説明

耐摩耗性シート

【課題】本発明は、摺動を伴う用途に使用された場合でも、耐摩耗性に優れた耐摩耗性シートを提供することを課題とする。
【解決手段】耐熱性繊維布22と、この耐熱性繊維布22に被覆された,ポリイミド系樹脂及びフッ素樹脂の混合物からなる被覆層23とを具備することを特徴とする耐摩耗性シート21。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐摩耗性シートに関し、特に例えば耐熱非粘着ベルト材、高周波用プリント基板材料、離型シート、摺動材として種々の工業分野で使用される耐摩耗性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)で代表されるフッ素樹脂は、耐熱性、電気絶縁性、高周波特性、耐薬品性、非粘着性等に優れ、利用範囲の広い樹脂として種々な分野で重要な機能材料として応用されている。しかしながら、フッ素樹脂を用いた材料は、摺動を伴う用途に使用される場合、耐摩耗性に乏しいという欠点がある。従来、フッ素樹脂製摺動部品の耐摩耗性を向上させる方法として、例えば、特許文献1の如く、フッ素樹脂成形粉末にカーボン繊維等の耐摩耗性を付与する充填材を分散混合した粉末により成形品を得る方法が用いられている。
【0003】
同様に、従来、ガラス繊維織布、アラミド繊維織布、カーボン繊維織布などの耐熱性繊維織布を四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化エチレン共重合樹脂(PFEP)、四フッ化エチレンパーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)等の水性ディスパージョンでコーティングすることによって製作されるシート状のフッ素樹脂被覆耐熱性繊維織布材料の耐摩耗性を向上させる方法としては、例えば、特許文献2が知られている。特許文献2では、前記フッ素樹脂の水性ディスパージョンに耐摩耗性を付与する無機の固体充填材を分散混合した水性ディスパージョンを調製し、耐熱性繊維織布に塗布する方法で耐摩耗性を実現している。
【0004】
しかしながら、前述した無機の固体充填材をフッ素樹脂中に分散した水性ディスパージョンを耐熱性繊維織布に浸漬、乾燥、焼成して耐摩耗性を製作する場合、次の問題がある。
【0005】
(1)フッ素樹脂水性ディスパージョンに前記固体充填材を分散する際に、均一な分散と共に充填材が沈降することなく、充填材を分散したフッ素樹脂を水中に安定に保持することが重要である。しかし、耐摩耗性の無機の固体充填材は、一般的に比重の大きいものが多く、該固体充填材を分散したフッ素樹脂水性ディスパージョンを安定に保持することが困難である場合が多い。
【0006】
(2)また、シート状のフッ素樹脂被覆耐熱性繊維織布材料を製作する一般的な方法である浸漬塗装の場合、塗装が長時間に渡るため、ディスパージョンの不安定さにより、分散した充填材及びフッ素樹脂の沈降に起因する塗装ムラが生じやすい。
【0007】
(3)摺動を伴う用途にシート状のフッ素樹脂被覆耐熱性繊維織布材料を使用する場合、前記塗装ムラに起因して、部分的な表面の耐摩耗性のバラツキを生じやすい。
【特許文献1】特開平5−222260号公報
【特許文献2】実開平5−63834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、摺動を伴う用途に使用された場合でも、耐摩耗性に優れたシート状のフッ素樹脂被覆耐熱性繊維織布材料(以下、耐摩耗性シートと記す)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、耐熱性繊維織布と、この耐熱性繊維織布の少なくとも片面に形成された,ポリイミド系樹脂及びフッ素樹脂の混合物からなる被覆層とを具備することを特徴とする耐摩耗性シートである。
【0010】
本発明において、ポリイミド系樹脂のフッ素樹脂に対する割合は、十分な耐摩耗性を得かつフッ素樹脂の持つ特徴の一つである非粘着性を保持する点から、8〜20質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、摺動を伴う用途に使用された場合でも、耐摩耗性に優れ、種々の工業分野で使用される耐熱非粘着ベルト材、高周波用プリント基板材料、離型シート、揺動材等として使用される耐摩耗性シートを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において、前記耐熱性繊維織布としては、例えばガラス繊維織布、アラミド繊維織布、カーボン繊維織布が挙げられるが、基本的には、耐摩耗性シート製造工程中のフッ素樹脂の焼成温度に耐えうるものであれば、どのような耐熱性繊維織布でも使用可能である。
