〜30.0重量%であるように使用することが好ましい。
【0015】
上記ポリオキシアルキレンアミン類と併せて、エチレンジアミン、プロピレン−1,3−ジアミン、テロラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、N−メチル−ビス−(3−アミノプロピル)アミン、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミン、1,2−フェニレンジアミン又は1,5−ジアミノナフタレン等を組み合わせることが出来る。
【0016】
上記ポリウレア樹脂を形成させるために用いられるポリイソシアネート類としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上併せて用いられる。
ポリイソシアネート類の使用量はとくに制限されないが、農薬活性成分重量に対するポリイソシアネート類重量が0.05〜30.0重量%であるように使用することが好ましい。
【0017】
本発明において用いられる農薬活性成分としては、例えば、殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、除草剤、忌避剤、昆虫成長制御剤、植物成長調節剤等を挙げることができる。
殺虫剤、殺ダニ剤としては、アセタミプリド、アセフェート、アミトラズ、アレスリン、イソキサチオン、イソフェンホス、イミダクロプリド、エスフェンバレレート、エチルチオメトン、エトフェンプロックス、エトリムホス、エンペンスリン、オキサミル、カズサホス、カルボスルファン、クロチアニジン、クロルピクリン、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、クロルフルアズロン、ケルセン、ジエノクロル、シクロプロトリン、ジノテフラン、シハロトリン、シフルトリン、ジフルベンズロン、シペルメトリン、ジメチルビンホス、ジメトエート、スルプロホス、ダイアジノン、チアクロプリド、チアメトキサム、チオジカルブ、テトラジホン、テブフェンピラド、テフルスリン、テフルベンズロン、トラロメスリン、トルフェンピラド、ニテンピラム、ピラクロホス、ピリダフェンチオン、ピリプロキシフェン、ピリミホスメチル、フェノチオカルブ、フェンバレレート、フェンプロパトリン、フェンピロキシメート、ブプロフェジン、フルシトリネート、フルバリネート、プロチオホス、プロパホス、プロフェノホス、ヘキシチアゾクス、ペルメトリン、ベンクロチアズ、ベンスルタップ、ベンゾエピン、ベンフラカルブ、ホサロン、ホルモチオン、マラソン、モノクロトホス、フェノブカルブ、プロパルギット、シアノホス、ジクロルボス(DDVP)、メチダチオン(DMTP)、ジクロフェンチオン(ECP)、EPN、フェニトロチオン、イソプロカルブ(MIPC)、フェンチオン(MPP)、カルバリル(NAC)、フェントエート(PAP)、プロポキスル(PHC)、XMC、クロルフェナピル等が挙げられる。
【0018】
殺菌剤としては、アゾキシストロビン、イソプロチオラン、イプロジオン、エクロメゾール、オキサジキシル、オキシカルボキシン、キャプタン、クレソキシムメチル、クロロネブ、ジクロメジン、ジチアノン、ジメチリモール、ダゾメット、チアジニル、チアベンダゾール、チウラム、チオファネートメチル、トリアジメホン、トリアジン、トリシクラゾール、トリフルミゾール、トリホリン、ヒドロキシイソキサゾール、フェナリモル、フェノキサニル、フサライド、フルオルイミド、フルトラニル)、プロクロラズ、プロシミドン、プロベナゾール、ベノミル、イミノクタジンアルベシル酸塩、ペンシクロン、メタスルホカルブ、メタラキシル、メプロニル、ジノカップ(DPC)、エディフェンホス(EDDP)、クロロタロニル(TPN)等が挙げられる。
【0019】
除草剤としては、アシュラム、アトラジン、アミプロホスメチル、アメトリン、アラクロール、イマゾスルフロン、イソウロン、インダノファン、エスプロカルブ、オキサジアゾン、オキサジクロメホン、カルブチレート、クロメプロップ、シアナジン、シハロホップブチル、ジメタメトリン、シメトリン、ジメピペート、ダイムロン、テニルクロール、トリフルラリン、ナプロアニリド、ナプロパミド、ビフェノックス、ピラゾキシフェン、ピラゾスルフロンエチル、ピラゾレート、ピリブチカルブ、ピラフルフェンエチル、フェノキサプロップエチル、ブタクロール、ブタミホス、フラザスルフロン、フルアジホップ、プレチラクロール、プロピザミド、ブロマシル、プロメトリン、ベスロジン、ベンスルフロンメチル、ベンタゾン、ベンチオカーブ、ペンディメタリン、メチルダイムロン、メトスルフロンメチル、メトラクロール、メトリブジン、メフェナセット、モリネート、リニュロン、レナシル、2,4−PA、シマジン(CAT)、ジクロベニル(DBN)、クロルチアミド(DCBN)、ジウロン(DCMU)、クロルフタリム、クロルプロファム(IPC)、MCPB、ジカンバ(MDBA)等が挙げられる。
【0020】
農薬活性成分は、単独で用いても良いし2種以上を混合して用いてマイクロカプセルにしても良い。農薬活性成分をマイクロカプセル化する際の組成物全体に対する農薬活性成分の含有量は1.0〜50.0重量%であることが好ましい。
