説明

耐光性フィルム

【課題】有機系紫外線吸収剤を含有しながら、長期の光照射下においても良好な耐光性と透明性を維持する耐光性フィルムの提供。
【解決手段】ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートからなる樹脂フィルム、該樹脂フィルムのうえに設けられベンゾフェノン系の有機系紫外線吸収剤を含有してなる厚さ0.03〜2μmの第一の耐光層、および第一の耐光層のうえに設けられ紫外線吸収能を有する金属酸化物として酸化亜鉛を含有してなる厚さ0.01〜0.1μmの第二の耐光層から構成され、該第二の耐光層側が光の入射面である耐光性フィルムにより、有機系紫外線吸収剤を含有しながら、長期の光照射下においても良好な耐光性と透明性を維持する耐光性フィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線を吸収することで紫外線を遮蔽することができ、それ自体が紫外線に対して長期に安定した耐光性を備える耐光性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルムは、汎用性が高く幅広い分野で使用されている。ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂は、紫外線の作用により劣化あるいは分解を引き起こし、変色したり機械的強度が低下するため、長期の使用に支障をきたすことがある。劣化を防止するために、従来から種々の紫外線吸収剤が用いられ、紫外線吸収剤を含有する熱可塑性樹脂フィルムは、窓貼り用途、ビニールハウス用途、防虫用途等、幅広く使用されている。
【0003】
紫外線吸収剤として無機系紫外線吸収剤と有機系紫外線吸収剤が一般に知られているが、無機系紫外線吸収剤は比較的広い波長領域の光を吸収するため、紫外線を完全に吸収しようとすると可視光まで吸収してしまうことになり、可視光領域での透過率は低いものとなってしまう。他方、有機系紫外線吸収剤は、比較的狭い波長領域を吸収するため、可視光領域での透過率を維持しつつ、紫外線を効率的に吸収することができるが、有機系紫外線吸収剤自体の耐光性が不十分であり、特に強い直射光下においては長期に亘り安定した耐光性を維持することは難しい(特開平7−11231号公報、特開平7−11232号公報、特開2000−254518号公報、特開2000−106993号公報、特開2006−326971号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−11231号公報
【特許文献2】特開平7−11232号公報
【特許文献3】特開2000−254518号公報
【特許文献4】特開2000−106993号公報
【特許文献5】特開2006−326971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、有機系紫外線吸収剤を含有しながら、長期の光照射下においても良好な耐光性と透明性を維持する耐光性フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートからなる樹脂フィルム、該樹脂フィルムのうえに設けられベンゾフェノン系の有機系紫外線吸収剤を含有してなる厚さ0.03〜2μmの第一の耐光層、および第一の耐光層のうえに設けられ紫外線吸収能を有する金属酸化物として酸化亜鉛を含有してなる厚さ0.01〜0.1μmの第二の耐光層から構成され、該第二の耐光層側が光の入射面である耐光性フィルムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、有機系紫外線吸収剤を含有しながら、長期の光照射下においても良好な耐光性と透明性を維持する耐光性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
樹脂フィルム
樹脂フィルムは熱可塑性樹脂から構成される。この熱可塑性樹脂としては、例えば熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、非晶質オレフィン、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリメタクリレート、ポリスチレン、アクリル、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン酸、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ジアリルフタレート、ケイ素樹脂、フッ素樹脂を用いることができる。就中、熱可塑性ポリエステルが好ましい。
【0010】
熱可塑性ポリエステルとしては、好ましくは芳香族ポリエステルを用い、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレートを例示することができる。就中ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが好ましい。熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよくまた複数を組み合わせて用いてもよい。また共重合体として用いてもよい。
本発明における樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、複数の層からなる積層フィルムであってもよい。
【0011】
第一の耐光層
第一の耐光層は、樹脂フィルムのうえに設けられており、有機系紫外線吸収剤を含有してなる。第一の耐光層は、有機系紫外線吸収剤のほかに、例えば樹脂バインダー、光安定剤を含有してもよい。
【0012】
有機系紫外線吸収剤
本発明における第一の耐光層に含まれる有機系紫外線吸収剤としては、波長300〜420nm、好ましくは330〜400nmの領域の全てもしくは一部の領域の光を吸収する有機系紫外線吸収剤を用いる。この範囲に吸収波長のある有機系紫外線吸収剤を用いることで、フィルムが着色してしまうことなく、紫外線を吸収して遮蔽することができる。