【0013】
本発明において、前記被覆層は耐熱性繊維織布の片面に形成してもよいし、両面に形成してもよいが、一般的には両面に形成する。具体的には、例えば、比重の小さい有機耐摩耗性樹脂であるポリイミド系樹脂をフッ素樹脂水性ディスパージョン中に分散した塗工液を、基材である耐熱性繊維織布の両面に塗布し、焼成することにより被覆層を形成する。
【0014】
ここで、前記被覆層の一材料であるフッ素樹脂としては、限定するものではないが、例えば四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(PFEP)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。
【0015】
また、上記被覆層の他の材料であるポリイミド系樹脂としては、耐摩耗性シートの製造程中においてフッ素樹脂の焼成温度に耐えるポリイミド系樹脂であれば、どのような樹脂でも使用可能である。ここで、ポリイミド系樹脂のフッ素樹脂に対する割合は、前述したように8〜20質量%の範囲が望ましい。ここで、8質量%未満の場合、本発明の目的である耐摩耗性が十分得られない。また、20質量%を超えると、特に摺動材として使用される場合、摩擦係数が大きくなり、さらにフッ素樹脂の重要な特性である非粘着性が損なわれることになる。
【0016】
前記PTFE樹脂及びPFA樹脂としては、例えばポリイミド系樹脂を14質量%混合した三井デュポンフロロケミカル社製塗工液が市販されており、この目的に好適に使用可能である。
【0017】
本発明では、前記目的を達成するために、フッ素樹脂水性ディスパージョン中に耐摩耗性を付与する無機固体充填材を分散した塗工液で塗装する従来の方法に代えて、比重の小さい有機耐摩耗性樹脂であるポリイミド系樹脂をフッ素樹脂水性ディスパージョン中に分散し、分散したフッ素樹脂と充填材が長時間にわたって沈降することのない安定な水性ディスパージョンで耐熱性繊維織布を塗装するものである。これにより、塗装ムラのない耐摩耗性シートを得ることができる。
【0018】
本発明において、前記耐熱性繊維織布と前記被覆層との間に、フッ素樹脂(例えばPTFE樹脂)単体からなる層を形成してもよい。フッ素樹脂単体からなる層を設けることにより、前記耐熱性繊維織布と前記被覆層との密着力を向上することができる。
【0019】
次に、耐熱性繊維織布として例えばガラス繊維織布、フッ素樹脂として例えば四フッ化エチレン樹脂(PTFE)を選択した場合の本発明の実施方法を説明する。本発明の耐摩耗性シートは図1及び図2の装置により製造される。
図1中の符番1は攪拌機を示し、塗工液2を収容した攪拌容器3と、この攪拌容器3の底部に配置されたプロペラ形状の攪拌羽根4とを備えている。図2中の符番5は塗工機を示し、ガラス繊維織布6を巻き出すための巻出し部7と、前記ガラス繊維織布6を塗工液2に浸漬するための浸漬槽8と、浸漬したガラス繊維織布を乾燥する,100℃以下に制御された乾燥ゾーン9と、370〜400℃に制御された焼成ゾーン10と、焼成後のガラス繊維織布11を巻き取る巻取り部12とを備えている。
【0020】
まず、塗工する前工程として、図1のように撹拌機1を使用してポリイミド系樹脂とPTFE樹脂の混合塗布液を調合する。その場合、撹拌容器3に通常、固形分濃度60重量%の四フッ化エチレン樹脂(PTFE)ディスパージョン原液及び希釈用の水を所定量計り取る。それにポリイミド系樹脂とPTFE樹脂が所定の割合になるように加え、撹拌機1等を用いて、通常、ポリイミド樹脂及びPTFE樹脂合計固形分が40〜50質量%程度の塗工液2を調製する。
【0021】
次に、図2の塗工機5により、巻出し部7からガラス繊維織布6を巻き出し、浸漬槽8で前記塗工液2にガラス繊維織布6を浸漬することによりポリイミド系樹脂とPTFE樹脂の混合樹脂を塗布する。つづいて、塗工機5に備えられた乾燥ゾーン9で水分を除去した後、焼成ゾーン10で塗布されたポリイミド系樹脂とPTFE樹脂の混合樹脂が焼成される。最後に、焼成後の耐摩耗性シート11を巻取り部12に巻き取る。