本発明において用いられる溶剤としては、例えば、n−デカン、トリデカン等の炭化水素類、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等のアルキルベンゼン類、ドデシルナフタレン等のアルキルナフタレン類、n−ヘキサノール、n−オクタノール等のアルコール類、グリコール類、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、リン酸エステル類、マレイン酸エステル類、動植物油類、鉱物油類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても良いし2種以上を混合して用いても良い。
その使用量は、農薬活性成分重量に対して1.0〜300.0重量%である。
【0021】
本発明において用いられる分散剤としては、例えばゼラチン、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム塩等の天然多糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、リグニンスルホン酸塩等の半合成多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成水溶性高分子、マグネシウムアルミニウムシリケート等の鉱物質、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、高級アルキルスルホン酸塩、高級アルキル第四級アンモニウム塩、高級脂肪酸又はその塩、高級アルキルカルボン酸塩等のアニオン性界面活性剤、脂肪族第三級アミン若しくはその塩、脂肪族第三級アミン脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物又はその塩、脂肪族第四級アミン塩等のカチオン性界面活性剤、脂肪族アルコールアルキレンオキサイド付加物、ポリアルキレンオキシ脂肪酸エステル、ソルビタン系界面活性剤若しくはそのアルキレンオキサイド付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリサッカライド系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレントリスチリルフェノールエーテル等のノニオン性界面活性剤などを挙げることができる。これらの分散剤は、単独で用いても良いし2種以上を混合して用いても良い。その使用量は、本発明組成物重量に対して0.1〜50.0重量%である。
【0022】
本発明マイクロカプセル農薬組成物は、例えば、次の方法によって製造することができる。分散剤と水とを混合し、分散剤を含む水溶液を調製する。次に、農薬活性成分、ポリイソシアネート類、必要に応じて溶媒等を混合して、油相を調製する。この油相を、分散剤水溶液に添加し、撹拌機によって乳化する。この際使用される撹拌機としては、高速回転高剪断型攪拌機、ディゾルバー、コロイドミル、ホモジナイザーなどが挙げられる。より具体的には、T.K.オートホモミキサー、ウルトラホモミキサーなどが挙げられる。撹拌時の回転数は、通常500〜10000rpm、温度は通常5〜50℃である。また、撹拌時間は、通常0.01〜2.0時間である。また、撹拌された油相の乳化粒子の大きさは撹拌強度、分散剤の添加量によって、約0.1〜200μmの範囲で調節が可能である。得られた乳化液に、ポリアミン類と水とを混合した水溶液を加え撹拌を続ける。この際の撹拌時間は、通常1〜48時間であり、撹拌温度は通常30〜80℃である。また、撹拌時の回転数は、50〜2000rpmである。
【0023】
製造されたマイクロカプセルは、分散系を安定化させるための増粘剤を添加することができる。増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、ローストビンガム、グァーガム等の天然多糖類、ベントナイト、マグネシウムアルミニウムシリケート等の鉱物質類、カルボキシメチルセルロース等の半合成多糖類、ポリアクリル酸等の合成多糖類等が挙げられる。これらは単独で、もしくは2種以上併せて用いられる。
さらに、プロピレングリコール、エチレングリコール等の凍結防止剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤、その他必要に応じて、分解防止剤、防腐剤、協力剤等を添加して水中懸濁製剤とすることができる。
【実施例】
【0024】
本発明を以下の実施例、比較例及び試験例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
17.00gのイソプロチオランを17.00gの芳香族炭化水素溶剤(ソルベッソ200、エクソンモービル化学株式会社製)に加え、40℃に加温して溶解させた。撹拌しながら、0.85gのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製)を混合した。
この液を、6.32gのポリビニルアルコール(ゴーセノールNK−05、日本合成化学株式会社製)15%水溶液を溶解させた41.54gのイオン交換水中に加え、T.K.オートホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて3000rpmで5分間撹拌した。次いで、0.80gのポリオキシアルキレンアミン(JEFFAMINE D−230 polyetheramines、ハンツマン製)を溶解させた16.49gのイオン交換水を滴下し、50℃にて穏やかに5時間撹拌を続け、マイクロカプセルスラリーを得た。