【0013】
有機系紫外線吸収剤として、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾオキサジノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、サルチレート系およびアクリロニトリル系の有機系紫外線吸収剤を用いることができる。これらの中でも、ベンソフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾオキサジノン系の有機系紫外線吸収剤は、紫外線の吸収率が高いため、特に好ましく使用することができる。
ベンゾフェノン系の有機系紫外線吸収剤として、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノン等を例示することができる。
【0014】
ベンゾトリアゾール系の有機系紫外線吸収剤として、(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールおよび(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリブチル5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート、2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート等を例示することができる。
【0015】
ベンゾオキサジノン系の有機系紫外線吸収剤として、2,2‘−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3、1−ベンゾオキサジン−4−オン]、2,6−ナフタレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等を例示することができる。
有機系紫外線吸収剤は、一種類を用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。また、低分子量型のものでも、高分子量型のものでもよい。
【0016】
樹脂バインダー
第一の耐光層には樹脂バインダーが含有されてもよい。樹脂バインダーは、混合された状態であってもよく、化学的に結合された状態であってもよい。
第一の耐光層に樹脂バインダーを配合する場合には、樹脂バインダーとして透明な樹脂を用いることが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、ビニルブチラール樹脂、セルロール樹脂、およびポリアミド樹脂を用いることができ、中でも、光安定性に優れるアクリル樹脂、シリコン樹脂が好ましい。
【0017】
第一の耐光層における有機系紫外線吸収剤の含有割合は、第一の耐光層を構成する全成分100重量%あたり、好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜100重量%である。5重量%未満であると、紫外線の吸収効率が低下し、十分な紫外線吸収能を付与するためには厚く塗る必要があり好ましくない。
【0018】
光安定剤
第一の耐光層には、さらに光安定剤を含有させてもよい。
光安定剤には、クエンチャーとHALSの2種類がある。クエンチャーは、一般に励起状態にある活性分子(例えば、1重項酸素1O2)を脱励起させる機能を有する。また、HALSは、紫外線により発生するラジカルを補足する捕捉剤として機能していると考えられている。光安定剤としては、クエンチャーとHALSのいずれも用いることができる。光学安定剤のうち、HALSとしては、例えばヒンダードアミン化合物を用いることができる。
【0019】
光安定剤は通常は第一の耐光層に分散して含有させる。安定剤を第一の耐光層に含有さることにより、有機系紫外線吸収剤および樹脂バインダーの長期での耐光性を向上させることができる。
第一の耐光層に光安定剤を含有させる場合、含有量は、有機系紫外線吸収剤100重量%を基準として、例えば0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%である。
【0020】
第一の耐光層の厚み
第一の耐光層の厚みは、好ましくは0.03〜35μm、さらに好ましくは0.05〜20μmである。この範囲の厚みであることによって、十分な耐光性と透明性、フィルムの良好なハンドリング性を得ることができる。
【0021】
第一の耐光層の形成方法
第一の耐光層は、樹脂フィルム上に、例えば塗布、蒸着によって設けることができる。塗布の場合、溶媒中に塗布層の組成物を分散または溶解した塗液を樹脂フィルムに塗布するウェットコーティングを例えば用いることができる。
ウェットコーティングは、ローラ法、ディッブ法、エアーナイフ法、ブレード法、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等を用いて行うことができる。また、汎用機によるスピン法やスプレー法も用いることができる。凸版、オフセットおよびグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷のような湿式印刷を用いて塗布してもよい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい塗布方法を選択すればよい。
【0022】
第二の耐光層
第二の耐光層は、第一の耐光層のうえに設けられ、紫外線吸収能を有する金属酸化物を含有してなる。本発明では、樹脂フィルム、第一の耐光層、第二の耐光層の順に配置される。そして、長期の耐光性を得るために、光の入射面が第二の耐光層側になるように用いる。
本発明では、紫外線吸収能を有する金属酸化物を含有する第二の耐光層を第一の耐光層よりうえ、すなわち、光の入射側に設ける。このことによって、第一の耐光層の有機系紫外線吸収剤を長期に安定した状態に保つことができる。