【0022】
PTFE樹脂を含む塗工液の場合、1回の塗装で塗布できる厚さが数μmに制限されるため、前記巻き出しから巻取りまでの工程を所定の厚さもしくは所定の量が塗布されるまで繰り返し、所定の厚さもしくは所定量塗布された時点で耐摩耗性シートの製造が終了する。次に、実施例により、さらに本発明を詳述する。
【0023】
(実施例1)
まず、上塗り用塗工原液として市販のポリイミド系樹脂とPFA樹脂合計固形分濃度が47質量%で、PFA樹脂に対するポリイミド系樹脂の割合が14質量%のPFAエナメル樹脂(商品名:PRM−060−2、三井デュポンフロロケミカル社製)を50kg及び希釈用の水2.2kgを撹拌容器に計り取り、図1に示すような撹拌羽根4を備えた撹拌機1で均一に混合し、ポリイミド系樹脂とPFA樹脂合計固形分濃度が45質量%の塗工液とした。
【0024】
次に、下塗り用塗工原液として市販のPTFE樹脂固形分濃度が60質量%の水性ディスパージョン50kgに希釈用の水4〜5kg加えたPTFE樹脂固形分濃度55質量%の塗工液とした。
【0025】
調合調整した前記の下塗り用塗工液を図2に示すような塗工機5の浸漬槽8に入れ、巻出し部7から厚さ95μm×1050mm幅×50m長さのガラス織維織布(日東紡社製ガラスクロス、商品名:WLA116E)6が巻取り機により、1.5m/分の速度で巻取り部12に巻き取られる間に、塗工機5の浸漬槽8でそのガラス繊維繊布6に塗工液2を浸漬塗布し、次いで塗工機5に備えられた乾燥ゾーン9で水分を除去し、さらに焼成ゾーン10で塗布されたPTFEから構成される塗布層を焼成することにより、塗布層ガラス繊維織布上に焼き付けた。
【0026】
前述したように、フッ素樹脂を成分に持つ塗工液の場合、1回の塗布操作で塗布可能な厚さは数μmに限られるため、通常、この操作は複数回繰り返される。本実施例1の場合、下塗り用樹脂を2回繰り返して厚さ110μm×1050mm幅×50m長さのシート状のフッ素樹脂被覆ガラス繊維織布を得た。
【0027】
次いで、調合調整した上塗り用塗工液を塗工機5の含浸槽8に入れ、巻出し部7から下塗り用塗工液を塗布した前記のシート状のフッ素樹脂被覆ガラス繊維織布6が巻取り機により、1.5m/分の速度で巻取り部12に巻き取られる間に、乾燥ゾーン9、焼成ゾーン10を通過し、塗布されたPFA樹脂とポリイミド樹脂の混合物から構成される塗布層を焼成する事により、シート状フッ素樹脂被覆ガラス繊維織布上に焼き付けた。
【0028】
この塗工液においても、1回の塗布操作で塗布可能な厚さは数μmに限られるため、本実施例の場合、上塗り用塗工液を4回繰り返して所望の厚さ134μm×1050mm幅×50m長さの耐摩耗性シートを得た。
【0029】
上記のようにして得られた実施例1に係る耐摩耗性シート21は、図3に示すように、縦糸22aと横糸22bからなるガラス繊維織布22と、このガラス繊維織布22の両側に形成された第1の被覆層23と、この第1の被覆層23の外側に夫々形成された,PFA樹脂とポリイミド樹脂を構成成分とする第2の被覆層24とから構成されている。
【0030】
(実施例2)
塗工原液として市販のポリイミド系樹脂とPTFE樹脂合計固形分濃度が47質量%で、PTFE樹脂に対するポリイミド系樹脂の割合が14質量%のPTFEエナメル樹脂(商品名:PRM−060−3、三井デュポンフロロケミカル社製)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、厚さ124μm×1050mm幅×50m長さの耐摩耗性シートを得た。
【0031】
実施例2に係る耐摩耗性シートは、塗布層がPTFE樹脂とポリイミド系樹脂の混合樹脂からなることを除いて、上述した図3と同様な構成となっている。
【0032】
(比較例1)
塗工原液として市販のPTFE樹脂固形分濃度が60質量%の水性ディスパージョン50kgに希釈用の水4〜5kg加えたPTFE樹脂固形分濃度55質量%のディスパージョンを塗工液とする以外は、実施例1及び実施例2と同様の方法で厚さ120μm×1050mm幅×50m長さのフッ素樹脂被覆シートを得た。
【0033】