得られた61.76gのマイクロカプセルスラリーに、20.00gのキサンタンガム1%液、10.00gのアルミニウムマグネシウムシリケート4%液、8.24gのイオン交換水を加えて、有効成分濃度10%マイクロカプセル農薬組成物を得た。
本組成物の平均粒子径測定値は、30μmであった。
【0025】
実施例2
17.00gのイソプロチオランを17.00gの芳香族炭化水素溶剤(ソルベッソ200、エクソンモービル化学株式会社製)に加え、40℃に加温して溶解させた。撹拌しながら、1.67gのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製)を混合した。
この液を、6.32gのポリビニルアルコール(ゴーセノールNK−05、日本合成化学株式会社製)15%水溶液を溶解させた41.54gのイオン交換水中に加え、T.K.オートホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて3000rpmで5分間撹拌した。次いで、1.56gのポリオキシアルキレンアミン(JEFFAMINE D−230 polyetheramines、ハンツマン製)を溶解させた14.91gのイオン交換水を滴下し、50℃にて穏やかに5時間撹拌を続け、マイクロカプセルスラリーを得た。
得られた61.76gのマイクロカプセルスラリーに、20.00gのキサンタンガム1%液、10.00gのアルミニウムマグネシウムシリケート4%液、8.24gのイオン交換水を加えて、有効成分濃度10%マイクロカプセル農薬組成物を得た。
本組成物の平均粒子径測定値は、33μmであった。
【0026】
実施例3
17.00gのイソプロチオランを17.00gの芳香族炭化水素溶剤(ソルベッソ200、エクソンモービル化学株式会社製)に加え、40℃に加温して溶解させた。撹拌しながら、1.24gのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製)を混合した。
この液を、6.32gのポリビニルアルコール(ゴーセノールNK−05、日本合成化学株式会社製)15%水溶液を溶解させた41.54gのイオン交換水中に加え、T.K.オートホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて3000rpmで5分間撹拌した。次いで、2.03gのポリオキシアルキレンアミン(JEFFAMINE D−400 polyetheramines)を溶解させた14.87gのイオン交換水を滴下し、50℃にて穏やかに5時間撹拌を続け、マイクロカプセルスラリーを得た。
得られた61.76gのマイクロカプセルスラリーに、20.00gのキサンタンガム1%液、10.00gのアルミニウムマグネシウムシリケート4%液、8.24gのイオン交換水を加えて、有効成分濃度10%マイクロカプセル農薬組成物を得た。
本組成物の平均粒子径測定値は、33μmであった。
【0027】
実施例4
17.00gのフェノキサニルを17.00gの芳香族炭化水素溶剤(ソルベッソ200、エクソンモービル化学株式会社製)に加え、40℃に加温して溶解させた。撹拌しながら、0.85gのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製)を混合した。
この液を、6.32gのポリビニルアルコール(ゴーセノールNK−05、日本合成化学株式会社製)15%水溶液を溶解させた41.54gのイオン交換水中に加え、T.K.オートホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて3000rpmで5分間撹拌した。次いで、0.80gのポリオキシアルキレンアミン(JEFFAMINE D−230 polyetheramines、ハンツマン製)を溶解させた16.49gのイオン交換水を滴下し、50℃にて穏やかに5時間撹拌を続け、マイクロカプセルスラリーを得た。
得られた61.76gのマイクロカプセルスラリーに、20.00gのキサンタンガム1%液、10.00gのアルミニウムマグネシウムシリケート4%液、8.24gのイオン交換水を加えて、有効成分濃度10%マイクロカプセル農薬組成物を得た。
本組成物の平均粒子径測定値は、33μmであった。
【0028】
比較例1
18.00gのイソプロチオランを18.00gの芳香族炭化水素溶剤(ソルベッソ200、エクソンモービル化学株式会社製)に加え、40℃に加温して溶解させた。撹拌しながら、1.17gのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製)を混合した。
この液を、6.32gのポリビニルアルコール(ゴーセノールKL−05、日本合成化学株式会社製)15%水溶液を溶解させた43.49gのイオン交換水中に加え、T.K.オートホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて2500rpmで5分間撹拌した。次いで、0.55gのヘキサメチレンジアミンを溶解させた12.47gのイオン交換水を滴下し、50℃にて穏やかに5時間撹拌を続け、マイクロカプセルスラリーを得た。
得られた58.33gのマイクロカプセルスラリーに、20.00gのキサンタンガム1%液、10.00gのアルミニウムマグネシウムシリケート4%液、11.67gのイオン交換水を加えて、有効成分濃度10%マイクロカプセル農薬組成物を得た。