【0023】
金属酸化物
第二の耐光層に用いる紫外線吸収能を有する金属酸化物は、第一の耐光層に用いられる有機系紫外線吸収剤を劣化させる波長の光を吸収する目的で用いる。この目的のために、該金属酸化物としては、300〜400nm、好ましくは330〜390nmに吸収波長がある金属酸化物を用いる。この範囲に吸収波長がある金属酸化物を用いることによって、第一の耐光層の有機系紫外線吸収材の劣化を抑制しながら。実質的に着色していない耐光性フィルムを得ることができる。
【0024】
金属酸化物としては例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、酸化鉄を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。金属酸化物は粒子の状態で第二の耐光層に配合してよく、薄膜として形成してもよい。
【0025】
粒子として用いる場合、金属酸化物の表面の一部を、酸化アルミニウムや酸化ケイ素で被覆して光触媒反応による周辺有機物の劣化を抑えてもよい。
金属酸化物を粒子としてコーティングする場合は、光線透過率を維持するために粒子の平均粒径は、好ましくは0.1μm以下、さらに好ましくは0.05μm以下である。この範囲の粒径とすることで、光線透過率を維持し、緻密に塗布することができ、紫外線の遮蔽能が向上する。
【0026】
樹脂バインダー
第二の耐光層には樹脂バインダーが含有されてもよい。樹脂バインダーは、混合された状態であってもよく、化学的に結合された状態であってもよい。
第二の耐光層に樹脂バインダーを配合する場合には、透明な樹脂を用いることが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ビニルブチラール樹脂、セルロール樹脂、およびポリアミド樹脂を用いることができ、中でも、光安定性に優れるアクリル樹脂、シリコン樹脂が好ましい。
【0027】
第二の耐光層における金属酸化物の含有割合は、第二の耐光層を構成する全成分100重量%あたり、好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜100重量%である。5重量%未満であると、紫外線の吸収効率が低下し、十分な紫外線吸収能を付与するためには厚く塗る必要があり好ましくない。
【0028】
光安定剤
第二の耐光層には、さらに光安定剤を含有させてもよい。
この光安定剤には、クエンチャーとHALSの2種類があり、クエンチャーは、一般に励起状態にある活性分子(例えば、1重項酸素1O2)を脱励起させる機能を有する。また、HALSは、紫外線により発生するラジカルを補足する捕捉剤として機能していると考えられている。光安定剤としては、クエンチャーとHALSのいずれも用いることができる。光学安定剤のうち、HALSとしては、例えばヒンダードアミン化合物を用いることができる。
【0029】
光安定剤を含有させる場合、通常は第二の耐光層に分散して含有させる。光安定剤を第二の耐光層に含有さることにより、樹脂バインダーの長期での耐光性を向上させることができる。
第二の耐光層に光安定剤を含有させる場合、含有量は、金属酸化物100重量%を基準として、例えば0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%である。
【0030】
第二の耐光層の厚み
第二の耐光層の厚みは、好ましくは0.01〜10μm、さらに好ましくは0.05〜10μmである。この範囲の厚みであることによって、十分な耐光性と透明性、フィルムの良好なハンドリング性を得ることができる。
【0031】
第二の耐光層の形成方法
第二の耐光層は、第一の耐光層のうえに、例えば塗布、ドライコーティングによって設けることができる。
塗布の場合、溶媒中に塗布層の組成物を分散または溶解した塗液を樹脂フィルムに塗布するウェットコーティングを例えば用いることができる。ウェットコーティングは、例えば、ローラ法、ディッブ法、エアーナイフ法、ブレード法、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法を用いて行うことができる。また、汎用機によるスピン法やスプレー法も用いることができる。凸版、オフセットおよびグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷のような湿式印刷を用いて塗布してもよい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい塗布方法を選択すればよい。
ドライコーティングは、例えば、蒸着法、スパッタ法、CVD法、イオンプレーテイング法を用いて行うことができる。
【0032】
その他の層
ハードコート層
各層の密着性と長期間屋外で使用する際の耐久性を向上するために、樹脂フィルムと第一の耐光層との間、第一の耐光層と第二の耐光層との間、第二の耐光層の上の箇所、のいずれか一箇所以上に、ハードコート層を設けてもよい。このハードコート層の厚みは、例えば0.01〜20μm、さらに好ましくは0.05〜10μmである。
ハードコート層は、接する層と密着性のよい材料で構成されることが好ましく、熱硬化性樹脂やエネルギー線硬化性樹脂が、工業的な生産性の観点から好ましい。熱硬化性樹脂やエネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂を用いることができ、これらの樹脂成分にアルミナ、シリカ、マイカといった無機粒子を配合した混合物を用いることが好ましい。
【0033】
バッファー層
金属酸化物を含む第二の耐光層に隣接して、無機物質からなる厚み0.01〜20μm、好ましくは1〜10μmのバッファー層を設けてもよい。このバッファー層を設けることで、金属酸化物による光触媒反応によって隣接する層の光劣化を抑制することができる。例えば、第一の耐光層と第二の耐光層との間にバッファー層を設けることで、金属酸化物の光触媒反応による第一の耐光層の劣化を抑制することができる。バッファー層を構成する無機物質としては、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素を用いることができる。バッファー層はハードコート層を兼ねてもよい。