比較例1に係るフッ素樹脂被覆シートは、塗布層がPTFE樹脂層の1層構造であることを除いて、実施例1,2と同様な構成となっている。
【0034】
(比較例2)
実施例1で述べたようにフッ素樹脂を成分に持つ塗工液の場合、1回の塗布操作で塗布可能な厚さが数μmに限られるため、通常、塗布操作が複数回繰り返されるが、実施例1及び実施例2並びに比較例1及び比較例2においては、いずれも6回塗布操作を繰り返した。
【0035】
本比較例2では、1回から5回の塗布操作は、比較例1と全く同様の操作を行い、最終の6回目の塗布操作のみ、市販のPTFE樹脂水性ディスパージョンに耐摩耗性の無機充填材として導電性ウィスカ(商品名:デントールWK−200B、大塚化学社製)をPTFE樹脂に対して10質量%分散した塗工液を使用し、他の条件は、比較例1と同条件で厚さ129μm×l050mm幅×60m長さのフッ素樹脂被覆シートを得た。
【0036】
上記のようにして得られた比較例2に係るフッ素樹脂被覆シートは、図4の示すように、縦糸22aと横糸22bからなるガラス繊維織布22と、このガラス繊維織布22の両側に形成された,PTFE樹脂のみからなる第1の被覆層31と、この被覆層31の外側に夫々形成された,導電性ウィスカを構成成分とする第2の被覆層32とから構成されている。
【0037】
下記表1は、実施例1及び実施例2で作製した本発明に係る耐摩耗性シートと比較例1及び比較例2で作製したフッ素樹脂被覆シートの耐摩耗性並びに摩擦係数を測定するために、摩擦摩耗試験を実施したデータを示す。
【表1】

【0038】
上記表1より、実施例1及び実施例2に係る耐摩耗性シートが、比較例1や比較例2に係るフッ素樹脂被覆シートよりも耐摩耗性に優れていることが分かる。
【0039】
次に、ポリイミド樹脂のフッ素樹脂に対する最適割合の範囲を決定するために以下の試験を実施した。
【0040】
(実施例3)
PFA樹脂に対するポリイミド系樹脂の割合が、5、6、8、10、12、14、20、25質量%の塗工液を調整し、前記塗工液成分の混合割合以外は、実施例1と同じ方法により耐摩耗性シートを作製し、摩耗試験及び表面の水に対する接触角の測定を実施した。下記表2はその結果を示す。
【表2】

【0041】
上記表2より、8質量%以上では、耐摩耗性シートの摩耗量が少なく、明らかに優秀な耐摩耗性を有することが示されている。また、非粘着性の目安である接触角に関する試験から、ポリイミド系樹脂の割合が増加するに従って接触角が小さくなる。即ち、非粘着性が低下していく傾向がうかがえるが、ポリイミド系樹脂の割合が20質量%を超えると、接触角が100°を下回る。従って、使用される用途にもよるが、非粘着性が必要な用途においては問題になる可能性がある。このことから、ポリイミド系樹脂のフッ素樹脂に対する割合は、8〜20質量%の範囲が好ましいことが示されている。
【0042】
(実施例4)
次に、実施例1及び比較例1で製作した材料を使用し、図5及び図6に示す構成の二層からなる無端積層ベルトを2本製作し、図7に示す市販品のヒートシール機を所持しているエンドユーザーにモニター試験を依頼した。
【0043】
図5は、この目的で製作した二層からなる積層ベルト41の長手方向の断面図である。このベルト41の内側層41aは、本発明に係る実施例1で製作したポリイミド系樹脂とPFA樹脂の混合物から構成される被覆層を有する耐摩耗性シートである。また、外側層41bは、比較例1で製作したPTFE樹脂のみで構成される被覆層を有するフッ素樹脂被覆シートである。
【0044】
また、図6も同様に二層からなる積層ベルト42の長手方向の断面図である。このベルト42の内外層42a及び外側層42bは、ともにPTFE樹脂のみで構成される被覆層を有するフッ素樹脂被覆シートである。この2種類の二層からなる積層ベルト41,42は、ともに通常この種のベルトの製作に用いられる熱プレスによる熱圧着法にて各層を積層し製作した。
【0045】
次に、モニター試験に用いるヒートシール機51について、図7(A),(B)を参照して説明する。ここで、図7(A)はヒートシール機の平面図、図7(B)は図7(A)の概略的な斜視図を示す。
前記ヒートシール機51は、対称に配置された二組のベルトシステムから構成されている。一方のベルトシステムは、駆動プーリー52a、ヒートシールベルト53a、ヒーターブロック54a、従動プーリー55aから構成される。他方のベルトシステムは、駆動プーリー52b、ヒートシールベルト53b、ヒーターブロック54b、従動プーリー55bから構成される。