本組成物の平均粒子径測定値は、31μmであった。
【0029】
比較例2
18.00gのイソプロチオランを18.00gの芳香族炭化水素溶剤(ソルベッソ200、エクソンモービル化学株式会社製)に加え、40℃に加温して溶解させた。撹拌しながら、2.34gのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製)を混合した。
この液を、6.52gのポリビニルアルコール(ゴーセノールKL−05、日本合成化学株式会社製)15%水溶液を溶解させた44.86gのイオン交換水中に加え、T.K.オートホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて2500rpmで5分間撹拌した。次いで、1.10gのヘキサメチレンジアミンを溶解させた9.18gのイオン交換水を滴下し、50℃にて穏やかに5時間撹拌を続け、マイクロカプセルスラリーを得た。
得られた58.33gのマイクロカプセルスラリーに、20.00gのキサンタンガム1%液、10.00gのアルミニウムマグネシウムシリケート4%液、11.67gのイオン交換水を加えて、有効成分濃度10%マイクロカプセル農薬組成物を得た。
本組成物の平均粒子径測定値は、32μmであった。
【0030】
比較例3
18.00gのフェノキサニルを18.00gの芳香族炭化水素溶剤(ソルベッソ200、エクソンモービル化学株式会社製)に加え、40℃に加温して溶解させた。撹拌しながら、1.17gのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ミリオネートMR−200、日本ポリウレタン工業株式会社製)を混合した。
この液を、6.32gのポリビニルアルコール(ゴーセノールKL−05、日本合成化学株式会社製)15%水溶液を溶解させた43.49gのイオン交換水中に加え、T.K.オートホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて2500rpmで5分間撹拌した。次いで、0.55gのヘキサメチレンジアミンを溶解させた12.47gのイオン交換水を滴下し、50℃にて穏やかに5時間撹拌を続け、マイクロカプセルスラリーを得た。
得られた58.33gのマイクロカプセルスラリーに、20.00gのキサンタンガム1%液、10.00gのアルミニウムマグネシウムシリケート4%液、11.67gのイオン交換水を加えて、有効成分濃度10%マイクロカプセル農薬組成物を得た。
本組成物の平均粒子径測定値は、30μmであった。
【0031】
試験例1 紫外線照射による抽出率比較試験
10%マイクロカプセル農薬組成物を用い、有効成分濃度100ppmに調製した薬液に、光照射装置(Heraeus社製、SUNTEST CPS)を用いて3.5mw/cmの光強度で8時間光を照射した。この薬液50mlを100mlシリンダーに入れた後、n−ヘキサン50mlを加えた。シリンダーを2秒に1回の割合で50回転倒させた後、n−ヘキサン層の有効成分濃度を測定し、有効成分全量溶出時の濃度に対する割合を算出した。
光非照射の薬液について同様の操作を行い、光照射によるマイクロカプセル被膜分解による抽出率を比較した。結果を第1表に示す。
【0032】
【表1】

第1表の結果から、比較例のマイクロカプセル農薬組成物は光照射下において有効成分抽出率が有意に増加しているが、本発明のマイクロカプセル農薬組成物は光照射下においても光非照射下と同程度の有効成分抽出率を示し、優れた耐光性を示すことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬活性成分をマイクロカプセル化させ水中に懸濁させてなる農薬組成物であって、該マイクロカプセルの被膜樹脂がポリアミン類とポリイソシアネート類から調製されるポリウレア樹脂であって、ポリアミン類が1種又は2種以上のポリオキシアルキレンアミン類であることを特徴とし、耐光性に優れる被膜で構成されたマイクロカプセル農薬組成物。
【請求項2】
ポリオキシアルキレンアミン類が一般式(I)
H2N-CH(CH3)CH2-[O-CH2CH(CH3)]a-NH2 (I)
(式中、aは0〜40の整数を示す。)、
一般式(II)
H2N-CH(CH3)CH2-[O-CH2CH(CH3)]b-[O-CH2CH2]c-[O-CH2CH(CH3)]d-NH2 (II)
(式中、b、c及びdは0〜40の整数を示す。)
又は一般式(III)
【化1】


(式中、e、f、g及びhは0〜40の整数を示す。Rは水素原子又は (C1-C6) アルキル基を示す。)
で表される化合物から選択される1種又は2種以上の化合物である請求項1記載のマイクロカプセル農薬組成物。
【請求項3】
ポリイソシアネート類がヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネートから選択される1種又は2種以上の化合物である請求項1又は2いずれか1項記載のマイクロカプセル農薬組成物。

【公開番号】特開2006−8608(P2006−8608A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189084(P2004−189084)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】