【0034】
反射防止層
本発明の耐光性フィルムを構成する各層の間、もしくは最表層に、反射防止層を設けてもよい。反射防止層を設けることで光線透過率が向上し、太陽電池等、光量が重要な分野にも利用できるため好ましい。
反射防止層を最表層に設ける場合、反射防止層として、屈折率1.30〜2.0、厚み0.01〜0.2μmの層を1〜30層積層すればよい。なお、反射防止層は、ハードコート層、バッファー層をかねてもよい。
【0035】
易接着層
本発明において、樹脂フィルムには易接着層が設けられていてもよい。この場合、易接着層は、樹脂フィルムと第一の耐光層の間に設けられていてもよく、第一の耐光層の設けられていない側に設けられていてもよい。易接着層が樹脂フィルムと第一の耐光層の間に設けられていると、両者の接着性を向上することができる。易接着層が樹脂フィルムの第一の耐光層の設けられていない側に設けられていると、本発明の耐光性フィルムを、例えばカバーシートとして使用する場合にカバーする対象との良好な接着性を得ることができる。
【0036】
易接着層には、ポリエステルフィルムと第一の耐光層の双方に優れた接着性を示す材料を用いることが好ましく、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、シリコンアクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリシロキサン樹脂を用いることができる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。
易接着層の厚みは、好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは20〜150nmである。易接着層の厚みが10nm未満であると密着性を向上させる効果が乏しく、200nmを超えると易接着層の凝集破壊が発生しやすくなり密着性が低下することがあり好ましくない。
【0037】
易接着層を設ける方法としては、樹脂フィルムの製造過程で塗工により設ける方法が好ましい。塗工は樹脂フィルムの配向結晶化が完了する前に塗液を塗布して行うことが好ましい。ここで、結晶配向が完了する前のフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含む。なかでも、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムに塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸し、さらに熱固定を施すことで易接着層を設けることが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
各種物性は下記の方法により評価した。
【0039】
(1)光線透過率
分光光度計(島津製作所製MPC3100)を用い、波長390nmでの光線透過率を測定した。
【0040】
(2)耐光性
サンプルフィルムに、UV照射試験機(ATLAS社製 SUNSTESTCPS+)を使用し、温度55℃、出力765W/mで、240時間照射することにより、屋外曝露促進試験を行った。屋外曝露促進試験後、フィルムの着色を日本電色工業株式会社製SZS−Σ90を用いた透過測定によりb*値を測定し、試験後のb*値と試験前のb*値との差を算出し、下記の基準で評価した。なお、屋外曝露促進試験を試験と略称する。
◎: 試験後b*−試験前b*≦ 4 ・・・耐光性極めて良好。
○: 4< 試験後b*−試験前b* ≦ 8 ・・・耐光性改善。
×: 8< 試験後b*−試験前b* ・・・耐光性不良。
【0041】
[実施例1]
(樹脂フィルムの作成)
固有粘度が0.63で、実質的に粒子を含有しないポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのペレットを170℃で6時間乾燥後、押出機ホッパーに供給した。溶融温度305℃で溶融混練し、平均目開きが17μmのステンレス鋼細線フィルターで濾過し、3mmのスリット状ダイを通して表面温度60℃の回転冷却ドラム上で押出し、急冷して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを120℃にて予熱し、さらに低速、高速のロール間で15mm上方より850℃のIRヒーターにて加熱して縦方向に1.1倍に延伸した。この縦延伸後のフィルムの片面に下記の塗剤Aを乾燥後の塗布層厚みが0.25μmになるようにロールコーターで塗布して易接層を形成した。
続いてテンターに供給し、140℃にて横方向に.3.3倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを245℃の温度で5秒間熱固定し、固有粘度が0.58dl/g、厚み125μmのフィルムとし、その後、このフィルムを懸垂状態で、弛緩率0.7%、温度205℃で熱弛緩させて、樹脂フィルムとした。
【0042】
(第一の耐光層の形成)
有機系紫外線吸収剤としてCyasorb UV24(Cytech社製:2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)40重量部、バインダーとしてアクリル樹脂のハルスハイブリッドUV−G301(日本触媒製)54重量部、イソシアネート硬化剤としてデスモジュールN3200(住化バイエルウレタン社製)6重量部から、第一の耐光層の形成に用いる組成物を調製した。この組成物を酢酸エチルに溶解して固形分濃度11重量%の溶液として塗液を調製した。この塗液をバーコーターを用いて樹脂フィルムのうえに塗布、乾燥して、厚み2μmの第一の耐光層を形成した。
【0043】
(第二の耐光層の形成)