【0046】
前述した二組のベルトシステムの間を包装される商品56がベルトにより運ばれる間にヒーターブロックによる熱と、ベルトに付加される張力により発生する圧力により、商品56を包んでいるフィルムがヒートシールされる。前記ヒートシール機51は、クリーンルーム内で使用されることが多く、主として、ベルト内層表面とヒーターブロックとの擦れ合いにより発生する摩耗粉が問題となる。通常、ベルトの寿命は発生した摩耗粉が包装される商品に付着して汚れ等の問題が生じた場合と判断される。
【0047】
今回製作した前記二種類の各2本の積層ベルトは、前記ヒートシールベルトとして同種類の2本のベルトが同じ試験に適用され、前記汚れが発生するベルト寿命までの摩耗によるベルトの質量減を耐摩耗性の尺度に、また、寿命までヒートシールされた商品の個数をベルトの耐久性の尺度として判断した。下記表3はその結果を示す。
【表3】

【0048】
表3より、内層材料として本発明に係る、実施例1で製作した耐摩耗性シートを使用した(図5参照)。ヒートシールベルトが、内層材料として比較例1で製作したフッ素樹脂被覆シートよりも非常に優れていることが明らかになった。
【0049】
更に、実施例1及び比較例2で使用した塗工液の安定性の比較試験を行った。方法としては、200mlのメスシリンダーに各塗工液を200ml入れ、塗工液中に分散しているポリイミド系樹脂及びPFA樹脂の混合固形分が、時間の経過とともにどの程度沈降するのかを、固形分が沈降した結果メスシリンダー中の塗工液の最頂部に現われる透明な部分の容積を尺度として観察した。下記表4はその結果を示す。
【表4】

【0050】
表4より、比重の小さいポリイミド系樹脂を分散した塗工液が、比重の大きい無機固体充填材を分散した塗工法より安定性が優れていることが分る。
【0051】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】塗工用溶液を調製するために使用される撹拌器の模式図。
【図2】耐摩耗性シートを製造するための装置の概略的な説明図。
【図3】本発明に係る耐摩耗性シートの模式的な断面図。
【図4】比較例2に係るフッ素樹脂被覆シートの模式的な断面図。
【図5】無端状積層ベルトの断面図。
【図6】別な無端状積層ベルトの断面図。
【図7】モニター試験に用いるヒートシール機の説明図。
【符号の説明】
【0053】
1…攪拌機、2…塗工液、3…攪拌容器、4…攪拌羽根、5…塗工機、6…耐熱性繊維織布、7…巻出し部、8…浸漬槽、9…乾燥ゾーン、10…焼成ゾーン、11,21…耐摩耗性シート、22…ガラス繊維織布、22a…縦糸、22b…横糸、23,24…被覆層、41a,42a…内側層、41b,42b…外側層、51…ヒートシール機、52a,52b…駆動プーリー、53a,53b…ヒートシールベルト、54a,54b…ヒータブロック、55a,55b…従動プーリー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性繊維織布と、この耐熱性繊維織布の少なくとも片面に形成された,ポリイミド系樹脂及びフッ素樹脂の混合物からなる被覆層とを具備することを特徴とする耐摩耗性シート。
【請求項2】
前記耐熱性繊維織布と前記被覆層との間に、フッ素樹脂単体からなる層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の耐摩耗性シート。
【請求項3】
ポリイミド系樹脂のフッ素樹脂に対する割合は、8〜20質量%であることを特徴とする請求項1もしくは2記載の耐摩耗性シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−21403(P2006−21403A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200729(P2004−200729)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000211156)中興化成工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】