酸化亜鉛微粒子の15重量%分散液NanoTek(シーアイ化成製、平均粒径34nm)をバーコーターを用いて第一の耐光層のうえに塗布、乾燥して、厚み0.1μmの第二の耐光層を形成した。
得られた耐光性フィルムの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例2]
(樹脂フィルムの作成)
樹脂フィルムを実施例1と同様に作成した。
【0045】
(第一の耐光層の形成)
有機系紫外線吸収剤としてCyasorb UV24(Cytech社製:2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)50重量部、バインダーとしてシリコーン系バインダーのTSR145(MOMENTIVE社製)49.8重量部、触媒(CR13(MOMENTIVE社製))0.2重量部を、トルエンを溶媒とする固形分濃度24重量%の溶液をとして、塗液を調製した。この塗液をバーコーターを用いて、樹脂フィルムのうえに塗布、加熱乾燥して、厚み1.5μmの第一の耐光層を形成した。
【0046】
(第二の耐光層の形成)
実施例1と同様の方法で第二の耐光層を形成して、耐光性フィルムを得た。
得られた耐光性フィルムの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0047】
[実施例3]
(樹脂フィルムの作成)
樹脂フィルムを実施例1と同様に作成した。
【0048】
(第一の耐光層の形成)
第一の耐光層を実施例2と同様に形成した。
【0049】
(第二の耐光層の形成)
スパッタ法を用いて、酸化亜鉛を100nm厚みで第一の耐光層のうえに積層して第二の耐光層を形成して、耐光性フィルを得た。
得られた耐光性フィルムの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
(樹脂フィルムの作成)
樹脂フィルムを実施例1と同様に作成した。
【0051】
(第一の耐光層の形成)
有機系紫外線吸収剤Cyasorb UV24(Cytech社製:2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)100重量部をトルエンを溶媒とする固形分濃度12重量%の溶液として塗液を調製した。この塗液をバーコーターを用いて樹脂フィルムのうえに塗布、乾燥して、厚み0.7μmの第一の耐光層を形成した。
【0052】
(第二の耐光層の形成)
実施例3と同様の方法で第一の耐光層のうえに第二の耐光層を形成して、耐光性フィルムを得た。
得られた耐光性フィルムの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例5]
実施例3と同様にして、樹脂フィルムのうえに第一の耐光層を形成し、そのうえに第二の耐光層を形成した。さらにスパッタリング法を用いて、第二の耐光層のうえの最表層に酸化ケイ素の層を100nmの厚みで積層して反射防止層を形成して反射防止層を有する耐光性フィルムを得た。
得られた耐光性フィルムの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例6]
実施例3と同様にして、樹脂フィルムのうえに第一の耐光層を形成した。次にスパッタリング法を用いて酸化ケイ素の層を第一の耐光層のうえに厚み50nmで積層することでバッファー層を形成した。このうえに実施例3と同様にして第二の耐光層を形成して、耐光性フィルムを得た。
得られた耐光性フィルムの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0055】
[比較例1]
実施例1と同様にして樹脂フィルムを作成した。このフィルムには、第一の耐光層および第二の耐光層を設けなかった。
このフィルムの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0056】
[比較例2]
実施例1と同様にして樹脂フィルムを作成し、実施例2と同様にして第一の耐光層を形成したフィルムを作成した。このフィルムには第二の耐光層は設けなかった。
得られたフィルムの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
[比較例3]
実施例1と同様にして樹脂フィルムを作成し、樹脂フィルムのうえに直に第二の耐光層を形成した。形成方法は実施例3と同様の方法を用いた。このフィルムには第一の耐光層は形成しなかった。
得られたフィルムの物性を評価した。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の耐光性フィルムは、例えば太陽電池の部材のように長期間に亘り紫外線に晒される用途、また、例えば医薬品のように紫外線による劣化を防止する必要性の高い物品の包装の用途に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートからなる樹脂フィルム、該樹脂フィルムのうえに設けられベンゾフェノン系の有機系紫外線吸収剤を含有してなる厚さ0.03〜2μmの第一の耐光層、および第一の耐光層のうえに設けられ紫外線吸収能を有する金属酸化物として酸化亜鉛を含有してなる厚さ0.01〜0.1μmの第二の耐光層から構成され、該第二の耐光層側が光の入射面である耐光性フィルム。
【請求項2】
太陽電池の部材として用いられる、請求項1記載の耐光性フィルム。

【公開番号】特開2013−82233(P2013−82233A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−15676(P2013−15676)
【出願日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【分割の表示】特願2009−536130(P2009−536130)の分割
【原出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】